説明

改装ドアの気密装置

【課題】 改装ドアにおける既設ドア枠と新設ドア間の気密性を確保する。
【解決手段】 既設ドアとそのヒンジを撤去した既設ドア枠1における上下左右の既設枠1a〜1dの戸当段部14に、断面L字状に形成した溝区画材2の固定条21を重合してネジ23によって固定し、その起立条22と既設ドア枠1の室外側見込面12間に気密材溝条を形成して、これに嵌合基部31を嵌合して気密材3を室外側に向けて設置する。新設ドア4には、その室内側見付面の外周にL字状段部44を配置することによって、このL字状段部44の見付面が気密材3の膨出部32に対接するようにして、既設ドア枠1と新設ドア4の気密性を確保する。新設ドア4に気密材を設置するものに比して、新設ドア4の構造を簡易化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設ドア枠を残存して該既設ドア枠にその既設ドアに代替的に新設ドアを設置して、該既設ドア枠と新設ドア間の気密性を確保し得るようにした改装ドアの気密装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の改装ドアの気密装置として、新設ドアの室内側見付面の外周に気密材溝条を形成して、該気密材溝条に気密材を嵌合することによって、該新設ドアの外周に室内側に向けて気密材を配置するとともに該気密材を既設ドア枠における上下左右枠の室内外見込片間に位置する既設ドア用の戸当段部に対接することによって既設ドア枠の戸当段部の同一面において気密性を確保したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−307696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、既設ドア枠を利用して新設ドアを吊支持して、高度な気密性を確保するとともに該新設ドアを、断熱防音性能を有する高機能ドアとすることによって、例えば昭和40年代、50年代等の公共住宅やマンションに広く使用されていた、鋼板をプレス成形した、所謂KJドアと称する枠付きのプレスドアを、高機能の新設ドアに代替的に設置することによって、例えば、斫り工法による場合の塵埃や騒音を発する長期の工事を行なうことなく、また、カバー工法による改装後の開口の狭小化を招くことなく、居住者の居住状態のままで、数時間という短期の工事によって、これら工法と同等乃至それ以上の居住性を確保し得るドアの改装を可能とした点において、優れたドア改装の新規工法として高く評価される。
【0005】
しかし乍ら、上記特許文献1の場合、新設ドアに気密材を配置して、該気密材を既設ドア枠における既設ドアの戸当段部に対接することによって、改装ドアとしての気密性を確保するものとされるから、新設ドアに気密材溝条を形成する必要があるため、新設ドアの構造が複雑化する傾向を招き易いという問題点が残されている。
【0006】
即ち、上記特許文献1の新設ドアは、その図3に示されるように、中骨の室外側見付面に部分的に凹陥した気密材溝条を配置し、中骨の室外側見付面と見込面をボックス状の室外側のドア表面板によって、中骨の室内側見付面を室内側のドア表面板によってそれぞれ被覆したものとされるから、中骨とドア表面板の加工が煩雑化するとともにその構造の複雑化する傾向を招き易いという問題が残されている。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、新設ドアの構造における複雑化を可及的に解消し、新設ドアの構造を可及的に簡易化するとともに新設ドアの気密性を有効且つ確実に確保し得るようにした改装ドアの気密装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って本発明は、既設ドア枠を構成する上下左右の既設枠に既設ドアの戸当段部が存在することから、該戸当段部に気密材を囲繞配置する一方、新設ドアに該気密材との干渉を回避するL字状段部を形成して、該L字状段部に気密材を受け入れるとともにその段部見込面に気密材を対接するようにして、既設ドア枠と新設ドアの気密性を有効且つ確実に確保し得るようにしたものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを吊支持した改装ドアであって、既設ドア枠における上下左右の既設枠の室内外見込片間に位置する既設ドア用の戸当段部に室外側に向けた気密材を囲繞配置する一方、新設ドアを、その室内側見付面の外周に一連のL字状段部を囲繞配置して、該新設ドアのL字状段部の室内側に向けた段部見込面に上記気密材を対接することによって、該段部見付面の同一面において気密性を確保してなることを特徴とする改装ドアの気密装置としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、既設ドア枠の上記戸当段部に対する気密材の設置を、該戸当段部に気密材溝条を区画形成することによって、該気密材の設置を安定且つ耐久性ある形態のものとするように、これを、上記既設ドア枠における気密材の囲繞配置を、固定条と起立条を備えた断面L字状又は断面U字状の溝区画材を、その起立条を既設ドア枠の室内側見込面を室外側に延設するように配置して固定条を既設ドアの戸当段部に対して該固定条からのネジによって固定して該戸当段部に溝区画材を一連に配置し、該溝区画材と室外側見込面との間に形成した気密材溝条に上記気密材を嵌合することによって行なってなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアの気密装置としたものである。
【0010】
本発明は、これらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、既設ドア枠を構成する上下左右の既設枠に既設ドアの戸当段部が存在することから、該戸当段部に気密材を囲繞配置する一方、新設ドアに該気密材との干渉を回避するL字状段部を形成して、該L字状段部に気密材を受け入れるとともにその段部見込面に気密材を対接するようにして、既設ドア枠と新設ドアの気密性を有効且つ確実に確保し得るようにした改装ドアの気密装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、既設ドア枠の上記戸当段部に対する気密材の設置を、該戸当段部に気密材溝条を区画形成することによって、該気密材の設置を安定且つ耐久性ある形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】改装ドアの室内側背面図である。
【図2】改装ドアの縦断面図である。
【図3】改装ドアの横断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、図1乃至図4において、Aは改装ドアであり、該改装ドアAは、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠1に新設ドア4を吊支持してあり、このとき該改装ドアAにおける気密装置は、これを、既設ドア枠1における上下左右の既設枠1a〜1dの室内外見込片間に位置する既設ドア用の戸当段部14に室外側に向けた気密材3を囲繞配置する一方、新設ドア4を、その室内側見付面の外周に一連のL字状段部44を囲繞配置して、該新設ドア4のL字状段部44の室内側に向けた段部見込面に上記気密材3を対接することによって、該段部見付面の同一面において気密性を確保したものとしてある。
【0015】
即ち、本例の改装ドアAは、既設ドア枠1から、図示省略の既設ドアと該既設ドアを吊支持したドアヒンジを撤去して、残存した該既設ドア枠1を、本例にあって後述の気密材溝条を形成するための溝区画材2ネジ固定用のネジ穴、特に皿ネジ用の円錐状のネジ穴15を加工するとともに、必要に応じて塗装を施す程度の措置を行なう以外、可及的にそのまま使用して、これに新設ドア用のドアヒンジ8、例えば耐震丁番を設置し、該ドアヒンジ8によって新設ドア4を吊支持したものとしてある。
【0016】
このとき改装対象の既設のドアは、これを、いわゆるKJタイプの鋼製プレスドアとしてあり、その既設ドア枠1は、鋼板を、それぞれ断面S字状に屈曲成形した左右の縦枠と上下の横枠による既設枠1a〜1dを、そのコーナー位置で溶着して枠組みすることによって矩形の開口をなすとともにその室内外の見込面11、12間に撤去した既設ドアの室内側見付面の外周を対接受止めする戸当段部14を備えたものとされている。
【0017】
既設ドア枠1の該戸当段部14には、上記気密材3を囲繞配置してあるところ、本例にあって、該気密材3の囲繞配置は、これを、固定条21と起立条22を備えた断面L字状又は断面U字状、本例にあっては断面L字状の溝区画材2を、その起立条22を既設ドア枠1の室内側見込面11を室外側に延設するように配置して固定条21を既設ドア枠1の戸当段部14に対して該固定条21からのネジ23によって固定して、該戸当段部14に溝区画材2を一連に配置し、該溝区画材2と室外側見込面12との間に形成した気密材溝条に上記気密材3を嵌合することによって行なったものとしてある。
【0018】
即ち、本例にあって該溝区画材2は、厚さ1mm程度、例えば0.8mm厚さのメッキ鋼板を用いて、上記固定条21を、上記戸当段部14の見付幅に略等しい幅1cm程度、例えば1.2cm幅とし、該固定条21から、戸当段部14の内側に位置するように起立条22を起立するとともにその先端を内側に折り返して、該起立条22による切断面の露出を防止したものとしてあり、このとき該起立条22の起立幅を、上記固定条21と略同等の1.2cmとしたものとしてある。溝区画材2は、それぞれ既設ドア枠1における上下左右の各既設枠1a〜1dと略同長の長さに合せて切断してあり、このとき該切断は、その長手方向両端を留め切りすることによって、これを行なってある。
【0019】
該溝区画材2の固定条21は、これを既設ドア枠1の戸当段部14に対接することによって、起立条22が既設ドア枠1における室内側見付面11と可及的に面一に室外側に突出するとともに上下左右の既設枠1a〜1dの室外側見込面12との間に気密材溝条を区画形成するように、その配置を行なってあり、このときその長手方向両端の上記留め切りによって、該気密材溝条が戸当段部14にあって室外側に開口して戸当段部14のコーナー位置において、留め切りした起立片22が相互に対接して、該開口が一連に連続して矩形連続の溝条をなすようにしてある。
【0020】
溝区画材2の上記既設ドア枠1に対するネジ固定は、固定条21側からのネジ23を既設ドア枠1の上下左右の既設枠1a〜1dに対して所定間隔に螺入することによってこれを行なうようにしてあり、このとき該ネジ23は皿ネジを用いることによって、固定条21から気密材溝条内にネジ頭が突出して、気密材溝条に対する気密材3の装着に際して、その装着不良を生じることのないようにしてある。このとき、既設ドア枠1の上下左右の既設枠1a〜1dには改装現場において上記皿ネジ用に円錐状のネジ穴15を所定間隔に加工配置し、上記皿ネジを、そのネジ頭を該円錐状のネジ穴15に埋め込むように、既設ドア枠1の設置時にその内側に充填した充填硬化のモルタル層(図示省略)に対して雄ネジを螺入することによって、そのネジ固定を行なってある。
【0021】
このように形成した既設ドア枠1の気密材溝条には、嵌合基部31を圧入嵌合して気密材3を装着してあり、該気密材3の上記嵌合基部31から室外側に向けて膨出した膨出部32を、上記溝区画材2の起立条22より室外側に突出するようにその装着を行なってあり、このとき該気密材3は、上記留め切りして一連に連続して矩形連続の気密材溝条に沿って、既設ドア枠1の戸当段部14に一連に連続して戸当段部14から同一の突出幅をなすようにその配置を行なってある。
【0022】
新設ドア4は、その内蔵した中骨41に室内外の鋼板によるドア表面板42を張設し、内部に防音断熱材43として、例えばグラスウールを充填した防音断熱性を有する両面フラッシュドアとしてあり、このとき、内外のドア表面板42は見付面とその外周に配置した見込片を備えるとともに該見込片の先端をドア外周側に位置する中骨41の見込面中間位置において突合せるようにして中骨41を被覆するように配置してあり、上記新設ドア4の外周一連に囲繞配置したL字状段部44は、その室内側のドア表面板42の見付面外周を切り欠くように屈曲成形して形成する一方、これを、ドア外周側に位置する中骨44の室内側見付面を、同じく切り欠くように屈曲成形することによって形成したL字状の中骨段部に嵌め込み状に重合することによって、新設ドア4の室内側見付面に、該見付面と段差をなすようにその配置を行なってある。
【0023】
本例の新設ドア4は、その厚さを、例えば36mmとして、その室内側の見付面を、既設ドア枠1の戸当段部14よりやや室外側に、室外側の見付面を、既設ドア枠1の室外側見込面12に交差する室外側見付面よりやや室内側に位置するようにして、既設ドア枠1の、例えば42mmの奥行の室外側見込面12によって囲まれたドア開口内に収納して、新設のドアヒンジ5によって外開きの開閉を自在としてある。
【0024】
該既設ドア枠1のドア開口内に新設ドア4を収納することによって、既設ドア枠1の戸当段部14に囲繞配置した気密材3を、新設ドア4の上記L字状段部44における室内側見付面に対接するようにしてあり、これによって既設ドア枠1と新設ドア4の気密性を、該段部見付面、即ち、該既設ドア枠1の気密材3の膨出部32先端の同一面で確保するようにしてある。
【0025】
本例にあっては、新設ドア4の室内側見付面外周にL字状段部44を配置したことによって、該L字状段部44が、既設ドア枠1の気密材3を受入れて、該気密材3との干渉を防止するスペースをなすとともに該L字状段部44の見付面が気密材3との対接面をなすことによって、気密材3を既設ドア枠1に設置しつつ該気密材3との間で有効な気密性を確保することができ、また、このL字状段部44は、中骨41やドア表面板42に溝を形成するといった煩雑な加工を回避して、これら中骨41やドア表面板42の加工を容易に行なうことができ、従って、新設ドア4の構造を可及的に簡易化したものとすることができる。
【0026】
図示した例は以上のとおりとしたが、上記溝区画材を、固定条の内側及び外側に起立条を配置した断面U字状とし、その固定条を同様に戸当段部にネジ固定するようにして該戸当段部に気密材溝条を区画形成することを含めて、既設ドア枠、新設ドア、L字状段部、気密材、必要に応じて用いる溝区画材、その固定条、起立条、防火性向上手段等の各具体的形状、構造、材質、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0027】
A 改装ドア
1 既設ドア枠
1a〜1d 上下左右の既設枠
11 室内側見込面
12 室外側見込面
13 室外側見付面
14 戸当段部
15 ネジ穴
2 溝区画材
21 固定条
22 起立条
23 ネジ
3 気密材
31 嵌合基部
32 膨出部
4 新設ドア
41 中骨
42 ドア表面板
43 防音断熱材
44 L字状段部
5 ドアヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを吊支持した改装ドアであって、既設ドア枠における上下左右の既設枠の室内外見込片間に位置する既設ドア用の戸当段部に室外側に向けた気密材を囲繞配置する一方、新設ドアを、その室内側見付面の外周に一連のL字状段部を囲繞配置して、該新設ドアのL字状段部の室内側に向けた段部見込面に上記気密材を対接することによって、該段部見付面の同一面において気密性を確保してなることを特徴とする改装ドアの気密装置。
【請求項2】
上記既設ドア枠における気密材の囲繞配置を、固定条と起立条を備えた断面L字状又は断面U字状の溝区画材を、その起立条を既設ドア枠の室内側見込面を室外側に延設するように配置して固定条を既設ドアの戸当段部に対して該固定条からのネジによって固定して該戸当段部に溝区画材を一連に配置し、該溝区画材と室外側見込面との間に形成した気密材溝条に上記気密材を嵌合することによって行なってなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアの気密装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281144(P2010−281144A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136444(P2009−136444)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(598081045)フジメタル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】