説明

改良された色安定性を有するPVCと一酸化炭素改質エチレン−ビニルエステルコポリマーとの組成物

【課題】180℃のオーダの加工温度における変色の傾向が低下している、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーを含有する、プラスチック組成物を提供すること。
【解決手段】主ポリマー成分がポリ塩化ビニルであるプラスチック組成物を180℃に加熱すると引き起こされる変色の傾向が低下している一酸化炭素改質エチレンコポリマー組成物であって、前記プラスチック組成物が、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーと、前記変色を減少させるために有効な量の、アルカリ金属過塩素酸塩及びアルカリ土類金属過塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の無機過塩素酸塩とを含むコポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマー、特にエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)に関し、またより特に、プラスチック組成物と配合した場合、高い温度、典型的には180℃で引き起こされる変色の傾向が低下している一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーに関する。特に、本発明は、便宜的にpvcと略称している、主ポリマー成分がポリ塩化ビニルなどの塩化ビニルポリマーであるプラスチック組成物中における、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーに関し、また、エチレン及び不飽和エステル軟化モノマーからなる同様な一酸化炭素のコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック組成物中における添加剤及び配合成分としてのエチレン−酢酸ビニルコポリマーの利用に関する総説については、「プラスチック化合物添加剤及び改質剤のハンドブック(Handbook of Plastics Additives and Modifiers)」、J.Edenbaum,ed.,(New York:Van Nostrand Reinhold 1992)、95〜101頁中の、Jesse Edenbaumによる第7章を参照することができる。そこでは、ホモポリマーのポリエチレンはpvcと非相溶性であるが、EVAは、酢酸ビニル含量を増加すると、pvcとの相溶性が増加し、しかしより高い酢酸ビニル含量を有するポリマーは、より粘着性であり、かつより柔軟であると述べられている。一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーでは、より有利な性状のバランスが達成され、これらのコポリマーのいくつかのものはpvc向け専門の可塑剤として確立されてきている。これらのものは、pvc用の永久的可塑剤と記述される。これらのコポリマーは、pvcのガラス化温度及び剛性を低下させ、また靭性を増加させる。フィルムについては、好ましい組成物は、pvc30〜65%と、エチレン40〜80%、酢酸ビニル10〜60%及び一酸化炭素3〜30%を含有するコポリマー35〜70%とからなると述べられている。炭素原子1〜18個を有する不飽和カルボン酸のビニルエステル、並びにアルキル基中に炭素原子1〜18個を有するアクリル酸及びメタクリル酸アルキルなどの他の不飽和エステル軟化モノマーは、これらのコポリマー中の酢酸ビニルを置き換えることができる(例えばC.F.Hammer、米国特許第3780140号を参照されたい。)。
【0003】
上記の総説はまた、EVAポリマーの射出成型及びケーブルジャケット押出しなどの高温工程において酸化防止剤、特に立体障害を受けているフェノール型、を使用する必要性について言及している。超高安定化のため、亜リン酸エステル、又はチオエーテルなどの二次的保護剤の添加が推奨される。いくつかの高い温度の用途について、酸捕捉剤をさらに添加することが助言されている。
【0004】
成型が可能になるように、ポリマーが十分に流動化され又は軟化される温度での十分な熱加工安定性をpvcに付与するという問題は、長く続いている問題である。この問題は、原則として、様々な組合せの知られている熱安定剤をポリマーに添加することにより解決されている。しかし、pvcが主ポリマー成分であるプラスチック組成物において大きな融通性が与えられた場合、所定の組成物についての、正しい安定剤又は安定剤の組合せの選択は、理論及び予測の有用性が限定されている実験的技術のままである。
【0005】
pvc向けの安定剤に関する夥しく多くの文献が存在する。概観及び分類の利便のため、上記において引用した「ハンドブック」、208〜337頁の第16〜20章を参照することができる。
【0006】
下記の個々の開示は、本発明に対して最も直近の従来技術を示すものと考えられる。
【0007】
J.Kaufhold他、カナダ特許出願公告第2096490号は、(a)20〜80重量%の塩化ビニルホモポリマーと、(b)80〜20重量%の,ABS、NBR、NAR、SAN、及びEVAからなる群からの少なくとも1種のコポリマーと、(c)0.5〜5重量%((a)及び(b)に対して)の少なくとも1種の、5つの特定の式の1つを有する有機スズ化合物と,(d)0.01〜1.0重量%((a)及び(b)に対して)の少なくとも1種の、1価及び/又は2価の金属の過塩素酸塩とを含む、安定化された塩化ビニルホモポリマー組成物を開示した。この組成物は有利には、さらなる従来のpvc安定剤、及び/又はさらなる添加剤、例えば、エポキシ化合物、亜リン酸エステル、周期表の第2主族若しくは亜族からの金属の金属カルボン酸塩、及び金属フェノレートを含有することができる。
【0008】
O.Takashi他、特公平12−026687号は、過塩素酸処理したハイドロタルサイト(すなわち、いくらか又は全ての炭酸塩が過塩素酸塩で置換されている水和マグネシウムアルミニウム水酸化物−炭酸塩)と、トリメチロールアルカン型の多価アルコールとを組み合わせたものにより安定化され、亜鉛化合物、カドミウム化合物、バリウム化合物、鉛化合物、及びスズ化合物などの重金属化合物を含有しないポリ塩化ビニル樹脂組成物を開示した。塩化ビニルホモポリマー、塩化ビニルを主成分とするコポリマー、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリプロピレン、並びにエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−1一酸化炭素コポリマー、アクリルエステルポリマー、メタクリルエステル−ブタジエン−スチレングラフトポリマー、又は特殊なポリウレタン樹脂などの塩化ビニルを含有しないポリマーを含むブレンドに関係するポリ塩化ビニルを開示している。
【0009】
K.Bae他、米国特許第5034443号は、過塩素酸ナトリウム水和物とケイ酸カルシウムのブレンドが、従来の熱安定剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂に、改良された長期熱安定性をもたらすこと、並びに過塩素酸ナトリウム水溶液をケイ酸カルシウム、及び、炭酸カルシウムなどの非吸収性希釈剤粉末と組み合わせたものが、危険レベルの低い自由流動性粉末組成物をもたらすことを開示した。他の非吸収性希釈剤粉末には、ゼオライト、シリカ、アルミナ、PVC樹脂、硫酸バリウムなどが含まれる。
【0010】
R.Drewes他、米国特許第5519077号及び第5543449号は、(a)pvc、(b)過塩素酸又は過塩素酸塩、(c)末端エポキシド化合物、及び(d)酸化防止剤を含む組成物(’077)、並びに、(a)柔軟なpvc、(b)過塩素酸又は過塩素酸塩、(c)末端エポキシド化合物を含む組成物(’077)を開示した。これらの特許は、それぞれの場合において、pvc化合物が、上記に引用したKaufhold他中に挙げたブレンド用ポリマーを含むことができることをも、開示している。
【0011】
上記の特許のいずれのものも、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーにより引き起こされる変色の傾向には言及していない。
【0012】
したがって、十分に確立され、成功している従来の熱安定剤は、標準的な加工中の高い熱加工温度において、主ポリマー成分がpvcである基質ポリマー組成物への有効な安定化をもたらしているが、このような熱加工の間、ポリマー内に含有される添加剤への有効な安定化はもたらしていないであろう。例えば、このような組成物において、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーを使用する場合、限界がないということはない。一つの重要な限界は、そうでなければ十分に安定化されるpvc組成物が、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーの存在下では変色する傾向があることであり、このような組成物において一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーの使用レベルを上げると、変色の強さが増加することが見出されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、180℃のオーダの加工温度における変色の傾向が低下している、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーを含有する、プラスチック組成物を提供することが、本発明の一般的な目的である。
【0014】
主ポリマー成分がpvcであるプラスチック組成物に混合した場合、変色の傾向が低下している、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーを提供することも、本発明の一つの目的である。
【0015】
主ポリマー成分がpvcであり、かつ一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーを含有するプラスチック組成物を安定化する方法を提供することが、本発明のさらなる他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、主ポリマー成分がポリ塩化ビニルであるプラスチック組成物を177℃に加熱すると引き起こされる変色の傾向が低下している不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマー組成物、及び特に一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー組成物であって、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマー、特に一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーと、変色を減少させるために有効な量の、アルカリ金属過塩素酸塩及びアルカリ土類金属過塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の無機過塩素酸塩とを含む、コポリマー組成物が提供される。過塩素酸塩の有効な量は、乾燥基準で計算し、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー100重量部当り0.03重量部〜10重量部の範囲である。過塩素酸塩の好ましい量は、乾燥基準で計算し、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー100重量部当り0.1重量部〜5重量部の範囲である。
【0017】
やはり本発明によれば、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマー、特に、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーの存在下に、177℃に加熱した際の変色の傾向が低下しているプラスチック組成物であって、ポリ塩化ビニルと、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマー、特に、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーと、変色を減少させるために有効な量の、アルカリ金属過塩素酸塩及びアルカリ土類金属過塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の無機過塩素酸塩とを含むプラスチック組成物も提供される。一酸化炭素改質エチレンコポリマーの量は、適切にはポリ塩化ビニル100重量部当り5重量部〜50重量部の範囲にある、加工を補助する量である。過塩素酸塩の量は、一酸化炭素改質エチレンコポリマー100重量部当り0.03重量部〜10重量部の範囲にある。
【0018】
さらに、本発明によれば、安全な貯蔵、運搬、及び、主ポリマー成分がポリ塩化ビニルであるプラスチック組成物との単純化された配合のために適合されたマスターバッチ組成物であって、不飽和エステルとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーと、アルカリ金属過塩素酸塩及びアルカリ土類金属過塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の無機過塩素酸塩とを含むマスターバッチ組成物が提供される。本発明によるマスターバッチは、一酸化炭素改質エチレンコポリマー100重量部当り、乾燥基準で計算し、7重量部〜50重量部の過塩素酸塩を含有することができる。本発明によるマスターバッチは、必要な場合、水、ケイ酸カルシウム、及び不活性無機希釈剤を追加的に含むことができる。
【0019】
本発明によるマスターバッチは、定義された取り扱い及び輸送がより容易な、より見合った量のマスターバッチと、必要な場合一酸化炭素改質エチレンコポリマー及び他の配合剤で置き換えることによって、本発明により要求される有効な量の過塩素酸塩と、主ポリマー成分がポリ塩化ビニルである、一酸化炭素改質エチレンコポリマー含有プラスチック組成物の配合を単純化している。
【0020】
やはり本発明により提供されるものは、金属導体と、導体を取り囲む柔軟なポリ塩化ビニルを含む第1の絶縁層と、プレナム又はジャケットとして第1の絶縁層を取り囲む第2の層とを備えた絶縁導電体でもある。第2の層は、ポリ塩化ビニルと、組成物にたわみ性を付与するだけの十分な量の可塑剤と、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマー、詳細には一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーと、変色を減少させるために有効な量の、アルカリ金属過塩素酸塩及びアルカリ土類金属過塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の無機過塩素酸塩とを含む。一酸化炭素改質エチレンコポリマーの量は、適切にはポリ塩化ビニル100重量部当り5重量部〜75重量部の範囲にある、加工補助的な量である。過塩素酸塩の量は、一酸化炭素改質エチレンコポリマー100重量部当り0.03重量部〜10重量部の範囲にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書及び添付する特許請求範囲全体にわたって、用語ポリ塩化ビニル及びその略記pvcは、一般に、塩化ビニルホモポリマー;少量の1種又は複数の、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、エチレン、プロピレン、マレイン酸ジアルキル、及びアクリロニトリルなどの不飽和モノマーを有し、主ポリマーとして塩化ビニルのコポリマー;並びに、アクリル酸及びメタクリル酸エステルポリマー、ブタジエンポリマー、スチレンポリマー、アクリロニトリルポリマー、及び2種以上の本明細書に示したモノマーのコポリマー、塩素化したポリエチレン及び塩素化した塩化ビニルのポリマーなどの、等量若しくはより少ない量のポリマー改質剤との塩化ビニルポリマーのブレンドを含む、塩化ビニルポリマーを指すために使用している。用語ポリ塩化ビニルが本明細書で適用されるポリマー材料の種類をさらに代表するものは、その開示が参照により本明細書に組み込まれているWehner他、米国特許第6194494B1号の44欄29列〜45欄16列に開示される。
【0022】
本発明により使用される一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーは、不飽和エステル軟化モノマーとの一酸化炭素改質エチレンコポリマーの種類の代表であり、前記不飽和エステル軟化モノマーは、炭素原子1〜18個を有する飽和カルボン酸のビニルエステル、並びにアルキル基の炭素原子1〜10個を有するアクリル酸及びメタクリル酸アルキルである。典型的な不飽和エステル軟化モノマーには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、及びネオデカン酸ビニルが含まれる。典型的なアクリル酸及びメタクリル酸アルキル軟化モノマーには、アクリル酸メチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、及びメタクリル酸イソノニルが含まれる。軟化モノマーの混合物を使用することができる。
【0023】
本発明により使用される好ましいコポリマーを、下記の表に示す;
エチレン、重量% CO、重量% 不飽和エステル、重量%
69 3 酢酸ビニル、28
68.1 3 アクリル酸メチル、28
70.9 3.1 アクリル酸イソブチル、26
【0024】
本発明により使用されるアルカリ金属及びアルカリ土類金属過塩素酸塩には、過塩素酸バリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸ナトリウム、及び過塩素酸ストロンチウムが含まれる。本発明により、これらの過塩素酸塩の無水固体の形態、水和した固体の形態、及び水溶液を使用することができる。過塩素酸ナトリウムが好ましい。過塩素酸ナトリウム一水和物が特に好ましい。
【0025】
本発明により使用されるPVCは、剛直な又は柔軟なものとすることができる。柔軟なPVCが好ましい。当技術分野で知られているように、未改質の塩化ビニルホモポリマーの厚さを0.05mm未満に制限することにより、塩化ビニルを10〜20%の酢酸ビニルなどのコモノマーと共重合させること(いわゆる内部可塑化)により、また特に可塑剤として知られる相溶性の液体と配合することによるなどの技術によりPVCにたわみ性を付与している。当技術分野において、特に、炭素原子6〜12個を有するアルコールとのアジピン酸、クエン酸、フタル酸、及びトリメリト酸などのジカルボン酸及びトリカルボン酸のエステル、好ましくは、アルキル基において炭素原子7〜11個を有するフタル酸ジアルキル及びトリメリト酸トリアルキルを含む、多くの適切な可塑剤が知られている。適切な可塑剤の種類をさらに代表するものは、その開示が参照により本明細書に組み込まれているWehner他、米国特許第6194494B1号の37欄36列〜38欄51列に開示される。存在する場合の、可塑剤の使用レベルは、pvc100重量部当り5重量部〜125重量部の範囲とすることができる。
【0026】
本発明によるPVC組成物は、少なくとも1種の熱安定剤を通常含有する。ヒ素、カドミウム、鉛、及びタリウムなどの有毒な重金属を実質的に排除している環境的に許容できる熱安定剤に優先権が通常与えられる。特に好ましい金属含有熱安定剤は、炭素原子6〜24個を有する脂肪族及び芳香族非窒素含有モノカルボン酸のバリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及び亜鉛塩である。特に好ましい非金属含有熱安定剤は、脂肪族及び芳香族亜リン酸エステル、少なくとも200ダルトンの分子量を有する置換されたフェノール、エポキシド基を有し、かつ少なくとも200ダルトンの分子量を有するエーテル及びエステル、並びに少なくとも200ダルトンの分子量を有する1,3−ジカルボニル化合物である。適切な熱安定剤のさらなる範疇は、Wehner他、米国特許第6194494B1号の1欄4列〜2欄5列に開示され、またこれらの範疇を代表する多くの個々のものは2欄46列〜37欄25列、及び39欄8列〜42欄27列に開示される。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。存在する場合の、熱安定剤の使用レベルは、pvc100重量部当り0.01〜10重量部の範囲とすることができる。より多い量を使用することができるが、必要とされることはほとんどない。
【0027】
本発明の組成物において、必要に応じて従来の滑剤、難燃剤、着色剤、充填剤、及び他の配合剤並びに添加剤を含むことができる。難燃剤では、オクタモリブデン酸アンモニウム及び他のモリブデン酸塩、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、II族金属スズ酸塩及びヒドロキシスズ酸塩、並びにホウ酸亜鉛を挙げることができる。滑剤、難燃剤、着色剤、充填剤、及び他の配合剤並びに添加剤を収集するには、その開示が参照により本明細書に組み込まれているWehner他、米国特許第6194494B1号の37欄26〜35列、38欄52列〜39欄7列を参照することができる。
【0028】
下記の実施例は、例示として提供され、また、添付する特許請求範囲により定義される本発明を限定するものではない。
【0029】
(実施例1〜7)
2つの異なった物理的形態で供給された過塩素酸ナトリウムを有する典型的な軟質PVC化合物配合物において本発明の組成物の有効性を観察した。全ての量は、重量部で与えている。
PVC樹脂 100.0
DIDPフタル酸ジイソデシル可塑剤 40.0
炭酸カルシウム 15.0
エポキシダイズ油(安定剤) 5.0
二酸化チタン(白色顔料) 3.0
ステアリン酸 0.2
Ba/Zn固体安定剤 6.0
一酸化炭素改質エチレン酢酸ビニル 15.0
コポリマー(注)
注:DuPont Co.Elvaloy(登録商法)741ブランドコポリマー
【0030】
種々の量の60%過塩素酸ナトリウム一水和物水溶液(NaP−60と略記している)、又は、NaP−60溶液を33重量%含有するK.Bae他、米国特許第5034443号による粉末ブレンド組成物の形態における過塩素酸ナトリウム(粉末ブレンドとして示した)を、各実施例について下記に示すように、2台のロールミルを使用して本基本配合物とブレンドし、各ミルシートから採取した試料を、2つの温度、15分間隔で試料採取した350°F(177℃)、及び10分間隔で試料採取した375°F(190℃)において、静的オーブン安定性について試験した。
実施例 A 1 2 3 4 5 6 7
NaP−60、部、実際 なし 0.3 0.5 1.0 1.5 なし なし なし
粉末ブレンド、実際 なし なし なし なし なし 1.0 1.5 2.0
NaP−60として、部
/100部コポリマー なし 2.0 3.33 6.67 10.0 2.2 3.3 4.4
NaClOとして、部
/100部コポリマー なし 0.96 1.6 3.2 4.8 1.06 1.59 2.13
【0031】
実施例Aの組成物は、過塩素酸塩なしの比較対照PVC化合物である。この組成物は、最初177℃で、また190℃で褐色に変色し、また、177℃で、また190℃で暗褐色に変化したが、本発明による実施例1〜7における過塩素酸塩で処理したケトン改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーでは、供試化合物の色変化は遥かに少なかった。
【0032】
177℃オーブン試験では、実施例1〜7の色変化は最小限に留まり(120分間では褐色の兆候が全く見られない)、また190℃では、過塩素酸塩及び一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含有する実施例1〜7の化合物は、対照標準Aと比較して改良された長期安定性を示す。
【0033】
(実施例8〜11)
異なったレベルの過塩素酸ナトリウム一水和物、及び異なったレベルのケトン改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーを有する難燃性プレナム用基本配合物において本発明の組成物の有効性を観察した。
PVC樹脂 100
DIDP−Eフタル酸ジアルキル可塑剤 50
Omya Fブランド炭酸カルシウム 15
三酸化アンチモン難燃剤 5
ステアリン酸 0.3
一酸化炭素改質エチレン
−酢酸ビニルコポリマー 変動できる
NaClO含有粉末ブレンド 変動できる
【0034】
各実施例の配合物にブレンドし、350°F(177℃)及び400°F(205℃)において静的オーブン熱安定性について試験した、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー、及びNaP−60過塩素酸ナトリウム一水和物含有粉末ブレンドの量を、下記に示している:
実施例 B C D E 8 9 10 11
コポリマー、部 なし 10 20 30 10 20 30 30
粉末ブレンド、実際 なし なし なし なし 1.0 1.0 1.0 0.5
NaP−60として、
部、溶液 なし なし なし なし 0.33 0.33 0.33 0.167
NaP−60として、
/100部コポリマー 確認せず なし なし なし 3.3 1.65 1.1 0.55
乾燥NaClOとして
/100部コポリマー 確認せず なし なし なし 1.6 0.8 0.53 0.26
【0035】
実施例Bの組成物は、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーなしの、かつ過塩素酸塩なしの対照標準PVB化合物である。実施例C、D及びEの組成物は、過塩素酸塩なしでケトン改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含有する対照標準PVB化合物である。実施例B、C、D及びEの組成物は、安定剤を全く含有しない。
【0036】
実施例8〜11の組成物は、本発明による実施例であり、過塩素酸ナトリウム一水和物含有粉末ブレンドだけで安定化されている。
【0037】
それぞれの対照標準組成物は、177℃では15分で、また205℃では5分で早くも実質的な変色を示した。これと異なり、実施例8〜11の過塩素酸塩安定化組成物は、試験期間の大部分で変色が遅れ、177℃における60分では、対照標準組成物の177℃における15分よりも変色が少なく、また205℃における15分では、対照標準組成物の205℃における5分よりも変色が少なかった。
【0038】
過塩素酸塩の添加により、実施例6の褐色の変色は177℃において105分まで、また実施例7〜12ではその温度で全試験期間である120分間、実質的に防止された。205℃の試験では、僅か0.083部の過塩素酸ナトリウム一水和物溶液(実施例6において使用した粉末ブレンド0.25部中に含有されたもの)が褐色の変色を遅らせるのに有効であり、また過塩素酸塩のレベルを上げると、ますます有効であった。
【0039】
(実施例12〜16)
バリウム−亜鉛カルボン酸塩熱安定剤を添加した実施例8〜11のプレナム用基本配合物において本発明の組成物の有効性を観察した。
PVC樹脂 100
DIDP−Eフタル酸ジアルキル可塑剤 50
Omya Fブランド炭酸カルシウム 15
バリウム−亜鉛固体安定剤 6
三酸化アンチモン難燃剤 5
ステアリン酸 0.3
一酸化炭素改質エチレン
−酢酸ビニルコポリマー 変動できる
NaClO含有粉末ブレンド 変動できる
【0040】
各実施例の配合物にブレンドし、350°F(177℃)及び400°F(205℃)において静的オーブン熱安定性について試験した、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー、及びNaP−60過塩素酸ナトリウム一水和物含有粉末ブレンドの量を、下記に示している:
実施例 F G H 12 13 14 15 16
コポリマー、部 なし 15 30 15 15 30 30 30
粉末ブレンド、実際 なし なし なし 0.5 1.0 0.5 1.0 2.0
NaP−60として、
部、溶液 なし なし なし 0.167 0.33 0.167 0.33 0.67
NaP−60として、
/100部コポリマー 確認せず なし なし 1.11 2.23 0.55 1.11 2.23
乾燥NaClOとして
/100部コポリマー 確認せず なし なし 0.53 1.06 0.26 0.53 1.06
【0041】
実施例Fの組成物は、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーなしの、かつ過塩素酸塩なしの対照標準PVB化合物である。この組成物は、バリウム−亜鉛安定化組成物の典型的な挙動を示し、177℃での試験では45分で僅かな黄変が目立ち、205℃での試験では10分で僅かな黄変が目立った。実施例G及びHの組成物は、過塩素酸塩なしで一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含有する対照標準PVB化合物であり、コポリマー使用レベルが上がると、段々と早めになり、かつより強くなる変色を示した。すなわち、実施例G及びHの組成物は、177℃では30分で、また205℃では5分で、実施例Fにより177℃では45分でまた205℃では10分での僅かな黄色の変色に到達した。実施例G及びHの組成物はまた、177℃では90分で、また205℃では30分で、実施例Fの組成物が205℃において35分で到達したより強い褐色の変色に到達した。
【0042】
このことは、塩化ビニルポリマー組成物中に一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーを内蔵することに関連した熱安定性問題の悪化を例示している。
【0043】
対照的に、本発明による実施例12〜16の組成物は、177℃では30分でまた205℃では5分で、対照標準実施例G及びHよりも少ない黄変を示し、また対照標準実施例G及びHでは177℃における120分の試験終了前、又は205℃における40分の試験終了前に見られた褐色の変色は示さなかった。
【0044】
したがって、pvc中の一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマーにおける安定性問題は、本発明に従って過塩素酸ナトリウムを添加することにより打ち消され、かつむしろ逆転されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリ塩化ビニル;
B)ポリ塩化ビニル100重量部当り5重量部〜75重量部の範囲にある、一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー;
C)不飽和エステル軟化モノマー;
D)一酸化炭素改質エチレン−酢酸ビニルコポリマー100重量部当り0.03重量部〜10重量部の範囲にある、過塩素酸ナトリウム;
E)少なくとも1種の可塑剤であって、前記可塑剤が、独立に各アルキル基において炭素原子7〜11個を有するフタル酸ジアルキル及びトリメリト酸トリアルキルからなる群から選択されるもの;
F)1)炭素原子6〜24個を有する脂肪族及び芳香族非窒素含有モノカルボン酸のバリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及び亜鉛塩
2)少なくとも200ダルトンの分子量を有する置換フェノール
3)エポキシド基を有し、かつ少なくとも200ダルトンの分子量を有するエーテル及びエステル、並びに、
4)少なくとも200ダルトンの分子量を有する1,3−ジカルボニル化合物
からなる群から選択される少なくとも1種の熱安定剤;
G)滑剤;
H)着色剤;並びに
I)充填剤、
からなるプラスチック組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の熱安定剤が、含まれ、かつ、炭素原子7〜24個を有するモノカルボン酸のバリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、又は亜鉛塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱安定剤が、含まれ、かつ、エポキシド化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに難燃剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
難燃剤が、難燃剤では、オクタモリブデン酸アンモニウム及び他のモリブデン酸塩、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、II族金属スズ酸塩及びヒドロキシスズ酸塩、並びにホウ酸亜鉛からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。

【公開番号】特開2008−81749(P2008−81749A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331351(P2007−331351)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2003−560099(P2003−560099)の分割
【原出願日】平成15年1月2日(2003.1.2)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】