説明

放射源

【課題】従来技術の1つ以上の問題を解決する放射源を提供すること、または従来技術のものに対して代替の放射源を提供する。
【解決手段】本発明の第1の態様によると、放射を放出する放射エミッタと、放射エミッタによって放出される放射を集光するコレクタと、使用中、放射源内へと冷却ガスを導入するように構成されたアウトレットとを含む放射源が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射源、および当該放射源と連結されたまたはそれを含むリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。公知のリソグラフィ装置としては、ターゲット部分上にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分を照射するいわゆるステッパ、および放射ビームによってある特定の方向(「スキャン」方向)にパターンをスキャンすると同時に、この方向に平行または逆平行に基板をスキャンすることにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるスキャナが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
基板上に今まで以上に小さい構造を投影することを可能にするために、5nm〜20nmの範囲内、例えば、13nm〜14nmの範囲内の波長を有する極端紫外線(EUV)を使用することが提案された。さらに、10nmより小さい、例えば、6.7nmまたは6.8nmの波長を有する放射を使用してもよいことも提案された。リソグラフィの関連では、10nmより小さい波長は、時々、「超EUV(beyond EUV)」と呼ばれる。
【0004】
極端紫外線および超EUV放射は、プラズマを用いて生成することができる。プラズマは、例えば、適した材料(例えば、スズ)の粒子にレーザを向けることによって、あるいは、XeガスまたはLi蒸気などの適したガスまたは蒸気の流れにレーザを向けることによって生成することができる。あるいは、放電を用いてプラズマを生成することができる。結果として生じるプラズマは、極端紫外線(または超EUV放射)を放出し、これは、極端紫外線を受けて放射をビームへと集束させる法線入射コレクタまたはミラーかすめ入射コレクタなどのコレクタを使用して集光される。
【0005】
プラズマは、極端紫外線に加えて、熱化された原子、イオン、ナノクラスタおよび/またはマイクロ粒子などの粒子の形態のデブリを生成する。極端紫外線とともに、デブリは、コレクタに向かって投影されてコレクタにダメージを与え得る。
【0006】
デブリがコレクタと接触する(例えば、コレクタを覆うまたはコレクタにダメージを与える)ことを防ぐことが望ましい。コレクタを覆うことは、例えば、コレクタの反射率を減少し、かつ集光されて基板のパターニングに使用され得る放射量を減少する。
【0007】
プラズマベースの極端紫外線源からのデブリは、通常、バッファガスを用いて抑制される。デブリは、バッファガスの構成部分(例えば、原子または分子)と繰り返し衝突し、この衝突はデブリを減速および/またはデブリを元の経路から偏向させる。デブリの減速および/または偏向は、デブリがコレクタと接触する問題を回避または緩和するために使用することができる。デブリが減速および偏向された後、デブリは、例えば(例えば、放射源の外に)押し出され、および/またはデブリトラップ(例えば、フォイルトラップ等)によって遮断される。
【0008】
デブリの抑制の程度(すなわち、抑制要素)は、デブリ(例えば、デブリ原子等)がバッファガスを通り抜ける経路の途中で遭遇するバッファガス原子(または例えば、分子)の数による。一定の温度および体積では、バッファガス原子の数はバッファガス圧に比例する(理想気体の法則pV=nRTによる)。多くの場合、バッファガスはデブリの軌跡に沿う統合圧力よって特徴付けされる。抑制は、統合圧力を上昇させることによって改善することができる。統合圧力を上昇させることは、圧力を上昇させることによってまたは圧力が付与される距離を増大させることによって達成することができる。しかしながら、これら両方の解決策は実際に実施することが困難である。例えば、高すぎる圧力は極端紫外線を放出するプラズマの膨張を抑止するため、圧力は、一般的には、放射源の最大動作圧力によって制限される。圧力が付与され得る距離は、放射が生成される箇所(すなわち、放射エミッタ、例えばプラズマの配置)とコレクタとの間の空間によって制限される。この距離を増大させることは、放射源のサイズを増大させることとなり、これは望ましくない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、本明細書中または他の箇所で確認された従来技術の1つ以上の問題を解決する放射源を提供すること、または従来技術のものに対して代替の放射源を提供することである。
【0010】
本発明の第1の態様によると、放射を放出する放射エミッタと、放射エミッタによって放出される放射を集光するコレクタと、使用中、放射源内へと冷却ガスを導入するように構成されたアウトレットとを含む放射源が提供される。
【0011】
冷却ガスは、放射源内への導入の前に冷却されるように構成されてもよい。冷却ガスは、圧縮状態で放射源内へと導入されるように構成されてもよい。ガスは、冷却ガスを形成するために蒸発することが可能である加圧液体の形態で導入されるように構成されてもよい。放射源は、液体を霧状にするネブライザをさらに含んでもよい。
【0012】
アウトレットは、放射エミッタとコレクタとの間の場所に冷却ガスを導入するように構成されてもよい。
【0013】
アウトレットは、放射エミッタと放射源の出口アパーチャとの間の場所に冷却ガスを導入するように構成されてもよい。
【0014】
放射源は、1つ以上の更なるアウトレットを含んでもよく、各々の更なるアウトレットは、放射源内の異なる場所において放射源内へと冷却ガスを導入するように構成される。
【0015】
放射源は、放電生成プラズマ放射源またはレーザ生成プラズマ放射源などのプラズマベースの放射源であってもよい。
【0016】
コレクタは、法線入射コレクタまたはかすめ入射コレクタであってもよい。
【0017】
放射源は、実質的に20nmまたはそれ以下の波長を有する放射を生成するように構成されてもよい。
【0018】
冷却ガスは、(例えば、放射源が配置された環境の)周囲温度より低い温度またはガスの沸点と実質同じである温度を有するように構成されてもよい。冷却ガスは、適切な冷却、加圧等によってその温度を有するように構成されてもよい。
【0019】
冷却ガスは、使用中、バッファガス、放射源のコンポーネントを冷却するガス、および放射源のコンポーネントを洗浄するガスのうちの1つ以上として機能するように構成されてもよい。ガスは、例えばガスの組成または放射源内へのガスの導入場所によってそのような機能を果たすように構成されてもよい。
【0020】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様による放射源と、放射源のアウトレットと連結された冷却ガス、加圧ガスまたは液化ガスのソースとを含む放射源アレンジが提供される。
【0021】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1および/または第2の態様による放射源または放射源アレンジと連結された、あるいは含む、リソグラフィ装置が提供される。
【0022】
本発明の第4の態様によると、アウトレットを介して放射源内へと冷却ガスを導入することを含む、第1、第2または第3の態様のいずれかによる放射源または放射源アレンジを動作させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
【0024】
【図1】図1は、リソグラフィ装置の一実施形態を概略的に示す。
【図2】図2は、図1のリソグラフィ装置の詳細な略図を概略的に示す。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態による放射源の一部を概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態による放射源の一部を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、リソグラフィ装置1を概略的に示している。このリソグラフィ装置1は、
−放射ビームB(例えばEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
−パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構成され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めるように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、
−基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めるように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
−パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
【0026】
照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0027】
サポート構造は、パターニングデバイスの重量を支えるなどしてパターニングデバイスを支持する。サポートは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置1の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。本明細書において使用される「レチクル」または「マスク」という用語はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義であると考えるとよい。
【0028】
本明細書において使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。なお、留意すべき点として、放射ビームに付与されたパターンは、例えば、そのパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分内の所望のパターンに正確に一致しない場合もある。通常、放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応することになる。
【0029】
パターニングデバイスの例としては、プログラマブルミラーアレイが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、一般的にEUV放射(または超EUV)では、リソグラフィ装置は反射型である。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0030】
本明細書において使用される「投影システム」という用語は、あらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。通常、EUV(または超EUV)放射リソグラフィ装置では、光エレメントは反射型である。しかしながら、他の種類の光エレメントを使用してもよい。光エレメントは、真空中にあってもよい。本明細書において使用される「投影レンズ」という用語はすべて、より一般的な「投影システム」という用語と同義であると考えるとよい。
【0031】
本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置1は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
【0032】
リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0033】
図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また放射ビームは、放射源SOからイルミネータILへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送られる。その他の場合においては、放射源は、リソグラフィ装置の一体部分とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムとともに、放射システムと呼んでもよい。本発明の一実施形態によると、リソグラフィ装置1は、以下に詳細に説明する本発明の一実施形態による放射源または放射源アレンジを含むか、またはそれらに関連し得る。
【0034】
イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータおよびコンデンサといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームBを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0035】
放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスクMA)上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAによって反射された後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めるように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサIF1を使い、例えば、マスクライブラリから機械的に取り出した後またはスキャン中に、マスクMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めることもできる。通常、マスクテーブルMTの移動は、第1ポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使って達成することができる。同様に、基板テーブルWTの移動も、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使って達成することができる。ステッパの場合は(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTは、ショートストロークアクチュエータのみに連結されてもよく、または固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークが専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる(これらは、スクライブラインアライメントマークとして公知である)。同様に、複数のダイがマスクMA上に設けられている場合、マスクアライメントマークは、ダイとダイの間に置かれてもよい。
【0036】
例示の装置1は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0037】
1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光時に結像されるターゲット部分Cのサイズが限定される。
【0038】
2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。
【0039】
3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、マスクテーブルMTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0040】
上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0041】
図2は、図1のリソグラフィ装置1をより詳細に示す。図2を参照すると、リソグラフィ装置1は、放射源SO、照明光学ユニットILおよび投影システムPLを含む。放射源SOは、放電プラズマを含み得る放射エミッタ2を含む。EUV放射は、電磁スペクトルのEUV放射範囲内の放射を放出するために非常に高温のプラズマが生成されるXeガスまたはLi蒸気などのガスまたは蒸気によって生成されてもよい。非常に高温のプラズマは、放電の部分的にイオン化されたプラズマを光軸O上に崩壊させることによって生成される。例えば、10PaのXeまたはLi蒸気あるいは任意の他の適したガスまたは蒸気の分圧は、放射の効率的な生成のために必要とされ得る。一部の実施形態では、スズが使用されてもよい。放射エミッタ2によって放出される放射は、放射源3からコレクタチャンバ4へと送られる。別の実施形態(図示せず)では、EUV放射を放出するように構成されたプラズマは、スズの小滴などといった燃料の小滴にレーザビームを向けることによって生成することができる。
【0042】
コレクタチャンバ4は、デブリトラップ5およびかすめ入射コレクタ6(長方形として概略的に図示される)を含む。コレクタ6を通過することができた放射は、格子スペクトルフィルタ7から反射し、コレクタチャンバ4内のアパーチャにおける仮想源点8に集束される。放射ビーム9は、コレクタチャンバ4から照明光学ユニットIL内で第1の入射レフレクタ10および第2のリフレクタ11を介してレチクルあるいはレチクルまたはマスクテーブルMT上で位置決めされたマスクMA上へと反射される。パターン形成されたビーム12が形成され、投影システムPL内で第1の反射エレメント12および第2の反射エレメント14を介して基板テーブルWT上で保持された基板(図示せず)上へと結像される。示されたものより多いエレメントが照明光学ユニットILおよび投影システムPLの中に通常存在してもよい。
【0043】
上述したように、放射源(例えば、プラズマベースの放射源)で生成されたデブリは、バッファガスの使用によって抑制することができる。バッファガスの使用に関連する抑制要素は、バッファガスの統合圧力を上昇させることによって改善することができる。このような上昇は、バッファガスの圧力を上昇させることによってまたは圧力が付与される距離を増大させることによって達成することができる。しかしながら、このような圧力の上昇または距離の増大を実際達成することは困難である。一例では、高すぎる圧力は放射を放出するプラズマの膨張を抑止し得るため、圧力は、一般的には、放射源の最大動作圧力によって制限される。別の例では、圧力が付与される距離は、放射エミッタ(例えば、プラズマまたはプラズマ形成部位)とコレクタとの間の空間によって制限される。この距離を増大させることは、放射源のサイズを増大させることとなり、これは望ましくない。
【0044】
したがって、放射源のガス圧の上昇または圧力が付与される距離の増大を伴わずにバッファガスを用いてデブリ抑制を改善できることが望ましい。
【0045】
本発明の一実施形態によると、従来技術の1つ以上の問題は、冷却バッファガスを放射源内へと導入することによって回避または緩和することができる。冷却バッファガスは、アウトレットから放射源内に導入され得る。冷却バッファガスは、周囲温度より低い温度を有するバッファガスであってもよい。例えば、ガスは、当該ガスがバッファガスの実質的に沸点程度になるように冷却されてもよい。バッファガスは、放射源内への導入の前に、例えば冷却および/または圧縮構成によって冷却されてもよい。あるいは、バッファガスは、圧縮状態で放射源内へと導入され、その後、膨張および冷却が可能となってもよい。圧縮は、ガスが初期の(加圧され得る)液体形態または状態で放射源内へと導入され、次に放射源内で液体の膨張および蒸発が可能となって冷却バッファガスを形成するように構成されてもよい。
【0046】
冷却バッファガスの使用は、(理想気体の法則によると)所定の圧力および体積に対するガス原子の数を増加させる。所定の圧力および体積に対する原子の数を増加させることによって、デブリ抑制は増加し、それと同時に放射源の動作圧力に影響を与えず、または圧力が付与される距離を増大しない。冷却バッファガスの使用に関連するさらなる利点としては、冷却バッファガスは、放射源のコンポーネントのうちの1つ(例えば、コレクタ、デブリ抑制構成などを含み得る)を冷却するかまたはそのコンポーネントの冷却に寄与するために用いることができ、それによってより高い関連する放射出力の範囲内のより高い力で放射源が稼働することを確実にする。
【0047】
放射源は、バッファガス(または一般には、ガス)が使用されるあらゆる放射源であってもよい。例えば、冷却バッファガスは、放射を生成すると同時にデブリを生成することが知られているプラズマベースの放射源内へと導入される。一例では、放射源は、放電生成プラズマ(DPP)放射源であってもよい。別の例では、放射源は、レーザ生成プラズマ(LPP)放射源であってもよい。放射源は、実質的に20nmまたはそれ以下の波長を有する放射を生成するように構成されてもよく、その放射源に対してデブリ抑制は非常に望ましい。
【0048】
放射源内への冷却バッファガスの導入は、例えば放射源自体の中でのガスの冷却と比較して有意であり得る。ガスが放射源内で冷却される場合、1つ以上の冷却構成を放射源内に設ける必要がある。したがって、ガスが放射源内で冷却される場合、組み立て費、サイズ、設計の複雑性または維持費が増加し得る。
【0049】
本発明の特定の実施形態を、単なる例として、図3および図4を参照して以下に説明する。両方の実施形態に適用可能な原理は、図の説明の後に説明する。
【0050】
図3は、放電生成プラズマ(DPP)放射源の側面図を概略的に示す。放射源は、放射を放出する放射エミッタ20を含む。本実施形態では、放射エミッタ20は、燃料(例えば、ガス、蒸気または液体)の中または燃料にわたって放電を確立させることによって形成される放電生成プラズマである。放射エミッタ20は放射22を放出する。放射22は、極端紫外線またはより短い波長を有する放射であってもよい(または含んでもよい)。
【0051】
放射22はコレクタ24によって集光され、当該コレクタ24は、放射22を集光し、かつ放射22を放射源の光軸26に沿って誘導する。コレクタ24は、複数の入れ子状シェル28を含む。放射エミッタ20に隣接するシェル28の開口部には、デブリトラップ30が設けられる。デブリトラップ30は、例えば、コレクタ24へと入るデブリを捕捉するために使用される1つ以上の磁石またはフォイル32を含む。他の実施形態では、デブリトラップ30は、放射エミッタ20とコレクタ24との間に配置されてもよく、コレクタ24の一部を形成しない場合がある。
【0052】
放射源は、放射22を生成するとともにデブリ34も生成する。デブリ34は、熱化された原子、イオン、ナノクラスタおよび/またはマイクロ粒子などの粒子の形態であってもよい。デブリはコレクタ24に向かって誘導される。このデブリ34は、冷却バッファガス36の供給によって抑制され、それによってコレクタ24と接触するまたはコレクタ24へと入ることを防ぐことができる。冷却バッファガス36は、アウトレット38により放射源内へと導入される。冷却バッファガス36は、放射エミッタ20とコレクタ24との間の場所において放射源内へと導入される。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態によるレーザ生成プラズマ(LPP)放射源の側面図を概略的に示す。放射源は、放射54を放出する放射エミッタ50を含む。本実施形態では、放射エミッタは、図示されていない燃料小滴(例えば、スズの小滴)にレーザビーム52を誘導することによって形成されるレーザ生成プラズマである。放射54は、極端紫外線またはより短い波長を有する放射であってもよい(または含んでもよい)。
【0054】
放射エミッタ50によって放出される放射54は、コレクタ56によって集光される。コレクタ56は、法線入射コレクタ56である。本実施形態では、レーザビーム52が通過するように誘導され得るアパーチャ57がコレクタ56に設けられる。コレクタ56は、放射54を集光し、かつ放射54を放射源の光学アクセス58に沿って誘導する。
【0055】
放射源は、放射54を生成するとともに、デブリ60も生成する。デブリ60は、熱化された原子、イオン、ナノクラスタおよび/またはマイクロ粒子などの粒子の形態であってもよい。デブリ60もコレクタ56に向かって誘導される。このデブリ60は、冷却バッファガス62の供給によって抑制され、それによってコレクタ56と接触するまたはコレクタ56へと入ることを防ぐことができる。冷却バッファガス62は、放射エミッタ50とコレクタ56との間の場所に提供される。冷却バッファガス62は、アウトレット64によって放射源内へと導入されてもよい。バッファガス62は、コレクタ56の集光面に沿って誘導されてもよく、または(図示されていない別の実施形態において)コレクタ56の1つ以上のアパーチャを通過して誘導されてもよい。
【0056】
デブリトラップが提供されてもよい。デブリトラップは、例えば、デブリを捕捉するために使用される1つ以上の磁石またはフォイルを含む。デブリトラップは、放射エミッタ50とコレクタ56との間に配置されてもよい。代替的にまたは付加的に、デブリトラップは、放射エミッタ50を部分的に囲んでもよい。代替的にまたは付加的に、デブリトラップは、コレクタ56の一部を形成してもよく、またはコレクタ56に取り付けられていてもよい。
【0057】
本発明の実施形態の多くの特徴または代替特徴は、図3および図4に示す実施形態独自のものではなく、一般的に適用可能である。このような特徴および代替特徴を以下に説明する。
【0058】
一例では、冷却バッファガスは、冷却状態で放射源内へと導入されてもよい。例えば、冷却バッファガスは、放射源内への導入の前に1つ以上の冷却または圧縮構成等によって冷却される。例えば、バッファガスは、圧縮状態で放射源内へと導入され、放射源内で膨張および冷却が可能となるように構成されてもよい。バッファガスは、放射源内で膨張および/または蒸発することが可能である液体(例えば、加圧液体)の形態で放射源内へと導入されてもよく、それによって冷却バッファガスを形成する。液体を霧状に(nebulize)するために1つ以上のネブライザ(nebulizer)が(例えば、アウトレットに隣接して、アウトレットの中またはアウトレットの一部を形成して)設けられてもよい。ネブライザは、液体の微細小滴のミストの一様分布を実現して液体の蒸発率を高めるために使用されてもよい。
【0059】
両方の実施形態で上述したように、冷却バッファガスは、放射エミッタとコレクタとの間の場所において放射源内へと導入されてもよい。代替的にまたは付加的に、アウトレット(または1つ以上の追加のアウトレット)は、放射エミッタおよび/またはコレクタと放射源の出口アパーチャとの間の場所に冷却バッファガスを導入するように構成されてもよい。出口アパーチャは、コレクタによって集光された後に放射が通過し得るアパーチャであってもよい。放射(radiator)エミッタおよび/またはコレクタと放射源の出口アパーチャとの間に導入される冷却バッファガスは、デブリがリソグラフィ装置のさらなるコンポーネント(例えば、照明システムまたはビームデリバリシステム等)の中、上またはそのコンポーネントを通過することを防ぐことができる。
【0060】
冷却バッファガスを放射源内へと導入するための1つ以上のアウトレットが提供されてもよい。アウトレットは、放射源内のほぼ同じ場所に冷却バッファガスを導入するように構成されてもよく、または放射源内の異なる場所において放射源内へと導入されるように構成されてもよい。例えば、アウトレットは、放射エミッタとコレクタとの間、ならびに放射エミッタおよび/またはコレクタと放射源の出口アパーチャとの間に冷却バッファガスを導入するように構成されてもよい。アウトレットは、好ましくは、(コレクタの近くのガスの密度を最大化するために)コレクタの集光面に対してできる限り近くに冷却バッファガスを提供するように構成(例えば、位置決め、位置または配置等)されるが、集光面から十分に離れて構成もされ、それによって(例えば、液体または液体の小滴の形態の)非蒸発冷却バッファガスが集光面と接触するかまたは集光面上に堆積される可能性を減少または除去する。このような堆積は、表面のその部分からの放射の反射を減少する場合があり、集光効率を低下する。
【0061】
アウトレットは、放射源内のチューブ、導管またはアパーチャであってもよい。チューブまたは導管は、冷却ガスの導入の場所を変更できるように移動可能であってよい。アウトレットは、冷却ガスの導入の場所を変更できるように選択的に開けられていても閉じられていてもよい。
【0062】
好ましくは、アウトレットにおける冷却バッファガスの温度は、周囲(例えば、室温)より低い。より好ましくは、バッファガスの温度は、バッファガスの沸点(例えば、アルゴンに対しては87.3Kまたは水素に対しては20.3K)と実質同じである(例えば、それに近い)。
【0063】
冷却バッファガスの再生速度(例えば、放射源内への導入速度または流速)が十分に高い場合、放射源内の冷却バッファガスの平均温度は、バッファガスのアウトレットにおける冷却バッファガスの温度とほぼ同じ量に低下する(すなわち、その温度と実質的に同等となるように低下する)。例えば、放射源内のバッファガスの通常平均温度が600Kであった場合、293Kから約50Kのインレット温度の低下は、バッファガスの平均温度が約400Kへと落ちるという結果となり得る。したがって、ガス原子の数は1.5の倍数で(温度低下に比例して)増加されてよい。結果的に、放射源の動作圧力への影響を伴わずにデブリ抑制および放射源冷却を改善することができる。
【0064】
放射源アレンジが提供されてもよい。放射源アレンジは、本発明の一実施形態による放射源を備えてもよい。さらに、放射源アレンジは、放射源のアウトレット(すなわち、放射源内へと導入される冷却バッファガスが通るアウトレット)と連結された、冷却バッファガス、加圧バッファガスまたは液化バッファガスのソースを含んでもよい。冷却バッファガス、加圧バッファガスまたは液化バッファガスのソースは、タンクまたは格納庫であってもよく、あるいは冷却バッファガス、加圧バッファガスまたは液化バッファガスを生成または維持するように構成されたアクティブ構成(例えば、ポンプ、コンプレッサ、冷蔵システム等)であってもよい。アウトレットは、このようなソースと連結されることによって放射源内へと冷却バッファガスを導入するように構成されてもよい。
【0065】
リソグラフィ装置(例えば、図1または図2に関連して上述したリソグラフィ装置)は、本発明の1つ以上のあらゆる実施形態による放射源または放射源アレンジを含んでもよく、または連結されてもよい。
【0066】
上記の実施形態では、冷却バッファガスは、放射源内へと導入されるように説明された。冷却ガスは、代替的にまたは付加的に、バッファとして働く以外の機能を果たす。例えば、冷却ガスは、放射源の1つ以上のコンポーネントを冷却するために、または放射源の1つ以上のコンポーネントを洗浄するために導入されてもよい。したがって、冷却ガスは、使用中、バッファガス、放射源のコンポーネントを冷却するガス、および放射源のコンポーネントを洗浄するガスのうちの1つ以上として機能するように構成されてよい。冷却ガスが冷却バッファガスとして機能する実施形態に関して上述したように、放射源内への冷却ガスの導入は、例えば放射源自体の中のガスの冷却と比較して有意であり得る。ガスが放射源内で冷却される場合、1つ以上の冷却構成を放射源内に設ける必要がある。したがって、ガスが放射源内で冷却される場合、組み立て費、サイズ、設計の複雑性または維持費が増加し得る。
【0067】
本発明の実施形態の上記説明は、EUV放射を生成する放射源に関するが、本発明は、「超EUV」放射、すなわち、例えば10nmより小さい波長を有する放射を生成する放射源にも組み入れられてもよい。超EUV放射は、例えば、6.7nmまたは6.8nmの波長を有してもよい。超EUV放射を生成する放射源は、上述の放射源と同じ方法で動作してもよい。
【0068】
上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射を放出する放射エミッタと、
前記放射エミッタによって放出される放射を集光するコレクタと、
使用中、前記放射源内へと冷却ガスを導入するアウトレットと
を含む、放射源。
【請求項2】
前記冷却ガスは、前記放射源内への導入の前に冷却される、請求項1に記載の放射源。
【請求項3】
前記冷却ガスは、圧縮状態で前記放射源内へと導入される、請求項1に記載の放射源。
【請求項4】
前記ガスは、前記冷却ガスを形成するために蒸発することが可能である加圧液体の形態で導入される、請求項3に記載の放射源。
【請求項5】
前記液体を霧状にするネブライザをさらに含む、請求項3または4に記載の放射源。
【請求項6】
前記アウトレットは、前記放射エミッタと前記コレクタとの間の場所に前記冷却ガスを導入する、請求項1〜5のいずれかに記載の放射源。
【請求項7】
前記アウトレットは、前記放射エミッタと前記放射源の出口アパーチャとの間の場所に前記冷却ガスを導入する、請求項1〜5のいずれかに記載の放射源。
【請求項8】
1つ以上の更なるアウトレットをさらに含み、各々の更なるアウトレットは、前記放射源内の異なる場所において前記放射源内へと冷却ガスを導入する、請求項1〜7のいずれかに記載の放射源。
【請求項9】
前記冷却ガスは、周囲温度より低い温度または前記ガスの沸点と実質同じである温度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の放射源。
【請求項10】
使用中、前記冷却ガスは、
バッファガス、
前記放射源のコンポーネントを冷却するガス、および
前記放射源のコンポーネントを洗浄するガス
のうちの1つ以上として機能する、請求項1〜9のいずれかに記載の放射源。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の放射源と、
前記アウトレットと連結された冷却ガス、加圧ガスまたは液化ガスのソースと
を含む、放射源アレンジ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の放射源または放射源アレンジと連結された、あるいは含む、リソグラフィ装置。
【請求項13】
前記放射源の前記アウトレットを介して前記放射源内へと冷却ガスを導入することを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の放射源または放射源アレンジを動作させる方法。
【請求項14】
前記冷却ガスは、デブリを抑制するためにまたは前記放射源の一部を冷却するために導入される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−29639(P2011−29639A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−160181(P2010−160181)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】