説明

改質酸化チタン粒子およびその製造方法、並びにこの改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒

【課題】燃焼炉などから排出されるNOxおよびSOxが含まれる排ガスをアンモニアなどの還元剤を使用して除去する排ガス処理用触媒などに使用して好適な改質酸化チタン粒子およびその製造方法、および、高い脱硝活性を有し、しかも、SO酸化率が低い、耐久性に優れた排ガス処理用触媒の提供。
【解決手段】シリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタン粒子の表面がペルオキソチタン酸で被覆されていることを特徴とする改質酸化チタン粒子およびその製造方法、並びにこの改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質酸化チタン粒子およびその製造方法、並びにこの改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒に関し、更に詳しくは、重油や石炭焚きボイラ、火力発電所、製鉄所などをはじめ各種工場の燃焼炉などから排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物(以下NOxと略記することがある)の処理に使用される排ガス処理用触媒などに使用して好適な改質酸化チタン粒子およびその製造方法、並びに該改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンモニアなどの還元剤を使用して燃焼排ガス中のNOxを除去する排ガス処理用触媒(以下脱硝触媒と略記することがある)としては、一般に、酸化チタンからなる担体に酸化タングステン、酸化バナジウムなどの活性成分を担持した触媒が工業的に使用されている。燃焼炉などから排出される排ガス中には窒素酸化物の外に硫黄化合物(以下SOxと略記することがある)が含まれており、SOxの大部分であるSOは、その一部が脱硝触媒上で酸化されてSOとなり、このSOは還元剤として使用するアンモニアの未反応分と結合して酸性硫安を生成し、後流の熱交換器などの装置の閉塞を起こすため、また、SOそのものが装置などの腐蝕を起こすこと、などの問題があった。そのため脱硝触媒には、高い脱硝活性を有し、しかも、SO酸化率が低い性能が要求される。
【0003】
前述のSOへの酸化能を抑制した脱硝触媒として、特許文献1には、排ガス中にアンモニアを添加し、排ガス中の窒素酸化物を接触的に還元除去する脱硝触媒であって、下層部分が脱硝性能を有する触媒成分からなり、その上層にバナジウムが浸透しても排ガス中の二酸化硫黄を三酸化硫黄に転換する能力の小さな成分をコートした2層構造からなることを特徴とする脱硝触媒が開示されており、上層成分としてシリカ、ジルコニア、ZSM―5、シリカライト及びメタロシリケートなどの成分が示されている。しかし、これらの上層成分は、SO酸化率を抑制すると共に脱硝活性をも抑制するため、該触媒は脱硝活性が低いという問題があった。
【0004】
一方、特許文献2には、活性が低下した脱硝触媒の活性を回復させることのできる脱硝触媒の製造方法として、活性成分が共存するペルオキソチタン酸塩の水溶液又は硫酸チタン水溶液と過酸化水素水を混合することにより得られた水溶液を基材の表面に付与した後、乾燥、焼成することを特徴とする脱硝触媒の製造方法が開示されており、該製造方法の触媒はペルオキシチタン酸塩水溶液のみから得られた脱硝触媒よりも脱硝活性が高いことが記載されている。しかし、SO酸化率の抑制に関する記載はない。
【0005】
【特許文献1】特開平08−196904号公報
【特許文献2】特開2005―313161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、燃焼炉などから排出されるNOxおよびSOxが含まれる排ガスをアンモニアなどの還元剤を使用して除去する排ガス処理用触媒などに使用して好適な改質酸化チタン粒子およびその製造方法を提供する点にある。
また、本発明の第2の目的は、前述の問題を解決して、高い脱硝活性を有し、しかも、SO酸化率が低い、耐久性に優れた排ガス処理用触媒を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、NOxの還元反応は触媒の外表面積に依存し(表面反応と言うことがある)、SOの酸化反応は触媒の体積に依存する(バルク反応と言うことがある)ことに注目して、鋭意研究を行った結果、SOの酸化抑制効果を有するシリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタン粒子の表面をペルオキソチタン酸から生成される酸化チタンで被覆した酸化チタン粒子を使用した担体にWOおよび/またはVを坦持した排ガス処理用触媒は、高い脱硝活性を示し、しかも、SO酸化率が低く、耐久性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第1は、シリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタン粒子(A)の表面がペルオキソチタン酸(TiOの水和物)で被覆されていることを特徴とする改質酸化チタン粒子に関する。
本発明の第2は、被覆されているペルオキソチタン酸の量が酸化物(TiO)として5〜50wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の改質酸化チタン粒子に関する。
本発明の第3は、SiOおよび/またはZrO含有量が、酸化物としての全粒子量を100wt%としたとき、0.5〜20wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の改質酸化チタン粒子に関する。
本発明の第4は、(1)400〜700℃の温度範囲で焼成されたシリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子(A)を水に懸濁し、(2)過酸化水素を酸化チタン粒子(A)の酸化チタンに対してH/TiOモル比が0.5/1〜2/1の範囲で加えて、前記酸化チタン粒子(A)の表面をペルオキソチタン酸化した、シリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子分散スラリー(B)を調製し、(3)別途、硫酸チタニル溶液に過酸化水素をH/TiOモル比が0.5/1〜2/1の範囲で加えてペルオキソチタン酸溶液(C)を調製し、(4)前記酸化チタン粒子分散スラリー(B)と前記ペルオキソチタン酸溶液(C)を混合し、得られた混合物スラリーを撹拌下に55℃以下の温度範囲に制御しながらアンモニア水を添加して混合物スラリーのpHを7〜8の範囲に調整して前記酸化チタン粒子(A)の表面にペルオキソチタン酸を沈着し、次いで、熟成、脱水、洗浄してゲル状物とするか、または該ゲル状物を150℃以下の温度で、乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の改質酸化チタン粒子の製造方法に関する。
本発明の第5は、前記酸化チタン粒子(A)の平均粒子径が0.2〜5.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項4記載の改質酸化チタン粒子の製造方法に関する。
本発明の第6は、請求項1〜3のいずれか記載の改質酸化チタン粒子よりなる担体にWOおよび/またはVを担持したことを特徴とする排ガス処理用触媒に関する。
【0009】
本発明の改質酸化チタン粒子は、粒子の中心部分がシリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタン粒子からなり、該酸化チタン粒子の表面部分がペルオキソチタン酸からなっている。そのため、該改質酸化チタン粒子を燃焼炉などから排出されるNOxおよびSOxが含まれる排ガスをアンモニアなどの還元剤を使用して除去する排ガス処理用触媒の原料として使用した場合に、高い脱硝活性を有し、しかも、SO酸化率が低い排ガス処理用触媒を得ることができる。
前記改質酸化チタン粒子は、シリカおよび/またはジルコニアのほかに、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、スズ、バリウム、セリウム、リン、イオウなどの元素の酸化物、すなわち無機酸化物を含有していてもよい。とくに、酸化ケイ素−酸化タングステン−酸化チタン系(SiO−WO−TiO系)や酸化ジルコニウム−酸化タングステン−酸化チタン系(ZrO−WO−TiO系)の三元系複合酸化物は、酸化タングステン(WO)が酸化チタン(TiO)の結晶成長を抑制するなどの作用効果があるので好ましい。
【0010】
前記改質酸化チタン粒子は、ペルオキソチタン酸の量が酸化物基準で5〜50wt%、とくに10〜40wt%の範囲にあることが好ましい。なお、本発明でのペルオキソチタン酸の量はペルオキソチタン酸溶液からの被覆ペルオキソチタン酸を意味する。すなわち、前記本第4発明における(2)の工程で過酸化水素により酸化チタン粒子(A)の表面をペルオキソチタン酸化しているが、前記ペルオキソチタン酸の5〜50wt%のなかには算入しておらず、前記(4)の工程により、酸化チタン粒子の表面にペルオキソチタン酸溶液を沈着して得られた層から得られた被覆ペルオキソチタン酸のみを対象にしたwt%である。このペルオキソチタン酸の量が酸化物基準で5wt%より少ない改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒の場合には、SO酸化率は低くなるが、高い脱硝活性が得られないことがある。また、ペルオキソチタン酸の量が酸化物基準で50wt%より多い改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒の場合には、脱硝活性は高くなるが、SO酸化率も高くなることがあり、また触媒の機械強度が弱くなる。
【0011】
前記改質酸化チタン粒子は、シリカ(SO)および/またはジルコニア(ZrO)含有量が、酸化物としての全粒子量を100wt%としたとき、0.5〜20wt%とくに1〜15wt%の範囲にあることが好ましい。シリカおよび/またはジルコニア含有量が0.5wt%より少ない改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒の場合には、SO酸化率が高くなることがある。また、シリカおよび/またはジルコニア含有量が20wt%より多い改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒の場合には、SO酸化率は低くなるが、脱硝活性も低くなることがある。
【0012】
次に、前述の改質酸化チタン粒子の製造方法について述べる。
(1)400〜700℃の温度範囲で焼成されたシリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子(A)を水に懸濁する工程について、
(イ)本発明でのシリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子(A)は、公知の方法で調製される。例えば塩化チタン、硫酸チタンなどの無機チタン化合物およびシュウ酸チタン、テトライソプロピルチタネートなどの有機チタン化合物などの可溶性チタン化合物と四塩化ケイ素、エチルシリケート、メチルシリケートなどの可溶性ケイ素化合物やシリカゾルなどおよび/または硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなどの可溶性ジルコニウム化合物などとの混合水溶液を所定量の割合で混合した後、この混合水溶液にアンモニア水、苛性ソーダ水溶液、尿素水溶液、アミン水溶液など周知の塩基性水溶液を添加・中和して複合水酸化物スラリーを調製し、これを通常の方法で、熟成、洗浄、乾燥して得られた複合水酸化物または複合酸化物を焼成することで、シリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子(A)を得る。
【0013】
(ロ)前述の乾燥して得られた複合水酸化物または複合酸化物は、400〜700℃の温度範囲で焼成される。
前記複合水酸化物または複合酸化物の焼成温度が400℃より低い場合には、該酸化チタン粒子(A)から得られた改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒は圧縮強度が弱くなる上に、ハニカムやペレット、リングなどの成形体に触媒を加工出来ない事がある。また、前記焼成温度が700℃より高い場合には、該酸化チタン粒子(A)から得られた改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒はSO酸化率が高くなることがある。前記酸化チタン粒子(A)は、好ましくは450〜650℃の温度範囲で焼成されることが望ましい。
前述の酸化チタン粒子(A)は、平均粒子径が0.2〜5.0μmの範囲にあることが好ましい。該酸化チタン粒子(A)の平均粒子径が0.2μmより小さい場合には、該酸化チタン粒子(A)から得られた改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒は圧縮強度が弱くなることがある。一方、該酸化チタン粒子(A)の平均粒子径が5.0μmより大きい場合には、該酸化チタン粒子(A)から得られた改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒は脱硝性能が低く、SO酸化率が高くなる上に、ハニカムやペレット、リングなどの成形体に触媒を加工出来ない事がある。前記酸化チタン粒子(A)は、更に好ましくは、平均粒子径が0.5〜3.0μmの範囲にあることが望ましい。
【0014】
(ハ)前述の400〜700℃の温度範囲で焼成されたシリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子(A)は、懸濁液が容易に攪拌でき、均一に混合出来る適当な濃度、好ましくは10〜40wt%の範囲で水に懸濁する。
【0015】
(2)過酸化酸化水素を前記酸化チタン粒子(A)の酸化チタンに対してH/TiOモル比が0.5/1〜2/1の範囲で加えて、前記酸化チタン粒子(A)の表面をペルオキソチタン酸化したシリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子分散スラリー(B)を調製する工程について、
前記酸化チタン粒子(A)の表面にペルオキソチタン酸を沈着する際、該酸化チタン粒子(A)の表面の一部を過酸化水素(H)で一旦改質することが重要である。酸化チタン粒子(A)の表面を過酸化水素で一旦改質することにより、後述のペルオキソチタン酸溶液(C)と混合し、さらにアンモニア水を添加した際に、該酸化チタン粒子(A)の表面にペルオキソチタン酸を均一に沈着させることが出来る。該酸化チタン粒子(A)の表面を過酸化水素で改質せずに、チタン酸溶液(C)と混合した後アンモニア水を添加した場合には、酸化チタン粒子(A)の表面にペルオキソチタン酸は沈着せず、ペルオキソチタン酸粒子が形成されることがある。
【0016】
前記酸化チタン粒子(A)の表面を過酸化水素で一旦改質する際のH/TiOモル比は0.5/1〜2/1の範囲とする。該H/TiOモル比が0.5/1を下回る場合は、酸化チタン粒子(A)の表面に前記ペルオキソチタン酸を沈着させることが出来ず、ペルオキソチタン酸粒子が形成されることがある。一方、H/TiOモル比が2/1を上回る場合は、得られた改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒は圧縮強度が極めて弱くなり、さらに得られた改質酸化チタン粒子をハニカムやペレット、リングなどの成形体に加工出来ない事がある。
【0017】
(3)別途、硫酸チタニル溶液に過酸化水素をH/TiOモル比が0.5/1〜2/1の範囲で加えてペルオキソチタン酸溶液(C)を調製する工程について、
硫酸チタニル溶液の濃度は、任意に調製されるが、好ましくは酸化物(TiO)として3〜15wt%の範囲にあることが望ましい。硫酸チタニル溶液に加える過酸化水素の使用量は、H/TiOモル比が0.5/1を下回る場合には、ペルオキソチタン酸溶液が得られないことがあり、また、H/TiOモル比が2/1を上回る場合には、得られた改質酸化チタン粒子を使用した排ガス処理用触媒は圧縮強度が極めて弱くなり、さらに得られた改質酸化チタン粒子をハニカムやペレット、リングなどの成形体に加工出来ない事がある。硫酸チタニル溶液に加える過酸化水素のH/TiOモル比は、とくに1/1〜2/1の範囲にあることが望ましい。
【0018】
(4)前記酸化チタン粒子分散スラリー(B)と前記ペルオキソチタン酸溶液(C)を混合し、得られた混合物スラリーを撹拌下に55℃以下の温度範囲に制御しながらアンモニア水を添加して混合物スラリーのpHを7〜8の範囲に調整して前記酸化チタン粒子(A)の表面にペルオキソチタン酸を沈着し、次いで、熟成、脱水、洗浄してゲル状物とするか、または該ゲル状物を150℃以下の温度で乾燥する工程について、
前述の酸化チタン粒子分散スラリー(B)と前述のペルオキソチタン酸溶液(C)の混合は、好ましくはペルオキソチタン酸溶液(C)からのペルオキソチタン酸の量が酸化物(TiO)として5〜50wt%の範囲に、更に好ましくは10〜40wt%の範囲にあることが望ましい。前述の混合して得られた混合物スラリーにアンモニア水を添加する際の温度が55℃を超える場合には、ペルオキソチタン酸が得られないことがある。
また、混合物スラリーのpHが7〜8の範囲以外ではペルオキソチタン酸の生成割合が少なくなる傾向にある。
次いで、pH調製したスラリーを1〜15時間熟成した後、周知の方法で脱水、洗浄してゲル状物を得る。該ゲル状物は所望により150℃以下の温度で乾燥する。150℃よりも高い温度で乾燥するとペルオキソチタン酸を使用する効果が得られないことがある。
【0019】
本発明の排ガス処理用触媒は、前述の改質酸化チタン粒子よりなる担体に、WOおよび/またはVを坦持する。
本発明の排ガス処理用触媒は、前述の改質酸化チタン粒子を70〜99.9重量%、活性成分としてのWOおよび/またはVを0.1〜15重量%の割合で含有することが好ましい。WOおよび/またはVを割合が0.1重量%より少ない場合には、所望の脱窒素活性が得られないことがあり、また、15重量%より多い場合にはSO酸化活性が高くなることがある。好ましくは、前述の改質酸化チタン粒子が80〜99.5重量%、WOおよび/またはVが0.5〜10重量%の範囲割合であることが望ましい。
【0020】
前記排ガス処理用触媒は、例えば、前述の改質酸化チタン粒子に、パラタングステン酸アンモン、メタタングステン酸アンモンやメタバナジン酸アンモンなどのWOやVの前駆物質の溶解液、粘土、硝子繊維、さらに可塑剤などを添加して混練捏和し、ハニカム形状などの所望の形状に成型、乾燥し、300〜800℃で焼成して製造することができる。また、前述の改質酸化チタン粒子に粘土、硝子繊維、さらに可塑剤などを添加して混練捏和し、所望の形状に成型し、乾燥、焼成して得られた担体に、WOおよび/またはVの前駆物質の溶解液を含浸法などの周知の担持方法で担持して製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の改質酸化チタン粒子は、粒子の中心部分がシリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタン粒子であって、該酸化チタン粒子の表面部分がペルオキソチタン酸からなっている。従って、該改質酸化チタン粒子を焼成して得られる酸化チタン粒子は、粒子の中心部分がシリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタンからなり、粒子の表面部分は酸化チタンだけからなっている。そのため、該改質酸化チタン粒子を燃焼炉などから排出されるNOxおよびSOxが含まれる排ガスをアンモニアなどの還元剤を使用して除去する処理用触媒の原料として使用した場合、該粒子の中心部分のシリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタンであるため、バルク反応であるSO酸化率は抑制される。一方、改質酸化チタン粒子の表面部分がペルオキソチタン酸で被覆されている状態であるため、活性成分であるWOおよび/またはVを担持すると粒子の表面部分に高分散して担持されるので、表面反応である脱硝反応は高活性を示す。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1(図1および図2参照)
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕58.77kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕2.00kgを10分間にて添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整した。次いで、該スラリーを温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、得られた焼成品を粉砕して平均粒径0.8μmの2元系複合酸化物粉体(a−1)を得た。
この粉体(a−1)15.39kgを水35.91kgに再スラリーし、これに35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、10分間にて添加混合し、40℃で30分間熟成して粉体(a−1)の表面部分の一部をペルオキソチタン酸化したシリカを含有する酸化チタン粒子分散スラリー(a−2)を調製した。
次に硫酸チタニル結晶〔TiO濃度32wt%、(株)テイカ製〕5.34kgを水21.38kgに溶解希釈した硫酸チタニル水溶液に、35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、1分間で添加混合し、ペルオキソチタン酸溶液(b−1)を得た。
次にペルオキソチタン酸溶液(b−1)に前記酸化チタン粒子分散スラリー(a−2)を1対9の割合(酸化物換算比)で、攪拌しながら30分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを7.5に調整し、次いで、温度50℃で3時間熟成した後、このスラリーを脱水洗浄して、TiO/SiO重量比=98/2の組成のチタニア含有ゲル(c−1)を得た。
次にモノエタノールアミン0.18kgと水1.00kgを混合し、これにメタバナジン酸アンモニウム0.16kgを添加、加熱溶解した。この溶解液と前述のチタニア含有ゲル(c−1)16.98kg(酸化物換算)をニーダーにて水分30wt%まで加熱捏和後、これにガラス繊維0.9kgおよびカルボキシメチルセルロース0.27kgを添加し、冷却捏和して捏和物を得た。該捏和物を真空押出成型機で外径80mm□(外径80mm×80mmの四角形状、以下同じ)、目開き6.70mm、壁厚1.20mm、長さ500mmのハニカム状に押出成型し、その後、成型体を110℃で12時間乾燥した後、600℃で5時間焼成して触媒Aを得た。
【0024】
実施例2
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕58.77kgに、硫酸ジルコン(ZrO濃度18.19wt%、稀産金属製)2.20kgを10分間にて添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕することで平均粒径0.8μmの2元系複合酸化物粉体(d−1)を得た。
この粉体(d−1)15.39kgを水35.91kgに再スラリーし、これに35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、10分間にて添加混合し、40℃で30分間熟成して粉体(d−1)の表面部分の一部をペルオキソチタン酸化したジルコニアを含有する酸化チタン粒子分散スラリー(d−2)を調製した。
次に実施例1で調製したものと同じペルオキソチタン酸溶液(b−1)に前記酸化チタン粒子分散スラリー(d−2)を1対9の割合(酸化物換算比)で、攪拌しながら30分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを7.5に調整し、温度50℃で3時間熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄して、TiO/ZrO重量比=98/2の組成を持つチタニア含有ゲル(e−1)を得た。
次に、前記チタニア含有ゲル(e−1)を用いて実施例1と同様にして触媒Bを調製した。即ち、モノエタノールアミン0.18kgと水1.00kgを混合し、これにメタバナジン酸アンモニウム0.16kgを添加、加熱溶解した。この溶解液と前述のチタニア含有ゲル(e−1)16.98kg(酸化物換算)をニーダーにて水分30wt%まで加熱捏和後、これにガラス繊維0.90kgおよびカルボキシメチルセルロース0.27kgを添加し、冷却捏和して捏和物を得た。該捏和物を真空押出成型機で外径80mm□、目開き6.70mm、壁厚1.20mm、長さ500mmのハニカム状に押出成型し、その後、成型体を110℃で12時間乾燥した後、600℃で5時間焼成して触媒Bを得た。
【0025】
実施例3
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕52.00kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕2.00kgを10分間にて添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、さらにタングステン酸2.25kgをこのスラリーに添加し、同温同pHで3時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕することで平均粒径0.8μmの3元系複合酸化物粉体(f−1)を得た。
この粉体(f−1)15.39kgを水35.91kgに再スラリーし、これに35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、10分間にて添加混合し、40℃で30分間熟成して粉体(f−1)の表面部分の一部をペルオキソチタン酸化したシリカおよび酸化タングステンを含有する酸化チタン粒子分散スラリー(f−2)を調製した。
次に実施例1で調製したものと同じペルオキソチタン酸溶液(b−1)に前記酸化チタン粒子分散スラリー(f−2)を1対9の割合(酸化物換算比)で、攪拌しながら30分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを7.5に調整し、温度50℃で3時間熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄することで、TiO/WO/SiO重量比=88/10/2の組成を持つチタニア含有ゲル(g−1)を得た。
次に、前記チタニア含有ゲル(g−1)を用いて実施例1と同様にして触媒Cを調製した。
【0026】
比較例1
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕58.80kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕1.80kgを10分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕して平均粒径0.8μmの2元系(TiO/SiO重量比=98/2)複合酸化物粉体(h)を得た。このチタン−珪素からなる2元系複合酸化物粉体(h)を用いて実施例1と同様にして触媒Dを調製した。
【0027】
比較例2
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕58.80kgに、硫酸ジルコン(ZrO濃度18.19wt%、稀産金属製)1.98kgを10分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕して平均粒径0.8μmの2元系(TiO/ZrO重量比=98/2)複合酸化物粉体(i)を得た。このチタン−ジルコニウムからなる2元系複合酸化物粉体(i)を用いて実施例1と同様にして触媒Eを調製した。
【0028】
比較例3
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕52.80kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕1.80kgを10分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成し、さらにタングステン酸2.03kgを該スラリーに添加し、同条件でさらに3時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕して平均粒径0.8μmの3元系(TiO/WO/SiO重量比=88/10/2)複合酸化物粉体(j)を得た。このチタン−珪素−タングステンからなる3元系複合酸化物粉体(j)を用いて実施例1と同様にして触媒Fを調製した。
【0029】
比較例4
実施例1で調製したものと同様のペルオキソチタン酸溶液(b−1)に15wt%アンモニア水を添加してpHを7.5に調製し、温度50℃でpH7.0〜8.0を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら3時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕して平均粒径1.2μmのTiO粉体(b−2)を得た。
次に、実施例3で調製したと同様の3元系複合酸化物粉体(f−1)15.28kgと前記粉体(b−2)1.70kgとを混合して用いた以外は、比較例3と同様にして、触媒Gを調製した。
【0030】
実施例4
実施例3で調製したと同様のチタニア含有ゲル(g−1)を110℃で12時間乾燥した粉体(g−2)を用いた以外は、実施例3と同様にして触媒Hを調製した。
【0031】
比較例5
実施例3で調製したと同様のチタニア含有ゲル(g−1)を110℃で12時間乾燥した後、更に520℃で3時間焼成した粉体(g−3)を用いた以外は、実施例3と同様にして触媒Iを調製した。
【0032】
比較例6
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕52.00kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕2.00kgを10分間にて添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、さらにタングステン酸2.25kgをこのスラリーに添加し、同温同pHで3時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄してTiO/WO/SiO重量比=88/10/2の組成を持つゲル(f−3)を得た。
次に実施例1で調製したものと同様のペルオキソチタン酸溶液(b−1)に、15wt%アンモニア水を添加してpH7.5のスラリーを調製し、該スラリーを温度50℃でpH7.0〜8.0を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、このスラリーを脱水洗浄し、TiOゲル(b−3)を得た。
次に前記ゲル(b−3)15.28kg(酸化物換算)と前記3元系複合酸化物ゲル(f−3)1.70kg(酸化物換算)とをゲル混合して用いた以外は、比較例3と同様にして捏和物を得、これを真空押出成型機で外径80mm□、目開き6.70mm、壁厚1.20mm、長さ500mmのハニカム状に成型することを試みたが、ゲル混合の捏和物は脱水を起こして成型することが出来なかった〔比較例6の成型体触媒(J)は得ることが出来なかった〕。
【0033】
比較例7
実施例3で調製したものと同様の3元系複合酸化物粉体(f−1)15.28kgと比較例6で調製したものと同様のTiOゲル(b−3)1.70kg(酸化物換算)とを混合して用いた以外は、比較例3と同様にして触媒Kを調製した。
【0034】
比較例8
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕54.00kgに、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調製し、温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成した後、さらにタングステン酸2.03kgをこのスラリーに添加し、同温同pHで3時間加温熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕して平均粒径0.8μmのチタン−タングステンからなる2元系(TiO/WO重量比=90/10)複合酸化物粉体(k)を得た。この2元系複合酸化物粉体(k)16.98kg用いた以外は、実施例1と同様にして触媒Lを調製した。
【0035】
実施例5
実施例3において、水35.91kgに再スラリーした3元系複合酸化物粉体(f−1)15.39kgに添加する35wt%過酸化水素水の量をH/TiOモル比=0.5にしたこと、および、同実施例において調製した硫酸チタニル水溶液(実施例1の硫酸チタニル水溶液と同じ)に添加する35wt%過酸化水素水の量をH/TiOモル比=0.5にしたこと以外は、実施例3と同様にして、チタニア含有ゲル(g−4)を得た。次に、前記チタニア含有ゲル(g−4)を用いて実施例1と同様にして触媒Mを調製した。
【0036】
実施例6
実施例3において、水35.91kgに再スラリーした3元系複合酸化物粉体(f−1)15.39kgに添加する35wt%過酸化水素水の量をH/TiOモル比=2.0にしたこと、および、同実施例において調製した硫酸チタニル水溶液に添加する35wt%過酸化水素水の量をH/TiOモル比=2.0にしたこと以外は、実施例3と同様にして、チタニア含有ゲル(g−5)を得た。次に、前記チタニア含有ゲル(g−5)を用いて実施例1と同様にして触媒Nを調製した。
【0037】
実施例7
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕58.29kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕2.57kgを10分間にて添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整した。次いで、該スラリーを温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕することで平均粒径0.8μmの2元系複合酸化物粉体(l−1)を得た。
この粉体(l−1)15.39kgを水35.91kgに再スラリーし、これに35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、10分間にて添加混合し、40℃で30分熟成して粉体(l−1)の表面部分の一部をペルオキソチタン酸化したシリカを含有する酸化チタン粒子分散スラリー(l−2)を調製した。
次に硫酸チタニル結晶〔TiO濃度32wt%、(株)テイカ製〕16.02kgを水64.14kgに溶解希釈した硫酸チタニル水溶液に、35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、1分間にて添加混合し、ペルオキソチタン酸溶解液(m−1)を得た。
次にペルオキソチタン酸溶液(m−1)に前記酸化チタン粒子分散スラリー(l−2)を3対7の割合(酸化物換算比)で、攪拌しながら30分で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを7.5に調整し、温度50℃で3時間熟成した後、このスラリーを脱水洗浄して、TiO/SiO重量比=98/2の組成を持つチタニア含有ゲル(n−1)を得た。
前記チタニア含有ゲル(n−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして触媒Oを調製した。
【0038】
実施例8
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕57.00kgに、シリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕4.50kgを10分間にて添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調製した。次いで、該スラリーを温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、これを粉砕することで平均粒径0.8μmの2元系複合酸化物粉体(o−1)を得た。
この粉体(o−1)15.39kgを水35.91kgに再スラリーし、これに35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、10分間にて添加混合し、40℃で30分熟成して粉体(o−1)の表面部分の一部をペルオキソチタン酸化したシリカを含有する酸化チタン粒子分散スラリー(o−2)を調製した。
次に硫酸チタニル結晶〔TiO濃度32wt%、(株)テイカ製〕32.04kgを水128.28kgに溶解希釈した硫酸チタニル水溶液に、35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、1分間にて添加混合し、ペルオキソチタン酸溶液(p−1)を得た。
次にペルオキソチタン酸溶液(p−1)に、前記酸化チタン粒子分散スラリー(o−2)を6対4の割合(酸化物換算比)で、攪拌しながら30分で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを7.5に調整し、温度50℃で3時間熟成した後、このスラリーを脱水洗浄することで、TiO/SiO重量比=98/2の組成を持つチタニア含有ゲル(q−1)を得た。
前記チタニア含有ゲル(q−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして触媒Pを調製した。
【0039】
実施例9
メタチタン酸スラリー〔TiO濃度30wt%、石原産業(株)製〕57.33kgに、硫酸ジルコン(ZrO濃度18.19wt%、稀産金属製)2.20kgを10分間にて添加混合した後、さらにシリカゾル〔SiO濃度20wt%、商品名“カタロイドS−20L”触媒化成工業(株)製〕2.00kgを10分間にて添加混合し、その後15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを9.0に調整した。次いで、該スラリーを温度70℃でpH8.5〜9.5を維持するように15wt%アンモニア水を添加しながら1時間加温熟成後、このスラリーを脱水洗浄し、110℃で12時間乾燥した後、520℃で5時間焼成し、得られた焼成品を粉砕して平均粒径0.8μmの2元系複合酸化物粉体(r−1)を得た。
この粉体(r−1)15.39kgを水35.91kgに再スラリーし、これに35wt%過酸化水素水をH/TiOモル比=1になるように、10分間にて添加混合し、40℃で30分間熟成して粉体(r−1)の表面部分の一部をペルオキソチタン酸化したシリカを含有する酸化チタン粒子分散スラリー(r−2)を調製した。
次に、実施例1で調製したものと同じペルオキソチタン酸溶液(b−1)に前記酸化チタン粒子分散スラリー(r−2)を1対9の割合(酸化物換算比)で、攪拌しながら30分間で添加混合した後、15wt%アンモニア水を添加して該スラリーのpHを7.5に調整し、温度50℃で3時間熟成した。次いで、このスラリーを脱水洗浄して、TiO/ZrO/SiO重量比=96/2/2の組成を持つチタニア含有ゲル(s−1)を得た。
次に、前記チタニア含有ゲル(s−1)を用いて実施例1と同様にして触媒Bを調製した。即ち、モノエタノールアミン0.18kgと水1.00kgを混合し、これにメタバナジン酸アンモニウム0.16kgを添加、加熱溶解した。この溶解液と前述のチタニア含有ゲル(s−1)16.98kg(酸化物換算)をニーダーにて水分30wt%まで加熱捏和後、これにガラス繊維0.90kgおよびカルボキシメチルセルロース0.27kgを添加し、冷却捏和して捏和物を得た。該捏和物を真空押出成形機で、外径80mm□、目開き6.70mm、壁厚1.20mm、長さ500mmのハニカム状に押出成型し、その後、成型体を110℃で12時間乾燥した後、600℃で5時間焼成して触媒Qを得た。
【0040】
実施例10
実施例9で得たものと同様のチタニア含有ゲル(s−1)15.28kg(酸化物換算)に、モノエタノールアミン0.18kgと水1.00kg、さらにメタバナジン酸アンモニウム0.16kgを混合、加熱溶解した液を添加し、さらにパラタングステン酸アンモニウム1.91kgを添加した。これをニーダーにて水分30wt%まで加熱捏和後、これにガラス繊維0.90kgおよびカルボキシメチルセルロース0.27kgを添加し、冷却捏和して捏和物を得た。該捏和物を真空押出成形機で、外径80mm□、目開き6.70mm、壁厚1.20mm、長さ500mmのハニカム状に押出成型し、その後、成型体を110℃で12時間乾燥した後、600℃で5時間焼成して触媒Rを得た。
【0041】
各実施例および比較例の触媒に使用した担体の組成を表1に、触媒化したときの触媒組成を表2に示す。
【0042】
実施例11
触媒の評価試験
実施例1〜10および比較例1〜8で調製した触媒(A)〜(R)を使用して活性試験および摩耗試験を行った。
【0043】
<窒素酸化物除去能試験>
各ハニカム触媒から300mmの長さで3×3目に切り出したものを流通式反応器に充填し、下記条件で脱硝率を測定した。
脱硝率は触媒接触前後のガス中の窒素酸化物NOxの濃度をケミルミ式窒素酸化物分析計にて測定し次式により求めた。
【数1】

試験条件
触媒形状:3×3目,長さ:300mm,
反応温度:380℃,SV=10,000hr−1
ガス組成:NOx=180ppm,NH=180,SO=500ppm,
=2%,HO=10%,N=バランス
【0044】
<SOx酸化能試験>
各ハニカム触媒から300mmの長さで3×3目に切り出したものを流通式反応器に充填し、下記条件でSO転化率を測定した。
SO転化率は触媒接触前後のガス中のSO濃度を赤外線式SOガス濃度測定計により測定し次式により求めた。
【数2】

試験条件
触媒形状:3×3目,長さ:300mm,反応温度:380℃,
SV=10,000hr−1
ガス組成:O=2%,SO=500ppm,N=バランス
【0045】
<摩耗試験>
各ハニカム触媒から、100mmの長さで6×6目に切り出した試験試料を流通式反応器に充填し、ダストを含むガスを下記条件で流して触媒の減少重量から摩耗率を測定した。
【数3】

試験条件
触媒形状:6×6目,長さ:100mm
ガス流速:40m/s(触媒断面),
ガス温度:室温
ガス流通時間:30min
ダスト濃度:70g/Nm
ダスト:三河珪砂(株)製珪砂3号
【0046】
<触媒の評価試験の結果>
触媒の評価試験の結果を表2に示す。
実施例1(触媒A)と比較例1(触媒D)、実施例2(触媒B)と比較例2(触媒E)、実施例3(触媒C)と比較例3(触媒F)を比較すると、本発明の触媒は、脱硝率が高くかつSO酸化率が低いことが分かる。摩耗率については、本発明の触媒は、比較例の触媒に比較して少し高い値を示しているが、工業触媒として実用上十分な強度を有し問題はない。
また、ペルオキソチタン酸溶液からのペルオキソチタン酸の量をより多く使用した実施例7(触媒O)は脱硝率が高く、SO酸化率も低い。ペルオキソチタン酸溶液からのペルオキソチタン酸の量がさらに多い実施例8(触媒P)は、脱硝率はさらに向上したが、SO酸化率が高くなった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1における改質酸化チタン粒子の製造プロセスを示す図である。
【図2】実施例1における改質酸化チタン粒子から触媒を製造するプロセスを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカおよび/またはジルコニアを含有する酸化チタン粒子(A)の表面がペルオキソチタン酸(peroxotitanic acid)で被覆されていることを特徴とする改質酸化チタン粒子。
【請求項2】
被覆されているペルオキソチタン酸の量が酸化物(TiO)として5〜50wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の改質酸化チタン粒子。
【請求項3】
SiOおよび/またはZrO含有量が、酸化物としての全粒子量を100wt%としたとき、0.5〜20wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の改質酸化チタン粒子。
【請求項4】
(1)400〜700℃の温度範囲で焼成されたシリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子(A)を水に懸濁し、(2)過酸化水素を酸化チタン粒子(A)の酸化チタンに対してH/TiOモル比が0.5/1〜2/1の範囲で加えて、前記酸化チタン粒子(A)の表面をペルオキソチタン酸化した、シリカおよび/またはジルコニア含有酸化チタン粒子分散スラリー(B)を調製し、(3)別途、硫酸チタニル溶液に過酸化水素をH/TiOモル比が0.5/1〜2/1の範囲で加えてペルオキソチタン酸溶液(C)を調製し、(4)前記酸化チタン粒子分散スラリー(B)と前記ペルオキソチタン酸溶液(C)を混合し、得られた混合物スラリーを撹拌下に55℃以下の温度範囲に制御しながらアンモニア水を添加して混合物スラリーのpHを7〜8の範囲に調整して前記酸化チタン粒子(A)の表面にペルオキソチタン酸を沈着し、次いで、熟成、脱水、洗浄してゲル状物とするか、または該ゲル状物を150℃以下の温度で乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の改質酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記酸化チタン粒子(A)の平均粒子径が0.2〜5.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項4記載の改質酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか記載の改質酸化チタン粒子よりなる担体にWOおよび/またはVを担持したことを特徴とする排ガス処理用触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−24565(P2008−24565A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201164(P2006−201164)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】