説明

改善された画像耐久性をもたらすインクジェット印刷方法及び組成物

良好な光学濃度を有しスマッジ耐性及び耐久性のあるインクジェット画像をもたらすための組成物、システム、及び方法を提供する。詳細には、耐久性インクジェットインク画像を印刷するシステムは、インクジェットインクを収容する第1のインクジェットペンと、定着剤組成物を収容する第2のインクジェットペンとを具備することができる。インクジェットインクは、第1液体ビヒクルと着色剤を含むことができる。定着剤組成物は、第2液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーを含むことができる。基材上のインクジェットインクに関して定着剤組成物を上刷り又は下刷りすると、耐久性のある画像が形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットイメージングの分野に関する。より詳細には、本発明は、エピハロヒドリンとアミンとのコポリマーを含有した定着剤組成物を用いるインクジェットイメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷が、種々の媒体表面、特に紙の上に画像を記録する主要な方法となったのには幾つかの理由がある。それら幾つかの理由としては、プリンタ騒音の低さ、高速記録できること、及び多色記録できることが挙げられる。さらに、これらの利点が、使用者にとって比較的低コストで達成され得ることも挙げられる。大きく改善されてきたインクジェット印刷分野ではあるが、この改善に伴い、例えば、より高速、より高分解能、フルカラー画像形成、高い安定性、より耐久性のある画像等を求める当分野のユーザの要求も高まっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、インクジェットインクは染料系又は顔料系インクの何れかである。両方とも、典型的には、染料及び/又は顔料を液体ビヒクル中に含有させて調製される。染料系インクジェットインクは、インクジェットインク分野における主要技術となっている。しかしながら、多くの染料は水溶性であるため、そのような染料系インクジェットインクを使用して印刷された画像は、望まれるほど耐水性ではない。媒体上に印刷されたアニオン性染料系インクジェットインクの耐水性は、カチオン性物質を含有する定着剤液によって印刷画像を上刷り又は下刷りすることによって高められることが確認されている。従って、カチオンポリマーとアニオン染料とを基材上で互いに接触させると、染料とカチオン物質との間の反応によって高い耐水性並びに永続性を有する画像が作り出される。しかしながら、これらの物質の多くは、標準の印刷ヘッドにおいては許容し得る信頼性を示さず、紙上に印刷された際には黄変現象(yellowing)を呈する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
インクジェットインク及び/又は定着剤液に或る種の成分を用いることで、インクジェット機器の信頼性に悪影響を及ぼさず且つ過剰な黄変現象も呈することなく良好な画像永続性及びスマッジ耐性をもたらし得ることが確認された。従って、耐久性インクジェットインク画像を印刷するシステムは、インクジェットインクを収容する第1のインクジェットペンと、定着剤組成物を収容する第2のインクジェットペンとを具備することができる。インクジェットインクは、第1液体ビヒクルと、着色剤とを含むことができる。定着剤組成物は、第2液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーとを含むことができる。従って、基材上のインクジェットインクに関して定着剤組成物を上刷り又は下刷りすると、耐久性のある画像が形成される。
【0005】
他の実施形態では、耐久性のあるインクジェットインク画像を印刷する方法は、基材上にインクジェットインクを噴射すること、並びに定着剤組成物を基材上に噴射することを包含し得る。当該インクジェットインクは、第1液体ビヒクルと着色剤から構成することができる。定着剤組成物は、第2液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーとを含むことができる。この実施形態では、インクジェットインクは、基材上の定着剤組成物に関して上刷り又は下刷りすることができる。
【0006】
他の実施形態では、定着剤組成物は、水性液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーとを含むことができる。当該定着剤組成物は、インクジェット可能であり且つ顔料及び染料着色剤を含まないように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の特定の実施形態を開示、記述する前に、本発明が、ここに開示する特定の方法ステップ及び材料に限定されないことを理解されたい。何故なら、そのような方法ステップ及び材料はある程度変更し得るからである。また、ここで用いられる用語は、専ら特定の実施形態を記述するだけの目的で用いられていることを理解されたい。当該用語に限定の意はない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されることとする。
【0008】
この明細書並びに添付の特許請求の範囲において用いるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途明確に指示のない限り、複数形の意味を包含することを理解されたい。
【0009】
ここで用いるとき、「液体ビヒクル」は、インクジェットインクを形成するために着色剤(染料及び/又は顔料)を溶解又は分散させるための液体、又はインクジェット可能な定着剤組成物を形成するために或る種のカチオンポリマーを分散させるための液体を指す。多くの液体ビヒクル及びビヒクル成分は当分野で周知であり、限定はしないが、界面活性剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、殺生物剤、粘度修正剤、金属イオン封止剤、安定剤、及び水をはじめとする様々な各種薬剤から成る混合物から構成し得る。液体ビヒクルはまた、特定の実施形態においては、ポリマー、UV硬化性材料、及び/又は可塑剤のようなその他の添加物を保持することができる。
【0010】
定着剤組成物中の分散剤又は溶質についていう「カチオン成分」とは、正に帯電しており且つ基材上で接触するとインクジェットインク内の着色剤を定着又は不溶化(desolubilize)するように作用するところの、ポリマー、多価イオン、及び/又はその類を指す。本発明の実施形態によれば、当該カチオン成分は、エピハロヒドリンとアミンのコポリマーを含むことができる
【0011】
「定着剤」は、液体ビヒクルと少なくとも1つのカチオン成分とから構成される懸濁液又は溶液を指す。さらに詳細には、本発明の定着剤組成物は、少なくとも、エピハロヒドリンとアミンのコポリマーを含むが、さらにその他のカチオン成分も含むことができる。
【0012】
用語「エピハロヒドリン」は、以下の構造を有する組成物を指す。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Xは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のようなハロゲン原子である。エピクロロヒドリンはエピハロヒドリンの一例である。エピハロヒドリンとアミンは共重合されて、ハロゲン対イオン有する特定のタイプのヒドロキシ−及び第4級アミン−含有ポリマーを形成し得ることに留意されたい。
【0015】
「自己分散性顔料」とは、電荷又は高分子基によって化学的に表面修飾された顔料を指し、この場合、化学的修飾によって顔料は液体ビヒクル中で分散された状態となり及び/又は実質的にその状態に留まるのを支援される。
【0016】
「ポリマー分散性顔料」とは、液体ビヒクル中において分散剤(例えば、ポリマー、オリゴマー、又は界面活性剤とし得る)を利用する顔料、及び/又は顔料を液体ビヒクル中に分散させたり及び/又は実質的にその状態に留まらせるために物理的コーティングを利用する顔料を指す。
【0017】
数値又は範囲についていう用語「約」は、測定実施時に起こり得る実験誤差から生ずる値も包含するものとする。
【0018】
本書においては、比、濃度、量、分子サイズ等のような数値を範囲形式で提示する場合がある。そのような範囲形式は、便利且つ簡潔のために用いるものであり、範囲の限界として明記された数値を含むだけでなく、各数値及び副範囲があたかも明記されているかのようにその範囲内に包含される個別の数値又は副範囲を全て包含するものと柔軟に解釈すべきことを理解されたい。例えば、約1wt%〜約20wt%という重量範囲は、1wt%〜約20wt%という明記された濃度限界を含むだけでなく、2wt、3wt%、4wt%のような個別濃度、及び5wt%〜15wt%、10wt%〜20wt%等のような副範囲も含むものと解釈すべきである。
【0019】
このことを銘記して、本発明は、インクジェットイメージング分野に関する。より詳細には、本発明は、耐久性のあるインクジェットインク画像を印刷するためのシステムに関し、当該システムは、インクジェットインクを収容する第1のインクジェットペンと、定着剤組成物を収容する第2のインクジェットペンを具備することができる。当該インクジェットインクは、第1液体ビヒクルと着色剤を含むことができる。定着剤組成物は、第2液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーを含むことができる。こうして、基材上のインクジェットインクに関して定着剤組成物を上刷り又は下刷りすると、耐久性のある画像が形成される。
【0020】
他の実施形態では、耐久性のあるインクジェットインク画像を印刷する方法は、基材上にインクジェットインクを噴射すること、並びに定着剤組成物を基材上に噴射することを包含し得る。当該インクジェットインクは、第1液体ビヒクルと着色剤を含むことができる。定着剤組成物は、第2液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーを含むことができる。この実施形態では、インクジェットインクは基材上の定着剤組成物に関して上刷り又は下刷りすることができる。
【0021】
他の実施形態では、定着剤組成物は、水性液体ビヒクルと、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーとから構成することができる。当該定着剤組成物は、インクジェット可能であり且つ顔料及び染料着色剤を含まないように構成することができる。
【0022】
ここに記載するシステム、方法、及び組成物の各々に関していえば、一実施形態では、定着剤組成物(及び任意に、インクジェットインク組成物)は、サーマルインクジェット機器から射出又は噴射できるよう構成することができる。サーマルインクジェットシステムは、それらの噴射特性において圧電インクジェットシステムとは全く異なっている。従って、圧電インクジェットシステムにおける使用に有用なポリマーが、サーマルインクジェットインクシステムでの使用に必ずしも有用とは限らない。しかしながら、その逆は必ずしも真ではない。換言すれば、サーマルインクジェットインクシステムでうまく機能するポリマーは、圧電システムに対しても逆の場合よりは機能しそうである。このように、サーマルインクジェットシステムは圧電インクジェットシステムより寛容ではないため、サーマルインクジェットシステムに用いるポリマーの選択は、多くの場合、より注意を要する。従って、本発明のインクジェットインク及び定着剤組成物の両方に用いられるポリマー及びその他の成分は、圧電インクジェットインクシステムに対しても同様に機能するとはいえ、サーマルインクジェットシステム用として特に適している。換言すれば、サーマルインクジェット機器という比較的繊細なシステムにおいてさえ、エピハロヒドリンとアミンのコポリマーは、当分野で現在知られている他のカチオンコポリマーと比較して、許容し得るデキャップ特性でもって効率的に噴射され得る。例えば、約4〜9の液滴容積にて印刷されたエピクロロヒドリンとジメチルアミンのコポリマー(SNF FloergerからのFloquat FL−14)は、(Aveciaからの)ポリ(ヘキサメチレングアニジン)、(Aldrichからの)ポリ(DADMAC)、又はポリ(ビニルアミン)(BASFからのLupamin 1595)を含む定着剤組成物と比較して、より優れたデキャップ特性を示す。
【0023】
本発明の実施形態に従って当該コポリマーを生成するのに用いるアミン組成物を選択する場合、第1級及び第2級アミンを使用するのが好ましいことに留意されたい。ジメチルアミンのような第2級アミンは線状コポリマーを調製する際に有用であり、一方、モノメチルアミンのような第1級アミンはコポリマー中に分枝を付加することができる。従って、第1級アミンと第2級アミンの両方を含有させることで、コポリマーの或るグループは線状共重合を促進する傾向があり、一方、コポリマーの他のグループは分枝を導入する傾向がある。全てを第1級アミンとすることで、その分枝は、第1級アミンと第2級アミンの両方を一緒に導入する実施形態の場合よりもはるかに顕著であろう。一実施形態では、コポリマーのアミン成分として第1級アミンと第2級アミンの両方を含有させる場合、第2級アミン対第1級アミンのモル比は、約100:1〜10:1とし得、それによって所望の割合にて分枝をもたらすことができる。
【0024】
本発明の実施形態に従って調製することのできる例示的な定着剤組成物は、50wt%〜95wt%の水と、5wt%〜35wt%の水溶性共溶媒(任意に、水より低い蒸気圧を有するもの)と、0wt%〜5wt%(より詳細には、0.05wt%〜2wt%)の水混和性界面活性剤と、0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのコポリマーとを含み得る。当該アミンは、上述のように、第2級アミンとしたり、又は第1級アミンと第2級アミンの組合せとし得る。エピハロヒドリンとアミンのコポリマーを選択する場合、その分子量の範囲は、50wt%水溶液(50wt%の水と50wt%のコポリマー)の粘度が室温にて5〜10000cpの粘度範囲を有するようなものとし得る。他の実施形態では、その分子量の範囲は、50wt%水溶液(50wt%の水と50wt%のコポリマー)の粘度が室温にて10〜100cpの粘度範囲を有するようなものとし得る。この(粘度)規定は、これらの種類のポリマーでは実際の分子量を決定するのが困難であるため用いられる。
【0025】
エピハロヒドリンとアミンのコポリマーに加えて、他のカチオン成分もまた、定着剤組成物に含有させ得る。例えば、定着剤組成物は、多価塩、他のカチオンポリマー又はコポリマー等のような、第2のカチオン成分を含み得る。使用し得る例示的な多価塩としては、多価金属硝酸塩、EDTA塩、ホスホニウムハライド塩、有機酸の塩、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
インクジェットインクに関しては、サーマルインクジェットインク技術における使用に有用な多数の成分を含有させ得る。例えば、当該インクの液体ビヒクルは、有効量の水、例えば、50wt%〜95wt%の水と、0wt%〜5wt%(好ましくは、0.05wt%〜5wt%)の界面活性剤と、5%〜50%の共溶媒と、0wt%〜2wt%の殺生物剤とから構成することができる。液体ビヒクル成分に関連して本書に記載した他の成分もまた含有させることができる。複数の溶媒、複数の界面活性剤等のように、単一種類について複数の液体ビヒクル成分を含有させることもできる。
【0027】
使用し得る着色剤に関しては、染料及び/又は顔料は、本発明の定着剤組成物と併用することによって利益を得ることができる。アニオン染料を特に対象とするが、定着剤組成物のカチオン成分と適切に相互作用し得る染料は何れも用いることができる。さらに、自己分散性顔料及び/又は分散剤若しくは高分子分散性顔料のような、種々のタイプの顔料も用いることができる。分散剤又は高分子分散性顔料を用いる場合、液体ビヒクルは、当業者に周知のように、さらに分散剤を含み得るか、又は顔料を分散剤で物理的に被覆し得る。他方、自己分散性顔料は、その分散剤組成物が、典型的に、共有結合によって又は物理的に顔料に結合されているため、別個の分散剤組成物は不要である。
【0028】
上述のように、本発明の方法及びシステムは、上刷り又は下刷りと呼ばれる印刷技術により利益を得る。従って、定着剤組成物をインクジェットインクに関して下刷りしたり、あるいはまた、定着剤組成物をインクジェットインクに関して上刷りしたりすることができる。
【0029】
実施例
以下の実施例において、現在最もよく知られている本発明の実施形態を説明する。ここで、以下は、本発明の原理の応用についての単なる例示又は説明に過ぎないことを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の改良及び代替の組成物、方法、並びにシステムが当業者によって案出されよう。添付の特許請求の範囲は、そのような改良及び代替物を網羅するものである。以上、特定のものに関して本発明を説明してきたが、以下の実施例は、現時点で最も実用的であり且つ好ましい実施形態と思われるものに関してさらに本発明を詳述するものである。
【実施例1】
【0030】
インクジェットインク組成物の調製
以下の表1に従って、顔料及び染料を含むインクを調製した。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
EPI/DMAコポリマーを含む定着剤液の調製
以下の表2に従って、エピクロロヒドリンとジメチルアミン(EPI/DMA)のコポリマーを含むインクジェット可能な定着剤組成物を調製した。
【0033】
【表2】

【実施例3】
【0034】
定着剤組成物を使用した場合及び使用しない場合の耐水性
実施例2記載の定着剤組成物をdp6当たり6pL印刷し、次いで実施例1記載のインクジェットインクをdp6当たり12pL上刷りすることによって、シアンのべた刷り領域(1cm x 2cmの長方形)を設けた(ここで、dp6は(1/600 インチ))。この被覆率(coverage)において、色は許容し得る外観を有しており、この場合、シアン飽和度(s=c/L)は、Fortune Matte上で〜1.2乃至Exact Matte上で〜1.0の範囲にある。比較のため、同じシアンのベタ刷り領域を作製した。但し、定着剤組成物は使用しなかった。この同じ工程を、媒体の種々の頁に関して行い、そして本実施例の耐水性試験を行う前に、その各頁を異なる時間だけ放置した。
【0035】
耐水性試験は、印刷した各頁を水平面から45°傾斜させ、そして小量(25μL)の水を各カラーマス上へ滴下することにより実施した。シアン領域上に水を流し、シートから流出させ、そしてそのシートを乾燥させた。そのマスの下の(最初は白色の)領域について、水滴による転移の測定値をミリODで(媒体のODを差し引いて)記録した。従って、数値が大きいほど、印刷媒体の印刷領域から白色領域へのインクの転移が大きいことを示す。換言すれば、数値が大きいほど耐水性が劣ることを示す。以下の表3a〜3cに、その結果を示す。
【0036】
【表3】

【0037】
表3a〜3cから明らかなように、EPI/DMA定着剤を用いずに同じように印刷した画像と比較して、EPI/DMA定着剤を用いることで水滴下性能が顕著に改善される。
【実施例4】
【0038】
他のコポリマー定着剤を上回るEPI/DMA含有定着剤のデキャップ性能
EPI/DMA含有定着剤(実施例2)のデキャップ性能が、定着剤(使用したカチオンポリマーが異なることを除き、実施例2に記載のものと同様に調製)に一般に使用される他の既知のポリマーと比べて優るかどうかを決定すべく、デキャップ性能試験を実施した。デキャップ試験は、印刷ヘッドを種々の休止時間、即ち、60秒及び180秒、にわたって動作させず且つキャップが外れた状態にして実行した。これらの休止時間に続いて、印刷ヘッドを頁を横切って左右に動かしながら濃いベタ刷り領域を印刷した。ペンが満足に回復し終わるところ、即ち、大部分のノズルが十分射出し始める当該ベタ領域になるまでの距離を記録した。この数値が小さいほど、デキャップ性能は優れている。EPI/DMA含有の定着剤組成物は、以下の表4に示すように、通常用いられる他の4つの定着剤ポリマーに匹敵するか又はより優れたデキャップ性能を有していた。
【0039】
【表4】

【0040】
表4から分かるように、EPI/DMA含有定着剤のデキャップ性能は、ポリ(エチレンイミン)のみがEPI/DMAポリマーの性能に釣り合っただけで、その他の各ポリマーよりは優れていた。
【0041】
特定の好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく種々の修正、変更、省略、並びに置換をなし得ることは、当業者には明らかであろう。それ故、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐久性のあるインクジェットインク画像を印刷する方法であって:
a)基材上に、
i) 第1液体ビヒクルと、
ii)着色剤と
を含むインクジェットインクを噴射すること;及び
b)基材上に、
i) 第2液体ビヒクルと、
ii)0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーと
を含む定着剤組成物を噴射すること、
を包含し、前記インクジェットインクが、前記基材上の前記定着剤組成物に関して上刷り又は下刷りされる、方法。
【請求項2】
前記噴射する工程が、サーマルインクジェットペンを使用することによる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミンが第2級アミンであり、前記第2級アミンがジメチルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アミンが第1級アミンと第2級アミンの組合せであり、前記第1級アミンがモノメチルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記定着剤組成物が、さらに、多価金属硝酸塩、EDTA塩、ホスホニウムハライド塩、有機酸の塩、及びそれらの組合せから成る群から選択される第2のカチオン成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオンコポリマーが、第2液体ビヒクル中において実質的に可溶化される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
定着剤組成物であって:
(a)水性液体ビヒクルと、
(b)0.5wt%〜5wt%のエピハロヒドリンとアミンのカチオンコポリマーと
を含み、
前記定着剤組成物がインクジェット可能であり且つ顔料及び染料の着色剤を含まない、
定着剤組成物。
【請求項8】
前記定着剤組成物が、4〜9の液滴容積にてサーマルインクジェット機器からインクジェット可能である、請求項7に記載の定着剤組成物。
【請求項9】
前記アミンが、第2級アミンである、請求項7に記載の定着剤組成物。
【請求項10】
前記カチオンコポリマーが、線状コポリマーである、請求項9に記載の定着剤組成物。
【請求項11】
前記第2級アミンが、ジメチルアミンである、請求項9に記載の定着剤組成物。
【請求項12】
前記アミンが、第1級アミンと第2級アミンの組合せである、請求項7に記載の定着剤組成物。
【請求項13】
前記第1級アミンが、モノメチルアミンである、請求項12に記載の定着剤組成物。
【請求項14】
前記カチオンコポリマーが、分枝コポリマーである、請求項12に記載の定着剤組成物。
【請求項15】
前記定着剤組成物が、さらに第2のカチオン成分を含む、請求項7に記載の定着剤組成物。

【公表番号】特表2009−509822(P2009−509822A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534520(P2008−534520)
【出願日】平成18年7月29日(2006.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/029160
【国際公開番号】WO2007/040746
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】