説明

改造オープンドラム缶製造装置

【課題】巻締部を解き伸ばし胴体部の高さ寸法を伸長することで正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法がほぼ同等の改造オープンドラム缶を製造可能とする改造オープンドラム缶製造装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50は、天板部10aと胴体部10bとを結合している巻締部12を解き伸ばすことで胴体部10bを伸長する。よって、正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法がほぼ同等の改造オープンドラム缶を製造することができる。また、巻締部12を解き伸ばすことで天板部10aと胴体部10bとの結合を解除し両者を分離する。よって、切断などの危険な作業を行うことなしに、天板部10aを取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローズド型ドラム缶を加工して改造オープンドラム缶を製造する改造オープンドラム缶製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在用いられているドラム缶には大きく分けて2種類が存在する。一方は、主に粘性の低い液体に使用するクローズド型ドラム缶10である。このクローズド型ドラム缶10の天板部10aと胴体部10bとは、図4に示すように天板部10aの周縁部分と胴体部10bの上端部分とを重ね合わせて外側に巻き締めた巻締部12により結合している。そして、内容物の出し入れは天板部10aに設けられた注入口14によって行われる。また、天板部10aには内容物の出し入れを容易に行うための吸気口16が設けられている。
【0003】
他方は、主に高粘度の液体や塗料、固形物、紛体等に使用するオープン型ドラム缶である。一般的なオープン型ドラム缶は、天板部(天蓋)と胴体部とをリング状のバンドによって固定する。そして、このリング状のバンドを緩めることによって、天板部(天蓋)を胴体部から取り外すことができる。このため、オープン型ドラム缶では胴体部の上端側が全て開口する。
【0004】
そして、例えば下記[特許文献1]などに記載された技術を用いて、クローズド型ドラム缶の天板部10aを巻締部12ごと切除し、胴体部10bの切除側の端部を外側にカールすることでクローズド型ドラム缶をオープン型ドラム缶として再利用することが従来より行われている。尚、以後はクローズド型ドラム缶を加工して製造したオープン型ドラム缶を改造オープンドラム缶と記述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭50−107557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加工前のクローズド型ドラム缶と正規のオープン型ドラム缶とは高さ寸法がほぼ同等であるため、巻締部12を切除し且つ胴体部10bの切除側をカールする従来の手法により製造された改造オープンドラム缶は、高さ寸法が正規のオープン型ドラム缶よりも10mm〜15mm低くなる。このような高さ寸法の異なる改造オープンドラム缶と正規のオープン型ドラム缶とを混在して使用すると、例えばパレット等で縦方向に積載した場合に安定性に欠ける他、内容量に差が生じる等の様々な問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、巻締部を解き伸ばし胴体部の高さ寸法を伸長することで正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法がほぼ同等の改造オープンドラム缶を製造可能とする改造オープンドラム缶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)クローズド型ドラム缶10の天板部10aと胴体部10bとの巻締部12を解き伸ばすことで前記胴体部10bの高さ寸法を伸長するとともに前記天板部10aとの結合を解除し、これにより、正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法が略同等の改造オープンドラム缶を製造可能とする改造オープンドラム缶製造装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)クローズド型ドラム缶10を回転させる回転部30と、胴体部10bに対して所定の角度θをとって設置され天板部10aと胴体部10bとの巻締部12を解き伸ばす巻上部32と、前記巻上部32を胴体部10bの高さ方向に沿って前記巻締部12側に押圧する押圧部34と、を備え、
前記巻上部32を前記巻締部12の下方に部分的に当接させ、前記回転部30がクローズド型ドラム缶10を回転させながら、前記押圧部34が前記巻上部32を押圧することで前記巻締部12を解き伸ばし、前記胴体部10bの高さ寸法を伸長するとともに前記天板部10aとの結合を解除することを特徴とする上記(1)記載の改造オープンドラム缶製造装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻締部を解き伸ばすことで胴体部の高さ寸法を伸長することができる。これにより、高さ寸法が正規のオープン型ドラム缶とほぼ同等の改造オープンドラム缶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置の巻上部を説明する図である。
【図3】本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置の解き伸ばし動作を説明する図である。
【図4】クローズド型ドラム缶の巻締部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置について図面に基づいて説明する。図1に示す本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50は、クローズド型ドラム缶10を回転させる回転部30と、クローズド型ドラム缶10の天板部10aと胴体部10bとの巻締部12を解き伸ばす巻上部32と、巻上部32を押圧する押圧部34と、を有している。
【0012】
回転部30は、回転モータ20と、回転モータ20の回転動作をクローズド型ドラム缶10に伝達する回転体22と、クローズド型ドラム缶10を載置する載置部24と、載置部24を上下させる昇降部26と、を有している。また、載置部24はガイド部27aを備えた回転ローラ27を放射状に4つ有している。
【0013】
尚、上記の回転部30は本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50の好適な一例であるから、回転部30の構成はこれに限定されるものではない。例えば、回転モータ20をクローズド型ドラム缶10の下側(地板側)に設け地板側から回転動作を伝達しても良いし、回転モータ20をクローズド型ドラム缶10の側面に設け胴体部10b側から回転動作を伝達しても良い。また、昇降部26に替えて、天板部10aを上方から押し付ける構造としても良いし、クローズド型ドラム缶10を側面方向から挟持して保持する構造としても良い。さらに、回転ローラ27に替えて、ガイド部27aを備えた回転板を用いても良い。
【0014】
またさらに、本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置は、クローズド型ドラム缶10を回転させずに巻上部32を巻締部12に沿って回転させる構成としても良い。ただし、この構成は装置規模が大きくなるため、本例に示すようにクローズド型ドラム缶10を回転させる構成がより好ましい。
【0015】
改造オープンドラム缶製造装置50を構成する巻上部32は自由回転する金属製のローラであり、クローズド型ドラム缶10の回転動作が伝達することで回転動作する。また、巻上部32は、図2(a)に示すように胴体部10bとのなす角が所定の角度θとなるよう傾けて設置される。尚、この角度θが例えば0°の場合、クローズド型ドラム缶10の回転動作の伝達に不具合が生じ、巻上部32が円滑に回転することができない。また、角度θが大きすぎると図2中の角度θ’が大きくなり、巻上部32が巻締部12から外れる可能性が高くなる。よって、巻上部32と胴体部10bとのなす角θは2°〜30°程度が好ましく、5°〜15°が特に好ましい。尚、巻上部32の形状を図2(b)に示すように底面側が広い略円錐台形状とすれば、上記の角度θと角度θ’とを独立して設定することができる。この構成を採用した場合、例えば、角度θを5°〜15°としながら角度θ’を0°とすることができる。尚、上記の巻上部32の胴体部10bとの接触部分、即ち巻上部32の底面の周縁部分にはアールや面取りを施し、胴体部10bに無用な傷を付けないようにすることが好ましい。また、巻上部32の設置個数には特に限定は無く、放射状に2個、3個、4個、5個設けても良いし、それ以上の個数設けても良い。ただし、装置規模が大きくなるため、巻上部32の設置個数は1つとすることが特に好ましい。
【0016】
押圧部34は、巻上部32を巻締部12が解き伸びる方向、即ち胴体部10bの高さ方向に沿って巻締部12側(図1における上方向)に押圧する。押圧部34としては、周知の油圧機構等を用いることができる。また、押圧部34には、巻上部32と押圧部34とをクローズド型ドラム缶10の方向に移動させる移動部36が設置されている。移動部36も周知の油圧機構等を使用することができる。尚、上記の押圧部34、移動部36は本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50の好適な一例であるから、これらは上記の構成に限定されるものではない。
【0017】
次に、本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50の動作を説明する。先ず、クローズド型ドラム缶10を改造オープンドラム缶製造装置50の所定の位置に載置する。クローズド型ドラム缶10の載置方向は天板部10aを上とする。このクローズド型ドラム缶10の載置作業は作業者が行っても良いし、改造オープンドラム缶製造装置50にドラム缶搬入装置を設け自動的に搬入する構成としても良い。
【0018】
次に、昇降部26が動作して載置部24を回転ローラ27ごと上昇させる。これにより、載置部24に設置された回転ローラ27のガイド部27aがクローズド型ドラム缶10を適正な位置に誘導する。尚、この適正な位置とはクローズド型ドラム缶10の中心軸と回転部30の回転軸とはほぼ一致する位置である。そしてさらに載置部24が上昇すると、クローズド型ドラム缶10の天板部10aが回転部30の回転体22に押し付けられる。
【0019】
この昇降部26の動作と前後して、回転モータ20が例えば60rpm〜80rpm程度の所定の回転速度で回転動作する。この回転動作は回転体22を介してクローズド型ドラム缶10に伝達され、これによりクローズド型ドラム缶10が回転する。尚、載置部24の回転ローラ27は自由回転するため、クローズド型ドラム缶10の回転を阻害することはない。
【0020】
次に、移動部36が動作して、巻上部32を押圧部34ごとクローズド型ドラム缶10に近づく方向に移動させる。そして、巻上部32が胴体部10bに当接すると移動部36はこの状態を維持する。このとき、巻上部32はクローズド型ドラム缶10の回転動作が伝達して回転する。
【0021】
次に、押圧部34が動作して巻上部32を胴体部10bの高さ方向に沿って巻締部12側に移動させる。これにより巻上部32が、図2(a)に示すように、巻締部12の下方に当接する。次に、押圧部34は巻上部32を30kgf〜80kgf程度の力で巻締部12側にさらに押圧する。巻上部32はこの押圧動作により巻締部12の下方を上方向、即ち巻締部12を解き伸ばす方向に押圧する。尚、上記のように巻上部32は円筒もしくは略円錐台形状であるから、巻上部32による巻締部12の押圧箇所は部分的なものとなる。ただし、クローズド型ドラム缶10は回転しているため、巻上部32による巻締部12への押圧箇所は常時移動する。この結果、巻締部12は図3(a)に示すように巻締部12に沿って徐々に解き伸ばされ、最終的に図3(b)に示すように全て解き伸ばされる。尚、巻締部12が全て解き伸ばされたクローズド型ドラム缶10を、以後、処理済クローズド型ドラム缶と記述する。この処理済クローズド型ドラム缶の胴体部10bの高さ寸法は、巻締部12が解き伸ばされた分、約4cm〜5cm(ドラム缶全体の高さ寸法としては約2cm〜3cm)伸長する。また、巻締部12が全て解き伸ばされることにより天板部10aと胴体部10bとの結合も同時に解除される。
【0022】
巻締部12が全て解き伸ばされると、押圧部34は巻上部32を下方向に移動する。またこれと前後して、移動部36は巻上部32及び押圧部34をクローズド型ドラム缶10から離れる方向に移動する。次に、回転部30の回転モータ20が停止する。これと前後して、昇降部26は載置部24ごとクローズド型ドラム缶10を下方に移動する。そして、処理済クローズド型ドラム缶の回転が停止した時点で、処理済クローズド型ドラム缶を改造オープンドラム缶製造装置50から取り出す。これにより、改造オープンドラム缶製造装置50によるクローズド型ドラム缶10の巻締部12の解き伸ばしと、天板部10aと胴体部10bとの結合の解除が完了する。尚、処理済クローズド型ドラム缶の取り出し作業は、作業者が行っても良いし、改造オープンドラム缶製造装置50にドラム缶搬出装置を設け自動的に取り出す構成としても良い。
【0023】
このようにして製造された処理済クローズド型ドラム缶は、次行程において天板部10aの取り外しが行われる。前述のように巻締部12が解き伸ばされることにより処理済クローズド型ドラム缶の天板部10aと胴体部10bとの結合は既に解除しているから、天板部10aの取り外しは単純な作業で容易に行うことができる。尚、改造オープンドラム缶製造装置50に天板部10aの取り外し機構を設置しても良い。この天板取り外し機構の例としては、例えば回転体22が電磁石や注入口14、吸気口16に掛かる爪などの何らかの天板保持機構を備え、昇降部26が処理済クローズド型ドラム缶を下げる際にこの天板保持機構が天板部10aを保持することで、天板部10aを取り外すものなどが挙げられる。
【0024】
天板部10aが取り外された処理済クローズド型ドラム缶は、周知の装置により解き伸ばされた部分が所定の長さ分だけ外側にカールされ、正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法がほぼ同等の改造オープンドラム缶となる。尚、改造オープンドラム缶製造装置50に天板取り外し機構及び上記のカール機構を設置し、巻締部12の解き伸ばし、天板部10aの取り外し、及び、カールを一つの装置で連続して行えるようにしても良い。
【0025】
以上のように、本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50によれば、天板部10aと胴体部10bとを結合している巻締部12を解き伸ばすことで胴体部10bを伸長することができる。そして、この解き伸ばし部分を所定の長さカールすることで、正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法がほぼ同等の改造オープンドラム缶を製造することができる。このようにして製造された改造オープンドラム缶は高さ寸法が正規のオープン型ドラム缶と同等であるため、正規のオープン型ドラム缶と同等に取り扱うことができる。このため、両者を混在して積載しても安定性が損なわれることはなく、また、内容量に差が生じることもない。さらに、正規のオープン型ドラム缶に適合した各種装置でも問題なく使用することができる。
【0026】
また、本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50は、巻締部12を解き伸ばすことで天板部10aと胴体部10bとの結合を解除し両者を分離する。よって、切断などの危険な作業を行うことなしに、天板部10aを取り外すことができる。
【0027】
尚、前述のように本発明に係る改造オープンドラム缶製造装置50の各部の構成、形状、動作、機構、手順等は特に上記の例に限定されるものではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 クローズド型ドラム缶
10a 天板部
10b 胴体部
12 巻締部
30 回転部
32 巻上部
34 押圧部
50 改造オープンドラム缶製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローズド型ドラム缶の天板部と胴体部との巻締部を解き伸ばすことで前記胴体部の高さ寸法を伸長するとともに前記天板部との結合を解除し、
これにより、正規のオープン型ドラム缶と高さ寸法が略同等の改造オープンドラム缶を製造可能とする改造オープンドラム缶製造装置。
【請求項2】
クローズド型ドラム缶を回転させる回転部と、
胴体部に対して所定の角度をとって設置され天板部と胴体部との巻締部を解き伸ばす巻上部と、
前記巻上部を胴体部の高さ方向に沿って前記巻締部側に押圧する押圧部と、を備え、
前記巻上部を前記巻締部の下方に部分的に当接させ、前記回転部がクローズド型ドラム缶を回転させながら、前記押圧部が前記巻上部を押圧することで前記巻締部を解き伸ばし、前記胴体部の高さ寸法を伸長するとともに前記天板部との結合を解除することを特徴とする請求項1記載の改造オープンドラム缶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6610(P2013−6610A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140043(P2011−140043)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(311009206)株式会社ミヤビ商事 (1)
【Fターム(参考)】