説明

攻撃的及び防御的免疫マーカーのexvivo誘導により宿主免疫機能を特徴付けるための方法

宿主の免疫機能は、攻撃的及び防御的免疫機能関連マーカーの変化を定量化することにより特徴付けることができる。ある方法は、攻撃的及び防御的免疫機能関連マーカーの発現の誘導に基づき、対象体にとって潜在的に有効な療法を特定するために使用することができる。加えて、幾つかの方法は、攻撃的又は防御的免疫応答のいずれか一方を刺激するが、攻撃的又は防御的免疫応答の他方を阻害することを可能にする薬物を特定するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月16日に出願された米国仮出願第61/287,114号の利益を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、容易に測定が可能であり、宿主の攻撃的又は防御的免疫機能のいずれかに関連するマーカーに関する。より詳しくは、本開示は、感染に対する宿主応答性の予測因子として、及び/又は免疫調節効果について薬物をスクリーニングするための方法として、攻撃的(異物を攻撃する)又は防御的(攻撃的免疫活性を制御する)免疫機能のいずれかと関連する特定のマーカーをex vivo誘導すること及びそれらの誘導を測定することに関する。遺伝子誘導に関して生成されるデータは、特定の対象体の発現プロファイルに特異的に適合する治療を特定するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
免疫系は、まず病原体及び腫瘍細胞を特定し、その後除去することにより、宿主を疾患から防御する一組の多様なタンパク質、細胞、組織、及びプロセスを含む。免疫系の主な役割は、外来性の細胞又は病原体と内因的な細胞を区別すること、言い換えれば「自己」と「非自己」とを区別することである。宿主に内因的な細胞は、クラスI主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現により「自己」として認識されると考えられている。クラスI MHCが存在しないか又は発現レベルが低減されたそれら細胞は、損傷した「自己」又は「非自己」細胞として、免疫系により標的とされる場合がある。この見事な系であるにも関わらず、免疫系の障害は、免疫不全、発癌、又は自己免疫を含む疾患に結び付く場合がある。
【0004】
白血球細胞(WBC;白血球)は、免疫系の主要な機能的クラスの細胞である。WBCには幾つかのサブタイプが存在するが、リンパ球は、免疫系防御機構に不可欠な役割を果たす1つのサブタイプである。ナチュラルキラー(NK)細胞は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、又は損傷した「自己」細胞の識別及び拒絶に関与する特化したタイプの細胞傷害性リンパ球である。細胞傷害性T細胞は、感染体細胞又は腫瘍細胞の死滅を誘導することが可能な別のリンパ球サブグループである。NK細胞及び細胞傷害性T細胞は、多くの場合サイトカイン又は外来性抗原の提示により活性化されると、それらの細胞質から、種々のタンパク質及びプロテアーゼを含有する小顆粒を放出する。
パーフォリン等の特定のタンパク質は、標的細胞の膜に細孔形成を誘導し、グランザイム等のプロテアーゼを細胞に進入させることで、プログラム細胞死プロセス(アポトーシス)を誘導することが可能となる。
【0005】
外来性細胞又は腫瘍細胞に対する攻撃と同時に、免疫系は、負のフィードバックループも開始させて免疫系の活性を制限し、外来性細胞の除去が成功した後で免疫系を活動停止させ、また過剰応答性及び可能性としてある「自己」の細胞、又は自己免疫の発生に結び付く他の経路の攻撃を回避する。制御性T細胞は、免疫系の活性化を能動的に抑制し、この役割の重要性は、制御性T細胞(T−reg)の遺伝子欠損により重症の自己免疫症候群が引き起こされることから明らかである。骨髄性由来サプレッサー細胞(MDSC)も、免疫ダウンレギュレーションプロセスに関与し、それは、MDSCが、標的とされ破壊される細胞の表面上に発現された外来性タンパク質に対する細胞傷害性T細胞の結合を阻止するためである。この防御的な負のフィードバック系の活性は、系の攻撃的機能を凌駕
する場合があり、それは、腫瘍細胞が探知を逃れ、癌性増殖を発生させる可能性を増加させる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
種々の細胞タイプが、外来性細胞に対する積極的な攻撃及び/又は免疫系機能を制限する防御的手段に関与する様式及び能力を知ることで、癌性腫瘍及び/又は自己免疫疾患の発症に対する更なる洞察がもたらされる可能性がある。従って、個体の攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも評価する診断検査の必要性が存在する。免疫調節化合物としての効力について薬物を迅速にスクリーニングする必要性、及び個体の免疫機能に基づいてその個体に合った療法を特定する必要性も存在する。
【0007】
免疫は、良好な健康維持に、及び風邪から生命に関わる疾患にまで及ぶ種々の疾患に対する防御に重大な役割を果たす。免疫学はこの数十年で大きな進歩を見せているが、免疫系がどのように機能するかの理解は、in vitro実験又は動物モデルにおける実験に由来している。患者に施されている療法の多くは、これら実験から単純に推定されたものであり、多種多様な患者に常に有効であるとは限らない。臨床的に適用可能な技術により各患者の免疫又は免疫学的健康を特徴付ける方法に対する要求が増大している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態では、対象体の免疫機能が、攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられているかを決定する方法であって、対象体から白血球を含有する第1及び第2の試料を取得すること;第1の試料を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する免疫刺激剤に溶媒中で暴露すること;第2の試料を上記溶媒に暴露すること;上記刺激剤又は溶媒に暴露した後、第1及び第2の試料中の1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより第1及び第2の試料中で定量化された攻撃的免疫機能関連mRNAの量間の比率として攻撃的免疫機能の誘導を定量化すること;上記刺激剤又は溶媒に暴露した後、第1及び第2の試料中の1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより第1及び第2の試料中で定量化された防御的免疫機能関連mRNAの量間の比率として防御的免疫機能の誘導を定量化することを含み、攻撃的又は防御的免疫が著しくより多く誘導されることにより、対象体の免疫機能がそれぞれ攻撃的又は防御的免疫機能に向けられていることが示される方法を提供する。
【0009】
幾つかの実施形態では、白血球を含有する試料は、全血試料であり、幾つかの実施形態中で、任意にヘパリン処理されている。幾つかの実施形態では、試料を取得した直後に刺激を生じさせる必要はない。むしろ、全血は、刺激の前に最大約24時間保存しておくことができる。一実施形態では、保存試料は、室温で保存される。別の実施形態では、保存試料は、冷却された環境で保存される(例えば、室温未満、例えば、約4℃)。
【0010】
幾つかの実施形態では、これらに限定されないが、組換えインターロイキン−2、フィトヘマグルチニン、抗T細胞受容体抗体、熱凝集IgG、リポ多糖、及びザイモサンの1つ又は複数を含む種々の刺激剤が使用される。幾つかの実施形態では、試料の刺激剤への暴露は、24時間未満である。幾つかの実施形態では、暴露は、2〜6時間である。一実施形態では、暴露は、約4時間である。
【0011】
機能的分類を使用して、研究しようとするマーカーを分類することができる。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAは、免疫リクルーター機能(immune recruiter function)、免疫キラー機能(immune killer function)、又は免疫ヘルパー機能(immune helper function)を有するものに分類される。幾つかの実施形態では、1つ又
は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAは、免疫リクルーター機能を有し、CCL2、CCL4、CCL8、CCL20、CXCL3、CXCL10、及びインターロイキン8からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAは、免疫キラー機能を有し、グランザイムB、パーフォリン、TNFSF1、TNFSF2、TNFSF5、TNFSF6、TNFSF14、及びTNFSF15からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAは、免疫ヘルパー機能を有し、インターロイキン2、インターロイキン4、インターフェロンガンマ及びインターロイキン17Aからなる群から選択される。
【0012】
防御的免疫機能関連mRNAは、攻撃的免疫機能の抑制に関連している。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAは、インターロイキン10、トランスフォーミング成長因子ベータ、FoxP3、CD25、アルギナーゼ、CTLA−4、及びPD−1からなる群から選択される。
【0013】
本明細書に記載の方法は、任意に、対象体が癌を有している場合に使用され、潜在的に有効な抗癌療法を特定するために、対象体の免疫機能が、攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられていると決定される。そのような使用では、対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられていると決定されることにより、癌免疫療法治療計画が有効である可能性が高いことが示される。幾つかの実施形態では、対象体の免疫機能が防御的免疫機能に向けられていると決定されることにより、免疫に基づく作用機序が関与しない抗癌治療計画が有効である可能性が高いことが示される。
【0014】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示された方法を使用して、対象体の免疫機能に基づいて、抗癌療法治療計画の効力を予測し、対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられていると決定されることにより、抗癌免疫療法治療計画が有効である可能性が高いことが示され、対象体の免疫機能が防御的免疫機能に向けられていると決定されることにより、免疫に基づく作用機序が関与しない抗癌治療計画が有効である可能性が高いことが示される。
【0015】
幾つかの実施形態では、対象体の免疫機能が、攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられているかを決定する方法であって、対象体から白血球を含有する第1及び第2の試料を取得すること;第1の試料を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する作用剤に溶媒中で暴露すること;第2の試料を上記溶媒に暴露すること;暴露させた第1及び第2の試料をインキュベートすること;上記作用剤又は溶媒に暴露した後、第1及び第2の試料の各々中の1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより防御的免疫機能関連mRNAの誘導の量を、第1及び第2の試料中で定量化された量間の比率として定量化すること;上記作用剤又は溶媒に暴露した後、第1及び第2の試料の各々中の1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより攻撃的免疫機能関連mRNAの誘導の量を、第1及び第2の試料中で定量化された量間の比率として定量化すること;防御的免疫機能関連mRNAの誘導と攻撃的免疫機能関連mRNAの誘導との比率を計算すること;及び計算した比率を対照対象体群に由来する対照比率と比較することを含み、計算した比率が対照比率より著しく増加することにより、対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられており、計算した比率が対照比率より著しく減少することにより、対象体の免疫機能が防御的免疫機能に向けられていることが示される方法が提供される。
【0016】
幾つかの実施形態では、攻撃的免疫機能関連mRNAは、細胞傷害性機能のマーカーをコードするmRNAを含む。幾つかの実施形態では、防御的免疫機能関連mRNAは、例えば、アルギナーゼ又はFoxP3等の骨髄由来サプレッサー細胞のマーカーをコードするmRNAを含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、攻撃的及び防御的免疫機能の両方の刺激因子と共に投与するための薬物を特定し、投与された薬物が、攻撃的又は防御的免疫機能の1つを阻害する方法であって、上記薬物の存在下又は非存在下(上記刺激因子の存在下であってもよく又は非存在下であってもよい)で攻撃的マーカーの発現を測定することにより、全血中の1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連マーカーの発現のin vitro誘導を定量化すること;上記薬物の存在下又は非存在下(上記刺激因子の存在下であってもよく又は非存在下であってもよい)で防御的マーカーの発現を測定することにより、全血中の1つ又は複数の防御的免疫機能関連マーカーの発現のin vitro誘導を定量化すること;及び上記薬物の存在下又は非存在下での攻撃的免疫機能関連マーカーの誘導と防御的免疫機能関連マーカーの誘導との差異を決定することを含み、攻撃的及び防御的マーカーに対するその正味効果に基づき、上記薬物が、上記刺激因子と共に投与するためのものであると特定される方法が提供される。
【0018】
幾つかの実施形態では、in vitro誘導は、攻撃的及び防御的免疫機能マーカーの1つ又は複数を誘導するのに十分な期間、全血を刺激因子に暴露することを含む。幾つかの実施形態では、攻撃的免疫機能関連マーカーは、CD16、グランザイムB、TNF−アルファ、インターフェロンガンマ、及び腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーの1つ又は複数を含み、防御的免疫機能関連マーカーは、CD25、FoxP3、CTLA4、GARP、IL17、及びアルギナーゼの1つ又は複数を含む。一実施形態では、攻撃的及び防御的免疫機能の刺激因子は、インターロイキン2である。一実施形態では、攻撃的又は防御的免疫機能を衰えさせる薬物は、薬物が1つ又は複数の防御的免疫機能関連マーカーの発現を誘導するよりも高い程度に、1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連マーカーの発現を誘導する(例えば、攻撃的機能を優先的に誘導する)。増加は、任意に、薬物を送達するために使用される溶媒で刺激されている対照試料と比べて決定される。薬物の投与は、任意に、刺激剤の投与の前又は投与と同時である。
【0019】
幾つかの実施形態では、攻撃的及び防御的免疫機能の両方を特徴付ける方法であって、ヘパリン処理した全血の少なくとも2つの分割量を取得すること;第1の分割量を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する作用剤に暴露すること;第2の分割量を作用剤の溶媒に暴露すること;これら分割量を24時間未満インキュベートすること;TNFSF、グランザイムB、パーフォリン、CD16、INFガンマ、又は白血球の細胞傷害性機能を表す他の遺伝子をコードする1つ又は複数のmRNAの量を定量化すること;FoxP3、CD25、又は制御性T細胞のマーカーを表す他の遺伝子をコードする1つ又は複数のmRNAの量を定量化すること;第1及び第2の分割量の両方において、細胞傷害性機能のマーカーの発現と制御性T細胞のマーカーの発現との比率を計算すること;及びこれら比率を、対照対象体群に由来する比率と比較することを含む方法が提供される。
【0020】
この方法は、任意に、ヘパリン処理した全血のさらなる2つの分割量の取得すること;さらなる第1の分割量を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する作用剤に暴露すること;さらなる第2の分割量を、作用剤の溶媒に暴露すること;これら分割量を24時間未満インキュベートすること;アルギナーゼ又は骨髄由来サプレッサー細胞のマーカーを表す他の遺伝子をコードする1つ又は複数のmRNAの量を定量化すること;第1及び第2の分割量の両方での、細胞傷害性機能のマーカーの発現と骨髄由来サプレッサー細胞のマーカーの発現との比率を計算すること;及びこれら比率を、対照対象体群に由来する比率と比較することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】IL−2刺激後の、種々の免疫マーカーをコードするmRNAレベルの経時的変化を表す図である。
【図1B】IL−2刺激後の、種々の免疫マーカーをコードするmRNAレベルの経時的変化を表す図である。
【図1C】IL−2刺激後の、種々の免疫マーカーをコードするmRNAレベルの経時的変化を表す図である。
【図1D】IL−2刺激後の、種々の免疫マーカーをコードするmRNAレベルの経時的変化を表す図である。
【図2】IL−2に対する免疫マーカーの用量反応的誘導を表す図である。「*」は、対照溶媒と比較して、統計的有意差(p<0.05)があることを示す。
【図3A】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3B】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3C】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3D】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3E】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3F】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3G】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3H】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3I】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図3J】薬物スクリーニングに使用されたデータを表す図である。
【図4A】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4B】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4C】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4D】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4E】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4F】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4G】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4H】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4I】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図4J】薬物スクリーニングに使用された攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導に関連するデータを表す図である。
【図5】図5A〜Dは、迅速ハイスループットプロトコールを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載の幾つかの実施形態では、宿主の攻撃的及び防御的免疫応答をex vivoで特徴付けする方法が提供される。本明細書で使用される場合、用語「攻撃的」は、感染、外来性病原体、又は腫瘍等に対して開始される全体的免疫応答及びその関連細胞成分を指すものとする。幾つかの場合では、用語「キラー」は、「攻撃的」と同義的に使用される。本明細書で使用される場合、用語「防御的」は、活性化された攻撃的免疫系の活性を制限する役目を果たす全体的免疫応答及びその関連細胞成分を指すものとする。幾つかの場合では、用語「サプレッサー」は、「防御的」と同義的に使用される。
【0023】
幾つかの実施形態では、本方法には、宿主から末梢全血を収集すること、及び攻撃的又
は防御的免疫応答に関連する一群のマーカーの1つ又は複数を誘導する刺激剤(複数可)を使用することが伴う。幾つかの実施形態では、任意に、単離された白血球を使用してもよい。幾つかの実施形態では、攻撃的又は防御的マーカーの各々の1つ又は複数をコードするmRNAの測定を使用して、宿主の全体的免疫応答を特徴付ける。更に他の実施形態では、そのような攻撃的又は防御的マーカーの発現の特徴付けを使用して、免疫抑制薬又は抗癌薬(例えば、免疫調節薬)のいずれかとしての潜在的効力について、薬物をスクリーニングする。
【0024】
免疫系は、異物に対する攻撃を開始するために協調して作用し、それにより感染、腫瘍形成等から宿主を防御する、様々な機能を有する様々な細胞タイプを含む。機能の主な分類には、これらに限定されないが、リクルート機能、キラー機能、サプレッサー(キラーの)機能、及びヘルパー機能、並びに様々な補助機能、例えば、抗原提示、血管新生の制御、疼痛調節等が含まれる。
【0025】
リクルート機能は、免疫系の適切な機能に不可欠である。感染、腫瘍形成等の事象では、免疫攻撃を適切に認識し、免疫攻撃から宿主を防御するために、免疫細胞は、特に全血、骨髄、及びリンパ系を含む種々の身体部分からリクルートされなければならない。幾つかの実施形態では、ケモカインは、炎症又は腫瘍形成の局所領域に他の免疫細胞をリクルートするように機能する。結局のところ、不要な外来性細胞を死滅又は無力化することができる細胞を宿主が有していたとしても、それら細胞がどこに行って機能すべきかが適切に指示されなければ役立たない。リクルーター機能は、幾つかの実施形態では、ケモカイン又は他の走化性分子により提供される。幾つかの実施形態では、特定のモチーフのケモカインは、他の免疫の分子をリクルートするように機能する。例えば、幾つかの実施形態では、CCL−2、CCL−4、CCL−8、又はCCL−20等のCCL分子は、他の免疫細胞のリクルートに関与する。他の実施形態では、CXCL−3又はCXCL−10等のCXCL分子が、関与する。幾つかの実施形態では、C−C若しくはC−X−Cモチーフであるにせよ、又は別の種類であるにせよ、他のケモカインエフェクターが関与する。
【0026】
リクルーター細胞が、他のタイプの免疫細胞を適切な位置に移動させると、他のタイプの細胞は、それらの指定の機能を発揮することができ、幾つかの実施形態では、それは標的細胞(複数可)を死滅させることである。幾つかの実施形態では、死滅機能は、標的細胞のアポトーシスを誘導することより実現される。例えば、標的が腫瘍である場合、キラー機能(例えば、アポトーシスに関与するある分子を発現すること)を有する1つ又は複数の細胞が、標的部位にリクルートされる。幾つかの実施形態では、そのようなキラー細胞は、グランザイムB、パーフォリン、TNFSF1(リンホトキシン)、TNFSF2(TNF−アルファ)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(Fasリガンド)、TNFSF14(LIGHT)、TNFSF15(TL1A)、及び/又はCD16等の分子の1つ又は複数を発現する。そのため、標的部位に対するこれら細胞のリクルートは、標的細胞の破壊をもたらすカスケードを開始させ、従って、攻撃的免疫系の目的、例えば異物又は外来性細胞の破壊及び/又は除去を実現する。
【0027】
本明細書で考察されているように、防御的免疫系は、攻撃的免疫系の活性を制限するように機能する(例えば、自己免疫疾患に結び付く場合がある攻撃的機能の過剰活性を防止する)一連のシグナル及び分子を含む。防御的機能を有する細胞は、これらに限定されないが、IL10、TGF−ベータ、(フォークヘッドボックスp3)FoxP3、CD25、アルギナーゼ、CTLA−4、及び/又はPD−1を含むマーカーにより認識することができる。そのような細胞は、攻撃的免疫系の活性に対する重要なバランスであり、適切な全体的免疫機能を保証するために重要である。
【0028】
更なる細胞タイプが、攻撃的及び防御的免疫系の両方の機能に関与する。ヘルパーT細胞(Th細胞)は、免疫系の能力を確立及び最大化するように機能するリンパ球機能のサブグループである。上述の細胞とは異なり、Th細胞は、細胞傷害性又は貪食活性を欠如している。しかしながら、Th細胞は、細胞傷害性T細胞(例えば、上述のキラー細胞)等の他の免疫細胞の活性化及び指向性に関与する。Th細胞は、他の要因の中でも特に、どの細胞タイプを主に活性化するか、どのサイトカインを産生するか、及びどのタイプの免疫刺激が促進されるかに応じて、2つの主なサブ分類(Th1又はTh2)に分類される。例えば、Th1細胞は、相手として主にマクロファージと組み、Th2細胞は、相手として主にB細胞と組む。Th1細胞は、インターフェロン−ガンマ、TNF−ベータ、及びIL−2を産生し、Th2細胞は、IL1、IL5、IL6、IL10、及びIL13を産生する。Th細胞のサブセットのマーカーは、公知であり、刺激に応答する、あるTh細胞サブタイプの誘導を特定するために使用することができる。例えば、IL2又はIFNGの誘導は、Th1細胞による刺激に対する応答を表し、IL4又はIL10の誘導は、Th2細胞による刺激に対する応答を表す。Th17等の他のサブタイプは、IL17等の他のマーカーにより表される(例えば、表5及び6を参照)。
【0029】
最後に、対象体の免疫状態又は機能を特徴付ける場合、様々な他の機能が研究に有用である。例えば、抗原提示(GMCSFにより測定される)、B細胞の増殖(IGH2により測定される)、血流要求が増加するために腫瘍形成で生じることが多い血管新生(VEGFにより測定される)、及び疼痛(POMCにより測定される)である。上述のこれら一般的な分類を使用して、対象体の免疫応答を特徴付けるために全血を刺激することにより生成された解釈データを分類することができ、それは、下記でより詳細に記述されている。
【0030】
上述の一般的な機能別分類に基づくと、NK細胞及び細胞傷害性T細胞の機能等の攻撃的免疫機能は、癌性細胞の破壊、並びに感染及び/又は炎症との戦いに重要である。NK細胞は、不要な標的細胞並びに正常な内因性細胞の両方を潜在的に死滅させることができるため、2つのタイプの表面受容体:活性化受容体及び阻害受容体を持つ。まとめると、これらの受容体は、NK細胞の細胞傷害活性の活性バランスを保つ役目を果たし、従って、NK細胞の細胞傷害活性を制御する。NK細胞の活性化には、活性化シグナルが必要であり、活性化シグナルには、サイトカイン(インターフェロン等の)、それに対して体液性免疫応答が開始された標的細胞に対するFcR受容体の活性化、及び/又は種々の活性化NK細胞表面受容体に結合する外来性リガンドが関与している場合がある。その後、標的細胞は、上述のアポトーシス機序により破壊される。
【0031】
同様に、細胞傷害性T細胞も活性化を必要とし、細胞傷害性T細胞に対する外来性(例えば、非自己)抗原の提示をもたらす2つのシグナルプロセスによると考えられている。細胞傷害性T細胞は、活性化されると、主にインターロイキン2(IL−2)、T細胞の増殖及び分化因子に応答して、クローン増殖を起こす。細胞傷害性T細胞は、細孔形成及び標的細胞のアポトーシスを誘導する点で、NK細胞とある程度同様に機能する。
【0032】
外来性細胞に対する免疫攻撃に加えて、T−reg及びMDSCにより緩和されると考えられる防御的免疫機能が発生し、攻撃的免疫機能を阻害する。多くのT−regは、胸腺で発生し、フォークヘッドファミリー転写因子FoxP3(フォークヘッドボックスp3)を発現する。FoxP3発現は、T−reg発生及び集団増殖に必要であると考えられ、T−regの運命を規定する遺伝子プログラムの制御因子でもある可能性がある。多くの疾患状態では、特に癌では、T−regの数、特にFoxp3を発現するT−regの数の変化が見出される。例えば、腫瘍を有する患者は、癌性細胞の形成を抑制する身体の能力を阻害するFoxp3陽性T細胞が、局所的に相対的に過剰である。
【0033】
また、MDSCは、防御的免疫応答のエフェクターである。MDSCは、攻撃的T細胞を破壊しないと考えられるが、細胞傷害性T細胞の挙動の様式を変化させる。MDSCは、アミノ酸であるアルギニンを分解するプロテアーゼであるアルギナーゼ(ARG)を分泌する。細胞傷害性T細胞及びNK細胞を含むリンパ球は、活性化のためにアルギニンに間接的に依存する。従って、MDSCによるARGの分泌は、NK細胞及び細胞傷害性T細胞の活性化を制限し、それにより防御的免疫応答を促進する。
【0034】
しかしながら、T−reg及びMDSCによるこの自己制限的制御の結果、防御的免疫機能は、局所的組織環境で優勢なスキームになる可能性を有する。結果として、攻撃的免疫機能の刺激(癌ワクチン治療又は適応性免疫療法により発生するような)は、腫瘍細胞を完全に根絶するのに十分なほど機能できない場合がある。結果として、腫瘍細胞は、免疫系を回避し、腫瘍へと悪化する場合がある。
【0035】
従って、個体の攻撃的及び防御的免疫機能の特徴付けは、攻撃系が優勢であることにより自己免疫が促進される場合があり、防御系が優勢であることにより癌が促進される場合があるため、非常に重要であり得る。更に、攻撃及び防御関連免疫マーカーの発現プロファイルは、抗癌剤又は免疫抑制剤としての効力について、薬物をスクリーニングするのに有用であり得る。
【0036】
例えば、種々のマーカーの発現プロファイルを使用して、特定の対象体に最も有効であり得る特定の種類の療法を特定することができる。様々なマーカーによる全血の刺激により、どの細胞タイプが特定のタイプの刺激に応答性であるかの決定が可能になる。本明細書で考察されているように、刺激因子には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:IL2(一般的な細胞性免疫修飾因子)、PHA(一般的なT細胞修飾因子)、抗T細胞受容体抗体(T細胞の特異的刺激因子)、HAG(FcR受容体を有する白血球の刺激剤)、及びLPS又はザイモサン(一般的な細菌性免疫応答に関連するトール様受容体の活性化因子)。全血を刺激し、本明細書に記載の一般的な機能別分類(例えば、リクルーター又はキラー)に由来する種々のマーカーの発現誘導を測定するために使用される場合、誘導のパターンを使用して、所与の対象体に特に効果的な潜在的療法を特定することができる。例として、限定はされないが、癌を有する患者に由来する血液の試料が刺激され、攻撃的(例えば、キラー)機能の1つ又は複数のマーカーが増加する場合、これは、免疫療法に基づく癌治療が、この対象体に効果的であり得ることを初期に示唆する。この初期示唆の強度は、他の分類に由来するマーカーの発現レベルに基づいて増大する場合がある。例えば、1つ又は複数の攻撃的マーカーの誘導が、安定的な(例えば、ほとんど又は全く変化しない)サプレッサー機能を伴う場合、免疫系の攻撃的武器の効力を制限することになる防御的機能の増加を供なわずに攻撃的機能が増加することを考慮すると、これは、免疫療法に基づく癌治療が効果的である可能性が高いだろうということを更に示唆する。言い換えれば、発現レベルにより表されるような、攻撃的及び防御的免疫系間の機能の差が増加することは、攻撃的活性の増加を利用する治療が有効であるだろうということを示す。その一方で、例えば、患者の全血の刺激が、攻撃的マーカーの増加並びに防御的マーカーの増加をもたらす場合(例えば、増加にも関わらず、系間の機能に正味の変化がない)、これらの結果は、この対象体には、免疫に基づかない治療がより効果的であり得ることを示唆するだろう。これは、攻撃系及び防御系間の機能に正味の変化が欠如していることにより、両系の機能がアップレギュレートされており、攻撃系が、免疫の基づく治療を特に効果的にするほど優勢ではない可能性が高いことが示唆されるからである。そのような状況では、放射線、外科手術、又は化学療法等の療法が、より効果的であり得る。幾つかの実施形態では、他の機能別分類のマーカーの発現レベルからの追加的情報が、特定のタイプの療法の潜在的効力と関連する他のデータを支持又は否定する場合がある。例えば、攻撃的マーカー発現を増加させ、防御的マーカー発現をほとんど又は全く変化させずに、リクルーターマーカー発現の増加をもたらす癌患者の全血の刺激は、免疫に基づ
く抗癌療法の潜在的効力を更に支持する。これは、リクルーター活性の増加が、攻撃的免疫系の細胞のリクルートを、例えばより迅速に、より多くの数で、及び/又はより長期間にわたって可能にすることにより、攻撃的機能の増加を更に増強する可能性が高いからである。幾つかの実施形態では、機能別分類における発現変化を評価及び使用して、最適な療法を決定し、他の実施形態では、分類内からの個々のマーカーを使用して、潜在的に最適な療法を決定する。
【0037】
目的マーカーの発現を評価するための方法は、多数利用可能である。例えば、フローサイトメトリー分析は、適切なマーカータンパク質を染色することにより、NK細胞、細胞傷害性T細胞、T−reg、及びMDSCの特定を可能にすることができる。しかしながら、そのようなアッセイ系では、各細胞の機能を分析することはできない。従って、幾つかの実施形態には、患者の全体的な免疫応答を特徴付けるための診断検査として、攻撃及び防御関連免疫応答mRNAのex vivo誘導及び測定が伴う。
【0038】
更に、免疫系活性及び/又は活性のマーカーの発現の決定することに関する多くの先行実験は、単離された白血球調製物で行われている。そのような単離された集団は、全血中に様々なリンパ球があることにより、小サブセットのリンパ球の特定のmRNA誘導の検出が妨げられる場合があるため、好ましいことが多い。更に、複数のタイプのリンパ球間の多数の複雑な生化学的相互作用のため、全血調製物を使用すると、誘導及び測定反応が阻害又は修飾される可能性がある。更に、幾つかの実施形態で使用されるIL−2及びザイモサン等の刺激剤は、血漿タンパク質又は血漿因子と相互作用し、それにより誘導活性の減少又は低減を示す場合がある。しかしながら、本明細書に記載の幾つかの実施形態で示されているように使用した場合、全血は、意外にも、攻撃的及び防御的免疫マーカーの両方の特徴付け、及び免疫調節効力に関する薬物のスクリーニングを可能にする、再現性がよく正確で生理学的に関連する結果をもたらす。
【0039】
幾つかの実施形態では、全血は、哺乳動物、好ましくはヒトから収集される。幾つかの好ましい実施形態では、収集した全血は、収集時にヘパリン処理される。幾つかの実施形態では、収集した全血は、刺激プロトコール(下述)するまで、4℃で保存される。好ましい実施形態では、全血が使用されるが、他の実施形態では、血漿から分離された血液細胞、並びに単離された白血球調製物を使用することができる。
【0040】
本方法の幾つかの好ましい実施形態では、血液は、少体積(およそ40〜100マイクロリットル(μL)に等分され、それらの各々は、溶媒で運ばれる刺激剤、又は対照作用剤のいずれかで処理される(つまり、誘導又は刺激される)。幾つかの実施形態では、対照作用剤は、血液試料中でほとんど又は全く応答を誘導しない。ある実施形態では、対照作用剤は、刺激剤を運ぶために使用される溶媒と同じ溶媒である。ある実施形態では、対照作用剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、他の実施形態では、対照作用剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。幾つかの実施形態では、組換えIL−2(rIL−2)が、攻撃的及び防御的免疫マーカーの両方の刺激剤として使用される。IL−2は、攻撃的免疫応答を増大させるための作用剤として臨床的に使用されることが多い。しかしながら、この臨床的努力は、IL−2が同時に防御的免疫系もアップレギュレートすることができるため、幾つかの場合では失敗する。従って、免疫系の両主要部分のより完全な分析を発展させるためには、ある実施形態では、IL−2は、好ましい刺激剤である。他の実施形態では、ザイモサン、トール様受容体2(TLR−2)のリガンドが、攻撃的及び防御的マーカーの両方の刺激剤として使用される。幾つかの実施形態では、他の公知の免疫刺激剤が使用される。更に他の実施形態では、特定の攻撃的及び/又は防御的免疫マーカーを刺激することが知られている作用剤が使用される。
【0041】
幾つかの実施形態では、刺激剤は、1つ又は複数の攻撃的又は防御的免疫マーカーの発
現を誘導し、誘導は、上記マーカーをコードするmRNAの量により測定される。攻撃的マーカーには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:CD16(NK細胞の表面マーカー);グランザイムB(速効性アポトーシスの誘導因子);パーフォリン(細胞を溶解するように機能する細胞溶解性タンパク質);TNFSF1(リンホトキシン、標的細胞に対する貪食細胞結合を増強するように機能する);TNFSF2(TNF−アルファ;遅効性アポトーシスの誘導因子);TNFSF5(CD40リガンド、抗原提示細胞及びマクロファージを活性化するように作用する);TNFSF6(Fasリガンド、アポトーシスの誘導因子);TNFSF14(LIGHT;T細胞増殖及び腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する);TNFSF15(アポトーシスの誘導因子)。防御的免疫マーカーには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:IL10(Th1のダウンレギュレーション因子であるサイトカイン);TGF−ベータ(リンパ球活性化を阻止する);CD25(T−regの表面マーカー);FoxP3(T−regマーカー);CTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原);GARP(反復優位型糖タンパク質A(glycoprotein A repetitions predominant));IL17(T細胞活性化の推定上の負の制御因子);ARG(アルギナーゼ、MDSCのマーカー);及びPD−1(プログラム死1(programmed death 1)、T細胞応答の負の制御因子)。
【0042】
本方法の幾つかの実施形態では、攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導は、血液試料の少分割量を、対照作用剤と三重重複で又は刺激剤と三重重複でのいずれかで混合することにより達成される。その後、攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導が生じるのに十分な期間、混合物を37℃でインキュベートする。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は、およそ4時間である。ある実施形態では、インキュベーション時間は、4時間を超えていてもよい。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は、およそ24時間である。ある実施形態では、インキュベーション時間は、4時間未満であってもよい。適切なインキュベーション期間の後、血液試料は全て、詳しく分析するまで−80℃で保存される。
【0043】
幾つかの実施形態では、各試料に由来する以前に刺激された小体積の血液を処理して、血液中の1つ又は複数の攻撃的又は防御的免疫マーカーをコードするmRNAのレベルの測定を可能にする。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の攻撃的又は防御的免疫マーカーをコードするmRNAのレベルは、刺激剤に応答して著しく変化するだろう。これらmRNAレベルを決定するために、赤血球及び白血球以外の血液成分は、血液試料から除去される。好ましい実施形態では、白血球は、mRNAを単離及び増幅するためのデバイスを使用して単離される。このデバイスの実施形態は、米国特許出願第10/796,298号、第11/525,515号、第11/376,018号、第11/803,593号、第11/803,594号、及び第11/803,663号により詳細に記載されており、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
手短に述べると、デバイスについてのある実施形態は、複数の試料送達ウェルを含有する多ウェルプレート、ウェルの真下にある白血球捕捉フィルター、及びフィルターの真下にある、固定されたオリゴ(dT)を含有するmRNA捕捉帯を備える。ある実施形態では、デバイスは、真空圧力が加えられると、血液が、試料送達ウェルから白血球捕捉フィルターを通って吸引され、それにより白血球を捕捉して、非白血球血液成分がフィルターの洗浄により除去されることを可能にするように、ろ過プレートを受容してプレートと箱との密閉を作り出すのに適した真空箱を含有する。他の実施形態では、遠心分離又は陽圧等の、血液試料を試料ウェルから及び白血球捕捉フィルターを通して吸引する他の手段が使用される。デバイスの好ましい実施形態では、白血球は、一緒になって層をなす複数のフィルター膜で捕捉される。幾つかの実施形態では、その後、捕捉された白血球を、溶解緩衝液で溶解し、それにより、mRNAが、捕捉された白血球から放出される。その後、
mRNAは、オリゴ(dT)が固定されたmRNA捕捉帯にハイブリダイズする。幾つかの実施形態で使用することができる溶解緩衝液の組成物に関する更なる詳細は、米国特許出願第11/376,018号に見出すことができ、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態では、オリゴ(dT)に固定されたmRNAからcDNAが合成される。好ましい実施形態では、その後、cDNAは、感染関連マーカーを増幅するために特異的に設計されたプライマーを用いたリアルタイムPCRを使用して増幅される。そのような実施形態で使用されるプライマーは、表1に示されている。幾つかの実施形態で使用されるPCR反応に関する更なる詳細は、米国特許出願第11/376,018号にも見出すことができる。
【0045】
【表1】

【0046】
PCR反応の完了後、1つ又は複数の攻撃的又は防御的免疫マーカーのmRNA(検出されたPCR増幅cDNAの量により表される)が定量化される。ある実施形態では、定量化は、攻撃的又は防御的免疫マーカーをコードするmRNAの量を基準値と比較することにより計算される。他の実施形態では、基準値は、刺激剤により誘導されない遺伝子、例えばハウスキーピング遺伝子の発現レベルである。あるそのような実施形態では、ベータアクチンを基準値として使用する。当技術分野で周知の多数の他のハウスキーピング遺伝子を基準値として使用することもできる。他の実施形態では、ハウスキーピング遺伝子を修正係数として使用し、従って最終的な比較は、非誘導(対照)試料に由来する同じマーカーと比較した、攻撃的又は防御的免疫マーカーの誘導された発現レベルである。更に他の実施形態では、基準値はゼロであり、従って攻撃的又は防御的免疫マーカーの定量化は、絶対値により表される。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の攻撃的免疫マーカーの発現を、1つ又は複数の防御的免疫マーカーと比較した比率が計算される。
【0047】
他の幾つかの実施形態では、攻撃的又は防御的免疫マーカー発現は、薬物(推定上の抗癌薬又は免疫抑制薬のいずれか)の存在下で、刺激剤の存在下及び非存在下の両方で測定される。そのような実施形態では、発現プロファイルを使用して、効果的な抗癌薬又は効果的な免疫抑制薬としての薬物化合物の効力を予測することができる。幾つかの実施形態では、薬物化合物は、攻撃的免疫マーカーの発現を誘導するが、防御的マーカーの発現は誘導しない可能性があり、その場合は、全体として攻撃的免疫系が促進され、従ってその薬物化合物は、推定上の抗癌治療薬となるだろう。同様に、他の実施形態では、薬物は、1つ又は複数の防御的免疫マーカーを阻害する場合があり、その場合、全体として攻撃的免疫系が促進され、従ってその薬物化合物は、推定上の抗癌治療薬となるだろう。幾つかのそのような実施形態では、防御的免疫マーカーを阻止し、従って防御的免疫成分を低減する薬物は、攻撃的免疫系を刺激することが知られている治療剤(IL−2等)と共に同時投与し、それにより、攻撃的免疫応答の増強及び腫瘍細胞消失可能性の増加を提供することができる。
【0048】
対照的に、幾つかの実施形態では、薬物化合物は、防御的免疫マーカーの発現を誘導するが、攻撃的マーカーの発現を誘導しない場合があり、その場合は、全体として防御的免疫系が促進され、従って、その薬物化合物は、推定上の免疫抑制剤となるだろう。同様に、他の実施形態では、薬物は、1つ又は複数の攻撃的免疫マーカーを阻害する場合あり、その場合、全体として防御的免疫系が促進され、従ってその薬物化合物は、推定上の免疫抑制剤となるだろう。
【0049】
更に他の実施形態では、薬物化合物は、攻撃的又は防御的マーカーのいずれも誘導しなくてもよく、又は両方を誘導してもよい。そのような実施形態では、更なる用量反応試験を実施して、特定の用量又は暴露時間により、薬物が、推定上の抗癌薬又は推定上の免疫抑制剤として分類されるかどうかを決定する。
【実施例】
【0050】
特定の実施形態が、以下の例を参照して記述されているが、それらは、限定的であることを意図しておらず、むしろ例示的であるとみなされるべきである。
【0051】
実施例1− 全血試料中の攻撃的及び防御的免疫マーカーの特徴付け
全血試料を健康なヒト成人から収集した。血液試料を、収集して誘導経時的試験用に幾つかの個々のチューブに入れる際に、ヘパリン処理した。その後、各チューブに由来する18個の等体積分割量を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、100ng/mLのrIL−2、又はフィトヘマグルチニン(PHA)のいずれかで刺激した。分割量を、37℃で0、1、2、4、8、又は20時間インキュベートした。インキュベーション後、試料は、分析するまで−80℃で保存した。各試料を、三重重複で刺激及び分析した。ベータアクチン、IL−2、a型IL−2受容体(CD25)、及びb型IL−2受容体(CD122)をコードするmRNAを、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Mitsuhashi Mら、Clin Chem 52巻:634〜642頁(2006年)に記載の方法により測定した。
【0052】
手短に言えば、96ウェルろ過プレートを白血球除去膜(Leukosorb;Pall社製)を用いて構築し、オリゴ(dT)固定化収集プレートの上に設置した。150μLの5mmol/L Tris(pH7.4)を適用して、フィルター膜を湿らせた。120gで1分間4℃で遠心分離して、Tris溶液を膜から除去した後、50μLの刺激された全血試料を、各ウェルに適用し、直ちに120gで2分間4℃で遠心分離した。その後ウェルを、300μLのリン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した。2000gで5分間4℃で遠心分離して、生理食塩水を除去した後、10mL/L 2−メルカプトエタノー
ル(Bio−Rad社製)、0.5g/L プロテイナーゼK(Pierce社製)、0.1g/L サケ精子DNA(5 Prime Eppendorf/Brinkman社製)、0.1g/L大腸菌tRNA(Sigma社製)、各5nmol/Lの特異的逆方向プライマー、及び1010分子/Lの合成RNA34(外部対照として)で補完された、60μLの溶解緩衝液原液[5g/L N−ラウロイルザルコシン、4×標準クエン酸生理食塩水、10mmol/L Tris−HCl(pH7.4)、1mmol/L EDTA、1mL/L IGEPAL CA−630(NP−40の代替品)、1.79mol/L チオシアン酸グアニジン(全てSigma社製)]をろ過プレートの各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃で10分間インキュベートし、オリゴ(dT)固定化収集マイクロプレート(GenePlate;RNAture社製)の上に設置し、2000gで5分間4℃で遠心分離した。4℃で一晩保存した後、マイクロプレートを、100μLの単純溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液[0.5mol/L NaCl、10mmol/L Tris(pH7.4)、1mmol/L EDTA]で4℃にて3回洗浄した。
【0053】
1×逆転写緩衝液[50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH8.3)、5.5mM MgCl2、1nL/μL Tween 20]、各1.25mMのデオキ
シヌクレオシド三リン酸、4ユニットのrRNasin、及び80UのMMLV逆転写酵素(Promega社製;プライマーなし)を含有する30μLの緩衝液を添加し、37℃で2時間インキュベーションすることにより、cDNAを各ウェルにて直接合成した。各30μL反応物から、4μLのcDNAを、384ウェルPCRプレートに直接移し、5μLのTaqManユニバーサルマスター混合物(Applied Biosystems社製)、及び1μLの各5μΜ感染関連マーカー又はベータアクチン用順方向及び逆方向プライマー(表1を参照)を添加した。使用したプライマー配列は、上記の表1に示されている。また、ACTB(β−アクチン)用のプライマー配列は、以前に発表されており(Mitsuhashi Mら、Pharm Res.25巻:1116〜1124頁、2008年)、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。PCRは、PRISM7900HT(Applied Biosystems社製)を用いて、95℃で10分間を1サイクル、その後95℃で30秒間、55℃で30秒間、及び60℃で1分間を45サイクルさせて実施した。各遺伝子を別々のウェルで増幅した。サイクル閾値(Ct)、すなわち、ある量のPCR産物(蛍光に基づく)が生成されたサイクルを、分析ソフトウェア(SDS;Applied Biosystems社)を用いて決定した。各mRNAのCtを、ACTBのCtで減算してΔCtを計算し、%ACTBを、2-ΔCt×100により計算した。
【0054】
図1Aに示されているように、全血の刺激は、使用した刺激剤に関わらず、ベータアクチン発現を誘導しない。IL−2は自己誘導性ではないが、PHA、炎症及び免疫応答の既知刺激因子は、IL−2の発現をロバストに増加させたため、図1Bは、刺激アッセイの陽性対照としての役目を果たす。図1Cは、防御的免疫マーカーCD25の誘導が、rIL−2又はPHA(IL−2の誘導因子)のいずれかによる刺激後に生じることを実証している。これは、IL−2刺激が、免疫系の攻撃的及び防御的態様の両方に対して示すカスケード効果も実証している。
【0055】
全血試料の追加分割量を、用量反応試験に使用した。7つの分割量を、100ng/mLのrIL−2で4時間刺激した。インキュベーション後、試料を、分析するまで−80℃で保存した。各試料を三重重複で刺激して分析した。ベータアクチン、IL−2、a型IL−2受容体(CD25)、b型IL−2受容体イントロン配列(CD122)、b型IL−2受容体エクソン配列(CD122)、グランザイムB、TNF−アルファ、及びインターフェロン−ガンマをコードするmRNAを、上述の方法に従って測定した。
【0056】
図2に示されているように、攻撃的及び防御的マーカーは、所与の濃度の刺激剤に対して応答が異なる場合がある。図1に示されている攻撃的マーカーの誘導に対する効果及び時間的経過に基づき、一群の刺激実験用に選択した条件は、100ng/mLのrIL−2による4時間の刺激だった。他の実施形態では、より高いか又はより低い濃度の刺激剤を使用してもよいことが理解されるだろう。同様に、より長いか又はより短い刺激時間、例えば、1〜2時間、2〜4時間、4〜6時間、6〜8時間、8〜10時間、10〜12時間、12〜18時間、18〜24時間、及びそれらの重複範囲を使用してもよい。
【0057】
rIL−2又はザイモサンによる全血の刺激に応答した、一群の攻撃的又は防御的マーカーの発現の誘導を試験した。rIL−2を100ng/mlで使用し、ザイモサンを1.5mg/mLで使用して、基本的に上述のように試料を調製して刺激し、刺激は、37℃で4時間であった。
【0058】
表2に示されているように、rIL−2による刺激は、この群の試験した攻撃的マーカー全ての増加を、統計的に有意に(P<0.05)誘導した。TNFα、CD16、及びグランザイムBは、対照試料よりおよそ4〜8倍多く誘導され、IFNγは、対照試料より260倍多く誘導された。またrIL−2は、幾つかの防御的マーカー、即ちFoxP3、CD25、IL17の増加を統計的に有意に誘導した。ザイモサンは、アルギナーゼの増加を統計的に有意に誘導した。これらの結果は、本明細書で開示されている本発明のある実施形態の方法が、意外にも、単離された白血球調製物が必要であるという当技術分野の提案及び定説とは対照的に、免疫機能の攻撃的及び防御的マーカーの両方の発現増加の検出を可能にすることを実証している。これらのデータは、幾つかの実施形態で使用した刺激条件が、アッセイの検出閾値(バックグラウンドノイズ)を十分に超えて種々の攻撃的及び防御的マーカーの発現を誘導し、個体の攻撃的及び防御的免疫応答を特徴付けるための、迅速で単純な信頼性の高い方法を提供することを示す。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例2− 薬物スクリーニング法としての攻撃的及び防御的免疫マーカーの誘導
本発明の幾つかの実施形態は、攻撃的又は防御的免疫マーカーの発現を誘導する化合物の能力に基づき、薬物化合物候補をスクリーニングするのに使用される。幾つかの実施形態では、そのような薬物スクリーニングアッセイは、抗癌臨床状況において、IL−2と共に同時投与することができる化合物を特定する効率を増加させるだろう。そのような化合物は、理想的には防御的免疫マーカーの発現増加を阻止する。従って、IL−2刺激は、推定上の癌細胞に対する攻撃的免疫応答を誘導し、候補化合物は、IL−2誘導性の負のフィードバック防御免疫応答を阻止し、それにより、攻撃的応答の自己誘導性ダウンレギュレーションを制限するだろう。このように、攻撃的免疫応答は、防御的免疫応答の欠如(又は低減)により効果的に強化される。
【0061】
同様に、幾つかの実施形態は、潜在的な免疫抑制化合物についてスクリーニングするのに使用される。潜在的な有効化合物は、攻撃的免疫マーカーの誘導を阻害し、防御的免疫マーカーに効果を及ぼさず(又は増加させず)、それにより、攻撃的システムの活性よりも防御的免疫系の活性を促進する化合物である。そのような応答は、内因性免疫応答の抑制を可能にし、潜在的に、臓器移植患者又は自己免疫疾患に苦しむ患者に利益を提供するだろう。
【0062】
ある化合物は、攻撃的又は防御的免疫機能を抑制(又は刺激)する効力を示す可能性が高い場合があるが、潜在的な効力は、試験した単一用量で示すことはできないことが認識されるべきである。従って、幾つかの実施形態では、用量反応試験も実施して、第1の用量で限定的な効力を有する潜在的な化合物が、第1の用量より高くともよく又は低くてもよい異なる用量で、効力(攻撃的又は防御的刺激因子としての)を増強するかどうか決定する。
【0063】
潜在的な化合物をスクリーニングするために、ヘパリン処理した全血を、種々の潜在的免疫阻害化合物(終濃度は全て10mM)又は対照溶媒(DMSO)と共に、各処理につき単一のチューブ中で1時間プレインキュベートし、その後PBS又はrIL−2(終濃度は100ng/ml)を用いて、更に4時間三重重複で刺激した。その後mRNAを上述のように定量化した。試験した潜在的な免疫阻害剤化合物は、表3に示されている。
【0064】
【表3】

【0065】
ベータアクチン発現は、発現アッセイの対照としての役目を果たした。特徴付けられた攻撃的免疫マーカーには、腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)1(リンホトキシン)、2(TNFα)、5(CD40L)、6(FasL)、8(CD30L)、9(CD137L)、14(LIGHT)、及び15(TL1A)が含まれていた。特徴付けられたケモカインには、CCL2、CCL3、CCL4、CCL8、CCL11、CCL20、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10が含まれていた。特徴付けられたインターロイキンには、IL6、IL8、IL10、IL17、及びIL23が含まれていた。特徴付けられた免疫エフェクターには、GM−CSF、INFγ、CD16、グランザイムB、CD122、及びTGFB−1が含まれていた。特徴付けられた防御的免疫機能のマーカーには、FoxP3、CTLA4、CD25、及びGARP−1が含まれていた。他の攻撃的又は防御的免疫マーカー、並びに他のケモカイン、インターロイキン、又はエフェクター(他の免疫関連マーカーの中でも)は、ある実施形態で試験することができる。
【0066】
rIl−2刺激後の攻撃的及び防御的免疫マーカーのmRNA発現データは、表4に示されている。網掛け部分は、増加倍率が2を超えており、並びに統計的p値が0.05未満であることを表す。選択された免疫機能の攻撃的及び防御的マーカーの発現プロファイル、及びPBS(白抜き円)又は100ng/mLのrIL−2(黒抜き円)による刺激に対するそれらのmRNA発現応答は、図3A〜3Jに示されている。全血試料を前処理するために使用された種々の阻害剤化合物は、x軸に列挙されている。このデータから明らかなように、ある攻撃的又は防御的免疫マーカーが阻害剤の存在下で誘導されることは、その化合物が、攻撃的又は防御的免疫のいずれかを促進する可能性があることを示唆する。例えば、図3Aに示されているように、血液試料をPBSで刺激し、TNFSF−1
の誘導を測定することでは、著しい発現変化(白抜き円)はもたらされなかった。しかしながら、刺激因子としてのrIL−2の存在下では、ヤヌスキナーゼ(Jak)の阻害剤で処理した試料を除いて、ほとんどの血液試料が、TNFSF1 mRNA(攻撃的免疫マーカー)の誘導を示す。この試料は、rIL−2に応答したTNFSF1の誘導を示さなかった。従って、この化合物は、攻撃的免疫応答を阻止又は低減する可能性を有し、免疫抑制促進化合物として機能する可能性がある。しかしながら、防御的免疫応答の2つのマーカー、CD25又はFoxP3(それぞれ、図3I及び3J)に対する同じ化合物の効果を評価すると、データは、rIL−2がこれら防御的マーカーの誘導を阻止することを示す。従って、この一組の実験からは、この特定のJak阻害剤が、攻撃的又は防御的免疫応答の促進によく適するかどうかは不明確である。この化合物の効力を解明するには、更なる用量反応試験及び/又は追加的な免疫マーカーを用いた試験が必要である。
【0067】
【表4】

【0068】
図4A〜4Jは、種々の阻害剤化合物の存在下又は非存在下でPBS又はrIL−2刺激に応答したIFNγ(図4A〜4B)、TNFSF1(図4C〜4D)、CD16(図
4E〜4F)、CD25(図4G〜4H)、又はFoxP3(図4I〜4J)の誘導を測定した追加的な実験を示す。これらのデータは、攻撃的マーカーIFNγ及びTNFSF−1の誘導の欠如、及びFoxP3、防御関連マーカーの発現誘導により示されるように、Jak1が、攻撃的免疫マーカー(つまり、防御促進性)の特異的阻害剤であることを示す。化合物E084も、攻撃的マーカーIFNγ及びTNFSF−1の特異的阻害を実証した。しかしながら、E084は、CD25及びFoxP3を両方とも誘導し、E084が、防御的免疫応答のより強力な促進因子であり得ることを示唆した。また、本明細書に記載の方法の実施形態は、単一アッセイで、一群の推定上の誘導体化合物と比較したデータを同時に生成することができるという点で、種々の誘導体又は修飾化合物の特徴付けによく適する。更に、上述のデータの明確に異なる特徴に基づき、本明細書に記載の方法の実施形態は、臨床状況で使用される防御特異的(つまり、攻撃促進性)阻害剤化合物の検出に有用である。従って、このアッセイプラットフォームは、攻撃的及び防御的免疫機能の共通の選択的阻害剤の分析/スクリーニングに有用である。
【0069】
実施例3− テーラーメイド療法を特定するための、攻撃的及び防御的免疫マーカーmRNA誘導の使用
末梢血中で循環する成熟白血球は、一般的に定常状態にあり、それらは、炎症、新生物、異物(微生物、移植組織及び装置、薬物、並びにワクチン)の局所病変に移動すると、特異的な様式で完全に活性化される。活性化の特異性は、他の要因の中でも、リクルートされた白血球のタイプ及び局所的刺激因子のタイプに依存する。in vivo白血球応答をin vitro系でシミュレートするために、この実施例では、未処理の全血を、種々の特異的で一般的な刺激因子に暴露し、白血球応答の多様性を定量化した。種々の白血球応答を、特定のタイプの免疫応答(例えば、体液性免疫、細胞性免疫等)とのそれらの関連性に基づき分類した。
【0070】
ほとんどのin vitroアッセイでは、白血球を単離し、特定の刺激と共に又は刺激なしで、ある期間(例えば、数日から数週間)培養して、白血球の機能的変化(例えば、タンパク質合成及び分泌、アポトーシス、細胞増殖、表面マーカー変化等)を特定する。しかしながら、そのようなアッセイは複雑であり、費用がかかり、時間がかかるため、日常的な診断検査としての適用可能性は著しく制限を受ける。細胞単離及び培養条件に伴う技術的な困難を克服することを試みた幾つかのプロトコール、例えば、全血を使用して特定の刺激と共に短期間インキュベートとし(典型的には一晩)、その後アデノシン−5’−三リン酸(ATP)レベルを定量化するか、又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により種々のサイトカインのレベルを測定すること等が開発された。しかしながら、幅広く多様な白血球機能はATP依存性でないため、ATPレベルを知る有用性は限定されている。更に、典型的なELISAの検出限界は、ピコモルからフェムトモル(1011〜1015個の分子)であり、従って、そのようなプロトコールの感度には制限がある。
【0071】
対照的に、本明細書で開示された幾つかの実施形態による方法では、白血球機能関連mRNAのex vivo誘導が測定される。ポリメラーゼ連鎖反応は、単一分子検出までの感度が可能であり、mRNA誘導は、タンパク質合成、及び対応する生物学的変化(ELISAにより測定されることになるような)より遥かに早期に起るため、mRNAレベルの測定は有利である。本明細書で考察されているように、全血を使用することにより、in vivoの複雑な細胞間コミュニケーション、並びに白血球と血漿因子及びタンパク質との相互作用が維持される。全血のmRNA分析プロトコールは存在しているが、そのような方法は,血液採取時の遺伝子発現のある時点での状況を提供するに過ぎない。対照的に、本明細書で開示された実施形態では、適切な刺激後のmRNAレベルの変動が分析され、それにより、刺激に対する白血球応答と関連する動的な一連のデータ要素が提供される。
【0072】
PCRは、標的遺伝子の単一コピーを検出するのに十分なほど感度が高いが、全血の三重重複分割量中のばらつきの低減に基づき、本明細書で開示された幾つかの実施形態は、特に感度が高い。標準的アッセイでは、ばらつきは、白血球単離、RNA精製、cDNA合成からPCRに至るまでの任意のステップで引き起こされ得る。PCRは増幅に基づく性質を持つため、PCR前に導入された微細なばらつきでさえ指数関数的に増加されることになる。更に、単一血液試料からでさえ、刺激因子の数、用量反応性、時間的経過、刺激因子の組合せ、二重重複、又は三重重複等に基づいて多数の分割量が生成される。当技術分野で公知の標準的プロトコールのそのような制限に基づき、本出願人は、ハイスループットアッセイプラットフォームを開発し、それは、本明細書で開示された幾つかの実施形態で使用されている。アッセイプラットフォームに関する更なる情報は、米国特許出願第10/796,298号、第11/525,515号、第11/376,018号、第11/803,593号、第11/803,594号、及び第11/803,663号に見出すことができ、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
材料及び方法
材料
抗T細胞受容体α/β鎖(TCR)モノクローナル抗体(IgG1κ)及び対照マウスIgG1κは、BioLegend社(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)から得た。逆転写酵素、dNTP、及びRNasinは、Invitrogen社(カールズバッド、カリフォルニア州、米国)から購入した。他の化学薬品は全て、Sigma−Aldrich社(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入した。免疫複合体(熱凝集IgG、HAG)は、以前に記述されているように、ヒトIgGを63℃で15分間加熱することにより調製した(Ostreikoら、1987年)。8ウェルストリップマイクロチューブにて、各1.2μLのフィトヘマグルチニン−L(2mg/ml)、HAG(10mg/ml)、リポ多糖(LPS)(0.5mg/ml)、ザイモサンA(75mg/ml)、組換えインターロイキン2(rIL2)(5μg/ml)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、抗TCR抗体(50μg/ml)、及び対照IgG(50μg/ml)を、8個のウェルにそれぞれ添加し、使用まで−80℃で保存した。
【0074】
血液処理
ヘパリン処理した全血試料は、施設内審査委員会の承認後、Apex Research Institute(タスティン、カリフォルニア州、米国)から得た。血液収集後の条件を等しくするために、血液試料を、4℃で一晩保存した。翌朝、血液を貯溜容器にデカントし、8ウェルマルチチャネルピペットを使用して、各60μLの血液を、上述の対照作用剤又は刺激因子を含有する3つのストリップに分注した(図5A)。この試験に必要な血液量は、1.44ml(60μL/ウェル×8つのウェル×3つのストリップ(三重重複))だった。蓋を閉じた後、ストリップを、37℃で4時間インキュベートし、その後−80℃で冷凍保存した。幾つかの実施形態では、より大きな体積の又はより小さな体積の血液を使用してもよいことが理解されるだろう(例えば、多数の刺激因子又は白血球活性化関連遺伝子を試験するために増加させてもよい)。2つの分類の患者、この例では、正常な健康(対照)対象体(表5のデータ)及び癌を有する患者(表6のデータ)で試験した。
【0075】
標的mRNA
標的mRNAのmRNA配列は、GenBankから検索した。PCRプライマーは、Primer Express(Applied Biosystems(ABI)社製、フォスターシティ、カリフォルニア州、米国)により、コード領域内に設計した(表1を参照)。オリゴヌクレオチドは、IDT社(コーラルビル、アイオワ州、米国)が合成した。標的mRNA(合計32個)は、β−アクチン(ACTB)、β2−ミクログロブリン(B2M)、グランザイムB(GZB)、パーフォリン1(PRF1)、腫瘍壊死因
子スーパーファミリー(TNFSF)−1、2、5、14、及び15、CCLケモカイン−2、4、8、及び20、CXCLケモカイン−3及び10、インターロイキン(IL)−2、4、6、8、10、及び17A、インターフェロン−γ(IFNG)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、CD11a、16、及び25、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGFB1)、フォークヘッドボックスP3(FOXP3)、免疫グロブリン重鎖遺伝子座(IGH@)、アルギナーゼ(ARG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、並びにプロオピオメラノコルチン(POMC)だった。
【0076】
mRNA分析
50マイクロリットルの刺激及び冷凍された全血を解凍し、96ウェル特注ろ過プレートに適用した(図5B)。フィルター膜で遠心分離することにより、白血球を単離した。幾つかの実施形態では、フィルター膜で白血球を単離するために、他の技術を使用してもよい(例えば、真空、陽圧、及び重力等)。白血球の単離に関する更なる情報は、米国特許出願第10/796,298号、第11/525,515号、第11/376,018号、第11/803,593号、第11/803,594号、及び第11/803,663号に見出すことができ、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特異的逆方向プライマーの混合液を含有する60μLの溶解緩衝液をろ過プレートに適用し、その結果生じた細胞溶解産物を、ポリ(A)+mRNA精製用のオリゴ(dT)固定化マイクロプレートに移した(図5C)。cDNAを、各ウェルの50μL溶液中で直接合成した:液相では特異的プライマーによるcDNAのプライミング、及び固相ではオリゴ(dT)によるcDNAのプライミング。液相又は固相のcDNAは、iTaqSYBR(Biorad社製、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)を使用して、サーマルサイクラー(それぞれ、PRISM7900、ABI社製、及びiCycler、Biorad社製)で、リアルタイムPCRに使用した。PCR条件は、95℃で10分間、その後65℃で1分間及び95℃で30秒間の50サイクルだった。IL2及びIL4の場合、4μLの未希釈cDNA溶液を、384ウェルPCRプレートにて10μLの最終体積で使用した。(図5D)。FOXP3、ARG、IFNG、GMCSF、及びPOMCの場合、2μLの未希釈cDNA溶液を、5μLの最終体積でPCRに使用した。その後、cDNAを、32μLのDNase/RNaseフリー水を添加することにより1:2に希釈し、各2μLのcDNAを、5μLの最終体積で、残り24個の遺伝子(IL17A以外)のPCRに使用した。残ったcDNAを新しいストリップマイクロチューブに移した後、固相cDNAを直接使用して、30μLのPCR溶液を添加することによりIL17Aを増幅した。融解曲線を常に分析して、PCRシグナルが単一PCR産物に由来したことを確認した。サイクル閾値(Ct)を、分析ソフトウェア(SDS、ABI社製)で決定し、統計的p値は、刺激因子及び対照の各々の3つのCt値を使用したt検定により計算した。薬物処理した三重重複試料のCtから、対照試料の平均Ct値を個々に減算してΔCtを計算し、増加倍率を2^(−ΔCt)として計算した。
【0077】
結果及び考察
この例では、6つの異なる刺激因子を(2つの対照と共に)使用した(表5及び6、x軸)。PHAは、一般的なT細胞集団を刺激するために一般的に使用されるレクチンである。HAGは、IgG Fc受容体(FcγR)陽性白血球を刺激する免疫複合体のモデルである。主な細胞性標的が、CD16+ナチュラルキラー(NK)細胞である抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)とは異なり、HAGによる刺激は、CD16+、CD32+、及びCD64+細胞を標的とする。LPS及びザイモサンは、先天性免疫を分析するためのトール様受容体(TLR)を刺激するために一般的に使用される作用剤である。抗TCR抗体は、CD4+及びCD8+T細胞の両方のT細胞受容体(α/β鎖)の抗原認識分子に結合するため、普遍的なTCR抗原として使用される(Mitsuhashiら、2008年c)。組換えIL−2は、制御性T細胞(Treg)を含むIL2受容体陽性T細胞に結合し、多種多様な免疫反応を誘導する。
【0078】
免疫は、非常に複雑であり、多数の細胞性及び液性因子が互いに相互作用するが、本明細書で開示された幾つかの実施形態のように、有効な個別化された療法を予測するためには、そのような複雑さは、表5及び6に示されている幾つかの機能別分類に単純化することができる。
【0079】
一般的に、白血球が血中から局所病変に移動するためには、白血球は、まず細胞表面にCD11aを発現させ、それが、病変により損傷を受けた内皮細胞上に発現された細胞間接着分子と結合する。表5及び6に示されているように、CD11a発現増加の検出は、ザイモサンによる全血試料の刺激により検出された。CD11aを発現する白血球が、標的細胞又は分子(例えば、病変の細胞又は分子)と遭遇すると、適切なサブセットの白血球が、病変にリクルートされなければならない。様々な走化性CCL及びCXCLケモカインの発現を分析した。CCL2(単球及び好塩基球)、CCL4(顆粒球)、CCL8(マスト細胞、好酸球、好塩基球、単球、T細胞、及びNK細胞)、CCL20(リンパ球)、CXCL3(単球)、CXCL8(=IL8)(好中球)、及びCXCL10(単球、マクロファージ、T細胞、NK細胞、及び樹状細胞)は、それぞれ列挙された細胞タイプの化学誘引物質として知られている。表5及び6に示されているように、各刺激因子は、異なるサブセットのケモカインを誘導したが、それは、個体の走化性及びケモカイン発現プロファイルに基づいて、特定の細胞タイプを利用する(例えば、リクルートする)ための可能な方法を示している。幾つかの実施形態では、個体の走化性及びケモカイン発現プロファイルは、疾患部位で細胞浸潤を発生させる(例えば、適切な免疫細胞を標的部位に送達する)その個体の能力を予測できるようにするデータを提供する。幾つかの実施形態では、そのようなデータは、テーラーメイド治療の効力及び開発の予測に有用である。例えば、癌患者の全血の刺激が、任意の走化性分子又はケモカイン分子の発現を誘導できない場合、その個体は、白血球リクルーター機能が不十分であり得、従って、免疫の基づく治療(例えば、癌免疫療法)の理想的な候補ではないだろう。むしろ、その個体は、より従来的な放射線手法、薬理学的手法、又は外科的手法に対してより良好に応答する可能性が高い。
【0080】
病変部位にリクルートされると、局所的に浸潤した白血球は、標的細胞を死滅させることを目的とした事象のカスケードも誘導する。アポトーシスの誘導を含む、標的細胞を死滅させるための複数の機序が使用されうる。表5及び6に示されているように、種々の刺激因子によるグランザイム及びパーフォリンmRNAの誘導(周知のアポトーシス誘導因子)が特定された。CD16、NK細胞の特異的マーカーの発現増加も特定された。腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー(TNFSF)は、TNFSF受容体陽性の標的細胞に対するアポトーシスの様々な誘導因子を含む。表5及び6に示されているように、各刺激因子は、異なるメンバーのTNFSFを誘導した。従って、幾つかの実施形態では、個体の攻撃的免疫機能に関するデータを使用して、その患者が先天的な抗癌活性を発生させる可能性を特徴付けることができる。また、幾つかの実施形態では、自己免疫疾患の重症度を特徴付けることができる。有利なことには、本明細書で示された方法は、療法を施す前に、患者が特定のタイプの療法に応答する可能性を特徴付けることを可能にする。これは、患者の生存が、できるだけ早期に有効な療法を開始することに依存する状況で、特に有利である。そのため、癌患者が「キラー」分子の発現の誘導をほとんど示さないという事実は、そのような患者が、そのような療法から利益を得る可能性は低いだろうということを示唆し、他の非免疫療法が検討されるべきであることを示唆する。
【0081】
上記で考察されているように、ヒト免疫は、様々な負の制御因子(本明細書では「防御的免疫マーカー」とも呼ばれる)を有しており、それらには、体液性成分(IL10及びTGFB1)、及び細胞性成分(Treg及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC))が含まれる。これら制御因子は、誘導時に攻撃的(例えば、キラー)免疫応答の効力を抑
制又は低減する能力を有する。対照的に、それらの発現の低減は、自己免疫疾患の発生を促進する場合がある。従って、負の制御因子の発現及びリクルーター/キラー分子のバランスは、幾つかの実施形態では、所与のタイプの療法の潜在的効力を更に評価するため使用される。表5に示されているように、IL10 mRNAは、抗TCR抗体及びザイモサンにより誘導され、TGFB1 mRNAは、ザイモサンにより誘導された。FOXP3及びCD25 mRNAを、Treg活性のマーカーとして測定した。刺激因子は、FoxP3を誘導しなかったが、CD25は、HAGを除く全ての刺激因子により誘導された(表5を参照)。アルギナーゼmRNAは、MSDC機能のマーカーとして測定したが、誘導は表5では検出されなかった。
【0082】
表6に示されているように、癌を有する患者は、種々の刺激に応答して、より大きな度合いのサプレッサー誘導を示すと考えられた。ザイモサンは、TGF−ベータ1を除き、分析した全てのサプレッサーを著しく誘導した。同様に、PHAは、分析した5つのサプレッサーマーカーのうち3つを誘導した。従って、幾つかの実施形態では、そのようなデータは、疾患の発端を示唆することができ、例えば、サプレッサーの発現の増強は、キラー(例えば、攻撃的)機能の効力低減に寄与し得、従って悪性腫瘍の発生を促進した可能性がある。同様に、サプレッサー機能の増強は、特にキラー機能の増強がない場合、免疫療法が、そのような個体に有効ではないだろうということを示唆する。
【0083】
主に他のタイプの免疫細胞を活性化及び指図するように機能する種々のサブセットのTヘルパー細胞のマーカーとして、IL2(Th1)、IFNG(Th1)、IL4(Th2)、IL10(Th2)、及びIL17(Th17)mRNAの誘導を特定した(表5及び6)。これらマーカーの誘導は、複数レベルの免疫系が、単なる攻撃的(例えば、キラー)機能細胞の誘導ではなく、同時にアップレギュレートされる能力があることを示唆する。従って、幾つかの実施形態では、上記で考察され、まとめられた種々の機能別分類の各々の分析を使用して、どのタイプの治療法が有効である可能性が高いかを決定する。例えば、ヘルパー又はリクルーターマーカーの誘導の欠如を伴う攻撃的マーカーのアップレギュレーションは、より大きな活性を有しているものの、攻撃的細胞が、十分に良好に標的とされていないか、又は免疫系の他の部分により十分に良好に支援されていない可能性があることを示唆する。そのような場合、免疫に基づく療法は理想的ではない可能性がある。しかしながら、他の実施形態では、単一分類(又は単一のマーカー)の誘導の強度は、関連する治療計画を受けるのに十分値する可能性がある。
【0084】
体液性(例えば、抗体媒介性)免疫応答に非常に重要である、種々の外来性分子の同一性を「学習する」免疫系の能力等の、様々な他の機能が免疫系で実行される。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、白血球細胞増殖因子としての機能であり、GMCSF mRNAは、種々の刺激により健常対象体で適度に誘導された(表5)。同様に、GMCSFは、健常対象体より遥かに大きな程度にであったが、癌患者でアップレギュレートされた(表6)。これらデータは、癌患者が、多数の白血球を製作する能力を有する可能性があることを示唆するが、細胞の総数は、有効な免疫機能を保証しない場合があり、むしろ攻撃的及び防御的機能の最終的なバランスが、重要な決定要因である可能性がある。抗原に対する抗体を製作するように機能し、記憶B細胞へと発達して行くB細胞のマーカーとしての、IgG重鎖(IGH@)のmRNAは、健常患者ではザイモサンにより誘導されたが(表5)、癌患者(表6)では誘導されなかった。癌などの多くの病変は、細胞代謝及び組織増殖の速度が速いため、血液供給の増加を必要とする。VEGF発現は、血管新生のマーカーとして試験し、健常患者及び癌患者の両方でザイモサンにより誘導された。疼痛に関連するPOMC(エンドルフィン)mRNAは、これら対象体では誘導されなかったが、関連実験の他の健常対照対象体では、POMC mRNAがザイモサンにより誘導されることが示されている(データ非表示)。
【0085】
この例で実証されたように、このハイスループット法は、健常個体及び癌を有する個体(表5)の広範囲な白血球機能を特徴付けるのに十分な程度に感度が高かった(表6)。三重重複の全血分割量を刺激因子及び対照溶媒の両方に使用して、各mRNAの各刺激因子に関する統計的結論を導き出すことができた。ACTB及びB2M等の対照遺伝子は、対照個体では誘導されなかったが(例えば、増加倍数>2)、B2Mは、癌性個体で誘導された。しかしながら、B2Mは、主要組織適合遺伝子複合体の成分であるため、発現の変化がザイモサンによる全血の刺激により誘導されるだろうと考えることは不合理ではない。にもかかわらず、対照遺伝子を使用して、他のmRNAのPCR結果を正規化しなかった。実際、本明細書で使用した方法の感度を考慮すると、増加倍数が2倍未満又は0.6倍を超えている場合でさえ、統計的有意差が特定されることが多かった(例えば、表5のrIL2及びPHA誘導性ACTB、PHA誘導性CCL4、ザイモサン誘導性CXCL10、HAG及びザイモサン誘導性FOXP3)。対照的に、幾つかの低コピー数遺伝子(例えば、IL2、IL4、GMCSF、及びPOMC)は、大きなばらつきを示し、場合によっては、増加倍数が10を超えても、有意ではなかった(表5のTCR誘導性GMCSF)。従って、表5及び6では、2を超える増加倍数、かつp<0.05を、陽性結果とみなした(例えば、有意な誘導;暗色背景部分)。種々のマーカーの誘導の度合いは、必ずしも生物学的重要性の度合いと直接結び付くかない場合があり、例えば、低コピー数遺伝子の発現の大きな増加倍数は、豊富な遺伝子の小さな増加倍数と比較して、生物学的な影響はより少ない可能性がある。従って、発現の変化の度合いは、特定の経路の変化の度合いを必ずしも示さない場合があり得るが、これらのデータは、発現のパターンを決定するのに特に有用である。本明細書で開示されているように、幾つかの実施形態では、発現のパターンを使用して、ある分類の白血球機能関連マーカーの発現に基づいて、テーラーメイドの療法又は診断が開発される。rIL2等の一般的な免疫機能刺激因子を含め、本明細書で開示された方法により生成されたデータは、他の疾患タイプの中でも、腫瘍学的疾患及び自己免疫疾患に応用可能である。幾つかの実施形態によると、幾つかの実施形態は、前臨床研究、臨床試験の状況での療法の開発、並びに付随する診断の開発に関して、生成されたデータを使用する。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の免疫機能が、攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられているかを決定する方法であって、
対象体から白血球を含有する第1及び第2の試料を取得すること、
前記第1の試料を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する免疫刺激剤に溶媒中で暴露すること、
前記第2の試料を前記溶媒に暴露すること、
前記刺激剤又は溶媒に暴露した後、前記第1及び第2の試料中の1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより前記第1及び第2の試料中で定量化された前記攻撃的免疫機能関連mRNAの量間の比率として攻撃的免疫機能の誘導を定量化すること、
前記刺激剤又は溶媒に暴露した後、前記第1及び第2の試料中の1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより前記第1及び第2の試料中で定量化された前記防御的免疫機能関連mRNAの量間の比率として防御的免疫機能の誘導を定量化することを含み、
攻撃的又は防御的免疫の著しくより多くの誘導が、前記対象体の免疫機能がそれぞれ攻撃的又は防御的免疫機能に向けられていることを示す方法。
【請求項2】
前記試料が、ヘパリン処理された全血である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記全血が、室温で又は冷却して1日未満保存される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記刺激剤が、組換えインターロイキン−2、フィトヘマグルチニン、抗T細胞受容体抗体、熱凝集IgG、リポ多糖、及びザイモサンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記暴露が、24時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記暴露が、2〜6時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記暴露が、約4時間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAが、免疫リクルーター機能、免疫キラー機能、又は免疫ヘルパー機能を有するものに分類される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAが、免疫リクルーター機能を有し、CCL2、CCL4、CCL8、CCL20、CXCL3、CXCL10、及びインターロイキン8からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAが、免疫キラー機能を有し、グランザイムB、パーフォリン、TNFSF1、TNFSF2、TNFSF5、TNFSF6、TNFSF14、及びTNFSF15からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAが、免疫ヘルパー機能を有し、インターロイキン2、インターロイキン4、インターフェロンガンマ、及びインターロイキン17Aからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAが、攻撃的免疫機能の抑制に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAが、インターロイキン10、トランスフォーミング成長因子ベータ、FoxP3、CD25、アルギナーゼ、CTLA−4、及びPD−1からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象体が癌を有しており、潜在的に有効な抗癌療法を特定するために、前記対象体の免疫機能が、攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられていると決定される、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項15】
前記対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられていると決定されることにより、癌免疫療法治療計画が有効である可能性が高いことが示される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記対象体の免疫機能が防御的免疫機能に向けられていると決定されることにより、免疫に基づく作用機序が関与しない抗癌治療計画が有効である可能性が高いことが示される、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
対象体の免疫機能に基づき抗癌療法治療計画の効力を予測するための方法であって、
請求項1に記載の方法に従って、対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられているかを決定することを含み、
前記対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられていると決定されることにより、抗癌免疫療法治療計画が有効である可能性が高いことが示され、
前記対象体の免疫機能が防御的免疫機能に向けられていると決定されることにより、免疫に基づく作用機序が関与しない抗癌治療計画が有効である可能性が高いことが示される方法。
【請求項18】
対象体の免疫機能が、攻撃的免疫機能に向けられているか又は防御的免疫機能に向けられているかを決定する方法であって、
前記対象体から白血球を含有する第1及び第2の試料を取得すること、
前記第1の試料を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する作用剤に溶媒中で暴露すること、
前記第2の試料を前記溶媒に暴露すること、
前記暴露させた第1及び第2の試料をインキュベートすること、
前記作用剤又は溶媒に暴露した後、前記第1及び第2の試料の各々中の1つ又は複数の防御的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより前記防御的免疫機能関連mRNAの誘導の量を、前記第1及び第2の試料中で定量化された量間の比率として決定すること、
前記作用剤又は溶媒に暴露した後、前記第1及び第2の試料の各々中の1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連mRNAの量を定量化し、それにより前記攻撃的免疫機能関連mRNAの誘導の量を、前記第1及び第2の試料中で定量化された量間の比率として決定すること、
前記攻撃的免疫機能関連mRNAの誘導と前記防御的免疫機能関連mRNAの誘導との比率を計算すること、
前記計算した比率を、対照対象体群に由来する対照比率と比較することを含み、
前記計算した比率が前記対照比率より著しく増加することにより、前記対象体の免疫機能が攻撃的免疫機能に向けられており、前記計算した比率が前記対照比率より著しく減少することにより、前記対象体の免疫機能が防御的免疫機能に向けられていることが示される方法。
【請求項19】
前記攻撃的免疫機能関連mRNAが、細胞傷害性機能のマーカーをコードするmRNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記防御的免疫機能関連mRNAが、骨髄由来サプレッサー細胞のマーカーをコードするmRNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記mRNAが、アルギナーゼをコードする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
攻撃的及び防御的免疫機能の両方の刺激因子と共に投与するための薬物を特定し、前記投与された薬物が、前記攻撃的又は防御的免疫機能のうちの1つを阻害する方法であって、
前記薬物の存在下又は非存在下で(前記刺激因子の存在下であってもよく又は非存在下であってもよい)前記攻撃的マーカーの発現を測定することにより、全血中の1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連マーカーの発現のin vitro誘導を定量化すること、
前記薬物の存在下又は非存在下で(前記刺激因子の存在下であってもよく又は非存在下であってもよい)前記防御的マーカーの発現を測定することにより、全血中の1つ又は複数の防御的免疫機能関連マーカーの発現のin vitro誘導を定量化すること、及び
前記薬物の存在下又は非存在下で、前記攻撃的免疫機能関連マーカーの誘導と前記防御的免疫機能関連マーカーの誘導との差異を決定することを含み、前記薬物が、前記攻撃的及び防御的マーカーに対するその正味効果に基づき、前記刺激因子と共に投与するためのものであると特定される方法。
【請求項23】
前記in vitro誘導が、前記攻撃的免疫機能マーカー及び前記防御的免疫機能マーカーの1つ又は複数を誘導するのに十分な時間、前記全血を前記刺激因子に暴露することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記攻撃的免疫機能関連マーカーが、CD16、グランザイムB、TNF−アルファ、インターフェロンガンマ、及び腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーの1つ又は複数を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記防御的免疫機能関連マーカーが、CD25、FoxP3、CTLA4、GARP、IL17、及びアルギナーゼの1つ又は複数を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記攻撃的及び防御的免疫機能の刺激因子が、インターロイキン2である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記薬物が1つ又は複数の防御的免疫機能関連マーカーの発現を誘導するよりも高い程度に、前記薬物が、1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連マーカーの発現を誘導する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連マーカー及び前記1つ又は複数の防御的免疫機能関連マーカーの前記発現の増加が、対照試料と比べて決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対照試料が、前記薬物を送達するためにも使用される溶媒で刺激される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ又は複数の防御的免疫機能関連マーカーの前記発現が、前記対照試料と統計的に差異がなく、前記1つ又は複数の攻撃的免疫機能関連マーカーの前記発現が、前記対照試料と統計的に差異がある、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記薬物の投与が、前記刺激剤の投与の前である、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記薬物の投与が、前記刺激剤の投与と同時である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
攻撃的及び防御的免疫機能の両方を特徴付ける方法であって、
ヘパリン処理した全血の少なくとも2つの分割量を取得すること、
前記第1の分割量を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する作用剤に暴露すること、
前記第2の分割量を、前記作用剤の溶媒に暴露すること、
これら分割量を24時間未満インキュベートすること;TNFSF、グランザイムB、パーフォリン、CD16、INFγ、又は白血球の細胞傷害性機能を表す他の遺伝子をコードする1つ又は複数のmRNAの量を定量化すること、
FoxP3、CD25、又は制御性T細胞のマーカーを表す他の遺伝子をコードする1つ又は複数のmRNAの量を定量化すること、
前記第1及び第2の分割量の両方での、前記細胞傷害性機能のマーカーの発現と前記制御性T細胞のマーカーの発現との比率を計算すること、及び
これら比率を、対照対象体群に由来する比率と比較することを含む方法。
【請求項34】
ヘパリン処理した全血の2つの追加的な分割量を取得すること、
さらなる前記第1の分割量を、攻撃的及び防御的免疫機能を両方とも刺激する作用剤に暴露すること、
さらなる前記第2の分割量を、前記作用剤の溶媒に暴露すること、
これら分割量を24時間未満インキュベートすること、
アルギナーゼ又は骨髄由来サプレッサー細胞のマーカーを表す他の遺伝子をコードする1つ又は複数のmRNAの量を定量化すること、
さらなる前記第1及び第2の分割量の両方において、前記細胞傷害性機能のマーカーの発現と前記骨髄由来サプレッサー細胞のマーカーの発現との比率を計算すること、及び
これら比率を、対照対象体群に由来する比率と比較すること、をさらに含む、請求項33に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514090(P2013−514090A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544631(P2012−544631)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059552
【国際公開番号】WO2011/084333
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り Journal of Immunological Methods Volume 363,Issue 1 December 2010,Pages 95−100 掲載日 2010年10月5日 掲載アドレス http://www.sciencedirect.com/science/journal/00221759/363/1 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022175910002954
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【出願人】(500294958)ヒタチ ケミカル リサーチ センター インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】