説明

放射性汚染検査方法および装置

【課題】コンベアに積載され連続移動している被検査物の放射性汚染検査において単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得ることのできる放射性汚染検査方法および装置を提供する。
【解決手段】被検査物6を運搬するコンベアベルト5と、前記コンベアベルト5の進行方向に沿って配置され前記被検査物6から放射される放射線を測定する複数の放射線検出器1a〜4cと、前記放射線検出器1a〜4cの出力を処理し前記コンベアベルト5の速度を制御し前記被検査物6の放射性汚染状況を表示する情報処理・制御・表示装置8とを備えている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品をコンベアに積載し連続移動しながら放射性汚染の検査を行う放射性汚染検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品をコンベアに積載し連続移動しながら放射性汚染の検査を行う従来の放射性汚染検査装置では、下記特許文献1、2に記載されているように移動方向に放射線検出器をコンベア上下、左右に配置するが、そのため大面積の検出器が必要となり、感度分布の平坦化などの技術上の問題がある。また、検査対象物品を固定して測定する特許文献3に記載されている装置でも同様である。大面積の検出器では、バックグラウンドの計数値が増加し検出限界が悪化する問題がある。このようなシステムで高検出限界を得るには、測定時間を延ばすしかなく、通常の処理方法では、単位時間あたりの処理量が減少する。
【0003】
特許文献4には、コンベアの流れ方向に沿って複数の検出器を配置した放射性汚染検査装置が記載されているが、これは、汚染位置特定を目的としたものであり、単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得るために必要な具体的な構成と処理手法は記載されていない。
【特許文献1】特開平8−166458
【特許文献2】特開平6−64714
【特許文献3】特開平10−319125
【特許文献4】特開2004−020409
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンベアに積載され連続移動している被検査物の放射性汚染検査において単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得ることのできる放射性汚染検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、被検査物を運搬するコンベアベルトと、前記コンベアベルトの進行方向に沿って配置され前記被検査物から放射される放射線を測定する複数の放射線検出器と、前記放射線検出器の出力を処理し前記コンベアベルトの速度を制御し前記被検査物の放射性汚染状況を表示する情報処理・制御・表示装置とを備えている構成とする。
【0006】
請求項7の発明は、コンベアベルトに積載されて移動する被検査物から放射される放射線を、前記コンベアベルトの進行方向に沿って設けられた複数の放射線検出器によって測定し、前記コンベアベルト上の位置情報に従って前記複数の放射線検出器の出力を加算する方法とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンベアに積載され連続移動している被検査物の放射性汚染検査において単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得ることのできる放射性汚染検査方法および装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1ないし第6の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の放射性汚染検査装置は図1に示すように、被検査物6の上面の汚染を測定するための放射線検出器1a〜1cと、下面の汚染を測定するための放射線検出器2a〜2cと、上流側から見て右側面の汚染を測定するための放射線検出器3a〜3cと、左側面の汚染を測定するための放射線検出器4a〜4cと、コンベアベルト5と、ローラー7と、情報処理制御表示装置8とからなり、被検査物6の放射性汚染を検査する。情報処理・制御・表示装置8は放射線検出器1a〜1c,2a〜2c,3a〜3c,4a〜4cが接続され、他にも、コンベアベルト5の速度制御や、計数値の表示等を行う。
【0009】
コンベアベルト5は、被検査物6を載せる範囲について、金網状にしてもよく、また、コンベアベルトを両脇にのみ通し、両コンベアベルト間にワイヤー等を通すことで、下面検出器2a〜2cで被検査物6の下面の透過力の弱い放射線を放出する物質による汚染を検知する構成としてもよい。また、側面検出器3a〜3c,4a〜4cを有さず、上面と下面の検出器1a〜1c,2a〜2cのみを備え、被検査物6の上下面のみを測定する構成としてもよい。被検査物6の検知面の方向についても、水平・垂直だけでなく他の方向の面を測定するようにしてもよい。また、図1では各方向の検出器の数を3台ずつとしているが、これより多くても、少なくてもよい。
【0010】
本構成によれば、被検査物6の移動に伴い、各検出器に出力が現れる。一例として、上面検出器1a〜1cの被検査物6の移動に伴う単位時間あたりの計数の時間変化を図2に示す。このように、被検査物6の移動に伴い、検出器の有効面の前面に被検査物6が来ることで、その被検査物6による計数を得ることができる。
【0011】
本実施の形態の放射性汚染検査装置によれば、被検査物6の移動に伴い、複数の放射線検出器1a〜4cに順番に出力が得られる。
したがって単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得ることができる。
【0012】
(第2の実施の形態)
次に、図3、図4を用いて第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態の放射性汚染検査装置においてコンベアベルト5上に図3で示したように位置毎に番号を付与する。本構成によれば、例えば検出器1aに相当するコンベアベルト上位置と時間との関係を図4のように求めることができる。したがって、各時間におけるそれぞれの検出器が相対するベルト位置との関係を求めることができる。
【0013】
本実施の形態によれば、コンベアに積載され連続移動している被検査物の放射性汚染検査において単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得ることのできる放射性汚染検査装置を提供することができる。
【0014】
なお、本実施の形態では、コンベアベルト上の位置を20に分割したが、さらに分割数を増してもよく、また、長さといった連続的な値をこの番号に代えてもよい。
【0015】
(第3の実施の形態)
次に、図5、図6を用いて第3の実施の形態を説明する。本実施の形態では第2の実施の形態で採用した各検出器1a〜4cに対する時間とそのときに相対するコンベアベルト位置との関係を用いて、図5のようなステップS1,S2,S3の流れで処理を行う。
【0016】
例えば上面検出器に関しては、検出器1aの出力を書き込む先のレジスタを、加算先レジスタ判定部を通して決定する。加算先レジスタ判定は図6のステップS21,S22の流れに従って行われる。そのときの時間情報と、第2の実施の形態で求めたような時間・コンベアベルト位置変換情報をもとに、現時点で検出器の測定範囲にあるコンベアベルト上位置情報をもとに、加算先レジスタを決定し、その時点での検出器1aの出力をそのレジスタに書き込む。
【0017】
このような構成を上面検出器1a〜1c、下面検出器2a〜2c、右面検出器3a〜3c、左面検出器4a〜4cに対して採用することによって、それぞれのコンベアベルト上位置における複数の検出器による計数を合算して得ることができる。
【0018】
さらに、コンベアベルト上位置情報を利用して、各検出器毎の検出効率を補正したり、検出器の位置毎の検出効率を補正したりしてから、それぞれの検出器の出力値を対応レジスタに書き込んでもよい。
【0019】
したがって本実施の形態によれば、コンベアに積載され連続移動している被検査物の放射性汚染検査において単位時間あたりの処理量を確保しつつ良好な検出限界を得ることのできる放射性汚染検査方法および装置を提供することができる。
【0020】
(第4の実施の形態)
次に、図7を用いて第4の実施の形態を説明する。本実施の形態ではコンベアベルト5の上流側に被検査物の形状を測定するセンサ9を設け、その測定情報を情報処理・制御・表示装置8に送り、情報処理・制御・表示装置8からの制御信号により、検出器位置移動機構10a〜10cを駆動させる構成とする。なお、ここでは説明の便宜上上面検出器1a〜1cについてのみ検出器位置移動機構10a〜10cを備えたものとして説明するが、他の方向の検出器についても、同様に検出器移動機構を備えてもよい。
【0021】
情報処理・制御・表示装置8は形状測定センサ9により、被検査物6の形状をそのときのコンベアベルト位置情報とあわせて記録し、次に同じコンベアベルト上位置が来るまで保持しつづける。また情報処理・制御・表示装置8は、放射線検出器1a〜1cに相対するコンベアベルト位置の被検査物6の形状と、そのときの検出器位置移動機構10a〜10cにより動かされている検出器1a〜1cの位置とを比較し、被検査物6と放射線検出器1a〜1cの距離が両者が接触しない範囲で最短となるように検出器位置移動機構10a〜10cに制御信号を出し、その位置を調整させる。
【0022】
本実施の形態によれば、放射線検出器1a〜1cは常に被検査物6との距離を可能な限り最短に保つことができ、効率よく放射線を検知することができる放射性汚染検査装置を提供することができる。
【0023】
(第5の実施の形態)
次に、図8を用いて第5の実施の形態を説明する。本実施の形態は、コンベアベルト5上に原点マーキング11を設け、固定部に原点マーキング検知センサ12を設けた構成である。本構成により、コンベアベルト5の回転位置が原点に来る毎に位置情報を校正することができ、したがって被検査物6の位置のずれがなく、正確に汚染を測定することができる。
【0024】
なお、本実施の形態は、1台の検知センサ12で1つの原点マーキング11を検知する構成としたが、複数の位置情報を示したマーキングを設け、その位置情報を複数の情報を弁別することのできる1台の検知センサで検知してもよく、また、検知センサを複数台設けてもよい。
【0025】
(第6の実施の形態)
次に、図9、図10を用いて第6の実施の形態を説明する。本実施の形態では、放射線検出器1a〜4cの配置の終わった位置を、測定終了エリア13と定める構成である。
【0026】
図10は、情報処理・制御・表示装置8上に表示される上面汚染状況を示すグラフの例である。横軸はコンベアベルト上の位置を示し、縦軸は累積計数を示す。放射線検出器に相当する範囲および、取り出しエリアを示す縦線は、コンベアベルトの移動に伴い右側に移動し、右端に到達した時点で左端に移る。また、取り出しエリアを通り過ぎた後、コンベアベルト上位置に相当するレジスタは初期値にリセットされる。この際、リセットの前にその値をログファイル等に時間毎に保存し、その値を、取り出しエリア終了後の時点で取り出しエリアから持ち出された物品の放射性汚染検査履歴値として情報処理・制御・表示装置8上に表示してもよい。
【0027】
本実施の形態によれば、一連の放射線検出器による汚染検査測定終了後に、取り出しエリアに現れた被検査物6の累積計数をもとに汚染を評価する放射性汚染検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放射性汚染検査装置の構成を示し、(a)は(b)のA−A’線に沿う立面図、(b)は(a)のB−B’線に沿う平面図。
【図2】経過時間に対する放射線検出器の計数出力を例示し、本発明の第1の実施の形態の放射性汚染検査装置の作用を説明する図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の放射性汚染検査装置の構成を示し、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図4】放射線検出器に相当するコンベアベルト上の位置と時間との関係を示し、本発明の第2の実施の形態の放射性汚染検査装置の作用を説明する曲線図。
【図5】本発明の第3の実施の形態の放射性汚染検査装置における被検査物上面の汚染度合い測定の流れを示す図。
【図6】本発明の第3の実施の形態の放射性汚染検査装置における放射線検出器の計数データの処理の流れを示す図。
【図7】本発明の第4の実施の形態の放射性汚染検査装置の構成を示す立面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態の放射性汚染検査装置の構成を示す平面図。
【図9】本発明の第6の実施の形態の放射性汚染検査装置の構成を示す平面図。
【図10】被検査物上面の汚染状況測定結果を例示し、本発明の第6の実施の形態の放射性汚染検査装置の作用を説明する曲線図。
【符号の説明】
【0029】
1a〜1c…上面検出器、2a〜2c…下面検出器、3a〜3c…右面検出器、4a〜4c…左面検出器、5…コンベアベルト、6…被検査物、7…ローラー、8…情報処理・制御・表示装置、9…形状測定センサ、10a〜10c…検出器位置移動機構、11…原点マーキング、12…原点マーキング検知センサ、13…測定終了エリア。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を運搬するコンベアベルトと、前記コンベアベルトの進行方向に沿って配置され前記被検査物から放射される放射線を測定する複数の放射線検出器と、前記放射線検出器の出力を処理し前記コンベアベルトの速度を制御し前記被検査物の放射性汚染状況を表示する情報処理・制御・表示装置とを備えていることを特徴とする放射性汚染検査装置。
【請求項2】
前記コンベアベルトは、進行方向の所定長さ毎に番号が割り振られていることを特徴とする請求項1記載の放射性汚染検査装置。
【請求項3】
前記情報処理・制御・表示装置は、前記放射線検出器の出力を前記コンベアベルト上の位置情報に従って対応するレジスタ領域に加算することを特徴とする請求項2記載の放射性汚染検査装置。
【請求項4】
前記コンベアベルトの最上流部に設けられ被検査物の形状を測定する形状測定センサと、前記センサの出力情報に従って前記放射線検出器の位置を移動する検出器位置移動機構とを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射性汚染検査装置。
【請求項5】
前記コンベアベルト上に設けられた原点マーキングと、前記原点マーキングを検知する検知センサとを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射性汚染検査装置。
【請求項6】
前記コンベアベルトの流れの下流部に設けられた測定終了エリアを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射性汚染検査装置。
【請求項7】
コンベアベルトに積載されて移動する被検査物から放射される放射線を、前記コンベアベルトの進行方向に沿って設けられた複数の放射線検出器によって測定し、前記コンベアベルト上の位置情報に従って前記複数の放射線検出器の出力を加算することを特徴とする放射性汚染検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−23162(P2006−23162A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200639(P2004−200639)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】