説明

改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物

【課題】溶融スラグを用細骨材として使用した場合に、余剰気泡の連行やポップアウト現象を回避することができ、圧縮強度を増大させ、中性化が抑制される、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物を提供する。
【解決手段】改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物は、濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬後の改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去した改質溶融スラグを、細骨材全質量中50〜100質量%で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメントセメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物に関し、詳細には、溶融スラグに起因する余剰気泡の連行やポップアウト現象を防止するために安定化処理を施した改質溶融スラグを細骨材として用いたセメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融スラグは、ごみ焼却炉から排出される焼却灰や下水処理場から排出される汚泥等を1200℃以上で溶融後に固化した無機材料である。
従来より、かかる溶融スラグは、舗装用細骨材、路盤材、コンクリート用細骨材、凍結抑制砂、陶器用材料、人工石用材料等に利用されている。
【0003】
一般廃棄物又は下水汚泥を起源とした溶融スラグには、二酸化珪素(SiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe)、酸化リン(P)が含まれ、その他微量の有害物質も含まれている。
溶融スラグは概ね5mm以下の単粒度であるため、コンクリート用細骨材としての利用が有望である。
そこで、JIS A 5031(非特許文献1)には、溶融スラグをコンクリート用細骨材として利用する場合が規定され、酸化カルシウム(CaO)や酸化鉄(Fe)の他、有害物質の含有量や溶出量等について記載されている。
【0004】
しかし、溶融スラグをコンクリート用細骨材として使用する場合の上記JIS A 5031に規定される化学成分としては、直接の膨張成分となる酸化カルシウム(CaO)及び二次的に膨張成分を生成する硫黄化合物(SもしくはSO)、更には発錆による汚れ防止を勘案した酸化鉄(Fe)のみである。また、該JIS A 5031には、有害物質の含有量や溶出量等についても記載されている。
【0005】
溶融スラグに含まれる酸化アルミニウム(Al)はコンクリート中の水酸化カルシウムや水と反応して水素ガスを発生させて、得られるコンクリート中に余剰気泡を連行する原因となるが、上記JIS A 5031ではこの量を特に規定していない。
そのため、溶融スラグをコンクリート用細骨材として使用すると、当該コンクリート中に余剰気泡が連行され、含有される空気量を増大させてしまう。
【0006】
また、JIS A 5031で規定された酸化カルシウム(CaO)の含有量を満足した場合であっても、CaOが数mmオーダーの粒状でコンクリートもしくはモルタル表面に存在すると、該CaOと水との膨張反応で、その表層のコンクリートもしくはモルタルを剥離させるポップアウト現象が生じてしまう。
【0007】
従って、上述したような理由から、溶融スラグはコンクリート用細骨材としてJISで規定されているものの、セメント硬化物を得るための実用化に結びついていないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JIS A 5031
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、溶融スラグを用細骨材として使用した場合に、余剰気泡の連行やポップアウト現象を回避することができる、セメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、上記課題に加えて、圧縮強度を増大させ、中性化が抑制される、セメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物を提供することである。
さらに本発明の目的は、上記課題に加えて、廃棄物である溶融スラグを有効に再利用して、セメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物を得るための材料として実用化を図った、セメント組成物、その製造方法及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、溶融スラグ中に含まれる、発泡成分や膨張成分となるAlやCaOを溶解して、無害な物質として固化することで、溶融スラグの安定化処理を施し、該安定化溶融スラグを所定量で細骨材として含むことで、得られたセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物に余剰気泡の連行、ポップアウト現象が発現されることを回避することができることを見出したものである。更には、この安定化処理を施した溶融スラグを細骨材として所定量使用することによって、本発明のセメント硬化物の強度増進や中性化抑制を達成したものである。
【0011】
本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物は、濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬後の改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去した改質溶融スラグを、細骨材全質量中50〜100質量%で含有することを特徴とする。
好適には、上記本発明のセメント組成物において、ケイフッ化マグネシウム溶液は、pHが2〜3であることを特徴とする。
より好適には、上記本発明のセメント組成物において、該改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を水洗または100℃以上で加熱して除去した改質溶融スラグを、細骨材として含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物の製造方法は、溶融スラグを、濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬し、次いで得られた改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去した改質溶融スラグを、細骨材全質量中50〜100質量%の割合で配合すること特徴とする。
好適には、上記本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物の製造方法において、ケイフッ化マグネシウム溶液のpHを2〜3とすることを特徴とする。
より好適には、上記本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物の製造方法において、該改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を水洗または100℃以上で加熱して除去することを特徴とする。
【0013】
本発明の改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント硬化物は、上記本発明のセメント組成物を用いて硬化させたセメント硬化物である。
【0014】
なお、改質溶融スラグとは、溶融スラグを前記ケイフッ化マグネシウム溶液に浸漬することにより得られた溶融スラグをいうものとし、セメント組成物とはモルタル組成物やコンクリート組成物をいい、さらにセメント硬化物とはモルタル硬化物及びコンクリート硬化物をいうものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物は、溶融スラグ中に本来存在する発泡成分であるAl、膨張成分であるCaOが消失しているため、改質溶融スラグをコンクリート又はモルタル等のセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物中に細骨材として所定量用いた場合に、得られるセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物に、余剰気泡の連行やポップアウト現象の発生をなくすことが可能となる。また、本発明のセメント組成物を用いて得られたセメント硬化物の強度増大を図ることができ、中性化を抑制することができる。
また本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物の製造方法は、前記本発明のセメント組成物を効率よく製造することができる。
従って、本発明に係わる安定化処理を施した溶融スラグをコンクリート用骨材として有効にコンクリートまたはモルタルに用いることができるため、廃棄物である溶融スラグを有効に再利用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物及び該組成物を用いて硬化させた硬化物は、濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬後の改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去した改質溶融スラグを、細骨材全質量中50〜100質量%で含有するものである。
【0017】
まず、本発明のセメント組成物及び該組成物を用いた硬化物に含まれる改質溶融スラグについて説明をする。
改質溶融スラグは、廃棄物である溶融スラグを次の改質安定化処理して得られたものであり、具体的には、溶融スラグを濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬して改質し、該改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去することによって得られるものである。
【0018】
すなわち、溶融スラグ細骨材を特定濃度のケイフッ化マグネシウム溶液に一定時間浸漬させることにより、溶融スラグ中に存在する発泡成分のAlや膨張成分であるCaOを消失させた改質溶融スラグを得ることができる。
【0019】
溶融スラグを、上記ケイフッ化マグネシウム溶液中に浸漬すると、溶融スラグ中に含まれるAlやCaOが、ケイフッ化マグネシウム溶液と化学反応することで溶解除去されて改質安定化されると考えられ、該改質溶融スラグを細骨材として使用した場合、セメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物に、改質前の溶融スラグを用いた際には発生する余剰気泡の連行やポップアウト現象を発生させることがなくなり、更には、強度増進や中性化抑制が達成される。
【0020】
溶融スラグを浸漬するケイフッ化マグネシウム溶液の濃度は、5〜30質量%であり、該ケイフッ化マグネシウム溶液のpHは2〜3である。
該濃度が、5質量%未満では、当該溶液のpHを上記所望の範囲にすることができず、溶融スラグ中のAlやCaOを十分に溶解することができない。
また、ケイフッ化マグネシウムの溶解度の点から、当該溶液の濃度を30質量%を越えるように調製することは実質的に不可能であり、当該溶液のpHを2未満とすることはできない。
【0021】
また、溶融スラグを前記ケイフッ化マグネシウム溶液に浸漬させる時間は、常温(25℃)で30分〜2時間とする。
30分に満たない場合では、CaOやAlの成分を確実に溶解することができず、溶融スラグを十分に改質できなくなり、細骨材として含有させると、セメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物に余剰気泡の連行、ポップアウト現象が生じてしまう。
一方、浸漬時間が2時間を越えると、改質溶融スラグが凝集して固化するため、細骨材として利用する際に解砕作業が必要となってしまう。解砕作業を介すると骨材として利用する際に余計な労力が係るほか、凝集体の残存や解砕粉の生成によって本来の粒度を損なうことになり、細骨材として用いるのに適さなくなる。
【0022】
前記ケイフッ化マグネシウム溶液浸漬処理後の溶融スラグには、CaOやAlが含まれておらず、改質が十分になされた溶融スラグが得られる。
かかる改質溶融スラグには、余剰のケイフッ化マグネシウムが付着しているため、余剰のケイフッ化マグネシウムを除去することが必要である。
除去の方法としては、水で洗浄するか、若しくは100℃以上で過熱処理することで、該余剰ケイフッ化マグネシウム成分を洗浄若しくは分解する。
これは、ケイフッ化マグネシウム成分がセメントの水和を遅延させる作用があるため、前記洗浄作業若しくは加熱処理を施すことで該改質溶融スラグを含有させた際に、セメント硬化物を得るための水和遅延を防止するためである。
【0023】
該改質溶融スラグを細骨材として使用する場合、該改質溶融スラグは、細骨材全質量に対して50〜100質量%の範囲で配合することが望ましい。
該改質溶融スラグの細骨材置換割合が50質量%未満では、該セメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物の余剰空気連行、ポップアウト現象は回避できるものの、強度増進や中性化抑制を図ることはできないからである。
改質溶融スラグ以外の細骨材としては、特に限定されるものではなく、川砂、山砂、陸砂、砕砂、海砂、珪砂3〜7号等の比較的粒径の細かい細骨材、または珪石粉、石灰石粉等の微粉末等を使用できる。
【0024】
本発明のセメント組成物を構成するセメントの種類は特に限定されず、例えば、普通、早強などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、シリカセメント及びフライアッシュセメントの各種混合セメントや、白色ポルトランドセメント及びアルミナセメント等、市場で入手できる種々のセメントを例示することができ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0025】
また、前記セメントには、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉末、石英粉末、二水石膏、半水石膏、I型及びII型及びIII型無水石膏等の混和材を、単独でもしくは併用して、適量配合することも可能である。
更に、粗骨材として、砂利や砕石等の公知の任意の粗骨材を用いることができる。
必要に応じて、当該コンクリートもしくはモルタルには、本発明の効果を損なわない範囲で、膨張材や収縮低減剤、AE剤、AE減水剤等のコンクリート用混和剤を配合することも可能である。
【0026】
また、本発明におけるセメント組成物を調製するための混練水としての量は、使用する材料の種類や配合により変化させることができるため、一義的に決定されるものではないが、通常、水/セメント比で25〜60質量%が一般的な配合量である。
【0027】
上記のように調製された本発明のセメント組成物を、養生硬化させることにより、本発明の改質溶融スラグを用いたセメント硬化物が得られる。
養生硬化させる方法は、特に限定されず、例えば、水中養生や蒸気養生等の任意の方法を用いることができる。
【0028】
このようにして、改質溶融スラグを細骨材全質量に対して50〜100質量%使用したセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物は、余剰気泡の連行やポップアウト現象の発生がなくなり、強度増進や中性化抑制が達成され、溶融スラグの有効な再利用が図られ、溶融スラグのセメント硬化物への実用化を図ることが可能となる。
【実施例】
【0029】
本発明を以下の実施例および比較例により説明するが、これらに限定されるものではない。
使用材料
・ケイフッ化マグネシウム:森田化学株式会社製の工業用薬品
・溶融スラグ:次の表1に示す化学成分と物性値とを有する溶融スラグ
なお、該溶融スラグは、JIS A 5031に規定するものに相当するものであり、最長径が5mm以下の粒子である。
【0030】
【表1】

【0031】
・水 :水道水
・セメント :普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)
・普通細骨材:陸砂(静岡県掛川産)
・粗骨材 :5号砕石(茨城県岩瀬産)と6号砕石(茨城県岩瀬産)との混合品
(質量比50:50)
・AE減水剤:ポゾリス78S(BASFポゾリス社製)
・AE剤 :(空気量調整剤):マイクロエア101(BASFポゾリス社製)
【0032】
(実施例1〜12、比較例1〜15)
上記ケイフッ化マグネシウム及び上記表1の溶融スラグを用いて、表2に示す処理を施し、13種類の溶融スラグ細骨材を製造した(MS1〜MS13)。
【0033】
具体的には、上記ケイフッ化マグネシウム原料を用いて、以下の表2に示す各濃度、各pHを有するケイフッ化マグネシウム水溶液を調製した。ここでpH測定には株式会社佐藤計量器製作所のSK−620PHを使用した。
次いで、各ケイフッ化マグネシウム水溶液に、前記表1の溶融スラグを、以下の表2に示す浸漬時間で浸漬し、次いで、浸漬後の溶融スラグを各ケイフッ化マグネシウム溶液により取り出して、水で十分に洗浄した。
【0034】
該処理後、溶融スラグ細骨材中のAlとCaOの存在の有無を、粉末X線分析装置(株式会社リガク社製 Ultima IV)を用いてピークの有無について測定し、それぞれのピークの検出の有無の結果も表2に示す。
ピークを検出した場合には「有」、ピークを検出しない場合には「無」で表す。
また、上記処理後の得られた溶融スラグ粒子の凝集の有無(目視)についても表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
当該表2に示した各溶融スラグ細骨材及び上記各使用材料を用いて、次の表3に示す配合で各材料を二軸強制練りミキサによって混練し、各セメント組成物を調製した。但し、表2に示したMS5、MS9、MS13は凝集固化したため、セメント組成物の調製に使用することはできなかった。
均一に混練りして得られた該セメント組成物を、所定の鋼製型枠に打設し、打設から1日経過した後(室温:20℃)に型枠を取り除いて成型された各セメント硬化物を得た。
【0037】
【表3】

【0038】
上記各実施例及び比較例で得られた各セメント組成物について、JIS A 1128による空気量を、また上記各セメント硬化物についてJIS A 1108による圧縮強度、JIS A 1153による促進中性化深さを測定した。更に、各セメント硬化物表面におけるポップアウトの発生状況を目視観察した。
但し、表4中、空気量が4.5±0.5の範囲内にない比較例のコンクリート組成物については、圧縮強度、促進中性化およびポップアウトの目視観察に供する場合、該コンクリート組成物にBASFポゾリス社製マイクロエア404を添加して消泡し、空気量を4.5±0.5の範囲に調整した後、測定した。これらの測定結果を表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
前記表4に示すように、本発明に係わる安定化処理を施した改質溶融スラグを、細骨材全質量に対して50質量%以上使用した実施例のセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物は、細骨材として溶融スラグを使用せず普通細骨材を用いて調製した比較例1のセメント組成物(コンクリート組成物)とほぼ同等の空気量となり、ポップアウトの発生も確認されなかった。
また、本発明の実施例のセメント硬化物は、比較例1に対して材齢28日後の圧縮強度が増加し、材齢91日後の中性化深さが大幅に減少した。
以上より、改質溶融スラグを細骨材として使用した場合に原因となるAlおよびCaOが消失したことで、余剰気泡の連行、ポップアウト現象が解消されたと共に強度増進や中性化抑制が得られたことを意味する。
【0041】
一方、比較例2〜5、比較例8〜9、比較例12〜13のセメント組成物及び該組成物を用いたセメント硬化物は、細骨材として使用した溶融スラグの改質安定化処理が不十分であるため、空気量が増加して、ポップアウトが発生するばかりでなく、比較例1のセメント硬化物(コンクリート硬化物)に比べて圧縮強度は小さく、中性化深さが若干大きくなった。
また、比較例6、7、10、11、14、15のセメント硬化物は、本発明に係わる改質安定化処理を施した溶融スラグを使用したものの、その使用量が細骨材全質量に対して50質量%に満たないため、強度増進や大幅な中性化抑制を達成することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の改質溶融スラグを用いたセメント組成物及び当該セメント組成物を用いたセメント硬化物は、建築、土木分野における任意のセメント硬化体として適用することができる。また、廃棄物である溶融スラグの有効利用を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬後の改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去した改質溶融スラグを、細骨材全質量中50〜100質量%で含有すること特徴とする、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物。
【請求項2】
請求項1記載のセメント組成物において、ケイフッ化マグネシウム溶液は、pHが2〜3であることを特徴とする、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のセメント組成物において、該改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を水洗または100℃以上で加熱して除去した改質溶融スラグを、細骨材として含有することを特徴とする、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物。
【請求項4】
溶融スラグを、濃度5〜30質量%のケイフッ化マグネシウム溶液に30分〜2時間浸漬し、次いで得られた改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を除去した改質溶融スラグを、細骨材全質量中50〜100質量%の割合で配合すること特徴とする、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のセメント組成物の製造方法において、ケイフッ化マグネシウム溶液のpHを2〜3とすることを特徴とする、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載のセメント組成物の製造方法において、該改質溶融スラグに付着しているケイフッ化マグネシウム成分を水洗または100℃以上で加熱して除去することを特徴とする、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3いずれかの項記載のセメント組成物を用いて硬化させた、改質溶融スラグ細骨材を用いたセメント硬化物。

【公開番号】特開2011−148667(P2011−148667A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13151(P2010−13151)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】