説明

放射性医薬品錯体

本発明は、キレート金属イオン、特に放射性核種において有用なキレート剤のような化合物を提供して、金属イオン錯体を提供する。また、本発明は、例えば治療用途及び診断用途において、本発明の化合物及び錯体を使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)に基づいて、2009年12月24日に出願された米国特許出願第61/290、155号の利益を主張するものであり、前記特許出願は、参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【0002】
本発明は、治療用途及び診断用途で使用できる化合物及び錯体に関する。
【背景技術】
【0003】
金属イオンを結合するための多くのキレート剤は、従来技術において公知である。これらのキレート剤としては、結合構造を介して一緒に結合されるカテコール、ハイドロキシピリジノン、ヒドロキシフタルアミド、及びサリチルアミドが挙げられる。米国特許第4,181,654号;第4,309,305号;第4,442,305号;第4,543,213号;第4,698,431号;第4,939,254号;第5,010,191号;第5,049,280号;第5,624,901号;第5,892,029号;第6,406,297号;第6,515,113号;第6,846,915号;第6,864,103号;第7,018,850号;第7,404,912号;及び第7,442,558号;第US/2008/0213917号;国際公開第WO/2008/008797号;及び米国特許第US/2008/0213780号を参照されたい。これらのキレート剤の過去の出願は、例えば、組織からの特定金属イオンの除去と、診断法におけるガドリニウム(III)のようなMRI活性ランタニドイオンの使用と、そして様々な結合アッセイにおける発光ランタニドイオンの使用とに関するものであった。
【0004】
医学的診断のために使用されるランタニド錯体は、動力学的に安定でなければならない。なぜならば、Ln3+アクアイオン又はアクアリガンドからの解離生成物のいずれもが、in vivoで充分に耐容性を示さず、毒性となるからである。而して、高い熱力学的安定性及び速度論的不活性は、重要な基準である。このことは、DTPA環式誘導体及びDOTA/DOTA誘導体のような巨大環を有する錯体の設計へと導き、in vivo剤として広範囲に研究されてきた。いくつかのグループは、[Ln(DOTA)]及びLn(DOTA)誘導体の解離は、プロトンによって支援される経路によって起こること、また、Cu2+又はZn2+のような内在性金属イオンは、例えば磁気共鳴イメージングコントラスト剤のようなin vivo用途のいくつかにとって有利性をもたらす解離速度についてほとんど影響を及ぼさないことを証明した。
【0005】
ランタニド(III)DOTA錯体は、現在知られている最も熱力学的に安定で且つ動力学的に不活性な錯体のうちの一つであるが、錯体形成の遅い動力学は、速い動力学が必要とされる用途では問題である。例えば、α粒子抗癌治療法では、α放出体に対する速くて強い錯化は、必須である。故に、アルファ癌治療剤のためのキレートの設計では、速いキレート化、送達及び排出、ならびに高親和性及び低毒性のような重要問題を考慮しなければならない。
【0006】
動力学的に不活性及び高い構造前組織化(structural pre−organization)は、錯体安定性にとって望ましいのに対して、リガンド設計は、より安定な巨大環からシフトして、はるかに速い動力学的交換を補償しなければならない。文献では、大環状配位子を伴う金属の錯化は、通常は、線状ポリアミノ―ポリカルボキシレート型リガンドによる錯化に比べて、数オーダー遅いことが示されている。特にDOTA及びDOTA誘導体錯体の場合における巨大環の会合及び解離のより遅い動力学は、大部分はそれらの高い安定性及び構造前組織化と関連がある。DOTA錯体において、錯体形成の動力学的分析により、これらの系は、安定中間物が形成されると考えられるいくつかの別々の工程で起こる、ことが分かる。Ln3+イオンは、「ケージの外」に配置され、大環状アミノ基のうちの1つ又は2つは、プロトン化されたままであり、そして、それは、いくつかの分光技術によって検出された。それらのアミンのその後の遅い塩基接触脱プロトン化と再配置により、最終[Ln(DOTA)](式中、Ln3+イオンは「ケージの中に」捕捉される)錯体の形成が誘導された。類似の安定中間物の証拠は、同様に他のDOTA誘導体の形成中に報告された。
【0007】
放射性医薬品としての使用に特に適している新規のキレート剤及び錯体に関するニーズは依然としてある。前記のキレート剤及び錯体及びそれらの使用方法は、本発明によって提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属イオンをキレート化するのに有用なキレート剤のクラス、例えば放射性核種を提供する。また、本発明は、治療的価値又は診断的価値を有する錯体を作製するのに特に有用である。有用なキレーターは、1,2―ヒドロキシピリジノン系リガンド(1,2―HOPO)、マルトール誘導体、ヒドロキシピリミジノン(HOPY)誘導体、ヒドロキシイソフタル酸誘導体、カテコール酸誘導体、テレフタル酸誘導体(例えば、テレフタルアミジル、TAM)、及びサリチル酸誘導体から任意の組合せで選択されるキレート部分を含む。これらの部分の組合せは、1つ又は複数の母核部分によって、例えば、トリス(2―アミノエチル)アミン(TREN)、好ましくは、例えばH22のようなテトラポット状トポロジー母核によって、サブユニットが結合される1つのリガンド中に組み込まれ得る。例示的なキレーターは、ターゲティング部分(targeting moiety)をキレーターに取り付けるために使用できる官能化リンカーも含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して、本発明は、ターゲティング部分に結合されるキレーターを提供する。ターゲティング部分は、動物、細胞又は調査される系の中にあるいくつかの部位に対して特有の親和性を有する任意の部分であることができる。このようにして、本明細書で提供されるキレーター及び錯体は、治療目的又は診断目的のための対象部位に指向させることができる。
【0010】
本発明の錯体の1つの利点は、溶液中で高い安定性を示す点にある。従って、本発明の錯体は、例えば顕微鏡検査、酵素学、臨床化学、分子生物学、及び医学においてプローブとして使用できる。本発明の化合物は、治療薬及び画像診断法の診断薬としても有用である。
【0011】
キレート剤はそれらの錯化された形態(例えば、M+3によって錯化された形態)で示すことができるが、本明細書において示される式によって表される構造は、金属イオン錯体に限定されず、それは単にキレート剤の1つの形態である。式は、錯体化されていないキレート剤を等しく代表している。しかしながら、いくつかの例では、錯体は、金属イオンのキレート化によって錯体に付与された特定の特性(例えば、放射能)を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】反応性官能基を含むオープンキレーター(open chelator)を作るためのスキームを示している図である。
【図2】巨大環を作るためのスキームを示している図である。
【図3】反応性官能基を含むオープンキレーターを作るためのスキームを示している図である。
【図4】巨大環を作るためのスキームを示している図である。
【図5】ターゲティング部分をキレーターに結合させるためのスキームを示している図である。
【図6】イオンによって錯体化されたMe4BH(2,2)IAMに関する結晶構造を示している図である。
【図7】Zr―3,4,3―LI―1,2―HOPO錯体に関する質量分析データを示している図である。
【図8】Zr―5LIO―1,2―Me―3,2―HOPO錯体に関する結晶構造及び質量分析データを示している図である。
【図9】Zr―5LIO―Me―3,2―HOPO錯体に関する結晶構造及び質量分析データを示している図である。
【図10】Zr―5LIO―1,2―HOPO錯体のための質量分析データを示している図である。
【図11】Zr−H(5O,2)−Me−3,2−HOPO錯体に関する結晶構造及び質量分析データを示している図である。
【図12】Zr―H(5O,2)―1,2―HOPO錯体に関する質量分析データを示している図である。
【図13】Ce(IV)―H(2,2)―1,2―HOPO錯体に関する結晶構造を示している図である。
【図14】Ce(IV)―H(2,2)―1,2―HOPO錯体に関する結晶構造を示している図である。
【図15】Ce(IV)―H(2,2)―1,2―HOPO錯体に関する結晶構造を示している図である。
【図16】Dy―Lumi4(登録商標)に関する質量分析データを示している図である。
【図17】Yb―Lumi4(登録商標)錯体に関する質量分析データを示している図である。
【図18】Tb―Lumi4(登録商標)―NHの錯化速度を決定するための動力学的結合発光測定値(kinetic association luminescent measurements)を示しているグラフである。
【図19】金属カチオンによる前処理の存在及び非存在における、オリゴヌクレオチド1及びオリゴヌクレオチド―Lumi4複合体2の電気泳動を示している図である。
【図20】Lumi4(登録商標)―N―ヒドロキシスクシニミドをポリヌクレオチドに対して結合させるためのスキームを示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施態様の説明
定義
置換基が、左から右に記述される置換基の従来の化学式によって特定される場合、前記の式は、右から左へと構造を記述している化学的に同一な置換基を任意に等しく含んでいる。例えば、―CHO―は、―OCH―も記載していることが意図されている。
【0014】
用語「アルキル」は、それ自体又は他の置換基の一部として、直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味しており、完全に飽和されていてもよく、モノ不飽和又はポリ不飽和であってもよく、そして一価、二価及び多価の基を含む。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n―プロピル、イソプロピル、n―ブチル、t―ブチル、イソブチル、sec―ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルのような基、例えばn―ペンチル、n―ヘキシル、n―ヘプチル、n―オクチルなどの同族体及び異性体が挙げられるが、それらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ又は複数の二重結合又は三重結合を有する基(すなわち、アルケニル及びアルキニル部分)である。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2―プロペニル、クロチル、2―イソペンテニル、2―(ブタジエニル)、2,4―ペンタジエニル、3―(1,4―ペンタジエニル)、エチニル、1―プロピニル及び3―プロピニル、3―ブチニル、及びより高級の同族体及び異性体が挙げられるが、それらに限定されない。用語「アルキル」は、「アルキレン」を指していることがあり、それ自体又は他の置換基の一部として、アルカンから誘導される二価の基を意味しており、例としては―CHCHCHCH―が挙げられるが、それらに限定されない。典型的には、アルキル(又はアルキレン)基は、1〜30個の炭素原子を有する。「低級アルキル」又は「低級アルキレン」は、より短い鎖状アルキル又はアルキレン基であり、一般的には8個又はより少ない炭素原子を有する。いくつかの実施態様では、アルキルは、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29及びC30アルキルから選択されるアルキル又はアルキルの組み合わせを指している。いくつかの実施態様では、アルキルは、C―C25アルキルを指している。いくつかの実施態様では、アルキルは、C―C20アルキルを指している。いくつかの実施態様では、アルキルは、C―C15アルキルを指している。いくつかの実施態様では、アルキルは、C―C10アルキルを指している。いくつかの実施態様では、アルキルは、C―Cアルキルを指している。
【0015】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体又は他の用語と組み合わせて、1個又は複数の炭素が、O、N、Si及びS(好ましくはO、N及びS)から成る群より選択される1個又は複数のヘテロ原子によって置換されているアルキルを意味しており、そしてその場合、窒素及び硫黄原子は、任意に酸化されていてもよく、また、窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、Si及びSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、又はアルキル基が分子の残りの部分に結合されている位置に、配置されていてもよい。いくつかの実施態様では、ヘテロ原子が、鎖を停止させているか又は内部位置にあるかどうかに応じて、ヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価に従って、1個又は複数のH又は置換基、例えば(C、C、C、C、C若しくはC)アルキルに結合されていてもよい。ヘテロアルキル基の例としては、―CH―CH―O―CH、―CH―CH―NH―CH、―CH―CH―N(CH)―CH、―CH―S―CH―CH、―CH―CH―S(O)―CH、―CH―CH―S(O)―CH、―CH=CH―O―CH、―Si(CH、―CH―CH=N―OCH、及び―CH=CH―N(CH)―CHが挙げられるが、それらに限定されない。例えば―CH―NH―OCH及び―CH―O―Si(CHのように2個以下のヘテロ原子が連続していてもよく、これにより、ヘテロ原子置換の数を限定することができる。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体又は他の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味しており、例としては―CH―CH―S―CH―CH―及び―CH―S―CH―CH―NH―CHが挙げられるが、それらに限定されない。アルキル、アルケニル及びアルキニルのヘテロ形態の指定炭素数は、ヘテロ原子にカウントする。例えば、ヘテロアルキルが、少なくとも1個のC原子及び少なくとも1個のヘテロ原子、例えば1〜5個のC及び1個のN、又は1〜4個のC及び2個のNを含むように、(C、C、C、C、C又はC)ヘテロアルキルは、それぞれ、C、N、O、Si、及びSから選択される1、2、3、4、5又は6個の原子を含む。更に、ヘテロアルキルは、1個又は複数のカルボニル基も含むことができる。いくつかの実施態様では、ヘテロアルキルは、任意のC―C30アルキル、C―C25アルキル、C―C20アルキル、C―C15アルキル、C―C10アルキル、又はC―Cアルキルであり、そのいずれにおいても、1個又は複数の炭素が、O、N、Si及びS(又はO、N及びSから)から1個又は複数のヘテロ原子によって置換される。いくつかの実施態様では、1、2、3、4又は5個の炭素のそれぞれは、ヘテロ原子で置換される。用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)は、それらの従来の意味で使用され、酸素原子、窒素原子(例えば、アミン基)、又は硫黄原子それぞれを介して、分子の残部に結合されるそれらのアルキル基及びヘテロアルキル基を意味している。
【0016】
用語「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」は、それら自体又は他の用語と組み合わせて、「アルキル」及び「ヘテロアルキル」それぞれの環式バージョンを指している。更に、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、複素環が分子の残部に結合される位置を占有できる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1―シクロヘキセニル、3―シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、それらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの実施例は、1−(1,2,5,6―テトラヒドロピリジル)、1―ピペリジニル、2―ピペリジニル、3―ピペリジニル、4―モルホリニル、3―モルホリニル、テトラヒドロフラン―2―イル、テトラヒドロフラン―3―イル、テトラヒドロチエン―2―イル、テトラヒドロチエン―3―イル、1―ピペラジニル、2―ピペラジニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
用語「アリール」は、単環であることができるか、又は、一緒に縮合、若しくは共有結合されている任意に複数の環(好ましくは1、2又は3つの環)であることができるポリ不飽和芳香族置換基を意味している。いくつかの実施態様では、アリールは、3、4、5、6、7又は8員環であり、1つ又は2つの他の3、4、5、6、7又は8員環に対して任意に縮合される。用語「ヘテロアリール」は、N、O及びSから選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含むアリール基(又は環)を意味しており、そしてその場合、窒素及び硫黄原子は任意に酸化されていて、また窒素原子(単数又は複数)は任意に四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子によって分子の残部に結合できる。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、4―ビフェニル、1―ピロリル、2―ピロリル、3―ピロリル、3―ピラゾリル、2―イミダゾリル、4―イミダゾリル、ピラジニル、2―オキサゾリル、4―オキサゾリル、2―フェニル―4―オキサゾリル、5―オキサゾリル、3―イソキサゾリル、4―イソキサゾリル、5―イソキサゾリル、2―チアゾリル、4―チアゾリル、5―チアゾリル、2―フリル、3―フリル、2―チエニル、3―チエニル、2―ピリジル、3―ピリジル、4―ピリジル、2―ピリミジイル、4―ピリミジイル、5―ベンゾチアゾリル、プリニル、2―ベンズイミダゾリル、5―インドリル、1―イソキノリル、5―イソキノリル、2―キノキサリニル、5―キノキサリニル、3―キノリル、及び6―キノリルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施態様では、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールのいずれかは、任意に置換される。すなわち、いくつかの実施態様では、これらの基のいずれかは、置換又は未置換である。いくつかの実施態様では、基の各タイプのための置換基は、以下に示す置換基から選択する。
【0019】
アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキル基(しばしばアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルと呼ばれるそれらの基を含む)のための置換基は、一般的に、「アルキル基置換基」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、アルキル基置換基は、0〜(2m’+1)(式中、m’は基中の総炭素原子数である)の範囲の数で、―ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、―SiR’R’’R’’’、―OC(O)R’、―C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、―OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、―NR’C(O)NR’’R’’’、―NR’’C(O)R’、―NR―C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、―NR―C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、―S(O)NR’R’’、―NRSOR’、−CN及び―NOから選択される。一つの実施態様では、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素、アルキル(例えば、C、C、C、C、C及びCアルキル))から選択される。一つの実施態様では、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のアリール、例えば、1〜3個のハロゲンで置換されるアリール、置換又は未置換のアルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を意味している。一つの実施態様では、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、チオアルコキシ基、及びアリールアルキルから選択される。R’及びR’’は、同じ窒素原子に結合され、そしてそれらは、窒素原子と結合して、5、6、又は7員環を形成することができる。例えば、NR’R’’は、1―ピロリジニル及び4―モルホリニルを含むことができる。いくつかの実施態様では、アルキル基置換基は、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される。
【0020】
アルキル基について記載されている置換基と同様に、アリール及びヘテロアリール基のための置換基は、一般的に、「アリール基置換基」と呼ぶ。置換基が選択されるアリール基でいくつかの実施形態では、0から、芳香族環系の結合可能な原子価(open valences)の総数までの範囲の数で、―ハロゲン、―OR’、=O、=NR’、=N―OR’、−NR’R’’、−SR’、−SiR’R’’R’’’、―OC(O)R’、−C(O)R’、―COR’、―CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、―NR’C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、―NR―C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、―NRC(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、―S(O)NR’R’’、―NRSOR’、−CN及び―NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C―C)アルコキシ、及びフルオロ(C―C)アルキルから選択される。いくつかの実施態様では、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、独立に、水素及びアルキル(例えば、C、C、C、C、C及びCアルキル)から選択される。いくつかの実施態様では、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、独立に、水素、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される。いくつかの実施態様では、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立に選択される。いくつかの実施態様では、アリール基置換基は、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される。
【0021】
アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意に、式―T−C(O)−(CRR’)−U−(式中、T及びUは独立に―NR―、―O―、―CRR’―又は単結合であり、qは0〜3の整数である)の置換基で置換し得る。あるいは、アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意に、式―A―(CH―B―(式中、A及びBは独立に−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、―S(O)−、−S(O)NR’−又は単結合であり、そしてrは1〜4の整数である)の置換基で置換し得る。そのようにして形成された新しい環の単結合のうちの1つは、任意に、二重結合で置換し得る。あるいは、アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意に、式―(CRR’)−X−(CR’’R’’’)−(式中、s及びdは独立に0〜3の整数であり、Xは―O−、―NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、又は−S(O)NR’−である)の置換基で置換し得る。置換基R、R’、R’’及びR’’’は、好ましくは、独立に、水素、又は置換若しくは未置換の(C―C)アルキルから選択される。
【0022】
「アシル」という用語は、部分―C(O)R(式中、Rは本明細書で規定される意味を有する)を含む種を意味している。Rの例示的な種としては、H、ハロゲン、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、及び置換又は未置換のヘテロシクロアルキルが挙げられる。いくつかの実施態様では、RはH及び(C―C)アルキルから選択される。
【0023】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、それら自体又は別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味している。更に、例えば「ハロアルキル」のような用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意図している。例えば、「ハロ(C―C)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2―トリフルオロエチル、4―クロロブチル、3―ブロモプロピルなどを含むが、これに限定されるものではない。いくつかの実施態様では、ハロゲンは、F、Cl及びBrから選択される原子を意味している。
【0024】
用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びシリコン(Si)を含む。いくつかの実施態様では、ヘテロ原子は、N及びSから選択される。いくつかの実施態様では、ヘテロ原子はOである。
【0025】
特に明記しない限り、シンボル「R」は、アシル、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される置換基を表す一般的な省略形である。化合物が2つ以上のR、R’、R’’、R’’’及びR’’’’を含むとき、それらは各々独立に選択される。
【0026】
溶媒交換可能なプロトンを有する基については、イオン化形態が同様に企図される。例えば、―COOHは―COOも意味し、そして―OHは―Oも意味している。
【0027】
本明細書において開示される化合物の任意のものは、薬学的に許容可能な塩にすることができる。用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書に記載されている化合物で見出される特有な置換基に従って、比較的無毒性の酸又は塩基を使用して調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含むとき、塩基性付加塩は、生で又は適当な不活性溶媒中で前記化合物の中性形態を望ましい塩基の充分な量と接触させることによって、得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、又はマグネシウム塩、又は同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含むとき、酸付加塩は、生で又は適当な不活性溶媒中のいずれかで前記化合物の中性形態を望ましい酸の充分量と接触させることによって、得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸、リン酸、リン酸一水素酸、リン酸ニ水素酸、硫酸、硫酸一水素酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導される前記酸付加塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p―トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸から誘導される前記酸付加塩が挙げられる。また、アルギネートなどのようなアミノ酸の塩、そして、グルクロン酸又はガラクツロン酸などのような有機酸の塩も挙げられる(例えばBerge et al., Journal of Pharmaceutical Science, 66: 1−19 (1977)を参照されたい)。本発明のある種の特定の化合物は、化合物を塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかへと変換させることができる塩基性官能基及び酸性官能基の両方を含む。化合物の中性形態は、好ましくは、塩を塩基又は酸と接触させ、そして従来の方法で親化合物を単離することによって、再生される。化合物の親形態は、特定の物理的性質、例えば極性溶媒における溶解度が様々な塩形態とは異なっているが、その他の点では、塩は、本発明のための化合物の親形態と等しい。
【0028】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態で本明細書において開示される化合物のうちのいずれかも提供する。本明細書記載の化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化して本発明の化合物を提供するそれらの化合物である。
【0029】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態で存在することができ、ならびに水和形態を含む溶媒和形態でも存在できる。一般的に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶質形態又は非晶質形態で存在し得る。一般的に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される用途に関して等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0030】
本発明の化合物は、このような化合物を構成する原子の1種又は複数種において、原子同位元素の不自然な比率も含み得る。例えば、前記化合物は、放射性同位元素、例えばトリチウム(H)、ヨウ素―125(125I)又は炭素―14(14C)によって放射性標識し得る。本発明化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性か否かに関わらず、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
組成物
【0031】
本発明は、多くのキレーター及びそれらの金属イオン錯体を提供する。一般的に、キレーターは、1個又は複数の母核として一緒に結合される複数のキレート剤を含む。1つの母核によって一緒に結合されるキレート部分は、オープンキレーターと呼び、一方、少なくとも1つの閉環が形成されるように2つの母核部分によって一緒に結合されるキレート部分は、クローズドキレーター(closed chelator)、巨大環、又は大環状キレーターと呼ぶことがある。
【0032】
多くの異なるタイプのキレート部分を、本明細書で開示されるキレート剤及び錯体において使用できる。例えば、1,2―HOPOは、有用なキレート部分である。Th(IV)―(1,2―HOPO)結晶は、pH7で水中で生ずる。HOPOユニットは、カテコレート及びヒドロキサム酸に比べてより酸性である。それらは、生理的pHでイオン化される「ハードな」金属イオンのための強力な選択的キレーターである。多座配位剤は、四価アクチニドAn(IV)に対して8―、9―又はそれより多い配位を達成すべきであり、また、生理的pH溶液中でAn(IV)に安定に結合すべきである。線状1,2―HOPOリガンドによるマウスからのPu(IV)の良好な除去は、3,4,3―LI(1,2―HOPO)との8配位を示した。
【0033】
典型的なキレーターは、八座3,4,3―LI(1,2―HOPO)であり、そしてそれは、Ann+及びAnOn+に関して、トランスフェリン、他の血漿タンパク質、カーボネート、フェリチン、骨ミネラルと熱力学的に、構造的に、そして動力学的に競争性である。注射された、注入された又は経口投与された3,4,3−LI(1,2−HOPO)は、CaNa―DTPAに比べて、齧歯動物から、より多くの注射又は吸入されたPu(IV)ならびにAm(III)を取り除く。腹腔内に注射された又は創傷中に浸透させた3,4,3−LI(1,2−HOPO)は、CaNa―DTPAに比べて、創傷部位及び身体から、Th(IV)、Pu(IV)又はAm(III)を取り除くのにはるかに有効である。注射又は経口投与されたFe(III)−3,4,3−LI(1,2−HOPO)は、Pu(IV)除去に関して、ネイティブなリガンドとほぼ同程度有効である。この薬剤は、骨ミネラルに吸収されたPu(IV)及びAm(III)に関して、効果的に競争し、極めて低い投与量(0.01〜0.1μmol/Kg)で有効である。それは、生理的pHで排出可能なアクチニドキレートを形成し、そして、有効薬量で、有用な経口活性と許容可能な低毒性を有する。
【0034】
開鎖八座リガンドDTPA及びそれらの誘導体の動力学的特性及びin vivo特性に関する良く定義された背景に基づいて、本明細書で開示される八座キレートは、トリウム、詳しくはα放射を介して壊変するそれらの同位元素のための抗癌キレーターとして理想的な設計である。これらは、金属に対して強い結合親和性と一緒に、より速い動力学を与えるように設計された開鎖で線状のキレーターでもある。低毒性も同様に別の重要な要件であり、それは、リガンド設計におけるキレート化単位のタイプ、リガンドマルチデンティシィティー(multidenticity)、及びトポロジーによって影響されることが、我々の過去の論文によって示されてきた。
【0035】
抗癌治療のためのアルファキレート剤の設計において考慮すべきいくつかのファクターがある。動力学とは別の重要論点のいくつかは、他の生物学的に重要な金属イオンに関して低い交換速度を有することを同時に必要とするターゲット金属(Th)に関する高親和性である。故に、我々のリガンド設計では、ターゲット金属及びリガンドの電子的性質を考慮し適合させる。キレートは、所望の金属に関して適当な配位空隙サイズ及び幾何学的形状も考えることができるべきである。この場合、Th(アクチニドイオン)は、「ハードな」カチオンであり、電荷の半径比に対する割合は大きい。それ故に、Thは、「ハードな」酸素及び負に帯電した酸素ドナーを好む。8以上の配位数は、高いデンティシティー(denticity)のリガンドを有する安定な錯体を形成する傾向があるので、アクチニドイオンによって一般的に好ましいが;トリウムの結合に対する選択性は、キレート化単位の我々の設計によって決まる。例えばDTPAのような有効ではあるが非選択的なアミノカルボン酸リガンドは、患者由来の重要な生物学的金属イオンを減少させることがあるので、深刻な健康問題を引き起こし得る。而して、キレート化単位の正しいタイプを選択することは、特定の金属イオンに対する高い選択性を達成する場合には、重要なファクターである。
【0036】
キレーターは、多数のキレート部分を含むことができる。特に有用なキレーターは、例えば、金属イオンで配位結合して錯体を形成する酸素のような6、8又は10個のヘテロ原子を提供するのに充分な多くのキレート部分を含む。酸素のようなヘテロ原子は、陽イオンと配位結合を形成するための電子密度を提供するので、前記ヘテロ原子は、「ドナー」と考えることができる。いくつかの実施態様では、キレーターの複数のキレート部分は、複数の酸素ドナーを含み、そして放射性核種は、酸素ドナーのうちの少なくとも1つを介してキレーターに対してキレート化される。いくつかの実施態様では、キレーターは、複数の酸素ドナーを含み、そして放射性核種は、複数の又はすべての酸素ドナーを介してキレーターに対してキレート化される。
【0037】
而して、一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分、(ii)リンカー、(iii)第一母核部分及び(iv)第二母核部分を含む巨大環とを含む錯体を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分及び第二母核部分に結合される。いくつかの実施態様では、巨大環は、3、4又は5つのキレート部分を含む。一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分、(ii)第一母核部分及び(iii)第二母核部分を含む巨大環とを含む錯体を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分及び第二母核部分に結合される。
【0038】
また、本発明は、本明細書記載のあらゆるキレーターの錯化されていない形態も提供する。而して、一つの態様では、本発明は、(i)複数のキレート部分、(ii)リンカー、(iii)第一母核部分及び(iv)第二母核部分を含む巨大環を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分及び第二母核部分に結合される。
【0039】
例示的な実施態様では、巨大環は、
【化1】


[式中、各キレート部分における各R、R、R、R及びR10は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18及び―NOから選択され;R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリールからそれぞれ独立に選択され;R17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成し;R、R、R、R及びR10のうちの少なくとも2つは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである環系を形成し;R及びRは、それぞれ独立に、H及び陰電荷から選択され;A、G及びJは、炭素及び窒素から独立に選択され;そして、その場合、(II)若しくは(III)におけるR及びRのうちの1つ又は(I)におけるR及びR10のうちの1つは第一母核部分への結合を含み、そして(II)又は(III)におけるR及びRの一方及び(I)におけるR及びR10の一方は第二母核部分への結合を含む]から独立に選択されるキレート部分を含む。
【0040】
いくつかの実施態様では、R及びRは、独立に、H、酵素に対して不安定な基、加水分解され易い基、代謝的に不安定な基、光分解性の基から選択される。
【0041】
いくつかの実施態様では、R及びRは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される。いくつかの実施態様では、R及びRは、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。例示的な実施態様では、R及びRはHである。
【0042】
例示的な実施態様において、R17及びR18は、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。
【0043】
いくつかの実施態様では、キレート部分のうちの1つは、以下の構造
【化2】


を有する場合、すべてのキレート部分は同じではない。いくつかの実施態様では、巨大環は、当業において公知のようにBH(2,2)CAMでない。例示的な実施態様では、キレート部分のすべてが、以下の構造を有するわけではない。
【化3】


いくつかの実施態様では、すべてのキレート部分は以下の構造を有する。
【化4】

【0044】
いくつかの実施態様では、すべてのキレート部分は以下の構造を有する。
【化5】

【0045】
例示的な実施態様では、すべてのキレート部分は、以下の構造を有する。
【化6】

【0046】
いくつかの実施態様では、下式
【化7】


のRは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18は、H及びアルキルから選択される]から選択される。いくつかの実施態様では、Rは、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。例示的な実施態様では、RはHである。
【0047】
例示的な実施態様では、構造(I)で、A、G及びJは、炭素である。いくつかの実施態様において、構造(II)では、Aは窒素であり、G及びJは炭素である。いくつかの実施態様において、構造(II)では、Jは窒素であり、A及びGは炭素である。いくつかの実施態様では、構造(III)で、A、G及びJは、炭素である。
【0048】
一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、そして(b)(i)以下の構造
【化8】


を有する複数のキレート部分、(ii)リンカー、(iii)第一母核部分及び(iv)第二母核部分を含む巨大環とを含む錯体を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分及び第二母核部分に結合される。R、R、R、R、R及びR10は、本明細書記載の通りである。例示的な実施態様では、R、R及びRはHである。一つの態様では、本発明は、放射性核種の非存在下で、巨大環それ自体、すなわち錯体を提供する。
【0049】
一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、(b)(i)以下の構造
【化9】


を有する複数のキレート部分、(ii)リンカー、(iii)第一母核部分及び(iv)第二母核部分を含む巨大環とを含む錯体を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分及び第二母核部分に結合される。R、R、R、R及びRは本明細書記載の通りである。
例示的な実施態様では、R及びRはHである。一つの態様では、本発明は、放射性核種の非存在下で、巨大環それ自体、すなわち錯体を提供する。
【0050】
一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、(b)(i)以下の構造
【化10】


を有する複数のキレート部分、(ii)リンカー、(iii)第一母核部分及び(iv)第二母核部分を含む巨大環とを含む錯体を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分及び第二母核部分に結合される。R、R、R、R及びRは本明細書記載の通りである。例示的な実施態様では、R及びRはHである。一つの態様では、本発明は、放射性核種の非存在下で、巨大環それ自体、すなわち錯体を提供する。
【0051】
また、本明細書記載の任意の巨大環の異性体と、放射性核種に対して錯化された異性体も提供する。一つの実施態様では、化合物は、下式(Ia):
【化11】


{式中、Lは―(CHCHO)mR31―を含み、そしてLは―(CHCHO)nR32―[前記式中m及びnは、0、1、2、3、4、5、6、7、8及び9から独立に選択される整数である]を含み;A、A、A、A、L、L、L、L、L、L、L、L10、R31及びR32は、独立に、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30は、独立に、結合、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;A、A、A及びAのうちの少なくとも1つは、
【化12】


[式中、A、G及びJは、独立に、炭素及び窒素から選択され;各R及びRは、独立に、H、酵素に対して不安定な基、加水分解され易い基、代謝的に不安定な基、光分解性の基及び一価の陰電荷から選択され;各R、R及びRは、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、ハロゲン、CN、CF、アシル、─SONR1718、─NR1718、─OR17、─S(O)17、─COOR17、─S(O)OR17、─OC(O)R17、─C(O)NR1718、─NR17C(O)R18、─NR17SO18、及び─NOから独立に選択され、R及びRは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである環系を形成し;そしてR17及びR18は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから独立に選択され;そしてR17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成する]から選択される}に従う構造を有する。本明細書で開示される対応するキレート部分及び母核のうちから、他の適当な置換基を使用できる。
【0052】
一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分、及び(ii)第一母核部分を含むキレーターとを含む錯体を提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分に結合され、また、各キレート部分は、
【化13】


[式中、各キレート部分における各R、R、R、R及びR10は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18及び―NOから選択され;R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;R17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成し;R、R、R、R及びR10のうちの少なくとも2つは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される環系を形成し;R及びRは、それぞれ独立に、H及び陰電荷から選択され;(2a)、(2b)、及び(3)におけるR及びRのうちの1つ、そして(1)におけるR及びR10のうちの1つは、第一母核部分に対する結合を含み、そしてその場合、少なくとも1つのキレート部分は、以下の構造
【化14】


を有する]から独立に選択される構造を有する。
【0053】
いくつかの実施態様では、R及びRは、独立に、H、酵素に対して不安定な基、加水分解され易い基、代謝的に不安定な基、光分解性の基から選択される。
【0054】
いくつかの実施態様では、R及びRは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される。いくつかの実施態様では、R及びRは、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。例示的な実施態様では、R及びRはHである。
【0055】
例示的な実施形態において、R17及びR18は、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。
【0056】
例示的な実施形態では、すべてのキレート部分が、以下の構造
【化15】


を有する。
【0057】
いくつかの実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、(2a)、(2b)、及び(3)におけるR又は(1)におけるR10は、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[前記式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択され;そして、(2a)、(2b)、及び(3)におけるR9又は(1)におけるR10が第一母核部分に結合される場合、Rは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[前記式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される。いくつかの実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、(2a)、(2b)、及び(3)におけるR又は(1)におけるR10は、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択され;そして、(2a)、(2b)、及び(3)におけるR又は(1)におけるR10が第一母核部分に結合される場合、Rは、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。例示的実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、(2a)、(2b)、及び(3)におけるR又は(1)におけるR10は、Hであり;そして(2a)、(2b)、及び(3)におけるR又は(1)におけるR10が第一母核部分に結合される場合、R6はHである。
【0058】
いくつかの実施態様では、R10は―C(O)NR1718である。いくつかの実施態様では、R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。いくつかの実施態様では、R17及びR18は、それぞれ独立に、H、アルキル、及びヘテロアルキルから選択される。
【0059】
例示的な実施態様では、錯体はリンカーを更に含む。
【0060】
一つの態様では、本発明は、放射性核種の非存在下で、キレーターを、すなわち錯体を提供する。
【0061】
一つの態様では、本発明は、(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分、(ii)リンカー、及び(iii)第一母核部分を含む巨大環とを含む第一キレーターとを提供し、そしてその場合、各キレート部分は第一母核部分に結合され、また、各キレート部分は、下式:
【化16】


[式中、各キレート部分における各R、R、R、R及びR10は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18、NOから選択され;R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;R17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成し;R、R、R、R、及びR10のうちの少なくとも2つは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される環系を形成し;R及びRは、それぞれ独立に、H及び陰電荷から選択され;各キレート部分におけるR及びRのうちの1つは、第一母核部分に対する結合を含む]から独立に選択される構造を有する。
【0062】
いくつかの実施態様では、R及びRは、独立に、H、酵素に対して不安定な基、加水分解され易い基、代謝的に不安定な基、光分解性の基から選択される。
【0063】
いくつかの実施態様では、R及びRは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される。いくつかの実施態様では、R及びRは、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。例示的な実施態様では、R及びRはHである。
【0064】
例示的な実施形態において、R17及びR18は、H及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。
【0065】
いくつかの実施態様では、キレート部分は、
【化17】


から選択される。
【0066】
いくつかの実施態様では、キレート部分は、
【化18】


から選択される。
【0067】
いくつかの実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、Rは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択され;そして、Rが第一母核部分に結合される場合、RはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される。いくつかの実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、RはH及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択され;そして、Rが第一母核部分に結合される場合、RはH及び(C、C、C、C、C又はC)アルキルから選択される。例示的な実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、RはHであり;そして、Rが第一母核部分に結合される場合、RはHである。例示的な実施態様では、Rが第一母核部分に結合される場合、Rはメチルであり;そして、Rが第一母核部分に結合される場合、Rはメチルである。
【0068】
例示的な実施態様では、錯体は、更に、第一キレーターと同じ構造を有する第二キレーターを含む。
【0069】
例示的な実施態様では、キレート部分は、すべてが同じわけではない。
【0070】
一つの態様では、本発明は、放射性核種の非存在下で、キレーターを、すなわち錯体を提供する。
母核部分
【0071】
「母核部分」は、本明細書で開示されるキレーター(例えば、オープンキレーター又は巨大環)のいずれかにおいて2つ以上のキレート部分を共有結合するのに有用なあらゆる部分である。例示的な実施態様では、本明細書で開示される任意の2つの母核部分は、複数のキレート部分を介して接続されて、巨大環を形成する。例示的な実施態様では、キレーターの1つ又は複数の母核部分は、リンカーによって置換される。一つの実施態様では、母核部分は、置換又は未置換のアルキル及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。一つの実施態様では、母核部分は、置換ヘテロアルキルである。一つの実施態様では、母核部分は、未置換ヘテロアルキルである。一つの実施態様では、母核部分は、リンカーによって置換されるヘテロアルキルである。一つの実施態様では、母核部分は、複数のリンカーによって置換されるヘテロアルキルである。例示的な母核部分としては、直鎖又は分岐鎖のエーテル及びアミンが挙げられる。
【0072】
他の例示的な母核部分としては:
【化19】


が挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
「X」は、キレート部分のための結合位置を表しており、例示的な実施形態では、窒素のようなヘテロ原子が挙げられる。而して、いくつかの実施態様では、Xは、NR’R’’[式中、R’及びR’’は、独立に、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18、―NOから選択される]であり;前記式中、R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;そしてその場合、少なくとも1つのR’又はR’’は、キレート部分に対する結合を含む。キレート部分は、任意の適当なリンカーを介して母核に結合できる。
【0074】
いくつかの実施態様では、母核部分は直鎖である。1つの例示的な母核部分は、X―(CH―X―(CH―X―(CH―Xであり、好ましくは、アルキル部分のうちの少なくとも1つにおいて、(例えばリンカーによって)置換される。すなわち、1つの例示的な母核部分は、スペルミン系である。他の例示的な母核部分としては、
【化20】


が挙げられ、そのうちのいずれかは、好ましくは、アルキル部分のうちの少なくとも1つにおいて(例えばリンカーによって)置換される。Xは、前のパラグラフに記載されているものである。
【0075】
X部分の少なくとも1つのための1つの好ましい部分は1,2―HOPOアミド部分であるが、当業者は、他のキレート部分を、任意の組み合わせで、任意に使用することも認めている。母核構造の各々において、アリール部分又はアルキル部分は、本明細書で定義される1個又は複数の「アリール基置換基」又は「アルキル基置換基」によって置換され得る。
【0076】
本明細書記載の任意のキレーターにとって特に有用な母核部分は、以下の構造;
【化21】


(式中、Z1a、Z2a、Z3a、Z4a及びZ5aは、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;そして、Z1a、Z2a、Z4a及びZ5aは、キレート部分のうちの1つに対する結合を含む)を有する。
【0077】
いくつかの実施態様では、Z3aは、置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキルである。いくつかの実施態様では、Z3aは、置換又は未置換の―(CH(CHCHO)(CH―[式中、m、n及びpは独立に1、2、3、4、5及び6から選択される整数である]である。いくつかの実施態様では、Z3aはエチルである。いくつかの実施態様では、Z3aは=Oによって置換されるエチルである。
【0078】
いくつかの実施態様では、Z1a、Z2a、Z4a及びZ5aは、Z’R20aN(H)C(O)Z’’,Z’R20aN(H)C(O)R21aZ’’及びZ’R21aZ’’(式中、Z’は第二母核部分に対する結合であり、Z’’は複数のキレート部分のうちの少なくとも1つに対する結合であり、R20aは置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され、そしてR21aは置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される)から選択される構造を有する。いくつかの実施態様では、R20aは、置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキル、及び置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)ヘテロアルキルから選択される。いくつかの実施態様では、R20aは、置換又は未置換のエチルから選択される。いくつかの実施態様では、R21aは、置換又は未置換の―(CHO―(式中、wは1、2、3、4、5及び6から選択される)から選択される。例示的な実施態様では、wは1又は3である。
【0079】
いくつかの実施態様では、Z1a、Z2a、Z3a、Z4a及びZ5aのうちの少なくとも1つは、リンカーによって置換される。
【0080】
本明細書の任意のキレーターにとって別の特に有用な母核部分は、以下の構造
【化22】


を有する。
【0081】
xは1、2、3及び4から選択される。例示的な実施態様では、xは1である。例示的な実施態様では、xは2である。例示的な実施態様では、xは3である。例示的な実施態様では、xは4である。
【0082】
及びYは、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。例示的な実施態様では、Y及びYはHである。
【0083】
は、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。
例示的な実施態様では、少なくとも1つのZは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、各Zは、独立に、置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキルである。例示的な実施態様では、各Zは、独立に、置換又は未置換のプロピル又はブチルである。いくつかの実施態様では、各Zは、独立に、置換又は未置換のヘテロアルキルである。
【0084】
例示的な実施態様では、各Zは、独立に、置換又は未置換の―(CH(CHCHO)(CH―[式中、m、n及びpは独立に1、2、3、4、5及び6から選択される整数である]である。例示的な実施態様では、各Zは、置換又は未置換の―(CHO(CH―である。
【0085】
及びZは、独立に、―C(O)―、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;そして、Z及びZのそれぞれは、キレート部分のうちの1つに対する結合を含む。
【0086】
例示的な実施態様では、Z及びZは―C(O)―である。
【0087】
別の有用な母核部分は、以下の構造:
【化23】


(式中、各Zは、独立に、O及びSから選択される)を有する。いくつかの実施態様では、Lは、―(CHCHO)31―[式中、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8及び9から選択される整数である]を含む。いくつかの実施態様では、mは0である。いくつかの実施態様では、mは1である。いくつかの実施態様では、Lは、―CHCHOCHCH―である。L、L、L、L及びR31は、独立に、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される。例示的な実施態様では、L、L、L、Lは、独立に選択される置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキルである。いくつかの実施態様では、R31は、置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキルである。例示的な実施態様では、L、L、L、Lは、独立に選択される置換又は未置換のエチルである。いくつかの実施態様では、R31は、置換又は未置換のエチルである。例示的な実施態様では、L、L、L、Lは、エチルであり、それらの1つ又は複数は、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるエチルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるエチルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるエチルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるエチルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるエチルである。いくつかの実施態様では、R40、R41、R42及びR43は、結合である。いくつかの実施態様では、R40、R41、R42及びR43は―(CHO―であり、式中wは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から選択される。例示的な実施態様では、wは3である。
【0088】
別の有用な母核は、以下の構造
【化24】


を有する。いくつかの実施態様では、Lは、―(CHCHO)31―[式中、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8及び9から選択される整数である]を含む。いくつかの実施態様では、mは0である。いくつかの実施態様では、mは1である。いくつかの実施態様では、Lは、―CHCHOCHCH―である。いくつかの実施態様では、Lは、―C(O)C(O)―である。L、L、L、L及びR31は、独立に、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される。例示的な実施態様、L、L、L、Lは、独立に選択される置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキルである。いくつかの実施態様では、R31は、置換又は未置換の(C、C、C、C、C又はC)アルキルである。例示的な実施態様、L、L、L、Lは、独立に選択される置換又は未置換のエチルである。例示的な実施態様、L、L、L、Lは、独立に選択される置換又は未置換のプロピルである。いくつかの実施態様では、R31は、置換又は未置換のエチルである。例示的な実施態様では、L、L、L、Lは、エチルであり、それらの1つ又は複数は、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるエチルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換される。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるプロピルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるプロピルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるプロピルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるプロピルである。いくつかの実施態様では、Lは、リンカーによって置換されるプロピルである。
【0089】
いくつかの実施態様では、母核は、以下から選択される:
【化25】


これらの構造のうちのいずれかにおいて、1個又は複数のメチル、エチル、プロピル又はブチルの部分は、1個又は複数のリンカーによって置換できる。いくつかの実施態様では、1つ又は複数のメチル、エチル、プロピル又はブチルの部分が1つ又は複数のリンカーによって任意に置換されるこれらの母核部分のうちの2つを使用して巨大環を形成する。
リンカー
【0090】
本明細書で使用される「リンカー(linker)」、「結合員(linking member)」、又は「結合部分(linking moiety)」は、第一部分を第二部分に対して、結合又は潜在的に結合させる、共有結合又は非共有結合させる部分である。特に、リンカーは、本明細書記載のキレーターを、例えばターゲティング部分のような別の分子に対して結合させるか又は潜在的に結合させることができる。いくつかの実施態様では、リンカーは、本明細書記載のキレーターを固体担体に対して、結合させるか又は潜在的に結合させることができる。目的の構造をリンカーに結合させるために、目的の構造上にある反応性官能基と更に反応できる反応性官能基を含むリンカーのことを、「官能化リンカー」と呼ぶ。例示的な実施態様では、リンカーは、官能化リンカーである。例示的な実施態様では、キレーターは、1個又は複数の官能化リンカーを含む。いくつかの実施態様では、リンカーは、ターゲティング部分を含む。いくつかの実施態様では、ターゲティング部分に対するリンカーは、ターゲティング部分に対する結合を含む。
【0091】
リンカーは、キレーターを、反応性官能基又はターゲティング部分、例えば抗体へと結合させる何らかの有用な構造であることができる。リンカーの例としては、0オーダー(0−order)リンカー(すなわち、結合)、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールが挙げられる。更なる例示的なリンカーとしては、置換又は未置換の(C、C、C、C、C、C、C、C、C又はC10)アルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、―C(O)NR’−、―C(O)O―、―C(O)S―及び―C(O)CR’R’’(式中、R’及びR’’は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、及び置換又は未置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである)が挙げられる。いくつかの実施態様では、リンカーは、少なくとも1個のヘテロ原子を含む。例示的なリンカーは、―C(O)NH―、―C(O)、―NH―、―S―、―O―などが挙げられる。例示的な実施態様では、リンカーは、反応性官能基によって置換されるヘテロアルキルである。
反応性官能基
【0092】
一つの実施態様では、リンカーは、反応性官能基(又は、同じ意味で使用される「反応性官能部分」)を含む。反応性官能基は、更に反応して、リンカーを、別の構造、例えばターゲティング部分又は固体担体に共有結合させることができる。本発明を実施する際に有用な反応性官能基及び反応の種類は、一般的に、生物複合体化学(bioconjugate chemistry)で公知のものである。本発明の反応性官能基によって利用可能な現在好ましい反応の種類は、比較的穏やかな条件下で進行するものである。これらの反応の種類としては、求核置換(例えば、アミン及びアルコールとハロゲン化アシル及び活性エステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)、及び炭素―炭素結合及び炭素―ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、ミカエル反応及びディールスアルダー反応)が挙げられるが、それらに限定されない。これらの及び他の有用な反応は、例えば、March, Advanced Organic Chemistry (3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1985); Hermanson, Bioconjugate Techniques (Academic Press, San Diego, 1996);及び Feeney et al., Modification of Proteins, Advances in Chemistry Series, Vol. 198 (American Chemical Society, Washington, D.C., 1982)で考察されている。
【0093】
いくつかの実施態様では、反応性官能基は、オレフィン、アセチレン誘導体、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、酸無水物、サルフェート、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸塩、エナミン、イナミン、尿素、イソ尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジ化物、アゾ化合物、アゾキシ化合物及びニトロソ化合物から選択される基を意味している。反応性官能基としては、生物複合体、例えば、N―ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなどを調製するために使用される基も挙げられる。これらの官能基のそれぞれを調製する方法は当業において公知であり、そして特定の目的のためのそれらの用途又は変更は、当業者の技能の範囲内である(例えば、Sandler and Karo, eds., Organic Functional Group Preparations, (Academic Press, San Diego, 1989)を参照されたい)。
【0094】
反応性官能基は、選択される反応相手に従って選択できる。例えば、活性エステル(例えばNHSエステル)は、リジン残基を介してタンパク質を標識するのに有用である。例えばマレイミドのようなスルフヒドリル反応性基を使用して、SH基(例えば、システイン)を運ぶアミノ酸残基を介してタンパク質に標識を付けることができる。抗体は、最初にそれらの炭化水素部分を(例えば、過ヨウ素酸塩によって)酸化し、そして得られたアルデヒド基を、ヒドラジン含有リガンドと反応させることによって、標識し得る。
【0095】
反応性官能基が、反応性リガンドを組み立てるのに必要な反応に参加しないように又は前記反応を妨害しないように、前記官能基は選択できる。あるいは、反応性官能基は、保護基によって反応に参加しないように、保護できる。当業者は、特定の官能基が、選択された反応条件のセットを妨害しないように、特定の官能基を保護する方法を理解している。有用な保護基の例については、例えば、Greene et al., PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照されたい。
アミン及びアミノ反応性基
【0096】
一つの実施態様では、反応性官能基は、アミン(例えば第一又は第二アミン)、ヒドラジン、ヒドラジド、及びスルホニルヒドラジドから選択される。アミンは、例えば、アシル化、アルキル化、又は酸化され得る。アミノ反応性基の有用な例としては、N―ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、硫黄―NHSエステル、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、アシリルハリド、アリールアジド、p―ニトロフェニルエステル、アルデヒド、スルホニルクロリド、チアゾリド、及びカルボキシル基が挙げられるが、それらに限定されない。
【0097】
NHSエステル及び硫黄―NHSエステルは、反応相手の第一(芳香族を含む)アミノ基と優先的に反応する。ヒスチジンのイミダゾール基は反応のために第一アミンと競争することは知られているが、反応生成物は不安定であり、容易に加水分解される。その反応は、NHSエステルの酸性カルボキシルをアミンが求核攻撃してアミドを形成させN―ヒドロキシスクシンイミドを放出することを含む。
【0098】
イミドエステルは例えばタンパク質のような分子のアミン基と反応させるための最も良い特異的なアシル化試薬である。7〜10のpHで、イミドエステルは、第一アミンとだけ反応する。第一アミンは、求核的にイミダートを攻撃して、中間物を生成させ、そしてその中間物は分解して、高いpHでアミジンを生成し、又は低いpHで新しいイミダートを生成する。新しいイミダートは、別の第一アミンと反応して2つのアミノ基を架橋させることができ、推定的に単官能のイミダートの場合、二官能的に反応する。第一アミンとの主たる反応生成物は、元のアミンに比べてより強い塩基であるアミジンである。而して、元のアミノ基の陽電荷は保持される。その結果、イミドエステルは、複合体の全体的な電荷に影響を及ぼさない。
【0099】
イソシアネート(イソチオシアネート)は、形状安定の結合に複合体成分の第一アミンと反応する。スルフヒドリル、イミダゾール及びチロシン基とのそれらの反応は、比較的不安定な生成物を生成する。
【0100】
反応相手の求核性アミンが、わずかにアルカリの条件(例えばpH8.5)下で、酸性カルボキシル基を攻撃する際に、アミノ特異的試薬としても使用される。
【0101】
1,5―ジフルオロ―2,4―ジニトロベンゼンのようなアリールハリドは、複合体成分のアミノ基及びチロシンフェノール基だけでなく、そのスルフヒドリル及びイミダゾール基とも優先的に反応する。
【0102】
カルボン酸のp―ニトロフェニルエステルも、有用なアミノ反応性基でもある。試薬特異性はあまり高くないが、α−及びε−アミノ基は、最も急速に反応するようである。
【0103】
アルデヒドは、複合体成分の第一アミン(例えば、リジン残基のε−アミノ基)と反応する。不安定であるにもかかわらず、シッフ塩基はアルデヒドを有するタンパク質アミノ基の反応に形成される。しかしながら、別の二重結合に共役するとき、シッフ塩基は安定である。両方の二重結合の共鳴相互作用は、シッフ結合の加水分解を防止する。更に、高い局所濃度のアミンは、エチレン二重結合を攻撃して、安定なマイケル付加物を形成させる。あるいは、安定した結合は、還元的アミノ化によって形成され得る。
【0104】
芳香族スルホニルクロリドは複合体成分の様々な部位と反応するが、アミノ基との反応は最も重要であり、結果として安定なスルホンアミド結合が得られる。
【0105】
遊離カルボキシル基は、水及び有機溶剤において可溶性のカルボジイミドと反応し、利用可能なアミンにカップリングできるイソ尿素を形成し、アミド結合を与える。例えばYamada et al., Biochemistry, 1981, 20: 4836−4842は、カルボジイミドでタンパク質を改質する方法を教示している。スルフヒドリル及びスルフヒドリル反応性基
【0106】
別の実施態様では、反応性官能基は、スルフヒドリル基(ジスルフィドへと転化され得る)及びスルフヒドリル―反応性基から選択される。スルフヒドリル―反応性基の有用な非限定的な例としては、マレイミド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル(ブロモアセトアミド又はクロルアセトアミドを含む)、ピリジルジスルフィド、及びチオフタルイミドが挙げられる。
【0107】
マレイミドは、形状安定のチオエーテル結合に優先して複合体成分のスルフヒドリル基と反応する。それらは、ヒスチジンの第一アミノ基とイミダゾール基ともずっと遅い速度で反応する。しかしながら、pH7において、マレイミド基は、スルフヒドリル特異的な基と考えることができる。なぜならば、このpHにおいて、単純なチオールの反応速度は、対応するアミンのそれに比べて1000倍速い。
【0108】
ハロゲン化アルキルは、スルフヒドリル基、スルフィド、イミダゾール、及びアミノ基と反応する。しかしながら、中性からわずかにアルカリ性のpHでは、ハロゲン化アルキルは、主にスルフヒドリル基と反応して、安定なチオエーテル結合を形成する。より高いpHで、アミノ基との反応は、有利である。
【0109】
ピリジルジスルフィドは、ジスルフィド交換を介して遊離スルフヒドリル基と反応して、混合するジスルフィドを生成する。
結果として、ピリジルジスルフィドは、比較的特定のスルフヒドリル反応性基である。
【0110】
チオフタルイミドは、遊離スルフヒドリル基と反応して、ジスルフィドも形成する。
他の反応性官能基
【0111】
の例示的な反応性官能基としては:
(i)N―ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p―ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族エステルを含むがこれらに限定されない、カルボキシル基及びそれらの様々な誘導体;
(ii)エステル、エーテル、アルデヒドなどへと転化され得るヒドロキシル基;
(iii)ハロゲン化物が、例えばアミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルボアニオン、又はアルコキシドイオンのような求核基によってによって置換され、それにより、ハロゲン原子の部位で新しい基の共有結合が生成し得るヒドロアルキル基;
(iv)例えばマレイミド基のようなディールスアルダー反応に参加することができるジエノフィル基;
(v)例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン又はオキシムのようなカルボニル誘導体の形成を介して、又は、グリニャール付加若しくはアルキルリチウム付加のような機構を介して、その後の誘導体化が可能であるようなアルデヒド又はケトン基;
(vi)例えば環状付加、アシル化、マイケル付加などを受けるアルケン;
(vii)例えばアミン及びヒドロキシル基と反応できるエポキシド;
(ix)ホスホラミダイト核酸合成において有用な他の標準的な官能基
(x)官能化されたリガンドと分子実体又は表面との間に共有結合を形成するのに有用な任意の他の官能基
が挙げられる。
非特異的反応性を有する官能基
【0112】
部位特異的反応性部分の使用に加えて、本発明は、キレーターをターゲティング部分に連結するために、非特異的反応性基を使用することを企図している。例えば、非特異的基としては、光活性化可能な基が挙げられる。
【0113】
光活性化可能な基は、暗所では理想的には不活性であり、光が存在している場合には、反応性核種へと転化する。一つの実施態様では、光活性化可能な基は、アジ化物の加熱時又は光分解時に発生するニトレンの前駆体から選択される。電子不足ニトレンは、極めて反応性であり、N―H、O―H、C―H及びC=Cを含む様々な化学結合と反応できる。3つのタイプのアジ化物(アリール、アルキル、及びアシル誘導体)を使用し得るが、アリールアジドが、目下のところ好ましい。光分解におけるアリールアジドの反応性は、C―H結合に比べて、N―H及びO―Hに関してより良好である。電子不足アリールニトレンは急速に環拡大して、デヒドロアゼピンを形成し、そして、それは、C―H挿入生成物を形成するよりもむしろ求核試薬と反応する傾向がある。アリールアジドの反応性は、例えばニトロ基又はヒドロキシル基のような電子吸引性置換基の存在下で、増大し得る。前記置換基は、アリールアジドの吸収極大をより長波長の方へ移動させる。未置換アリールアジドは260〜280nmの吸収極大を有し、一方、ヒドロキシ及びニトロアリールアジドは305nmを超える大量の光を吸収する。而して、ヒドロキシ及びニトロアリールアジドは、未置換アリールアジドに比べて、親和性成分に関してより有害でない光分解条件を使用出来るので、最も好ましい。
【0114】
別の好ましい態様では、光活性化可能な基は、フッ化アリールアジドから選択される。フッ化アリールアジドの光分解生成物はアリールニトレンであり、そしてそのすべては、高効率で、C−H結合挿入を含む、この基の特性反応を経験する(Keana et al., J. Org. Chem. 55: 3640−3647, 1990)。
【0115】
別の実施態様では、光活性化可能な基は、ベンゾフェノン残基から選択される。ベンゾフェノン試薬は、一般的に、アリールアジド試薬に比べて、より高い架橋収率を与える。
【0116】
別の実施態様では、光活性化可能な基はジアゾ化合物から選択され、そしてそれは、光分解時に電子不足カルベンを形成する。これらのカルベンは、C―H結合中への挿入、二重結合(芳香族系を含む)への付加、水素誘引(hydrogen attraction)及び求核中心との配位を含む様々な反応を経て炭素イオンを生成する。
【0117】
更に他の実施態様では、光活性化可能な基はジアゾピルベートから選択される。例えば、p―ニトロフェニルジアゾピルベートのp―ニトロフェニルエステルは、脂肪族アミンと反応して、ジアゾピルビン酸アミドを生成し、そしてそれは、紫外線光分解を経てアルデヒドを生成する。光分解したジアゾピルベート改変親和性成分は、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドの様に反応してタンパク質内架橋を形成する。
【0118】
例示的な実施態様では、リンカーは、キレーターをターゲティング部分に結合させる。すなわち、例示的な実施態様では、リンカーは、ターゲティング部分を含む。いくつかの実施態様では、キレーターは、ターゲティング部分に対するリンカーを含む。本明細書記載の任意のリンカーは、ターゲティング部分上にある反応性官能基と反応してリンカーをターゲティング部分に結合させることができる反応性官能基を含むリンカーであり得る。本明細書記載の任意のリンカーは、ターゲティング部分に対する結合を含むリンカーであり得る。用語「ターゲティング部分」とは、特定の位置又は分子に対して結合される分子を標的に向けるか又は導くように役立つ部分(例えば、キレーター、又は放射性核種に対してキレート化されるキレーター)を指している。而して、例えば、ターゲティング部分を使用して、特定の標的タンパク質又は酵素に対して、又は特定の細胞位置に対して、特定の細胞タイプに対して、又は病的組織に対して、分子を仕向けることができる。当業者には明らかなように、細胞内のタンパク質の局在化は、有効濃度を増加させるための単純な方法である。例えば、画像化剤及び/又は治療剤を核の中に往復輸送することにより、より小さな空間に前記薬剤を閉じ込め、それにより濃度を上昇させる。最後に、生理学的なターゲットを特定の区画に単純に局在化させることができ、そして前記薬剤を適当に局在化させなければならない。
【0119】
ターゲティング部分は、小分子(例えば、MW<500D)であることができ、非ペプチドとペプチドの両方を含む。ターゲティング部分の例としては、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質、特に抗体を含み、そしてそれは抗体フラグメントを含む)、核酸、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、ホルモン(タンパク質及びステロイドのホルモンを含む)、成長因子、レクチン、レセプター、レセプターリガンド、補因子なども挙げられる。ターゲティング部分の標的としては、例えば、相補核酸、レセプター、抗体、抗原又はレクチンが挙げられる。
【0120】
例示的な実施態様では、ターゲティング部分は、高い親和性で標的に結合できる。換言すれば、標的に対して高い結合親和性を有するターゲティング部分は、標的に関して高い特異性を有するか又は標的に対して特異的に結合する。いくつかの実施態様では、高い結合親和性は、約10〜7M以下の解離定数Kdによって付与される。例示的な実施態様では、高い結合親和性は、約10〜8M以下、約10〜9M以下、約10〜10M以下、約10〜11M以下、約10〜12M以下、約10〜13M以下、約10〜14M以下、又は約10〜15M以下の解離定数Kdによって付与される。化合物が、標的に関して高い結合親和性を有する例えばターゲティング部分のような部分を含む場合、化合物は、標的に関して高い結合親和性を有し得る。
【0121】
例示的な実施態様では、ターゲティング部分は抗体である。「抗体」とは、認識される免疫グロブリン遺伝子の全部又は一部によって実質的にコードされる1個又は複数のポリペプチドを含むタンパク質を意味している。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、例えば、ヒトでは、カッパ(κ)、ラムダ(λ)及びH鎖遺伝子座が挙げられ、そして、それらは、一緒になって、無数の可変部領域遺伝子及び定常域遺伝子ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、イプシロン(ε)及びアルファ(α)を構成し、そして、それらは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgE、及びIgAアイソタイプをコードする。本明細書記載の抗体は、完全長抗体及び抗体フラグメントを含むことを意図しており、そして、任意の微生物からの天然抗体、改変抗体、又は、更に以下で規定される実験的、治療的若しくは他の目的のために組換えで産生された抗体を意味し得る。抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv又は抗体の他の抗原結合性部分列が挙げられ、そして、抗体全体の修飾によって産生された抗体か、若しくは、組換えDNA技術を使用してデノボ合成された抗体を含むことができる。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方を指している。抗体は、アンタゴニスト、アゴニスト、中和性、阻害性、又は刺激性であることができる。
【0122】
動物の特定領域に化合物を局在化させるために、ターゲティング部分をキレーターに結合させることができると共に、ある種のキレーターは、動物の細胞、組織、器官又はいくつかの他の部分に関して自然な親和性を有する。例えば、本明細書で開示されるキレーターは、骨に関して自然又は固有の親和性を有するだろう。而して、いくつかの実施態様では、例えばオープンキレーター又は巨大環のようなキレーターは、ターゲティング部分又はターゲティング部分に対するリンカーを含まない。ターゲティング部分が無いキレーターは、特定のターゲティングを必要としない任意の方法で使用できる。
【0123】
いくつかの実施態様では、キレーターは、固体担体に対するリンカーを含む。すなわち、本明細書記載の任意のリンカーは、固体担体上にある反応性官能基と反応してリンカーを固体担体に結合させることができる反応性官能基を含むリンカーであり得る。本明細書記載の任意のリンカーは、固体担体への結合を含むリンカーであり得る。「固体担体」とは、キレーターとの結合又は会合に適する当な離散した独立部位を含むようにために改質できる任意の材料である。適当な担体としては、生分解可能なビーズ、非生分解性ビーズ、二酸化ケイ素ビーズ、磁気ビーズ、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、石英ビーズ、金属ビーズ、金ビーズ、雲母ビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。特に使用されるのは、酵素的分解によって系からゆっくり取り除かれる生分解性ポリマーを含む生体適合性ポリマーである。生分解可能な材料としては、澱粉、クロスリンク澱粉、ポリ(エチレングリコール)、ポリビニルピロリジン、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド―コ―グリコリド)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(DTHイミノカルボネート)、ポリ(ビスフェノールAイミノカーボネート)、ポリシアノアクリレート系繊維、ポリホスファゼン、それらの混合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。粒子を形成するための他の適当な物質が、存在し、使用できる。いくつかの実施態様では、担体は、架橋澱粉、例えば架橋された馬鈴薯澱粉を含むビーズである。澱粉から製造されるビーズは、典型的には、身体中において見出される天然に存在する酵素である血清アミラーゼによって、身体中において完全に生分解可能である。これらの実施態様では、キレーターは、任意に更に、ターゲティング部分、又はターゲティング部分へのリンカーも含む。固体担体に結合されるキレーターがターゲティング部分を含んでいない場合、キレーターは、実施者によって直接に、例えば、直接の外科的移植によって、局在化させることができる。
【0124】
いくつかの実施態様では、リンカーは、構造―L11―X(式中、L11は、結合、アシル、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;Xは、反応性官能基又はターゲティング部分である)を有する。
【0125】
いくつかの実施態様では、L11は、置換又は未置換のアルキル及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。いくつかの実施態様では、L11はヘテロアルキルである。いくつかの実施態様では、L11は、(C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19又はC20)アルキルであり、前記式中において、1、2又は3個の原子は、例えば窒素又は酸素のようなヘテロ原子で置換される。
【0126】
いくつかの実施態様では、Xは、―NH及び―CO(O)Hから選択される。
【0127】
いくつかの実施態様では、―L11―Xは、
【化26】


から選択される。
【0128】
例示的な実施態様では、Xはターゲティング部分である。
【0129】
例示的な実施態様では、リンカーは、ターゲティング部分に対するリンカーである。いくつかの実施態様では、ターゲティング部分は、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖、小分子、補因子、及びホルモンから選択される。例示的な実施態様では、ターゲティング部分は、抗体又は抗体フラグメントである。
【0130】
いくつかの実施態様では、リンカーは、脂肪族炭素鎖又はポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む。而して、リンカーは:
【化27】


から選択される構造を含むことができる。整数vは1〜20から選択され、wは1〜1,000又は1〜500又は1〜100又は1〜50又は1〜10の整数である。
【0131】
例示的なX基としては、OH、アルコキシ、そして以下の構造:
【化28】


(式中、R22は、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、及び置換又は未置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである)のうちの1つが挙げられる。整数vは1〜20から選択され、そしてwは1〜1,000又は1〜500又は1〜100又は1〜50又は1〜10の整数である。
【0132】
いくつかの実施態様では、リンカーは、以下の構造:
【化29】


[式中、Zは、H、OR23、SR23、NHR23、OCOR24、OC(O)NHR24、NHC(O)OR23、OS(O)OR23、及びC(O)R24から選択される]を有する。R23は、H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。R24は、H、OR25、NR25NH、SH、C(O)R25、NR25H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される。R25は、H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のアルキルから選択される。XはO、S及びNR26から選択され、R26はH、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである。整数j及びkは、独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20から選択されるメンバーである。いくつかの実施態様では、整数j及びkは、独立に、1、2、3、4、5、6から選択されるメンバーである。
【0133】
複数の反応性官能基を有するリンカーでは、別のリガンド成分への官能化スペーサー成分の結合を制御する反応に参加しないか又は妨害しないように、特定の官能基を選択できる。あるいは、反応性官能基は、保護基によって反応に参加しないように、保護できる。当業者は、特定の官能基が、選択された反応条件のセットを妨害しないように、特定の官能基を保護する方法を理解している。有用な保護基の例については、Greene et al., PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照されたい。
放射性核種
【0134】
本明細書で開示されるキレート部分を使用して、金属イオンを、特に放射性核種を結合させることができる。「放射性核種」又は「放射性同位体」という用語は、放射性崩壊を経る傾向がある不安定な核を有する放射性同位体又は放射性同位元素を意味している。多くの崩壊様式が当業において公知であって、α崩壊、陽子放出、中性子放出、二重陽子放出、自発核分裂、クラスター崩壊、β−崩壊、ポジトロン放出(β+崩壊)、電子捕獲、束縛状態β崩壊、二重β崩壊、二重電子捕獲、ポジトロン放出を有する電子捕獲、二重ポジトロン放出、異性体遷移、及び内部転換が挙げられる。
【0135】
例示的な放射性核種としては、崩壊中にα粒子を放出するα放出体が挙げられる。いくつかの実施態様では、放射性核種は、ガンマ線の放出体、又は、α粒子、電子及びポジトロンから選択される粒子である。
【0136】
いくつかの実施態様では、放射性核種は、アクチニドである。いくつかの実施態様では、放射性核種は、ランタニドである。いくつかの実施態様では、放射性核種は、3イオンである。いくつかの実施態様では、放射性核種は、4イオンである。いくつかの実施態様では、放射性核種は、2イオンである。
【0137】
本発明で提供される錯体において特に使用されるものは、U,Pu,Fe,Cu,Ce,Nd,Eu,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Yb,Lu,Y,Th,Zr,In,Ga,Bi,Ra及びAcの同位体から選択される放射性核種である。いくつかの実施態様では、これらの放射性核種のうちの1種又は複数種は除外される。いくつかの実施態様では、放射性核種は、ラジウム―223、トリウム227、ビスマス―213、ルテニウム―177、及びアクチニウム―225から選択される。他の有用な放射性同位体としては、ビスマス―212、ヨウ素―123、銅64、イリジウム―192、オスミウム―194、ロジウム―105、サマリウム―153、及びイットリウム―88、イットリウム90、及びイットリウム―91が挙げられる。例示的な実施態様では、放射性核種はトリウムであり、特にトリウム227及びトリウム―232から選択される。いくつかの実施態様では、トリウム―226は除外される。いくつかの実施態様では、Uは除外される。いくつかの実施態様では、ウラン―230は除外される。すなわち、いくつかの実施態様では、放射性核種はUではないか、又は、放射性核種はウラン―230ではないか、又は放射性核種はトリウム―226ではない。
【0138】
232Thは、α―放射体として自然に存在し、半減期は1.4 x 1010年である。
水溶液において、Th(IV)は、唯一酸化状態である。トリウム(IV)イオンは、Pu(IV)に比べて大きく、通常は、9以上の高い配位数を有する錯体を形成する。例えば、単純な二座1,2―HOPOとMe―3,2―HOPOの両方のTh(IV)錯体の結晶構造は、9座配位種と決定されてきた。
【0139】
他のアクチニドイオンと同様に、トリウム(IV)は、優先的に、酸素と、特に負の酸素ドナーリガンドと錯体を形成する。トリウム(IV)も、八座以上の多座配位子を好む:
【表1】

【0140】
本明細書で開示される化合物によって使用され得る診断的価値及び治療的価値を有する他の放射性核種は、例えば、米国特許第5,482,698号及び第5,601,800号;及びBoswell and Brechbiel, Nuclear Medicine and Biology, 2007 October, 34(7): 757−778 and the manuscript thereof made available in PMC 2008 October 1において見出すことができる。
用途
【0141】
本明細書で開示されるキレーター及び錯体は、多種多様な治療及び診断の装置で使用できる。
【0142】
一つの態様では、本発明は、本明細書で開示される錯体を動物に投与し、それによって疾患を改善又は取り除くことを含む、動物の疾患を治療する方法を提供する。
【0143】
一つの態様では、(a)本明細書で開示される錯体を投与する工程、及び(b)前記錯体によって発せられる信号の有無を検出する工程を含む、動物における疾患を診断する方法を提供する。いくつかの実施態様では、検出工程は、信号に基づく画像を得ることを含む。
【0144】
いくつかの実施態様では、疾患は癌である。
【0145】
いくつかの実施態様では、前記錯体は、ターゲティング部分に対するリンカーを含み、そして前記方法は、更に、ターゲティング部分をターゲティング部位に結合させることによって、動物におけるターゲティング部位に対して前記錯体を局在化させる工程も含む。
【0146】
本明細書で開示される化合物は、癌及び他の疾患の診断及び治療において使用するための安定で予め標識された抗体を調製するのに特に充分に適している。例えば、特異的な腫瘍又は腫瘍関連抗原に関して親和性を示す抗体を、診断用放射性核種錯化キレートで標識し、そして、その標識抗体を、凍結乾燥によって更に安定化させることができる。キレートを使用する場合、それは、一般的に、抗体に共有結合される。使用される抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであることができ、放射性核種標識抗体は、当業において公知の方法に従って、調製できる。調製法は、使用する放射性核種及び抗体のタイプによって決まる。安定で凍結乾燥された放射性標識抗体は、使用目的時に適当な希釈液によって再構成できるので、現場での調製法は大いに簡便化できる。黒色腫、大腸癌、乳癌、前立腺癌などと関連のある腫瘍に対して、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を含むがそれらに限定されない予め標識された抗体の多くのタイプを、本発明の方法を適用して安定化させることができる。前記抗体は、当業において公知であり、容易に利用できる。
合成
【0147】
本明細書で開示されるキレート部分を合成する方法は、当業において公知である。例えば、国際公開第WO/2008/008797号;米国特許第6,846,915号;第7,404,912号;及び第5,010,191号を参照されたい。キレーターの形成に関して、図1〜4は、ハロゲン又はアミンのような反応性官能基を含む母核部分を、キレート部分の共有結合になる反応性官能基を有するキレート部分と反応させることができる概略図を示している。
【0148】
任意の母核部分は、例えば官能化リンカーのような少なくとも1つのリンカーによって誘導体化できる。而して、一つの例示的な実施態様では、官能化リンカーのようなリンカーは、母核部分に結合され得る。別の例示的な実施態様では、官能化リンカーのようなリンカーは、キレート部分に結合される。官能化リンカーは、反応して、ターゲティング部分と結合する。リンカーは、化合物内の任意の他のリンカーに結合することもできる。
【0149】
リンカーを含む母核部分は、以下の例示的な方法によって調製できる。
【化30】


スキーム1.1.カルボキシル官能化H22キャップ―アミンに関する逆合成経路図
【0150】
他の官能化母核としては、キラル炭素がH22―アミンの中心エチレン橋上に配置されている母核が挙げられる。そのような母核への例示的な経路は、2,3―ジアミノプロピオン酸から始まる。前記プロピオン酸のカルボキシル基は、アミノ主鎖に直接に結合していて極めて強固なジオメトリーを形成しているので、最終的なタンパク質結合に柔軟性を提供するために、延伸されたカルボキシル鎖が必要とされる。母核への合成スキームは、以下のスキーム1.2に示してある。
【化31】


スキーム1.2
【0151】
この合成に関するバリエーションは、ニトロフェニルアラニン又はBOC―アミノ基の使用を含み、そしてそれは、カルボキシル基へと任意に変換される。これらの母核への合成経路は、以下のスキーム1.3及び1.4に示してある。
【化32】


スキーム1.3
【化33】


スキーム1.4
【0152】
HOPOキレート部分に関する一つの懸念は、いくつかの形態又は別の形態で保護せずに、抗体のようなターゲティング部分に対して前記キレート部分を結合させることが困難かもしれないという点である。HOPOキレート部分の保護/脱保護に関する一つのアプローチは、カップリング反応において金属錯体を使用し、次いで、カップリング後に、金属錯体―抗体複合体から金属を除去して、放射性核種のための場所を空ける方法である(トランスメタル化)。別のアプローチは、HOPOキレート部分合成においてベンジル保護基の代わりにオルト―ニトロベンジルを使用し、そして、潜在的なキレート部分を抗体にカップリングさせた後に、これを光脱保護する方法である。
【0153】
1つ又は複数のキレート部分を脱保護し、活性化させ、そして、1つ又は複数の母核へと結合させるための追加の指針は、例えば、米国特許第5,624,901号;第6,406,297号;第6,515,113号及び第6,846,915号;米国特許出願公開第2008/0213780号;第2008/0213917号及び第2010/0015725号;及びPCT/US2010/046517において見出すことができる。
【0154】
例示的なオープンキレーター及び巨大環(それらのうちのいずれかはリンカー(例えば、官能化リンカー、又はターゲティング部分を含むリンカー)によって誘導体化できる)は、本出願全体を通して開示されている。
実施例
実施例1
1,2―HOPOトリ大環状キレーターの合成
【0155】
本発明の化合物及び錯体は、一般的に公知の合成法の適当な組み合わせによって合成される。本発明の化合物を合成する際に有用な技術は、当業者には容易に理解され且つ利用可能である。下記の考察は、本発明の化合物を組み立てる際に使用するのに利用可能な多様な方法のうちの特定の方法を例示するために提示してあり、本発明の化合物を調製する際に有用である反応又は反応シーケンスの範囲を制限することを意図していない。
【0156】
図3及び図4は、1,2―HOPO巨大環を合成するための1つの可能な多段合成経路を示している。
メチル2―ブロモ―3―エチルアセトキシ―6―ピリジンカルボキシレート(B)
【0157】
1モル当量のメチル2―ブロモ―3―ヒドロキシ―6―ピリジンカルボキシレートA(Kelly, T.R.; Lang, F. J. Org. Chem. 1996, 61, 4623−4633記載のように調製)と、炭酸カリウム(3モル当量)と、そして無水アセトニトリルとの混合物に対して、2―ヨード酢酸エチル(Aldrich Chemical Company製、1.5モル当量)を加える。その得られた懸濁液を、出発原料が消費されたことが薄層クロマトグラフィーで判断されるまで、数時間、還流状態で加熱する。溶媒を回転蒸発によって除去し、そしてその残留物をジクロロメタンと水の中に溶かした。溶媒を分離し、ジクロロメタン画分を回転蒸発によって濃縮し、そして、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物Bを得た。
メチル2―ブロモ―3―エチルアセトキシ―6―ピリジン―N―オキシドカルボキシレート(C)
【0158】
メチル2―ブロモ―3―エチルアセトキシ―6―ピリジンカルボキシレートBをジクロロメタンに溶かし、そして、その溶液に、3―クロロペルオキシ安息香酸(3モル当量)を、周囲温度で撹拌しながら加える。薄層クロマトグラフィーによって反応終了を確認した後に、その反応混合物を、回転蒸発によって濃縮し、水で洗浄する。有機相を更に濃縮し、生成物Cを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、精製する。
1―ヒドロキシ―3―アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)ピリジノン(D)
【0159】
メチル2―ブロモ―3―エチルアセトキシ―6―ピリジン―N―オキシデカルボキシレートCを、テトラヒドロフランと10%水性KOHとの溶液中に溶かす。得られた溶液を80℃で加熱し、そして薄層クロマトグラフィーによって加水分解反応をモニターする。反応が完了したら、テトラヒドロフランを減圧下で取り除く。得られた混合物を氷浴中で冷却し、そして、溶液のpHが2に達するまで、濃HClで処理する。得られた固体を濾過して分離し、希釈HClで、次いで冷水で洗浄し、そして、真空中で乾燥させると、化合物Dが得られる。
1―ベンジルオキシ―3―アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンジベンジルエステル(E)
【0160】
1―ヒドロキシ―3―アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)ピリジノン(D)及び無水炭酸カリウム(3モル当量)を、DMF中塩化ベンジル(3モル当量)と混合する。その混合物を、1日間80℃で加熱してから、濾過し、そしてその濾液を乾燥するまで蒸発させる。その残留物を、4Mの水性炭酸カリウムとジクロロメタンとに分配する。水相はジクロロメタンで抽出し、混合有機相は回転蒸発によって濃縮する。化合物Dは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。
1―ベンジルオキシ―3―アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンベンジルエステル(F)
【0161】
1―ベンジルオキシ―3―アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンジベンジルエステル(E)を、テトラヒドロフランと水との溶液中に溶かす。KOH(1モル当量)は加え、その溶液を、周囲温度で撹拌し、薄層クロマトグラフィーによって加水分解反応をモニターする。反応が完了したら、テトラヒドロフランを減圧下で取り除く。得られた混合物を氷浴中で冷却し、そして、溶液のpHが2に達するまで、濃HClで処理する。得られた固体を濾過によって単離し、希釈HClで、次いで冷水で洗浄し、そして真空中で乾燥させると、化合物Fが得られる。
1―ベンジルオキシ―3―[2―メルカプトチアゾール]アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンベンジルエステル(G)
【0162】
1―ベンジルオキシ―3―アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンベンジルエステル(F)を、無水ジオキサン中に溶かす。塩化チオニル(1.2モル当量)及び1滴のジメチルホルムアミドを加え、その溶液を還流しながら撹拌し、そして、薄層クロマトグラフィーによって反応をモニターする。反応が完了したら、すべての溶媒を減圧下で除去し、そして残留物を真空中で乾燥させる。得られた残留物を乾燥テトラヒドロフラン中に溶かし、そして、それを、氷浴中で冷却されているテトラヒドロフラン中2―メルカプトチアゾリン(1.1モル当量)とトリエチルアミン(1.1モル当量)との溶液に対して滴下して加える。反応が完了したら、すべての溶媒を減圧下で除去し、そして、その残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物Gを得る。
テトラキス(2―[1―ベンジルオキシ―3―アセトキシイル―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンベンジルエステル]エチル)エチレンジアミン(I)
【0163】
1―ベンジルオキシ―3―[2―メルカプトチアゾール]アセトキシ―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンベンジルエステル(G)を、無水ジクロロメタンに溶かす。テトラキス(2―アミノエチル)エチレンジアミン(H、0.25モル当量、Wagnon, B.K.; Jackels, S.C. Inorg. Chem. 1989, 28, 1923−1927)とトリエチルアミン(4モル当量)との溶液を加え、その溶液を周囲温度で撹拌し、そして、その縮合反応を、薄層クロマトグラフィーによってモニターする。反応が完了したら、すべての溶媒を減圧下で除去し、そして残留物を真空中で乾燥させる。得られた残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物Iを得る。
テトラキス(2―[1―ベンジルオキシ―3―アセトキシイル―6―{2―メルカプトチアゾール}カルボキシ―2(1H)―ピリジノン]エチル)エチレンジアミン(J)
【0164】
テトラキス(2―[1―ベンジルオキシ―3―アセトキシイル―6―カルボキシ―2(1H)―ピリジノンベンジルエステル]エチル)エチレンジアミン(I)を、テトラヒドロフランと水との溶液中に溶かす。KOH(4モル当量)は加え、その溶液を、周囲温度で撹拌し、薄層クロマトグラフィーによって加水分解反応をモニターする。反応が完了したら、テトラヒドロフランを減圧下で除去する。得られた混合物を氷浴中で冷却し、そして、溶液のpHが2に達するまで、濃HClで処理する。得られた固体を濾過によって単離し、希釈HClで、次いで冷水で洗浄し、そして真空中で乾燥させる。得られた残留物は、無水ジオキサン中に溶かす。塩化チオニル(4.8モル当量)及び1滴のジメチルホルムアミドを加え、その溶液を還流しながら撹拌し、そして薄層クロマトグラフィーによって反応をモニターする。反応が完了したら、すべての溶媒を減圧下で除去し、残留物を真空中で乾燥させる。得られた残留物を乾燥テトラヒドロフラン中に溶かし、そして、それを、氷浴中で冷却されているテトラヒドロフラン中2―メルカプトチアゾリン(4.4モル当量)とトリエチルアミン(4.4モル当量)との溶液に対して滴下して加える。反応が完了したら、すべての溶媒を減圧下で除去し、そして、その残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物Jを得る。
トリ大環状化合物(L)
【0165】
テトラキス(2―[1―ベンジルオキシ―3―アセトキシイル―6―{2―メルカプトチアゾール}カルボキシ―2(1H)―ピリジノン]エチル)エチレンジアミン(J)を、丸底フラスコにおいて、950mLのクロロホルムに溶かす。[5―アミノ―6―((2―アミノ―エチル)―{2―[ビス―(2―アミノ―エチル)―アミノ]―エチル}―アミノ)―ヘキシル]―カルバミド酸tert―ブチルエステル(K)(1モル当量、国際公開第WO2008/063721号)の遊離塩基形態を、分離丸底フラスコにおいて、トリエチルアミン(12モル当量)と、クロロホルムと、そしてイソプロピルアルコールとの中に溶かす。J及びKの溶液(約3〜4mM)を、同時に、追加のジクロロメタン(J及びKの溶液の総体積の4倍)とトリエチルアミン(3モル当量)とを含む三口丸底フラスコに対して、8〜10日にわたって加える。ポリマー副産物を最少にするために高希釈条件を維持する必要がある。反応が完了したら、すべての溶媒を減圧下で除去し、そして、その残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物Lを得る。
トリ大環状化合物(M)
【0166】
トリ大環状化合物(L)を、酢酸中12N HClの50%溶液中に溶かす。その溶液を2日間の周囲温度で撹拌する。反応が完了したら、固体を濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮して化合物Mを得る。
実施例2
タンパク質結合1,2―HOPOトリ大環状キレーターの合成
【0167】
図5は、ターゲティング部分をキレーターに結合させるための1つの可能な多段階合成経路を示している。
トリ大環状化合物(W)
【0168】
オルト―ニトロベンジルブロミド(Aldrich Chemicals製)を、合成時に、塩化ベンジルで置換することは除いて、化合物Lに関して上記したようにして、トリ大環状化合物(W)を調製する。
トリ大環状化合物(X)
【0169】
トリ大環状化合物(W)を、ジクロロメタン中トリフルオロ酢酸10%溶液に溶かす。その溶液を、約4時間、氷浴中で撹拌する。反応が完了したら、その溶液を減圧下で濃縮する。その残留物をジメチルホルムアミドに溶かし、ジイソプロピルエチルアミン(3モル当量)及びグルタル酸無水物(2モル当量)を加え、そしてその反応をHPLCでモニターする。反応が完了したら、反応を酢酸で中和し、溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を極少量のジメチルホルムアミド中に溶かし、そしてその溶液をジエチルエーテルに加える。得られた沈殿物を濾過し、真空中で乾燥させて化合物Xを得る。
トリ大環状化合物タンパク質複合体(Y)
【0170】
トリ大環状化合物(X)を無水ジメチルホルムアミドに溶かす。N―ヒドロキシスクシンイミド(1.5モル当量)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(3モル当量)を加え、そしてその溶液を数時間撹拌する。得られた溶液を、0.4MのNaHCO3バッファー(pH 9.0)中タンパク質(0.1〜0.5モル当量)溶液に加え、その得られた溶液を数時間混合する。得られたタンパク複合体を、あらゆる未反応のトリ大環状化合物から分離し、次いで、サイズ除外カラムを使用して0.1MのTRIS(pH7.0)へとバッファー交換するか又はバッファー交換して、精製されたタンパク質複合体Yを得る。
トリ大環状化合物タンパク質複合体(Z)
【0171】
トリ大環状化合物タンパク質複合体(Y)を、紫外線ランプを使用して、10〜30分間、320nmで照射する。得られたタンパク複合体を、あらゆるオルト―ニトロソベンズアルデヒド副生物から分離し、次いで、サイズ除外カラムを使用して新鮮な0.1MのTRIS(pH7.0)へとバッファー交換して、精製されたタンパク質複合体Zを得る。
実施例3
MeBH(2,2)IAMの結晶構造
【0172】
フラッシュシリカカラム精製から得られる生のMeBH(2,2)IAMは、2つの成分の混合物であり、そしてそれは、シリカTLCプレートにおいて2つの離散したスポットを示す。より高いRfを有する1つの成分を分離し、次いで、MeBH(2,2)IAMのメタノール溶液中へとエーテルを蒸気拡散させることによって、X線品質の結晶を得た。
【化34】

【0173】
図6に示してある結晶構造は、この巨大環が、そのポケットの中心に塩化物アニオンゲストをホストすることを示している。塩化物アニオンは、この巨大環の調製のプロセスにおいて導入された。
実施例4
H(2,2)―1,2―HOPO錯体の結晶構造
【化35】

【0174】
H(2,2)―1,2―HOPOは、ランタニド及びアクチニド金属イオンを捕捉するために開発される最も強力な八座リガンドのうちの1つである。H(2,2)―1,2―HOPOは、アクチニド及びランタニドイオンに強い親和性を有するが、その金属錯体の結晶構造に関する報告は無い。近時、我々は、等量のH(2,2)―1,2―HOPOとCe(acac)とのメタノール溶液を混合することによって、Ce(IV)―H(2,2)―1,2―HOPO錯体を調製した。X線品質の結晶は、上記メタノール溶液中にジエチルエーテルを拡散させることによって得られた。図13〜15は、Ce(IV)―H(2,2)―1,2―HOPOの結晶構造を示している。
実施例5
Lumi4(登録商標)―NH金属イオン錯体の質量分析法
【化36】

【0175】
Lumi4(登録商標)―NHと、次のカチオンFe(III)、Ga(III)、Y(III)、Zr(IV)、In(III)、Nd(III)、Sm(III)、Eu(III)、Gd(III)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、Yb(III)、Lu(III)及びTh(IV)との錯体を調製した。すべてのこれらのカチオンは、放射線治療又は放射線撮像のために使用されてきた又は現在使用されている同位体を有する。Anderson, C. J.; Welch, M. J. Chem. Rev. 1999, 99: 2219−2234.上記カチオンを使用している錯体は、以下の方法を使用して調製した。Lumi4(登録商標)―NHの溶液を、このロット(RCG23―DO2)の重量%を基準として100μMの濃度で、乾燥HPLC等級のメタノール中で調製した。カチオンの溶液は、水又は乾燥HPLC等級メタノール中においてミリモル濃度(10〜100mM)で調製した。Lumi4(登録商標)―NH(50nmol)の各溶液に対して、各金属カチオン溶液の1.01当量(〜50.5nmol)を加え、混合し、そして、10分間平衡化させ、続いて、乾燥ピリジンを一滴加えた。すべての溶液を、高真空下で凍結乾燥させた。得られた粉末を、カリフォルニア大バークレー校のQB3/化学質量分析施設(UC Berkeley QB3/Chemistry Mass Spectrometry Facility)において、エレクトロスプレーイオン化―質量分析法(ESI―MS)で調べた。Lumi4(登録商標)―NHZr(IV)及びTh(IV)錯体を、ESI―MSポジティブモード(MH)で分析した。残留Lumi4(登録商標)―NH錯体を、ネガティブモード(M)でESI―MSによって分析した。
【0176】
図16及び17において、金属のうちの2つの金属に関する代表的なESI―MSスペクトルは、各錯体に関して、実験データ(上)対計算された同位体パターン(下)を示している。これらのスペクトル、ならびにここでは示されていない他のスペクトルは、これらの錯体が作られたことを実証している。しかしながら、いつかのスペクトルは、予測されるものに比べて、より多くのピークが生じる干渉化合物を示唆している。これらの干渉種は、バックグラウンドアーチファクトであり得る(それらは分析する日によって変化する)。この現象は、ネガティブモードESI―MS分析では日常的に起こる(メモリー効果及びイオン抑制)。表1は、収集したESI―MSスペクトルの要約であり、各Lumi4(登録商標)―NH錯体に関する、実験での主要な同位体、予測された主要な同位体、及びそれら2つの値の差を比較している。得られたすべての値は、2ppm以内の高分解能値である。
【表2】


実施例6
Lumi4(登録商標)―NH金属イオン錯体の発光
【0177】
更に、光ルミネセンススペクトルと特性も、0.1MのTRISバッファー(pH=7.4)中77μM濃度のLumiphore(登録商標)―NHEu(III)及びDy(III)錯体に関して考慮した。ルミネッセンススペクトルの収集も、錯体形成を示唆している。これらの条件下での励起(及びLn(III)のその後の発光)は、Ln(III)がキレーター/発色団(Lumiphore(登録商標)―NH)中へと完全にカプセル化されない場合、検出するのは困難であると考えられる。
【表3】


実施例7
Tb―Lumi4(登録商標)―NHに関する動力学的データ
【0178】
動力学的関連発光測定を、Tb―Lumi4(登録商標)―NHの錯化速度を決定する意図を持って行い、そして、Zr(IV)―Lumi4(登録商標)―NHの形成速度を推定した。測定は、次の条件下で行った:3.00mLの20.0mM HEPESバッファーI=0.10M NaCl中1μM(3nmol)Lumiphore(登録商標)―NH。その溶液に、濃縮水性(3.00mM)Tb(III)を加えて、1μM Lumi4(登録商標)―NHに対して、次の濃度下で、すなわち10、20、30、40、50及び100μM Tb(III)下で、データを集めた。得られた曲線は、複数のイベント(4〜5)を示していた(図18)。にもかかわらず、リガンド蛍光の消光と、Tb(III)発光の増大を、Carey Eclipse Fluorometer (Varian, Inc.)を使用して、20nmバンドパス、340nm(10nmバンドパス)での励起を使用して、それぞれ420及び545nmでモニターした。強度データは、0.1sの積分時間で0.5s間隔で集めた。実験を開始し、Tb(III)アリコートを、3.00mLのLumi4(登録商標)―NH溶液に迅速に加えて、完全に混合した。形成の全体の速度定数は、10μM Tb(III)に対して1μM Lumi4(登録商標)―NHの条件下で、<0.1s−1であると推定された。
実施例8
オリゴヌクレオチド―Lumi4キレート複合体と様々な金属カチオンとの錯化を示しているゲル電気泳動法アッセイ
【0179】
Lumi4(登録商標)は、金属カチオン(ランタニド系列の金属カチオンを含む)に選択的に配位結合するイソフタルアミド類大環状キレートである。例えば放射性同位体をサイト指向(site−directing)分子に結合させるための二官能キレート剤として作用させるような特定の用途のために、前記キレートは、動力学的に容易で且つ熱力学的に安定な仕方で、対象の金属イオンに配位結合できる必要がある。この種の用途に関するLumi4(登録商標)の有用性を証明するために、サイト指向分子と結合した後、金属カチオンに配位結合するLumi4(登録商標)の能力を、ゲル電気泳動法アッセイ(図19)を使用して評価した。この実験では、Lumi4(登録商標)と小さい(18塩基長)DNAオリゴマーとの複合体を、金属カチオンを含む溶液で処理した。次いで、ポリアクリルアミドゲル上の前記複合体の電気泳動移動度を、金属カチオンの溶液に曝露されなかった複合体のそれと比較した。このフォーマットの金属配位は、ゲル電気泳動移動度シフトによって示唆され、その結果として、金属錯化時に形成されるより重く且つより陽電化の種は、よりゆっくりと移動することが分かった。更なる比較を提供するために、Lumi4(登録商標)と結合していないDNAオリゴマーのゲル電気泳動移動度を、同一条件下で、金属カチオン溶液に曝露した場合と、曝露しなかった場合で測定した。
【0180】
特に、DNAオリゴマー(6μL、5μM、すべて最終濃度)の溶液を、金属カチオン溶液(2μL、250μM)又は等量の水と混合した。その溶液を、5分間、55℃でインキュベートし、次いで、周囲温度まで冷却し、そして50%ホルムアミド溶液(7μL)を加えた。得られた溶液を、再び5分間、55℃まで加熱し、次いで、短時間に−20℃まで冷却した。次いで、その溶液を、8Mの尿素を含む20%ポリアクリルアミドゲルに塗布した。89mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)と、89mMのホウ酸塩と、そして2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)とを含む市販の泳動バッファー(Ambion AM9863)を使用して、ゲル電気泳動法を約2時間行った。電気泳動終了後、ゲルを、ガラス板から除去し、12.5mg/mLのStains−All(登録商標)(Sigma Chemicals製)を含む50%ホルムアミド溶液中にそのゲルを浸漬した。染色した後、ゲルを、2時間、脱イオン水中で汚れを除去し、市販のスキャナー(HP Officejet(登録商標)J5750)を使用して画像化した。
【0181】
ゲルの検査により、オリゴヌクレオチド―Lumi4(登録商標)複合体は、金属カチオン溶液による処理の後では、よりゆっくりと移動することが分かる。対照的に、未修飾のオリゴヌクレオチドのゲル移動度は、金属カチオン処理によって影響を受けない。これらのデータから、Lumi4(登録商標)キレートは、DNAオリゴマーに対して結合されると、試験される金属カチオンに容易に配位結合して、競争するキレートEDTAの存在下での電気泳動時でも、安定な錯体を形成することが分かる。要約すると、我々の知見は、Lumi4(登録商標)は、サイト指向基に結合すると、ランタニド系列を含む様々 な金属カチオンと容易に配位結合することを示唆している。
オリゴヌクレオチド―Lumi4(登録商標)複合体の合成(2)
【0182】
配列5’−AAGGTCATCCATGACAAC−3’を有するDNA18―塩基オリゴヌクレオチド(1)を、購入し(ベルギー国スランにあるEurogentec, Inc.から)、逆相HPLCを使用して精製した。そのオリゴヌクレオチドを、ホスホジエステル結合を介して5’−末端に結合されたアミノプロピル基を有するように、合成中に、修飾した。水中DNAオリゴマー溶液(75μL、50nmol)を、エッペンドルフチューブにおいて、重炭酸ナトリウムバッファー(0.8M、100μL)で希釈した。無水DMF(50μL)中Lumi4(登録商標)―N―ヒドロキシスクシンイミド(839nmol)の溶液を、新たに調製し、それを、DNAオリゴマーに加え、そして、それを、周囲温度で10時間、市販の装置(エッペンドルフ製Mixmate(登録商標))を使用して、800回転/分で混合した。そのエッペンドルフチューブを、10分間、12,000回転/分で遠心分離し、上澄みを、新しいエッペンドルフチューブにデカントした。得られたペレットを、水(75μL)で洗浄し、そして上記のように遠心分離し、上澄みをデカントした。その混合した上澄みに対して、3M酢酸ナトリウム中グリコーゲン(350μg/mL)溶液(34μL)(pH5.2)を加えた。その溶液を、ボルテックスし、無水エタノール(1mL)を加え、そしてそのチューブを、3時間、−20℃で保存した。そのエッペンドルフチューブを、30分間、12,000回転/分で遠心分離し、上澄みをデカントし、得られたペレットを、冷70%水性エタノール(1mL)で洗浄した。その上澄みをデカントし、そしてペレットを風乾させた。そのペレットを滅菌水(50μL)に溶かし、アリコート(5μL)を、取り出し、そして181,600M−1cm−1の260nmにおける吸光係数を使用して紫外可視吸光度によって定量した。得られたストックは、730μM(収率73%)の濃度を有することが分かった。複合体への変換率が95%を超えていることが、20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分析から推定された。複合体は、更なる精製をせずに使用された。図20は、オリゴヌクレオチド―Lumi4(登録商標)複合体の合成に関するスキームを示している。
金属イオンストックの調製
【0183】
一般的に、金属カチオンの塩化物塩を、50mMクエン酸ナトリウム(pH5)に溶かして、25mMカチオンの初期ストックを提供する。これらのストックを、滅菌水中で2.5mMまで希釈した。Th(IV)硝酸塩の場合、25mMのストックを、メタノール中で調製し、そしてそれを、追加のメタノールを使用して2.5mMまで希釈した。銅及びガリウムに関しては、酢酸Cu(II)及び硝酸Ga(III)を使用した。
【0184】
本明細書で使用される冠詞「a」、「an」及び「the」は、特に断りが無い限り、対象となる語の複数を除外しない。接続詞「又は」は、特に断りが無い限り、相互に排他的ではない。
用語「含む」は、非網羅的な例を指すために使用される。
【0185】
任意の添付物も含む本明細書に記載されている、すべての引例、刊行物、特許出願、登録特許、受入記録(accession records)及びデータベースは、すべての目的のために、参照により本明細書に完全に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分、(ii)リンカー、(iii)第一母核部分、及び(iv)第二母核部分を含む巨大環とを含む錯体であって、そしてその場合、各前記キレート部分は前記第一母核部分及び前記第二母核部分に結合されている、錯体。
【請求項2】
前記巨大環が、3、4又は5つのキレート部分を含む請求項1記載の錯体。
【請求項3】
複数の前記キレート部分が、複数の酸素ドナーを含み、そして放射性核種が、酸素ドナーのうちの少なくとも1つを介して巨大環に対してキレート化されている請求項1および2のいずれかに記載の錯体。
【請求項4】
前記巨大環が、複数の酸素ドナーを含み、そして前記放射性核種が、複数の酸素ドナー又は酸素ドナーのすべてを介して前記巨大環に対してキレート化されている請求項1〜3のいずれかに記載の錯体。
【請求項5】
前記キレート部分が、独立に、
【化1】


[式中、各キレート部分における各R、R、R、R及びR10は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18、―NOから選択され;
前記式中、R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;
17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成し;
、R、R、R及びR10のうちの少なくとも2つは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである環系を形成し;
及びRは、それぞれ独立に、H及び陰電荷から選択され;
A、G及びJは、独立に、炭素及び窒素からに選択され;
そして、その場合、(II)若しくは(III)におけるR及びRのうちの1つ又は(I)におけるR及びR10のうちの1つは第一母核部分への結合を含み、そしてII)又は(III)におけるR及びRの一方及び(I)におけるR及びR10の一方は第二母核部分への結合を含む]から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の錯体。
【請求項6】
前記キレート部分のうちの1つが、以下の構造
【化2】


を有する場合、キレート部分すべてが同じというわけではない請求項5記載の錯体。
【請求項7】
前記キレート部分のうちの1つが、以下の構造
【化3】


を有する請求項6記載の錯体。
【請求項8】
前記キレート部分すべてが、以下の構造
【化4】


を有する請求項5記載の錯体
【請求項9】
構造(II)において、Aが窒素であり、そしてG及びJが炭素である請求項5及び8のいずれかに記載の錯体。
【請求項10】
構造(II)において、Jが窒素であり、そしてA及びGが炭素である請求項5及び8のいずれかに記載の錯体。
【請求項11】
前記キレート部分すべてが、以下の構造
【化5】


を有する請求項5記載の錯体。
【請求項12】
下式
【化6】


のRが、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される請求項5及び11のいずれかに記載の錯体。
【請求項13】
下式
【化7】


のRがHである請求項5、11及び12のいずれかに記載の錯体。
【請求項14】
構造(I)においてA、G及びJが炭素である請求項5及び11〜13のいずれかに記載の錯体。
【請求項15】
(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分及び(ii)第一母核部分を含むキレーターとを含む錯体であって、そしてその場合、前記キレート部分のそれぞれが第一母核部分に結合されていて、そして前記キレート部分のそれぞれが、独立に、
【化8】


[式中、各キレート部分における各R、R、R、R及びR10は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18及び―NOから選択され;
前記式中、R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;
17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成し;
、R、R、R、及びR10のうちの少なくとも2つは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される環系を形成し;
及びRは、それぞれ独立に、H及び陰電荷から選択され;
(2a)、(2b)及び(3)におけるR及びRのうちの1つ及び(1)におけるR及びR10のうちの1つは、前記第一母核部分への結合を含み、そしてその場合、少なくとも1つのキレート部分は、以下の構造
【化9】


を有する]から選択される構造を有する、錯体。
【請求項16】
すべての前記キレート部分が、以下の構造
【化10】


を有する請求項15の錯体。
【請求項17】
が前記第一母核部分に結合される場合、(2a)、(2b)及び(3)におけるR又は(1)におけるR10は、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[前記式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択され;そして、(2a)、(2b)、及び(3)におけるR又は(1)におけるR10が第一母核部分に結合される場合、Rは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[前記式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される請求項15及び16のいずれかに記載の錯体。
【請求項18】
が前記第一母核部分に結合される場合、(2a)、(2b)及び(3)におけるR又は(1)におけるR10はHであり;(2a)、(2b)及び(3)におけるR又は(1)におけるR10が前記第一母核部分に結合される場合、RはHである請求項15〜17のいずれかに記載の錯体。
【請求項19】
10が、―C(O)NR1718である請求項15〜18のいずれかに記載の錯体。
【請求項20】
17及びR18が、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される請求項19記載の錯体。
【請求項21】
リンカーを更に含む請求項15〜20のいずれかに記載の錯体。
【請求項22】
(a)放射性核種と、(b)(i)複数のキレート部分、(ii)リンカー及び(iii)第一母核部分を含む第一キレーターとを含む錯体であって、そしてその場合、キレート部分のそれぞれは前記第一母核部分に結合され、そしてその場合、キレート部分のそれぞれは、以下の:
【化11】


[式中、各キレート部分における各R、R、R、R及びR10は、独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、ハロゲン、CN、CF、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18、―NOから選択され;
前記式中、R17及びR18は、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;
17及びR18は、それらが結合される原子と一緒になって、任意に連結されて5、6又は7員環を形成し;
、R、R、R、及びR10のうちの少なくとも2つは、任意に連結されて、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択される環系を形成し;
及びRは、それぞれ独立に、H及び陰電荷から選択され;
各キレート部分におけるR及びRのうちの1つは、前記第一母核部分に対する結合を含む]から独立に選択される構造を有する、錯体。
【請求項23】
前記キレート部分が、
【化12】


から選択される請求項22記載の錯体。
【請求項24】
が前記第一母核部分に結合される場合、Rは、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択され;そして、R9が前記第一母核部分に結合される場合、RはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される請求項22及び23のいずれかに記載の錯体。
【請求項25】
が前記第一母核部分に結合される場合、RはHであり;そしてRが前記第一母核部分に結合される場合、RはHである請求項22〜24のいずれかに記載の錯体。
【請求項26】
前記第一キレーターと同じ構造を有する第二キレーターを更に含む請求項22〜25のいずれかに記載の錯体。
【請求項27】
前記キレート部分が、すべて同じではない請求項22〜26のいずれかに記載の錯体。
【請求項28】
前記第二母核部分が、置換ヘテロアルキルである請求項1〜14のいずれかに記載の錯体。
【請求項29】
前記第二母核部分が、以下の構造
【化13】


(式中、Z1b、Z2b、Z3b、Z4b及びZ5bは、独立に、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;
そしてZ1b、Z2b、Z4b及びZ5bのそれぞれは、前記キレート部分のうちの1つへの結合を含む)を有する請求項1〜14及び28のいずれかに記載の錯体。
【請求項30】
3bが、置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)アルキルである請求項29記載の錯体。
【請求項31】
3bが、置換又は未置換の―(CH(CHCHO)(CH―[式中、m、n及びpは1、2、3、4、5及び6から独立に選択される整数である]である請求項29記載の錯体。
【請求項32】
3bが、=Oによって置換されるエチルである請求項29記載の錯体。
【請求項33】
3bが、エチルである請求項29記載の錯体。
【請求項34】
1b、Z2b、Z4b及びZ5bが、Z’R20bN(H)C(O)Z’’、Z’R20bN(H)C(O)R21bZ’’及びZ’R21bZ’’[式中、Z’は、前記第二母核部分への結合であり、
Z’’は、前記複数のキレート部分のうちの1つに対する結合であり、
20bは、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され、そして
21bは、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される]から選択される構造を有する請求項29〜33のいずれかに記載の錯体。
【請求項35】
20bが、置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)アルキル、及び置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)ヘテロアルキルから選択される請求項34記載の錯体。
【請求項36】
20bが、置換又は未置換のエチルから選択される請求項34記載の錯体。
【請求項37】
21bが、置換又は未置換の―(CHO―[式中、wは1、2、3、4、5及び6から選択される]から選択される請求項34〜36のいずれかに記載の錯体。
【請求項38】
式中wが1又は3であるR21bである請求項37記載の錯体。
【請求項39】
1b、Z2b、Z3b、Z4b及びZ5bのうちの少なくとも1つが、リンカーによって置換される請求項29〜38のいずれかに記載の錯体。
【請求項40】
前記第一母核部分が、置換ヘテロアルキルである請求項1〜39のいずれかに記載の錯体。
【請求項41】
前記第一母核部分が、以下の構造
【化14】


(式中、Z1a、Z2a、Z3a、Z4a及びZ5aは、独立に、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;
そしてZ1a、Z2a、Z4a及びZ5aは、前記キレート部分のうちの1つに対する結合を含む)を有する請求項1〜40のいずれかに記載の錯体。
【請求項42】
Z3aが、置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)アルキルである請求項41記載の錯体。
【請求項43】
Z3aが、置換又は未置換の―(CH(CHCHO)(CH―[式中、m、n及びpは1、2、3、4、5及び6から独立に選択される整数である]である請求項41記載の錯体。
【請求項44】
3aが、=Oによって置換されるエチルである請求項41記載の錯体。
【請求項45】
3aが、エチルである請求項41記載の錯体。
【請求項46】
1a、Z2a、Z4a及びZ5aが、Z’R20aN(H)C(O)Z’’、Z’R20aN(H)C(O)R21aZ’’及びZ’R21aZ’’
[式中、Z’は前記第二母核部分に対する結合であり、
Z’’は、前記複数のキレート部分のうちの1つに対する結合であり、
20aは、置換又は未置換のアルキル及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され、そしてR21aは、置換又は未置換のアルキル及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される]から選択される構造を有する請求項41〜45のいずれかに記載の錯体。
【請求項47】
20aが、置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)アルキル、及び置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)ヘテロアルキルから選択される請求項46記載の錯体。
【請求項48】
20aが、置換又は未置換のエチルから選択される請求項46記載の錯体。
【請求項49】
21aが、置換又は未置換の―(CHO―[式中、wは1、2、3、4、5及び6から選択される]から選択される請求項46〜48のいずれかに記載の錯体。
【請求項50】
式中wが1又は3であるR21aである請求項49記載の錯体。
【請求項51】
1a、Z2a、Z3a、Z4a及びZ5aのうちの少なくとも1つが、リンカーによって置換される請求項46〜50のいずれかに記載の錯体。
【請求項52】
前記第一母核部分が、以下の構造
【化15】


(式中、xは1、2、3及び4から選択され;
及びYは、それぞれ独立に、H、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;
は、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;
及びZは、独立に、―C(O)―、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択され;そして
及びZのそれぞれは、前記キレート部分のうちの1つに対する結合を含む)を有する請求項1〜40のいずれかに記載の錯体。
【請求項53】
各Zが、独立に、置換又は未置換の(C、C、C、C、C若しくはC)アルキルである請求項52記載の錯体。
【請求項54】
各Zが、独立に、置換又は未置換のプロピル若しくはブチルである請求項52記載の錯体。
【請求項55】
各Zが、独立に、置換又は未置換のヘテロアルキルである請求項52記載の錯体。
【請求項56】
が、独立に、置換又は未置換の―(CH(CHCHO)(CH―[式中、m、n及びpは1、2、3、4、5及び6から独立に選択される整数である]である請求項52記載の錯体。
【請求項57】
が、置換又は未置換の―(CHO(CH―である請求項52記載の錯体。
【請求項58】
及びZが、―C(O)―である請求項52〜57のいずれかに記載の錯体。
【請求項59】
少なくとも1つのZが、リンカーによって置換される請求項52〜58のいずれかに記載の錯体。
【請求項60】
前記リンカーが、官能化リンカーと、ターゲティング部分に対するリンカーとから選択される請求項1〜14、21〜27、39、51及び59のいずれかに記載の錯体。
【請求項61】
前記リンカーが、構造―L11―X(式中、L11は、結合、アシル、置換又は未置換のアルキル、置換又は未置換のヘテロアルキル、置換又は未置換のシクロアルキル、置換又は未置換のヘテロシクロアルキル、置換又は未置換のアリール、及び置換又は未置換のヘテロアリールから選択され;そして、Xは、反応性官能基又はターゲティング部分である)を有する請求項60記載の錯体。
【請求項62】
11が、置換又は未置換のアルキル、及び置換又は未置換のヘテロアルキルから選択される請求項61記載の錯体。
【請求項63】
Xが、―NH及び―CO(O)Hから選択される請求項61及び62のいずれかに記載の錯体。
【請求項64】
―L11―Xが、
【化16】



から選択される請求項61記載の錯体。
【請求項65】
前記リンカーが、ターゲティング部分に対するリンカーである請求項60〜62のいずれかに記載の錯体。
【請求項66】
ターゲティング部分が、ペプチド、ポリペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、脂質、多糖、小分子、補因子、及びホルモンから選択される請求項65記載の錯体。
【請求項67】
前記ターゲティング部分が、抗体又は抗体フラグメントである請求項66記載の錯体。
【請求項68】
及びRが、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、―C(O)R17、―SONR1718、―NR1718、―OR17、―S(O)17、―COOR17、―S(O)OR17、―OC(O)R17、―C(O)NR1718、―NR17C(O)R18、―NR17SO18[式中、R17及びR18はH及びアルキルから選択される]から選択される請求項5〜67のいずれかに記載の錯体。
【請求項69】
及びRが、Hである請求項5〜67のいずれかに記載の錯体。
【請求項70】
17及びR18が、H及び(C、C、C、C、C若しくはC)アルキルから選択される請求項5〜69のいずれかに記載の錯体。
【請求項71】
前記放射性核種が、ガンマ線の放出体、又は、α粒子、電子及びポジトロンから選択される粒子である請求項1〜70のいずれかに記載の錯体。
【請求項72】
前記放射性核種が、アクチニド及びランタニドから選択される請求項1〜71のいずれかに記載の錯体。
【請求項73】
前記放射性核種が、U、Pu、Fe、Cu、Ce、Nd、Eu、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Th、Zr、In、Ga、Bi、Ra及びAcから選択される原子のイオン請求項1〜71のいずれかに記載の錯体。
【請求項74】
前記放射性核種が、Ra―223、Bi―213、Ac―225、及びU―230から選択される請求項1〜71のいずれかに記載の錯体。
【請求項75】
前記放射性核種が、Thの同位体である請求項1〜71のいずれかに記載の錯体。
【請求項76】
前記放射性核種が、Th―227及びTh―232から選択される請求項75記載の錯体。
【請求項77】
前記放射性核種が、2、3、又は4のイオンである請求項1〜76のいずれかに記載の錯体。
【請求項78】
前記放射性核種が、3のイオンである請求項1〜77のいずれかに記載の錯体。
【請求項79】
任意の前記請求項記載の錯体を動物に投与し、それによって疾患を改善又は取り除くことを含む、動物における疾患を治療する方法。
【請求項80】
(a)請求項1〜78のいずれかに記載の錯体を動物に投与する工程、及び(b)前記錯体によって発せられる信号の有無を検出する工程を含む、動物における疾患を診断する方法。
【請求項81】
前記検出工程が、信号に基づく画像を得ることを含む請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記疾患が、癌である請求項79〜81のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
前記錯体が、ターゲティング部分に対するリンカーを含み、そして前記方法が、更に、前記ターゲティング部分をターゲティング部位に結合させることによって、動物における前記ターゲティング部位に対して前記錯体を局在化させる工程も含む請求項79〜82のいずれかに記載の方法。

【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−515744(P2013−515744A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546241(P2012−546241)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/062048
【国際公開番号】WO2011/079291
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512163554)ルミフォア,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】