説明

放射性標識付きリン脂質エーテル類似体を用いる仮想結腸内視術

本発明は、ハイブリッドCT/PETスキャンを用いて解剖学的及び機能的双方の情報を与える、デュアル・モダリティ仮想結腸内視術のための薬剤及び方法を提供する。好ましい実施態様の場合、本発明は、放射性標識付き腫瘍特異的物質、及び悪性腫瘍と良性ポリープとを区別する方法を提供する。更なる実施態様の場合、本発明は、リン脂質代謝相対レベルに基づいて、選択された組織部位の形態的及び機能的なサブ部位を区別するのに有用な組成物及び方法を提供する。好ましい放射性標識付き腫瘍特異的物質は、ハロゲン放射性同位体で標識付けされたリン脂質エーテル類似体である。或る特定の好ましい実施態様の場合、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体を含む組成物は、悪性組織を機能的に同定するのに加えて、治療作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概ね、腫瘍の画像形成に関し、そして具体的には放射性標識付き腫瘍特異的物質、例えば放射性ハロゲンで標識付けされたリン脂質エーテル類似体と組み合わせて仮想結腸内視術によって腫瘍を診断画像形成し、そして特徴付けすることに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、2004年7月8日付けで出願された米国特許仮出願第60/521,831号明細書の優先権を主張する。前記明細書の内容全体を参考のため、全ての目的で引用する。
【0003】
発明の背景
癌の早期発見は、現代の画像形成技術の主な目標の1つである。それというのも、局在化段階において腫瘍と疑われるものを同定することは、癌組織の治療及び排除を成功させるチャンスを著しく広げるからである。従って、できる限り早期に正確な診断を下す上で医師を助けるために、多種多様の技術及び様式を用いて、数多くの画像形成戦略が設計されている。
【0004】
米国内では各年にほぼ130,000件の結腸直腸癌が新たに診断されている。このように、結腸直腸癌は4番目に発生事例の多い癌であり、1年当たりの死亡件数は60,000を占める(Cancer Facts and Figures, American Cancer Society 2001)。治療は主として癌の病期によるが、手術、放射線の照射、化学療法、及び/又は高周波又は極低温アブレーションを含むことがある。しかし結腸直腸癌患者の日常的なフォローアップにおいて、癌胎児性抗原(CEA)、結腸直腸腫瘍マーカー、及び繰り返しの結腸内視術による決定し{O'Dwyer PJ他、「米国及びフランスにおけるB期及びC期の結腸直腸癌のフォローアップ(Follow-up of stage B and C colorectal cancer in the United States and France)」, Seminars in Oncology 2001; 28 Supple-9}では、50%を上回る患者において再発疾患を検出することができない。Wichmann MW他「結腸直腸癌研究グループ;結腸直腸癌の治癒的切除に続く再発疾患の検出のための癌胎児性抗原(The colorectal Cancer Study Group; Carcinoembryonic antigen for the detection of recurrent disease following curative resection of colorectal cancer)」, Anticancer Research 2000; 20 4953-4955を参照されたい。従って、更なる再発疾患検出方法の開発が必要である。
【0005】
仮想結腸内視術、つまりヒトにおけるコンピュータ断層撮影によって実施される非侵襲的スキャンが、伝統的な結腸内視術よりも正確であることが報告されている{Pickhardt PJ.他「無症候の成人において結腸直腸新生物組織形成をスクリーニングするためのコンピュータ断層撮影仮想結腸内視術(Computed tomographic virtual colonoscopy to screen for colorectal neoplasia in asymptomatic adults)」, New England Journal of Medicine 349(23) 2191-200, 2003年12月4日}。伝統的な多検出器螺旋CTスキャナー上で実施されると、仮想結腸内視術は、腸管腔を腫瘍に関して解剖学的に非侵襲的スキャンすることを可能にしはするものの、空間を占める病変をポリープ(腺腫)又は腺癌(悪性)として特徴付けすることはできない。腫瘍タイプの決定は、これらの患者の治療計画や治療成績に劇的な効果を及ぼす。
【0006】
加えて、CTスキャンからの機能情報は、RFアブレーション及びCTスキャンを用いた治療及び診断中に得るのが難しい。コントラスト増強型螺旋CTを用いて、腫瘍の血管分布像をある程度まで評価することができるが、しかし、生存能力のある腫瘍細胞が、加えて、RFアブレーションを施された病変部内部に残っているかどうかを正確に決定する方法はない。RFによって形成された熱病変部は通常、アブレーション後、最大6ヶ月にわたって行われる処置後CTスキャンにおいて、病変部周囲の炎症縁を有する。アブレーション後の患者を追跡するために、PETスキャンが用いられているが、しかしRF熱病変部周囲の炎症縁は通常、生存可能な腫瘍が存在しない場合でも、取込み量の増大を表示する。このことは、再発腫瘍の早期発見に対する感受性及び特異性を減小させる。従って、腫瘍細胞に対して選択的でなく、且つ感染部位及び過形成部(例えばBarrett食道)に局在化されるフルオロデオキシグルコース(FDG)とは異なり、悪性腫瘍細胞に対して選択的であり、且つ悪性腫瘍細胞によって無制限に保持される物質が好ましい。さらに、4日間の物理的半減期を有し、ひいては世界中のどこにでも出荷できる124Iを含有する化合物が、110分の半減期を有し、従って生産場所から200マイル以内での限られた配布しか可能ではないFDGよりも好ましい。
【0007】
長期にわたって保持され(そして代謝されない)化合物が好ましい。それというのも、このような化合物は125I、131I、211Atのような適切な放射性同位体と合体されると、有意な治療潜在能力を有することができると考えられるからである。また、種々様々なヨウ素同位体で標識付けすることができ、そして幅広い用途(診断及び治療、並びに実験動物研究のためのツール)を有する化合物も、FDGより好ましい。FDGは、PETスキャンの際には18Fに限られ、又は場合によっては、極めて低い感度レベルではあるが、磁気共鳴映像法の際には19F(安定)に限られる。PETにとって有用であることが開示された付加的な化合物は、124I又は131I標識付き2'-フルオロ-2'-デオキシ-1-β-D-アラビノフラノシル-5-ヨードウラシル(FIAU)、18F標識付き9-[4-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FHBG)、及び18F標識付き9-[3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロポキシメチル]グアニン(FHPG)を含む。その腫瘍ターゲッティング能力とは無関係に、18F-FDGは、腫瘍細胞内のその迅速な代謝により、治療潜在能力を有しない。従って、治療後局所再発を調査する他の化合物が必要とされる。
【0008】
さらに、化学療法が治療様式である場合でさえ、化学療法に対する応答のモニタリングを改善することが必須である。従って、長期治療の毒性に患者を晒すことなしに、効果的でない化学療法の投薬計画の利用を医師が素早く中断するのを可能にするように、化学療法に対する応答を調査するための早期予後インジケーターの開発が望まれる。外照射療法が、同様の組織特性の腫瘍を有する患者に対する代替治療である場合、腫瘍は、治療を意図した外部放射線療法(XRT)に対して著しく種々異なる応答を有し得る。術前放射線で治療された直腸癌患者の幾人かが完全な応答を有するのに対して、同様の組織特性(光学顕微鏡法レベルで)の腫瘍を有する他の患者は治療に対する応答が悪く、再発することになる。放射線に対する応答は、最終的な腫瘍制御、及び、多くの消化管癌、肺ガン、頭頚部癌、及び婦人科癌を含む多くの癌に対する生き残りの予測因子である。たいていの応答特徴付け法は、応答に対して極めて予測的ではあるが、治療完了後に実施される。いくつかの治療期間内臨床評価が、治療を調節する上で有用である{Mayr, N A.他「磁気共鳴映像法を用いて頚癌における治療効果を予測するための腫瘍体積測定法及び測定のタイミング(Method and timing of tumor volume measurement for outcome prediction in cervical cancer using magnetic resonance imaging)」, International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics 2002;52,1.14-22}が、たいていの場合、実際の治療中に腫瘍応答を予測する正確な方法はない。このような試験、特に、広範囲の腫瘍部位及び組織特性に適用可能な試験があれば、これは極めて有用であり望ましい。他の治療法及び診断法は、治療に対する応答を予測するように意図されている分子アッセイを含み、最近の試みは、治療に対する応答又は応答の欠如と相関する遺伝的な変化を同定するためのDNAマイクロアッセイを含む。これらは試験研究的なものであって、日常の臨床用途において用いられるものはない。
【0009】
さらに他の診断法及び治療法は、XRT治療中に応答を予測するための画像形成モダリティを用いることを含む。FDGを使用した治療期間内PETスキャンが、活発に研究中であり、放射線治療の途中の一次腫瘍内の同位体取込み量が治療前取込み量と比較される。いくつかの遡及的研究は、治療中に強い取込みが持続した患者の腫瘍制御効果が、治療中にFDGに対する腫瘍の結合活性が低い患者よりも弱いことを示唆する{Greven, K.他「ポジトロン放出断層撮影は、喉頭癌の治療を受ける患者において放射線後遺症から腫瘍再発を区別できるか(Can positron emission tomography distinguish tumor recurrence from irradiation sequelae in patients treated for larynx cancer?)」, Cancer Journal Scientifica American 1997;3, 353-357}。しかしながら、種々の癌に対するより効果的なスクリーニング、診断及び治療のための薬剤及び方法が強く望まれる。
【0010】
残念ながら、コンピュータ断層撮影(CT)及びMRI(磁気共鳴映像法)のような慣用的な画像形成技術は、疑わしい病変部の決定的な診断を下す能力において、制限されている。それというのも、これらの技術は組織の密度又は形態の差異を観察することができるにすぎないからである。確実な診断を提供するために、より侵襲的で高価な生検処置がしばしば必要となる。対照的に、核医療技術、例えばポジトロン放出断層撮影(PET)及び単一光子放出断層撮影(SPECT)は、該当する特定器官又は部位に関する機能的又は生化学的な情報を提供することができる。しかし、これらの核画像形成技術の成功は、大部分が、適切な放射性医薬品の選択的な取込み及び検出に左右される。選択的取込みは、ターゲット組織に対する高度な特異性を有する放射性医薬品の開発に左右される。残念ながら、腫瘍用途のためにこうして大規模に開発された腫瘍局在化物質は、限られた用途にしか使用されていない。
【0011】
例えば、これらの従来の化合物のうちの1つである、67Gaガリウムシトレートは当初は、腫瘍組織内に蓄積する能力に関して同定された。残念ながら67Gaガリウムシトレートは、炎症性病変部を含む種々の他の非腫瘍病変部によっても取込まれ、そして受け入れがたい量の放射能が肝臓及び脾臓内に蓄積するおそれもある。これらの器官内の放射性医薬品の急速な蓄積は、近隣の病変部の画像形成を深刻に妨げるおそれがあり、また、患者に安全に与えることができる投与量を減らすことになる。
【0012】
別のアプローチは、腫瘍特異的抗原に対する放射性標識付きモノクローナル抗体(Mab)を開発することであった。しかし、これらのモノクローナル抗体は、これらが生成される際に対応する特定の腫瘍組織に対してのみ特異的であり、従って一般には新生物組織内に局在化することはない。さらに、診断画像形成のためにMabを使用することは、種々の抗原発現度、低い腫瘍取込み量、非特異的結合、及び不都合な免疫原性反応、及び一般に高い肝臓局在化を含む付加的な問題を引き起こした。
【0013】
これらの問題に対処しようとする試みにおいて、本発明者は最近、有用な腫瘍選択性を実証する一連の新規の化合物を同定して開発した。例えば米国特許第4,925,649号;同第4,965,391号;同第5,087,721号;同第5,347,030号;同第6,255,519号;及び同第6,417,384号の各明細書を参照されたい。これら全てを参考のため本明細書中に引用する。これらの放射性ヨウ素処理型リン脂質エーテル類似体は、悪性腫瘍細胞の独自の生化学的特徴、すなわち、対応する正常組織に対してリン脂質エーテル類似体を代謝する能力がない、という特徴を利用する。正確な作用メカニズムが完全に理解されているわけではないが、有力な仮説は、リン脂質エーテル類似体が、適切な代謝酵素の明らかな欠如により悪性腫瘍細胞膜内に捕捉されるようになるということである。従って、これらの化合物は腫瘍細胞内に局在化し、診断及び/又は治療用途のための所定の位置に生化学的にロックされるようになる。目下利用可能な腫瘍PET物質、例えば18F-FDGは、良性病変部及び炎症部位内、並びに腫瘍内に局在化し、従って良好な悪性腫瘍インジケーターではない。
【0014】
従って、新生物組織に対する特異性及び結合活性を保持しつつ、非ターゲット組織からの迅速なクリアランス、並びに血漿中の長時間の半減期を示す放射性医薬品が今なお当業者には大いに必要である。このような物質は、体内の位置にかかわりなく、一次腫瘍及び転移の非侵襲性画像形成及び特徴付けを助けるだけでなく、特に最も頻繁に診断される癌形態に関連するような悪性腫瘍組織の部位特異的根絶に用いられる細胞毒性物質のための担体としても役立つべきである。放射性医薬品が悪性腫瘍に対して選択的であり、且つ、腺腫及び過形成を含む前癌組織に対しては選択的でないことが、さらに望ましい。
【0015】
従って、結腸直腸癌患者における初期転移疾患を正確に同定し、そして場合によっては早期に治療することができる、容易に利用可能な放射性医薬品があれば、このような医薬品は、病期決定及び治療に対する応答の両方の点から見て、患者のケアに対して重要な影響を与えるはずである。比較的低廉であり幅広く利用可能な画像形成装置を使用して、全身を非侵襲的にスクリーニングすることができる、腫瘍特異的機能に基づく正確な機能的画像形成技術が今なお必要である。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
好ましい実施態様の場合、本発明は、ハイブリッドCT/PETスキャンを用いて解剖学的及び機能的双方の情報を与える、デュアル・モダリティ仮想結腸内視術のための組成物及び方法を提供する。好ましい実施態様の場合、本発明は、放射性標識付き腫瘍特異的物質を含む組成物、及び良性ポリープと悪性腫瘍とを区別する方法を提供する。好ましい放射性標識付き腫瘍特異的物質は、ハロゲン放射性同位体で標識付けされた放射性標識付きリン脂質エーテル類似体である。ハイブリッドCT/PETスキャンを用いたデュアル・モダリティ仮想結腸内視術において使用するために、放射性同位体はポジトロン放射剤であるべきである。特に好ましい放射性標識付き腫瘍特異的物質は、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン(124I-NM-404)である。
【0017】
或る特定の実施態様の場合、本発明は、患者の選択された消化管部位内の良性構造と悪性組織とを識別する方法であって、以下のステップ:
放射性標識付き腫瘍特異的物質を準備し;
放射性標識付き腫瘍特異的物質を患者に投与し;
第1の技術によって、良性構造と悪性組織とを有する選択された部位の形態を視覚化し;第2の技術によって、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の、選択された部位における分布を視覚化し;並びに
選択された部位の形態と、選択された部位において放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布とを比較し、これにより、悪性組織から良性構造を区別すること、
を含む、前記方法を提供する。
【0018】
第1の技術は、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴映像法、内視術又は写真撮影であってよい。第2の技術は、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影、又はシンチグラフィであってよい。
【0019】
典型的には、選択された部位の形態の視覚化体と、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較するステップが、二次元画像の再構成によって三次元構造の画像を生成するステップを含む。好ましい実施態様の場合、比較ステップは、選択された部位の形態の視覚化体上に、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を重ねるステップを含む。
【0020】
特に好ましい実施態様の場合、放射性標識付き腫瘍特異的物質は、治療機能及び診断機能を有する。好ましくは、放射性ヒョウシキヅキ腫瘍特異的物質の同じ投与が、腫瘍の収縮及び退縮、及び腫瘍の同定の両方を生じさせる。或る特定の実施態様の場合、放射性標識付き腫瘍特異的物質の同じ投与が、最初は、疑わしい塊の正確な検出、局在化及び特徴付けを可能にし、そしてこの物質が治療用同位体で放射性標識付けされた同じ又は異なる腫瘍特異的物質と組み合わされた状態で投与されると、悪性腫瘍を治療する能力をも提供する。他の実施態様の場合、本発明は、治療の進行をモニタリングする薬剤及び方法であって、当該薬剤が腫瘍によって結合活性的に取込まれる、薬剤及び方法を提供する。
【0021】
好ましい実施態様の場合、放射性標識付き腫瘍特異的物質は、ハロゲン放射性同位体で標識付けされたリン脂質エーテル類似体である。好ましい実施態様の場合、リン脂質エーテル類似体は、放射性ハロゲンに共有結合されている。放射性ハロゲン置換基は好適には、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、及び211Atであり、これらのうち、18F、76Br、123I、及び124Iは診断目的に好ましく、これに対して、77Br、125I、131I、及び211Aは治療目的に好ましい。診断目的の好ましい放射性ハロゲン置換基は124Iである。いくつかの好ましい実施態様の場合、18F、76Br、123I、及び124Iから成る群から選択される放射性ハロゲンに共有結合されたリン脂質エーテル類似体の混合物を、77Br、125I、131I、及び211Aから成る群から選択される放射性ハロゲンに共有結合されたリン脂質エーテル類似体と混合された状態で投与することができる。或る好ましい実施態様の場合、124Iに共有結合されたリン脂質エーテル類似体の混合物を、治療目的に適した放射性ハロゲンに共有結合されたリン脂質エーテル類似体と混合された状態で投与することができる。好適な放射性標識付きリン脂質エーテル類似体は、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択することができる。好適な混合物は、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンと123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンとの混合物、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンと125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンとの混合物、又は124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンと131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンとの混合物を含む。
【0022】
さらに好ましい実施態様の場合、本発明は、患者の選択された消化管部位内の悪性組織から良性構造を区別する方法であって、以下のステップ:
ハロゲン放射性同位体で標識付けされた腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体を準備し; ハロゲン放射性同位体で標識付けされたリン脂質エーテル類似体を患者に投与し;
コンピュータ断層撮影を用いて、良性構造及び悪性組織を有する選択された部位の形態を視覚化し;
ポジトロン放出断層撮影を用いて、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布を視覚化し;並びに、
選択された部位の形態と、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布とを比較し、これにより、良性構造と悪性組織とを識別すること、
を含む、前記方法を提供する。
【0023】
他の実施態様の場合、本発明は、患者における結腸直腸癌の治療効果をモニタリングする方法であって、以下のステップ:
放射性標識付き腫瘍特異的物質を準備し;放射性標識付き腫瘍特異的物質を患者に投与し;第1の技術によって、良性構造と悪性組織とを有する選択された部位の形態の視覚化体を生成し;第2の技術によって、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を生成し;そして選択された部位の形態の視覚化体と、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較することによって直腸結腸癌の治療前状態を決定し;
選択された治療薬を投与し;
放射性標識付き腫瘍特異的物質を準備し;放射性標識付き腫瘍特異的物質を患者に投与し;第1の技術によって、良性構造と悪性組織とを有する選択された部位の形態の視覚化体を生成し;第2の技術によって、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を生成し;そして選択された部位の形態の視覚化体と、放射性標識付き腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較することによって治療後状態を評価し;並びに
治療前状態と治療後状態とを比較することにより、治療の効果をモニタリングすること、
を含む、前記方法を提供する。
【0024】
他の実施態様の場合、本発明は、リン脂質代謝相対レベルに基づいて、選択された組織部位の形態的及び機能的なサブ部位を区別する方法であって、以下のステップ:
放射性ハロゲン標識付きリン脂質エーテル類似体であるホスホリパーゼ基質を準備し; 種々異なるリン脂質代謝レベルによってさらに区別される形態的に区別可能な複数の組織サブ部位を有することが疑われる組織部位を選択し;
組織部位を、放射性ハロゲン標識付きリン脂質エーテル類似体と接触させ、放射性ハロゲン標識付きリン脂質エーテル類似体が取込まれ、相対的に低いリン脂質代謝レベルを有する組織サブ部位内に選択的に保持されるようにし;
第1の技術によって、選択された部位の形態の表示体を生成し;第2の技術によって、選択的に保持された放射性ハロゲン標識付きリン脂質エーテル類似体によって生成された放射能の分布の表示体を生成し;並びに
選択された部位の形態の表示体と、選択的に保持された放射性ハロゲン標識付きリン脂質エーテル類似体によって生成された放射能の分布の表示体とを比較し、これによりリン脂質代謝相対レベルに基づいて、選択された組織部位の形態的及び機能的なサブ部位を区別すること、
含む、前記方法を提供する。
【0025】
他の実施態様の場合、本発明は、診断上有効量の放射性標識付きリン脂質エーテル類似体と、非経口投与のために調製された薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。リン脂質エーテル類似体は、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、211At及びこれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン同位体で好適に放射性標識付けすることができる。好ましい実施態様の場合、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体は、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0026】
さらに他の実施態様の場合、本発明は、治療上有効量の放射性標識付きリン脂質エーテル類似体と、非経口投与のために調製された薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。リン脂質エーテル類似体は、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、211At及びこれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン同位体で好適に放射性標識付けすることができる。好ましい実施態様の場合、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体は、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0027】
他の実施態様の場合、本発明は、患者の消化管内の悪性組織を同定する放射性医薬製剤を製造するための、リン脂質エーテル類似体の使用を提供する。好ましい実施態様の場合、本発明は、結腸直腸癌を検出又は治療する放射性医薬製剤を製造するための、リン脂質エーテル類似体の使用を提供する。別の好ましい実施態様の場合、本発明は、デュアル・モダリティ仮想結腸内視術に用いられる放射性医薬製剤を製造するための、リン脂質エーテル類似体の使用を提供する。
【0028】
好ましい実施態様の説明
【0029】
本発明の方法を説明する前に念のために述べておくが、本発明が、記載された特定の方法論、プロトコル、細胞系、及び試薬に限定されることはなく、これらは種々に変化してよい。また言うまでもなく、本明細書中に使用された専門用語は、特定の実施態様を説明することを目的としているに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0030】
なお、本明細書中及び添付の特許請求の範囲中に使用される単数形は、前後関係が明らかに他のことを指示しているのでない限り、複数形を含む。従って例えば「細胞」に言及する場合には、これは複数のこのような細胞及び当業者に知られている等価物を含む。同様に、単数形、「1つ又は2つ以上」及び「1つ以上」を本明細書中に相互に置き換え可能に使用することもできる。なお、「含む」及び「有する」という用語も相互に置き換え可能に使用することもできる。
【0031】
特に他に定義されない限り、本明細書中に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されたものと同様又は等価のいかなる方法や材料も本発明の実施又は試験に用いることができるものの、好ましい方法及び材料をここに記載する。本明細書中に述べられた全ての刊行物を、刊行物中に報告された化学物質、細胞系、ベクター、動物、器具、統計分析及び方法論(これらは本発明との関連において用いられるかもしれない)を記載し開示する目的で、参考のため本明細書中に引用する。本発明が従来の発明によってこのような開示内容に先立つ資格がないことを是認するものとして、本明細書中の何ものも解釈されるべきではない。
【0032】
本明細書中に定義された「異性体」という用語の一例としては、光学異性体及び類似体、構造異性体及び類似体、配座異性体及び類似体が挙げられる。1実施態様の場合、本発明は、本発明の腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の種々異なる光学異性体の使用を含む。当業者には明らかなように、本発明において有用な腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体は、1つ以上のキラル中心を含有することができる。従って、本発明の方法において使用される化合物は、光学活性形態又はラセミ形態を成して存在し、そしてこのような形態で単離することができる。いくつかの化合物は多形を示すこともできる。
【0033】
言うまでもなく、本発明は、任意のラセミ形態、光学活性形態、多形形態、又は立体異性形態、又はこれらの混合物の使用を含むことができる。このような形態は、本明細書に記載され特許請求の範囲で主張された腫瘍関連状態の治療において有用な特性を有する。1実施態様の場合、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体は、純粋(R)異性体を含むことができる。別の実施態様の場合、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体は、純粋(S)異性体を含むことができる。別の実施態様の場合、化合物は(R)異性体と(S)異性体との混合物を含むことができる。別の実施態様の場合、化合物は、(R)異性体及び(S)異性体の両方を含むラセミ混合物を含むことができる。どのように光学活性形態を調製するかは、当業者によく知られている(例えば再結晶化技術によるラセミ形態の分解、又は光学活性出発材料からの合成、キラル合成、又はキラル固定相を使用したクロマトグラフィ分離による)。
【0034】
「薬学的に許容される」は、一般に安全であり、非毒性であり、そして生物学的にも、その他の点でも望ましくないことのない医薬組成物を調製するのに有用であるものを意味し、動物用及び人間用の製薬用途にも許容されるのを意味する。「薬学的に許容される塩」又は「プロドラッグ」という用語は、信頼できる医療判断の範囲内で、不適切な毒性、刺激、及びアレルギー応答などを引き起こすことなしに患者に使用するのに適しており、適度な損益比との釣り合いがとれ、意図された用途に効果的である、化合物の塩及びプロドラッグ、並びに可能な場合には、これらの化合物の両性イオン形態を含む。
【0035】
本発明の化合物の好適な薬学的に許容される塩は、酸付加塩を含む。酸付加塩は、例えば本発明による化合物の溶液と、薬学的に許容される酸、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、琥珀酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、又はリン酸の溶液とを混合することにより形成することができる。さらに、本発明の化合物が酸性部分を担持する場合、これらの好適な薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム、又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム又はマグネシウム塩、及び好適な有機配位子と形成された塩、例えば第四アンモニウム塩を含むことができる。
【0036】
「塩」という用語は、化合物の無機及び有機塩を意味する。これらの塩は、化合物の最終単離及び精製中にその場で調製することができ、或いは、精製済化合物と、好適な有機又は無機の酸又は塩基とを、必要に応じて反応させ、そしてこうして形成された塩を単離することにより、調製することもできる。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、ベシレート、エシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、ナフチレート、メシレート、グルコヘプトネート、ラクトビオネート及びラウリルスルホネート塩などを含む。これらは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に基づくカチオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムなど、並びに非毒性アンモニウム、第四アンモニウム、及びアミン・カチオンを含むことができる。これらのカチオンの一例としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びエチルアミンなどが挙げられる。過酸化水素との反応により生成されるような、アミノ基のN-酸化物を有する化合物も含まれる。
【0037】
「プロドラッグ」は、化合物の薬理学的不活性形態であって、所期の薬理学効果をもたらすために、投与後に患者によってin vivoで代謝されることにより、化合物の薬理学活性形態にならなければならないものを意味する。患者への投与後、化合物の薬理学不活性形態は、生体液又は酵素の影響下で、in vivoで化合物の薬理学活性形態に変換される。代謝は多くの化合物の場合、主として肝臓内で発生するが、ほとんど全ての他の組織及び器官、特に肺が、種々の程度の代謝を行うことができる。例えば、プロドラッグの代謝は、血液中の加水分解によって行うことができる。化合物のプロドラッグ形態を利用して、例えば生体利用効率を高め、不快な特徴、例えば苦みをマスキングし、静脈内使用のための溶解度を変え、又は化合物の部位特異的送達を可能にすることができる。本明細書中で化合物に言及するときには、これは化合物のプロドラッグ形態を含む。
【0038】
プロドラッグの使用については、T.Higuchi及びW.Stella「新規の送達システムとしてのプロドラッグ(Pro-drugs as Novel Delivery Systems)」ACS Symposium Series第14巻、及び「薬物設計における生体可逆的担体(Bioreversible Carrier in Drug Design)」Edward B Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に論じられている。例えば化合物がカルボン酸官能基を含有する場合、プロドラッグは、酸基の水素原子を、(C1-C8)アルキル、(C2-C12)アルカノイルオキシメチル、炭素原子数4〜9の1-(アルカノイルオキシ)エチル、炭素原子数5〜10の1-メチル-1-(アルカノイルオキシ)-エチル、炭素原子数3〜6のアルコキシカルボニルオキシメチル、炭素原子数4〜7の1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、炭素原子数5〜8の1-メチル-1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、炭素原子数3〜9のN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、炭素原子数4〜10の1-(N-アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3-フタリジル、4-クロトノラクトニル、ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、ジ-N,N-(C1-C2)アルキルアミノ(C2-C3)アルキル(例えばβ-ジメチルアミノエチル)、カルバモイル-(C1-C2)アルキル、N,N-ジ(C1-C2)アルキルカルバモイル-(C1-C2)アルキル及びピペリジノ-、ピロリジノ-又はモルホリノ(C2-C3)アルキルのような基と置換することにより形成されたエステルを含むことができる。
【0039】
同様に、化合物がアルコール官能基を含む場合には、アルコール基の水素原子を、(C1-C6)アルカノイルオキシメチル、1-(C1-C6)アルカノイルオキシエチル、1-メチル-1-(C1-C6)アルカノイルオキシエチル、(C1-C6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N-(C1-C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1-C6)アルカノイル、α-アミノ(C1-C4)アルカノイル、アリールアシル及びアルファ-アミノアシル、又はアルファ-アミノアシル-アルファ-アミノアシル{各アルファ-アミノアシルは独立して、自然発生型L-アミノ酸、P(O)(OH)2、-P(O)(O(C1-C6)アルキル)2又はグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の除去から生じるラジカル)から選択される}のような基と置換することにより、プロドラッグを形成することができる。
【0040】
化合物がアミン官能基を含むならば、アミン基内の水素原子を、R-カルボニル、RO-カルボニル、NRR'-カルボニル{R及びR'はそれぞれ独立して(C1-C10)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、ベンジルであるか、又はR-カルボニルは天然アルファ-アミノアシル又は天然アルファ-アミノアシル-である}、-C(OH)C(O)OY{YはH、(C1-C6)アルキル又はベンジルである}、-C(OY0)Y1{Y0は(C1-C4)アルキルであり、そしてY1は(C1-C4)アルキル、カルボキシ(C1-C4)アルキル、アミノ(C1-C4)アルキル又はモノ-N-又はジ-N,N-(C1-C6)アルキルアミノアルキルである}、C(Y2)Y3{Y2はH又はメチルであり、そしてY3はモノ-N-又はジ-N,N-(C1-C6)-アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジン-1-イル又はピロリジン-1-イルである}のような基と置換することにより、プロドラッグを形成することができる。
【0041】
本発明による化合物が1つ以上の不斉中心を有する場合、これらの化合物は従って鏡像異性体として存在することができる。本発明による化合物が、2つ又は3つ以上の不斉中心を有する場合、これらの化合物は加えて、ジアステレオ異性体として存在することができる。言うまでもなく、全てのこのような異性体及び任意の比率のこれらの混合物が、本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
本発明はまた、本明細書中に記載された化合物のアミノ置換基のN-酸化物を含む。薬学的に許容される塩は、無機塩基、例えば水酸化ナトリウムによって処理することにより、フェノール化合物から調製することもできる。また、脂肪族及び芳香族カルボン酸、例えば酢酸及び安息香酸エステルとともに、フェノール化合物のエステルを形成することもできる。
【0043】
本発明はさらに、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の誘導体を利用する方法を含む。「誘導体」という用語の一例としては、エーテル誘導体、酸誘導体、アミド誘導体、及びエステル誘導体などが挙げられる。加えて、本発明はさらに、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の水和物を利用する方法を含む。「水和物」という用語の一例としては、半水和物、一水和物、二水和物、及び三水和物などが挙げられる。
【0044】
本発明はさらに、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の代謝体を利用する方法を含む。「代謝体」という用語は、代謝又は代謝プロセスによって別の物質から産出された任意の物質を意味する。
【0045】
本明細書中に定義される「接触」とは、本発明において使用される腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体が、試験管、フラスコ、組織培地、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、又は毛管内に細胞又は組織などを含有する試料に導入され、そして、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の受容体への結合、又は膜内への挿入を可能にするのに十分な温度及び時間でインキュベートされることを意味する。試料を、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体又はその他の特異的結合成分と接触させる方法は、当業者に知られており、作業するアッセイプロトコルのタイプに応じて選択することができる。インキュベーション法も標準的なものであり、当業者に知られている。
【0046】
別の実施態様の場合、「接触」という用語は、本発明において使用される腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体が、治療中の患者内に導入され、化合物がin vivo接触することが許されることを意味する。別の実施態様の場合、「接触」という用語は、本発明において使用される腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体が、腫瘍のスクリーニングを必要とする患者内に導入され、化合物がin vivo接触することが許容されることを意味する。
【0047】
本明細書中に使用される「薬学的に許容される」エステル又は塩は、医薬組成物の任意のその他の成分と適合性があり、そして組成物が投与される患者に有害でない活性成分のエステル又は塩形態を意味する。「薬学的に許容される塩」又は「プロドラッグ」という用語は、信頼できる医療判断の範囲内で、不適切な毒性、刺激、及びアレルギー応答などを引き起こすことなしに患者に使用するのに適しており、適度な損益比との釣り合いがとれ、意図された用途に効果的である、化合物の塩及びプロドラッグ、並びに可能な場合には、これらの化合物の両性イオン形態を含む。
【0048】
「治療上有効量」は、疾患を治療するために患者に投与されると、その疾患に対するこのような治療に効果をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効量」は、化合物、治療されている疾患症状、治療される疾患の重症度、患者の年齢及び相対的な健康状態、投与ルート及び投与形態、担当の医師又は獣医の判断、及び他のファクターに応じて変化することになる。
【0049】
「診断上有効量」は、腫瘍のスクリーニングのために患者に投与されると、良性構造と悪性腫瘍との間の検出可能な区別を可能にするのに十分な化合物の量を意味する。「診断上有効量」は、化合物、検出されるべき症状、重症度及び状態、患者の年齢及び相対的な健康状態、投与ルート及び投与形態、担当の医師又は獣医の判断、及び他のファクターに応じて変化することになる。
【0050】
本発明の目的上、「治療する」又は「治療」は、疾患、症状又は障害と戦うことを目的とした、患者の管理及びケアを意味する。このような用語は、予防すなわち予防的処置、及び苦痛緩和処置の両方を含む。治療は、症状又は合併症の発症の予防、症状又は合併症の軽減、又は疾患、症状又は障害の排除のために、本発明の化合物を投与することを含む。
【0051】
活性化合物が細胞に投与される形態は重要ではない。活性化合物はただ、細胞に直接的又は間接的に達すればよい。本発明は、本明細書中に活性成分として記載された化合物を含む薬剤及び医薬組成物の調製及び使用を含む。
【0052】
本発明の化合物は、診断上又は治療上有効量で患者に投与される。本発明の化合物は単独で、又は薬学的に許容される組成物の一部として投与することができる。加えて、化合物又は組成物は、例えばボーラス注射によって全て一度に投与することができ、又は一連の錠剤のように複数回投与することもでき、又は例えば経皮送達を用いた場合のように所定の期間にわたって実質的に均一に送達することもできる。なお、化合物の投与量は、経時的に変化することができる。本発明の化合物は、即放性配合物、制御放出配合物、又はこれらの組み合わせを使用して投与することができる。「制御放出」は、徐放性放出、遅延放出、及びこれらの組み合わせを含む。好ましい実施態様の場合、リン脂質エーテル類似体を、薬学的に許容される担体と組み合わせて、非経口投与のための製剤をもたらす。
【0053】
本発明の医薬組成物は、単一ユニット投与量、又は複数の単一ユニット投与量として、調製し、包装し、そしてバルクで販売することができる。本明細書中に用いられる「ユニット投与量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の不連続的な量である。活性成分の量は、患者に投与されることになる活性成分の投与量に概ね等しいか、又はこのような投与量のうちの好都合な割合、例えばこのような投与量の2分の1又は3分の1である。
【0054】
明細書中に使用される「治療する」という用語は、予防的治療及び障害軽減治療を含む。明細書中に使用される「低減」、「抑制」及び「阻害」は、「減少」又は「低下」の一般に理解される意味を有する。明細書中に使用される「進行」という用語は、範囲又は重症度の増大、前進、成長又は悪化を意味する。明細書中に使用される「再発」は、緩和後が疾患元に戻ることを意味する。
【0055】
明細書中に使用される「投与する」という用語は、患者、組織、器官又は細胞を、本発明による腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体と接触させることを意味する。明細書中に使用される投与は、in vitroですなわち試験管内で達成することができ、或いは、in vivoですなわち生きている生物、例えばヒトの細胞又は組織中で達成することもできる。
【0056】
或る実施態様の場合、本発明は、本発明において有用な化合物を、ヒト以外又はヒトの患者に投与することを含む。「患者」は哺乳動物及び哺乳動物以外を意味する。「哺乳動物」は、例えばヒト、ヒト以外の霊長類、例えばチンパンジー及びその他のサル及びモンキー種;家畜、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタ;家庭内動物、例えばウサギ、イヌ、及びネコ、齧歯類を含む実験動物、例えばラット、マウス、及びモルモット、及びこれに類似のものを含む哺乳類の任意の構成員を意味する。哺乳動物以外の動物の一例としては、鳥類などが挙げられる。「患者」という用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。
【0057】
本明細書中に使用される「医薬組成物」という用語は、好適な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、及びアジュバント(まとめて「薬学的に許容される担体」とする)を伴う、治療上有効量の腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体を意味する。本明細書中に使用される「有効量」、「治療上有効量」及び「治療上有効量」という用語は、過度の副作用、例えば毒性、刺激、及びアレルギー応答なしに、所望の効果をもたらすのに十分な量の活性物質を意味する。具体的な「有効量」は、診断又は治療される特定の症状、患者の身体的状態、患者の人種、治療継続時間、並行して行われる療法(もしあれば)の性質、及び採用される具体的な配合物、及び化合物又はその誘導体の構造のようなファクターとともに変化する。もし下記(a)(b)、すなわち:(a)疾患(例えば結腸直腸癌)の予防、及び(b)このような疾患の好転又は安定化、のうちの1つ又は2つ以上が結果としてもたらされるならば、その量は治療上有効と考えられる。最適な有効量は、日常の試験で当業者によって容易に決定することができる。
【0058】
医薬組成物は液体であるか、又は凍結乾燥又は他の形式で乾燥させられた配合物であり、そして種々の緩衝剤内容物の希釈剤(例えばTris-HCL、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度、添加剤、例えば表面への吸収を防止するためのアルブミン又はゼラチン、洗剤(例えばTween 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)、Pluronic F68(登録商標)、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えばグリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えばThimerosal(登録商標)、ベンジルアルコール、パラベン)、バルク剤又は張性改質剤(例えばラクトース、マンニトール)、ポリマー、例えばポリエチレングリコールとタンパク質との共有結合、金属イオンとの錯化、又は高分子化合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの粒子状製剤中又は粒子状製剤上への、或いはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層状又は多層状小胞、赤血球ゴースト、又はスフェロプラスト上への材料の組み込み、を含む。このような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、in vivo放出速度、及びin vivoクリアランス速度に影響を与える。制御放出又は徐放性組成物は、親油性デポ剤(例えば脂肪酸、ワックス、油)中に配合物を含む。
【0059】
本発明によってさらに含まれるのは、ポリマー(例えばポロキサマー又はポロキサミン)で被覆された粒子状組成物の投与方法である。組成物の他の実施態様は、局所、非経口、肺、鼻及び口を含む種々の投与ルートのために、粒子形態、保護被膜、プロテアーゼ阻害剤又は浸透増強剤を組み込んでいる。1実施態様の場合、医薬組成物は、非経口、癌近傍、経粘膜、経皮、筋内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、及び腫瘍内投与される。
【0060】
さらに、本明細書中に使用された「薬学的に許容される担体」は当業者によく知られており、その一例としては、0.01〜0.1 M及び好ましくは0.05 Mリン酸緩衝液又は0.9 %生理食塩水が挙げられる。加えて、このような薬学的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンであってよい。非水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は、水、アルコール性/水性の溶液、エマルジョン又は懸濁液を含む、生理食塩水及び緩衝媒質を含む。
【0061】
非経口用ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、デキストロース・リンゲル液、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液及び固定油を含む。静脈内用ビヒクルは、流体及び栄養補充薬、デキストロース・リンゲル液を基剤とするような電解質補充薬を含む。保存剤及び他の添加剤、例えば抗菌薬、抗酸化剤、照合剤、及び不活性ガスなどが存在してもよい。
【0062】
本発明に従って投与可能な制御放出又は徐放性組成物は、親油性デポ剤(例えば脂肪酸、ワックス、油)中に配合物を含む。本発明によってさらに含まれるのは、ポリマー(例えばポロキサマー又はポロキサミン)で被覆された粒子状組成物、組織特異的受容体、リガンド又は抗原に対する抗体に結合される化合物、又は組織特異的受容体のリガンドに結合される化合物である。
【0063】
本発明に従って投与される組成物の1実施態様は、非経口、肺、鼻及び口を含む種々の投与ルートのために、粒子形態、保護被膜、プロテアーゼ阻害剤又は浸透増強剤を組み込んでいる。
【0064】
水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、又はポリプロリンの共有結合により修飾された化合物は、対応する非修飾化合物よりも、静脈内注射後に血液中の著しく長い半減期を示すことが知られている(Abuchowski他、1981;Newmark他、1982;及びKatre他、1987)。このような修飾形は、水溶液中の化合物の溶解度を高め、凝集を排除し、化合物の物理的及び化学的安定性を高め、そして化合物の免疫原性及び反応性を大幅に低減することもできる。結果として、非修飾化合物を用いた場合よりも、低い頻度又は低い投与量でこのようなポリマー-化合物付加生成物を投与することにより、所望のin vivo生体活性を達成することができる。
【0065】
本発明のさらに別の方法において、制御放出システムにおいて医薬組成物を送達することができる。例えば、薬剤は、静脈内輸液、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又はその他の投与様式を用いて投与することができる。1実施態様の場合、ポンプを使用することができる{Langer(上記);Sefton他、CRC Crit Ref. Biomed. Eng. 14:201(1987); Buchwald他、Surgery 88:507 (1980); Saudek他、N Engl. J. Med. 321:574(1987)参照}。別の実施態様の場合、治療ターゲット、例えば肝臓の近傍に制御放出システムを配置し、ひいては全身投与量のうちのわずかな割合だけで済ますこともできる{例えばGoodson他、「制御放出の医療用途(Medical Applications of Controlled Release)(上記)、第2巻、第115〜138頁(1984)参照}。他の制御放出システムの概説が、Langer(Science 249:1527-1533(1990))によって論じられている。
【0066】
製剤は、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体だけを含むことができ、或いはさらに、薬学的に許容される担体を含むこともでき、また、固体又は液体の形態、例えば錠剤、粉末、カプセル、ぺレット、溶液、懸濁液、エリキシル、エマルジョン、ゲル、クリーム、又は、直腸用及び尿道用坐剤を含む坐剤の形態であってよい。薬学的に許容される担体は、ガム、澱粉、糖、セルロース材料、及びこれらの混合物を含む。腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体を含有する製剤は、例えばぺレットの皮下埋め込みによって患者に投与することができる。別の実施態様の場合、ぺレットが、所定の期間にわたって腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の制御放出を可能にする。製剤は、液状製剤の静脈内、動脈内又は筋内注射、液状又は固形製剤の経口投与、又は局所塗布によって投与することもできる。直腸坐剤又は尿道坐剤を使用することにより、投与を達成することもできる。
【0067】
本発明による投与可能な製剤は、周知の溶解、混合、顆粒化、又は錠剤形成プロセスによって調製することができる。経口投与の場合、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体又はこれらの生理的に許容される誘導体、例えば塩、及びN-酸化物などを、この目的において習慣的な添加剤、例えばビヒクル、安定剤、又は不活性希釈剤と混合され、そして習慣的な方法によって、投与に適した形態、例えば錠剤、被覆型錠剤、硬質又は軟質ゼラチン・カプセル、水溶液、アルコール溶液又は油溶液に変換される。好適な不活性ビヒクルの例は、バインダー(例えばアカシア、澱粉、ゼラチン)、崩壊剤(例えば澱粉、ジャガイモ澱粉、アルギン酸)、又は滑剤(例えばステアリン酸又はステアリン酸マグネシウム)と組み合わされた慣用的な錠剤基材、例えばラクトース、スクロース、又は澱粉である。
【0068】
好適な油性ビヒクル又は油性溶剤の例は、植物油又は動物油、例えばヒマワリ油又は肝油である。製剤は乾燥顆粒又は湿潤顆粒として生じさせることができる。非経口投与(皮下、静脈内、動脈内、又は筋内注射)のために、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体又は又はこれらの生理的に許容される誘導体、例えば塩、及びN-酸化物などを、所望の場合には、この目的において習慣的且つ好適な物質、例えば可溶化剤又はその他の助剤と一緒に、溶液、懸濁液、又は駆出剤に変換することができる。その例は、界面活性剤及びその他の薬学的に許容されるアジュバントが添加された又は添加されない滅菌液、例えば水及び油である。油の一例としては、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、又は鉱物油が挙げられる。一般に、水、食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、及びグリコール、例えばプロピレングリコール又はポリエチレングリコールが、具体的には注射溶液のための好ましい液体担体である。
【0069】
活性成分を含有する医薬組成物の調製は当業者には明らかである。このような化合物は、鼻咽頭に送達されるエアロゾルとして、又は注射物質として、溶液又は懸濁液として調製することができるが、しかし、注射前の液体中に溶解又は懸濁するのに適した固形形態を調製することもできる。製剤は乳化することもできる。治療用活性成分は、薬学的に許容される又は活性成分と適合可能な賦形剤としばしば混合される。好適な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0070】
加えて、組成物は活性成分の効果を高める微量の補助剤、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤を含有することができる。
【0071】
中和された薬学的に許容される塩形態として、活性成分を組成物中に配合することができる。薬学的に許容される塩は、酸付加塩を含む。酸付加塩は、無機酸、例えば塩酸又は硫酸、又は、有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、及びマンデル酸などと一緒に形成される。遊離カルボキシル基から形成される塩は、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄、及び有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、及びプロカインなどから誘導することもできる。
【0072】
例えば、クリーム、ゲル、及び滴剤などを使用して体表面に局所投与するために、腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体又は又はこれらの生理的に許容される誘導体、例えば塩、エステル及びN-酸化物などが、製薬上の担体を有する又は有しない、生理的に許容される希釈剤中の溶液、懸濁液又はエマルジョンとして、調製され塗布される。
【0073】
本発明による別の方法において、活性化合物は、小胞、具体的にはリポソームにおいて送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533(1990), Treat 他「感染性疾患及び癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」Lopez-Berestein及びFidler編、Liss, N.Y., 第353〜365頁(1989);Lopez-Beresteinの同書、第317〜327頁参照;全体的に同書を参照されたい)。
【0074】
一般に、NM404は、いくつかの腫瘍治療モダリティの治療応答をモニタリングするための、有望な新しい腫瘍選択的診断画像形成剤である。第2世代リン脂質エーテル類似体である放射性ヨウ素処理型NM404は、10/10異種移植型腫瘍モデルにおいて、そして最近では別の17/17自然発生型齧歯類腫瘍モデルにおいて、注目に値する腫瘍選択性を示した。このアプローチの有力な仮説は、腫瘍細胞膜には代謝ホスホリパーゼ酵素が欠如していることにより、リン脂質エーテル類似体が腫瘍細胞膜内に排他的に捕捉されるようになることである。なぜならば、リン脂質エーテル類似体が代謝され排除されるようになることが不可能であるからである。従って、正常細胞と、生存能力のある腫瘍細胞とからのリン脂質エーテルの示差的なクリアランス速度は、この概念の根底を成す。種々の腫瘍モデルで得られた結果は、NM404が、生存能力のある悪性腫瘍細胞によって封鎖されて選択的に保持され、そしてリンパ節に見いだされるものを含む、解剖学的位置とは無関係の一次病変部及び転移病変部の両方に局在化することを示す。FDGとは異なり、この物質は感染部位には局在化しない。FDGを凌ぐNM404の他の利点は下記のものを含む:NM404は、悪性腫瘍細胞に対して選択的であり、且つ悪性腫瘍細胞によって無制限に保持されるのに対して、FDGは腫瘍細胞に対して選択的でなく、且つ感染部位及び過形成部(Barrett食道)に移動する。さらに、124Iが4日間の物理的半減期を有し、ひいては世界中のどこにでも出荷できるのに対して、FDGの半減期は110分であり、従ってFDGは生産場所から200マイル以内での限られた配布しか可能ではない。NM404は、長期にわたって保持され(そして代謝されない)、従って、131I又は125Iのような適切な放射性同位体と合体されると、有意な治療潜在能力をもたらすのに対して、FDGはいかなる治療潜在能力も有しない。NM404は用途を拡張する(診断及び治療、並びに実験動物研究のためのツール)種々様々なヨウ素同位体で標識付けすることができるのに対して、FDGは、PETスキャンの際には18Fに限られ、又は場合によっては、極めて低い感度レベルではあるが、磁気共鳴映像法の際には19F(安定)に限られる。その腫瘍ターゲッティング能力とは無関係に、FDGは、腫瘍細胞内のその迅速な代謝により、治療潜在能力を有しない。NM404は、種々の治療モダリティに対する局所的腫瘍応答を正確に予測する可能性をもたらすだけでなく、治療効果の上がらない一次腫瘍治療の事例における遠隔転移病変部の検出をも可能にする。
【0075】
特にデュアル・モダリティ仮想結腸内視術の場合、NM404又はそのリン脂質エーテル(PLE)類似体のうちの1つは、独立してPET又はSPECT画像形成において使用されると、又はハイブリッドCT/PETスキャナー上での実施時にCT系仮想結腸内視術と組み合わされると、腸病変部の非侵襲的検出及び特徴付けを可能にする潜在能力をもたらす。さらに、腸病変部内にNM404又はそのPLE類似体を取込むことにより悪性かどうかが確認される場合、これは治療用放射性ハロゲンで標識付けされると、続いて治療剤として使用することもできる。第3の用途として、NM404を使用することにより、慣用的な治療範例に続いて、結腸癌又は腸癌の患者における腫瘍応答をモニタリングすることもできる。NM404又はそのPLE類似体は悪性腫瘍細胞によって取込まれそして選択的に保持されるだけなので、これは慣用的な治療に続いて投与され、腫瘍細胞の完全性が、PET又はPET-CT画像形成によって非侵襲的に評価されることになる。元の腫瘍部位における局在化は、機能性腫瘍細胞が残っていることを暗示するのに対して、元の腫瘍部位からの放射能が欠如していることは、治療の成功を暗示する。結腸内視鏡が適宜の放射線検出器を備えているならば、このことは伝統的な結腸内視術に役立つこともできる。
【0076】
NM404は、FDGとは異なり、悪性細胞(今のところ27/27タイプ)に対して選択的である。FDGは、過形成細胞及び炎症部位内にも局在化することが知られている。我々は、NM404及びその先行体であるNM324のようなリン脂質エーテル類似体が、ラット・カラゲーニン・アッセイにおいて、炎症性病変部には局在化しないことを明らかにした。NM404は、悪性細胞中に選択的に保持され、そして、治療用放射線を有するものを含む全てのヨウ素同位体を含む任意のハロゲン(125I、131I、並びにヨウ素に極めて類似した化学特性を有するハロゲンであるハロゲンアスタチン211)で標識付けすることができるので、従ってFDGとは異なり、大きな治療潜在能力を有する。
【0077】
NM404は、無傷の血液脳関門と交差しないので、脳腫瘍検出においてFDGよりも著しく良好である。FDGはもちろん正常脳組織内に極めて良好に局在化し、ひいては脳腫瘍検出における使用を制限する。
【0078】
ヨウ素124で標識付けされたNM404は、18F-FDGと異なり、1つの場所で製造し、世界中どの場所にも出荷することができる。18F-FDGは、その物理的半減期が110分であることから、配送半径が限られてしまい、ひいては多くの生産現場を必要とする。
【0079】
ヨウ素-124で標識付けされた他の腫瘍PET剤、例えば124I-FIAUと比較して、NM404ヨウ素は、その芳香族C-I結合構造に基づき、in vivoの脱ヨード化に対して、より大きな安定性を有する。脂肪族ヨウ素を含有する、FIAUを含むその他のものの多くは、注射に続いて急速に脱ヨード化することが知られている。
【0080】
FDGは、注射から45分後にスキャンを可能にするが、NM404を用いた場合のより長い待ち時間は、腫瘍における漸進的な集中化によりコントラストを高める。臨床現場では、NM404は悪性腫瘍に対して特異的なので、最大24時間又は48時間の画像形成遅延時間は問題でない。腫瘍に対しては、PETの断層撮影特性に基づいて6時間以内にスキャンすることが可能である。
【0081】
NM404は、新生物組織に対する注目すべき特異性を示したが、しかし多くの試験腫瘍モデルでは前新生物組織に対しては特異性を示さなかった。NM404の、バックグラウンドに対して高い腫瘍結合活性、及び腫瘍選択性は、これが、治療期間内画像形成に関して、18F-FDG PETスキャンよりも潜在的に優れていることを示唆する。NM404の腫瘍特異性の正確なメカニズムは調査中であり、目下のところ、8F-FDG取込みのためのグルコース活用メカニズムほど十分には記述されていない。新生物組織内のNM404取込み及び選択的保持が、その組織の生存可能性に依存するのか否か、又は、この取込み現象が、組織生存可能性とは独立した何らかの膜又はマトリックス成分に関連するのかどうかは十分には確証されていない。この取込み及び特異性が腫瘍の生存可能性に関連するのであれば、放射線によって殺菌された腫瘍内のNM404取込み量が存在しないか又は少量になるのに対して、放射線に対して抵抗する腫瘍は、持続する取込みを示す、ということになる。最近、発明者は、ヌードマウスの放射線感受性及び放射線抵抗性双方の扁平上皮癌細胞(SCC1及びSSC6)において、NM404取込み及び死滅を実証した。このようなアッセイは、放射線療法で治療された患者を管理するのに有用である。それというのも、治療後のNM404局在化を明示しない患者は、治療に成功したことを示すのに対して、抵抗性腫瘍(持続するNM404取込み)を有する患者には、放射線以外の他の選択肢(手術、化学療法など)を提案することもできるからである。
【0082】
感受性があり、そしてより利用しやすい画像検査の開発への1つのアプローチは、所期ターゲット組織へ放射性医薬品プローブを選択的に送達することができる担体分子を設計することである。本発明者のアプローチは、高度な組織又は腫瘍選択性を示す分子の固有の生化学的又は薬理学的特性を十分に活用することである。
【0083】
Synder及び共同研究者は、動物及びヒトの種々の腫瘍細胞が、正常組織よりも著しく高い濃度の自然発生型エーテル脂質を細胞膜中に含有することを観察した。Synder F, Wood R.「正常ヒト組織及び新生物ヒト組織に由来する脂質中のグリセロールのアルキル及びアルク-1-エニルエーテル(Alkyl and alk-1-enyl ethers of glycerol in linpids from normal and neoplastic human tissues)」Cancer Research 1969; 29;251-257; Synder F, Blank ML, Morris HP.「Morris移植肝臓癌及び正常ラット肝臓の脂質中のグリセロールのo-アルキル及びo-アルキル-1-エニル部分の発生及び性質(Occurrence and nature of o-alkyl and o-alkyl-1-enyl moieties of glycerol in lipids of Morris transplanted hepatomas and normal rat livers)」Biochem biophys Acta. 1969; 176.502-510。これらの著者は、腫瘍内のエーテル脂質の蓄積が、鍵代謝酵素の欠乏により、これらの脂質を代謝するための腫瘍細胞の容量が低い結果であると提案している。本発明者は、多数の放射性ヨウ素処理型リン脂質エーテル(PLE)類似体を、潜在的な腫瘍選択的画像形成剤として合成することにより、この観察を活用した。これらのPLE類似体のうちのいくつかは、種々多様の自然発生型及び移植型のラット、マウス及びヒトの腫瘍モデル(25/25)内に局在化し、これらのモデルによって選択的に保持される顕著な、そして普遍的らしい能力を示した。
【0084】
作業仮説(図1)は、リン脂質エーテルが、これらが代謝され排除されるようになることが不可能であるため、生存可能な腫瘍細胞膜内に捕捉されるようになることである。この仮説は、下に報告する酵素の活性及び発現の研究結果によって支えられる。典型的な代謝酵素は、ホスホリパーゼA2、(PLA2)、ホスホリパーゼC、(PLC)及びホスホリパーゼD、(PLD)を含む。放射性標識付き腫瘍特異的リン脂質エーテル物質の投与に続いて腫瘍を抽出すると、無傷の物質だけの存在が示されたのに対して、尿及び便の分析では、代謝体だけしか明らかにならなかった。特定の仮説又は作用メカニズムに縛られたくはないが、これらの結果、及び下記の結果は、腫瘍細胞に対する正常細胞からのリン脂質エーテルの示差クリアランス速度、及び細胞リン脂質代謝の根本的な差異が、本発明のリン脂質エーテル類似体の腫瘍特異性の基礎を成すことを示す。
【0085】
25個を上回る異種移植型腫瘍モデル及び自然発生腫瘍モデルにおいて得られた予備結果(表1)は、被験腫瘍の全てにNM404が選択的に取込まれ、長時間保持されることを示している。この物質は肝臓内で或る程度代謝されるので、本発明者は、肝臓バックグラウンド放射能レベルが高くなるため、肝臓腫瘍モデルにおける早期の化合物評価を避けた。さらに、NM404はその先行体よりも低い肝臓バックグラウンド・レベルをもたらすので、本発明者はHCC患者の画像形成が問題をはらんているという事実に照らして、評価範囲を肝臓腫瘍に拡大した。多くの患者は内在的な肝硬変を有しており、従って断面画像上でHCCから再生小節を区別することは難しい。さらに、FDGでPETスキャンを評価する予備研究は、疾患を検出する際に2〜50%の感度しか示さなかった。Verhoef C.他、Liver(2002)22.51-56。さらに、PET FDGは脳内の診断スクリーニングには有用でない。同様に、FDGは肝細胞による自然の取込み量が多いため、肝臓内の疾患を評価する上で有用でない。
【0086】
下記例は、本発明の種々の観点を説明する。これらの例は、説明を目的としているにすぎず、本発明の範囲を狭める、又は限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0087】
実施例1:NM404の合成、放射性標識付け及び配合
合成アプローチは、アルキル鎖延長のための、グリニャール試薬とアルキルトシレート又はハロゲン化アルキルとの銅触媒型クロスカップリング反応に基づいた(下記スキーム参照)。合成はp-ヨードベンジルアルコール1から開始し、p-ヨードベンジルアルコール1を、臭化トリメチルシリルとの反応によって、臭化p-ヨードベンジル2に変換した。触媒としてのLi2CuCl4の存在において、臭化p-ヨードベンジル2をさらにグリニャール試薬3とカップリングした。第1のカップリング生成物4の脱保護後に得られた12-(p-ヨードフェニル)ドデカノール5をトシレート6に変換した。次の工程において、トシレート6を、炭素原子数6のグリニャール試薬7とカップリングし、そしてこれにより、鎖延長プロセスを完成させた。8のTHP脱保護は、18-(p-ヨードフェニル)オクタデカノール9をもたらした。18-(p-ヨードフェニル)オクタデカノール9を、スキームに示されているような2工程手順によって10(NM404)に変換した。
【0088】
【化1】

【0089】
さらに、NM404を、124I、125I及び131Iを含む任意のヨウ素同位体で標識付けするための迅速な高収量合成プロセスを、下記工程によって行った:
【0090】
第1に、アルミニウム加熱ブロック装置を145℃まで予加熱し、そして5 ml使い捨てシリンジ・バレルを使用して凝縮器を準備した。シリンジ・バレルには、湾曲した15インチ18ゲージの使い捨て針、及び上側のゴム隔壁を取り付けた。
【0091】
第2に、HPLCシステムを開始し、そしてリザーバに、濾過済みの脱ガスされた溶剤(ヘキサン/イソプロパノール/水(40:52:8)を満たした。システムを平衡化し、続いて補助システム、例えばポンプ、検出器、チャート記録器、及びコンピュータ統合装置を系統的に点検した。
【0092】
第3に、下側にグラスウール栓を使用し、シリンジに25 mLの顆粒状チャコールを満たし、別のグラスウール栓を加え、そして上側に隔壁を挿入することにより、3 ml使い捨てシリンジ・チャコール・トラップを調製した。短い管アダプター針をシリンジ上に配置し、18ゲージ針を上側の隔壁を通して挿入した。チャコール・トラップを、凝縮器の上側に接続し、そしてナトリウムチオスルフェート・トラップを通して大気に向かって通気孔を設けた。
【0093】
第4に、2 mlのホウケイ酸ガラスv-バイアル内の20 μlの脱イオン水中に、5 mgの硫酸アンモニウムを添加し、続いて、20 μlの無水エタノール中20 μgの無標識NM404をバイアルに添加した。バイアルを静かに旋回させるか又ははじくことにより、混合を確実に行い、そして6つのホウケイ酸ガラス・ビード(3mm)をさらにバイアルに添加した。次いでバイアルをテフロン(登録商標)被覆型ブチルゴム隔壁及びアルミニウム・クリンプキャップで密封した。隔壁には、18ゲージの針で孔を開け、そして所期量の水性ヨウ化ナトリウム-131(0.1 N NaOH中、典型的には15 μl中5mCi)を、Hamilton マイクロシリンジを介して隔壁を通して添加した。バイアルを再び静かに旋回させるか又ははじくことにより、混合を確実に行った。バイアルを線量キャリブレータ内でアッセイした。
【0094】
第5に、チャコール・シリンジ・トラップを反応バイアル内に挿入し、反応バイアルを、加熱ブロックウェル(砂を途中まで満たした)内に降ろした。溶剤のほとんどが蒸留されて凝縮器内に凝縮される40分間にわたって、反応バイアルを145℃で加熱した。空気流(4 x 25 ml)を、25 mlシリンジを有する反応バイアルを通してゆっくりと挿入した。反応バイアルの温度を155℃まで高め、そしてさらに30分間にわたって加熱し続けた。反応バイアルをブロックヒーターから取り出し、そして凝縮器/トラップ集成体を解離して廃棄し、さらにバイアルを室温まで冷ましておいた。
【0095】
第6に、反応バイアルに0.5 mlの無水エタノールを添加した。バイアルを静かに旋回させ、そして線量キャリブレータ内でアッセイした。
【0096】
第7に、標識付き粗生成混合物の放射性TLC分析をシリカゲル上で行った(クロロホルム/メタノール/水、65/35/4)。
【0097】
第8に、5 mlの無水エタノール中に1.0 gの樹脂を30分間にわたって予浸漬することにより、Amberlite IRA 400樹脂カラムを準備した。エタノールをデカントし、そして樹脂を5mlのエタノールでさらに2回すすいだ。濡れた樹脂を3 ml使い捨てシリンジ・バレル内に添加した。シリンジ・バレルはグラスウール栓を下側に有し、そしてAcrodiscフィルター及び2路コックを装着されていた。放射性ヨウ素処理型粗生成物のエタノール溶液を、樹脂カラムを通して5 mlバイアル内に徐々に溶離した。
【0098】
第9に、隔壁を挿入し、そして溶剤を窒素流で吹き払った。窒素流を開始する前に、バイアルの出口にチャコール・シリンジを取り付けた。乾燥したら、50 μlのエタノールを使用して内容物を希釈し、そして300μl v-バイアルに移した。源となったバイアルを第2の50 μlエタノール洗浄ですすぎ、そしてv-バイアルに移した。
【0099】
第10に、HPLCポンプを安定化し、そして10 ml/分の溶剤流を確立した。Perkin-Elmerカートリッジ・シリカ・カラム(4.3 X 33 mm, 3 μmシリカ)上でHPLCによって、反応混合物を精製し、10 ml/分のヘキサン/イソプロパノール/水(40:52:8)で溶離した。230及び254 nmのUVによって、そして放射能によってピーク検出を実施した。適切なピークが滅菌バイアル中に捕集されたら、放射性TLC分析のための小試料を取り出し、そして残りの溶剤を窒素流で蒸発させることにより、乾燥残留物として所期化合物を提供した。必要に応じて比活性を計算した。
【0100】
第11に、無水エタノール中の5% Polysorbate 20(登録商標)の原液からフラスコに、NM404 1 μg当たり0.1 μlの比で、Polysorbate 20(登録商標)を添加した。Polysorbate 20(登録商標)は、Tween 20(登録商標)の製薬等級であり、NM404を用いたヒト及び動物の研究に現在使用されている。溶剤を10分間にわたって<30℃で、回転蒸発によって除去した。残留物を、十分な滅菌水中に混合することによって溶解し、これにより2% Polysorbate-20溶液を産出した。配合された生成物を、滅菌0.2 μm Pall-Gelman Acrodiscフィルター(13 mm)を通して、乾燥滅菌多用量バイアル(Hollister-Stier)内に入れた。このバイアルは、別の滅菌0.2 μmフィルターで通気される。生成物溶液100 μlをQC分析のためのバイアル内に移した。
【0101】
第12に、放射能を線量キャリブレータ内で測定し、そして品質管理試験(滅菌性、無発熱原性)を実施した。
【0102】
研究間の潜在的な合成上の差異を最小限にするために、最近急性毒物試験を受けた元の貯蔵バッチから全ての無標識NM404を取り出した。本発明者によって開発されたピバリン酸溶融物中の同位体交換反応(Weichert JP, Van Dort ME, Groziak MP, Cousell Re 「ピバリン酸における同位体交換を介した放射性ヨウ素処理(Radioiodination via isotope exchange in pivalic acid)」Int J Appl Rad Isotopes, 1986; 37.907-913)によって、或いは、本明細書中に記載された新しい方法によってNM404を普通どおり放射性ヨウ素処理し、そして本発明者によって記載された標準的な方法に従って注射用に調製した(Rampy MA, Brown RS, Pinchuk AN, Weichert JP, Skinner RW, Fisher SJ, Wahl RL, Gross MD, Ethier SP, Counsell RE「乳癌の2つの齧歯類モデルにおける放射性ヨウ素処理型アルキルホスホコリンの生物学的配置及び画像形成(Biological disposition and imaging of a radioiodinated alkylphosphocholine in two rodent models of breast cancer)」J. Nucl Med. 1996; 37(9). 1540-1545)。この手順は、NM324を用いたヒトに対する最初の試行のための滅菌材料を調製する際に効果的に用いられ、そして125I及び131Iを標識付けされたNM404を調製するために、40を上回る回数用いられた。一般に、HPLCによる精製及び正確な質量定量化に続いて、放射性医薬品を無水エタノール(50-500 μl)及びPolysorbate 20(登録商標)(0.1 μl/化合物1 μg)中に溶解した。エタノールを真空下で除去し、そして残留物を滅菌水中に溶解することにより、Polysorbate 20含有率2-3 %以下の最終溶液を提供する。滅菌0.2 μmフィルターユニットを通して濾過することにより滅菌を達成した。最終放射化学的純度は、患者に使用する前に97%を超えなければならない。既知の質量標準を用いたHPLC分析によって、最終比活性を定量化して計算し、そして減衰の問題を回避するために、希釈してPE Wallacガンマ-カウンター内でカウントすることにより放射能(125I)を定量化した。131Iを含む、より高いエネルギーの同位体の定量化は、これらの同位体のための設定装置が組み込まれた線量キャリブレータを使用して行われた。放射性ヨウ素処理型NM404 100 μg当たり1mCiの比活性が、典型的には達成された。注射容積は典型的には1マウス当たり約100 μlであった。組織分布データは、組織1グラム当たりの注射投与量パーセント(±SEM)として表し、そしてまた、発表済の手順(Rampy MA, Brown RS, Pinchuk AN, Weichert JP, Skinner RW, Fisher SJ, Wahl RL, Gross MD, Ethier SP, Counsell RE「乳癌の2つの齧歯類モデルにおける放射性ヨウ素処理型アルキルホスホコリンの生物学的配置及び画像形成(Biological disposition and imaging of a radioiodinated alkylphosphocholine in two rodent models of breast cancer)」J. Nucl Med. 1996; 37(9). 1540-1545)に従って器官全体を秤量するときには、1器官当たりの注射投与量パーセントとして表した。各時点において、組織1グラム当たりの注射投与量パーセントを基準として、組織に対する腫瘍の比を計算した。
【0103】
一般的な組織分布(TD)分析:本発明者によって開発された標準手順(Weichert JP他、「肝臓のための潜在的CT画像形成剤としての、ポリヨウ素処理型トリグリセリド類似体(Polyiodinated Triglyceride Analogs as Potential CT Imaging Agents for the Liver)」 J Med Chem 1995; 38.636-646)に従って、雌のマウスにおいて、生体分布研究を行った。放射性ヨウ素処理型NM404(100 μl中5 μCi)を、尾の静脈注射を介して投与した。所定の時点で、ペントバルビタール麻酔下で放血により動物(1時点当たり3匹)を安楽死させた。血液、血漿、副腎、膀胱、骨髄、脂肪、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、脾臓、卵巣、皮膚、甲状腺、及び腫瘍を含む全部で16種の組織を摘出し、すすぎ、そして余分な組織がないように解剖した。大きな器官は切り刻み、2部ずつの組織試料を秤量し、そして同位体カウントのためにプラスチック管内に入れた。注射部位及び残りの死骸の放射能もウェル・カウンターで測定した。これらの標準的な手順は、適切な動物ケア及び放射線安全性の認可を受けて、発明者の研究所で多年にわたって活用されている。組織分布テーブルを、コンピュータ・プログラムによって生成した。このコンピュータ・プログラムは、注射投与量パーセント/g、%kg投与量、及び注射投与量パーセント/器官±SEMベースで、崩壊補正された組織放射能濃度データを作る。各時点で、組織1グラム当たりの注射投与量パーセントを基準として、組織に対する腫瘍の比を計算した。NM404注射から4, 7, 14, 21及び28日目に腫瘍担持マウスに、対照TD研究(3匹のマウス/時点、合計15匹のマウス)を実施することにより、治療計画全てに関する比較TDテーブルを確立した。
【0104】
一般的な画像形成プロトコル:動物は125I-NM404(10 μCi)を、尾の静脈注射を介して受容し、その後の所定の時点に、麻酔され(ペントバルビタールナトリウム麻酔、0.06 mg/g bw)、マウスの画像形成のために改変されたBioscan Ar2000放射性TLCスキャナーを使用して放射性核種を受けた(2mm 高分解能コリメータ/1レーン当たりの捕捉時間1分/1mmレーン増分)。データを定量化して、BioscanのWinscan 2Dソフトウェアを使用して提示した。摘出したらすぐに、Bioscanユニット上で対照腫瘍及び処理腫瘍を、またex vivoでスキャンして、全身放射性核種減衰を排除することにより、より正確な関心領域(ROI)分析を可能にした。中分解能捕捉パラメータを使用して、動物(ペントバルビタールナトリウム麻酔、0.06 mg/g bw)にマイクロCTスキャン(Imtek MicroCAT I, 390ステップ捕捉/43Kvp/40 μA; CTI Molecular Imaging, Inc., Knoxville, TN)を施した。データ集合を3次元に再構成し、AMIRA 3D視覚化ソフトウェアを用いて視覚化する。ソフトウェアはROI密度分析及び便利なスクリーン上測定を可能にする。
【0105】
実施例2:高特異的活性合成及び放射性標識付け
高特異的活性NM404の合成において、低温NM404をまず、Pd触媒の存在において、ビス-(ネオペンチルグリコラト)ジボロンとカップリングすることにより、アリールボロネートエステルを形成する。第2の工程では、アリールボロネートエステルに、放射性ヨウ化ナトリウム及びクロラミン-Tを使用して、放射性ヨード脱ホウ素化を施すことにより、高特異的活性を有する放射性ヨウ素処理型NM404を得る。
【0106】
【化2】

【0107】
ジボロン酸のグリコールエステルの他のエステル、例えばビス-(ピナコラト)ジボロン及びビス-(ヘキシレングリコラト)ジボロンを、第1の工程に使用することもできる。
【0108】
【化3】

【0109】
高特異的活性合成の重要な基準は、最終標識付き化合物、例えば131I-NM404及びその前駆体、ボロネート化合物が、HPLCによって容易に分離可能でなければならないことである。このことは、HPLCによって分離されたNM404の文字どおり分子毎に放射性標識が付けられるのを保証する。化合物の理論上の特異的活性は約2500キュリー/mmolである。既存の同位体交換法は、約10キュリー/mmolの特異的活性に制限される。治療に際して、このことは重要である。それというのも、患者の治療のために必要となる化合物、例えば放射性同位体131I- NM404を有する化合物の考えられ得る量が約60〜100mCiであるからである。新しい高特異的活性合成は、現在利用可能な同位体交換条件と比較して、放射性標識付きNM404の著しく大きい質量投与量を提供し、特に、これは131I類似体の治療投与量を達成するために必要となる。
【0110】
実施例3:PLE類似体を用いた前臨床試験
上記同位体交換法を用いて、リン脂質エーテルをヨウ素放射性同位体で容易に標識付けすることができる。ヨードフェニルリン脂質エーテル類似体は、各分子に固定される放射性ヨウ素が容易なin vivo脱ヨード化に対して安定的であるように、具体的に設計された。20種を上回る放射性標識付きPLE化合物が合成され、そしてin vitro及びin vivoで試験される。これらのうちの2種、すなわちNM294及びNM324[12-(3-ヨードフェニル)-ドデシル-ホスホコリン]は最初に、動物腫瘍局在化研究において最も有望であることを示した。125Iで標識付けされたこれらのプロトタイプ化合物は、下記動物腫瘍モデルにおいて、所定の時間経過後に、腫瘍内に特異的に局在化した:1) Walker 256癌肉腫を担持するSprague-Dawleyラット;2)乳腺腫瘍を担持するLewisラット;3)Dunning R3327前立腺腫瘍を担持するCopenhagenラット;4)Vx2腫瘍を担持するウサギ;及び5)ヒトの乳腺腫瘍(HT39)、小細胞肺癌(NCI-69)、結腸直腸腫瘍(LS174T)、卵巣腫瘍(HTB771P3)、及びメラノーマ腫瘍を担持するヒト胸腺欠損マウス。これらの物質の最適な腫瘍局在化は1〜数日かかる。
【0111】
PLE類似体を用いた力学的研究:NM324及びNM404の構造は、ヨーロッパで最も広く研究されている抗腫瘍エーテル脂質であるミルテフォシン(ヘキサデシルホスホコリン)と同様である。ミルテフォシン及びいくつかのその他の抗腫瘍リン脂質エーテル類似体の抗腫瘍特性は、前立腺癌腫、膀胱癌腫、及び奇形癌、マウス及びヒトの白血病、並びに肺癌、結腸癌、卵巣癌、脳腫瘍及び乳癌を含む広範囲の腫瘍細胞系において実証されている{Arthur G, Bittman R. 「抗腫瘍エーテル脂質による細胞シグナル経路の阻害(The inhibition of cell signaling pathway by antitumor ether lipids)」Biochem Biophys Acta 1998, 1390:85-102)。多くの抗癌剤とは対照的に、これらのリン脂質エーテル類似体は、DNAに直接的には結合せず、また変異原性ではない。正確な抗増殖性作用メカニズムは決定されていないものの、これらは明らかにいくつかの腫瘍細胞部位に作用する。これらの化合物は、輸送、サイトカイン形成の促進、アポトーシス誘発、並びに、種々の重要な脂質代謝及びほとんどが細胞膜内に配置されている細胞シグナル構造の妨害、を含む種々様々な細胞効果と関連している。細胞内への取込み様式に関しては議論の余地があるものの、報告の大部分は今や、これらのエーテル脂質が細胞膜内に直接的に吸収され、そこに蓄積するという考えを支持している。幅広く信じられているのは、これらの物質が、膜リン脂質代謝を混乱させることにより作用するということであるが、しかしこれらの物質を用いた細胞分布研究は、均質化処置中及び細胞亜分画処置中の自然発生的な細胞区画再分布によって制限されている。本発明者が採用しているトレーサー画像形成投与量(数μg)とは対照的に、1日当たり300〜1000 mgを概ね上回る投与量でのみ、抗腫瘍効果が見られる。
【0112】
NM404の先行体であるNM324を含むいくつかのPLE類似体上で、正式の代謝研究を行った。これらの研究において、PLE代謝と関連する酵素に対する基質として役立つ能力を決定するために、各物質を試験した。図15に示すように、PLEの代謝には、3つの主要な酵素的経路が関与している。O-アルキルグリセロールモノオキシゲナーゼ(AGMO)が、長鎖脂肪アルコール又は脂肪酸を形成するためのC-Iにおけるアルキルエーテル結合の切断に関与している。他方において、ホスホリパーゼC (PLC)及びD (PLD)は、それぞれグリセロール生成物又はホスファチジン酸生成物を生じさせる。ミクロソームAGMO酵素製剤を用いた場合、NM324は、広く代謝される[3H]-リソ-PAF(血小板活性化因子)と比較すると、この酵素に対する基質ではなかった。同様にしてNM324を、Bacillus cereusから単離されたPLDに対する基質として分析し、そしてNM324は、著しく加水分解される1-パルミトイル-2-[3H]-パルミトイル-L-3-ホスファチジルコリン(DPPC)と比較して、加水分解されなかった。
【0113】
最後に、いくつかのPLE類似体にPLDアッセイを施した。キャベツから単離されたPLDは、酵素反応がエタノールの存在において実施される場合に、キャベツ形態がホスファチジン酸に加えて、ホフファチジルエタノール型生成物を産出するという点で、哺乳動物PLDと類似している。これらのアッセイ条件に晒したPLE類似体のいくつかは、ホフファチジルエタノール生成物を生じさせた。このことはPLDと相互作用可能であることを示す。
【0114】
Walker 256腫瘍細胞、ラット筋細胞(H9c2)、及びラット幹細胞を含む種々の細胞系において、いくつかのNM404前駆体にさらにin vitro代謝研究を施した。これらの研究において、種々の時間にわたるインキュベーション後に形成された放射性標識付き生成物に基づいて、代謝の程度を決定し、そしてその結果を細胞数又は細胞タンパク質量に対して正規化した。続いてインキュベーション媒質及び細胞懸濁液から脂質を抽出したところ、Walker腫瘍細胞内のPLE代謝体の発生がほとんどないことが明らかになり、これに対して研究時間が48時間にわたる筋細胞及び肝細胞の両方には、代謝体の有意な生成が見られた。これらの結果は、全ての類似体において完成されたin vivo生体分布研究とうまく相関する。いくつかの研究が完成されていはいるが、腫瘍細胞内の放射性標識付きPLE類似体の取込み及び保持における代謝性捕捉の役割は、十分には定義されておらず、目下、なおも試験が活発に行われる分野である。
【0115】
NM324の臨床評価:いくつかの有望な第1世代PLE類似体のうち、NM324は、化学合成するのがより容易であり、ひいては、最初の臨床研究のためのリード化合物としてこれを選択した。ヒト肺癌患者5人において得られた画像は腫瘍を検出したが、肝臓の高い放射能(図2)により画像は判りにくかった。
【0116】
第2世代PLE類似体:肝臓取込み量を減らし、そしてプラズマ相を長くするために、9種のNM324構造類似体を合成し、そして、Dunning R3327前立腺腫瘍を担持するCopenhagenラットにおける初期画像分析のために、125Iで放射性標識付けした。この初期スクリーンに基づいて、NM347、NM404[18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン]、及びNM412(図3)を選択して、さらに、動物腫瘍モデルにおける画像形成及び生体分布分析をこれらに施した。
【0117】
動物モデルにおけるNM404及びNM412を用いた最近の画像形成研究は、双方が、種々の腫瘍を視覚化する上でNM324よりも優れていることを示した。注目すべきなのは、NM404及びNM412の静脈内投与に続いて、リンパ節転移が、転移性前立腺腫瘍モデルにおいて明白に描かれたことである。最も重要なことには、トレーサーは、関与しないリンパ節によっては保持されなかった(図4A)。
【0118】
図4A及び図4Bは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体のIV投与に続く、SCIDマウス腫瘍内のリン脂質エーテル類似体NM404(図4A)及びNM324(図4B)の分布をシンチグラフィで比較した結果を示す。注目すべきなのは、NM324(図4B)活性のほどんとが消化管55内に見いだされ、腫瘍50(大腿部に埋め込み)内には見いだされなず、これに対して、NM404(図4A)は左右の大腿部両方において腫瘍50を正しく同定したことである。時間とともに、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM404は、組織の残りと比較して、腫瘍50内により選択的に局在化されるようになる。この組織の残りは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM324に関しては観察されなかった。図4Cは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM404のIV投与後のシンチグラフィ画像を示し、この画像は、一次腫瘍部位(脚)が外科的に除去されたCopenhagenラットにおけるDunning R3327転移性前立腺腫瘍(「tumor」)内にリン脂質エーテル類似体が局在化することを示す。死後、2つのリンパ節腫瘍が検証された。
【0119】
この発見は、前立腺モデルにおいて達成されたものではあるが、特に乳癌にも当てはまる。乳癌の場合、リンパ節転移はこのような重要な予後指標である。ヒトA549 NSCLC腫瘍を担持するSCIDマウスにおいて行われた予備研究は有望であり、そしてNM404が、肝臓によるNM324の高い最初の通過クリアランスの問題を克服することを実証した。NM404は、優れた腫瘍視覚化を示し、これは特に、遅延画像において顕著であり、しかもNM324と比較して、肝臓及び腎臓による取込みは最小である(図4A及び図4B参照)。これらの生体分布研究はさらに、腫瘍内に存在する高い放射性レベルを確認した。画像形成結果はNM404とNM412とで同様であったが、ラット内で得られた線量測定データは、NM412と比較してNM404を用いた場合の方が、見いだされる腎臓線量が低いことを明らかにし、ひいてはさらなる研究のためにNM404を選択した。前立腺癌及びA549肺癌腫瘍モデルを有するSCIDマウスにおけるNM324及びNM404の比較生体分布データは、正常組織に対する腫瘍の比が高いこと、そして、NM404の注射投与量の25%を上回る量を腫瘍が取込むことを明らかにした。
【0120】
種々様々な腫瘍モデルにおける取込み特性を決定することを目標として、マウスモデルにおいて実施された動物画像形成研究を、表1に要約する。B6 ApcMin/+マウスにおける予備結果は、NM404が腺腫性ポリープによっては取込まれず、このモデルにおける乳腺癌によって取込まれて保持されることを示し、ひいては悪性腫瘍細胞に対する特異性が考えられ得ることを示す。これらの研究は、腫瘍を非侵襲的に特徴付けするNM404の潜在能力を決定することを目標としている。NM404は、研究した腺癌モデル毎に、有意な腫瘍取込み及び保持を表示した。
【0121】
CT-26マウス腫瘍モデルの妥当性:発明者は、マウスの脇腹にCT-26細胞を皮下接種されたマウス(BALB/Cマウス)モデルにおいて、腫瘍応答の予測物質としてNM404を探究した。CT-26細胞系は、分化度が低いマウス腺癌である。この腺癌は、Balb/cマウスにN-ニトロソ-N-メチルウレタンを直腸注射することにより誘発させた。細胞系はin vitroで成長しやすく、その結果、皮膚(図5)又は肝臓内の脈管構造に注射する(尾静脈注射、転移モデル)と、予測可能な成長パターンが生じる。図5は、CT-26細胞の皮下注射を施されたマウス内の腫瘍の成長を示すグラフである。Weber, SM, Shi F他「インターロイキン-12遺伝子転移は、マウスCT26肝臓腫瘍のCD-8依存性退縮をもたらす(Interleukin-12 gene transfer results in CD8-dependent regression of murine CT26 liver tumors)」Ann Surg Oncol 1999; 6:186-194;Imboden M他「マウス腺癌上のMHCクラスI発現レベルは、免疫サイトカイン療法の抗腫瘍エフェクター・メカニズムを変化させることができる(The level of MHC class I expression on murine adenocarinoma can change the antitumor effector mechanism of immunocytokine therapy)」Cancer Res 2001; 61:1500-1507を参照されたい。細胞系は、結腸直腸癌に由来するので、このマウスモデルは、これらの研究には臨床的に極めて妥当性が高い。
【0122】
CT26腫瘍におけるNM404を用いた画像形成結果:この研究は、放射性ハロゲン標識付きリン脂質エーテル類似体NM404が、皮下CT26異種移植片内に局在化されることを示す。2匹のマウスに、125I-NM404(10 μCi)を注射し(IV尾静脈)、続いて、注射から1, 4, 7日目に、改変されたBioscan Ar-2000 TLC画像形成スキャナー上で動物の画像を形成することにより、放射性同位体分布の2次元シンチグラフィ画像を捕捉した(Bioscan, Washington, D.C;高分解能1 mmコリメータ及び2-D画像捕捉及び分析ソフトウェアを装備)。7日目に、動物を安楽死させ、そして腫瘍を取り出し、写真撮影し、Bioscan上でex vivoスキャンした(図6)。ex vivoスキャンは、ヨウ素-125と関連する重大な組織減衰作用の理由から、発明者の研究室における標準プロトコルである。各動物にはまた、7日目に、安楽死及び腫瘍解剖の前に、マイクロCTスキャンを施した(図7)。
【0123】
組織形態と放射性分布とを比較することにより、放射能の局所性ホットスポットを、ex vivoシンチグラフィ画像上の全ての腫瘍と視覚的に相関した(図6A-C)。図6Aは、摘出されたCT-26腫瘍50及び摘出された左右のリンパ節を示す写真画像である。図6Bは、図6Aの摘出された腫瘍及びリンパ節を示すシンチグラフィ画像であり、有意な放射能60が腫瘍に局在化し、そしてリンパ節に局在化する放射能はほとんど又は全くないことを示す。図6Cは、図6Aのデジタル写真画像と、図6Bのデジタル・シンチグラフィ画像とを融合することにより生成された画像であり、放射能と腫瘍との相関関係を示す。
【0124】
写真画像にリンパ節を形態学的に目で見ることはできるが、これらと関連する放射能はほとんど又は全くなかった。このことは腫瘍細胞浸潤がないことを示す。図6及び図7における主な腫瘍を、組織学的に腺癌として分類した。他の研究において、多種多様の皮下腫瘍をマイクロCTを使用してスキャンした。全ては最小直径300ミクロン未満のサイズまで容易に検出可能であった。
【0125】
【表1】

【0126】
腫瘍ターゲッティング・メカニズムは、所定の時間にわたる選択的な腫瘍保持に関与すると思われるので、比較的短命の核種、例えば18F又は99mTcでさえも、現時点での標識付けには実用的でない。しかし、専らヨウ素の放射性同位体で標識付けされたモノクローナル抗体の早期使用と同様に、別の標識、例えばヨウ素-124でPLE類似体を標識付けすることも可能である。この場合、物理的半減期は、PLE腫瘍取込み及び保持動態と良好に適合する。伝統的なガンマ・カメラ画像形成と比較してPET画像形成がもたらす分解能の増強及び3次元能力を活用するのに加えて、このアプローチは、腫瘍細胞内へのその取込みが、グルコースの利用とは異なる生化学メカニズムを介して発生する点で、18FDGの使用を補完する。
【0127】
上述のように、目下利用可能なトレーサー(例えば67Ga及び18FDG)の実用性は、炎症から新生物を区別するための特異性が欠如していることにより制限される。しかしPLE物質を用いた予備研究は、臨床的に重大なこの制限を克服することを約束した。この制限において、ラットにおけるカラゲーニン誘発型肉芽腫は、バックグラウンド活性を上回って視覚化することができず、組織保持も示さなかった。Counsell-RE他「放射性ヨウ素処理型リン脂質エーテルを用いた腫瘍視覚化(Tumor visualization with a radioiodinated phospholipid ether)」JNucl Med 31(3):332-336, 1990。しかしながら、その研究において対照として利用されたクエン酸ガリウムは、肉芽腫中に有意に集中した。このような発見はさらに、潜在的に有用な腫瘍選択的画像形成剤としてPLE類似体物質を用いて、発明者の研究の幅を広げることを正しいものと評価する。
【0128】
ヒトの研究:動物における極めて有望な薬物動態データ及び画像形成データに基づいて、本発明者は、放射性標識付きリン脂質エーテルの研究の舞台を臨床分野に移すよう勧められた。Buffalo在、Sate University of New(SUNY)の毒物学リサーチセンターで行われた研究において、無標識NM324は最初、ラット及びウサギに及ぼすその急性毒性作用に関して評価された。これらの多投与量毒物学研究において、32 mg/kgの投与量レベル(最高予想ヒト投与量の150倍超)では、毒性作用は見られなかった。さらに、この高い投与量レベルで、血小板活性化特性は実証されなかった。
【0129】
放射性薬物調査委員会(RDRC)によってヒトへの投与のための放射性標識付き物質の承認を得るために、5人の正常な、疾患のない人間に無ラベルNM324を投与した。これらの被験者は、症状、臨床試験、バイタルサイン及び連続血液化学検査によって明らかにされた毒性の証拠を有しなかった。
【0130】
予備実現可能性プロジェクトとして、Ann Arbor, Michigan VA病院において、131I-標識付きNM324を用いて、RDRC承認下で、4名の肺癌患者の研究を行った。下で詳細に説明する肺癌患者の3人全てにおいて、肺癌が明らかに視覚化された(2名はNSCLCであり、1名は小細胞肺癌であった)。種々の時点における腫瘍取込み度は、1+(バックグラウンドを上回るものとして辛うじて知覚可能)から3+(強力な取込み、正常構造よりもはるかに多い)までであった。なお、これらの初期研究のために選ばれた患者は、既知の比較的大型の癌を有していた。腫瘍の病期決定の問題が存在する患者を研究することは、この段階では意図されなかった。
【0131】
病歴:
患者01は、右中葉肺塊の、右肋骨内への腐食、組織学的には、おそらくは肺起源の腺癌を有する55歳の患者であった。6時間目の初期131I-NM324シンチグラフィ画像は、右側中肺野内の取込み局所を示した。シンチグラフィ研究とは無関係の理由から、患者は、更なる画像形成セッションのために6時間を過ぎても病院に戻れなかった。
【0132】
患者02は、大動脈肺動脈窓及び左門から延びる大型(9x7x7.5 cm)の分葉状縦隔腫瘤を有する62歳の男性であった。組織タイプは小細胞未分化(燕麦細胞)癌であった。131I-NM324シンチグラフィ画像は、左上肺内の取込み局所を明らかにした。この取込み局所は、正常バックグラウンド活性に対して経時的に強度を増大させた。
【0133】
患者03は、右上葉NSCLC(腺癌)を有する74歳の男性であり、以前に放射線療法で5か月間治療を受けていた。病気が左小舌(2.5 x 2 x 3 cmの塊)、下部胸椎(ほぼT8)、及び肝臓の右葉内に再発した。131I-NM324シンチグラフィは、肺塊病変部及び胸椎病変部内に十分に画定された取込みを示した。この取込みは、バックグラウンドに対するターゲットの比の経時的な増大を実証した(図2)。肝臓転移部内の取込みは、正常な肝臓バックグラウンドを上回る程度には分解できなかった。
【0134】
これらの研究は、放射性標識付きPLE類似体が臨床的に有望であることを早くに垣間見ることを可能にした。131Iは、画像形成のための次善の同位体ではあるが、3つ全ての肺腫瘍内の取込みは明確に描写された。事前の動物生体分布試験に基づいて期待された通り、患者02及び03において明示されたように、腫瘍内の活性は経時的に増大した。患者03において、正常組織に対する腫瘍の比は、2日目の2.74から7日目の4.23に増大した。患者01は、6時間を過ぎても、その後の画像形成セッションに戻らなかった。バックグラウンドに対するターゲットの比の増大は、腫瘍視覚化のためのメカニズムが、単に異常血流又は腫瘍過剰脈管質に基づいただけのものではないという強い証拠を形成する。確かに、99mTcヒト血清アルブミンを使用した動物研究はこのことを確証した。
【0135】
CT-26結腸腺癌異種移植モデル:異種移植結腸腺癌腫瘍モデルにおいても、NM404を評価した。局所性肝臓腫瘍を形成するために、雌のBalb/Cマウスの肝実質内に直接的にCT-26細胞(細胞数5 x 105/50 μl)を予め注射した。
【0136】
画像形成研究:ピバリン酸溶融物中の同位体交換反応を介して、125IでNM404(図3A、100 μg)を放射性ヨウ素処理した。Weichert JP他、Int J Applied Radiat Isot, (1986)37(8):907-913。HPLC精製に続いて、これを2% Tween-20水溶液中に溶解した後、3匹のTGF-α内生的マウス中に、或いはCT-26-腫瘍を担持する3匹のマウス中に尾静脈注射(高特異的活性 15 μCi/20gマウス)を施した。マウスに麻酔を施し、そして改変されたBioscan Ar-2000 TLC画像形成スキャナー(1レーン当たり捕捉時間2分で2mmの増分、及び1 mm高分解能コリメータ)上で、またImTekマイクロCTスキャナー(390ステップ)内で、解剖学的相関のために注射後最大21日間にわたってマウスをスキャンした。Amiraソフトウェアを用いてマイクロCT画像を表示した。犠牲にした時に、腫瘍担持肝臓を最初に摘出して、そしてex vivoスキャンした。次いで腫瘍を摘出し、秤量し、ex vivoスキャンし、そして放射能を定量化した。病変部試料を組織学的分類のために提示した。
【0137】
結果及び議論:NM404を用いた初期画像形成結果(図9、図10)は、自然発生型及び埋め込み型両方の肝臓内癌腫内の顕著な取込み(1 g当たり投与量の>20%)、及び長時間の保持を示した。腫瘍のNM404保持は、所定の研究終点である21日間にわたってこれらの動物において存続した。コントラストを増強されたマイクロCT画像は、全ての肝臓腫瘍の存在及び正確な位置を確証した(図9、図11)。腫瘍組織を脂質抽出し、続いてHPLC分析することにより、放射能が親化合物にまだ関連していることが示された。以前の細胞培養及びin vivo動物モデル研究において観察されたように、NM404は明らかに、正常細胞から代謝されて排除されるが、しかし、腫瘍細胞膜内には代謝的に捕捉されるようになる。
【0138】
結論:試験された全ての従来の腫瘍モデルに当てはまるように、NM404は、この研究で評価された自然発生型及び異種移植型両方のマウス肝臓腫瘍モデルによって選択的に、そして長時間にわたって保持されることを示した。
【0139】
実施例4:ApcMin/+内生的乳腺癌モデルにおける過形成及び新生物形成に対する特異性
材料及び方法:ApcMin/+マウスモデル。このモデルは、ApeのMin対立遺伝子を担持するマウスから成る(ApeMin/+マウス)。このモデルは、雌ApcMin/+マウスが、乳腺過形成、乳癌及び腸腺腫を発生させる傾向がある点で、異種移植モデルを凌ぐ特定の利点をもたらす。C57BL6/J遺伝的バックグラウンドでは、未処理の雌の約5%が、100日齢までに乳腺腫瘍を発生させる。Moser, AR他、Proc Natl Acad Sci USA(1993)90:8977-81。乳房病変の発生率及び多重度は、直接作用性アルキル化剤であるエチルニトロソ尿素(ENU)を単回投与することによって増大させることができる。ENU処理の結果、B6 ApcMin/+雌の90%が、処理から60日以内には、平均3つの扁平上皮細胞癌(SCC)を発生させるが、しかし過形成病変をほとんど発生させない。
【0140】
遺伝的バックグラウンドは、発生する乳房病変の発生率、潜在性、及びタイプに影響を与え得る。例えば、FVBxBo ApcMin/+雌マウスは、処理から120日以内に、1マウス当たり平均0.2個の乳腺腫瘍を発生させるが、しかし、発生させる過形成は4つである。Balb/xB6 ApcMin/+は、1マウス当たり平均1.8個の乳腺腫瘍及び0.6個の過形成を発生させる。Moser AR, Hegge LF, Cardiff RD Cancer Research (2001)61:3480-3485。FVBxBo及びBALBxBo ApcMin/+マウスは、乳房SCC及び腺癌(AC)を発生させる。
【0141】
画像形成研究:ピバリン酸溶融物中の同位体交換反応を介して、125IでNM404(図3A、100 μg)を放射性ヨウ素処理した。HPLC精製に続いて、これを2% Tween-20水溶液中に溶解した後、6匹の雌ApcMin/+マウス中に、尾静脈注射(15 μCi/20gマウス)を施した。マウスに麻酔を施し、そして改変されたBioscan Ar-2000 放射性TLCスキャナー(1レーン当たり捕捉時間2分で2mmの増分、及び1 mm高分解能コリメータ)上で、またImTekマイクロCTスキャナー(390ステップ)内で、解剖学的比較のために注射後最大30日間にわたってマウスをスキャンした。Amiraソフトウェアを用いてマイクロCT画像を表示した。犠牲にした時に、乳腺又は摘出された腫瘍をex vivoで画像形成し、病変部を摘出し、秤量し、そして放射能を定量化した。病変部試料を組織学的分類のために提示した。必要な場合には、本発明者の研究所で開発され、長いマイクロCT捕捉時間に適した長時間作用型CT血液プール造影剤(BP20)を、CTスキャン前に静脈内注射することにより血管の視覚化を助けた(図14)。Weichert JP他、Radiology (2000)216:865-871。
【0142】
結果及び議論:このモデルは、過形成性乳房病変、乳癌、及び腸腺腫が同じマウス内に発生する点で独自である。NM404を用いた初期画像形成結果(図12、図13)は、直径2-15 mmの全ての自然発生型乳癌内の顕著な取込み(1 g当たり投与量の>20%)、及び長時間の保持を示した。腫瘍局在化は迅速に見えるが、バックグラウンド放射能が、身体クリアランス期中に、肝臓及び消化管内に数日間にわたって存続する。放射性の尿及び便のHPLCは、代謝体の存在を示し、また、親NM404の存在を示さなかった。腫瘍のNM404保持は、所定の研究終点である21日間を超える時間にわたって存続した。しかしながらNM404は、これらのマウスにおいて頻繁に見いだされる局所性肺胞過形成又は腸腺腫性ポリープ内には局在化しない(図13)。マイクロCT画像は、全ての乳腺腫瘍の存在及び正確な位置を確証した(図14)。NM404は明らかに、正常細胞から代謝されて排除されるが、しかし、腫瘍細胞膜内には代謝的に捕捉されるようになる。
【0143】
結論:NM404は、今日まで試験された25/25動物及びヒトの異種移植腫瘍モデルにおいて、顕著な腫瘍結合活性を示した。さらに、NM404は、この自然発生的腫瘍モデルにおいて、乳腺癌及び乳房扁平上皮細胞癌によって選択的に長時間にわたって保持されることを示したが、関連する局所性肺胞過形成及び腸腺腫性ポリープ内には局在化せず、ひいては、悪性腫瘍細胞に対して選択的であるように見える。
【0144】
実施例5:NM404の選択的保持のメカニズム
序:或る特定のリン脂質エーテル類似体、例えばNM404は、多くのタイプの腫瘍細胞内部に長時間にわたって選択的に保持される。本発明者は、アッセイによってホスホリパーゼD(PLD)タンパク質の活性を評価するための酵素的アッセイ、及び定量的PCRによるPLD発現の両方を用いることによって、腫瘍細胞内のNM404の選択的保持メカニズムを評価しようと努めた。本発明者は、腫瘍細胞内のPLDレベルが低減すると、NM404を代謝し排出する能力が低下するという仮説を立てた。
【0145】
方法:hepa-1(肝臓癌)、CT26(結腸直腸腺癌)、及びTS/A(乳腺癌)を含むマウス腫瘍細胞系の単細胞懸濁液を、2種のアッセイ(1)蛍光マイクロプレート読取り装置を使用してPLD活性を評価する商業的に入手可能なキット(Molecular Probes)を使用した、Amplex(登録商標)Redアッセイ、及び(2)PLD mRNAレベルを決定するための定量的PCR、によって分析した。腫瘍細胞系を正常組織と比較した。Amplex(登録商標)Redアッセイの場合、洗剤溶液(Triton-X-100)を使用して総タンパク質を抽出し、そしてPCDの量を標準ポジティブ対照と比較した。PCRの場合、mRNAを精製し、そして逆転写酵素(Promega)を使用して、cDNAに転換した。リアルタイムPCRに用いられるcDNAを増幅するための条件は、(94℃、30秒;65℃、30秒;及び72℃、30秒)の50サイクルを含んだ(iCycle, iQmix, Bio-Rad)。PLD1のためのプライマー対は、(センス)52-TCTGGTTTCACCCCGTCAGAA-31(SEQ ID NO:1)、(アンチセンス)52-TTGCTCATATCTGCGGCGAT-31(SEQ ID NO:2)を使用した。1 μgから10-7 μgに希釈された標準的cDNA(GAPDH, Biosource)と、生成物を比較した。全てのアッセイを2部ずつ実施した。
【0146】
結果:下記表2に示すように、PLDを定量化した。PLDタンパク質活性及びmRNAレベルの両方は、全ての被験細胞系において、正常肝臓組織よりも著しく低かった(p<0.05、T-試験)。
【0147】
【表2】

【0148】
結論:PLDタンパク質活性の低減、及びmRNAとしてのPLD発現の減少の両方が、マウス腫瘍細胞系において観察された。従って、NM404の選択的保持メカニズムは、悪性腫瘍細胞内に存在する代謝ホスホリパーゼ酵素の明らかな欠如に起因し、このような欠如により、NM404物質はこれらの細胞内に生化学的にロックされるようになる。腫瘍細胞及び悪性組織内のPLD活性の低下は、他の候補抗腫瘍薬の分子ターゲットとして役立つこともできる。
【0149】
実施例6:内生的マウス乳腺腫瘍モデルにおけるNM404の治療効果
NM404治療研究のためのモデル:長期生存は画像形成研究にとって本質的なものではないが、提案された治療研究にとっては有利である。画像形成研究に使用されたモデルには、通常は動物を死に至らしめる腸腫瘍が付随している。1マウス当たりに発生する腫瘍の数を増やし、そして腫瘍担持マウスの寿命を長くすることを希望して腸腫瘍の数を減らすために、雄B6 Min/+マウスを、雌C57BR/cdJ(BR)マウスと交雑した。その結果生じたBRB6 F1 Min/+雌マウスは、ENU処理後、B6 Min/+マウス(P=0.016)よりも著しく多い乳腺腫瘍、つまり1マウス当たり平均5つ近くを発生させた。腫瘍を有するマウスの数、及び最初の腫瘍発生までの時間は、これらの2つの系統の間で差がなかった(それぞれP=1及びP=0.06)(図16)。BRB6 F1マウスの乳腺腫瘍数の増大は、B6 Min/+マウスに対するハイブリッドBRB6 F1 Min/+マウスの生存時間が有意に長い(P=2 x 10-7)ことに一部起因すると言える。
【0150】
B6Min/+マウスとBRB6 F1 Min/+マウスとは、乳腺表現型に関しては極めて類似していたが、しかし腸腫瘍の発生しやすさにおいては全く異なった。B6系統及びBR系統は、Min誘発型乳腺腫瘍形成のための感受性バックグラウンドと考えることができる。それというのも、これらのマウスは、ENU処理後短時間内で多数の腫瘍を発生させたからである。しかし、BR系統は、腸腫瘍発生に影響を与える修飾因子遺伝子座に、優性耐性対立遺伝子を担持する。このことは、更なる治療考察に対する妥当性を証明することができる。
【0151】
MinマウスにおけるNM404を用いた画像形成結果:NM404が内生的FVB x B6 ApcMin/+マウス乳房腫瘍内に局在化することを示すための研究において、2匹の動物に、125I-NM404(15 μCi)を注射し(IV尾静脈)、そして、改変されたBioscan Ar2000 放射性TLCスキャナー(高分解能2 mmコリメータ及び2-D画像捕捉及び分析ソフトウェアを装備)上で、注射後1日目、4日目及び7日目に動物の画像を形成した(図17A、図17B)。10日目に、安楽死させそして解剖することにより乳腺及び関連腫瘍を取り出す前に、各動物にマイクロCTスキャンを施した(図17)。局所性ホットスポットが、ex vivoシンチグラフィ画像上の全ての腫瘍と視覚的に相関した(図17C)。リンパ節を目で見ることはできるが、これらと関連する放射能はなかった。このことは腫瘍細胞浸潤がないことを示す。図17における主な腫瘍を、組織学的に腺癌として分類した。両マウス内には4つの乳腺腫瘍があり、全ては、摘出された乳腺のvivoシンチグラフィ画像内で容易に検出可能であった。
【0152】
NM404の放射線治療効果:125I標識付きNM404の「画像形成用」線量(15-20 μCi/20g マウス)を用いた最近のマウス腫瘍取込み及び保持研究の経過中に、いくつかの明らかな治療応答が観察されている。ApcMin/+マウス乳腺腫瘍モデルにおいて、NM404の単独静脈内注射後、腫瘍成長が静的のままであることが一般に注目されている。これらの動物のうちのいくつかは、注射から約8日目に、より大きい乳腺腫瘍の上方の全ての体毛を失った。さらに、これらのマウスは、腸腫瘍をも得、そして通常の場合、重篤な貧血を招く腸内出血を患う。これはマウスの足を白くする。注目されたのは、これらのマウスの足が、NM404の単独注射から約5日後にピンク色に戻ったことであった。これらの動物の解剖は、この齢において通常見いだされる1マウス当たりの予期腸腫瘍数20程度のうち、あったとしても極めてわずかな腫瘍しか明らかにしなかった。
【0153】
「白からピンクになる足」現象は、別個の、しかしより攻撃的なマウス腸腺癌モデルにおいても観察された。この場合NM404投与から12日目の解剖もやはり、予期腸腫瘍数のうち、あったとしても極めてわずかな腫瘍しか存在しないことを明らかにした。両腸腫瘍モデルにおいて、NM404を受容した動物は、他の未処理の同腹動物よりも容易に長生きした。これらの発見は、7匹以上をそれぞれ伴う2つの別個の同齢群において再確認された。125I-NM404を用いたこれらの観察は、この化合物並びに131I-NM404の、放射線治療用薬剤としての潜在能力を示す。
【0154】
同位体の選択:125Iは、物理的半減期が60日であり、光子放射エネルギーが35 KeVと低いため、マウス及びラットの画像形成試験に好適である。25Iはまた、治療特性をももたらし、また永続的な前立腺近接照射療法インプラント内にも現在使用される。1画像形成研究において、2匹のヌードマウスの対向脇腹の皮下に、それぞれ扁平上皮細胞1及び6の腫瘍細胞インプラントをそれぞれ接種した。SCC 1細胞とSSC 6細胞とを使用したのは、一方が他方に比べて放射線感受性であるからである。平均腫瘍サイズ(全部で4つ)が直径0.5 cmに近付いた14日後、マウスの一方は、20 μCiの125I標識付けNM404を受容し、そして他方のマウスは、無標識NM404を等質量投与量で受容した。両腫瘍が動物利用プロトコルに定義された終末サイズ限界に達したため、注射から20日後に、無標識化合物だけを受容したマウスを安楽死させなければならなかった。125I-NM404マウスにおける両腫瘍は、数週間経過後に劇的に退縮した(図18)。事実、このマウスの腫瘍は、終末サイズに決して達することはなく、そして組織切片を収集するために、マウスを80日後に実際に安楽死させた。この時点で、腫瘍の中心は壊死しつつあったが、周縁はいくらか生存可能に見えた。組織学的試験は、壊死中心及び生存可能な縁を確証した。このような観察には血液供給因子が関与し得るが、その一方で、125Iからの光子放射の結果、腫瘍周辺における電子平衡状態が悪化し、その結果として、腫瘍の「皮」の線量不足が生じることも考えられる。電子平衡問題は、放射線腫瘍研究において極めて重要である。光子は、組織と相互作用して生物学的効果を発揮する前に、これらのエネルギーによって決定された有限距離を移動する。過度に高いエネルギーを有する光子は、腫瘍小結節周辺の線量不足を招くおそれがある。それというのも、小結節を出発する光子は、それらの線量を堆積させる前に、(腫瘍の外へ)去ってしまうからである。しかし、125Iの場合、光子のエネルギーは比較的低く、このことは、極めて局所的な堆積を保証する。複雑なモンテカルロ計算によってこのような概算を精緻化することもできるが、最適な同位体を選択する最良の方法は実験である。それというのも、正確にモデル化することができない多くの因子が登場するからである(組織分布の詳細、多重パスなど)。125Iの1つの利点は、光子全てのエネルギーが低く、このことが、腫瘍を取り囲む正常組織の暴露を極めて制限されたものにすることを保証することである。
【0155】
131Iは、甲状腺癌の治療において大きな効力を持って使用されている。131Iは極めて安全な線量で、高分化型甲状腺癌の亜臨床的堆積物をコントロールすることができる。高分化型甲状腺癌は正常甲状腺と同様に、ヨウ素を極めて高い結合活性で集中させる。この活性取り込みプロセスは、正常組織への投与の制限を助ける。ヨウ素-131はベータ放射及びいくつかのガンマ放射の両方を有するが、大部分の組織への投与はベータ放射から行われる。本発明者は、低悪性度リンパ腫患者においてBexxar(131I標識付き抗体をベースとした物質)を用いて得られた結果と関連した甲状腺癌の臨床的成功に基づいて、131I標識付きNM404を選択した。大部分のベータ放射及び主に低エネルギーのガンマ放射は、腫瘍小結節自体の内部の線量均一性を最適化する。また、半減期(8日)が短くなればなるほど、125Iの半減期60日と比べて、臨床的により妥当な照射強度を提供する。これらの因子は、本発明者がこの物質の効力を最良に評価することを可能にする。131Iの潜在的な欠点は、ガンマ放射エネルギーがより高く、これにより、125Iを用いて発生するよりも多量の放射線に、隣接する周囲組織を実際に暴露してしまうおそれもあることである。ここで提案された内生的モデルにおける腫瘍は、乳腺内に末梢的に位置しており、ひいては、動物の健康全体がただちに脅かされることはない。器官毒性も研究の終点の1つであるので、周囲組織及び重要な器官系(骨髄、肝臓、腎臓、腸など)の反応を評価する。放射性標識付きNM404の組織分布データ及び実際の線量測定が、その最適な治療潜在能力を決定することになる。異なる同位体は治療環境において互いに補完しあうことが可能である。
【0156】
実施例7:NM404組成物を使用したデュアル・モダリティ仮想結腸内視術
デュアル・モダリティPET/CT仮想結腸内視術:ヒトにおけるCTスキャンによって実施される非侵襲的スキャンが、伝統的な結腸内視術よりも正確であることが報告されている{Pickhardt PJ.他「無症候の成人において結腸直腸新生物組織形成をスクリーニングするためのコンピュータ断層撮影仮想結腸内視術(Computed tomographic virtual colonoscopy to screen for colorectal neoplasia in asymptomatic adults)」, New England Journal of Medicine 349(23) 2191-200, 2003年12月4日}。伝統的な多検出器螺旋CTスキャナー上で実施されると、仮想結腸内視術は、腸管腔を腫瘍に関して解剖学的に非侵襲的スキャンすることを可能にしはするものの、空間を占める病変をポリープ(腺腫)又は腺癌(悪性)として特徴付けすることはできない。腫瘍タイプの決定は、これらの患者の治療計画や治療成績に劇的な効果を及ぼす。
【0157】
本発明の方法を用いると、腫瘍選択的ポジトロン放射剤(例えば18F-FDG又は124I-NM404)を腫瘍に前投与し、ハイブリッドCT/PETスキャナーで患者をスキャンすることにより、当業者であれば、内視術、例えば結腸内視術を用いるほどには侵襲的でなく、悪性腫瘍を解剖学的に検出し(CT)、そして機能的に分類(PET)することの両方ができる。NM404は、悪性腫瘍細胞によって取り込まれ、且つ長時間にわたって選択的に保持され、そして過形成前癌細胞によってはこのようなことは行われない(図19〜図24参照)ことが知られているので、悪性腫瘍は、再構成された仮想上の腸腔内飛行中に多量の放射能(輝き)を示すことになり、これに対して腺腫性ポリープはデュアル・モダリティ・スキャンのPET成分上では点灯しない。こうして、内視術のような侵襲的な方法に訴えることなしに、腸腫瘍のタイプを分類することができる。上記のように、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体、例えば124I-NM404は、悪性腫瘍細胞内に選択的に保持され、ひいては、18F-FDGを凌ぐ有意な利点を提供する。18F-FDGは腫瘍特異性を欠いており、また、腫瘍に加えて炎症部位及び過形成部位(Barrett食道)の両方によって取込まれることが知られている。
【0158】
その結果は、NM404がマウス・モデルにおいて悪性腫瘍細胞によって選択的に取込まれ保持されることを実証しており、そしてマイクロCTスキャナーを使用してマウスにおける仮想結腸内視術が実施されている。NM404は、ヒトの肺癌患者において目下、評価を受けているところであり、初期結果は、これが25/25動物腫瘍モデルにおいて前に示されたのと同様にこのヒト癌内に取込まれ、そして選択的に保持されることを示す。さらに、腫瘍内のその取込み及び長時間の選択的保持により、本発明者は、いくつかの異なるマウス腫瘍モデルにおいて、その放射線治療効果に起因した有意な腫瘍退縮を観察した。放射性ハロゲン標識付きNM404のような物質は、これが悪性腫瘍の検出及び治療の両方を行うことができるので、「Diapeutic(登録商標)」と特徴付けることができる。このことから、NM404のCTVPETスキャンを用いて腸腫瘍の検出及び特徴付けを同時に行う結果、124I、125I、又は131I又はこれらの混合物から選択される放射性ハロゲンで標識付けされたNM404のようなリン脂質エーテル類似体の治療投与量で、患者を続いて治療することもできる。
【0159】
静脈内注射のために調製されたNM404化合物を上記のように投与した。この例に使用された方法は本質的に、Pickhardt PJ.他「in vivoマウス腫瘍モデルにおけるポリープ検出のためのマイクロコンピュータ断層撮影結腸撮影(Microcomputed tomography colonography for polyp detection in an in vivo tumor model)」Proc. Natl. Acad. USA, 2005,102; 3419-3422に記載されているものである。全ての動物実験は、ウィスコンシン大学の米国実験動物ケア査定認可協会(the American Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)の施設内動物ケア利用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって示された承認済ガイドラインに基づいて行った。この研究のために使用された共通遺伝子系統は、C57BL/6J遺伝的バックグラウンドに由来するApe遺伝子のMin対立遺伝子を、10世代にわたって戻し交配することにより、C57BL/6J TyrC2J/+遺伝的バックグラウンド上に導入することにより作り出した。この共通遺伝子系統は、20匹のマウス中、1マウス当たり平均2.1±0.4個(SEM)の結腸腫瘍(範囲0-7)を発生させた。この系統は、マイクロCT結腸撮影を評価するための良好な系である。なぜならば、他のヒト結腸直腸癌マウス・モデルと比較して、結腸腫瘍数が相対的に多いからである。
【0160】
全部で20匹の共通遺伝子系統マウスをマイクロCTスキャンのために選択した。マウスには、新鮮な野菜、生の無塩のヒマワリの種、及び水から成る食餌を2日間随意に与え、これに続いて、マイクロCTスキャンの16時間前にチェリー風味のNuLYTELY(Braintree Scientific)を与えた。この食餌アプローチは、通常のぺレット状のマウス用の餌にしばしば見られる骨粉、及びその他の高密度充填剤によって形成されるマイクロCTの縞アーチファクトを有意に減少させる。20匹のマウス(体重17〜22 g)を、ペントバルビタール(0.06 mg/g体重、腹腔内注射)で麻酔し、1〜1.5 mlのトウモロコシ油から成る浣腸を施し、そしてマイクロCTを用いて結腸腫瘍に対してスキャンした。MRI及びCTスキャン前に、腸管に重バリウム(225 wt/vol %)を逆行するように満たした。
【0161】
麻酔されたマウスを、造影剤の直腸投与直後に腹臥でスキャンした。下記画像形成パラメータ:43-kVピーク、410 μA、390ステップ、20分スキャン継続期間を用いることにより、マイクロCTスキャナー(Micro-CAT I, ImTek, Knoxvill, TN)上で画像を捕捉した。i.v.造影剤は投与せず、また、長い捕捉時間が関与することを考えて、蠕動運動又は呼吸運動のために画像捕捉をゲート制御しようという試みも為されなかった。背面投影を伴い、そして適切なサブボリュームにわたるビーム硬化補正を伴わずにShepp-Loganフィルターを使用することにより、画像データを256 x 256 x 256ボクセル(200-μm空間分解能)として再構成した。これらのスキャナーでは、実際には著しくより高い解像度が可能ではあるが、これらの捕捉パラメータ及び再構成パラメータは、この上なく十分な空間分解能を容易に提供する一方で、生きた患者に対する放射線線量を最小限に抑える。CTスキャン直後に麻酔されたマウスを安楽死させた。
【0162】
商業的に入手可能な視覚化ソフトウェア(AMIRA, Version 3.1, TGS, San Diego)を使用することにより、各マウスからのマイクロCT画像データを分析した。このソフトウェアは2D軸方向、矢状方向、及び冠状断面画像としてデータを表示した。直腸の近くの結腸腔を、シリンジの端部によってマークした。シリンジは、造影剤がスキャン中に流出するのを防止した。放射線技師は、結腸腔を、結腸から盲腸に向かって追うことができた。ヒトにおけるCT結腸撮影のために使用されるのと同様に、2Dディスプレイのための窓レベル設定をポリープ検出のために最適化した。検出されたそれぞれの病変部の相対的な位置及びサイズを、マウス結腸の概略マップ上にマークすることにより、放射線情報と、検視上での遡及的な総病理学的所見とをマッチングさせるのを容易にした。摘出された結腸を解剖して写真撮影することにより、結腸腫瘍の形態学的な存在及び位置を裏付けた。
【0163】
摘出されたマウス結腸の総病理学的検査が、判断基準として役立った。判断基準に対しては、マイクロCT結果を比較した。マイクロCTスキャン直後に、マウスを殺した。結腸を取り出し、長手方向に切開し、デジタル写真撮影し、PBSで洗浄し、そして再び写真撮影した。全部で41個の結腸腫瘍と33個の糞石とを同定した。腫瘍は〜1 mmから最大5 mmまでのサイズであった。この処置は、in vivoマイクロCT画像を使用することにより同定されマッピングされたものに対して、検視中に観察された腫瘍及び糞石を共に一致させる可能性を提供した。
【0164】
図19A及び図19Bは、摘出されたマウス結腸のマイクロCT表面レンダリング型スキャン画像であり、図19Aでは、遠くから結腸腔内に突入する腫瘍100を示し、そして図19Bでは、より接近した有利な地点から腫瘍100を示す。
【0165】
図20A及び図20Bは、麻酔済マウスのコントラスト増強された下方GI管の高密度表面レンダリング型マイクロCT画像であり、下方腸管の結腸112及び盲腸114の位置の目印になるように、平面的な冠状スライス画像110が含まれる。バリウムを満たされた下方腸管の密度は実際には、下方腸管腔内のバリウム濃度が高いため、隣接する骨116の密度を上回る。高密度設定を有する視界から、ほとんどの軟質組織は排除される。
【0166】
図21A及び図21Bは、麻酔済マウスのコントラスト増強された下方GI管の表面レンダリング型(図21A)及び透明レンダリング型(図21B)マイクロCT画像であり、下方腸管の結腸112及び盲腸114を示す。図21Bはまた、腫瘍117と良性構造、糞石119との区別を示す。
【0167】
図22は、3.5 mm直径の腫瘍122を有する、摘出され切開されたマウス結腸120の写真である。
【0168】
図23A及び図23Bは、腸の摘出された空腸/回腸の写真画像(図23A)、及び対応するシンチグラフィ(図23B)画像である。腸腺癌のMinマウスは、125I-NM404投与から3日後に画像形成された。腫瘍130(矢印)は9 x 18 mmであった。
【0169】
図24A〜Eは、摘出されたMinマウスの十二指腸(図24A、頂部で胃と連結)、空腸(図24B)、空腸/回腸(図24C)、回腸(図24D)、及び結腸(図24E)の腫瘍の強力な放射性標識付きNM404取込みのシンチグラフィ画像である。全ての画像は同数のカウントに対して正規化されている。図2Cは10 cm長である。
【0170】
或いは、本発明のデュアル・モダリティ仮想結腸内視術において、CTスキャンの代わりに、PETと共に他の形態学的技術、例えばMRIを用いることもできる。図25Aは、CNS-1グリオーマ脳腫瘍を有するラット内に124I-NM404(100 μCi)をiv注射してから24時間後に得られた、3D表面レンダリング型MRI画像400と3DマイクロPET画像420とを重ね合わせたものを示す。Amira(v3.1)ソフトウェア(TGS, Inc., San Diego, CA)を使用して、画像を融合した。図25Bは、腫瘍420を通るコントラスト増強されたMRIスライス410であり、図25Cは、冠状MRI画像及び124I-NM404マイクロPET画像を重ね合わせたものを示し、腫瘍の存在及び位置を裏付ける。
【0171】
本明細書中に記載された例及び実施態様は、説明を目的としたものにすぎず、これに照らした種々の改変形又は変更形が当業者に示唆され、そしてこれらが本出願及び添付の特許請求の範囲の思想及び範囲に含まれることは明らかである。本明細書中で言及した全ての刊行物、特許明細書、及び特許出願明細書の全体を、全ての目的で参考のため本明細書中に引用する。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1A】図1Aは、リン脂質エーテル類似体(PLE)の取込み及び腫瘍特異的保持に対して仮説上の示差効果を及ぼす、良性細胞及び悪性細胞の相異なるリン脂質代謝を示す概略図である。
【図1B】図1Bは、リン脂質エーテル類似体(PLE)の取込み及び腫瘍特異的保持に対して仮説上の示差効果を及ぼす、良性細胞及び悪性細胞の相異なるリン脂質代謝を示す概略図である。
【図2】図2は、1 mCiの131I-NM324のW投与から1、2及び6日後に得られた患者03の前胸のシンチグラフィ画像を示す。バックグラウンドに対する腫瘍の比の経時的な増大を伴って、左小舌肺癌(T)内に取込みが見られる。
【図3A】図3Aは、NM324(図3A)、NM404(図3A及び図3B)、及びNM412(図3A)と称される3種のヨウ素処理型リン脂質エーテル類似体の化学構造を示す。
【図3B】図3Bは、NM324(図3A)、NM404(図3A及び図3B)、及びNM412(図3A)と称される3種のヨウ素処理型リン脂質エーテル類似体の化学構造を示す。
【図4A】図4Aは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体のIV投与に続く、SCIDマウス腫瘍内のリン脂質エーテル類似体NM404(図4A)及びNM324(図4B)の分布をシンチグラフィで比較した結果を示す。注目すべきなのは、NM324(図4B)活性のほどんとが消化管55内に見いだされ、腫瘍50(大腿部に埋め込み)内には見いだされなず、これに対して、NM404(図4A)は左右の大腿部両方において腫瘍50を正しく同定したことである。時間とともに、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM404は、組織の残りと比較して、腫瘍50内により選択的に局在化されるようになる。この組織の残りは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM324に関しては観察されなかった。
【図4B】図4Bは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体のIV投与に続く、SCIDマウス腫瘍内のリン脂質エーテル類似体NM404(図4A)及びNM324(図4B)の分布をシンチグラフィで比較した結果を示す。注目すべきなのは、NM324(図4B)活性のほどんとが消化管55内に見いだされ、腫瘍50(大腿部に埋め込み)内には見いだされなず、これに対して、NM404(図4A)は左右の大腿部両方において腫瘍50を正しく同定したことである。時間とともに、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM404は、組織の残りと比較して、腫瘍50内により選択的に局在化されるようになる。この組織の残りは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM324に関しては観察されなかった。
【図4C】図4Cは、放射性標識付きリン脂質エーテル類似体NM404のIV投与後のシンチグラフィ画像を示し、この画像は、一次腫瘍部位(脚)が外科的に除去されたCopenhagenラットにおけるDunning R3327転移性前立腺腫瘍(「tumor」)内にリン脂質エーテル類似体が局在化することを示す。死後、2つのリンパ節腫瘍が検証された。
【図5】図5は、CT-26細胞の皮下注射を施されたマウス内の腫瘍の成長を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、摘出されたCT-26腫瘍50及び摘出された左右のリンパ節を示す写真画像である。
【図6B】図6Bは、図6Aの摘出された腫瘍及びリンパ節を示すシンチグラフィ画像であり、有意な放射能60が腫瘍に局在化し、そしてリンパ節に局在化する放射能はほとんど又は全くないことを示す。
【図6C】図6Cは、図6Cは、図6Aのデジタル写真画像と、図6Bのデジタル・シンチグラフィ画像とを融合することにより生成された画像であり、放射能と腫瘍との相関関係を示す。
【図7A−D】図7A〜図7Dは、図6の生きたマウスのマイクロCT画像を示し、CT-26腫瘍のサイズ及び位置(矢印)を示す。3D表面レンダリング型画像及び平面的なスライス画像がそれぞれ図7A及び図7Bに示されているのに対して、冠状スライス及び軸方向スライス(90 μm厚)が、それぞれ図7C及び図7Dに示されている。
【図8A−B】図8Aは、正常体(図8A)及びRFアブレートされた(図8B)CT-26腫瘍の組織切片(H&E)の写真画像を示す。アブレートされた切片内の細胞は、膜の完全性を失い、濃化するように見える。
【図9A−B】図9Aは、125I-NM404注射から10日後の、TGF-α肝臓癌含有マウスの冠状マイクロCTスキャン(図9A)、及び背側シンチグラフィ画像(図9B)を示す。肝臓はITG、肝細胞選択的CT造影剤を使用して、マイクロCT画像上で強調されている(腫瘍=T)。
【図10A−D】図10は、NM404注射から7日後のCT26腫瘍含有マウスの写真画像(図10A)、及びシンチグラフィ画像(図10B)を示す。肝臓腫瘍の浸潤は広範囲に及んだ。このスキャンの15日前に、腫瘍移植が行われた。また、摘出済の切開された腫瘍(T)及び正常無浸潤肝臓(L)のシンチグラフィ画像(図10C)及び写真画像(図10D)も示されている。
【図11A−C】図11A〜Cは、図10A〜Dに提供されたのと同じマウスのマイクロCT画像を表し、複数のCT26腫瘍の存在を示す。ITG、肝細胞選択的造影剤を使用して、肝臓が強調されたことを示している。これらの画像は、腫瘍細胞移植から10日後、そして図10B及び図10Cのシンチグラフィ画像の5日前に得られた。腫瘍が矢印によって示され、また、胆嚢は「GB」によって示される。
【図12A−D】図12A〜Dは、125I-NM404(15 μCi)のIV投与後の種々の時点における、自然発生右腋窩乳腺癌(10 mm直径)を有するMinマウスのシンチグラフィ画像を表す。図12Aは、解剖学的比較のために示された冠状マイクロCT画像(造影剤で強調されていない)である(T=腫瘍)。
【図13A−E】図13A〜Eは、NM404の投与から8日後のFVB x BoMinマウスに由来する、それぞれ乳腺及び結腸のシンチグラフィ画像を示す。摘出された同じ乳房組織及び結腸組織の対応する写真画像が、それぞれ図13B及び図13Dに示されている。カルミン染色された組織の拡大写真画像(図13C)が、過形成の存在(矢印)を示すが、しかし、シンチグラフィ(図13A)には、対応する局所性放射能は見られない。シンチグラフィ画像(図13A)上の明るい領域80は、図13Bにおける、より大きい腺癌82に対応する。摘出された結腸の写真画像(図13D)とシンチグラフィ画像(図13E)との比較は、腺腫性ポリープ内のNM404の取込みがないことを示す(84及び86参照)。
【図14A−C】図14A〜Cは、図13A〜Eに示されたMinマウスのマイクロCTスキャンの画像を示す。図14Aは、大型左腋窩乳腺腫瘍を示す低密度表面レンダリングである。図14Bは、血液プール後の高密度表面レンダリングである。腫瘍フィーダ血管の位置特定を助けるために、CT造影剤BPIOが投与された。図14Cは、絶対的なフィーダ血管位置特定を示す、冠状CT画像と高密度表面レンダリングとの複合体である。配向は図14Cの場合は下からなのに対して、図14A及び図14Bは上から見られる。
【図15】図15は、リン脂質エーテルの酵素的代謝経路を示す概略図である。
【図16】図16は、異なる系統のMin/+マウスにおいて、ENU-処理後に最初の腫瘍が発生するまでの時間を示すグラフである。最初の乳腺腫瘍発生までの時間を、ENU後の日数として表す。雌Min/ +マウスをENUで処理し、そして乳腺腫瘍の存在に関して週に2回チェックした。ENU処理後の最初の腫瘍発生までの時間は、B6Min/+ (n=45)(D)、BRB6 Min/+ (n=18)(Δ)、FVBB6 Min+ (n=18)(0)に関して、5日のインターバルを置いてプロットされる。
【図17A−C】図17A〜Cは、大型左腋窩乳腺腫瘍を示すFVBxBoMinマウスのマイクロCT画像を示す。冠状スライス及び軸方向スライスを図17Aに示し、これに対して3D表面スライス及び冠状スライスを、後部図(図17B)及び前部図(図17C)に同時に示す。
【図18】図18は、125I-NM404注射から0、4、9及び41日目におけるSCC1及びSCC6腫瘍80を時系列で示す、マウスの背の写真集合であり、腫瘍80のサイズの低減を示す。
【図19A−B】図19A及び図19Bは、摘出されたマウス結腸のマイクロCT表面レンダリング型スキャン画像であり、図19Aでは、遠くから結腸腔内に突入する腫瘍100を示し、図19Bでは、より接近した有利な地点から腫瘍100を示す。
【図20A−B】図20A及び図20Bは、麻酔済マウスのコントラスト増強された下方GI管の高密度表面レンダリング型マイクロCT画像であり、下方腸管の結腸112及び盲腸114の位置の目印になるように、平面的な冠状スライス画像110が含まれる。バリウムを満たされた下方腸管の密度は実際には、下方腸管腔内のバリウム濃度が高いため、隣接する骨116の密度を上回る。高濃度設定を有する視界から、ほとんどの軟質組織は排除される。
【図21A−B】図21A及び図21Bは、麻酔済マウスのコントラスト増強された下方GI管の表面レンダリング型(図21A)及び透明レンダリング型(図21B)マイクロCT画像であり、下方腸管の結腸112及び盲腸114を示す。図21Bはまた、腫瘍117と、良性構造である糞石119との区別を示す。
【図22】図22は、3.5 mm直径の腫瘍122を有する、摘出され切開されたマウス結腸120の写真である。
【図23A−B】図23A及び23Bは、腸の摘出された空腸/回腸の写真画像(図23A)、及び対応するシンチグラフィ(図23B)画像である。腸腺癌のMinマウスは、125I-NM404投与から3日後に画像形成された。腫瘍130(矢印)は9 x 18 mmであった。
【図24A−E】図24A〜24Eは、摘出されたMinマウスの十二指腸(図24A、頂部で胃と連結)、空腸(図24B)、空腸/回腸(図24C)、回腸(図24D)、及び結腸(図24E)の腫瘍の強力な放射性標識付きNM404取込みのシンチグラフィ画像である。全ての画像は同数のカウントに対して正規化されている。図2Cは10 cm長である。
【図25A】図25Aは、CNS-1グリオーマ脳腫瘍を有するラット内に124I-NM404(100 μCi)をIV注射してから24時間後に得られた、3D表面レンダリング型MRI画像400と3DマイクロPET画像420とを重ね合わせたものを示す。Amira(v3.1)ソフトウェア(TGS, Inc., San Diego, CA)を使用して、画像を融合した。
【図25B】図25Bは、腫瘍420を通るコントラスト増強されたMRIスライス410である。
【図25C】図25Cは、冠状MRI画像及び124I-NM404マイクロPET画像を重ね合わせたものを示し、腫瘍の存在及び位置を確証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の選択された消化管部位内の良性構造と悪性組織とを識別する方法であって、以下のステップ:
放射性同位体標識された腫瘍特異的物質を準備し;
該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質を該患者に投与し;
第1の技術を用いて、良性構造及び悪性組織を有する選択された部位の形態の視覚化体を生成し;
第2の技術を用いて、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を生成し;並びに
該選択された部位の形態の視覚化体と、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較し、これにより、良性構造と悪性組織とを識別すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記悪性組織を切除するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質が、前記悪性組織内に優先的に蓄積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記悪性組織内の前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質の蓄積が、前記悪性組織のサイズの低減と関連する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記良性構造が、腺腫性ポリープである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記悪性組織が、腺癌細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍特異的物質が、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、211At及びこれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン同位体で放射性同位体標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質が、ポジトロン放射剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記放射性標識付き腫瘍特異的物質が、ハロゲン同位体で標識付けされたリン脂質エーテル類似体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質が、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質が、治療機能及び診断機能を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質の同じ投与が、前記腫瘍の収縮及び前記腫瘍の同定を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記選択された消化管部位が結腸である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の技術が、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴映像法又は写真撮影である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の技術が、慣用的な結腸撮影である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の技術が、ポジトロン放出断層撮影、単一光子放出断層撮影、又はシンチグラフィである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記選択された部位の形態の視覚化体と、前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較するステップが、二次元画像の再構成によって三次元構造の画像を生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記比較ステップが、前記選択された部位の形態の視覚化体上に、前記放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を重ねるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
患者の選択された消化管部位内の良性構造と悪性組織とを識別する方法であって、以下のステップ:
ハロゲン放射性同位体で標識された腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体を準備し;
ハロゲン放射性同位体で標識された該リン脂質エーテル類似体を該患者に投与し;
コンピュータ断層撮影を用いて、良性構造及び悪性組織を有する選択された部位の形態を視覚化し;
ポジトロン放出断層撮影を用いて、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布を視覚化し;並びに
該選択された部位の形態と、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布とを比較し、これにより、良性構造と悪性組織とを識別すること、
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記ハロゲン放射性同位体がポジトロン放射剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体が、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍特異的リン脂質エーテル類似が、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンと123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンとの混合物、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンと125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンとの混合物、又は124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンと131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリンとの混合物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体が、治療機能及び診断機能を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記放射性同位体標識された腫瘍特異的リン脂質エーテル類似体の同じ投与が、前記腫瘍の収縮及び前記腫瘍の同定を生じさせる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記選択された消化管部位が結腸である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
患者における結腸直腸癌の治療効果をモニタリングする方法であって、以下のステップ:
放射性同位体標識された腫瘍特異的物質を準備し;該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質を該患者に投与し;第1の技術を用いて、良性構造及び悪性組織を有する選択された部位の形態の視覚化体を生成し;第2の技術を用いて、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を生成し;そして該選択された部位の形態の視覚化体と、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較するステップによって、直腸結腸癌の治療前状態を決定し;
選択された治療薬を投与し;
放射性同位体標識された腫瘍特異的物質を準備し;該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質を該患者に投与し;第1の技術を用いて、良性構造及び悪性組織を有する選択された部位の形態の視覚化体を生成し;第2の技術を用いて、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体を生成し;そして該選択された部位の形態の視覚化体と、該放射性同位体標識された腫瘍特異的物質によって生成された放射能の分布の視覚化体とを比較するステップによって、治療後状態を評価し;並びに
該治療前状態と該治療後状態とを比較することにより、該治療の効果をモニタリングすること、
を含む、前記方法。
【請求項27】
リン脂質代謝相対レベルに基づいて、選択された組織部位の形態的及び機能的なサブ部位を区別する方法であって、以下のステップ:
放射性ハロゲン標識されたリン脂質エーテル類似体であるホスホリパーゼ基質を準備し;
種々異なるリン脂質代謝レベルによってさらに区別される形態的に区別可能な複数の組織サブ部位を有することが疑われる組織部位を選択し;
該組織部位を、該放射性ハロゲン標識されたリン脂質エーテル類似体と接触させ、該放射性ハロゲン標識されたリン脂質エーテル類似体が取込まれ、相対的に低いリン脂質代謝レベルを有する組織サブ部位内に選択的に保持されるようにし;
第1の技術を用いて、該選択された部位の形態の表示体を生成し;
第2の技術を用いて、該選択的に保持された放射性ハロゲン標識されたリン脂質エーテル類似体によって生成された放射能の分布の表示体を生成し;並びに
該選択された部位の形態の表示体と、該選択的に保持された放射性ハロゲン標識されたリン脂質エーテル類似体によって生成された放射能の分布の表示体とを比較し、これによりリン脂質代謝相対レベルに基づいて、選択された組織部位の形態的及び機能的なサブ部位を区別すること、
を含む、前記方法。
【請求項28】
前記リン脂質エーテル類似体が、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、211At及びこれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン同位体で放射性標識付けされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記放射性標識付き腫瘍特異的物質が、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の技術が、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴映像法、内視術又は写真撮影である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の技術が、ポジトロン放出断層撮影、単一光子放出断層撮影、又はシンチグラフィである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記接触ステップがin vitroで実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記接触ステップがin vivoで実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
診断上有効量の放射性同位体標識されたリン脂質エーテル類似体、及び非経口投与のために調製された薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項35】
前記放射性同位体標識されたリン脂質エーテル類似体が、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記リン脂質エーテル類似体が、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、211At及びこれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン同位体で放射性標識付けされる、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
治療上有効量の放射性同位体標識されたリン脂質エーテル類似体、及び非経口投与のために調製された薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項38】
前記放射性同位体標識されたリン脂質エーテル類似体が、123I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、124I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、125I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、131I-18-(4-ヨードフェニル)-オクタデシルホスホコリン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記リン脂質エーテル類似体が、18F、36Cl、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、211At及びこれらの混合物から成る群から選択されるハロゲン同位体で放射性標識付けされる、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
患者の消化管内の悪性組織を同定する放射性医薬製剤を製造するための、リン脂質エーテル類似体の使用。
【請求項41】
結腸直腸癌を検出又は治療する放射性医薬製剤を製造するための、リン脂質エーテル類似体の使用。
【請求項42】
デュアル・モダリティ仮想結腸内視術に用いられる放射性医薬製剤を製造するための、リン脂質エーテル類似体の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【公表番号】特表2008−508909(P2008−508909A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520532(P2007−520532)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/024259
【国際公開番号】WO2006/014589
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506297728)セレクター,リミティド ライアビリティ カンパニー (7)
【Fターム(参考)】