説明

改良された機械特性及び加工性を有するブローフィルムを製造するためのポリエチレン成形組成物

本発明は、特に8〜200μmの範囲の厚さを有するフィルムをブロー成形するのに好適な多峰性モル質量分布を有するポリエチレン成形組成物に関する。本成形組成物は、23℃の温度において0.948〜0.953g/cm3の範囲の密度、及び0.10〜0.50dg/分の範囲の押出後の最終生成物のMFR190/5を有する。この組成物は、第1の分子量を有するホモポリマーAで形成されている第1のエチレンポリマーフラクション30〜60重量%;更なるホモポリマー、又はエチレンと4〜8個の炭素原子を有するオレフィンの群からの少なくとも一つの第1のコモノマーとの第1のコポリマーBで形成されており、第1のコポリマーBが、第1の分子量よりも高い第2の分子量を有する、第2のエチレンポリマーフラクション22〜40重量%;及び、第2の分子量よりも高い第3の分子量を有する第2のコポリマーCで形成されている第3のエチレンポリマーフラクション10〜30重量%;を含む。本発明の成形組成物によって、加工性と機械特性との間の良好なバランスを有するフィルムを製造することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多峰性モル質量分布を有するポリエチレン(PE)成形組成物、即ち相違するモル質量を有する複数のエチレンポリマーフラクションを含む成形組成物に関する。
本明細書及び特許請求の範囲において、他に示さない限りにおいて、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、即ち同種のモノマーから誘導された繰り返しモノマー単位を含むポリマーと、コポリマー、即ち少なくとも二つの異なる種のモノマーから誘導された繰り返しモノマー単位を含むポリマー(この場合においては、用いられる異なる種のモノマーの数に応じて二成分コポリマー、ターポリマー等と称される)の両方を指すように用いる。
【0002】
本発明の多峰性PE成形組成物は、ブローフィルムを製造するために特に有用である。本発明は、また、このPE成形組成物を製造するための方法にも関する。本発明は、更に、ブローフィルム法によって上記記載の成形組成物から製造されるブローフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンは、ポリエチレンの機械強度、加工性、良好な耐化学薬品性、及び低い固有の重量のために、ブローフィルム押出法によってフィルムを製造するために大規模に用いられている。例えば、ヨーロッパ特許EP−A−0603935においては、二峰性モル質量分布を有し、良好な機械特性を有するフィルム及び成形体を製造するのに好適なポリエチレンをベースとする成形組成物が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二峰性ポリエチレンから製造された従来技術のフィルムは、特に加工中のバブル安定性に関して十分な加工性を同時に有さず、十分な機械特性を有しない。改良されたバブル安定性を得るための試みは、必然的に、特にASTM D1709−方法Aにしたがって測定したダートドロップ衝撃強度(DDI)の点で機械特性の許容できない悪化をもたらし、一方、改良された機械特性を得るための試みは、必然的に、バブル安定性の許容できない悪化をもたらす。
【0005】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、通常は互いに対立する、特にフィルムのバブル安定性の点におけるブローフィルム押出法における加工性と、特にDDIの点における機械的強度との間の改良されたバランスを有する新規なPE成形組成物を提供することである。更に、本発明の新規なPE成形組成物から製造されるフィルムの特にDDIとして表される機械的強度は、20μmの厚さを有するフィルムに関して400gより低くなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書及び特許請求の範囲の目的のためには、他に示さない限りにおいて、量、分量、パーセントなどを表す全ての数は、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものと理解される。また、全ての範囲は、開示された最大点及び最小点の任意の組み合わせを含み、その中の任意の中間範囲を含み、ここで具体的に列挙することも列挙しないこともできる。
【0007】
上記記載の技術的な課題は、多峰性モル質量分布、23℃の温度において0.948〜0.953g/cm3の範囲の密度、及び0.10〜0.50dg/分の範囲の押出後の最終生成物のMFR190/5を有し、成形組成物の全重量を基準として、
−第1の分子量を有するエチレンホモポリマーAで形成されている第1のエチレンポリマーフラクション30〜60重量%;
−更なるホモポリマー、又はエチレンと4〜8個の炭素原子を有するオレフィンの群からの少なくとも一つの第1のコモノマーとの第1のコポリマーBで形成されており、該第1のコポリマーBが、該第1の分子量よりも高い第2の分子量を有する、第2のエチレンポリマーフラクション22〜40重量%;及び
−エチレンと少なくとも一つの第2のコモノマーとの第2のコポリマーCで形成されており、該第2のコポリマーCが、該第2の分子量よりも高い第3の分子量を有する、第3のエチレンポリマーフラクション10〜30重量%;
を含むPE成形組成物によって解決される。
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲において、メルトフローレートMFR190/5は、ISO1133にしたがって、190℃で5kgの負荷下で測定したメルトフローレートである。
有利には、本発明の新規なPE成形組成物から製造されるフィルムは、従来技術のフィルムと比較して、良好なバブル安定性、減少した溶融圧力、及びDDIが20μmの厚さを有するフィルムに関して400gを超えるという意味で適度な機械特性を有する。
【0009】
本発明のポリエチレン成形組成物は、23℃の温度において0.948〜0.953g/cm3、好ましくは0.948〜0.952g/cm3の範囲の密度、及び幅広い三峰性モル質量分布を有する。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、ポリエチレン成形組成物は、
−第1のエチレンポリマーフラクション、即ちホモポリマーA 42〜52重量%;
−第2のエチレンポリマーフラクション、即ち更なるホモポリマー又は第1のコポリマーB 27〜38重量%;及び
−第3のエチレンポリマーフラクション、即ち第2のコポリマーC 15〜25重量%;
を含む。
【0011】
第2のコポリマーBは、好ましくは、エチレンに加えて、予め定められた割合、好ましくは第2のコポリマーBの重量を基準として0.1〜2.0重量%の、4〜8個の炭素原子を有する少なくとも一つの第1のオレフィンコモノマーを含む。
【0012】
かかるコモノマーの例は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び4−メチル−1−ペンテン、並びにこれらの混合物である。
同じように、第2のコポリマーCは、好ましくは、エチレンと、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するオレフィンの群から、より好ましくは上記記載のコモノマーの一覧から選択される少なくとも一つの第2のコモノマーとのコポリマーである。
【0013】
好ましくは、少なくとも一つの第2のコモノマーは、第2のコポリマーCの重量を基準として3〜15重量%の量で存在する。
更に、本発明のPE成形組成物は、0.10〜0.50g/10分、好ましくは0.19〜0.25g/10分の範囲の、ISO1133による押出後の最終生成物のメルトフローレートMFR190/5を有する。
【0014】
好ましくは、本発明のPE成形組成物は、ISO/R1191にしたがってデカリン中135℃の温度で測定して、270〜450cm3/g、特に350〜430cm3/gの範囲の粘度数VN3を有する。
【0015】
以下により詳細に記載する本発明の好ましい態様によって与えられるように、PE成形組成物を、第1段階、第2段階及び第3段階を含む少なくとも三つの逐次重合段階を含むカスケード式重合プロセスによって製造する場合には、本発明の組成物の三峰性は、異なる引き続く重合段階において形成されるエチレンポリマーフラクションのISO/R1191にしたがって測定した粘度数VNによって説明することができる。
【0016】
ここで、異なる粘度数は、以下において説明するように示される。
粘度数VN1は、第1の重合段階の後のポリマーに関して測定される粘度数を示すように用いる。粘度数VN1は、ホモポリマーAの粘度数VNAと同一である。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、粘度数VN1は、60〜110cm3/g、好ましくは60〜110cm3/gの範囲である。
粘度数VN2は、第2の重合段階の後のポリマーに関して測定される粘度数を示すように用いる。したがって、粘度数VN2は、ホモポリマーAと、更なるホモポリマー又は第1のコポリマーBとの混合物の粘度数である。第2の重合段階において形成される更なるホモポリマー又は第1のコポリマーBの粘度数は、数学的にのみ決定することもできる。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、粘度数VN2は、270〜400cm3/g、好ましくは310〜375cm3/gの範囲である。
粘度数VN3は、第3の重合段階の後のポリマーに関して測定される粘度数を示すように用いる。したがって、粘度数VN3は、ホモポリマーA、及び更なるホモポリマー又は第1のコポリマーB、及び第2のコポリマーCの混合物の粘度数である。第3の重合段階において形成される第2のコポリマーCの粘度数は、数学的にのみ決定することもできる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、粘度数VN3は、280〜480cm3/g、特に330〜440cm3/gの範囲である。
本発明のPE成形組成物は、更に、更なる添加剤を含むことができる。かかる添加剤は、例えば、組成物の全重量を基準として、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の量の熱安定剤、酸化防止剤、UV安定剤、光安定剤、金属不活性化剤、ペルオキシド分解性化合物、塩基性共安定剤であるが、全量で0〜50重量%の充填剤、強化材料、可塑剤、滑剤、乳化剤、顔料、蛍光増白剤、難燃剤、静電防止剤、発泡剤、又はこれらの組み合わせを用いることもできる。
【0020】
本発明は、また、エチレン、該少なくとも一つの第1のコモノマー、及び該少なくとも一つの第2のコモノマーを、懸濁液中、好ましくは20〜120℃、より好ましくは70〜90℃、更に好ましくは80〜90℃の範囲の温度、及び好ましくは2〜10barの範囲の圧力において、好ましくはチーグラー触媒の存在下で重合する工程を含む、上記記載のポリエチレン成形組成物の製造方法にも関する。
【0021】
PE成形組成物を製造する方法は、好ましくは、遷移金属化合物、及び共触媒、好ましくは有機アルミニウム化合物を含む高活性チーグラー触媒を含む触媒系の存在下で、少なくとも三つの逐次重合段階を含む多段階反応シーケンスによって行う。
【0022】
好ましくは、重合は、直列に配置された第1の反応器、第2の反応器、及び第3の反応器を含む対応する多重反応器内で行われる第1段階、第2段階、及び第3段階を含む多重逐次重合段階で行う。
【0023】
重合は、好ましくは、ヨーロッパ特許EP−A−1228101において記載されているようなカスケード式懸濁重合で行う。
それぞれの重合段階におけるモル質量は、好ましくは、連鎖移動剤、好ましくは水素によって、好ましくはそれぞれの重合段階の後に上記記載の好ましい粘度数の値が得られるように調整する。
【0024】
本発明のPE成形組成物は、ブローフィルム押出法によるブローフィルムの製造に特に好適である。かかる方法を行う可能な方法を以下に詳しく説明する。
ポリエチレン成形組成物は、好ましくは、まず押出機内において、200〜250℃の範囲の温度で可塑化する。次に、可塑化されたポリエチレンを、溶融状態で環状ダイを通して押出して、実質的に管状の形状を有するバブルを形成する。好ましくは圧縮空気によってバブルを冷却し、次にローラーによって破壊して、フィルムに巻き上げる。
【0025】
本発明の成形組成物は、大規模工業プラントの通常の加工条件下においても改良された延伸性及び適度なフィルムバブル安定性を確保するので、フィルムブロー法によって特に良好に加工することができる。言い換えれば、延伸性のために、標準的で一定の厚さを有する特に薄いフィルムを製造することができる。バブル安定性のために、環状ダイから押し出されたフィルムバブルは、高い押出速度(take-off speed)においても安定に保持され、その形状は軸方向においても半径方向においても変化する傾向を示さない。好ましくは、バブルは、最大押出速度における衝撃試験(shock test、下記の実施例3において詳細に説明するように行う)中に±2cmを超えずに軸方向に振動する(oscillating)固体化材料からの溶融材料を画定するフロストラインを有する。
【0026】
本発明は、更に、上記記載のPE成形組成物を含み、8〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲の厚さを有するフィルムに関する。好ましくは、20μmの厚さを有するフィルムのDDIは、400gよりも高い。
【実施例】
【0027】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の範囲を限定することなく、以下の好ましい態様によって本発明を更に説明する。
【0028】
実施例1:重合(本発明)
相互に直列に配置した三つの反応器内において、カスケード式で行う連続法でエチレンを重合した。ヨーロッパ特許EP−A−401776の実施例1の方法によって調製した、極めて高い水素に対する反応性及びカスケード式重合を行うのに十分な活性を有するチーグラー触媒が、1〜8時間の長時間にわたって活性を保持することができるので、この触媒を用いた。
【0029】
触媒は、特に、以下の分析組成を有していた。
Ti:6.2重量%
Mg:70.8重量%
Cl:23.0重量%
十分な量のトリエチルアルミニウムによって触媒を予備活性化した後、4.7ミリモル/時の量で第1の反応器中に供給した。
【0030】
十分な懸濁媒体、特にヘキサン、エチレン及び水素を、第1の反応器中に更に供給した。第1の反応器のガススペース(分析測定のためのガス温度=5±1℃)中に17容量%のエチレン及び65容量%の水素が測定されるように、エチレンの量(=46kg/時)及び水素の量(=60g/時)を設定した。残りは、窒素及び気化した懸濁媒体の混合物であった。
【0031】
84℃の温度、9.4bar(0.94MPaに相当する)の圧力下で、第1の反応器内での重合を行った。
第1の反応器からの懸濁液を、次に、第1の反応器の下流に直列に配置された第2の反応器中に移した。第2の反応器内のガススペース(分析測定のためのガス温度=5±1℃)中の水素の割合を、中間H2減圧によって3.9容量%に減少させた。30.7kg/時の量のエチレンを、極めて少量の第1のコモノマー、即ち1−ブテンと共に第2の反応器中に導入した。第2の反応器のガススペース内において、59容量%のエチレン、3.9容量%の水素、及び1.1容量%の1−ブテンが測定され、残りは窒素及び気化した懸濁媒体の混合物であった。
【0032】
84℃の温度、2.6bar(0.26MPaに相当する)の圧力下で、第2の反応器内での重合を行った。
第2の反応器からの懸濁液を、排出ガスを用いずに操作する更なる中間減圧を介して、第2の反応器の下流に直列に配置されている第3の反応器中に移した。水素を導入することによって、ガススペース内の水素濃度を7.5容量%に設定した。19.2kg/時のエチレンとは別に、1080g/時の第2段階において導入された第1のコモノマーと同じ第2のコモノマー、即ち1−ブテンを、第3の反応器中に更に導入した。
【0033】
第3の反応器のガススペース内(分析測定のためのガス温度=5±1℃)において、63容量%のエチレン、7.5容量%の水素、及び5.2容量%の1−ブテンが測定され、残りは窒素及び気化した懸濁媒体の混合物であった。
【0034】
84℃の温度、3.1bar(0.31MPaに相当)の圧力下で、第3の反応器内での重合を行った。
懸濁媒体をポリマー懸濁液から分離除去し、ポリマーを第3の反応器から取り出し、粉末を乾燥し、ペレット化工程に送った。
【0035】
上記のようにして製造したポリエチレン成形組成物は、下表1に報告する、粘度数VN1、VN2及びVN3、それぞれホモポリマーA、第1のコポリマーB及び第2のコポリマーCの割合WA、WB及びWC、並びにメルトフローレートMFR1、MFR2及びMFR3を有していた。
【0036】
【表1】

【0037】
表1における物理特性に関する略号は以下の意味を有する。
A、WB、WC=それぞれの反応器中に供給したエチレンの量によって算出した全成形組成物中のそれぞれホモポリマーA、第1のコポリマーB及び第2のコポリマーCの割合(=反応器スプリット(reactor split))。
【0038】
VN1、VN2、VN3=ISO/R1191にしたがってデカリン中135℃の温度で測定したそれぞれ第1、第2及び第3の反応器から排出されたポリマーの粘度数。
MFR1、MFR2、MFR3=ISO1133にしたがって測定したそれぞれ第1、第2及び第3の反応器から排出されたポリマーのメルトフローレート(温度及び負荷の表示を伴う)。
【0039】
MFRヘ゜レット=押出後の最終生成物のメルトフローレート。
実施例2:フィルムの製造(本発明)
かくして調製した成形組成物から、以下の方法でフィルムを製造した。
【0040】
50mmの直径d1及び21×d1(=1.05m)の長さを有する押出機、並びに120mmの直径d2及び1mmのギャップ幅を有する環状ダイを含むAlpineフィルムブロープラントで、20μmの厚さを有するフィルムを製造した。4:1のブローアップ比及び7.5×d2(=90cm)のネック長さでフィルムを製造した。押出機内での成形組成物の溶融温度は205〜210℃であった。
【0041】
フィルム特性を下表2に示す。
実施例3:フィルムの製造(比較例)
押出機内での成形組成物の溶融温度が215〜220℃であった他は実施例2に記載したものと同じプラントで同等の条件下で、Mitsuiから7000Fの表示で市販されている市販のフィルム原料Hi−Zexを用いて20μmのフィルムを製造した。
【0042】
フィルム特性を下表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
より詳しくは、以下に詳細に説明する予備試験及び衝撃試験を含む以下の手順によって、フィルムのバブル安定性を測定した。
予備試験においては、押出速度を、予め定められた増加する押出速度、即ち58、63、70、77及び87m/分(=最大巻き取り速度)に設定した。それぞれの押出速度に到達したら、冷却空気ブロアーを調節することによってネック長さを90cmに調節し、フィルムバブルの軸方向の振動を観察した。
【0045】
試験は、形成されたバブルの軸方向の振動が、1分の観察時間の間にわたって±2cmの範囲内であった場合に、終了し、与えられた速度において合格したと判断した。
続いて、予備試験と同等に設定した押出速度で衝撃試験を行った。衝撃試験においては、バブルを軸方向に振動させた。これは、冷却空気ブロアーの噴出口を約7秒間の間全開することによって行った。次に、噴出口を最初の位置に戻した。噴出口の開放及び閉止は、冷却空気の圧力によって監視した。しかしながら、25℃よりも高い室温においては、上記記載の噴出口の開放のみでは、フィルムバブルを振動させるのには不十分であった。したがって、25℃よりも高い温度においては、常に空気圧によって監視しながら、噴出口をまず開放し、次に最大で3秒間完全に閉止し、その後はじめの位置に戻した。衝撃試験は、フィルムバブルの振動が、2分以内に±2cmに減衰した場合に、与えられた押出速度において合格したと判断した。
【0046】
これを、上記記載の増加する押出速度のそれぞれに関して行った。特定の押出速度において衝撃試験又は予備試験が合格しなかった場合には、従来のより低い押出速度に対応する安定性等級が与えられた。
【0047】
ASTM D1709規格−方法Aにしたがって、フィルムのダートドロップ衝撃強度を測定した。
試験片の評価を視覚的に行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形組成物の全重量を基準として、
−第1の分子量を有するエチレンホモポリマーAで形成されている第1のエチレンポリマーフラクション30〜60重量%;
−更なるホモポリマー、又はエチレンと4〜8個の炭素原子を有するオレフィンの群からの少なくとも一つの第1のコモノマーとの第1のコポリマーBで形成されており、該第1のコポリマーBが、該第1の分子量よりも高い第2の分子量を有する、第2のエチレンポリマーフラクション22〜40重量%;及び
−エチレンと少なくとも一つの第2のコモノマーとの第2のコポリマーCで形成されており、該第2のコポリマーCが、該第2の分子量よりも高い第3の分子量を有する、第3のエチレンポリマーフラクション10〜30重量%;
を含む、多峰性モル質量分布、23℃の温度において0.948〜0.953g/cm3の範囲の密度、及び0.10〜0.50dg/分の範囲の押出後の最終生成物のMFR190/5を有するポリエチレン成形組成物。
【請求項2】
−第1のエチレンポリマーフラクション42〜52重量%;
−第1のコポリマーBが、コポリマーBの重量を基準として0.1〜2.0重量%の該少なくとも一つの第1のコモノマーを含む第2のエチレンポリマーフラクション27〜38重量%;及び
−第2のコポリマーCが、第2のコポリマーCの重量を基準として3〜15重量%の該少なくとも一つの第2のコモノマーを含む第3のエチレンポリマーフラクション15〜25重量%;
を含む請求項1に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項3】
該第1のコモノマー及び該第2のコモノマーが、独立して、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、及びこれらの混合物を含む群から選択される請求項1又は2に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項4】
密度が0.948〜0.952g/cm3であり、押出後の最終生成物のMFR190/5が0.19〜0.25g/10分の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項5】
ISO/R1191にしたがってデカリン中135℃で測定して270〜460cm3/gの範囲の粘度数VN3を有する請求項4に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項6】
エチレン、該少なくとも一つの第1のコモノマー、及び該少なくとも一つの第2のコモノマーを、懸濁液中、20〜120℃の範囲の温度、2〜10barの範囲の圧力において、遷移金属化合物及び有機アルミニウム化合物を含むチーグラー触媒の存在下で重合する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物の製造方法。
【請求項7】
該重合工程を、直列に配置された第1の反応器、第2の反応器、及び第3の反応器を含む対応する多重反応器内において行う第1段階、第2段階、及び第3段階を含む多重逐次重合段階で行い、それぞれの段階で調製されるポリエチレン組成物のモル質量をそれぞれの場合において水素によって調整する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の重合段階における水素濃度を、ホモポリマーAが60〜110cm3/gの範囲の粘度数VN1を有するようになるように設定する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の重合段階における水素濃度を、ホモポリマーA及びホモポリマー又はコポリマーBの混合物が270〜400cm3/gの範囲の粘度数VN2を有するようになるように設定する請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
第3の重合段階における水素濃度を、ホモポリマーA、及び第1のホモポリマー又はコポリマーB、及び第2のコポリマーCの混合物が280〜480cm3/gの範囲の粘度数VN3を有するようになるように設定する請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
8〜200μmの範囲の厚さを有するブローフィルムを製造するための請求項1〜5のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物の使用。
【請求項12】
ブローフィルムが、ポリエチレン成形組成物を溶融してポリエチレン溶融体を得、ポリエチレン溶融体を環状ダイを通して押し出すことによってポリエチレン溶融体を押し出して、最大押出速度における衝撃試験中に軸方向に最大で±2cm振動するフロストラインを有するバブルを形成するように製造される請求項11に記載のポリエチレン成形組成物の使用。
【請求項13】
8〜200μmの範囲の厚さ、及び20μmの厚さを有するフィルムに関して測定して400gを超えるDDIを有する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物を含むブローフィルム。

【公表番号】特表2008−531804(P2008−531804A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557474(P2007−557474)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060224
【国際公開番号】WO2006/092379
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】