説明

改良された着色ポリマー製造方法

一般式Iの化合物またはその塩とビニル基を有する重合性モノマーとを共重合させることを含む着色ポリマーの製造方法であって、式Iが


〔式中、Rは、水素原子または−SOH基を表し;Aは、直接結合、−アルキレン−O−、あるいは−フェニレン−NH−または−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基[各フェニレン環は、場合により、−SOH、−(CHSOH、−SO(CHSOH、−SONH(CHSOH、−SO1−2アルキル、−SO1−2ハロアルキル、−SONHC1−2アルキル、−SONHC1−2ハロアルキル、−C1−2アルキル、または−C1−2ハロアルキル(式中、mは1または2を表す)から選択される1つまたはそれ以上の同一あるいは異なる基により置換されていてもよい]を表し;Rは、水素原子またはハロゲン原子あるいはC1−4アルキル基を表し;RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはC1−4アルキル基あるいはアルコキシ基を表す[ただし、Rが、水素またはC1−4アルキル基であり、同時にRが水素原子である場合、Aは、少なくとも1つのフェニレン環が少なくとも1つの硫黄含有基により置換された−フェニレン−NH−または−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基でなければならない]〕である、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色ポリマー原料、特に医療機器、特にコンタクトレンズにおける使用に適当な着色ポリマーの、改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長年、コンタクトレンズは視力を改善するために使用されてきた。しばしば、これらのレンズに着色された色合いを付けることが求められ、そのためのいくつかの方法が言及されてきた。着色レンズ用の初期の技術は、重合前にモノマー中へコロイド顔料の懸濁により顔料を組み込むことに基づくものであった。そのような顔料の例は、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントブルー36、C.I.バットオレンジ1、C.I.バットブラウン1、C.I.バットイエロー3、C.I.バットブルー6、およびC.I.バットグリーン1である。該顔料の欠点は、顔料が見えず均質となるよう十分に小さい粒子を達成することの困難性、および自己寿命を制限されたコロイドの安定性にあった。
【0003】
今日の1つの従来法は、レンズを製造し、その後レンズに染料溶液を塗布し、レンズを形成するポリマーに染料を結合させる方法である。そのような方法の例は、US4553975に記載されている。ここでは、染料が、ポリマーに存在するヒドロキシ基、アミノ基、アミド基またはメルカプト基とポリマー骨格の外側で結合するように、ポリマーレンズ原料製のプレ形成コンタクトレンズを、反応性染料と反応させる。また、US4553975によれば、HEMAのようなモノマーは、重合前に反応性染料と反応させることができる。ここでもまた、染料はHEMAのヒドロキシ基と反応する;該方法で使用される全てのモノマーは、反応性染料と反応することができる少なくとも1つの官能基を含有していなければならない。そのような官能基の例は、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基およびチオ基である。反応性染料は、エーテル型架橋を形成することのできるものでなければならない。
【0004】
後者のタイプの特定の製法はEP0595575に記載され、それは、後にポリマーを製造するためにさらなるモノマーと重合させる染料モノマー生成物を製造するため、重合前にハロトリアジン染料と親水性モノマーを反応させることを含む、ソフトコンタクトレンズに色付けするための方法を記載する。ここで、初期反応工程において、染料は、HEMAのようなモノマーのヒドロキシ基と反応し、得られるモノマー(HEMAに起因するビニル基を含有する)は、ビニル基を介してさらなるHEMAと共重合し、ポリマーを製造する。同様の方法はJP08−327954にも記載され、重合前に染料をモノマーと結合させるためにアルカリ溶液が使用される。
【0005】
染料の存在下、親水性モノマーを重合することにより、レンズに染料を組み込むための試みがなされている。例えば、US5151106は、反応性染料をポリマーの形成時にポリマー中へ組み込む方法を記載し、該方法において反応性染料は、ポリマー中へ物理的に混入させられる。重合に続き、染料とポリマーを結合するため、生成物を塩基で処理する。
【0006】
別の試みはUS5055602でなされ、US5055602はアントラキノン染料の2つのアミノ基が、重合性不飽和有機基を含有するため官能化されている、二官能性アントラキノンモノマーを記載する。1,4−ビス(4−(2−メタクリロキシエチル)フェニルアミノ)アントラキノンに代表されるような化合物は、その後、アントラキノン部分がポリマーに架橋結合したポリマーを生成するため、他のモノマーと共重合され得る。
【0007】
古い文献、GB1,400,892は、少なくとも1つのメタクリルエステルと前述した反応性染料との共重合を含んでなるコンタクトレンズの製造方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4553975号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第0595575号明細書
【特許文献3】特開平08−327954号公報
【特許文献4】米国特許第5151106号明細書
【特許文献5】米国特許第5055602号明細書
【特許文献6】英国特許出願第1400892号明細書
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一般式Iの化合物の好ましいサブグループ
【図2】一般式Iの化合物の好ましいサブグループ
【図3】一般式Iの化合物の好ましいサブグループ
【発明を実施するための形態】
【0010】
有用な生成物が、適当なモノマーと共重合し得る非常に特定のタイプの単官能性染料の使用により得られることが見出された。本発明は、コンタクトレンズおよび他の医療機器における使用のために特に適当なポリマーの製造における使用に、特に適当である。
【0011】
したがって、本発明は、一般式Iの化合物またはその塩とビニル基を含有する重合性モノマーとを共重合させることを含み、該式Iが、
【化1】

〔式中、Rは、水素原子または−SOH基を表し;Aは、直接結合、−アルキレン−O−、あるいは−フェニレン−NH−または−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基[各フェニレン環は、場合により、−SOH、−(CHSOH、−SO(CHSOH、−SONH(CHSOH、−SO1−2アルキル、−SO1−2ハロアルキル、−SONHC1−2アルキル、−SONHC1−2ハロアルキル、−C1−2アルキル、または−C1−2ハロアルキル(式中、mは1または2を表す)から選択される1つまたはそれ以上の同一あるいは異なる基により置換されていてもよい]を表し;Rは、水素原子またはハロゲン原子(特に臭素)あるいはC1−4アルキル基を表し;RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはC1−4アルキル基あるいはアルコキシ基を表す[ただし、Rが、水素またはC1−4アルキル基であり、同時にRが水素原子である場合、Aは、少なくとも1つのフェニレン環が少なくとも1つの硫黄含有基により置換された−フェニレン−NH−または−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基でなければならない]〕である、着色ポリマーの製造方法を提供する。
【0012】
好ましくは、式(I)の化合物は塩の状態で使用され、特にアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩が好ましい。
【0013】
好ましくは、Aは、アルキレン部分が例えば4個までの炭素原子を有していてもよい−アルキレン−O−を表し、例えば、エチレン−O−;場合により置換された−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基;または、特に、場合により置換された−フェニレン−NH−、例えば場合により置換された3−または4−フェニレン−NH基を表す。本発明の好ましい実施態様において、前記の基Aは、少なくとも1つの硫黄含有置換基、例えば−SOH基を含有する。例えば、前記の基Aは1つまたは2つの、好ましくは1つの硫黄含有置換基、特に−SOH基を、必要に応じて1つまたはそれ以上の、例えば1つまたは2つのC1−2アルキル基、例えばメチル基とともに含有する。基Aに存在する任意のハロゲン原子は、好ましくは塩素原子である。
【0014】
1つの好ましい式(I)の化合物のサブグループは、下記式:
【化2】

を有する。
式中、Rは−SOH基を表し、nは、0、1または2、好ましくは0または1、特に1を表し、他の置換基は一般式(I)と同様の意味を有する。式(I)および(Ia)において、Rは、好ましくは水素原子、臭素原子またはメチル基を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基、特に水素原子を表す。好ましくは、分子中に存在する他の基の性質がどんなものでも、式IまたはIaの化合物は、少なくとも2つの硫黄含有基を含む。Rが−SO基である場合、これはアントラキノン部分のどの位置であってもよく、例えば5、6または8位、好ましくは6位であってよい。
【0015】
さらに好ましいサブグループは、式IおよびIa〔式中、Rはハロゲン原子、特に臭素原子を表す〕の化合物を含む。
【0016】
図1、2および3は、一般式Iの化合物(図中でナトリウム塩の形態で示され、式(Ib)〜(Im)と称される)の他の好ましい化合物を示す。全ての場合において、図中の式においてRは、水素、ハロゲン、特に臭素、あるいはC1−4アルキル、特にメチルを表し得る。式(Ib)中のRが臭素である場合、化合物は市販される染料Reactive Blue 69である。式(Ic)中のRが水素である場合、染料は赤みがかった青である。式(Id)中のRが水素である場合、染料は緑みがかった青である。式(Ie)中のRが水素である場合、染料は青緑である。
【0017】
本発明において、(US4,553,975におけるような)ポリマーのヒドロキシ基に対して染料を固定する工程は必要とされず、(EP595575におけるような)染料とポリマーを調製するために使用されるモノマーのヒドロキシ基を反応させるいかなる予備工程も必要とされない。染料がポリマー骨格に組み込まれるため、形成後にポリマーから染料を浸出することは生じ得ない。
【0018】
本発明にしたがって調製されたポリマーは新規であり、したがって本発明は、少なくとも1つの他の重合性ビニル基含有モノマーに由来する構成単位とともに、前述したような一般式(I)の化合物に由来する構成単位を骨格の一部として含んでなるポリマーをも提供する。
【0019】
好ましくは、本発明の方法により調製されたポリマーは、医療機器における使用に適しており、例えば、カテーテル、インプラント、ステント、人工水晶体およびコンタクトレンズ、特にコンタクトレンズ、より特にコンタクトレンズ、とりわけソフトコンタクトレンズにおける使用に適している。本発明の有利点は、ソフトコンタクトレンズを製造するモールドから剥がす際に、本発明により調製されたソフトコンタクトレンズが水和され、使用できる状態にあるという点である。研磨する必要はない(これに対して、GB1,400,982の第3頁第8〜10行目においては「反応性染料と共重合したメタクリルポリマーを型打ちし、所望の着色レンズを得るために研磨する」)。
【0020】
ソフトコンタクトレンズは、親水性モノマーの重合に由来するゲル様レンズである。適当な親水性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のヒドロキシエステル、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、ならびにスチレンスルホン酸が含まれる。
【0021】
好ましくは、親水性モノマーはアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステルであり、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリセリルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシトリメチレンアクリレートである。HEMAが、最も好ましい親水性モノマーである。
【0022】
親水性モノマーは、必要であれば、所望の特性を得るために、適当なコモノマー、例えば疎水性コモノマーと共重合させてもよい。例えば、アクリル酸およびメタクリル酸、アルキルアクリレートおよびシクロアルキルアクリレートならびにアルキルメタクリレートおよびシクロアルキルメタクリレート、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、および環内に窒素に隣接するカルボキシル基を含む複素環N−ビニル化合物(例えばN−ビニルピロリドン)を親水性モノマーとともに使用し得る。したがって、コモノマーとしてメタクリル酸(MAA)を用いた場合、該レンズの平衡含水率曲線は増加する。さらに、レンズの安定性を向上させるために少量の多官能性架橋モノマー、例えばエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)などを使用することができる。さらに、ポリマー特性を改善するために、架橋剤を使用してもよい。一般的な架橋剤の例としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、およびジエチレングリコールビス−アリルカーボネートが挙げられる。
【0023】
本発明の方法は、シリコーンヒドロゲルに基づく着色コンタクトレンズの製造に用いてもよい。そのようなヒドロゲルについての情報は、例えば、US4,139,513、US4,711,943、US5,070,215、US5,610,252、US6,867,445、US6,020,445、US5,998,498およびUS6,822,016において見出すことができる。
【0024】
さらに、本発明の方法は、ハードコンタクトレンズの製造に用いてもよい。ハードコンタクトレンズを製造するために適したモノマーは、メチルメタクリレート、セルロースアセテートブチレート(CAB)、アルキルメタクリレート、シロキサニルメタクリレート、ポリシロキサンメタクリレート、およびフルオロアルキルメタクリレートである。
【0025】
コンタクトレンズ以外の適用のために、本発明の方法は、任意の所望のビニル基含有モノマーを使用して行ってもよい。
【0026】
本発明の全ての態様において、染料とモノマーと同様に、反応混合物は、重合反応の開始剤を、好ましくは約0.05〜1%の量で含む。開始剤の典型的な例には、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインおよびそのエステル、ならびに酸化還元系、例えばアンモニウム顆粒酸アンモニウム/メタ重亜硫酸ナトリウムが含まれる。代りに、または、加えて、重合反応は、電離または化学線(例えば紫外線、可視光線、X線、電子線、または放射性源)への曝露により開始されてもよい。
【0027】
先行技術において既知であるように、重合は、溶剤または希釈剤の存在下または存在しない状態で行い得る。医療機器における使用のためのポリマーの製造における使用のために、生体適合性溶剤または希釈剤、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、水、およびそれらの混合物を使用し得る。
【0028】
適当な重合条件は、当業者に周知である。本発明の場合、染料がモノマーと共重合し、かつ、例えば、モノマーとエーテル結合を生じるためにモノマー内に存在するヒドロキシ基(例えば、HEMAに存在するヒドロキシ基)と反応しないような条件であることが重要である。したがって塩基性条件は、好ましくは避けられるべきである。
【0029】
反応混合物へ加えられる反応性染料の量は、特に使用する染料および求められる着色の濃さに依存する。一般的には、例えば、モノマーの重量に基づいて、0.01〜約0.75重量%の範囲、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲である。
【0030】
コンタクトレンズを形成する好ましい方法において、レンズを形成する量の重合性混合物を、水和された最終的なコンタクトレンズの形状を有するモールド内に投与する。その後、例えば前述した電離や化学線の適用により、重合混合物を硬化させる。
【0031】
以下の例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0032】
〈実施例1〉
1−アミノ−4−(メタクリロイルオキシ)エチルアミノ−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、ナトリウム塩の合成
【0033】
100ml丸底フラスコに、0.90g(5.45mmol)のメタクリル酸アミノエチル塩酸塩および30mlの脱塩水を加えた。塩を重炭酸ナトリウム(0.5g)の小分して(portion-wise)添加することにより中和した。中和が完了した後、2.0g(4.95mmol)のブロマミン酸、0.19g(1.92mmol)の塩化第一銅および10mlのエタノールを加えた。反応混合物を65℃に加熱し、2.5g(0.024mol)の炭酸ナトリウムを小分けにして添加した。その後、反応混合物を70℃、18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、その後、5mlの濃塩酸中に注意深く注いだ。オレンジ/赤色の固形物をろ過により分離し、1MのHClで洗浄した。フィルターコーンをブフナーろ斗から真空オーブンへ移し、80℃、10mbar真空下で乾燥させた。
【0034】
この合成の生成物は、1.15gのオレンジ色の粉末を生じ、該粉末は、IRおよびH NMRにより分析され、1−アミノ−4−(メタクリロイルオキシ)エチルアミノ−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、ナトリウム塩と同定された。
【0035】
〈実施例2〉
1−アミノ−4−(4−アミノ−2−スルホフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、二ナトリウム塩の合成
【0036】
1リットル丸底フラスコに、10.0g(0.054mol)の2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、6.7g(0.063mol)の炭酸ナトリウム、5.37g(0.043mol)の亜硫酸ナトリウムおよび500mlの脱塩水を加えた。その後、フラスコに、10.74g(0.027mol)のブロマミン酸、0.81g(8.2mmol)の塩化第一銅を加えた。反応物を60℃、18時間加熱し、その後室温まで冷却した。反応混合物をろ過し、ろ過ケーキをメタノールで十分に洗浄した。ロータリーエバポレーターで溶剤を除去し、茶色の固形物を得た。固形物を250mlの温メタノール中に懸濁し、その後濾過して全ての無機塩を除去した。メタノールを、ロータリーエバポレーターで除去し、得られた固形物を真空オーブン内で80℃、10mbar真空下、乾燥させた。
【0037】
この合成の生成物は、12.9gの深緑/茶色の固形物を生じ、該固形物は、IRおよびH NMRにより分析され、1−アミノ−4−(4−アミノ−2−スルホフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、二ナトリウム塩と同定された。
【0038】
〈実施例3〉
1−アミノ−4−(4−アクリロイルアミド−2−スルホフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、二ナトリウム塩の合成
【0039】
100mlの丸底フラスコに、実施例2により得られた生成物2.0g(3.75mmol)、0.5mlの10NNaOHおよび40mlの脱塩水を加えた。内容物を、室温で30分間、勢いよく混合した。その後、フラスコに、塩化アクリロイル(0.43g、4.75mmol)のアセトン(2.5ml)溶液を、1時間にわたり滴下した。反応混合物を室温で3時間、攪拌した。反応混合物のpHを、0.1MNaOHを滴下することにより、pH8に調整した。ロータリーエバポレーターで溶剤を除去し、深緑の固形物を得た。固形物をメタノール中に溶解し、ろ過して全ての無機塩を除去した。メタノールをロータリーエバポレーターで除去した。残留物を氷冷したジエチルエーテルで粉砕し、得られた固形物をろ過により分離した。ろ過ケーキをブフナーろ斗から真空オーブンへ移し、80℃、10mbar真空下で乾燥させた。
【0040】
この合成の生成物は、0.6gの深緑色の粉末を生じ、該固形物は、IRおよびH NMRにより分析され、1−アミノ−4−(4−アクリロイルアミド−2−スルホフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、二ナトリウム塩と同定された。
【0041】
〈実施例4〉
1−アミノ−4−(4−メタクリロイルアミド−2−スルホフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、二ナトリウム塩の合成
【0042】
塩化アクリロイルを、等モル量の塩化メタクリロイルに置き換えた以外は、実施例3を反復した。この合成の生成物は、1.3gの深緑色の粉末を生じ、該固形物は、IRおよびH NMRにより分析され、1−アミノ−4−(4−メタクリロイルアミド−2−スルホフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、二ナトリウム塩と同定された。
【0043】
〈実施例5〉
着色されたHEMAに基づくコンタクトレンズの調製
均質のモノマーブレンドを、表1に記載される組成で調製した。コンタクトレンズモールドへモノマー混合物の滴下を行い、その後、蛍光UV光源(ラジオスペア:Catナンバー 497−656)を使用して、2時間にわたり重合させた。
【0044】
【表1】

【0045】
その後、上記処方で作製されたレンズを、緩衝生理食塩水中で膨張させた。その後、該レンズの色安定性を、緩衝生理食塩水中で煮沸し、生理食塩水中への染料の欠損を検出することにより試験した。
【0046】
試験した染料は、実施例1、3、4から合成された染料およびReactive Blue 69である。いずれの染料も、生理食塩水中に浸出しなかった。生理食塩水はきれいなまま(無色透明)であった。
【0047】
〈実施例6〉
着色コンタクトレンズの比較
2つのろ過した均質のモノマーブレンドを、表2に記載される組成で調製した。コンタクトレンズモールドへモノマー混合物の滴下を行い、その後、蛍光UV光源(ラジオスペア:Catナンバー 497−656)を使用して、2時間にわたり重合させた。
【0048】
【表2】

【0049】
その後、上記処方で作製された乾燥レンズを比較し、100ppmのReactive Blue 69を使用するレンズAは、ヒトの目視観測による色の強度において、1000ppmのReactive Blue 4(市販のコンタクトレンズに使用されている)を使用するレンズと同等であった。
【0050】
〈実施例7〉
着色されたGMMAに基づくコンタクトレンズの調製
下記の表3に詳細されるような、主な成分として2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート(グリセロールモノメタクリレート)を使用して、2つの異なるレンズ処方を作製した。該レンズは、実施例5に記載されたのと同様の手順で硬化し、安定なヒドロゲルを得るために市販の食塩水を使用して水和した。
【0051】
【表3】

【0052】
どちらの処方も、生理食塩水中への染料の浸出なしに、ポリマー中に染料を保持した。
【0053】
〈実施例8〉
着色された高含水HEMAに基づくコンタクトレンズの調製
以下の表4に詳細される処方を用いて、高含水処方を作製した。該レンズは、実施例8に記載されるのと同様に硬化し、安定なヒドロゲルを得るために市販の食塩水を使用して水和した。
【0054】
【表4】

該処方は、生理食塩水中への染料の浸出なしに、ポリマー中に染料を保持した。
【0055】
〈実施例9〉
着色されたシリコーンヒドロゲルに基づくコンタクトレンズ
以下の表5に詳細される処方を使用して、シリコーンヒドロゲル処方を作製した。該レンズは、実施例8に記載されるのと同様に硬化し、安定なヒドロゲルを得るために市販の食塩水を使用して水和した。
【0056】
【表5】

該処方は、生理食塩水中への染料の浸出なしに、ポリマー中に染料を保持した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物またはその塩とビニル基を有する重合性モノマーとを共重合させることを含む着色ポリマーの製造方法であって、式Iが
【化1】

〔式中、Rは、水素原子または−SOH基を表し;Aは、直接結合、−アルキレン−O−、あるいは−フェニレン−NH−または−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基[各フェニレン環は、場合により、−SOH、−(CHSOH、−SO(CHSOH、−SONH(CHSOH、−SO1−2アルキル、−SO1−2ハロアルキル、−SONHC1−2アルキル、−SONHC1−2ハロアルキル、−C1−2アルキル、または−C1−2ハロアルキル(式中、mは1または2を表す)から選択される1つまたはそれ以上の同一あるいは異なる基により置換されていてもよい]を表し;Rは、水素原子またはハロゲン原子あるいはC1−4アルキル基を表し;RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはC1−4アルキル基あるいはアルコキシ基を表す[ただし、Rが、水素またはC1−4アルキル基であり、同時にRが水素原子である場合、Aは、少なくとも1つのフェニレン環が少なくとも1つの硫黄含有基により置換された−フェニレン−NH−または−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基でなければならない]〕
である、製造方法。
【請求項2】
Aが、−アルキレン−O−基あるいは場合により置換された−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基または−フェニレン−NH−基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aが、場合により置換された、少なくとも1つの硫黄含有置換基を含む、−フェニレン−NH−フェニレン−NH−基または−フェニレン−NH−基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Aが、少なくとも1つの−SO基を含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Aが、1つの−SO基を、場合により1つまたはそれ以上のメチル基とともに含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式Iの化合物が、一般式:
【化2】

〔式中、Rは、−SO基を表し、nは0、1または2を表し;R、R、RおよびRは請求項1と同様の意味を有する〕
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
およびRが、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
がハロゲン原子である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物の塩を使用する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
塩がナトリウム塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビニル基を含有する重合性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のヒドロキシエステル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドンならびにスチレンスルホン酸からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記重合性モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合性モノマーがヒドロキシエチルメタクリレートである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ビニル基を含有する重合性モノマーが、シリコーンヒドロゲルである、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの他のビニル基含有重合性モノマー由来の構造とともに、請求項1〜8のいずれかに記載される一般式(I)の化合物に由来する構成単位を骨格の一部に含有するポリマー。
【請求項16】
請求項15に記載のポリマーを含む医療機器。
【請求項17】
請求項15に記載のポリマーから製造されるコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−539263(P2010−539263A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524385(P2010−524385)
【出願日】平成20年9月6日(2008.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007296
【国際公開番号】WO2009/036903
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】