説明

改良された自動車用の前照灯

本発明は、第1照明手段を受け入れるための、下部区画を形成するように第1ガラス板によって閉じられたボックスを含む、改良された自動車用の前照灯に関する。本発明による改良された自動車用の前照灯は、反射鏡に連結された第2ガラス板によって構成された上部区画を含み、該反射鏡に第2照明手段が取り付けられ、上部区画は、上部区画が少なくとも1つの変形可能接続部を介してボックスへ連結された衝突前の位置と、上部区画が、変形可能接続部の変形後に、ボックスに対して移動させられる衝突後の位置との間を移動可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された自動車用の前照灯に関し、特に、第1照明手段を受け入れるための、第1ガラス板によって閉じられたボックスを含む、歩行者の衝突に適応化された、前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、自動車の搭乗者を保護するように、衝撃の吸収手段を有することが不可欠である。しかし、自動車は、歩行者の自動車との衝突の際に、可能な限り歩行者の傷害を少なくし、軽くするための、歩行者の保護手段も有することが同じく重要である。しかしながら、このために設けられる装置は、自動車の構造に組み込まれることができる必要がある。更に、これらの装置は、自動車の簡単で安価な修理を可能にする必要がある。
【0003】
このため、文献FR−A−2844758には、ガラス板によって閉じられ、内部に光源があるボックスを含む、衝突のエネルギの吸収手段を備えた、自動車用の前照灯が記載されている。このボックスは、塑性変形可能な連結部材を介して構造部材へ連結される。このようにして、衝突時には、ガラス板とボックスは、衝突のエネルギの少なくとも一部を吸収するように、自動車の後へ向けて滑動する。しかしながら、この解決策は問題を有する。第1に、このボックスは全体が後方へ移動するので、前照灯の後に大きな場所を設ける必要があるが、このことは、自動車のこの場所には、リジッドまたは殆ど変形不可能、あるいは破損時に自動車を動かなくする可能性がある部材が存在するので、容易ではない。この問題は、小型の自動車に対してより妨げになる。更に、衝突の後で、前照灯の全体を取り替える必要がある。
【0004】
また、文献EP−A−1288068には、ガラス板によって閉じられたボックスを含む、自動車用の前照灯が記載されており、ボックスの側壁は、アコーデオン状に折り畳まれる。このようにして、衝突時には、ガラス板はボックスの側壁を押しつぶしながら後方へ移動し、このことは衝突のエネルギを吸収することを可能にする。しかしながら、この解決策も問題を有する。衝突後に自動車を修理するために、前照灯全体を交換する必要があり、このことは、時間を要し、高い費用を要する可能性がある。更に、ボックスの側壁は押し潰されながら膨張し、このことはボックスの容積を増加させる。従って、側壁は、ボンネットの下で動かなくなるリスクがある。さらに、このタイプの装置は、衝撃が水平に向けられたときだけしか良好に機能しない。すなわち、歩行者が前照灯に衝突する方向が傾斜している場合には、前照灯の移動が生じないリスクがある。従って、歩行者は、極めて変形可能では必ずしもないボンネットに衝突する可能性がある。
【特許文献1】FR−A−2844758
【特許文献2】EP−A−1288068
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を解消するため、本発明は、衝突の力学的エネルギを消散するように用意され、自動車の構造の中へ組み込むことが容易な、自動車用の前照灯を提供することを目的とする。
また本発明は、修理が容易、迅速、安価な自動車用の前照灯を提供することを目的とする。
また本発明は、ボンネットの変形を可能にする、自動車用の前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本明細書の「技術分野」に記載したタイプの自動車用の前照灯において、上記前照灯は、反射鏡に連結された第2ガラス板によって構成された上部区画を含み、上記反射鏡に第2照明手段が取り付けられ、上記上部区画は:
−上記上部区画が少なくとも1つの変形可能接続部を介して上記ボックスへ連結された衝突前の位置と、
−上記上部区画が、上記変形可能接続部の変形後に、上記ボックスに対して移動させられる衝突後の位置、
との間を移動可能であることを特徴とする、改良された自動車用の前照灯を提供する。
【0007】
本発明のその他の特徴によれば:
−上記上部区画は、後方へ向けた縦方向の滑動によって移動し、
−上記上部区画は、後方へ向けた転倒によって移動し、
−上記上部区画の後に、発泡材料からなる、衝突のエネルギの吸収手段が設けられ、
−衝突のエネルギの吸収手段は、上記第2ガラス板の破砕によって構成され、
−上記変形可能接続部は、変形可能部材を介して上記反射鏡へ連結され、上記ボックスの中に設けられた蟻ほぞ状の切り込み部の中へ嵌め込まれる突起部を含み、
−上記前照灯は、上記上部区画の装着のための案内手段を含み、
−上記案内手段は、上記第1ガラス板の中に設けられた円筒状の突起であり、
−上記上部区画は、方向指示のライトを含み、上記下部区画は、ハイビームとロービームの位置のライトを含む。
【0008】
また本発明は、ボンネットの下に本発明による自動車用の前照灯が配置された自動車において、衝突の際に、上記上部区画の転倒が、上記ボンネットの引き続く破壊を可能にすることを特徴とする自動車も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のその他の特徴及び利点は、自動車用の前照灯の実施の形態の説明を、添付図面を参照しながら読むことによって明らかになるであろう。これらの添付図面において:
−図1は、衝突前における本発明による自動車用の前照灯の略図であり;
−図2は、衝突後における本発明による自動車用の前照灯の略図であり;
−図3は、図1のIII−III方向に沿った自動車用の前照灯の断面略図である。
【0010】
以下の説明において、図1の3面体L、V、Tによって示された縦、垂直、横方向を、非限定的に採用する。
同一または類似の部品は、同一の参照符号によって指示される。
【0011】
図1に示すように、前照灯10は、少なくとも1つの第1反射鏡14と、電気供給手段(図示しない)に接続された少なくとも1つの第1照明手段16とを含む、ボックス12を含む。ボックス12は、第1ガラス板18によって閉じられ、第1の区画である下部区画20を形成する。
【0012】
ボックス12は、例えば自動車の前部横桁のような構造部材(図示しない)に取り付けられる。
【0013】
また、前照灯10は、下部区画20の上に配置され、第2反射鏡26に連結された第2ガラス板24を含む、上部区画22を含む。第2反射鏡26に、電気供給手段(図示しない)に接続された第2照明手段28が取り付けられる。
【0014】
図3に示すように、上部区画22の第2反射鏡26は、変形可能接続部32を介して、ボックス12の上部30へ接続される。このため、例えば、第2反射鏡26は、ボックス12の上部30に設けられた蟻ほぞ状の切り込み部36の中へ嵌め込まれる突起部34を有する。突起部34は、変形可能部材38を介して第2反射鏡26へ連結される。ここで説明する実施の形態においては、突起部34及び切り込み部36は全体に縦方向の向きにあるが、これらは垂直方向の向きにあってもよい。例えばボルトまたは留め金のような固定手段(図示しない)によって突起部34を切り込み部36の中に固定することができる。
【0015】
ここで説明する実施の形態においては、下部区画20は、ロービームとハイビームの位置のライトを含み、一方、上部区画22は、方向指示のライトを含む。
【0016】
通常の使用位置においては、上部区画22と下部区画20は、第1ガラス板18の外表面42と第2ガラス板24の外表面40が、互いに他方の延長上にある、連続した組立体を形成し、ボンネット44の高さに連なる。
【0017】
図2に示すように、上部区画22は、2つの位置の間を移動可能に装着される。矢印F1(図1)によって示された衝突は、上部区画22とボックス12の間に変形可能接続部32が維持された状態で、変形可能部材38の変形または部分的な破損をもたらす。従って、上部区画22の、自動車の後部へ向けた、矢印F2によって示された転倒と、衝突後の上部区画22の保持とが同時に可能になる。
【0018】
従って、歩行者が前照灯10に衝突した場合には、身体的な被害を制限するように、上部区画22の移動が、衝突の力学的なエネルギの少なくとも部分的な消散を可能にする。更に、上部区画22の保持は、上部区画22が投げ出され、衝突の際に自動車の近くにいる人を負傷させることを回避するという利点を呈する。
【0019】
また、衝突のエネルギを吸収するための補足手段が設けられる。すなわち、第2ガラス板24を構成する材料は、衝突の際に破砕することが可能なように選ばれ、このことは衝突のエネルギの吸収を改良することを可能にする。
【0020】
また、例えば発泡材料からなる吸収装置(図示しない)のような、衝突のエネルギの吸収手段を、上部区画22の後に設けることもできる。
【0021】
更に、上部区画22が一旦転倒すると、ボンネット44の下に現れる空間は、ボンネット44の変形を可能にし、このことは、更に衝突のエネルギを消散させることを可能にする。
【0022】
実施の形態の1変形においては、突起部34は、変形可能部材38の変形後に、切り込み部36の中を滑動し、このことは、衝突のエネルギの消散を可能にする補足的な移動をもたらす。
【0023】
図示しない他の1つの実施の形態においては、上部区画22は転倒せず、ボンネット44に沿って後ろへ滑動する。
【0024】
本発明による前照灯10は、後方へ向けて前照灯10が大きく移動することはなく、前照灯10の一部のみが移動するので、小型の自動車に組み入れることが容易であるという利点を有する。
【0025】
また本発明による前照灯10は、容易で安価な修理を可能にするという利点を有する。すなわち、作業者は、衝突後における上部区画22の転倒の後に、前照灯10の一部分である上部区画22を置き換えることのみを必要とする。つまり、作業者は、損傷した部品を取り外した後、新しい上部区画22を蟻ほぞ状の溝である切り込み部36の中へ滑動させ、最後に例えばボルトによって上部区画22を固定するだけで充分である。従って、この作業は迅速で簡単である。
【0026】
上部区画22のボックス12上への装着を容易にすることが可能な、例えば、円筒状の突起(ボス)のような案内手段(図示しない)を、第1ガラス板18の中に設けると有利である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1照明手段(16)を受け入れるための、下部区画(20)を形成するように第1ガラス板(18)によって閉じられたボックス(12)を含む、改良された自動車用の前照灯(10)において、上記前照灯(10)は、反射鏡(26)に連結された第2ガラス板(24)によって構成された上部区画(22)を含み、上記反射鏡(26)に第2照明手段(28)が取り付けられ、上記上部区画(22)は:
−上記上部区画(22)が少なくとも1つの変形可能接続部(32)を介して上記ボックス(12)へ連結された衝突前の位置と、
−上記上部区画(22)が、上記変形可能接続部(32)の変形後に、上記ボックス(12)に対して移動させられる衝突後の位置、
との間を移動可能であることを特徴とする、改良された自動車用の前照灯。
【請求項2】
上記上部区画(22)が、後方へ向けた縦方向の滑動によって移動することを特徴とする、請求項1に記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項3】
上記上部区画(22)が、後方へ向けた転倒によって移動することを特徴とする、請求項1に記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項4】
上記上部区画(22)の後に、発泡材料からなる、衝突のエネルギの吸収手段が設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項5】
衝突のエネルギの吸収手段が、上記第2ガラス板(24)の破砕によって構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項6】
上記変形可能接続部(32)は、変形可能部材(38)を介して上記反射鏡(26)へ連結され、上記ボックス(12)の中に設けられた蟻ほぞ状の切り込み部(36)の中へ嵌め込まれる突起部(34)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項7】
上記前照灯(10)は、上記上部区画(22)の装着のための案内手段を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項8】
上記案内手段は、上記第1ガラス板(18)の中に設けられた円筒状の突起であることを特徴とする、請求項7に記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項9】
上記上部区画(22)は、方向指示のライトを含み、上記下部区画(20)は、ハイビームとロービームの位置のライトを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の改良された自動車用の前照灯。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の改良された自動車用の前照灯(10)がその下に配置されるボンネット(44)を含む自動車において、衝突の際に、上記上部区画(22)の転倒が、上記ボンネット(44)の引き続く破壊を可能にすることを特徴とする自動車。

【公表番号】特表2007−537923(P2007−537923A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517370(P2007−517370)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050302
【国際公開番号】WO2005/113288
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】