説明

改善したシール材用組成物およびその製造方法

【課題】ポリブテンを含むシール材用組成物に関し、塗布箇所のシール性に優れ、また、長期使用に際しても塗布箇所からのポリブテンのブリードアウトを抑制した高機能のシール材用組成物を提供する。
【解決手段】(a)密度0.916〜0.930g/cmでかつMFR4以上のポリエチレン2〜20質量部、(b)数平均分子量が700〜10000のポリブテン98〜80質量部、および(c)炭化水素樹脂2〜20質量部((a)、(b)および(c)の合計を100質量部とする)からなり、60℃における離油度が1週間で0.1%以下であるシール材用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブテンを含むシール材用組成物およびその製造方法に関する。詳しくはポリブテン、ポリエチレンおよび炭化水素樹脂の各成分からなり、ポリブテンのブリードアウトを抑制したシール材用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブテンを含むシール材は、耐アルカリ性に優れるとともに、密着性が高く、各種部材表面に塗布することにより、作業性、耐熱性および密封性に優れたシールを形成することが出来る。
塗布可能なシール材として、例えばアルカリ電池では、アルカリ電解液のクリープ現象や放電による水素ガスの発生による液漏れを防止するため封口部にシール材が使用される。またマンガン乾電池についても、封口部の機密性を保ち、酸素の進入と電解液の漏液を防止するため封口部にシール材が用いられている。
【0003】
本発明者らは、すでに、電池封口部の間隙を封止する、塗布可能なシール材として、結晶性ポリプロピレン0.5〜10重量%を含む数平均分子量700〜10000であるポリブテンを主とする重合体からなるシール材を提案した(特許文献1:特開昭62―154556号公報)。
【0004】
さらに、塗布可能なシール材に光学的な隠蔽性を付与することにより、製品の意匠性を向上させ、またシール部を容易に識別することによる肉眼的・光学的検査工程の効率化が図られてきた。
本発明者らは、上記課題に対して、ポリブテン98〜80質量部と密度0.93g/cm以下のポリエチレン2〜20質量部(両者を合わせて100質量部)からなる分散媒、およびその中に分散した無機顔料0.1〜10質量部からなる組成物をシール材用組成物として使用することを提案した(特許文献2:特開2003−268293号公報)。その中において、使用するポリブテンは数平均分子量が700〜10000のものであることが開示されている。さらに本発明者らは、数平均分子量を1000〜2500に限定することで、塗布作業性および耐熱性の優れたシール材用組成物を得られることを提案した(特許文献3:特開2009−221421号公報)。
【0005】
さらに、近年、電池の大容量化、環境あるいは省エネルギー化等への要請により、より厳しい環境での使用へのニーズが高まっている。こうした中で、ポリブテンを含むシール材の耐久性の向上、より具体的には、機密性とともに、ポリブテン成分のブリードの抑制が求められている。その目的のため、本発明者らは、ポリブテンとポリエチレンの相溶性を検討した結果、特許文献2の組成物において、数平均分子量が1200超のポリブテンを単独で使用すると、ブリードしやすいことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−154556号公報
【特許文献2】特開2003−268293号公報
【特許文献3】特開2009−221421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ポリブテンとポリエチレンの相溶性を改善することでブリードを抑制した、シール性、塗布性に優れたシール材用組成物を提供することにある。さらには、ポリオレフィン系分散媒中の無機顔料の分散状態を均一にし、かつ安定化することにより、上記意匠性および/または前記検査工程への対応性に優れた、シール性、塗布性に加えて隠蔽性に優れたシール材用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、グリースの油分離試験である離油度試験を行なうことでシール材用組成物からのポリブテン成分の分離を的確に評価できることを見出した。さらに試験条件を45℃、二週間とすることにより、ポリブテンのブリードアウトの定量的な評価法を確立した。さらに、試験条件を60℃、一週間とすることで、よりシビアなブリード条件での評価方法を確立した。その結果として、特許文献2の組成物において、数平均分子量が1200超のポリブテンを単独で使用した際には、当該ポリブテンとポリエチレンの相溶性が悪いことに由来すると思われるが、ブリードしやすく、使用に問題があることがわかった。
そこで、相溶性をさらに改善させることを目的として検討を押し進めたところ、炭化水素樹脂を配合することによりポリブテンがブリードしにくくなることがわかった。この効果は、ポリブテンとポリエチレンとの相溶性がより一層改善されたことによるものと推定される。
【0009】
すなわち本発明は、(a)密度0.916〜0.930g/cmでかつMFR4以上のポリエチレン2〜20質量部、(b)数平均分子量が700〜10000のポリブテン98〜80質量部、および(c)炭化水素樹脂2〜20質量部((a)、(b)および(c)の合計を100質量部とする)からなり、60℃における離油度が1週間で0.1%以下であるシール材用組成物に関する。
【0010】
また本発明は、前記(c)炭化水素樹脂が脂環式炭化水素樹脂および/または脂肪族炭化水素樹脂である前記シール材用組成物に関する。
【0011】
また本発明は、前記シール材用組成物100質量部を分散剤とし、無機顔料0.1〜10質量部を分散させてなる前記シール材用組成物に関する。
【0012】
また本発明は、(a)密度0.916〜0.930g/cmでかつMFR4以上のポリエチレン2〜20質量部、(b)数平均分子量が700〜10000のポリブテン98〜80質量部、および(c)炭化水素樹脂2〜20質量部((a)、(b)および(c)の合計を100質量部とする)からなる組成物を120〜200℃で混合したのち、1℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする60℃における離油度が1週間で0.1%以下であるシール材用組成物の製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、前記(c)炭化水素樹脂が脂環式炭化水素樹脂および/または脂肪族炭化水素樹脂である前記シール材用組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシール材用組成物は、ポリブテンとポリエチレンの相溶性がより一層改善されるためポリブテンのブリードアウトが抑制される。そのため、本発明のシール材用組成物を用いることにより、塗布箇所からシール材用組成物が流れ出したり剥がれたり、また軽質分がブリードすることも無い、信頼性の高いシール膜を与える。
また、無機顔料をシール材用組成物に分散させることで、塗布箇所の塗布剤の存否を容易に確認することが出来る。それにより製品の組み立て時等において、塗布状況を肉眼的・光学的に容易に検査することが出来、それにより組立工程の作業効率と信頼性向上が図られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明する。
【0016】
本発明のシール材用組成物において(a)成分として用いられる密度0.916〜0.930g/cmでかつMFR4以上のポリエチレンは、主として、シール時の形状保持性、無機顔料の分散媒中での均一分散性および沈降防止性に関与する。密度0.916〜0.930g/cmのポリエチレンは、非晶部を多く含むためにポリブテンとの相溶性に優れ、また、分岐を数多く含むことから無機顔料の分散状態を均一化し、かつ、安定化する効果が大きいものと考えられる。密度は0.916〜0.930g/cmであることが必要であるが、好ましくは密度0.918〜0.930g/cm、さらに好ましくは密度0.920〜0.930g/cmである。密度が0.930g/cmを超えるポリエチレンは非晶部が少なくなり、ポリブテンとの相溶性を悪化させるため好ましくない。また密度が0.916g/cmに満たないと、得られるシール材用組成物の流動性が大きくなるなど実用上問題が生ずる。
【0017】
密度0.916〜0.930g/cmのポリエチレンの中でも、DSCで測定される融点(JIS−K−7121)が120℃以下であるものが好ましく、また、非晶部に富むポリエチレン、非晶部が多くかつ長鎖分岐を数多く含有する高圧法ポリエチレン、あるいはポリブテンとの相溶性に優れるMFR(180℃/2.16kg荷重(JIS−K−6760))が5から25であるポリエチレンが好ましい。当該ポリエチレンは、エチレンと他のオレフィンとの共重合体(例えば、エチレンと他のα−オレフィン)、あるいは酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル等との共重合体等であってもよい。しかしながらこれら共重合体に有っては、極性モノマーの含有率が高いとポリブテンと相溶し難くなるので、ポリブテンと相溶する範囲で共重合体を選択する必要がある。これらポリエチレンは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明のシール材用組成物において、(a)成分は分散媒(ポリブテン、ポリエチレンおよび炭化水素樹脂からなる組成物)100質量部中に2〜20質量部含まれることが必要である。2質量部より少ないとポリエチレンの添加効果が無く、形状保持性を維持することが困難となり、20質量部を超えると得られるシール材用組成物の粘度が高過ぎて被着体への塗布作業性が困難となる。
【0019】
本発明のシール材用組成物においては、(b)成分として数平均分子量が700〜10000のポリブテンが用いられる。
ポリブテンはイソブテンを主たるモノマーとして重合してなる重合体であって、イソブテンのホモポリマーまたはイソブテンとn−ブテンのコポリマーなどがある。数平均分子量が700〜10000の範囲のポリブテンは、市場から容易に入手できる(例えば、JX日鉱日石エネルギー(株)製:日石ポリブテン等。)
また、公知の製造方法で得られるものは、数平均分子量が上記の範囲のものであれば全て使用できる。ポリブテンは、主として、分散媒体に剪断応力が加わった時の流動性と、シールした状態での形状保持性に関与する。
【0020】
(b)成分のポリブテンは数平均分子量が700以上10000以下であることが必要である。望ましくは800以上3500以下、さらに望ましくは900以上2500以下である。(b)成分のポリブテンの数平均分子量が700を下回ると得られるシール材用組成物は耐熱性に問題があり、低い温度で塗布膜からポリブテンがブリードし使用に耐えない。さらに、溶融粘度が低くなりすぎ塗布作業性に問題が生ずる。また、数平均分子量が10000を超えると、得られる塗布用隠蔽組成物は溶融粘度が高すぎて被着体への塗布作業が困難になる。ポリブテンは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0021】
(b)成分のポリブテンは分散媒(ポリブテン、ポリエチレンおよび炭化水素樹脂からなる組成物)100質量部中に98〜80質量部含まれることが必要である。80質量部未満では得られるシール材用組成物の粘度が高過ぎて被着体への塗布作業性が困難となり好ましくない。一方98質量部を超えるとポリエチレンの添加効果が無くなり、形状保持性を維持することが困難となり好ましくない。
【0022】
本発明のシール材用組成物においては、(c)成分として炭化水素樹脂が用いられる。炭化水素樹脂を配合することにより、ポリブテンとポリエチレンの相溶性が改善し、ポリブテンのブリードが抑制されたシール材用組成物を得ることが出来る。炭化水素樹脂を用いずにシール材用組成物を製造した場合、ポリブテンのブリードが大きく、十分なシール性が得られない。
【0023】
炭化水素樹脂とは、石油類の分解、精製の際に得られる不飽和炭化水素含有留分をフリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合して得られるものである。この方法で得られる炭化水素樹脂としては、沸点範囲が−20℃〜−100℃の不飽和炭化水素含有留分を重合して得られる脂肪族炭化水素樹脂、沸点範囲が140℃〜280℃の不飽和芳香族炭化水素含有留分を重合して得られる芳香族炭化水素樹脂、両方の不飽和炭化水素含有留分を共重合して得られる脂肪族芳香族共重合炭化水素樹脂、および脂肪族系不飽和炭化水素含有留分に加熱処理を施してジエン類、あるいはシクロジエン類を環化二量化させ、例えば、ジシクロペンタジエンに変化させたのち重合して得られる脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。
本発明において(c)成分の炭化水素樹脂としては、好ましくは脂環式炭化水素樹脂および/または脂肪族炭化水素樹脂が用いられる。脂環式炭化水素樹脂としてはシクロペンタジエンあるいはアルキルシクロペンタジエンの如き脂環式オレフィン系化合物を、酸触媒を用いて重合して得た樹脂、あるいはアルケニル芳香族炭化水素を、酸触媒を用いて重合した後、芳香環を核水素化して得た樹脂などが挙げられる。これらの脂環式炭化水素樹脂は、例えば商品名Escorez5300(Exxon Mobil Chemical社製)として市場から入手できる。
また(c)成分としては、軟化点が90〜110℃の炭化水素樹脂が好ましく用いられる。軟化点が低すぎると耐フロー性が劣り好ましくなく、また高すぎると溶融粘度が高くなりすぎハンドリングに問題が生じる。
【0024】
本発明のシール材用組成物において、(c)成分の炭化水素樹脂の配合割合は、組成物全体(ポリブテン、ポリエチレンおよび炭化水素樹脂からなる組成物)100質量部中に2〜20質量部、好ましくは3〜15質量部、さらに好ましくは5〜10質量部の範囲である。配合割合が2質量部よりも少ないと粘着性組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、塗布性に問題が生じ、20質量部よりも多くなると溶融粘度が低くなりすぎ、その結果、シール材用組成物の耐フロー性が劣り好ましくない。
【0025】
本発明のシール材用組成物には、光学的隠蔽性を持たせるため、さらに無機顔料を(a)〜(c)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部を分散させて使用することができる。
無機顔料としては、この分野に使用される公知のものが使用できる。例えば、二酸化チタン(アナターゼ型およびルチル型いずれでもよい。)、二酸化チタン被覆雲母、酸化亜鉛、モリブデンホワイト、リトポン、バライト、炭酸カルシウム、鉛白、タルク等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、モリブデン赤、チタン酸鉄、銀朱、カドミウムレッド、アンチモン赤等の無機赤色顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土、チタニウムイエロー、カドミウムイエロー、ストロンチウムイエロー、ジンククロメート等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、チタンブラック等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料;エメラルド・グリーン、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料等が挙げられ、これらは一種または二種以上を混合したものも含まれる。
【0026】
無機顔料は、分散媒中での均一分散性および沈降防止の観点から、比重が6以下のものが好ましい。特に、平均粒子径1μm以下で、かつ比重が5以下のものが好ましい。無機顔料の中では二酸化チタンがこれらの条件を満たすことに加え、隠蔽力が高いため、特に好ましい。
【0027】
無機顔料の配合量は、分散媒100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲とするのがよい。0.1質量部未満であると充分な隠蔽性を付与できず、10質量部を超えると塗布性が低下するため好ましくない。
【0028】
本発明のシール材用組成物は、上記のポリブテン、ポリエチレンおよび炭化水素樹脂を混合し、またはこれらに無機顔料を混合して分散させることにより製造する。これらの混合方法、混合に用いる機器に制限は無く、公知の方法から任意に選択でき。また、製造時に、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料の分散助剤、チキソトロピー剤、湿潤剤、有機着色剤、有機顔料、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤等を添加してもよい。
【0029】
無機顔料を分散媒に分散させる方法としては、当該無機顔料を当該分散媒に直接添加して分散させても良いが、製造工程において、当該ポリブテンおよび/または当該ポリエチレンを分散媒とし無機顔料を含有するマスターバッチを使用する方法も好ましく用いられる。マスターバッチ法は、分散媒中に無機顔料を均一に分散する際の作業の効率化や均一性の向上に寄与する。
【0030】
ポリブテン、ポリエチレンおよび炭化水素樹脂の混合、あるいはさらに無機顔料を分散させる場合の混合条件は、120〜200℃、好ましくは140〜170℃で、通常3〜17時間撹拌することにより行われる。混合されたシール材用組成物は次いで室温まで冷却する。
【0031】
本発明のシール材用組成物が有する優れた効果は、上述してきた本発明に係る各構成材料の特定要件に加え、冷却条件が本発明の効果を発揮させるうえで特に重要な要素である。
冷却速度は1℃/分以上であることが必要であり、好ましくは3℃/分以上、より好ましくは5℃/分以上である。冷却速度を1℃/分以上とすることにより粘着剤の耐フロー性が大きく向上する。その理由は明らかではないが、冷却速度を高めることにより高圧法ポリエチレンの分岐が大きく広げた態様となり、見かけ上、ポリエチレンが大きな空間体積を専有して存在し、その結果、耐ブリード性が向上するものと推察される。
逆に、1℃/分より小さい冷却速度で緩慢に冷却すると、高圧法ポリエチレンによるブリード抑制効果が失われるようになる。その理由として、小さい冷却速度にするとポリエチレンの分岐が小さく広げた態様になり、見かけ上、ポリエチレンが小さな空間体積で存在し、分子間相互作用の発現が乏しくなると考えられる。
【0032】
冷却方法は、1℃/分以上の冷却速度が保てるならば特に制限が無い。好ましくは、ジャケットを有する混合槽内で溶融混練が行われていた場合であれば、溶融混練中にジャケット内を流通していた熱媒に替えて冷媒を流通させる冷却方法等の公知の機械的方法を用いることができる。
【0033】
本発明のシール材用組成物は、JIS−K−2220に準拠して60℃に保った恒温槽で1週間経過した時の離油度が0.1%以下であることが特徴である。60℃とすることで、促進条件となりよりブリードアウトが起こりやすい状況となる。すなわち、本発明のシール材用組成物はポリブテンとポリエチレンの相溶性がきわめて良好であり、ポリブテンがブリードアウトすることがなく、成型加工性に優れている。
【0034】
本発明のシール材用組成物は、例えばロールやハケ等による一般的な塗布に限らず、浸漬による展開塗布、充填あるいは注入等による塗布等、各種の塗膜を形成する方法を用いることができる。すなわち、本発明のシール材用組成物は適宜の剪断応力下に十分な流動性を有しているので、塗布の他、浸漬、ハケ塗り、注入などのいずれの方法によっても使用することができる。これらを各種材料表面に塗布展開することにより、その優れた隠蔽性やシール性さらには耐熱性により、意匠性や識別性を高め、例えばマーカー等の用途や、乾電池等の封止材等の用途等としての使用が可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例と比較例とを対比して本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、使用した各成分は次のとおりである。
【0036】
(1)ポリブテン
ナフサ分解によるエチレン製造装置から得られたC4留分からブタジエンを抽出した残りのラフィネート留分をイソブタンで希釈したものを原料とした。ガスクロマトグラフィーで分析した原料組成を表1に示す。これをアルミナに流通させて脱水および不純物除去処理を行った。この原料を内容積500mlのオートクレーブに、毎時280gで供給した。この供給原料に、イソブテンオリゴマー(2〜5量体までの混合物)に分散させた塩化アルミニウムを、対ブチレン類0.1質量%となるよう供給し、反応圧力0.3MPaのもと、所定の反応温度にて連続的に重合を行なった。重合液は触媒除去後に蒸留精製を行なった。使用したポリブテンA〜Cの反応温度および分子量を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
(2)ポリエチレン
ポリエチレン:LJ−600(日本ポリエチレン(株)製)、MFR=5.5、密度=0.920g/cm
【0040】
(3)炭化水素樹脂
炭化水素樹脂A;Exxon Mobil Chemical社製Escorez5300、軟化点105℃
炭化水素樹脂B;Exxon Mobil Chemical社製Escorez1304、軟化点100℃
【0041】
(4)無機顔料
二酸化チタン:KA−10(アナターゼ型)(チタン工業(株)製)、比重3.9、平均粒径=0.3〜0.6μm
(5)酸化防止剤
高分子フェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(BASF(株)製)
【0042】
(実施例1〜5、比較例1〜2)
[シール材用組成物の製造]
500ccビーカーに表1に記載の成分をそれぞれ所定量取り、攪拌しながら140℃まで加温し、同温度で攪拌を630rpmに保持した。次いで酸化防止剤および必要に応じて無機顔料を所定量添加し、ビーカーの内容物が均一になるまで攪拌を継続し、シール材用組成物を得た。
【0043】
[シール材用組成物の評価試験]
[a]外観
ポリエチレン、ポリブテンおよび炭化水素樹脂が完全に相溶し、安定な混合物であることを調べるため、以下の操作を行う。
(1)約160℃に加熱した試料を500mlのガラスビーカーに約400g採取する。
(2)室温まで冷却し、試料を目視で、色、異物の有無を観察した。
[b]溶融粘度
シール材用組成物の塗布性能を評価するため、JIS−K−7117に準拠して160℃の溶融粘度を測定する。
[c]離油度試験
JIS−K−2220に準拠して60℃に保った恒温槽で1週間経過した時の離油度を測定する。
【0044】
[シール材用組成物の評価結果]
評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、本発明のシール材用組成物はポリエチレンとポリブテンが、炭化水素樹脂の添加により良く相溶しており、60℃での離油度試験も良好でポリブテンのブリードも観察されない。それに対し、炭化水素樹脂を添加していないものは、60℃での離油度試験においてブリードが見られ、使用に問題があった(比較例1)。また、数平均分子量が(b)成分よりも小さいポリブテンを用いた組成物(比較例2)は溶融粘度が低すぎ、塗布作業時に塗布用組成物が流れ出す虞があった。
なお、前記製造方法で各組成物を製造し、製造完了後140℃の状態で攪拌を停止し、10分間の顔料沈降の状況を観察したが、何れの実施例の組成物については顔料の沈降は認められず、顔料の安定分散に関しては全く問題なかった。
【0045】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のシール材用組成物は、塗布箇所のシール性に優れ、また長期使用に際しても塗布箇所からのポリブテンのブリードアウトが抑制され、密封性に優れたシールを形成するため産業上のきわめて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)密度0.916〜0.930g/cmでかつMFR4以上のポリエチレン2〜20質量部、(b)数平均分子量が700〜10000のポリブテン98〜80質量部、および(c)炭化水素樹脂2〜20質量部((a)、(b)および(c)の合計を100質量部とする)からなり、60℃における離油度が1週間で0.1%以下であるシール材用組成物。
【請求項2】
前記(c)炭化水素樹脂が脂環式炭化水素樹脂および/または脂肪族炭化水素樹脂である請求項1に記載のシール材用組成物。
【請求項3】
前記シール材用組成物100質量部を分散剤とし、無機顔料0.1〜10質量部を分散させてなる請求項1または2に記載のシール材用組成物。
【請求項4】
(a)密度0.916〜0.930g/cmでかつMFR4以上のポリエチレン2〜20質量部、(b)数平均分子量が700〜10000のポリブテン98〜80質量部、および(c)炭化水素樹脂2〜20質量部((a)、(b)および(c)の合計を100質量部とする)からなる組成物を120〜200℃で混合したのち、1℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする60℃における離油度が1週間で0.1%以下であるシール材用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(c)炭化水素樹脂が脂環式炭化水素樹脂および/または脂肪族炭化水素樹脂である請求項4記載のシール材用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−100404(P2013−100404A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244732(P2011−244732)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】