説明

放射性ガスモニタ

【課題】放射線検出器のシンチレータの経時劣化を含めたゲイン変動要因について補正することが可能な信頼性の高い放射線ガスモニタを提供する。
【解決手段】指標パルス用線源5から放射線検出器1に指標パルス用放射線を常時照射し、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにメインアンプ61のゲインを自動制御する放射性ガスモニタにおいて、指標パルス用線源5として高エネルギーβ線を放射するSr−90/Y−90を用い、厚さ0.8〜1.3mmのプラスチックシンチレータ11を用い、さらに厚さ180〜220mg/cmのプラスチックからなる線源窓4を用いることにより、Y−90による指標パルスのスペクトルピークを、システムゲインのダイナミックレンジに収まり、且つ環境γ線のスペクトルに重ならない好適な位置に、鮮明に発現させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉施設、使用済燃料再処理施設、放射性同位元素使用施設、粒子線使用施設等で用いられる、気体状放射性核種を含む試料ガスの放射能濃度を測定するための放射性ガスモニタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性ガスモニタの放射線検出器においては、測定対象の気体状放射性核種を高感度で測定するために、1壊変当たりの放射線の放出割合が高いβ線を測定対象としている。このため、放射線検出器には、β線に対して感度が高く、且つ環境からのγ線に対して感度が低く、さらに放射線入射窓のβ線エネルギーの減衰ができるだけ小さいことが望まれる。また、放射線検出器のセンサとしては、加工性が良く、安価で容易に入手でき、且つ物理的に安定なプラスチックシンチレータが一般的に用いられている。
【0003】
プラスチックシンチレータは、β線が入射すると蛍光を発する。光電子増倍管に入射した光は光電子に変換され、さらに10〜10程度に増幅されて電流パルスとして出力される。光電子増倍管から出力された電流パルスは、プリアンプにより電圧パルスに変換され、測定部に出力される。測定部は入力された電圧パルスを増幅し、所定の波高条件を満たす電圧パルスを計数し、計数率を出力する。
【0004】
先行例である特許文献1では、プラスチックシンチレータにライトガイドを接着し、ライトガイドの光電子増倍管側の面に光を発するライトパルサを埋め込み、ライトパルサからのパルス光量と母体側のシンチレータからの信号パルス光量を変更可能とした放射線検出器が提示されている。この例では、測定対象となるエネルギー範囲に影響しないエネルギー位置に基準となる信号ピークを出力させ、この基準信号を利用してプラスチックシンチレータのドリフト補正を行っている。
【0005】
また、ライトパルサの先行例として、特許文献2では、α線を放射するα線源と、α線源から放射されたα線のエネルギーを吸収して光に変換するシンチレータと、α線源とシンチレータを密閉した容器の光放出窓上に設けられた透過率調整用フィルタを備えた検出器校正用光源が提示されている。なお、ライトパルサ用シンチレータとしては、従来、潮解性がなく物理的に安定で加工性が良く、α線に対する発光効率が高いCaF(Eu)シンチレータが使用され、ライトパルサ用α線源としては、入手し易いAm−241が使用されている。
【特許文献1】特開平6−289144号公報
【特許文献2】特開平8−233944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1及び特許文献2のようなライトパルサを備えた放射性ガスモニタでは、Am−241のα線をCaF(Eu)シンチレータに照射して発生した光を光電子増倍管に入射させ、これにより発現する指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを制御していた。このため、放射線検出器の光電子増倍管、プリアンプ、及び測定部のゲイン変動については補正されるが、プラスチックシンチレータの経時劣化については補正されないという問題があった。また、プラスチックシンチレータとライトパルサ用シンチレータの温度特性の違いについても補正されないため、ライトパルサを用いることなくシステムゲインの安定化を行うことが可能な放射線ガスモニタが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、放射線検出器のシンチレータの経時劣化を含めたゲイン変動要因について補正することが可能な信頼性の高い放射線ガスモニタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放射線ガスモニタは、試料ガスが導入される試料容器と、試料容器の内部空間に接する放射線入射窓から入射した放射線を吸収し光に変換するシンチレータとこのシンチレータの発した光を電子に変換し増幅する光電子倍増管を有する放射線検出器と、試料容器に取り付けられた線源窓を介して放射線検出器に指標パルス用放射線を照射する指標パルス用線源と、試料容器、放射線検出器及び指標パルス用線源を保持し環境放射線から遮蔽するサンプラと、放射線検出器から出力される検出器信号パルスの計数率を測定すると共に、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御する測定部を備え、指標パルス用線源としてSr−90を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、指標パルス用線源としてSr−90を備え、試料容器に取り付けられた線源窓を介して放射線検出器に指標パルス用放射線を照射し、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御するようにしたので、シンチレータから測定部までのゲイン変動要因を補正することができ、信頼性の高い放射線ガスモニタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る放射性ガスモニタの構成を示す概略図である。本実施の形態1に係る放射性ガスモニタは、試料ガスに含まれる気体状放射性核種から放射される主にβ線を測定対象としている(ただしβ線に比べて感度は低いがγ線も測定する)。放射線検出器1は、試料ガスが導入される試料容器2と対向して設けられ、放射線検出器1の放射線入射窓10は試料容器2の内部空間に接し、試料容器2のバウンダリーを構成している。
【0011】
放射線センサであるプラスチックシンチレータ11は、放射線入射窓10から入射した放射線を吸収し光に変換するもので、放射線を検出すると蛍光を発する。プラスチックシンチレータ11に接合されたライトガイド12は、クッション材15により検出器ケース16に固定され、プラスチックシンチレータ11の発した光を光電子増倍管13に伝達する。光電子増倍管13は、プラスチックシンチレータ11の発した光を電子に変換し、増幅して電流パルスを出力し、さらにプリアンプ14は電流パルスを電圧パルスに変換する。また、プリアンプ14には、放射線検出器1の温度特性を補正するためのサーミスタ(図示せず)が取り付けられている。
【0012】
プラスチックシンチレータ11の入射面側である放射線入射窓10には、プラスチックシンチレータ11からの蛍光をライトガイド12側に反射させ、ライトガイド12に集める反射膜18が設けられている。反射膜18は、薄いプラスチックシートに蒸着されたアルミニウム(Al)膜からなる。これらのプラスチックシンチレータ11、ライトガイド12、光電子増倍管13及びプリアンプ14は、検出器ケース16により収納され遮光されると共に、電気的にシールドされている。また、放射線検出器1と試料容器2の間には、試料ガスをシールするためのOリング17が配置されている。
【0013】
放射線検出器1に対向して設けられた試料容器2には、線源窓4が取り付けられ、線源窓4の内部には指標パルス用線源5が収納、保護されている。本実施の形態1では、指標パルス用線源5としてSr−90を用いている。指標パルス用線源5は、線源窓4を介して放射線検出器1に指標パルス用放射線を照射する。さらに、放射線検出器1、試料容器2及び指標パルス用線源5等は鉛を含む材料からなるサンプラ3により保持され、環境放射線から遮蔽されている。
【0014】
次に測定部6について説明する。メインアンプ61は、放射線検出器1のプリアンプ14から出力された電圧パルス(以下、検出器信号パルスと称す)を入力して増幅する。測定ユニット62は、増幅された検出器信号パルスの計数率を測定し、その結果を放射能測定結果として表示する。また、測定ユニット62は、指標パルス用線源5から照射される指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルを測定し、そのピーク位置が一定になるようにメインアンプ61のゲインを自動制御する。なお、本実施の形態1ではメインアンプ61のゲインを自動制御することによりシステムゲインを自動制御しているが、放射線検出器1に供給される高圧電源63を自動制御するようにしてもよい。
【0015】
次に、動作について説明する。試料容器2にはガス導入口2aから試料ガスが導入され、ガス排出口2bから排出される。試料容器2に導入された試料ガスに含まれる気体状放射性核種から放射される放射線は、プラスチックシンチレータ11で吸収され、光に変換される。この光は反射膜18で反射されてライトガイド12内を進み、光電子増倍管13に入射する。光電子増倍管13に入射した光は光電子に変換され、さらに10〜10程度に増幅されて電流パルスとして出力される。光電子増倍管13により出力された電流パルスは、プリアンプ14において電圧パルスに変換される。
【0016】
放射線検出器1のプリアンプ14から出力された検出器信号パルスは、測定部6のメインアンプ61に入力され、増幅されて測定ユニット62に入力される。測定ユニット62は、入力された検出器信号パルスを計数し、工学値に変換する。その結果は、放射能測定結果としてモニタ表示部(図示せず)に表示される。さらに、測定ユニット62は、指標パルス用線源5から照射される指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルを測定し、そのピーク位置が一定になるようにメインアンプ61のゲインを自動制御する。
【0017】
次に、本実施の形態1に係る放射性ガスモニタにおける指標パルスのスペクトルについて、図2を用いて説明する。図2において、横軸はエネルギー(MeV)、縦軸は計数率(カウント)を示している。本実施の形態1では、指標パルス用線源5としてSr−90を用いている。Sr−90は崩壊して最大エネルギーの0.546MeVのβ線を放出してY−90になる。Y−90はSr−90と放射平衡状態にあり、最大エネルギー2.28MeVのβ線を放出する。Sr−90のβ線は、その大部分のエネルギーを線源窓4で吸収されるため、放射線検出器1には、エネルギーが小さく且つ数が減った状態で届く。すなわち、放射線検出器1には、指標パルス用線源5からの指標パルス用放射線として、Y−90のβ線2.28MeVがそのエネルギーの一部を線源窓4で吸収され、そこを透過したものが照射されている。
【0018】
測定部6において測定される指標パルスのスペクトルは、プラスチックシンチレータ11の厚さに応じた位置、例えば厚さ1mmのプラスチックシンチレータ11では約0.4MeVの位置にスペクトルピークが現れる。測定ユニット62は、指標パルスのスペクトルピーク位置が基準位置(図2中a)に対して低い位置(例えば図2中b)、または高い位置(例えば図2中c)に現れた場合、これらが基準位置(図2中a)となるように、メインアンプ61のゲインを自動制御する。
【0019】
なお、バックグラウンドスペクトルである環境γ線は、サンプラ3により遮蔽されるため、そのスペクトルは主体が0.05MeV以下である。指標パルス用線源5によるスペクトルのピークは、バックグラウンドスペクトルより高い位置に発現する。放射線検出器1に指標パルス用線源5から常にβ線が照射されるため、バックグラウンドスペクトルは、環境γ線スペクトル(図2中d)によるものに指標パルス線源5によるスペクトル(図2中e)が加算されたスペクトル(図2中f)となる。
【0020】
すなわち、本実施の形態1に係る放射線ガスモニタの測定部6において得られるスペクトルfは、指標パルス用線源5であるY−90のスペクトルと環境γ線のスペクトルに、測定対象の放射線のスペクトルが重畳されたものとなっており、以下に示す式1により測定対象の放射線による計数率寄与を測定することができる。
【0021】
環境放射線(γ線)による計数率寄与をBG1、指標パルス用線源5からの指標パルス用放射線(β線)による計数率寄与をBG2、測定対象の放射線(β線)による計数率寄与をN、全計数率(モニタ指示値)をGとしたとき、測定対象の放射線(β線)による計数率寄与Nは、BG1とBG2からの上昇分であり、式1で求められる。なお、BG1とBG2は同程度とし、スペクトルの測定時間を長くすることでピーク位置のゆらぎを抑制する。
N=G−(BG1+BG2) (式1)
【0022】
さらに、指標パルス用線源5による指標パルスのスペクトルピーク位置は、システムゲインのダイナミックレンジ(入出力の直線性が良好なレンジ範囲)に収まり、且つ環境γ線でスペクトルピーク位置が変動しないことが望ましい。このため、環境γ線のスペクトルと重ならない高い位置に指標パルスのスペクトルの鮮明なピークが発現するように、プラスチックシンチレータ11の厚さと指標パルス用線源5のβ線のエネルギーが選定される。
【0023】
本実施の形態1では、厚さ0.8〜1.3mmの板状のプラスチックシンチレータ11を用い、また、指標パルス用放射線源5には、その厚さ相当のエネルギーを付与して透過するのに十分なエネルギーを有すると共に半減期の長いSr−90を用いている。厚さ0.8〜1.3mmのプラスチックシンチレータ11では、付与されたエネルギーに相当する約0.3〜0.5MeVの位置に、指標パルスであるY−90のβ線のスペクトルピークが発現する。一方、Sr−90から放出されるβ線は、最大エネルギーが0.546MeVであり、その約1/3にピークを有する山状のエネルギー分布となる。
【0024】
プラスチックシンチレータ11の厚さを0.8mmよりも小さくすると、環境γ線に対する感度を低く抑えることができるが、指標パルスであるY−90のβ線のスペクトルピークにSr−90のβ線のスペクトルピークが接近し、指標パルスのスペクトルピークが不鮮明になる。また、プラスチックシンチレータ11の厚さを1.3mmよりも大きくすると、Sr−90のβ線のスペクトルピークの接近は回避できるが、ピークカウントが少なくなり、指標パルスのスペクトルピークが不鮮明になる。
【0025】
なお、プラスチックシンチレータ11の厚さに対する吸収エネルギーは、構成する原子が同じであれば単位厚さ当たりの質量に依存する。一般的なプラスチックは比重が約1であり、構成原子が炭素と水素の場合、厚さに対する吸収エネルギーはほぼ同等である。また、プラスチックシンチレータ11のβ線単位エネルギー当たりの発光量はメーカーによって異なるが、システムゲインを調整することにより発光量の違いは解消される。このため、プラスチックシンチレータ11は、メーカーによらず厚さ0.8〜1.3mmのものを用いることができる。
【0026】
また、本実施の形態1では、線源窓4を構成するプラスチック材の厚さを180〜220mg/cmとすることにより、Sr−90のピークは0.1MeV以下となり、指標パルスであるY−90のスペクトルピークが鮮明に発現する。線源窓4の厚さを220mg/cmよりも大きくするとSr−90のβ線のスペクトルピークを低エネルギー側にシフトさせ、指標パルスのスペクトルピークと離すことができるが、大きくしすぎるとピークカウントが少なくなり、指標パルスのスペクトルピークが不鮮明になる。
【0027】
なお、本実施の形態1では放射線検出器1のシンチレータとしてプラスチックシンチレータ11を用いたが、化学的、物理的に安定したCaF(Eu)シンチレータ、またはYAP(Ce)シンチレータを使用してもよい。その場合のシンチレータの厚さは80〜130mg/cmとすることが望ましい。これらのシンチレータを用いることにより、焼却炉煙突の酸性ガスを含む試料ガスまたは復水器空気抽出器の高pHの試料ガス等に対して耐食性を有する放射線検出器1が得られる。
【0028】
以上のように、本実施の形態1に係る放射性ガスモニタは、指標パルス用線源5から放射線検出器1に指標パルス用放射線を常時照射し、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにメインアンプ61のゲインを自動制御するようにした放射性ガスモニタであって、シンチレータとして厚さ0.8〜1.3mmのプラスチックシンチレータ11を用い、指標パルス用線源5として高エネルギーβ線を放射するSr−90/Y−90を用い、さらに線源窓4として厚さ180〜220mg/cmのプラスチックを用いたものである。これにより、Y−90による指標パルスのスペクトルピークを、システムゲインのダイナミックレンジに収まり、且つ環境γ線のスペクトルに重ならない好適な位置に、鮮明に発現させることができる。
【0029】
よって、環境γ線に影響されずに、プラスチックシンチレータ11の経時劣化を含めた全てのゲイン変動要因についてリアルタイムに補正することができる、信頼性の高い放射線モニタを提供することができる。また、指標パルス用線源5として、入手が容易であり、β線のみを放出し、且つ半減期が28.8年と長いSr−90を用いたので、指標パルス用線源5の遮蔽構造を簡易化及び軽量化できると共に、線源交換が不要で保守が容易な放射線ガスモニタが得られる。
【0030】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る放射性ガスモニタの構成を示す概略図である。上記実施の形態1では、指標パルス用線源5が試料容器2に取り付けられた線源窓4に包囲され保護された構造(図1)を示したが、本実施の形態2における放射性ガスモニタは、指標パルス用線源5を搭載する線源ホルダ7と、線源ホルダ7を移動させる線源ホルダ駆動機構8を備えたものである。なお、図3中、図1と同一または相当部分には同一符号を付している。また、図3では、図1に示すガス導入口2aとガス排出口2bを省略している。
【0031】
本実施の形態2における放射性ガスモニタの動作について説明する。まず、通常測定時には、図3に示すように、指標パルス用線源5は線源窓4と対向して配置され、線源窓4を介して放射線検出器1に指標パルス用放射線を照射する。測定部6は、指標パルス用放射線を含む放射線の計数率を測定すると共に、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御する。
【0032】
一方、点検時には、線源ホルダ駆動機構8により線源ホルダ7が移動され(図3では矢印A方向に移動)、指標パルス用線源5は線源窓4と対向しない位置に配置される。これにより、放射線検出器1に対して指標パルス用放射線が遮蔽される。すなわち、点検時には、測定装置6は、指標パルス用放射線を含まない放射線の計数率を測定する。なお、線源ホルダ駆動機構8は測定ユニット62により制御され遠隔操作される。
【0033】
本実施の形態2では、測定部6は、通常測定時の検出器信号パルスの計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、ノイズ等による誤動作を含む異常があると診断し、システムゲインの自動更新をスキップする。本実施の形態2に係る放射性ガスモニタにおけるシステムゲイン更新の手順について図4を用いて説明する。
【0034】
まず、ステップ1(S1)において、今回測定時間(演算周期)の通常計数率(今回)を読み込む。次に、ステップ2(S2)において通常計数率(今回)が所定範囲、例えば通常計数率(初期値)±3σを超える場合には、ステップ3(S3)に進み、システムゲインの自動更新をスキップしてS1に戻る。また、S2において通常計数率(今回)が通常計数率(初期値)±3σ以内の場合には、ステップ4(S4)に進み、システムゲインの更新を許可してS1に戻る。これにより、測定時間毎のシステムゲイン更新がノイズ等により誤動作することなく、信頼性の高い補正が行われる。
【0035】
さらに、測定部6は、通常測定時と点検時にそれぞれ放射線検出器1から出力される検出器信号パルスの計数率の差を求め、その初期値からの変動を監視することにより放射線検出器1の健全性を診断する。通常測定時と点検時の計数率の差が所定範囲を超え、放射線検出器1の健全性に問題があると診断された場合、警報音やランプ点滅等により管理者に通報する。なお、ここでいう所定範囲とは特に限定するものではなく、放射性ガスモニタの用途や設置場所に応じて適宜決定することができる。
【0036】
放射線検出器1の健全性を診断する際には、プラスチックシンチレータ11の厚さ相当のβ線吸収エネルギーが光に変換された結果の発光量(指標ピーク位置)と、一定の条件下で指標パルス用線源を照射したときに得られる正味計数率との2つのパラメータを監視することにより、軽微な異常も見逃さずに診断することができる。例えばプラスチックシンチレータ11に部分的にクラックが入った場合、指標パルスのスペクトルピーク位置の変化は小さいため判別しにくいが、計数率の低下により異常を検出できることがある。また、光電子増倍管13のゲインが低下した場合には、指標パルスのスペクトルピーク位置と計数率の両方が低下するため、異常として検出され易い。
【0037】
なお、正味計数率は、点検時の条件下において指標パルス用線源5を照射したときの計数率からバックグラウンド計数率を差し引いたもので、いずれもノイズをカットするためのディスクリレベル以上のパルスを計数する。上記実施の形態1では、正味計数率は測定できないが、プラスチックシンチレータ11にクラック等が部分的に発生すると指標ピーク計数率が低下するので、測定部6の測定ユニット62で測定したスペクトルから所定のウィンドウ内の指標ピーク計数率を求め、その変動を監視することにより、正味計数率の監視と同等の効果が得られる(実施の形態6参照)。
【0038】
以上のように、本実施の形態2によれば、プラスチックシンチレータ11の経時劣化を含めた全てのゲイン変動要因についてリアルタイムに補正することが可能である。また、点検において放射線検出器1の健全性を自動的に診断できるため、信頼性の高い放射線モニタを得ることができ、安定した精度よい放射線計測を実現することができる。
【0039】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る放射性ガスモニタの構成を示す概略図である。本実施の形態3における放射性ガスモニタは、上記実施の形態2と同様に、指標パルス用線源5を搭載する線源ホルダ7と、線源ホルダ7を移動させる線源ホルダ駆動機構8を備えたものであるが、本実施の形態3では、点検時において指標パルス用線源5から放射線検出器1に指標パルス用放射線が照射されるようにしたものである。なお、図5中、図1と同一または相当部分には同一符号を付している。また、図5では、図1に示すガス導入口2aとガス排出口2bを省略している。
【0040】
本実施の形態3における放射性ガスモニタの動作について説明する。まず、通常測定時には、図5に示すように、指標パルス用線源5は線源窓4と対向しない位置に配置される。これにより、放射線検出器1に対して指標パルス用放射線が遮蔽される。すなわち、通常測定時には、測定部6は、指標パルス用放射線を含まない放射線の計数率を測定する。
【0041】
一方、点検時には、線源ホルダ駆動機構8により線源ホルダ7が移動され(図5では矢印A方向に移動)、指標パルス用線源5は線源窓4と対向して配置され、線源窓4を介して放射線検出器1に指標パルス用放射線を照射する。測定部6は、指標パルス用放射線を含む放射線の計数率を測定すると共に、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御する。なお、線源ホルダ駆動機構8は、測定ユニット62により制御され遠隔操作される。
【0042】
本実施の形態3では、測定部6は、点検時の検出器信号パルスの計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、ノイズ等による誤動作を含む異常があると診断し、システムゲインの自動更新をスキップする。本発明の実施の形態3に係る放射性ガスモニタにおけるシステムゲイン更新の手順について図6を用いて説明する。
【0043】
まず、ステップ11(S11)において、今回点検時間の点検計数率(今回)を読み込む。次に、ステップ12(S12)において点検計数率(今回)が所定範囲、例えば点検計数率(初期値)±3σを超える場合には、ステップ13(S13)に進み、システムゲインの自動更新をスキップしてS11に戻る。また、S12において点検計数率(今回)が点検計数率(初期値)±3σ以内の場合には、ステップ14(S14)に進み、システムゲインの更新を許可してS1に戻る。これにより、点検時間毎のシステムゲイン更新がノイズ等により誤動作することなく、信頼性の高い補正が行われる。
【0044】
さらに、測定部6は、通常測定時と点検時にそれぞれ放射線検出器1から出力される検出器信号パルスの計数率の差を求め、その初期値からの変動を監視することにより放射線検出器1の健全性を診断する。通常測定時と点検時の計数率の差が所定範囲を超え、放射線検出器1の健全性に問題があると診断された場合、警報音やランプ点滅等により管理者に通報する。ただし、ここでいう所定範囲とは特に限定するものではなく、放射性ガスモニタの用途や設置場所に応じて適宜決定することができる。なお、図6のS13において、システムゲインの自動更新のスキップは、通常測定時と点検時の計数率の差が所定範囲を超えた条件で動作するようにしてもよい。この場合、通常測定時の計数率に影響されないでシステムゲインの自動制御を継続することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態3によれば、点検において指標パルス用放射線のスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動更新するようにしたので、プラスチックシンチレータ11の経時劣化を含めた全てのゲイン変動要因について補正することが可能である。また、点検において放射線検出器1の健全性を自動的に診断できるため、信頼性の高い放射線モニタを得ることができ、安定した精度よい放射線計測を実現することができる。
【0046】
実施の形態4.
図7は、本発明の実施の形態4に係る放射性ガスモニタの構成を示す概略図である。本実施の形態4における放射性ガスモニタは、指標パルス用線源5と核種が同じで且つ指標パルス用線源5よりも放射能強度が大きい点検用線源9をさらに備え、この点検用線源9を指標パルス用線源5とともに線源ホルダ7に搭載したものである。なお、図7中、図1と同一または相当部分には同一符号を付している。また、図7では、図1に示すガス導入口2aとガス排出口2bを省略している。
【0047】
点検用線源9としては、遮蔽が容易なβ線源で半減期が長く、入手し易いことから、指標パルス用線源5と同じSr−90が用いられる。指標パルス用線源5よりも放射能強度を大きくする理由は、指標パルスのスペクトルピーク位置の自動制御インターバルの間で、短時間で放射線検出器1の健全性を診断するためである。指標パルス用線源5によるピーク計数率が、例えば10cpmの時、4時間で指標ピーク位置を確認するようにした場合、2400カウントが得られ、統計的誤差(100%/カウントの二乗平均)は約2%となる。点検用線源9の強度を240倍とすると10分間で指標ピーク位置を確認することができる。
【0048】
放射性ガスモニタの設置場所においてモニタ指示値が上昇した場合、まず放射線検出器1の健全性を診断するが、点検時は欠測となるため短時間で済ませる必要がある。このような場合に、短時間で放射線検出器1の健全性を診断できる点検用線源9は有効である。なお、線源のコストはシステム全体の1%以下であるため、2つの線源を用意することによるコストの上昇は軽微である。
【0049】
本実施の形態4における放射性ガスモニタの動作について説明する。通常測定時には、図7に示すように、指標パルス用線源5は線源窓4と対向して配置され、線源窓4を介して放射線検出器1に指標パルス用放射線を照射する。測定部6は、指標パルス用放射線を含む放射線の計数率を測定すると共に、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御する。
【0050】
一方、点検時には、線源ホルダ駆動機構8により線源ホルダ7が移動され(図7では矢印A方向に移動)、指標パルス用線源5は線源窓4と対向しない位置に配置され、放射線検出器1に対して指標パルス用放射線が遮蔽される。この時、点検用線源9は線源窓4と対向して配置され、線源窓4を介して放射線検出器1に点検用放射線を照射する。すなわち、点検時には、測定部6は、点検用放射線を含む放射線の計数率を測定する。なお、線源ホルダ駆動機構8は測定ユニット62により制御され遠隔操作される。
【0051】
本実施の形態4では、測定部6は、通常測定時の検出器信号パルスの計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、ノイズ等による誤動作を含む異常があると診断し、システムゲインの自動更新をスキップする。システムゲイン更新の手順についは、上記実施の形態2(図4)と同様であるので説明を省略する。さらに、測定部6は、上記実施の形態2と同様に、通常測定時と点検時それぞれの検出器信号パルスの計数率の差を求め、その初期値からの変動を監視することにより放射線検出器1の健全性を診断する。
【0052】
本実施の形態4によれば、上記実施の形態2と同様の効果に加え、指標パルス用線源5と核種が同じで且つ指標パルス用線源5よりも放射能強度が大きい点検用線源9を備えることにより、信頼性の高い点検を短時間で行うことが可能となる。
【0053】
実施の形態5.
図8は、本発明の実施の形態5に係る放射性ガスモニタの構成を示す概略図である。本実施の形態5における放射性ガスモニタは、指標パルス用線源として、上記実施の形態4で用いた指標パルス用線源5と核種が同じで且つ指標パルス用線源5よりも放射能強度が大きい点検用線源9(Sr−90)を用い、この点検用線源9と線源窓4の間を移動可能に設けられたコリメータ19と、このコリメータ19を移動させるコリメータ駆動機構20を備えたものである。なお、図8中、図1と同一または相当部分には同一符号を付している。また、図8では、図1に示すガス導入口2aとガス排出口2bを省略している。
【0054】
本実施の形態5における放射性ガスモニタの動作について説明する。点検用線源9は、照射窓4と対向して配置され、固定されている。通常測定時には、図8(a)に示すように、点検用線源9と線源窓4の間にコリメータ19が挿入され、点検用線源9はコリメータ19と線源窓4を介して放射線検出器1に点検用放射線を照射する。測定部6は、コリメータ19を挿入した状態における点検用放射線を含む放射線の計数率を測定すると共に、スペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御する。
【0055】
一方、点検時には、コリメータ駆動機構20により、コリメータ19が図8(a)中の矢印A方向に移動され、図8(b)に示すように点検用線源9と線源窓4の間にコリメータ19が挿入されていない状態で、点検用線源9は線源窓4を介して放射線検出器1に点検用放射線を照射する。測定部6は、コリメータ19が挿入されていない状態における点検用放射線を含む放射線の計数率を測定する。
【0056】
本実施の形態5では、測定部6は、通常測定時の検出器信号パルスの計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、ノイズ等による誤動作を含む異常があると診断し、システムゲインの自動更新をスキップする。システムゲイン更新の手順についは、上記実施の形態2(図4)と同様であるので説明を省略する。さらに、測定部6は、上記実施の形態2と同様に、通常測定時と点検時それぞれの検出器信号パルスの計数率の差を求め、その初期値からの変動を監視することにより放射線検出器1の健全性を診断する。
【0057】
本実施の形態5によれば、上記実施の形態2と同様の効果に加え、点検用線源9と線源窓4の間を移動可能なコリメータ19を備えることにより、1つの線源で上記実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0058】
実施の形態6.
上記実施の形態2〜5では、通常測定時と点検時それぞれの検出器信号パルスの計数率の差を求め、その初期値からの変動を監視することにより放射線検出器1の健全性を診断するようにしたが、本実施の形態6では、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルにおいて所定のウィンドウ内の指標ピーク計数率を求め、その計数率の変動をもとに放射線検出器1の健全性を診断し、システムゲインを自動制御するようにした放射性ガスモニタについて説明する。
【0059】
図9は、指標パルス用放射線のスペクトルとウィンドウの関係を示している。図9に示すように、指標パルス用放射線のスペクトルにおいて、所定の測定時間毎にピーク位置pを含むr−sの範囲のウィンドウ内の計数率(指標ピーク計数率:図9中斜線部分)を求める。本実施の形態6では、測定部6は、ウィンドウ内の指標ピーク計数率が初期値に対して所定範囲を超えた場合、ノイズ等による誤動作を含む異常があると診断し、システムゲインの自動更新をスキップする。
【0060】
本発明の実施の形態6に係る放射性ガスモニタにおけるシステムゲイン更新の手順について図10を用いて説明する。まず、ステップ21(S21)において、今回測定時間のピーク計数率(今回)を読み込む。次に、ステップ22(S22)においてピーク計数率(今回)が所定範囲、例えばピーク計数率(初期値)±3σを超える場合には、ステップ23(S23)に進み、システムゲインの自動更新をスキップしてS21に戻る。なお、S22においてピーク計数率が所定範囲を超えた場合、放射線検出器1の健全性に問題があると診断し、S23において警報音やランプ点滅等により管理者に通報する。
【0061】
また、S22においてピーク計数率(今回)がピーク計数率(初期値)±3σ以内の場合には、ステップ24(S24)に進み、システムゲインの更新を許可してS21に戻る。これにより、測定時間毎のシステムゲイン更新がノイズ等により誤動作することなく、信頼性の高い補正が行われる。
【0062】
以上のように、本実施の形態6によれば、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルにおいて、そのスペクトルピークを含む所定のウィンドウ内の計数率を求め、その変動を監視することにより、プラスチックシンチレータ11の経時劣化を含めた全てのゲイン変動要因について補正することが可能であり、また、放射線検出器1の健全性を容易に診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る放射性ガスモニタは、原子炉施設、使用済燃料再処理施設、放射性同位元素使用施設、粒子線使用施設等の放出管理あるいは放射線管理に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係る放射性ガスモニタを示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る放射性ガスモニタにおける指標パルス用放射線のスペクトルを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る放射性ガスモニタを示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る放射性ガスモニタにおけるシステムゲイン更新の手順を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る放射性ガスモニタを示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る放射性ガスモニタにおけるシステムゲイン更新の手順を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る放射性ガスモニタを示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る放射性ガスモニタを示す概略図および部分拡大図である。
【図9】本発明の実施の形態6に係る放射性ガスモニタにおける指標パルス用放射線のスペクトルとウィンドウの関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態6に係る放射性ガスモニタにおけるシステムゲイン更新の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 放射線検出器、2 試料容器、2a ガス導入口、2b ガス排出口、
3 サンプラ、4 線源窓、5 指標パルス用線源、6 測定部、7 線源ホルダ、
8 線源ホルダ駆動機構、9 点検用線源、10 放射線入射窓、
11 プラスチックシンチレータ、12 ライトガイド、13 光電子倍増管、
14 プリアンプ、15 クッション材、16 検出器ケース、17 Oリング、
18 反射膜、19 コリメータ、20 コリメータ駆動機構、61 メインアンプ、
62 測定ユニット、63 高圧電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスが導入される試料容器、
前記試料容器の内部空間に接する放射線入射窓から入射した放射線を吸収し光に変換するシンチレータと、前記シンチレータの発した光を電子に変換し増幅する光電子倍増管を有する放射線検出器、
前記試料容器に取り付けられた線源窓を介して前記放射線検出器に指標パルス用放射線を照射する指標パルス用線源、
前記試料容器、前記放射線検出器及び前記指標パルス用線源を保持し環境放射線から遮蔽するサンプラ、
前記放射線検出器から出力される検出器信号パルスの計数率を測定すると共に、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルピーク位置が一定になるようにシステムゲインを自動制御する測定部を備え、
前記指標パルス用線源としてSr−90を備えたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記シンチレータとして、プラスチックシンチレータを用いたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項3】
請求項2に記載の放射性ガスモニタであって、前記プラスチックシンチレータの厚さを0.8〜1.3mmとしたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項4】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記シンチレータとして、CaF(Eu)シンチレータ、またはYAP(Ce)シンチレータを用いたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項5】
請求項4に記載の放射性ガスモニタであって、前記シンチレータの厚さを80〜130mg/cmとしたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項6】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記線源窓として、厚さ180〜220mg/cmのプラスチック材を用いたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の放射性ガスモニタであって、前記指標パルス用線源を搭載する線源ホルダと、前記線源ホルダを移動させる線源ホルダ駆動機構をさらに備え、通常測定時には、前記指標パルス用線源は前記線源窓と対向して配置され、前記線源窓を介して前記放射線検出器に指標パルス用放射線を照射し、点検時には、前記線源ホルダ駆動機構により前記線源ホルダが移動され、前記指標パルス用線源は前記線源窓と対向しない位置に配置され、前記放射線検出器に対して指標パルス用放射線が遮蔽されることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項8】
請求項7に記載の放射性ガスモニタであって、前記指標パルス用線源と核種が同じで且つ前記指標パルス用線源よりも放射能強度が大きい点検用線源を、前記指標パルス用線源とともに前記線源ホルダに搭載し、点検時には、前記点検用線源は前記線源窓と対向して配置され、前記線源窓を介して前記放射線検出器に点検用放射線を照射することを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項9】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の放射性ガスモニタであって、前記指標パルス用線源と前記線源窓の間を移動可能に設けられたコリメータとこれを移動させるコリメータ駆動機構をさらに備え、通常測定時には、前記指標パルス用線源は、前記線源窓との間に前記コリメータが挿入された状態で前記放射線検出器に指標パルス用放射線を照射し、点検時には、前記コリメータ駆動機構により前記コリメータが移動され、前記指標パルス用線源は、前記線源窓との間に前記コリメータが挿入されていない状態で前記放射線検出器に指標パルス用放射線を照射することを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の放射性ガスモニタであって、前記測定部は、通常測定時の検出器信号パルスの計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、システムゲインの自動更新をスキップすることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の放射性ガスモニタであって、前記測定部は、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルにおいて、そのスペクトルピークを含む所定のウィンドウ内の計数率を求め、前記計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、システムゲインの自動更新をスキップすることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の放射性ガスモニタであって、前記測定部は、指標パルス用放射線による指標パルスのスペクトルにおいて、そのスペクトルピークを含む所定のウィンドウ内の計数率を求め、その初期値からの変動を監視することにより前記放射線検出器の健全性を診断することを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項13】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記指標パルス用線源を搭載する線源ホルダと、前記線源ホルダを移動させる線源ホルダ駆動機構をさらに備え、通常測定時には、前記指標パルス用線源は前記線源窓と対向しない位置に配置され、前記放射線検出器に対して指標パルス用放射線が遮蔽され、点検時には、前記線源ホルダ駆動機構により前記線源ホルダが移動され、前記指標パルス用線源は前記線源窓と対向して配置され、前記線源窓を介して前記放射線検出器に指標パルス用放射線を照射することを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項14】
請求項13に記載の放射性ガスモニタであって、前記測定部は、点検時の検出器信号パルスの計数率がその初期値に対して所定範囲を超えた場合、システムゲインの自動更新をスキップすることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項15】
請求項7〜請求項9または請求項13のいずれか一項に記載の放射性ガスモニタであって、前記測定部は、通常測定時と点検時の検出器信号パルスの計数率の差を求め、その初期値からの変動を監視することにより前記放射線検出器の健全性を診断することを特徴とする放射性ガスモニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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