説明

改良接着特性を有する水性ポリエステル−ポリウレタン分散液

本発明は新規な水性ポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液、該樹脂分散液を含有する塗料及び該塗料から調製される塗装材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な水性ポリエステル−ポリウレタン分散液、該分散液を含有する塗料、及び該塗料から調製される塗装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン的に変性されたポリウレタン分散液及びこれらの水性配合物は当該分野においては知られている。イオン的に変性されたポリウレタンの水性配合物の1つの重要な利用分野はプラスチック製品の塗装分野である。
【0003】
長年にわたって、乗用車やインテリアの分野における減量化に伴って、プラスチックの使用量が増大している。美的観点や技術的観点からの要求に起因して、i)外部からの影響(例えば、日光、化学薬品、熱的及び機械的な暴露等)から保護するため、ii)一定のシェード(shade)効果や色効果を得るため、iii)プラスチック表面の欠陥を遮蔽するため、又はiv)プラスチック表面に心地よい感じ(触知性)を付与するために、通常は、自動車用プラスチック製品は塗装処理に付される。自動車の内部に用いられるプラスチック製品の触知性を高めるために、最近になって、所謂「ソフト感塗装材料」の使用量が増加している。
【0004】
本発明の目的に関係する「ソフト感効果」は、塗装表面の特別な触感的感覚(触知性)を意味する。この「触知性」は、例えば、ビロードのような感じ、ソフトな感じ、ゴムのような感じ若しくは暖かい感じ等の用語で表現することができる。これに対して、例えば、塗装された車体の表面又は非塗装ポリマーシートあるいは常套のクリアコート若しくはトップコートで塗装されたプラスチック製品、例えば、ABS製、「マクロロン」(バイエル社製のポリカーボネート)製若しくは「プレキシグラス」製の製品は冷たくて平滑な感じを与える。
【0005】
一方、溶剤の環境への放出を回避しようとする趨勢に鑑み、最近では、例えば、独国特許公報DE−A14406159号に記載されているようなポリウレタン化学に基づくソフト感付与性の水性塗料材料が使用されるようになっている。この種の塗料材料は、優れたソフト感効果をもたらすと共に、プラスチック製支持体に対して優れた耐性と保護効果を付与する。
【0006】
しかしながら、この種の塗料材料は、多数のプラスチック製支持体に対して十分な接着性を示さないことが判明している。このような欠点を解消するために、現在の従来技術による高級なプラスチック製部材に関する塗装系においては2層若しくは3層の塗膜層を形成させている。この種の塗装系はプライマー(primer)、所望によるベースコート(basecoat)及びトップコート(topcoat)を含む。この塗装系におけるプライマーは、支持体と塗料材料との間の定着剤としての機能を果たす。
【0007】
このため、プラスチック製品の塗装分野においては、支持体に対して優れたソフト感特性だけでなく、優れた接着性を付与する塗料製品が要請されている。このような製品は、プライマーを使用せずに、単一の塗装系において使用できるものである。
【0008】
独国特許公報DE−A12651506号には、水分散性ポリウレタンの製造法が開示されている。しかしながら、この製造法は、プラスチック製品用の単一塗膜のソフト感をもたらす塗料材料として使用するためには不適当である。
【0009】
同様に、ソフト感をもたらす塗料材料が独国特許公報DE−A14406159号に記載されているが、塗膜の十分な接着特性は得られていない。
【0010】
独国特許公報DE−A110138765号には、水性ポリウレタン(PU)分散液中において芳香族ジオールを出発原料として調製されるポリエーテルを使用することによって、多種の支持体に対して改良された接着性を示すという観点から、下塗バインダーとして適当な製品が得られることが開示されている。しかしながら、この種の製品は十分な触知性を示さないために、ソフト感を示す塗料材料としては不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ソフト感を示す塗料材料としての適合性を有すると共に、プラスチック製支持体に対して優れた接着性を示す水性ポリウレタン分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、芳香族ジカルボン酸に基づくポリエステルポリオールを60重量%よりも多く含むポリエステルポリオールを含有するポリウレタン分散液が、プラスチック製支持体上に形成される塗膜の接着特性を実質上増大させることが判明した。
【0013】
即ち本発明は、ポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液の製造法であって、下記の成分i)〜iii)を下記の成分iv)と反応させてプレポリマーを形成させ、該プレポリマーを有機溶剤に溶解させた後、下記の成分v)及びvi)と反応さることによって調製される分散液を水の添加による沈殿処理に付し、次いで、有機溶剤を除去することを含む該製造法に関する:
i)少なくとも300ダルトンの平均分子量を有する1種若しくは複数種のポリオール成分(この場合、該ポリオール成分少なくとも1種はポリエステルポリオールであって、芳香族ポリカルボン酸に基づくポリエステルポリオールの含有量は60重量%よりも多い)、
ii)62〜299ダルトンの平均分子量を有する所望による1種若しくは複数種のポリオール成分、
iii)イソシアネート重付加反応用の所望による単官能性化合物であって、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量及び少なくとも400ダルトンの分子量を有する該化合物、
iv)ポリイソシアネート、
v)60〜300ダルトンの分子量を有する1種若しくは複数種の脂肪族ポリアミン又はヒドラジン、
vi)親水性化脂肪族ジアミン。
【0014】
本発明は、本発明による上記方法によって得られるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、「ポリウレタン」という用語は、「ポリウレタン−ポリウレア」、即ち、ウレタン基だけでなく、ウレア基を有する高分子量化合物も包含する。
【0016】
本発明による水性ポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液を製造するために適した合成成分i)は、イソシアネート基と反応し得る遊離のヒドロキシル基を少なくとも2個有する有機化合物である。この種の化合物としては、少なくとも300,好ましくは500〜8000,より好ましくは800〜5000の分子量を有するポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール及びポリエーテルポリオールからなる群に含まれる比較的高い分子量を有する化合物が例示される。好ましいこの種の化合物としては、例えば、2個のヒドロキシル基を有する2官能性化合物、例えば、ポリエステルジオール又はポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0017】
特に適当なポリエステルポリオールi)は線状のポリエステルジオール又は分枝度の低い他のポリエステルポリオールである。この種のポリエステルポリオールは、常套法に従って、例えば、脂肪族、脂環式及び芳香族のジカルボン酸若しくはポリカルボン酸及び/又はこれらの酸無水物と多価アルコールから調製することができる。該酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テルフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びトリメリット酸並びに酸無水物(例えば、無水o−フタル酸、無水トリメリット酸及び無水コハク酸等)、及びこれらの任意の混合物が例示される。また、該アルコール成分としては、エタンジオール、ジ−、トリ−又はテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジ−、トリ−又はテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、オクタン−1,8−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、及びこれらの任意の混合物が例示され、これらのアルコール成分は、より高い官能価を有するポリオール、例えば、トリメチロールプロパン及びグリセロール等と併用してもよい。ポリエステルポリオールi)を調製するための適当な多価アルコールには、脂環式及び/又は芳香族のジヒドロキシ化合物並びにポリヒドロキシ化合物も包含される。遊離のポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物又は対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステル、及びこれらの任意の混合物もポリエステルポリオールi)を調製するために使用することができる。
【0018】
その他の適当なポリオール成分には、ラクトンのホモポリマー若しくはコポリマーが含まれる。この種のポリマーは、ラクトン若しくはラクトン混合物、例えば、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン及び/又はメチル−ε−カプロラクトン等を、2及び/又はそれよりも大きな官能価を有する適当なスターター分子を用いる付加反応に付すことによって調製するのが好ましい。このようなスターター分子としては、上記のポリエステルポリオールの合成用成分として例示した低分子量多価アルコールが例示される。
【0019】
ヒドロキシル基含有ポリカーボネートも適当なポリオール成分i)である。この種のポリカーボネートとしては、ジオール(例えば、1,4−ブタンジオール及び/又は1,6−ヘキサンジオール等)にジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネート、ジメチルカーボネートのようなジアルキルカーボネート又はホスゲンを反応させることによって調製されるポリカーボネート(分子量:800〜5000)が例示される。
【0020】
適当な芳香族の合成成分i)は、好ましくは、ジカルボン酸(例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、又はテレフタル酸等)又はこれらの酸無水物とグリコール[例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び/又は2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)等]に基づくポリエステルポリオールである。特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸若しくはこれらの酸無水物及びアジピン酸とグリコール[例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び/又は2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)等]に基づくポリエステルジオールとの混合物を使用する。同様に、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトン及びジフェニルカーボネート若しくはジメチルカーボネートとのコポリマー(分子量:1000〜4000)の使用又はポリカーボネートジオール(分子量:1000〜3000)の使用も特に好ましい。
【0021】
同様に、芳香族及び脂肪族のジカルボン酸若しくはこれらの酸無水物と上記のグリコールとのコポリマーも好ましい。
【0022】
ポリオール成分i)としては、ポリエーテルポリオールも適当であり、この種のポリオール成分を以下に例示する:スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン又はブチレンオキシドとエピクロロヒドリンとの重付加物、これらの混合付加物とグラフト生成物、多価アルコール若しくはこれらの混合物の縮合によって得られるポリエーテルポリオール、並びに多価アルコール、アミン及びアミノアルコールのアルコキシル化によって得られるポリエーテルポリオール。
【0023】
本発明においては、ポリエステル成分の調製に使用される全カルボン酸基に対するポリオール成分i)中の芳香族カルボン酸基の含有量が少なくとも60モル%(好ましくは少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも80モル%)であることが重要である。芳香族ポリカルボン酸に基づくポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール成分i)に基づいて60重量%よりも多くするのが好ましい。
【0024】
適当な合成成分ii)は62〜299の分子量を有するジオールである。適当なこの種の化合物としては、例えば、合成成分i)の調製用として先に言及した多価アルコール(特に二価アルコール)、低分子量ポリエステルジオール、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)アジペート又は芳香族ジオールを出発原料として調製されるエチレンオキシドとプロピレンオキシドの短鎖ホモ付加物若しくは混合付加物等が挙げられる。好ましい合成成分ii)は1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールである。特に好ましい合成成分ii)は1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールである。
【0025】
本発明によるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液は、末端及び/又は側鎖に組み込まれるエチレンオキシドユニット(該ユニットは、イソシアネートの重付加過程における合成成分iii)の使用により、簡単に組み込むことができる)を固形分に基づいて0〜4重量%含有する。
【0026】
エチレンオキシドユニットを有する末端の親水性鎖を組み込むための親水性の合成成分iii)は次式(I)で表される化合物である:
【化1】

式中、Rは1〜12個の炭素原子を有する一価炭化水素残基(好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する非置換アルキル残基)を示し、Xは、5〜90個(好ましくは20〜70個)の鎖員を有するポリアルキレンオキシド鎖を示し[該ポリアルキレンオキシド鎖はエチレンオキシドユニットを少なくとも40%(好ましくは少なくとも65%)含有し、また、該鎖はエチレンオキシドユニットの外に、プロピレンオキシドユニット、ブチレンオキシドユニット若しくはスチレンオキシドユニット(好ましくはプロピレンオキシドユニット)を含んでいてもよい]、Y/Y’は酸素原子又は−NR’−(式中、R’はRと同意義であるか、又は水素原子を示す)を示す。
【0027】
しかしながら、単官能性の合成成分iii)の使用量を、使用するポリイソシアネートに基づいて10モル%以下に調整することによって、ポリウレタンエラストマーが所望の高分子量構造を有するようにすることが好ましい。これよりも多量の単官能性アルキレンオキシドポリエーテルを使用する場合には、イソシアネート−反応性水素原子を有する三官能性化合物も使用することが有利である。但し、この場合には、出発化合物i)〜iii)の平均官能価を2.7(好ましくは2.3)よりも大きくすべきではない。単官能性の親水性合成成分は、次の特許文献に記載の方法に準拠して、単官能性スターター分子(例えば、n−ブタノール又はN−メチルブチルアミン)を、例えば、エチレンオキシド及び所望による他のアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)を用いてアルコキシル化することによって調製することができる:DE−A2314512,DE−A2314513、米国特許US−A3905929,US−A3920598。
【0028】
好ましい合成成分iii)はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーである(この場合、エチレンオキシドの含有量は50質量%よりも多くするのが好ましく、55〜89質量%にするのがより好ましい)。
【0029】
1つの好ましい実施態様においては、合成成分iii)として、少なくとも400ダルトン(好ましくは少なくとも500ダルトン、より好ましくは1200〜4500ダルトン)の分子量を有する化合物を使用する。
【0030】
合成成分iv)として適当な化合物は、1分子当たり少なくとも2個の遊離のイソシアネート基を有するいずれかの所望の有機化合物、例えば、式X(NCO)(式中、Xは4〜12個の炭素原子を有する二価の脂肪族炭化水素残基、6〜15個の炭素原子を有する二価の脂環式炭化水素残基、6〜15個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素残基、又は7〜15個の炭素原子を有する二価の芳香族−脂肪族炭化水素残基を示す)で表されるジイソシアネート等である。ジイソシアネート成分として使用することができるその他の化合物は、例えば、次の文献に記載されている:W.ジーフケン、ジュスツス・リービッヒス・アナーレン・デア・ヘミー、第562巻、第75頁〜第136頁。
【0031】
使用される好ましいジイソシアネートを以下に例示する:テトラメチレンジイソシアネート、メチルペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,2’−及び2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、p−キシレンジイソシアネート、1,3−及び1,4−ジイソシアナトメチルベンゼン、並びにこれらの任意の混合物。特に好ましいジイソシアネートはヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)及び4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンである。
【0032】
ポリウレタン化学において自体既知のより高位の多官能性ポリイソシアネート又は自体既知の変性ポリイソシアネート、例えば、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基及び/又はビウレット基を有するポリイソシアネート等も必要に応じて使用することが可能である。
【0033】
適当な合成成分v)には、脂肪族及び/又は脂環式の第一及び/又は第二ポリアミンが包含される。好ましいこの種のポリアミンとしては、次の化合物が例示される:1,2−エタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ピペラジン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、アジピン酸ジヒドラジド、ジエチレントリアミン、ヒドラジン及びヒドラジン水和物。
【0034】
その他の適当なポリアミンには、前述のポリエーテルポリオールのヒドロキシル基が形式的にはアミノ基で置換されたポリエーテルポリアミンが包含される。この種のポリエーテルポリアミンは、対応するポリエーテルポリオールにアンモニア及び/又は第一アミンを反応させることによって調製することができる。
【0035】
特に好ましい合成成分v)は、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、1,2−エタンジアミン、ピペラジン及びジエチレントリアミンである。
【0036】
本発明によるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液は、ポリウレタン樹脂100gあたり、固形分に基づいて1.5〜30ミリモル(好ましくは3〜13.5ミリモル)のスルホン酸のアルカリ金属塩を含有する。この種のイオン性基の組み込みは、例えば、本発明によるポリウレタン樹脂の合成に際して、合成成分vi)、例えば、アルカリ金属スルホネート基を有するジアミン若しくはポリアミンを用いておこなうのが簡便である。適当な化合物vi)としては、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸のアルカリ金属塩が例示されるが、ナトリウム塩が好ましい。イソシアネートの重付加過程において、遊離のスルホン酸を組み込むことも可能である。該酸は、ポリウレタン樹脂を水中へ導入する前に中和されなければならない。中和処理は、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩又はアルカリ金属炭酸塩の添加によっておこなわれる。
【0037】
上記の成分i)、ii)、iii)、iv)、v)及びvi)の通常の使用量はそれぞれ、20〜94.5重量部(好ましくは30〜80重量部、より好ましくは50〜76.5重量部)、0〜30重量%(好ましくは0〜15重量%)、0〜10重量部(好ましくは0.5〜6重量部)、4.5〜50重量部(好ましくは5〜30重量部、より好ましくは7.5〜20重量部)、0.5〜13重量部(好ましくは1〜5重量部)、及び0.5〜8重量部(好ましくは1.5〜5.5重量部)である(但し、全成分の重量は100重量%とする)。
【0038】
本発明によるポリウレタン樹脂分散液は、アセトン法によって調製される。この方法に関しては、次の文献を参照されたい:D.ディーテリッチ、「メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー」(フーベン−ウェイル編)、E20巻、第1670頁〜第1681頁(1987年)。
【0039】
アセトン法においては、本発明による分散液の基材となるポリウレタン樹脂の水性配合物の合成は多段階操作でおこなわれる。
【0040】
第一段階においては、イソシアネート基を有するプレポリマーが合成成分i)〜iv)から合成される。個々の成分の使用量は、1.1〜3.5(好ましくは1.3〜2)のイソシアネート指数が得られるように選定される。プレポリマー中のイソシアネートの含有量は1.5〜7.5%(好ましくは2〜4.5%、より好ましくは2.5〜3.5%)である。合成成分i)〜iv)の使用量の選定に際しては、算術数平均官能価が1.80〜3.50(好ましくは1.95〜2.25)になるように留意すべきである。
【0041】
第二段階においては、第一段階で調製されたプレポリマーを、水に対して少なくとも部分的に混和する有機溶剤であって、イソシアネート−反応性基を有さない有機溶剤に溶解させる。好ましい溶剤はアセトンであるが、その他の溶剤、例えば、2−ブタノン、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン又はこれらの任意の混合溶剤を使用することも可能である。溶剤の使用量は、得られる固形分の濃度が20〜80重量%(好ましくは30〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%)になるように選定される。
【0042】
第三段階においては、イソシアネート含有プレポリマー溶液を、連鎖延長を伴うアミノ官能性合成成分v)〜vi)の混合物との反応に付すことによって高分子量ポリウレタン樹脂を形成させる。これらの合成成分の使用量は、溶解プレポリマー中のイソシアネート基の各モルに対して、合成成分v)〜vi)中の第一及び/又は第二アミノ基の量が0.3〜0.93モル(好ましくは0.5〜0.85モル)になるように選定される。これによって得られる本発明によるポリエステル−ポリウレタン樹脂の算術数平均イソシアネート官能価は1.55〜3.10(好ましくは1.90〜2.35)であり、また、該樹脂の算術数平均分子量(Mn)は4500〜250000ダルトン(好ましくは10000〜80000ダルトン)である。
【0043】
第四段階においては、高分子量ポリウレタン樹脂は、得られた溶液へ水を添加することによって、分散液中の微細な沈殿物として沈殿させる。
組み込まれた遊離のスルホン酸基は、所望により、第三段階と第四段階の間で中和させる。
【0044】
第五段階においては、有機溶剤を完全若しくは部分的に留去させる(この場合、留去は、所望により減圧下でおこなってもよい)。第四段階における水の使用量は、本発明による水性ポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液中の固形分が30〜65重量%(好ましくは35〜55重量%)になるように調整する。
【0045】
本発明によるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液を含有する塗料は、ソフト感のある水性塗装材料として使用することができる。該塗料は、種々の支持体(好ましくはプラスチック製支持体)表面に対してだけでなく、その後で塗布される塗膜に対する優れた接着性、塗装系全体の改良された耐結露性と耐溶剤性、及び著しく低いVOCによって特徴づけられる。
【0046】
従って、本発明は、下記の成分A)〜F)を含有する塗料(全成分量は100重量部である)を提供する:
A)本発明による水性ポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液15〜45重量部、
B)ヒドロキシ官能性の水性若しくは水希釈性バインダー15〜45重量部、
C)無機の充填剤及び/又は艶消剤0〜60重量部、
D)ポリイソシアネート1〜60重量部
E)顔料0.1〜30重量部及び
F)常套の塗料助剤1〜15重量部。
【0047】
本発明による塗料は、上記の成分A)、B)、C)、D)、E)及びF)をそれぞれ15〜45重量部(好ましくは25〜37.5重量部、より好ましくは30〜35重量部)、15〜45重量部(好ましくは25〜37.5重量部、より好ましくは30〜35重量部)、0〜60重量部(好ましくは4〜45重量部、より好ましくは7.5〜30重量部)、1〜60重量部(好ましくは2.5〜30重量部、より好ましくは4〜20重量部)、0.1〜30重量部(好ましくは5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部)及び1〜15重量部(好ましくは1.5〜10重量部、より好ましくは2〜6重量部)含有する。
【0048】
適当な塗料成分B)は、例えば、ヨーロッパ特許公報EP−A0542105に記載されているような、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート及び/又はこの種のポリマーのコポリマー若しくはグラフトポリマーからなる群から選択されるヒドロキシ官能性ポリマーである。特に好ましい配合物はヒドロキシ官能性ポリウレタン若しくはポリアクリレート若しくはアクリレートとポリウレタンのグラフトポリマーの水性若しくは水希釈性配合物である。就中、ポリエステル−ポリウレタン型のヒドロキシ官能性ポリウレタンの水性若しくは水希釈性配合物は特に好ましい。
【0049】
塗料成分D)としては、遊離のNCO基を有するポリイソシアネートが使用される。適当なこの種の成分としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)メタン若しくは1,3−ジイソシアナトベンゼンに基づくもの、塗料用ポリイソシアネート(例えば、アロファネート基、ウレットジオン基、ビウレット基若しくはイソシアヌレート基を有するポリイソシアネート、及び1,6−ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネート若しくはビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)メタンから誘導されるもの)、ウレタン基を有する塗料用ポリイソシアネートに基づくもの、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン若しくはイソホロンジイソシアネートに基づくもの、並びに低分子量ポリヒドロキシル化合物(例えば、トリメチロールプロパン、プロパンジオール若しくはブタンジオールの異性体、及びこれらのポリヒドロキシル化合物の所望の任意の混合物)に基づくもの等が例示される。
【0050】
好ましい塗料成分D)は、遊離のイソシアネート基を有する低粘性の疎水性若しくは親水性化ポリイソシアネートであって、脂肪族、脂環式、芳香族−脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート(特に好ましくは脂肪族若しくは脂環式イソシアネート)に基づくものである。これらのポリイソシアネートは、一般に10〜3500mPas(23℃)の粘度を有する。必要な場合には、ポリイソシアネートは、粘度をこれらの範囲内の値に低下させるために、少量の不活性溶剤との混合物として使用することができる。トリイソシアナトノナンは単独又は混合物で架橋剤成分としても使用できる。水に対して可溶性及び/又は分散性のポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート基、スルホネート基及び/又はポリエチレンオキシド基及び/又はポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基による変性によって得ることができる。
【0051】
ポリイソシアネートの親水性化は、例えば、不十分な量の親水性の一価ポリエーテルアルコールと反応させることによっておこなうことができる。この種の親水性化ポリイソシアネートの調製法は、例えば、EP−A0540985に記載されている。EP−A0959087に記載されているアロファネート基を有するポリイソシアネートは非常に適当な化合物である。この種のポリイソシアネートは、モノマー含有量の少ないポリイソシアネートを、アロファネート化条件下でポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールと反応させることによって調製される。DE−A10007821に記載されているトリイソシアナトノナンに基づく水分散性ポリイソシアネート混合物、及び、例えば、DE−A10024624に記載されているイオン性基(スルホネート基、ホスホネート基)で親水性化されたポリイソシアネートも適当である。市販の常套の乳化剤の添加による親水性化も可能である。
【0052】
塗料成分D)として、親水性化によって変性したポリイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、DE−A10024624(第3頁、第22行〜第5頁、第34行;第6頁、第40行〜第7頁、第50行;第9頁、第38行〜第50行)に記載されているスルホネート基で変性されたポリイソシアネートは特に好ましい。
【0053】
原則として、異なる架橋剤樹脂の混合物を使用することも可能である。
【0054】
本発明によるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液は支持体(substrate)を塗装するために使用することができる。
【0055】
適当な支持体はプラスチック製支持体であり、例えば、以下に例示するようなプラスチック製の支持体が挙げられる:スチレンコポリマー、例えば、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)若しくはASAブレンド、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ABSブレンド(例えば、ABSポリカーボネート)、ポリカーボネート(PC)、PC/PBTP(ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PA/ABSブレンド、及びRIM法(反応射出成形)法若しくはRRIM法(強化RIM法)によって調製されるポリウレタン。その他の適当な支持体は木材、金属、皮革及び織物である。
【0056】
本発明は、本発明によるポリエステル−ポリウレタン分散液を含有する塗料で塗装したプラスチック製支持体も提供する。
【0057】
さらに本発明は、支持体及び1種若しくは複数種の塗膜を含む塗装系であって、少なくとも1種の塗膜が本発明によるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液を含有する該塗装系も提供する。好ましい塗装系は単一塗装系である。
【実施例】
【0058】
特に言及しない限り、全ての百分率は重量に基づく。粘度測定は、DIN 53019に従って、フィジカ社(ストゥッツガルト、独国)製の円錐−板型粘度計「フィジカ・ビスコラブLC3 ISO」を使用しておこなった(剪断速度:40s−1)。平均粒径は、マルベルン・インスツルメンツ社(ヘレンベルク、独国)製のレーザー相関分光分析計「ゼータシチェル(登録商標)1000」を用いて測定した。OH価は、使用したモノマーに基づいて計算した。酸価はDIN ISO3682に従って測定した。
【0059】
I.ポリエステルの一般的な調製法
攪拌機、加熱ジャケット、温度計、蒸留カラム及び窒素導入口を具備する反応容器(5リットル)内へ酸成分を導入し、窒素気流(10〜12リットル/時)中において、160℃で溶融させる。次いで、攪拌機を作動させ、ジオール成分を添加し、窒素ガスの流速を低下させる(7〜8リットル/時)。反応混合物を200℃までゆっくりと加熱する。加熱速度は、オーバーヘッドカラムの温度が105℃を超えないように調整する。反応混合物は、オーバーヘッドカラムの温度が90℃よりも低下するまで200℃に保持する。次いで、蒸留カラムを取り外し、窒素ガスの流速をゆっくりと30〜32リットル/時まで高める。撹拌は、酸価が1未満に達するまでこのような条件下において続行する。
【0060】
I.1 ポリエステルA
アジピン酸 7.1モル=1036.6g
1,6−ヘキサンジオール 5.4モル= 637.2g
ネオペンチルグリコール 2.7モル= 280.8g
水 −14.2モル= 255.6g
エステル 1.0モル=1699.0g
OH価=66.0mg KOH/g
【0061】
I.2 ポリエステルB
無水フタル酸 7.66モル=1133.7g
1,6−ヘキサンジオール 8.66モル=1021.9g
水 −7.66モル= 137.9g
エステル 1.00モル=2015.0g
OH価=55.7mg KOH/g
【0062】
I.3 ポリエステルC
アジピン酸 2.9モル= 423.4g
無水フタル酸 10.0モル=1480.0g
1,6−ヘキサンジオール 13.3モル=1569.4g
ネオペンチルグリコール 1.3モル= 134.2g
水 −15.8モル= 284.4g
エステル 1.7モル=3322.6g
OH価=57.4mg KOH/g
【0063】
II.塗料成分
「バイヒドロール(Bayhydrol)(登録商標)XP 2429」:バイエル社(レバークーセン、独国)製の水性のヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散液[固形分含有量:55重量%(水/NMP)、ヒドロキシル含有量:0.8重量%]。
【0064】
実施例1:比較例(DE−A2651506の実施例1に準拠)
ポリエステルA(1632部)を100℃で減圧下(約14 torr)での脱水処理に付し、次いでポリエーテルモノアルコール(N−ブタノール並びにエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比83:17)から調製;OH価:30)(85部)を添加した後、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;バイエル社(レバークーセン)製の「デスモデュール(Desmodur)(登録商標)I」)(244.2部)とヘキサン1,6−ジイソシアネート(バイエル社製の「デスモデュールH」)(185部)との混合物を添加した。得られた混合物を100℃において、イソシアネート含有量が4.6%(理論値:4.78%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(3200部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(107部)、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(13.3部)及びヒドラジンの1水和物(10部)との混合物を水(260部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(3380部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって、固形分含有量が40±1重量%の水性分散液が得られた。粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約230nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりポリエチレンオキシドセグメント2.9%及びスルホネート基(−SO)3.1ミリモル含有した。
合成成分i)の全カルボン酸基に対する芳香族カルボン酸基の含有量は0重量%であった。
【0065】
実施例2:比較例
ポリエステルA(1275部)とポリエステルB(500部)との混合物を110℃で減圧下(約14torr)での脱水処理に付し、次いでヘキサン1,6−ジイソシアネート(バイエル社製の「デスモデュールH」)(300.7部)を70℃で添加した。得られた混合物を100℃において、イソシアネート含有量が3.00%(理論値:3.20%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(3690部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(42.75部)及びエチレンジアミン(17.4部)との混合物を水(390部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(2850部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって水性分散液が得られた。固形分の含有量は、水を添加することによって40±1重量%に調製した。
粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約94nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりスルホネート基(−SO)を10.3ミリモル含有した。
合成成分i)の全カルボン酸基に対する芳香族カルボン酸基の含有量は26.5モル%であった。
【0066】
実施例3:比較例
ポリエステルA(850部)とポリエステルB(1000部)との混合物を110℃で減圧下(約14torr)での脱水処理に付し、次いでヘキサン1,6−ジイソシアネート(バイエル社製の「デスモデュールH」)(300.7部)を70℃で添加した。得られた混合物を100℃において、イソシアネート含有量が2.79%(理論値:3.08%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(3800部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(42.75部)及びエチレンジアミン(17.4部)との混合物を水(390部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(2950部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって水性分散液が得られた。固形分の含有量は、水を添加することによって40±1重量%に調製した。
粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約103nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりスルホネート基(−SO)を10.3ミリモル含有した。
合成成分i)の全カルボン酸基に対する芳香族カルボン酸基の含有量は51.9モル%であった。
【0067】
実施例4:本発明
ポリエステルA(425部)とポリエステルB(1500部)との混合物を110℃で減圧下(約14torr)での脱水処理に付し、次いでヘキサン1,6−ジイソシアネート(バイエル社製の「デスモデュールH」)(300.7部)を70℃で添加した。得られた混合物を100℃において、イソシアネート含有量が2.74%(理論値:2.98%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(3955部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(42.75部)及びエチレンジアミン(17.4部)との混合物を水(390部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(3050部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって水性分散液が得られた。固形分の含有量は、水を添加することによって40±1重量%に調製した。
粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約159nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりスルホネート基(−SO)を9.9ミリモル含有した。
合成成分i)の構成成分としての芳香族カルボン酸の含有量は76.4モル%であった。
【0068】
実施例5:本発明
ポリエステルB(2000部)を110℃で減圧下(約14torr)での脱水処理に付し、次いでヘキサン1,6−ジイソシアネート(バイエル社製の「デスモデュールH」)(300.7部)を70℃で添加した。得られた混合物を100℃において、イソシアネート含有量が2.67%(理論値:2.88%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(4040部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(47.5部)及びエチレンジアミン(17.4部)との混合物を水(400部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(3150部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって水性分散液が得られた。固形分の含有量は、水を添加することによって40±1重量%に調製した。
粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約220nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりスルホネート基(−SO)を10.5ミリモル含有した。
合成成分i)の全カルボン酸基に対する芳香族カルボン酸基の含有量は100モル%であった。
【0069】
実施例6:本発明
ポリエステルC(1955部)を100℃で減圧下(約14torr)での脱水処理に付し、次いでポリエーテルモノアルコール(N−ブタノール並びにエチレンオキシドとプロピレンオキシド(モル比83:19)から調製;OH価:30)(92.5部)を添加した後、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;バイエル社(レバークーセン)製の「デスモデュール(登録商標)I」)(254.2部)とヘキサン1,6−ジイソシアネート(バイエル社製の「デスモデュールH」)(192.7部)との混合物を添加した。得られた混合物を100℃において、イソシアネート含有量が4.23%(理論値:4.28%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(3740部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノ−メチルシクロヘキサン(111.5部)、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(14.2部)及びヒドラジン一水和物(10.4部)との混合物を水(280部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(3660部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって水性分散液が得られた。固形分の含有量は、水を添加することによって40±1重量%に調製した。
粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約160nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりスルホネート基(−SO)を2.9ミリモル及びポリエチレンオキシドセグメントを2.27%含有した。
合成成分i)の構成成分としての芳香族カルボン酸の含有量は76.4モル%であった。
【0070】
実施例7:本発明
ポリエステルB(2000部)を110℃で減圧下(約14torr)での脱水処理に付し、次いで4,4’−ジシソシアナトシクロヘキシルメタン(バイエル社製の「デスモデュールW」)(485部)を90℃で添加した。得られた混合物を115℃において、イソシアネート含有量が2.71%(理論値:2.87%)になるまで撹拌した。反応系を50〜60℃まで冷却した後、無水アセトン(4420部)を添加した。得られたアセトン溶液中へ、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(62.7部)及びエチレンジアミン(21部)との混合物を水(540部)に溶解させた溶液を撹拌下でゆっくりと添加した。次いで、撹拌を10分間おこなった後、水(3350部)を激しく撹拌しながらゆっくりと導入した。水とアセトンとの混合物を溶媒とする青白色固体の分散液が得られた。アセトンを留去させることによって水性分散液が得られた。固形分の含有量は、水を添加することによって40±1重量%に調製した。
粒径をレーザー相関法によって測定したところ、約230nmであった。
分散液中の固形分は、該固形分100gあたりスルホネート基(−SO)を12.8ミリモル含有した。
合成成分i)の全カルボン酸基に対する芳香族カルボン酸基の含有量は100モル%であった。
【0071】
III.適用
III.ソフト感のある単一塗膜用水性2K塗装材料
単一塗装用トップコート配合物の配合処方を以下の表1に示す(表中の数値の単位は重量部である)。
【0072】
【表1】

【0073】
III.2 プラスチック製支持体に対する接着性
表1に示す単一塗装用トップコート配合物をプラスチック製シート(148mm×102mm×3mm)上へ噴霧塗装した(噴霧圧:3〜5bar、ノズルサイズ:1.4、乾燥膜厚:約30μm)。噴霧塗装の前に、該塗装材料の噴霧粘度は25〜30s(ISO5)に調整した。試験シートは室温で10分間乾燥させた後、80℃で30分間乾燥させた。接着性はクロスカット(cross-cut)によって評価した。評価は視覚により、0(剥離なし)〜5(完全剥離)の段階でおこなった(DIN 53 151:接着テープ剥離)。
【0074】
III.2.1 クロスカットによる接着性
クロスカットによる評価結果を以下の表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2から明らかなように、本発明による塗装材料は、従来技術による塗装材料に比べて、プラスチック製支持体に対して著しく優れた接着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液の製造法であって、下記の成分i)〜iii)を下記の成分iv)と反応させてプレポリマーを形成させ、該プレポリマーを有機溶剤に溶解させた後、下記の成分v)及びvi)と反応さることによって調製される分散液を水の添加による沈殿処理に付し、次いで、有機溶剤を除去することを含む該製造法:
i)少なくとも300ダルトンの平均分子量を有する1種若しくは複数種のポリオール成分(この場合、該ポリオール成分少なくとも1種はポリエステルポリオールであって、芳香族ポリカルボン酸に基づくポリエステルポリオールの含有量は60重量%よりも多い)、
ii)62〜299ダルトンの平均分子量を有する所望による1種若しくは複数種のポリオール成分、
iii)イソシアネート重付加反応用の所望による単官能性化合物であって、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量及び少なくとも400ダルトンの分子量を有する該化合物、
iv)ポリイソシアネート、
v)60〜300ダルトンの分子量を有する1種若しくは複数種の脂肪族ポリアミン又はヒドラジン、
vi)親水性化脂肪族ジアミン。
【請求項2】
芳香族ポリカルボン酸に基づくポリエステルポリオールの含有量が60重量%よりも多い請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリエステル成分の調製に使用される全カルボン酸基に対するポリオール成分i)中の芳香族カルボン酸基の含有量が少なくとも70モル%である請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリエステル成分の調製に使用される全カルボン酸基に対するポリオール成分i)中の芳香族カルボン酸基の含有量が少なくとも80モル%である請求項1記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法によって得られるポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液。
【請求項6】
下記の成分A)〜F)を含有する塗料(全成分量は100重量部である):
A)請求項5記載の水性のポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液15〜45重量部、
B)ヒドロキシ官能性の水性若しくは水希釈性バインダー15〜45重量部、
C)無機の充填剤及び/又は艶消剤0〜60重量部、
D)ポリイソシアネート1〜60重量部
E)顔料0.1〜30重量部及び
F)常套の塗料助剤1〜15重量部。
【請求項7】
支持体及び1種若しくは複数種の塗膜を含む塗装系であって、少なくとも1種の塗膜が請求項5記載のポリエステル−ポリウレタン樹脂分散液を含有する該塗装系。

【公表番号】特表2007−529578(P2007−529578A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503231(P2007−503231)
【出願日】平成17年3月5日(2005.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002332
【国際公開番号】WO2005/092941
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】