説明

改質器

【課題】 小型化してもエネルギー効率を向上させることができ、さらに、改質器の構造を単純化することができる改質器の提供を目的とする。
【解決手段】 改質ガス燃料から改質ガスを生成する改質器1であって、内側筒状体21及び外側筒状体22を有する改質容器2、この改質容器2に充填された改質触媒20と、改質容器2と接続され、改質容器2内の改質触媒20に改質ガス燃料を供給する、所定の長さを有する複数の燃料供給管3と、燃料供給管3に貫通した状態で、改質容器2内に装入され、改質容器2内で生成された改質ガスを排出する複数の改質ガス排出管4と、改質触媒20および改質容器2に供給される改質ガス燃料を加熱するためのバーナー5とを具備した構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の燃料改質装置に使用される改質器に関し、特に、内側に加熱用の燃焼バーナーを備えた中空筒状の改質容器と、この改質容器と接続され、改質ガス燃料を供給する、所定の長さを有する複数の燃料供給管と、この燃料供給管に貫通した状態で、改質容器内に装入され、改質容器内で生成された改質ガスを排出する複数の改質ガス排出管とを備え、改質器のエネルギー効率を向上させることができる改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、炭化水素原料から生成した水素ガスと酸素を化学反応させて、この化学反応の際に発生する電気と熱(温水)を利用する電池である。
上記燃料電池は、炭化水素原料として、ナフサ、灯油等の石油系燃料や都市ガス等を用い、この炭化水素原料と水蒸気とを混合してガス状の改質ガス燃料とし、この改質ガス燃料を改質触媒中で加熱することにより、水素リッチな改質ガスを生成する。
このため、燃料電池は、炭化水素原料から改質ガスをいかに効率よく生成するかが重要課題であり、改質ガスを生成する燃料改質装置及び改質器に関して、様々な技術が開示されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、改質器とその関連機器とを一つのユニットとしてまとめた燃料改質装置であって、真空断熱容器を備え、この真空断熱容器の内側空間を改質器の排ガスの流路とし、排ガスの流路に並設されかつ内部に改質触媒が装填され原料ガス(改質ガス燃料)を流通させてその改質を行うための複数の改質管を有する燃料改質装置の技術が開示されている。
この技術によれば、セラミックファイバ等の断熱材を使用しなくても、真空断熱容器によって断熱することができるので、燃料改質装置の小型化及び熱効率の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2003−327405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された燃料改質装置は、真空断熱容器により熱効率を向上させることができるものの、たとえば、発電量が1KW程度の小型の燃料電池を想定した場合、エネルギー効率が低下するといった問題があった。
一般的に、燃料改質装置を小型化するとエネルギー効率が低下するが、小型化してもエネルギー効率が低下しない、好ましくは、エネルギー効率をより向上させることの可能な改質器が要望されていた。
また、一般家庭を販売ターゲットとする小型の燃料電池においては、エネルギー効率をより向上させるとともに、改質器の構造を単純化することも強く要望されていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく、小型化してもエネルギー効率を向上させることができ、さらに、改質器の構造を単純化することができる改質器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の改質器は、炭化水素原料を含む改質ガス燃料を、改質触媒中で加熱することにより、改質ガスを生成する改質器であって、内側筒状体および外側筒状体を有する中空筒状の改質容器と、この改質容器に充填された改質触媒と、前記改質容器と接続され、前記改質容器内の改質触媒に前記改質ガス燃料を供給する、所定の長さを有する複数の燃料供給管と、前記改質容器及び燃料供給管に貫装され、前記改質容器内で生成された前記改質ガスを排出する複数の改質ガス排出管と、を具備した構成としてある。
このようにすると、所定の長さを有する燃料供給管とこの燃料供給管に貫通した改質ガス排出管の一部とが二重管を構成し、燃料供給管と改質ガス排出管との間を流れる低温の改質ガス燃料と、改質ガス排出管内を流れる高温の改質ガスとの間で熱交換が行なわれ、改質器のエネルギー効率を向上させることができる。また、燃料供給管及び改質ガス排出管を、互いに独立した状態で改質容器と接続させる場合と比べると、燃料供給管どうしの間隔をより密にし、改質ガス燃料をより均一に改質触媒に供給できるので、改質触媒の利用率を向上させることができる。
【0007】
また、本発明の改質器は、前記燃料供給管の下端が改質ガス燃料供給室と接続され、前記改質ガス排出管の下端が改質ガス排出室と接続され、さらに、前記改質ガス燃料供給室と改質ガス排出室を一体的に設けた構成としてある。
このようにすると、改質ガス燃料供給室を流れる低温の改質ガス燃料と、改質ガス排出室を流れる高温の改質ガスとの間で熱交換が行なわれ、改質器のエネルギー効率をさらに向上させることができる。
【0008】
また、本発明の改質器は、前記燃料供給管の本数を、3本以上32本以下とした構成としてある。
このようにすると、燃料供給管と改質ガス排出管との間を流れる低温の改質ガス燃料と、改質ガス排出管内を流れる高温の改質ガスとの間で行なわれる熱交換の熱伝達率を維持するとともに、改質触媒層内における改質ガス燃料の偏流を抑制し、さらに、改質器を製造する際の生産効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の改質器は、前記改質ガス燃料供給室に、水平方向に突出部を設け、前記突出部に、改質ガス燃料供給孔を設けた構成としてある。
このようにすると、下部に改質ガス排出室が連結された改質ガス燃料供給室に、容易に改質ガス燃料を供給することができ、改質器の構造を単純化することができる。
【0010】
また、本発明の改質器は、前記燃料供給管における改質ガス燃料の流路断面積に対する、前記改質ガス排出管における改質ガスの流路断面積の比を、0.05以上5以下とした構成としてある。
このようにすると、燃料供給管と改質ガス排出管からなる二重管の伝熱効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の改質器は、環状の前記改質ガス燃料供給室を流れる改質ガス燃料の流路断面積に対する、前記燃料供給管と改質ガス排出管との間を流れる改質ガス燃料の総流路断面積の比を、0.005以上0.2以下とした構成としてある。
このようにすると、各燃料供給管にほぼ同量の改質ガス燃料を供給することができ、改質ガス燃料をより均一に改質触媒に供給できるので、改質触媒の利用率を向上させることができるとともに、改質ガス燃料の改質触媒層内における偏流を抑制する。
【0012】
また、本発明の改質器は、環状の前記改質ガス排出室を流れる改質ガスの流路断面積に対する、前記改質ガス排出管を流れる改質ガスの総流路断面積の比を、0.005以上0.2以下とした構成としてある。
このようにすると、改質ガス燃料の改質触媒層内における偏流をさらに抑制でき、改質触媒の利用率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における改質器によれば、小型化してもエネルギー効率を向上させることができ、さらに、改質器の構造を単純化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態にかかる改質器の概略上面方向断面図を示している。
また、図2は、図1の概略A−A断面図を示している。
図1,2において、改質器1は、中心部から外周方向に向かって、バーナー5,内側輻射筒51,改質容器2,改質容器2の下部に接続された燃料供給管3,改質容器2内に装入された改質ガス排出管4及び外殻筒52を設け(図1参照)、さらに、改質容器2の下方に、燃料供給管3,改質ガス排出管4,改質ガス燃料供給室30及び改質ガス排出室40を設けた(図2参照)構成としてある。
本実施形態の改質器1は、図示してないが、燃料電池の燃料改質装置に組み込まれた改質器としてあり、改質ガス排出室40の下方に、燃料改質装置に必要な関連機器、たとえば、水蒸発器,炭化水素原料気化器等が設けてある。
なお、本発明の改質器1は、燃料改質装置としてユニット化される場合に限定されるものではなく、たとえば、水蒸発器等から独立した状態で燃料電池に使用されてもよい。
【0015】
改質容器2は、内側筒状体21,外側筒状体22,下板23及び上板24を備えた中空筒状の密閉容器であり、内部に改質触媒20が充填されている。
この改質容器2は、内側筒状体21と外側筒状体22を円筒とし、これら円筒に円環状の下板23及び上板24を溶接した二重円筒としてある。
なお、改質容器2の内側筒状体21と外側筒状体22は、円筒形状に限定されるものではなく、たとえば、伝熱面積を増加させるために凹凸を設けた筒状体としてもよい。このようにすると、排ガスに対する伝熱面積が増加するので、エネルギー効率をさらに向上させることができる。
【0016】
また、改質容器2は、所定の長さを有する16本の燃料供給管3が、周方向に等間隔で下板23に連結されており、この燃料供給管3を経由して、炭化水素原料を含む改質ガス燃料が改質容器2に供給される。このように、燃料供給管3を周方向に等間隔で配設することにより、改質ガス燃料を周方向にほぼ均一な状態で改質容器2に供給することができ、改質容器2内の改質触媒20が周方向にほぼ同じ状態で反応する。したがって、改質触媒20の利用率が向上する。
改質容器2に供給された改質ガス燃料は、改質容器2内部を上昇しながら改質触媒20によって水素リッチな改質ガスに改質される。
なお、図示してないが、本実施形態では、燃料供給管3の上部に金網等のフィルターを設けて、改質触媒20が燃料供給管3内に落下しない構造としてある。また、上記フィルターは、燃料供給管3の上部に設ける場合に限定されるものではなく、たとえば、下板23の上部に隙間をあけて円環状のフィルターを設ける構成としてもよく、このようにすると、改質容器2内における改質ガス燃料の偏流が、より効果的に抑制される。
【0017】
また、燃料供給管3は、上記16本に限定されるものではなく、たとえば、8本や24本等でもよい。
ここで、好ましくは、燃料供給管3の本数を、3本以上32本以下とするとよい。このようにすると、燃料供給管3と改質ガス排出管4との間を流れる低温の改質ガス燃料と、改質ガス排出管4内を流れる高温の改質ガスとの間で行なわれる熱交換の熱伝達率を効果的に維持するとともに、改質触媒20(層内)における改質ガス燃料の偏流を抑制することができ、さらに、改質器1を製造する際の生産効率を向上させることができる。この理由は、燃料供給管3の本数が2本以下となると、上記熱交換の熱伝達率が大幅に低下するからであり、また、改質触媒20(層内)における改質ガス燃料の偏流が発生し、改質触媒20の利用率が低下するからである。一方、燃料供給管3の本数が33本以上となると、燃料供給管3の本数が増えることにより、改質器1を製造するための作業が増え、改質器1の生産性が低下するからである。
【0018】
改質容器2は、容器上部に空隙26が形成されるように、改質触媒20が充填されており、容器上部の空隙26に生成された改質ガスを回収する改質ガス流路として、16本の改質ガス排出管4を配設してある。16本の各改質ガス排出管4は、下部が上記燃料供給管3を貫通し、かつ、先端部が充填された改質触媒20の上面から突出するように取り付けられており、空隙26に溜まった改質ガスを改質容器2の下方に排出する。
すなわち、所定の長さを有する燃料供給管3とこの燃料供給管3に貫通した改質ガス排出管4の下部とが二重管を構成し、燃料供給管3と改質ガス排出管4との間を流れる低温の改質ガス燃料と、改質ガス排出管4内を流れる高温の改質ガスとの間で熱交換が行なわれ、改質器1のエネルギー効率を向上させる。また、図示してないが、燃料供給管3及び改質ガス排出管4を、互いに独立した状態で改質容器2と接続させる場合と比べると、燃料供給管3どうしの間隔をより密にし、改質ガス燃料をより均一に改質触媒20に供給できるので、改質触媒20の利用率が向上する。
【0019】
また、好ましくは、燃料供給管3における改質ガス燃料の流路断面積に対する、改質ガス排出管4における改質ガスの流路断面積の比を、すなわち、燃料供給管3の内径と改質ガス排出管4の外径によって囲まれる円環の面積(=B)に対する、改質ガス排出管4の内径によって囲まれる円の面積(=C)の比(=C/B)を、0.05以上5以下とするとよい。このようにすると、燃料供給管3と改質ガス排出管4からなる二重管の伝熱効率が向上する。この理由は、改質ガス燃料及び改質ガスの流速が速くなりすぎると圧力損失が大きくなることから、各流速が速くなりすぎないようにする必要があり、また、上記流速を遅くするために、流路断面積を大きくすると、燃料供給管3及び改質ガス排出管4が大型化するので、適度な流路断面積を設定する必要がある。これらの条件下において、上記面積比が0.05より小さくなると、燃料供給管3と改質ガス排出管4の間を流れる改質ガス燃料の流速が遅くなりすぎ、両ガス間の熱伝達率が低下するからである。一方、上記面積比が5を超えると、改質ガス排出管4を流れる改質ガスの流速が遅くなりすぎ、両ガス間の熱伝達率が低下するからである。
【0020】
また、各改質ガス排出管4を各燃料供給管3内に設けることにより、燃料供給管3から供給された改質ガス燃料が、ほぼ上方に流れ偏流が発生するといった不具合を防止でき、改質触媒20の反応速度を周方向においてほぼ均一にすることができる。したがって、改質触媒20の寿命が尽きるまで、安定した状態で改質ガスを生成することができる。
また、改質ガス排出管4を改質容器2の内部に(改質触媒20に対して直接接触した状態で)設けることにより、生成された高温の改質ガスが改質ガス排出管4を流れる際、周囲の改質触媒20及び改質ガス燃料を加熱するので、エネルギー効率を向上させることができる。
【0021】
また、本実施形態では、燃料供給管3の下端が改質ガス燃料供給室30と接続され、改質ガス排出管4の下端が改質ガス排出室40と接続されている。さらに、上方の改質ガス燃料供給室30と下方の改質ガス排出室40を一体的に(連結した状態で)設けてある。このようにすると、改質ガス燃料供給室30を流れる低温の改質ガス燃料と、改質ガス排出室を40流れる高温の改質ガスとの間でも熱交換が行なわれ、改質器1のエネルギー効率がさらに向上する。
【0022】
また、改質ガス燃料供給室30と改質ガス排出室40が、プレス成形体であり、さらに、改質容器2の下板23の形状にあわせて円環状としてある。すなわち、改質ガス排出室40は、図3に示すように、(径方向において)矩形断面となる円環状であり、プレス成形により一体成形された内側壁401,底板402及び外側壁403と、上板として改質ガス燃料供給室30と共用化された、改質ガス燃料供給室30の底板302とからなっている。底板402には、改質ガス排出管4の内径より大きい内径を有する改質ガス排出管4aが一本接続されている。また、改質ガス燃料供給室30は、(径方向において)矩形断面となる円環状であり、プレス成形により一体成形された内側壁301,底板302及び外側壁303と、上板304とからなっている。底板302には、各改質ガス排出管4が接続され、各改質ガス排出管4が、改質容器2の空隙26と改質ガス排出室40を連通する。上板304には、各燃料供給管3が接続され、各燃料供給管3が、改質ガス燃料供給室30と改質容器2を連通する。このようにすると、構造が単純化され、製造原価のコストダウンを図れる。
【0023】
また、改質ガス燃料供給室30は、図1,2に示すように、水平方向における対向する二箇所に、外周方向にほぼ半円状の突出部305が設けられており、一方の突出部305の底部には、燃料供給管3の内径より大きい内径を有する燃料供給管3aが接続されており、改質ガス燃料供給孔305aを介して、改質ガス燃料が供給される。また、他方の突出部305の底部には、安全弁(図示せず)と連通する配管(図示せず)が接続されている。このようにすると、下部に改質ガス排出室40が連結された改質ガス燃料供給室30に、容易に燃料供給管3aを接続することができ、製造原価のコストダウンを図ることができる。
【0024】
ここで、好ましくは、環状の改質ガス燃料供給室30を流れる改質ガス燃料の流路断面積(図3におけるw×h)に対する、燃料供給管3と改質ガス排出管4との間を流れる改質ガス燃料の総流路断面積の比(=総流路断面積/流路断面積)を、0.005以上0.2以下とするとよい。このようにすると、各燃料供給管3にほぼ同量の改質ガス燃料を供給することができ、改質ガス燃料をより均一に改質触媒20に供給できるので、改質触媒20の利用率を向上させることができるとともに、改質ガス燃料の改質触媒20(層内)における偏流を抑制することができる。この理由は、上記総流路断面積の比が、0.005より小さいと、改質ガス燃料供給室30が大型化しすぎるからであり、0.2より大きいと、各燃料供給管3を通過する改質ガス燃料の量が、燃料供給管3aとの距離に応じて大幅にばらつくからである。つまり、0.2より大きいと、燃料供給管3aに近い位置の燃料供給管3を通過する改質ガス燃料の流量が多くなり、燃料供給管3aから離れた位置の燃料供給管3を通過する改質ガス燃料の流量が小さくなり、燃料供給管3の各々の流量が均一でなくなるからである。
【0025】
また、さらに好ましくは、環状の改質ガス排出室40を流れる改質ガスの流路断面積(図3におけるW×H)に対する、改質ガス排出管4を流れる改質ガスの総流路断面積の比(=総流路断面積/流路断面積)を、0.005以上0.2以下とするとよい。このようにすると、改質ガス燃料の改質触媒20(層内)における偏流を抑制でき、改質触媒20の利用率を向上させることができる。この理由は、上記総流路断面積の比が、0.005より小さいと、改質ガス排出室40が大型化しすぎるからであり、0.2より大きいと、各改質ガス排出管4を通過する改質ガスの量が、改質ガス排出管4aとの距離に応じて大幅にばらつき、このばらつきに起因して、改質触媒20の均一な反応が損なわれるからである。つまり、0.2より大きいと、改質ガス排出管4aに近い位置の改質ガス排出管4を通過する改質ガスの流量が多くなり、改質ガス排出管4aから離れた位置の改質ガス排出管4を通過する改質ガスの流量が小さくなり、改質ガス排出管4の各々の流量が均一でなくなるからである。
【0026】
なお、上述したように、改質ガス燃料供給室30を流れる改質ガス燃料の流路断面積に対する、燃料供給管3と改質ガス排出管4との間を流れる改質ガス燃料の総流路断面積の比を、0.005以上0.2以下とする、又は、改質ガス排出室40を流れる改質ガスの流路断面積に対する、改質ガス排出管4を流れる改質ガスの総流路断面積の比を、0.005以上0.2以下とするのいずれか一方を実施することにより、改質ガス燃料の改質触媒20(層内)における偏流を抑制することができる。また、両方を実施することにより、さらに効果的に偏流を抑制することができる。
【0027】
改質器1は、改質容器2の下方中心部に、バーナー5が設けてあり、このバーナー5と改質容器2の間に、バーナー5からの炎50が改質容器2に直接当たらないように、改質容器2とほぼ同じ高さを有する内側輻射筒51が設けてある。この内側輻射筒51と改質容器2との間には、排ガス内側流路511が形成され、バーナー5によって上方に吹き上げられた排ガスの一部は、この排ガス内側流路511を通って下方向に流れ、この際、改質容器2の内側筒状体21と接触して、改質容器2を加熱する。
【0028】
また、外殻筒52と改質容器2の外側筒状体22との間には、排ガス外側流路521が形成され、バーナー5によって上方に吹き上げられた排ガスの残りは、この排ガス外側流路521を通って下方向に流れる。この際、排ガスが改質容器2の外側筒状体22と接触して改質容器2を加熱する。
なお、図示してないが、外殻筒52の内側に、断熱手段として、真空断熱容器や断熱材を使用してもよい。
【0029】
ここで、好ましくは、改質容器2,排ガス内側流路511及び排ガス外側流路521をバーナー5に対して同心状に設けるとよく、このようにすると、改質容器2に充填された改質触媒20を、周方向にほぼ均一に加熱することができ、改質触媒20を有効に利用することができる。また、周方向に対して反応条件をほぼ同じにすることができるので、生成される改質ガスの濃度が、周方向によって異なるといった不具合を防止することができる。
なお、バーナー5は、一本の炎50が噴き出す構成としてあるが、このタイプのバーナーに限定されるものではなく、たとえば、円環状に炎が噴き出すバーナーを使用してもよい。
【0030】
次に、上記構成の改質器1の定常運転動作について説明する。
まず、改質器1は、バーナー5が点火され、内側輻射筒51を通って上昇した排ガスが排ガス内側流路511及び排ガス外側流路521を流れ、改質容器2の内側筒状体21及び外側筒状体22の両側面から改質容器2を加熱する。そして、改質容器2等が所定の温度まで加熱すると、定常運転動作に入る。
【0031】
定常運転動作において、改質器1は、ボイラー(図示せず)が改質ガス燃料を約200℃に昇温し、昇温された改質ガス燃料が、燃料供給管3aを経由して改質ガス燃料供給室30に供給される。この改質ガス燃料供給室30に供給された改質ガス燃料は、改質ガス燃料供給室30を通過する際、改質ガス排出室40を通過する改質ガス及び改質ガス燃料供給室30の周囲を流れる排ガスとの間で、熱交換が行われ昇温する。
【0032】
次に、改質器1は、改質ガス燃料供給室30を流れる改質ガス燃料が、燃料供給管3に流入し、燃料供給管3内(燃料供給管3と改質ガス排出管4との間の円筒状の通路)を上方に移動する。この際、改質ガス燃料は、改質ガス排出管4内を下方に流れる高温の改質ガス及び燃料供給管3の外部を下方に流れる高温の排ガスとの間で、熱交換が行なわれ昇温し、約500℃に昇温された状態で、燃料供給管3から改質容器2に供給される。すなわち、本実施形態によれば、高温の改質ガス及び排ガスを有効に利用して、エネルギー効率を向上させることができ、さらに、燃料供給管3,改質ガス排出管4,改質ガス燃料供給室30及び改質ガス排出室40の構造を単純化することができる。
【0033】
次に、改質器1は、改質容器2に供給された改質ガス燃料が、改質容器2内を上昇しながら加熱され、改質触媒20によって化学反応を起こし、改質容器2の上部(空隙26)に到達するころには水素リッチな改質ガスに改質されるとともに、約700℃に昇温される。
【0034】
次に、改質器1は、上記のように生成された改質ガスが、改質ガス排出管4及び改質ガス排出室40を介して改質容器2の下方に排出される。この際、改質ガス排出管4の上部において、約700℃の高温改質ガスは、改質容器2内における流路を通過するとき、改質触媒20及び改質ガス燃料を加熱する。また、改質ガスは、燃料供給管3内における流路を通過するとき、燃料供給管3内の改質ガス燃料を加熱し、さらに、改質ガス排出室40における流路を通過するとき、改質ガス燃料供給室30内の改質ガス燃料を加熱する。
【0035】
このように、本実施形態の改質器1によれば、改質器1が小型化した場合であっても、エネルギー効率を向上させることができ、さらに、改質器1の構造を単純化することができる。
【0036】
以上、本発明の改質器について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る改質器は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、改質器1は、燃料供給管3の周囲に比較的大きな空きスペースを設けているが、この構造に限定されるものではなく、たとえば、他の熱交換手等を設けてもよい。このように、空きスペースを有効活用することにより、改質器1の小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の改質器は、触媒として改質触媒を用い、反応ガスとして改質ガス燃料を用いる場合に限定されるものではなく、たとえば、所定の温度で触媒を用いて化学反応を行なう反応装置としても、本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかる改質器の概略上面方向断面図を示している。
【図2】図1の概略A−A断面図を示している。
【図3】図2の要部の概略拡大断面図を示している。
【符号の説明】
【0039】
1 改質器
2 改質容器
3,3a 燃料供給管
4,4a 改質ガス排出管
5 バーナー
20 改質触媒
21 内側筒状体
22 外側筒状体
23 下板
24 上板
26 空隙
30 改質ガス燃料供給室
40 改質ガス排出室
50 炎
51 内側輻射筒
52 外殻筒
301 内側壁
302 底板
303 外側壁
304 上板
305 突出部
305a 改質ガス燃料供給孔
401 内側壁
402 底板
403 外側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料を含む改質ガス燃料を、改質触媒中で加熱することにより、改質ガスを生成する改質器であって、
内側筒状体および外側筒状体を有する中空筒状の改質容器と、
この改質容器に充填された改質触媒と、
前記改質容器と接続され、前記改質容器内の改質触媒に前記改質ガス燃料を供給する、所定の長さを有する複数の燃料供給管と、
前記改質容器及び燃料供給管に貫装され、前記改質容器内で生成された前記改質ガスを排出する複数の改質ガス排出管と、
を具備したことを特徴とする改質器。
【請求項2】
前記燃料供給管の下端が改質ガス燃料供給室と接続され、前記改質ガス排出管の下端が改質ガス排出室と接続され、さらに、前記改質ガス燃料供給室と改質ガス排出室を一体的に設けたことを特徴とする請求項1記載の改質器。
【請求項3】
前記燃料供給管の本数を、3本以上32本以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載の改質器。
【請求項4】
前記改質ガス燃料供給室に、水平方向に突出部を設け、前記突出部に、改質ガス燃料供給孔を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の改質器。
【請求項5】
前記燃料供給管における改質ガス燃料の流路断面積に対する、前記改質ガス排出管における改質ガスの流路断面積の比を、0.05以上5以下としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の改質器。
【請求項6】
環状の前記改質ガス燃料供給室を流れる改質ガス燃料の流路断面積に対する、前記燃料供給管と改質ガス排出管との間を流れる改質ガス燃料の総流路断面積の比を、0.005以上0.2以下としたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の改質器。
【請求項7】
環状の前記改質ガス排出室を流れる改質ガスの流路断面積に対する、前記改質ガス排出管を流れる改質ガスの総流路断面積の比を、0.005以上0.2以下としたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の改質器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−31249(P2007−31249A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220891(P2005−220891)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】