説明

改質型燃料電池用ガス検出装置

【課題】安定性の向上と、ガスセンサーの経時変化に起因するドリフトを可及的に防止することができる改質型燃料電池に適したガス検出装置を提供すること。
【解決手段】温度センサーを兼ねるヒータ4aに可燃性ガスに対して触媒作用を有する感応層4bを形成した接触燃焼式ガスセンサー4と、接触燃焼式ガスセンサー4が水素と可燃性燃料ガスとに対して感応しない温度、水素に対してだけ感応する温度、及び水素と可燃性ガスとに感応する温度に昇温させる第1、第2、及び第3の電圧V〜V3を供給する作動電力供給手段1と、作動電力供給手段1の電圧を所定の周期で出力させる切換手段3と、切換手段3の切換操作に一致して接触燃焼式ガスセンサー4からの出力に基づいて水素、及び炭化水素系ガスの濃度を演算する演算手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系燃料を改質して使用する燃料電池に適したガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素の化学反応を利用した発電システムであるため、酸素は大気から供給できるが、水素の供給方法にはいろいろな方式が考えられ、そのひとつとして炭化水素系燃料ガスを触媒により改質する方法がある。
【0003】
一方、炭化水素系ガス及び水素は極めて高い可燃性を有するため、安全性を確保する上ではこれら2種類のガスの漏洩の監視は不可欠であり、また修理などのメンテナンスのためにはいずれのガスが漏れているのかを特定する必要もある。
【0004】
このため、特許文献1に見られるように、同一のガスセンサーを用いて、加熱による上昇温度範囲を400℃以上に設定してメタンを含む全ての可燃性ガスに応動する第1の接触燃焼式ガスセンサーと、上昇温度範囲を150℃〜250℃に設定して非メタン可燃性ガスにのみ応動する第2のガスセンサーとを用いて存在ガスを同時に検出し、メタンの含有率によって生じる出力差から、存在ガスが供給ガス管からの洩れガスであるか自然発生のメタンガスであるかを識別することが提案されている。
【0005】
しかしながら、2つのセンサーを必要としてコストが上昇するばかりでなく、同時に2つのガスセンサーを駆動する必要上、電力消費が大きくなるという問題がある。
また2種類のガスを検出するためには、それぞれのガスに選択性を有するガス検出装置が必要となるが、少なくとも2種類のセンサーを必要としコストが上昇するという問題がある。
【0006】
このような問題を解消するため、特許文献2に見られるように原燃料ガス及び水素ガスに対して、温度により選択的な感度を発揮する1つの半導体式ガスセンサをブリッジ接続するとともに、半導体式ガスセンサーにパルス状電圧を印加して半導体式ガスセンサーの表面温度が経時的に変化する際の2つの異なる温度での半導体式ガスセンサの出力に基づいて、原燃料ガス及び水素ガスを識別して検知する検知手段を備えることが提案されている。
【特許文献1】実公平2-10451号公報
【特許文献2】特開2004-158340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、センサーの過渡的温度変化を利用するため、安定性に問題があるばかりでなく、ガスセンサーの経時的に変化による測定精度の低下を補正するために定期的な校正作業が必要になり、メンテナンスのコストが上昇するという問題も抱えている。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、単一の接触燃焼式のガスセンサーにより炭化水素系燃料ガスと水素とをそれぞれ峻別して検出する装置において、安定性の向上と、ガスセンサーの経時変化に起因するドリフトを可及的に補正することができる改質型燃料電池に適したガス検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を達成するために請求項1の発明は、温度センサーを兼ねるヒータに可燃性ガスに対して触媒作用を有する感応層を形成した接触燃焼式ガスセンサーと、前記接触燃焼式ガスセンサーが水素と可燃性燃料ガスとに対して感応しない温度、前記水素に対してだけ感応する温度、及び水素と可燃性ガスとに感応する温度に昇温させる第1、第2、及び第3の電圧を供給する作動電力供給手段と、前記作動電力供給手段の前記各電圧を所定の周期で出力させる切換手段と、前記切換手段の切換操作に一致して前記接触燃焼式ガスセンサーからの出力に基づいて水素、及び炭化水素系ガスの濃度を演算する演算手段とを備える。
【0010】
また請求項2の発明は、前記切換手段が、前記第1、第2、第3の電圧を低い方から順番に出力する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、第1の電圧を印加した時点で周囲の温度に関する温度信号を得ることができるため、第2、第3の電圧により検出されたガス濃度の信号に含まれる温度変化依存分を補正して、ドリフト要因を排除して経時的安定性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、接触燃焼式ガスセンサーの温度を順番に高温にするため、パルス状電圧を印加して過渡現象過程での各温度での感度の相違を利用する従来技術に比較して、ガスの濃度を安定的に検出できるだけでなく、突入電流を可及的に抑えてセンサーの熱衝撃による損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施例を示すものであって、作動電力供給手段1は、少なくとも相異なる3種類の電圧V1、V2、V3を発生することができ、タイミング信号発生手段2からの信号に基づいて作動する切換手段3を介して接触燃焼式ガスセンサー4に供給するように構成されている。
【0014】
なお、接触燃焼式ガスセンサー4は、周知のように温度検出手段を兼ねるヒータ4aの外周に熱伝導性を維持しつつ、電気的には絶縁状態を維持して可燃性ガスに対する燃焼触媒からなる感応層4bを形成して構成されている。
【0015】
作動電力供給手段1は、接触燃焼式ガスセンサー4が全ての可燃性ガスに反応しない程度で、かつ既知の温度、例えば50乃至90℃に上昇させることができる電圧を供給できる第1の電圧V1と、水素にのみ反応する温度、たとえば100℃乃至250℃に昇温させるための電力を供給できる第2の電圧V2と、炭化水素系燃料ガス等全ての可燃性ガスに反応する温度、例えば300℃乃至500℃に昇温させるための電力を供給できる第3の電圧V3とを出力できるように構成されている。
【0016】
これらの電圧V1〜V3は、負荷抵抗5を介して接触燃焼式ガスセンサー4に供給され、負荷抵抗5の両端には演算手段6が接続されている。この演算手段6は、切換手段3を切換操作するタイミング信号発生手段2からの信号を受けて接触燃焼式ガスセンサー4の作動モード、つまり接触燃焼式ガスセンサー4の温度を判定して検出対象となっているガスの種類を特定できるようになっている。
【0017】
この実施例において、被測定環境に接触燃焼式ガスセンサー4を配置して装置を作動させると、切換手段3は、タイミング信号発生手段2からのタイミング信号に同期して作動電力供給手段1から図2に示したように第1、第2、及び第3の電圧V1、V2、V3を順番に一定周期で接触燃焼式ガスセンサー4に供給する。
【0018】
これにより接触燃焼式ガスセンサー4が、可燃性ガスに感応しない温度、水素のみに感応する温度、及び全ての可燃性ガスに感応する温度とに順番に昇温される。
もとより、接触燃焼式ガスセンサー4は、その放熱量が周囲の温度に左右され、またその抵抗値は温度に依存するから、第1、第2、及び第3の電圧V1、V2、V3を印加した際の接触燃焼式ガスセンサー4の抵抗値、つまり出力信号の大きさは、周囲の温度が加味された値となる。
【0019】
このような状態で、例えば炭化水素系燃料ガスが存在すると、第3の電圧V3が供給された状態では可燃性ガス(炭化水素系燃料ガスと水素の)濃度と上述の周囲の温度が加味された可燃性ガス濃度信号プラス温度信号が出力するものの、第1の電圧V1の電圧が供給された時点では、周囲の温度だけに依存する温度信号が、また第2の電圧V2が供給された時点では、可燃性ガスのうちの水素の濃度と周囲温度とに依存する水素濃度信号プラス温度信号が出力される。
【0020】
したがって、タイミング信号発生手段からの信号に合わせて演算手段6により、第3の電圧V3が印加されたときの可燃性ガス濃度信号プラス温度信号と、第1の電圧V1が印加されたときの温度信号との差分を求めることにより水素と炭化水素系可燃性ガスとの濃度や漏洩を検出することができる。
【0021】
一方、第2の電圧V2が印加された時点では、たとえ炭化水素系燃料ガスが存在していても接触燃焼式ガスセンサー4は、水素だけに感応する温度までしか昇温していないから、水素濃度信号プラス温度信号の信号と、第1の電圧V1が印加された時点での温度信号との差分を演算手段6により求めることにより、水素だけの濃度を選択的に検出することができる。
【0022】
さらに、炭化水素系燃料ガスと水素との両方が漏洩している場合には、第2の電圧V2では水素濃度信号プラス温度信号が、また第3の電圧V3では可燃性ガス濃度信号プラス温度信号がそれぞれの電圧V2、V3の印加時に経時的に出力するので、第2の電圧V2を印加した際に出力される信号(水素濃度信号プラス温度信号)を第3の電圧V3が印加された際に出力される信号(可燃性ガス濃度信号プラス温度信号)から差し引くことにより炭化水素系燃料ガスだけの濃度を判定することができる。
【0023】
なお、この場合においても第1の電圧V1が印加された状態では周囲の温度にだけ関連した温度信号が出力されるので、この温度信号を用いて演算手段6により補正することにより、水素だけの濃度、及び水素と炭化水素系燃料ガスの合計濃度を、温度依存分を補正して正確に検出することができる。同時に第1の電圧V1により検出された温度信号は、温度ばかりでなく、ガスセンサー自体の特性をも反映しているので、第2の電圧V2、及び第3の電圧V3により検出される水素濃度信号プラス温度信号、及び可燃性ガス濃度信号プラス温度信号との差分を求めることにより、ガスセンサーの特性変化を相殺することができ、ガスセンサーの経時変化に起因する誤差を可及的に低減できる。
【0024】
また、水素、及び炭化水素系燃料ガスの濃度は、図1に示したように演算手段6からの出力を濃度演算手段7により校正データと対比させることにより知ることができ、また必要に応じて判定手段8によりレベル比較を行うと警報を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の改質型燃料電池用ガス検出装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】同上装置を構成する接触燃焼式ガスセンサーに印加される電圧を示す線図である。
【符号の説明】
【0026】
1 作動電力供給手段
3 切換手段
4 接触燃焼式ガスセンサー
5 負荷抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサーを兼ねるヒータに可燃性ガスに対して触媒作用を有する感応層を形成した接触燃焼式ガスセンサーと、前記接触燃焼式ガスセンサーが水素と可燃性燃料ガスとに対して感応しない温度、前記水素に対してだけ感応する温度、及び水素と可燃性ガスとに感応する温度に昇温させる第1、第2、及び第3の電圧を供給する作動電力供給手段と、前記作動電力供給手段の前記各電圧を所定の周期で出力させる切換手段と、前記切換手段の切換操作に一致して前記接触燃焼式ガスセンサーからの出力に基づいて水素、及び炭化水素系ガスの濃度を演算する演算手段とからなる改質型燃料電池用ガス検出装置。
【請求項2】
前記切換手段が、前記第1、第2、第3の電圧を低い方から順番に出力する請求項1に記載の改質型燃料電池用ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−112911(P2006−112911A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300242(P2004−300242)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】