説明

改良プロセス

本発明は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(I)(レナリドマイド)およびその中間体3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを調製するための改良プロセスに関する。本発明はさらに、レナリドマイドのA型結晶を調製するための改良プロセス、有効医薬成分として、またはレナリドマイドのさらなる結晶形もしくは非晶質形の調製における中間体としての上記A型結晶の使用、レナリドマイドのA型結晶を含有する組成物、および疾患の治療におけるこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(I)(レナリドマイド)およびその中間体3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを調製するための改良プロセスに関する。本発明はさらに、レナリドマイドのA型結晶を調製するための改良プロセス、有効医薬成分として、またはレナリドマイドのさらなる結晶形もしくは非晶質形の調製における中間体としての上記のA型結晶の使用、レナリドマイドのA型結晶を含有する組成物、および疾患の治療におけるこれらの使用に関する。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
一般名称がレナリドマイドである3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(I)は、TNFαに拮抗する非ポリペプチド化合物であり、3’,5’−環状アデノシン一リン酸のレベルを上昇させると考えられている。レナリドマイドおよびさまざまな構造類似体は、自己免疫疾患および癌を含む幅広い症状の治療に有用である。構造的に、レナリドマイドはサリドマイドと密接に関係しており、先行技術において周知である(たとえば、N. Jonsson, Acta Pharm. Suecica, vol. 9, p.521-542, 1972を参照)。
【0004】
US5,635,517およびUS6,281,230には、ニトロ中間体である3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン1gを、1,4−ジオキサン200ml中、10%Pd/C触媒0.13gを用いて、50psi圧力で6.5時間水素化することによる、レナリドマイドの合成が記載されている。残渣を、酢酸エチルから、次に、ジオキサン/酢酸エチルから結晶化している。該特許は、収率が約36%であることを示している。
【0005】
同特許には、ニトロ中間体の調製も記載されている。4−ニトロ−フタル酸無水物を氷酢酸および酢酸ナトリウム中、2,6−ジオキソピペリジン−3−アンモニウムクロライドと結合させることで、1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−5−ニトロ−イソインドリンを54%の収率で得ている。ニトロ中間体である3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンは、上記記載と同じ反応条件に従って調製され、その結果、ニトロ中間体を約55%の低い収率で得ている。
【0006】
WO2006/028964には、置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソ−イソインドリンの調製プロセスが記載されている。そこに記載されたレナリドマイドの調製プロセスは、まず、L−グルタミン メチルエステルをアセトニトリル中、メチル 2−ブロモメチル−3−ニトロ−ベンゾエートと結合させ、結果として得られるN−(1−オキソ−4−ニトロ−イソインドール−2−イル)−L−グルタミンメチルエステルを環化させることによる、ニトロ中間体の調製を含んでいる。次に、該ニトロ化合物1gを、メタノール600ml中、10%Pd/C触媒を用いて50psiの水素で5時間水素化する。固体を熱い酢酸エチルでスラリー化し、乾燥することで、レナリドマイドを収率51%で得ている。
【0007】
記載された先行技術のプロセスには、
(1) 最終生成物の収率が低い、
(2) ニトロ中間体の収率が低い、および
(3) 水素化プロセスで大量の溶媒が用いられる、などの主な欠点がある。
【0008】
これらの欠点の結果、先行技術のプロセスは、
(1) 危険であり、また、
(2) 溶媒と基質との比が大きく、最終生成物であるレナリドマイドの収率が低いため、商業的な実現可能性が低い。
【0009】
したがって、溶媒の使用量を減少させ、その結果、先行技術のプロセスよりもより経済的でありかつより安全な合成経路が得られるレナリドマイドの調製プロセスを提供することが有利であろう。
【0010】
多くの化合物は、異なる結晶形または多形で存在し得る。これらの結晶形は、異なる物理的、化学的および分光学的性質を示し得る。たとえば、1つの化合物のある結晶多形は、他よりも特定の溶媒に溶けやすく、流動しやすく、圧縮しやすい可能性がある(たとえば、P. DiMartino et al., J. Thermal Analysis, vol. 48, p.447-458, 1997を参照)。医薬の場合、ある固体の結晶形は、他よりも生物学的利用性が高い一方で、他の固体の結晶形は、ある製造、保存および生物学的条件下でより安定である可能性がある。このことは、規制当局の観点から特に重要である。なぜなら、医薬は、厳密な純度および特徴付けの基準を満たして初めて、米国食品医薬品局などの機関により承認されるためである。実際に、ある溶解性および物理化学的(分光学を含む)性質を示す化合物の1つの結晶多形が規制当局により承認されても、典型的には、同じ化合物の他の結晶多形が直ちに承認されることを暗示するものではない。製薬技術分野において、化合物の結晶多形は、該化合物の、たとえば溶解性、安定性、流動性、フラクタル性および圧縮性、ならびにそれを含む医薬品の安全性および効果に影響を及ぼすことが知られている(たとえば、K. Knapman, Modern Drug Discovery, p.53-57, 2000を参照)。したがって、医薬の新たな結晶多形の発見は、さまざまな利点を提供し得る。
【0011】
レナリドマイドの新たな結晶多形およびそれらを調製するためのより効率的なプロセスは、医薬製剤の開発を促進でき、かつ、多数の製剤、製造および治療上の利益を生み出す可能性がある。
【0012】
US7,465,800には、レナリドマイドの数多くの結晶形、具体的にはA型〜II型の調製および特徴付けが記載されている。この特許に記載される研究は、B型が、有効医薬成分(API)として使用されるのに望ましい結晶多形であると結論付けている。B型は、APIの臨床研究用の薬品への製剤化に用いられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
APIの純粋な結晶形の調製は、多くの利点を提供する。APIの純粋な結晶形は、たとえば、臨床研究のため、または市販用の最終投与形態に組み入れるためのAPIの調製における中間体として使用することができる。したがって、規制当局に準拠するAPIを調製する作業において医薬製剤の調製者を支援するために、純粋な結晶形が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、ニトロ中間体3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの合成およびそのさらなる還元反応の両方のための溶媒を慎重に選択することにより、溶媒量が相当に減少し、中間体および最終アミノ化合物であるレナリドマイドの収率の驚くべき改善が得られることを見出した。
【0015】
したがって、本発明は、80%よりも高いモル収率および、驚くべきことに、99.9%(HPLC測定)よりも高い化学的純度が得られる、レナリドマイドの調製のための商業的に実現可能なプロセスを提供する。
【0016】
本発明は、90%(HPLC測定)よりも高いモル収率および99.8%よりも高い化学的純度が得られる、レナリドマイドの重要ニトロ中間体の調製のためのプロセスも提供する。
【0017】
したがって、本発明の第1の局面は、
(i) 溶媒系に3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを混合する工程と、
(ii) 工程(i)から得られる混合物を触媒と接触させる工程と、
(iii) 工程(ii)からの混合物を水素と接触させる工程とを含み、
溶媒系は、極性溶媒の混合物を含むことを特徴とする、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの接触還元を含む、レナリドマイドの調製プロセスを提供する。
【0018】
ここで用いられる「レナリドマイド」という用語は、特に明記しない限り、レナリドマイドの如何なる水和物、溶媒和物、結晶多形または鏡像異性体も含む。
【0019】
ここで用いられる「極性溶媒の混合物」という用語は、少なくとも2つの極性溶媒を含む混合物を意味する。
【0020】
本発明の第1の局面のプロセスの一実施形態においては、極性溶媒の混合物は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールおよび1〜3個の炭素原子を有する脂肪族ニトリルを含む。好ましくは、脂肪族ニトリルは、直鎖の脂肪族ニトリルである。
【0021】
好ましくは、アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールを含む群から選択され、好ましくは、アルコールはメタノールである。別の実施形態においては、ニトリルは、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである。特に好ましい実施形態は、アセトニトリルおよびメタノールを含む溶媒系を提供する。
【0022】
さらなる好ましい実施形態においては、アルコールは、約40%〜70%の間、より好ましくは約45〜55%の間で存在し、最も好ましくは、アルコールは、溶媒系の約50%で存在する。
【0023】
さらなる好ましい実施形態においては、ニトリルは、約40%〜70%の間、より好ましくは約45〜55%の間で存在し、最も好ましくは、ニトリルは、溶媒系の約50%で存在する。
【0024】
本発明の第1の局面のプロセスの一実施形態においては、ニトロ中間体と溶媒系との比(w/v)は、約1:30〜約1:200の間であり、好ましくは、比は、約1:60〜約1:100の間であり、最も好ましくは、比は、約1:70である。先行技術のプロセスにおいては、比は、1:600より大きい。
【0025】
本発明の第1の局面のプロセスのさらに別の実施形態においては、還元は、大気圧で実施され、さらなる特に好ましい実施形態においては、温度は、約20〜40℃の間に維持される。
【0026】
本発明の第1の局面のさらなる実施形態は、還元が約1〜3.5時間かけて進行するプロセスを提供し、最も好ましくは、還元は、約2.5時間かけて進行する。
【0027】
本発明の第1の局面のプロセスの別の実施形態においては、触媒は、パラジウム炭素を含み、好ましくは、パラジウム炭素触媒は、約40〜60%の間の水分を含み、最も好ましくは、水分は約50%である。
【0028】
発明の第2の局面は、
(i) 溶媒系にレナリドマイドを混合する工程と、
(ii) レナリドマイド塩を調製する工程と、
(iii) 工程(ii)で調製された塩から精製されたレナリドマイドを得る工程とを含む、レナリドマイドの精製プロセスを提供する。
【0029】
発明の第2の局面のプロセスの一実施形態においては、溶媒系は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコールおよび1〜3個の炭素原子を含む脂肪族ニトリルを含む。好ましくは、脂肪族ニトリルは、直鎖の脂肪族ニトリルである。
【0030】
一実施形態においては、ニトリルは、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである。別の実施形態においては、アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールを含む群から選択され、好ましくは、アルコールはメタノールである。
【0031】
本発明の第2の局面のプロセスの一実施形態においては、工程(ii)で、酢酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸、塩酸および硫酸を含む群から選択される酸の添加により塩を調製する。好ましくは、酸は塩酸である。
【0032】
本発明の第2の局面のプロセスの一実施形態においては、好適な塩基の添加によって工程(iii)から精製レナリドマイドを得る。好ましくは、塩基は、第二級または第三級脂肪族アミンであり、好ましくは、塩基は、トリエチルアミンである。
【0033】
一実施形態においては、塩基は、好適な溶媒系に混合され、溶媒系は好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールを含んでもよい。一実施形態においては、アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールを含む群から選択され、好ましくは、アルコールはメタノールである。
【0034】
本発明の第3の局面は、本発明の第1または第2の局面のプロセスによって調製されるレナリドマイドを提供する。レナリドマイドは、好ましくは、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有する。
【0035】
本発明の第3の局面はさらに、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有するレナリドマイドを提供する。
【0036】
好ましくは、本発明の第3の局面のレナリドマイドは、TNFαのレベルを低下させる、および/または、3’,5’−環状アデノシン一リン酸のレベルを上昇させるために好適である。
【0037】
好ましくは、本発明の第3の局面のレナリドマイドは、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するために好適である。
【0038】
本発明の第4の局面は、本発明の第3の局面のレナリドマイド、および医薬上許容されるキャリアまたは賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0039】
本発明の第5の局面は、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するための医薬の製造における、本発明の第3の局面のレナリドマイドの使用を提供する。
【0040】
本発明の第6の局面は、本発明の第3の局面のレナリドマイドを治療上有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療する方法を提供する。
【0041】
本発明の第7の局面は、3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩およびメチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートを溶媒系で反応させる工程を含み、その反応を約60℃未満で行うことを特徴とする、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製プロセスを提供する。
【0042】
本発明の第7の局面のプロセスの一実施形態においては、3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩は、有機溶媒に実質的に溶解されている。好ましくは、3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩は、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドに実質的に溶解されており、より好ましくは、3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩は、N,N−ジメチルホルムアミドに実質的に溶解されている。
【0043】
本発明の第7の局面のプロセスの一実施形態においては、メチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートは、メチル 2−ブロモメチル−3−ニトロ−ベンゾエートである。別の実施形態においては、メチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートは、1以上の極性溶媒に実質的に溶解されている。好ましくは、極性溶媒の少なくとも1つはニトリルであり、好ましくはアセトニトリルである。
【0044】
本発明の第7の局面のプロセスの別の実施形態においては、塩基が反応混合物に添加される。好ましくは、塩基は、4−ジメチルアミノピリジンまたはトリエチルアミンである。
【0045】
本発明の第8の局面は、本発明の第7の局面のプロセスにより調製される、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを提供する。好ましくは、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンは、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高い化学的純度を有する。
【0046】
本発明の第8の局面はさらに、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高い化学的純度を有する、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを提供する。
【0047】
発明者らは、US7,465,800に開示されるようなレナリドマイドのA型結晶を、純粋な形態で調製可能であることをさらに見出した。本発明の純粋なA型結晶は、APIそのものとして利用してもよく、または、任意の他の結晶形もしくは非晶質形、特にB型結晶の調製における中間体として用いてもよい。
【0048】
本発明のレナリドマイドのA型結晶は、無水物であり、非溶媒和物である。それは非吸湿性であり、現在最も熱力学的に安定な無水の結晶多形であるとみなされている。
【0049】
本発明のレナリドマイドのA型結晶は、図2に示されるXRPDパターンを有することが分かった。好ましくは、レナリドマイドのA型結晶は、CuKα1線が用いられるとき、2θ角度が約7.8、14.3、16.2、17.6、20.5、24.1および26.0±0.2°2θであるピークから選択される、少なくとも3つのピーク(好ましくは少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、好ましくは少なくとも6つ、または好ましくは7つのピーク)を含むXRPDパターンを有する。
【0050】
本発明のレナリドマイドのA型結晶は、図3に示されるDSCサーモグラムを有することが分かった。好ましくは、レナリドマイドのA型結晶は、約269℃±2℃に吸熱ピークを有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。
【0051】
本発明のレナリドマイドのA型結晶は、図4に示されるTGA曲線を有することが分かった。
【0052】
したがって、本発明の第9の局面は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールおよび式RCOOR’[式中、Rは、1〜4個の直鎖または分枝鎖の炭素原子を含み、R’は、1〜5個の直鎖または分枝鎖の炭素原子を含む。]を有する脂肪族エステルを含む溶媒系からレナリドマイドを結晶化させる工程を含む、レナリドマイドのA型結晶の調製プロセスを提供する。
【0053】
一実施形態においては、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、またはそれらの混合物であり、好ましくは、アルコールはメタノールである。別の実施形態においては、脂肪族エステルは、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、またはそれらの混合物であり、好ましくは、脂肪族エステルは酢酸エチルである。特に好ましい実施形態においては、溶媒系は、メタノールと酢酸エチルとを約1:1の比v/vで含む。
【0054】
本発明の第10の局面は、本発明の第9の局面のプロセスにより調製されるレナリドマイドのA型結晶を提供する。好ましくは、レナリドマイドのA型結晶は、約90%(XRPD測定)よりも高いか、約95%よりも高いか、約99%よりも高いか、約99.5%よりも高いか、約99.9%よりも高い多形純度を有する。好ましくは、レナリドマイドのA型結晶は、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有する。
【0055】
本発明の第10の局面は、約90%(XRPD測定)よりも高いか、約95%よりも高いか、約99%よりも高いか、約99.5%よりも高いか、約99.9%よりも高い多形純度を有するレナリドマイドのA型結晶をさらに提供する。好ましくは、レナリドマイドのA型結晶は、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有する。
【0056】
好ましくは、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶は、レナリドマイド結晶の調製における中間体としての使用に好適である。好ましくは、調製されたレナリドマイド結晶は、約90%(XRPD測定)よりも高いか、約95%よりも高いか、約99%よりも高いか、約99.5%よりも高いか、約99.9%よりも高い多形純度を有する。好ましくは、調製されたレナリドマイド結晶は、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有する。
【0057】
好ましくは、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶は、レナリドマイドのB型結晶の調製における中間体としての使用のために好適である。好ましくは、レナリドマイドのB型結晶は、約90%(XRPD測定)よりも高いか、約95%よりも高いか、約99%よりも高いか、約99.5%よりも高いか、約99.9%よりも高い多形純度を有する。好ましくは、レナリドマイドのB型結晶は、約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有する。
【0058】
好ましくは、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶は、TNFαのレベルを低下させる、および/または3’,5’−環状アデノシン一リン酸のレベルを上昇させるために好適である。
【0059】
好ましくは、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶は、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するために好適である。
【0060】
本発明の第11の局面は、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶、および1以上の医薬的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0061】
本発明の第12の局面は、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するための医薬の製造における、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶の使用を提供する。
【0062】
本発明の第13の局面は、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶を治療上有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療する方法を提供する。
【0063】
本発明の第14の局面は、本発明の第10の局面のレナリドマイドのA型結晶または本発明の第11の局面の組成物を含み、水分の浸入を実質的に防止するための手段をさらに含む、キットを提供する。一実施形態においては、その手段は、乾燥剤または水分不透過性バリアまたはそれらの組合せから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のレナリドマイドの調製についての好ましい実施形態の反応スキームを示す図である。
【図2】本発明のA型結晶のX線粉末回折(XRPD)パターンの図である。
【図3】本発明のA型結晶の示差走査熱分析(DSC)サーモグラムを示す図である。
【図4】本発明のA型結晶の熱重量分析(TGA)曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明者らは、本発明の第1の局面のレナリドマイドを、そのニトロ中間体3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンから、接触還元によって、より高い収率および純度で調製し得ることを見出した。本発明の反応は、先行技術と比べて驚くほど少ない量の溶媒を利用する。先行技術に勝る本発明の別の利点は、還元反応が大気圧で進行することである。これは、同様の反応が約50psi、およそ3.5気圧で実施される先行技術のプロセスにおける教示とは大きく異なる。
【0066】
本発明の第1の局面は、
(i) 溶媒系に3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを混合する工程と、
(ii) 工程(i)から得られる混合物を触媒と接触させる工程と、
(iii) 工程(ii)からの混合物を水素と接触させる工程とを含み、
溶媒系は、極性溶媒の混合物を含むことを特徴とする、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの接触還元を含む、レナリドマイドの調製プロセスを提供する。
【0067】
特に好ましい実施形態においては、ここでは「ニトロ中間体」と呼ばれる3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンは、2以上の極性溶媒を含む溶媒系に混合される。本発明の第1の局面の一実施形態においては、極性溶媒の混合物は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールおよび1〜3個の炭素原子を有する脂肪族ニトリルを含む。好ましくは、脂肪族ニトリルは、直鎖の脂肪族ニトリルである。
【0068】
好ましくは、アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールを含む群から選択され、別の実施形態においては、ニトリルはアセトニトリル、または代替的にはプロピオニトリルである。発明者らは、極性溶媒の混合物が、以前に記載されたよりも高い程度で、生成物であるレナリドマイドを可溶化し得ることを見出した。特に、アセトニトリルおよびメタノールを含む溶媒系は、とりわけ有利であり、利用される溶媒量が10倍まで減少されることが分かった。
【0069】
さらなる好ましい実施形態においては、アルコールは、約20%〜80%の間、より好ましくは約45〜55%の間で存在し、最も好ましくは、アルコールは約50%で存在する。特に好ましい実施形態は、アセトニトリルとメタノールとの1:1(v/v)混合物を含む溶媒系を提供する。
【0070】
第1の局面のプロセスの更なる実施形態においては、ニトロ中間体と溶媒系との比(w/v)は、約1:30〜約1:200の間であり、好ましくは、比は約1:60〜約1:100の間であり、最も好ましくは、比は約1:70である。発明者らは、この比において、使用される最小限の溶媒と合成プロセスの効率とのバランスが優れることを見出した。
【0071】
第1の局面のさらに別の実施形態においては、還元は大気圧で実施される。このことは、先行技術のプロセスに勝るいくつかの利点を与える。第1に、先行技術のより高い圧力で反応を維持するための特別な装置が必要なく、本発明のプロセスがより経済的になりかつエネルギ効率が高くなる。第2に、大気圧での反応は先行技術のより高い圧力よりも危険性が低く、本発明のプロセスがより安全であることを意味している。最後に、大気圧での反応は、商業的な量のための大規模化に、より適用しやすい。
【0072】
第1の局面の好ましい実施形態においては、還元プロセスは、水素ガスを反応混合物に吹き込むことを含み得る。発明者らは、本発明の還元プロセスを約20〜40℃の間の温度で行なうことにより、大幅に改善された不純物プロファイルが得られることを見出した。
【0073】
有効医薬成分(API)の純度は、市販される医薬品を開発する際に非常に重要な考慮点である。比較的純粋な生成物が、後の精製工程の数をできる限り少なくして、合成プロセスから得られることができると有利である。精製工程は、プロセスの費用を加算させ、APIの全体的な収率を低下させることにより、費用をさらに加算させる可能性がある。発明者らは、本発明の反応が、約20℃未満および約40℃超で行なわれると、反応時間が長くなり、未知の不純物が形成されたことを見出した。したがって、反応をこれらのパラメータの範囲内に維持することが、レナリドマイドを経済的に、かつより高い純度で調製するために好ましい。特に、温度を約32〜35℃の間に維持することにより、最良の結果が得られた。
【0074】
先行技術のプロセスは、最短でも5時間の反応時間を要する。対照的に、本発明の第1の局面のプロセスのある実施形態においては、還元は、約1〜3.5時間、特に好ましい実施形態においては、約2.5時間かけて進行する。発明者らは、より長い反応時間と不純物の形成との間には直接的な相関関係があることを見出した。発明者らによる実験により、約3.5時間を超える反応時間の結果、不純物が形成され、レナリドマイドの収率が低下することが示された。したがって、本発明のプロセスは、高価で時間のかかる精製工程の必要なしに、少なくともICH準拠の純度プロファイルを有するレナリドマイドを生成することができる。
【0075】
本発明の第1の局面のプロセスの別の実施形態においては、触媒は、パラジウム炭素を含み、反応混合物に添加される。特に好ましい実施形態においては、パラジウムは、10%の触媒を含む。当業者は、触媒パラジウム炭素(10%)が、好ましくは不活性雰囲気中で、好ましくは窒素で充填されるべきであることに気付くであろう。パラジウム触媒の添加前の不活性雰囲気は、ヘリウムなどの他の希ガスによっても発生することができる。不活性雰囲気の充填が必要となるのは、このような金属触媒が、本来自燃発火性であるためである。最も好ましくは、ここではPd/Cと呼ばれる、パラジウム炭素触媒は、約40〜60%の間の水分を含み、最も好ましくは、水分は、約50%である。先行技術には、約40〜60%の水分、最も好ましくは約50%の水分を有するPd/C触媒の使用に言及していない。発明者らは、本発明の上述の水分を有する触媒が、触媒の活性を緩和し、不純物の形成を防止することを見出した。発明者らによる実験により、Pd/C触媒が約40〜60%未満の水分を有する場合、結果として得られるレナリドマイドの品質は、ある不純物の形成により、より劣ることが分かったことが示された。好ましくは、添加される触媒の量は、ニトロ中間体である基質に対して約5〜20%の間である。最も好ましくは、量は約5〜15%の間である。ある実施形態においては、触媒は一度にすべて添加されるか、代替的な実施形態においては、触媒は、好ましくは等量に分けられて、異なったまたは同等に分割された間隔で反応混合物に添加され得る。複数のロットで触媒を添加すると、反応中に形成される未知の不純物の形成がより良好に制御されたという点において、より良質の生成物が与えられることが分かった。
【0076】
好ましくは、反応が完了すると、結果として得られたレナリドマイドは溶媒系に完全に溶解しており、触媒のみが反応混合物中に懸濁されたまま残る。当然ながら、このことは、溶液中のレナリドマイドを、触媒および如何なる非溶解不純物から分離することが非常に容易であることを意味する。好ましくは、触媒はろ過によって除去される。
【0077】
還元反応の完了後、レナリドマイド生成物は、そのまま容易に単離することができ、または当業者が利用可能な任意の手段によって付加塩として容易に単離することができる。発明者らは、塩としての単離が特に有利であることを見出した。第1に、塩が所与の溶媒中で塩基よりもより溶けにくい場合、物理的手段で分離するほうが容易である。第2に、レナリドマイドの塩の形態を利用した単離は、より高い純度のレナリドマイドが得られるという付加的な利益がある。この点において、発明者らは、塩酸塩を調製し、その後塩基の添加によりレナリドマイドを遊離させることにより、特に純粋な生成物が得られることを見出した。レナリドマイドの塩は、反応混合物に対応する酸を添加することによる、当業者に公知の従来の様式で調製することができる。使用できる酸の例は、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩およびフマル酸塩を生成する酸などの有機酸、ならびに塩酸および硫酸などの無機酸を含む。特に好ましい実施形態においては、気体の塩酸が有機溶媒に溶解し、さらなる実施形態においては、その有機溶媒は、1以上の直鎖または分枝鎖のC〜Cアルコールを含んでもよい。好ましい実施形態においては、アルコールはメタノール、または代替的には、イソプロパノールである。特に好ましい実施形態においては、イソプロパノールに塩化水素ガスを溶解させることにより塩酸溶液が調製される。レナリドマイドの塩が調製される実施形態においては、精製されたレナリドマイド塩基は、好適な有機塩基、たとえば、第二級または第三級アルキルアミンによる加水分解により遊離され得る。好ましい実施形態においては、レナリドマイドを遊離塩基として遊離させるために、トリエチルアミンを添加することができる。
【0078】
当然のことながら、当業者は、好ましい実施形態においては上述の酸塩基精製である精製が、単離プロセスの一部として、または単離されたレナリドマイドが適切な溶媒もしくは溶媒の混合物に再懸濁される追加的な工程として、行なうことができることを認識するであろう。したがって、本発明の第2の局面において、
(i) 溶媒系にレナリドマイドを混合する工程と、
(ii) レナリドマイド塩を形成する工程と、
(iii) 工程(ii)で調製された塩から純粋なレナリドマイドを得る工程とを含む、レナリドマイドの精製のためのプロセスが提供される。
【0079】
工程(i)のレナリドマイドは、たとえば、レナリドマイド塩基またはその塩など、レナリドマイドの如何なる形態も含み得ることが企図される。
【0080】
当然のことながら、精製に関して先に記載された実施形態は、本発明の第2の局面にも関連することを当業者は理解するであろう。
【0081】
したがって、特に好ましい精製プロセスは、レナリドマイド塩または塩基と無機または有機酸との反応によってレナリドマイド塩が調製される酸塩基精製を含む。特に好ましい酸は、気体の塩酸のメタノールまたは代替的にはイソプロパノール溶液である。レナリドマイド塩基または塩への酸の添加後、また、レナリドマイド塩の単離後、純粋なレナリドマイドは適切な塩基の添加により遊離される。最も好ましくは、塩基は、第二級または第三級アルキルアミンから選択され、最も好ましくはトリエチルアミンである。発明者らは、記載されるように塩酸塩を介して精製されたレナリドマイドによって、99.9%(HPLC測定)よりも高い、特に高い化学的純度を有する生成物が得られることを見出した。
【0082】
本発明の第1および第2の局面のプロセスにより、先行技術には記載されていない化学的純度を有するレナリドマイドが得られる。発明者らは、好適な塩を介して精製されたレナリドマイドにより、さらに高い純度を有する生成物が得られることを見出した。特に好ましい実施形態においては、塩酸塩からの遊離により精製されるレナリドマイドは、99.9%(HPLC測定)よりも高いオーダの、特に高い化学的純度を有することが分かった。
【0083】
したがって、本発明の第3の局面は、99.5%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有し、最も好ましくは99.8%よりも高く、最も好ましい実施形態においては99.9%よりも高い化学的純度を有するレナリドマイドを提供する。
【0084】
得られたレナリドマイドは、好ましくは、当業者に公知の任意の手段により乾燥される。乾燥温度は、速度と生成物の熱劣化を防止することとのバランスを取って選択される。このような条件は、当業者が識別する技能のセットの範囲内である。発明者らは、乾燥温度を、およそ3時間、100mmHg圧力で約45〜50℃の間に保つことが好ましいことを見出した。
【0085】
本発明の第7の局面は、3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩およびメチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートを溶媒系で反応させる工程を含み、その反応を約60℃未満で行うことを特徴とする、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製プロセスを提供する。先行技術のプロセスは、N,N−ジメチルホルムアミドのような高沸点溶媒中で環流を維持するために必要なより高い反応温度などの激しい反応条件を含む。
【0086】
一実施形態においては、3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩は、有機溶媒に実質的に溶解されており、好ましくは、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドであり、より好ましくは、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0087】
本発明の第7の局面の別の実施形態においては、メチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートは、メチル 2−ブロモメチル−3−ニトロ−ベンゾエートである。特に好ましい実施形態においては、メチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートは、1以上の極性溶媒に実質的に溶解されている。好ましい実施形態においては、極性溶媒の少なくとも1つはニトリルである。最も好ましくは、ニトリルはアセトニトリルである。
【0088】
本発明の第7の局面の別の実施形態は、塩基が反応混合物に添加され、好ましくは、その塩基は、4−ジメチルアミノピリジンおよびトリエチルアミンから選択される、プロセスを提供する。
【0089】
3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを調製するための本発明のプロセスにより、先行技術に記載されていない化学的純度を有する上記の化合物が得られる。したがって、第8の局面は、99.5%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有し、最も好ましくは、99.8%よりも高い化学的純度を有する、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを提供する。
【0090】
本発明の第7の局面の特に好ましい実施形態は、
(a) N,N−ジメチルホルムアミドに3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩を混合する工程と、
(b) 有機塩基、好ましくは4−ジメチルアミノピリジンまたは代替的にはトリエチルアミンを添加する工程と、
(c) 極性溶媒、好ましくはニトリル、最も好ましくはアセトニトリルに、撹拌しながらメチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートを添加する工程と、
(d) 工程(c)からの反応混合物を60℃未満の温度に、反応の完了まで、最も好ましくは約5〜10時間加熱する工程と、
(e) 溶媒の3分の2ほどを、好ましくは減圧下蒸留により、また、さらなる実施形態においては、60℃未満で、除去する工程とを含む、
ニトロ中間体3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製を提供する。
【0091】
ニトロ中間体を単離し、さらに、必要に応じて精製するためのさらなる工程は、
(a) 反応混合物の残査を熱湯で洗浄し、その後、好ましくは冷却、およびその後のろ過により、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを単離する工程と、
(b) 単離された固体を温水で、その後メタノールで洗浄し、不純物を除去する工程とを含んでもよい。
【0092】
特に好ましい実施形態においては、単離された固体は、好ましくは約50〜60℃の間で、好ましくは約50〜55℃の間で、好ましくは減圧下で乾燥され、紫から灰色を呈する固体が得られる。
【0093】
ここで用いられる「混合物」という用語は、溶液、懸濁液およびコロイドなどに完全にまたは部分的に溶解された溶質を含み得る。
【0094】
US7,465,800は、B型およびE型以外は、そこに開示された如何なる型の多形純度について開示していない。A型は、1−ブタノール、酢酸ブチル、エタノール、酢酸エチル、メタノール、メチルメチルケトンおよびテトラヒドロフランを含むさまざまな溶媒からの結晶化により得られることが開示されている。しかし、どの溶媒系により純粋なA型結晶を調製し得るのかを、過度の負担なしに判断することは、当業者の非発明的な能力を超えている。実際に、どれが純粋なA型結晶を与える最良の溶媒または溶媒の組合せであるかを当業者に示唆さえさせるような教示または動機すら存在しない。
【0095】
発明者らは、以前は未開示の具体的な溶媒の混合物からレナリドマイドを結晶化することにより、APIそのものとしての使用のために好適であるか、またはレナリドマイドの他の結晶形もしくは非晶質形の調製における中間体としての使用のために好適である、純粋な結晶形が得られることを見出した。
【0096】
したがって、本発明の第9の局面においては、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールおよび式RCOOR’[式中、Rは、1〜4個の直鎖または分枝鎖の炭素原子を含み、R’(アルコール部分)は、1〜5個の直鎖または分枝鎖の炭素原子を含む。]を有する脂肪族エステルを含む溶媒系からレナリドマイドを結晶化させる工程を含む、レナリドマイドのA型結晶の調製のためのプロセスが提供される。如何なる形態の粗レナリドマイドも利用し得ることが当業者には明らかであろう。レナリドマイドの異なる結晶形の混合物を、本発明の望ましいA型結晶に結晶化させてもよい。
【0097】
このような溶媒の混合物からレナリドマイドを結晶化させることにより、90%(XRPD測定)よりも高い、好ましくは95%よりも高い多形純度を有する生成物が得られることが分かった。
【0098】
第9の局面の好ましい実施形態においては、アルコールはメタノールであり、さらなる好ましい実施形態においては、エステルは酢酸エチルである。特に好ましい実施形態においては、溶媒の混合物は、最も好ましくは1:1(v/v)の比で、酢酸エチルとメタノールとを含む。このメタノールと酢酸エチルとの特定の比により、99%よりも高いか、好ましくは99.5%よりも高いか、最も好ましくは99.9%よりも高い化学的純度(HPLC面積百分率法)を有する生成物が得られることが示された。
【0099】
本発明の第10の局面においては、レナリドマイドのA型結晶は、純粋なレナリドマイド結晶の調製における中間体としての使用のために、第9の局面の実施形態のいずれかに従い調製される。当然ながら、最終のレナリドマイドの結晶形は、結晶化の条件に依存することが理解されるであろう。レナリドマイドの結晶多形B型〜H型を調製するための条件は、US7,465,800に与えられている。たとえば、B型はヘキサン、トルエンおよび水から結晶化されることができ、C型は、アセトン溶媒系における蒸発、スラリーおよび徐冷から得ることができる。US7,465,800によるA型〜II型の調製および特徴付けに関する開示は、その全体が、ここに引用により援用されている。特に、発明者らは、A型が最も熱力学的に安定な型であると判断した。実際には、B型は、加熱の条件下、A型に変換する。
【0100】
純粋なA型が一旦得られると、当該技術分野において慣例の、または当業者に公知の任意の手段により単離してもよい。一実施形態においては、固体は溶媒のろ過により得られる。好ましくは、ろ過された固体は、真空ろ過により得られる。好ましくは、生成物は、A型結晶の変換を誘発せず、その劣化を引起さない温度で乾燥される。発明者らは、約150〜200mmHgの間の圧力で、約50〜55℃の間で、重量が一定になるまで生成物を乾燥させることが特に好ましいことを見出した。
【0101】
本発明の第11の局面においては、本発明の第9の局面に従って調製されるレナリドマイドまたは本発明の第10の局面のレナリドマイド、および1以上の医薬的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物が提供される。
【0102】
さらに、A型は、水性溶媒系でB型に変換することが分かった。これは、本発明のいくつかの実施形態においては望ましくない可能性がある。したがって、第14の局面においては、第11の局面の組成物を含み、水分の浸入を実質的に防止するための手段をさらに含む、キットが提供される。好ましくは、その手段は、乾燥剤、または組成物に近接する雰囲気から水分を低減するか除去することの可能な化合物から選択される。別の好ましい手段は、水分不透過性バリアである。たとえば、乾燥剤としてのシリカまたは本発明の組成物を含むブリスターパックなど、組成物に達する水分を防止する目的を達成する、当業者に公知の如何なる例も使用され得る。水分の浸入を防止するための手段は、組合せて使用してもよい。上記の水分の浸入を防止するための最も好適な手段は、当業者が決定する技能のセットの十分に範囲内である。
【0103】
発明に従って調製されるレナリドマイドは、そのものとして投与されても、またはより好ましくは医薬組成物中で投与されてもよい。したがって、本発明は、発明に従って調製されるレナリドマイドまたは本発明のレナリドマイドの結晶形を含み、1以上の医薬的に許容される賦形剤をさらに含有する医薬組成物も提供する。
【0104】
ここで用いられる「医薬的に許容される」という用語は、ヒトおよび獣医学的な使用の両方のための化合物、組成物および成分を包含する。
【0105】
経口投与形態は、単位投与形態あたり1〜100mgの医薬を含有する、錠剤、カプセル剤、糖衣錠、および同様の形状の圧縮された製薬形態を含む。5〜100mg/mlを含有する等張性生理的食塩水は、非経口投与のために用いることができ、その非経口投与は、筋肉内、髄腔内、静脈内、および動脈内投与経路を含む。直腸投与は、カカオバターなどの従来のキャリアから製剤化される坐剤の使用を通して実施され得る。
【0106】
所望により、組成物は、記入または印刷された使用上の指示を伴うパックの形態であってもよい。
【0107】
通常、本発明の医薬組成物は、経口投与用に適合される。経口投与用に特に好適な組成物は、錠剤およびカプセル剤などの単位投与形態であり、特にカプセル剤である。サシェに入れられた粉末など、他の固定単位投与形態も用いてもよい。
【0108】
このような組成物を調製する際、この場合レナリドマイドである有効医薬成分は、通常、賦形剤と混合されるか、もしくはそれにより希釈されるか、またはカプセル剤もしくはサシェの形態であり得るこのようなキャリア内に封入される。賦形剤が希釈剤として働く場合、それは、有効成分のためのビヒクル、キャリア、または媒体として作用する固体、準固体、または液体材料であってもよい。したがって、本組成物は、錠剤、丸剤、粉剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、軟質および硬質ゼラチンカプセル剤、坐剤、無菌注射用液剤および無菌包装粉剤の形態であり得る。好適な賦形剤の例は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリジノン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースを含む。製剤はさらに、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油などの滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、メチルヒドロキシベンゾエートおよびプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤、甘味剤または矯味剤を含み得る。
【0109】
以下に、本発明の詳細、その目的および利点を、非限定的な例示的な例に関して、より詳細に説明する。
【実施例】
【0110】
実施例1: 3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製
トリエチルアミン(140.8g,2.29mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(800ml)中の3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩(100g,0.61mol)の溶液に25〜30℃で添加した。次に、アセトニトリル(200ml)中のメチル 2−ブロモメチル−3−ニトロ−ベンゾエート(186.0g,1.13mol)の溶液を撹拌および窒素雰囲気下で添加し、反応混合物を8〜10時間、50〜55℃に加熱した。反応の完了後、およそ60%の溶媒を減圧(100mbar)下、50〜60℃での蒸留により除去した。水(1000ml)を50〜55℃で残査混合物に添加し、この温度で1時間撹拌した。結果として得られた固体生成物を25〜30℃に冷却してろ過した。固体を50〜55℃の水(500ml)で洗浄し、周囲温度で冷却し、再度ろ過した。最後に、固体を50〜55℃のメタノール(500ml)により洗浄し、25〜30℃で冷却し、ろ過した。ろ過した固体生成物を低圧(200mmHg)下で4時間、50〜55℃で乾燥し、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを紫から灰色を呈する固体として得た。
【0111】
収率:145〜155g(83〜88%)
HPLC純度:99.8%(面積百分率)
実施例2: 3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(I)(レナリドマイド)の調製
3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(100g,0.35mol)をアセトニトリルとメタノールとの混合物(7000ml,1:1,v/v)に溶解した。メタノール(25ml)中の10%Pd炭素(5.0g)のスラリーを含み、約50%の水分を有する触媒を窒素雰囲気下で添加した。窒素ガスを水素ガスで置換して、撹拌しながら反応混合物に吹き込んだ。反応混合物を30〜35℃に維持した。1時間後、2回目の量の触媒を添加し、水素吹き込みを、およそ2〜2.5時間の合計時間後の反応の完了まで継続した。反応の完了はTLCにより監視した。触媒はろ過により完全に除去された。ろ液を45〜50℃の温度および80〜100mmHg圧力での蒸留により濃縮し、溶媒のおよそ3分の2を除去した。イソプロパノール溶液としての等モル量の塩化水素を残査スラリーにゆっくりと添加した。次に、混合物を約5〜10℃の間に冷却し、結果として得られたレナリドマイド塩酸塩の固体をろ過して、メタノールで洗浄し乾燥した。
【0112】
ろ過したレナリドマイド塩酸塩をメタノール(500ml)に再懸濁し、トリエチルアミン(1.1モル当量)を反応混合物にゆっくりと添加した。反応混合物を5〜10℃に冷却し、遊離されたレナリドマイドをろ過して、メタノールで洗浄し乾燥した。
【0113】
収率:70g(78%)
HPLC純度:〜99.5%(面積百分率)
実施例3: レナリドマイドのさらなる精製
レナリドマイドを上記のように調製した。
【0114】
レナリドマイド(70g)をアセトニトリルとメタノールとの混合物(700ml,1:1,v/v)で再懸濁し、粗レナリドマイドと等モル部の塩化水素イソプロパノール溶液をゆっくりと添加した。反応混合物を周囲温度で45分間撹拌し、次に、5〜10℃に徐冷し、この温度でさらに45分間維持した。沈殿した固体をろ過して乾燥した。固体を周囲温度のメタノール(100ml)で洗浄し、ろ過し、乾燥して、溶媒をすべて除去した。
【0115】
レナリドマイド塩酸塩をメタノール(350ml)に懸濁し、1.1モル当量のトリエチルアミンを撹拌しながらゆっくりと添加した。反応混合物を次の45分間、周囲温度で撹拌し、次に5〜10℃で冷却し、次の45分間、同じ温度で維持した。沈殿した固体をろ過して乾燥した。次に、メタノール(105ml)で洗浄し、結果として得られたレナリドマイドをろ過により単離した。純粋な生成物は、50〜55℃および150〜200mmHg圧力で、約7〜8時間乾燥した。
【0116】
収率:65g(93%)
HPLC純度:〜99.9%(面積百分率)
実施例4: A型結晶の調製
実施例2または3で調製したレナリドマイド(70g)を酢酸エチルとメタノールとの混合物(700ml,1:1,v/v)と1〜1.5時間撹拌し、真空ろ過により単離した。次に、生成物を50〜55℃および150〜200mmHg圧力で、7〜8時間乾燥し、純粋なレナリドマイドのA型結晶を得た。これを、図2〜図4にそれぞれ示されるXRPDパターン、DSCサーモグラムおよびTGA曲線により特徴付けた。
【0117】
収率:65g(93%)
HPLC純度:〜99.9%(面積百分率法)
多形純度:〜99.9%(XRPD測定)
XRPD分析を、CuKα1線源を用いて、Bruker D8 Advance回折装置で行なった。DSC分析をPerkin Elmer Pyris 6 分光光度計で行ない、10℃/分の加熱速度で25〜350℃の温度範囲にわたり記録した。TGA分析をPerkin Elmer Pyris 1 分光光度計で行ない、10℃/分の加熱速度で25〜350℃の温度範囲にわたり記録した。
【0118】
本発明が例としてのみ上述されたことが理解されるであろう。実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。さまざまな変形例および実施形態が、以下の請求項によってのみ定義される、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに行なわれ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 溶媒系に3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを混合する工程と、
(ii) 工程(i)から得られる混合物を触媒と接触させる工程と、
(iii) 工程(ii)からの混合物を水素と接触させる工程とを含み、
前記溶媒系は、極性溶媒の混合物を含むことを特徴とする、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの接触還元を含む、レナリドマイドの調製プロセス。
【請求項2】
前記極性溶媒の混合物は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールおよび1〜3個の炭素原子を有する脂肪族ニトリルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記脂肪族ニトリルは、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである、請求項2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記溶媒系は、アセトニトリルおよびメタノールを含む、請求項3または4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコールは、約40%〜70%の間で存在する、請求項2〜5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記アルコールは、約45%〜55%の間で存在する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アルコールは、約50%で存在する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ニトリルは、約40%〜70%の間で存在する、請求項2〜8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記ニトリルは、約45%〜55%の間で存在する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ニトリルは、約50%で存在する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンと前記溶媒系との比(w/v)は、約1:30〜約1:200の間である、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記比は、約1:60〜約1:100の間である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記比は、約1:70である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記還元は、大気圧で実施される、請求項1〜14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
前記還元は、約20〜40℃の間に維持される、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記還元は、約1〜3.5時間かけて進行する、請求項1〜16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記還元は、約2.5時間かけて進行する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒は、パラジウム炭素を含む、請求項1〜18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
パラジウム炭素触媒は、約40〜60%の間の水分を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記水分は、約50%である、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
(i) 溶媒系にレナリドマイドを混合する工程と、
(ii) レナリドマイド塩を調製する工程と、
(iii) 工程(ii)で調製された塩から精製されたレナリドマイドを得る工程とを含む、
レナリドマイドの精製をさらに含む、請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶媒系は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコールおよび1〜3個の炭素原子を含む脂肪族ニトリルを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記脂肪族ニトリルは、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項23または24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記アルコールは、メタノールである、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記塩は、工程(ii)で、酢酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸、塩酸および硫酸を含む群から選択される酸の添加により調製される、請求項22〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項28】
前記酸は、塩酸である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
工程(iii)からの前記精製されたレナリドマイドは、好適な塩基の添加により得られる、請求項22〜28のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
前記塩基は、第二級または第三級脂肪族アミンである、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記塩基は、トリエチルアミンである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記塩基は、好適な溶媒系に混合される、請求項29〜31のいずれかに記載のプロセス。
【請求項33】
前記溶媒系は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールを含む、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記アルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記アルコールは、メタノールである、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれかに記載のプロセスにより調製されるレナリドマイド。
【請求項37】
約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高いか、約99.9%よりも高い化学的純度を有する、請求項36に記載のレナリドマイド。
【請求項38】
約99.5%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有するレナリドマイド。
【請求項39】
約99.8%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有するレナリドマイド。
【請求項40】
約99.9%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有するレナリドマイド。
【請求項41】
TNFαのレベルを低下させる、および/または、3’,5’−環状アデノシン一リン酸のレベルを上昇させるための、請求項36〜40のいずれかに記載のレナリドマイド。
【請求項42】
自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するための、請求項36〜41のいずれかに記載のレナリドマイド。
【請求項43】
請求項36〜42のいずれかに記載のレナリドマイド、および医薬上許容されるキャリアまたは賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項44】
自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するための医薬の製造における、請求項36〜42のいずれかに記載のレナリドマイドの使用。
【請求項45】
請求項36〜42のいずれかに記載のレナリドマイドを治療上有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療する方法。
【請求項46】
3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩およびメチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートを溶媒系で反応させる工程を含み、前記反応を約60℃未満で行うことを特徴とする、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製プロセス。
【請求項47】
前記3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩は、有機溶媒に実質的に溶解されている、請求項46に記載のプロセス。
【請求項48】
前記3−アミノ−ピペリジン−2,6−ジオン塩酸塩は、N,N−ジメチルホルムアミドに実質的に溶解されている、請求項47に記載のプロセス。
【請求項49】
前記メチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートは、メチル 2−ブロモメチル−3−ニトロ−ベンゾエートである、請求項46〜48のいずれかに記載のプロセス。
【請求項50】
前記メチル 2−ハロメチル−3−ニトロ−ベンゾエートは、1以上の極性溶媒に実質的に溶解されている、請求項46〜49のいずれかに記載のプロセス。
【請求項51】
前記極性溶媒の少なくとも1つはニトリルである、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記ニトリルは、アセトニトリルである、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
塩基が反応混合物に添加される、請求項46〜52のいずれかに記載のプロセス。
【請求項54】
前記塩基は、4−ジメチルアミノピリジンまたはトリエチルアミンである、請求項53に記載のプロセス。
【請求項55】
請求項46〜54のいずれかに記載のプロセスにより調製される、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン。
【請求項56】
約99.5%(HPLC測定)よりも高いか、約99.8%よりも高い化学的純度を有する、請求項55に記載の3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン。
【請求項57】
約99.5%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有する、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン。
【請求項58】
約99.8%(HPLC測定)よりも高い化学的純度を有する、3−(1−オキソ−4−ニトロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン。
【請求項59】
1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールおよび式RCOOR’[式中、Rは、1〜4個の直鎖または分枝鎖の炭素原子を含み、R’は、1〜5個の直鎖または分枝鎖の炭素原子を含む。]を有する脂肪族エステルを含む溶媒系からレナリドマイドを結晶化させる工程を含む、レナリドマイドのA型結晶の調製のためのプロセス。
【請求項60】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、またはその混合物である、請求項59に記載のプロセス。
【請求項61】
前記アルコールは、メタノールである、請求項60に記載のプロセス。
【請求項62】
前記脂肪族エステルは、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、またはその混合物である、請求項59〜61のいずれかに記載のプロセス。
【請求項63】
前記脂肪族エステルは、酢酸エチルである、請求項62に記載のプロセス。
【請求項64】
前記溶媒系は、メタノールと酢酸エチルとを約1:1の比v/vで含む、請求項59〜63のいずれかに記載のプロセス。
【請求項65】
請求項59〜64のいずれかに記載のプロセスにより調製される、レナリドマイドのA型結晶。
【請求項66】
約90%よりも高いか、約95%よりも高いか、約99%よりも高いか、約99.5%よりも高いか、約99.9%よりも高い多形純度を有する、請求項65に記載のレナリドマイド。
【請求項67】
約90%よりも高い多形純度を有する、レナリドマイドのA型結晶。
【請求項68】
約95%よりも高い多形純度を有する、請求項67に記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項69】
約99%よりも高い多形純度を有する、請求項68に記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項70】
約99.5%よりも高い多形純度を有する、請求項69に記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項71】
約99.9%よりも高い多形純度を有する、請求項70に記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項72】
TNFαのレベルを低下させる、および/または、3’,5’−環状アデノシン一リン酸のレベルを上昇させるための、請求項65〜71のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項73】
自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するための、請求項65〜72のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項74】
レナリドマイド結晶の調製における中間体としての使用のための、請求項65〜71のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項75】
レナリドマイドのB型結晶の調製における中間体としての使用のための、請求項65〜71のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶。
【請求項76】
請求項65〜73のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶、および1以上の医薬的に許容される賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項77】
自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療するための医薬の製造における、請求項65〜73のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶の使用。
【請求項78】
請求項65〜73のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶を治療上有効な量、それを必要とする患者に投与する工程を含む、自己免疫疾患、免疫疾患、癌、腫瘍形成性症状、腫瘍学的症状もしくは癌の症状、望ましくない血管形成、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、炎症、炎症性障害、またはウイルス感染を治療する方法。
【請求項79】
請求項65〜73のいずれかに記載のレナリドマイドのA型結晶または請求項76に記載の医薬組成物を含み、水分の侵入を実質的に防止するための手段をさらに含む、キット。
【請求項80】
前記手段は、乾燥剤または水分不透過性バリアまたはその組合せから選択される、請求項79に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519207(P2012−519207A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552515(P2011−552515)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050352
【国際公開番号】WO2010/100476
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(508116469)ジェネリクス・(ユーケー)・リミテッド (34)
【Fターム(参考)】