説明

放射線で硬化可能なコーティング組成物、関連のコーティングおよび方法

開示されるのは、放射線で硬化可能なコーティング組成物、これから形成される硬化コーティング、基材をコーティングするための関連の方法、および関連のコーティングされた基材である。特定の局面において、本発明は、放射線で硬化可能なコーティング組成物に向けられる。これらのコーティング組成物は、(a)(i)10〜60重量パーセントの、ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレート、および(ii)40〜90重量パーセントの、多官能性(メタ)アクリレートを含む、膜形成有機バインダ、ならびに(b)バインダの総重量に基づくと、10重量パーセントより多くかつ40重量パーセント未満の、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2007年10月10日に出願された米国仮特許出願第60/978,886号の利益を主張し、この出願は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、放射線で硬化可能なコーティング組成物、それから形成される放射線硬化コーティング、基材をコーティングするための関連の方法、および関連のコーティングされた基材に向けられている。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
透明な可塑性(plastic)の基材を含む可塑性の基材は、他にもあるが、以下に挙げられるような多数の応用に所望されている:フロントガラス、レンズ、および家庭用電化製品(例えば、携帯電話、携帯情報端末、スマートフォン、パソコン、およびデジタルカメラ等が挙げられる)。他の形態の劣化と同様に、引っかき傷を最小化するために、透明な「ハードコート」が保護層として基材にしばしば適用される。
【0004】
場合によっては、そのような「ハードコート」は、一種以上のアルコキシシランを加水分解そして縮合することから形成される。そのようなメカニズムから形成されるコーティングは、非常に高い耐摩耗性を備え得る。しかしながら、特定の業界においては、それらは、化学線(actinic radiation)にさらされた際に硬化可能な有機バインダ物質などの有機バインダ物質を用いたコーティングほど容易には使用できない。
【0005】
もっと最近では、有機−無機ハイブリッドコーティングが提唱されている。これらのコーティングは、紫外線で硬化可能な有機バインダなどの有機バインダ中に分散された、シリカ粒子などの粒子を用いる。それらは「有機−無機ハイブリッド」コーティングと識別される。しかしながら今までのところ開発された有機−無機ハイブリッドコーティングは、特定の応用(そのようなコーティングの家庭用電化製品への使用を伴う特定の応用など)で必要とされる、比較的大きな膜厚(2ミルまで)における非常に高い初期透明性(低ヘイズ(haze))、低色彩(低黄変)、良好な可撓性および耐摩耗性の組み合わせを提示していない。
【0006】
従って、所望されるのは、改良された有機−無機ハイブリッドコーティング組成物を提供することであり、その組成物は、要求の厳しい特定の応用に必要な、比較的大きな膜厚(2ミルまで)における非常に高い初期透明性(低ヘイズ)、低色彩(低黄変)、良好な可撓性および耐摩耗性の特性を提示する。驚くべきことに、発見されたのは、ある特定の、放射線で硬化可能な膜形成有機バインダと特定のナノ粒子とを組み合わせて使うことにより、そのような所望される特性の組み合わせが達成されることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
特定の局面において、本発明は、放射線で硬化可能なコーティング組成物に向けられる。これらのコーティング組成物は、(a)(i)10〜60重量パーセントの、ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレート、および(ii)40〜90重量パーセントの、多官能性(メタ)アクリレートを含む、膜形成有機バインダ、ならびに(b)バインダの総重量に基づくと、10重量パーセントより多くかつ40重量パーセント未満の、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子を含む。
【0008】
他の局面において、本発明は、放射線硬化コーティングに向けられる。これらの硬化コーティングは、(a)ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレートを含む膜形成有機バインダ、ならびに(b)バインダ中に分散された、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子を含む。硬化コーティングは、(1)3〜20ミクロンの厚さ、(2)1%未満の初期ヘイズ、および(3)15%未満のヘイズを100回のテーバーサイクルの後に有する。
【0009】
さらに他の局面において、本発明は、基材をコーティングするための方法に向けられる。これらの方法は、以下の工程を含む:(a)その基材の少なくとも一部に対して、(1)ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレートを含む放射線で硬化可能な膜形成有機バインダ、および(2)一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子、を含むコーティング組成物を付着(deposit)する工程、ならびに(b)その組成物を空気中で化学線にさらしてその組成物を硬化して、硬化コーティングを製造する工程であって、(i)3〜20ミクロンの厚さ、(ii)1%未満の初期ヘイズ、および(iii)15%未満のヘイズを100回のテーバーサイクルの後に有する、工程。
【0010】
また本発明は、関連するコーティングされた基材にも向けられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明の目的のため、明示的にそうでないと特定されない限り、本発明はさまざまな代替となる変形および工程順序を取り得ると理解されるべきである。さらに、いずれかの動作の実施例の中において以外またはそうではないと示されているところ以外では、本明細書および特許請求の範囲の中で使われている例えば成分の量を表しているような全ての数は、全ての場合において「約」の用語で修正されるとして理解すべきである。したがって、そうでないと示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数のパラメータは、本発明によって得られる所望の特性によって、変化し得る近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みでないが、各々の数のパラメータは、少なくとも報告された有効数字の数を考慮して、および通常の丸めの技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0012】
本発明の幅広い範囲を記載している数の範囲およびパラメータが近似値であるというにも関わらず、具体的な実施例に記載される数値は、出来る限り正確に報告されている。いかなる数値も、しかしながら、本質的に、それらのそれぞれの検査測定値で見つかる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。
【0013】
さらに、本明細書中で列挙されたいかなる数の範囲も、その中に包含される全ての下位範囲を含むことを意図することを理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、挙げられた最小値の1および挙げられた最大値の10の間の(および含んだ)全ての下位範囲を含むことを意図し、すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する。
【0014】
先に述べたように、本発明の特定の実施形態は、膜形成有機バインダを含むコーティング組成物に向けられている。本明細書で使用するとき、「膜形成バインダ」という用語は、組成物中に存在する希釈剤またはキャリアを除去した際に、または、室温または高い温度で硬化した際に、少なくとも基材の水平表面上に自立性の連続する膜を形成し得る、バインダをいう。本明細書で使用するとき、「バインダ」という用語は、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子(以下でさらに詳細に述べられる)などの粒状物質が分散されている連続的物質をいう。本明細書で使用するとき、「膜形成有機バインダ」という用語は、その膜形成バインダが、炭素に基づく繰り返し単位の骨格(backbone repeat unit)を含むことを意味する。
【0015】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、実質的にまたは場合によっては完全に、膜形成無機バインダ、すなわち炭素以外(例えばケイ素)のひとつまたは複数の元素に基づく繰り返し単位の骨格を有する膜形成バインダ、を含まない。その結果、特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、実質的にまたは場合によっては完全に、一般式RM(OR’)z−xのアルコキシドを含まない。ここで、米国特許出願公開番号2006/0247348の段落[0011]で記述されるように(この引用箇所は本明細書中で参考として援用される)、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタンおよび/またはジルコニウムであり、R’はそれぞれ独立にアルキル基であり、zはMの原子価であり、そして、xは、z未満の数であり、かつゼロであり得る。
【0016】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、実質的にまたは場合によっては完全に以下のものを含まない:有機シラン、それの加水分解物、および/またはそれの加水分解−縮合生成物。
【0017】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」という用語は、仮に、述べられている物質が組成物中に少しでも存在していればそれは偶発的な不純物であることを意味する。換言すれば、その物質は、組成物の特性に影響を及ぼさない。本明細書で使用するとき、「完全に含まない」という用語は、その物質が全く組成物中に存在しないことを意味する。
【0018】
特定の実施形態において、膜形成有機バインダは放射線で硬化可能である、すなわち、それは化学線にさらされた際に硬化可能である。「化学線」とは、ガンマ線から紫外(「UV」)光の領域、さらに可視光の領域を経て、そして赤外領域まで達する領域の、電磁放射の波長を有する光である。本発明の特定のコーティング組成物を硬化させるために用いられ得る化学線は、概して、180〜1,000nm、または、場合によっては、200〜500nmなどの、100〜2,000ナノメートル(nm)の領域の電磁放射の波長を有する。好適な紫外光源の例としては、水銀アーク、炭素アーク、低、中または高圧力水銀アーク、スワールフロープラズマアーク(swirl−flow plasma arc)および紫外光発光ダイオードが挙げられる。好ましい紫外光発光ランプは中圧力水銀蒸気ランプであり、これは、ランプ管の長さ全体にわたって1インチ当たり200〜600ワット(1センチメートル当たり79〜237ワット)の範囲にわたる出力を有する。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、空気中で硬化可能である。
【0019】
化学線にさらされた際に硬化可能である材料は、放射線で硬化可能な官能基を有する化合物を含み、そのような官能基として、ビニル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、マレイミド基、フマレート基およびこれらの組合せを含む不飽和基が挙げられる。特定の実施形態において、放射線で硬化可能な基は、紫外放射線にさらされた際に硬化可能であり、例えば、アクリレート基、マレイミド、フマレート、ビニルエーテルを含み得る。好適なビニル基は、不飽和エステル基およびビニルエーテル基を有するそれらのものを含む。
【0020】
特定の実施形態において、本発明の組成物中に存在する放射線で硬化可能な膜形成有機バインダは、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。本明細書で使用するとき、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタアクリレートを含むことが意図される。本明細書で使用するとき、「ウレタン(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリレート官能基およびウレタン結合を有するポリマーをいう。理解されるのは、そのようなポリマーは、例えば、ポリイソシアネートと、ポリオールと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応することで作り得て、これは米国特許第6,899,927号、第4欄第4〜第49行に記載されており、この引用部分は本明細書中で参考として援用される。
【0021】
特定の実施形態において、本発明の組成物中に存在する放射線で硬化可能な膜形成有機バインダは、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。そのウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たりの官能基が比較的少ない(多くの場合、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート官能基を有する)。場合によっては、そのようなポリマーは分子量が3,000である。「ウレタン(メタ)アクリレートポリマー」の別の例が米国特許第6,899,927号第4欄第50行〜第5欄第3行に記載されており、この引用部分は本明細書中で参考として援用される。
【0022】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在するウレタン(メタ)アクリレートポリマーの量は、少なくとも20重量パーセントなどの少なくとも10重量パーセントであって、重量パーセントは組成物の総重量に基づく。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在するウレタン(メタ)アクリレートポリマーの量は、40重量パーセント以下などの60重量パーセント以下であって、重量パーセントはバインダの総重量に基づく。本発明の組成物中のウレタン(メタ)アクリレートポリマーの量は、列挙された数値を含んで、列挙された数値のあらゆる組み合わせの間を変動し得る。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の放射線で硬化可能なコーティング組成物は多官能性(メタ)アクリレートを含む。本明細書中で使用するとき、「多官能性(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たり3つ以上(メタ)アクリレート(多くの場合アクリレート)官能基を有する(メタ)アクリレートをいい、例えば、三、四、五および/または六官能性(メタ)アクリレートをいう。
【0024】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は三官能性(メタ)アクリレートを含む。本明細書中で使用するとき、「三官能性(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たり3つの反応性(メタ)アクリレート基を備える(メタ)アクリレートのモノマーおよびポリマーを含むことが意図される。本発明における使用に好適なそのような化合物の例としては以下のものが挙げられる:プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)および/またはイソシアヌレートトリアクリレート。
【0025】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在する三官能性(メタ)アクリレートの総量は、少なくとも50重量パーセントなどの少なくとも40重量パーセントであり、重量パーセントはバインダの総重量に基づく。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在する三官能性(メタ)アクリレートの総量は、60重量パーセント以下などの70重量パーセント以下であって、重量パーセントはバインダの総重量に基づく。本発明のコーティング組成物中に存在する三官能性(メタ)アクリレートの総量は、列挙された数値を含んで、列挙された数値のあらゆる組み合わせの間を変動し得る。
【0026】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレートを含む。本明細書中で使用するとき、「四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレート」という語句は、1分子当たり4つ以上の反応性(メタ)アクリレート基を備える(メタ)アクリレートのモノマーおよびポリマーを含むことが意図され、例えば、四、五および/または六官能性(メタ)アクリレートである。
【0027】
本明細書中で使用するとき、「四官能性(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たり4つの反応性(メタ)アクリレート基を備える(メタ)アクリレートを含むことが意図される。本発明における使用に好適なそのような物質の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化4−ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートテトラアクリレート、そしてこれらの混合物を含む。
【0028】
本明細書中で使用するとき、「五官能性(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たり5つの反応性の(メタ)アクリレート基を備える(メタ)アクリレートのモノマーおよびポリマーを含むことが意図される。そのような物質の好適な例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールエトキシレートペンタアクリレート、およびジペンタエリスリトールプロポキシレートペンタアクリレート、そしてこれらの混合物を含む。
【0029】
本明細書中で使用するとき、「六官能性(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たり6つの反応性の(メタ)アクリレート基を備える(メタ)アクリレートのモノマーおよびポリマーを含むことが意図される。そのような物質の好適な例としては以下の市販製品が挙げられるが、これらに限定されない:EBECRYL(商標)1290およびEBECRYL(商標)8301(六官能性脂肪族ウレタンアクリレート)(両方ともサイテック(CYTEC)社より入手可能);EBECRYL(商標)220(六官能性芳香族ウレタンアクリレート)(サイテック社より入手可能);EBECRYL(商標)830、EBECRYL(商標)835、EBECRYL(商標)870およびEBECRYL(商標)2870(六官能性ポリエステルアクリレート)(全てサイテック社より入手可能);EBECRYL(商標)450(脂肪酸修飾ポリエステルヘキサアクリレート(fatty acid modified polyester hexaacrylate))(サイテック社より入手可能);DPHA(商標)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能性6、サイテック社より入手可能);および前述のいずれかの混合物。
【0030】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在する四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレートの量は、少なくとも15重量パーセントなどの少なくとも10重量パーセントであって、重量パーセントはバインダの総重量に基づく。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在する四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレートの量は、25重量パーセント以下などの30重量パーセント以下であって、重量パーセントはバインダの総重量に基づく。本発明の組成物中の四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレートの量は、列挙された数値を含んで、列挙された数値のあらゆる組み合わせの間を変動し得る。
【0031】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物の膜形成有機バインダは、以下のものを含む:(i)ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレートを、バインダの総重量に基づくと、20〜40重量パーセント;(ii)三官能性(メタ)アクリレートを、バインダの総重量に基づくと、40〜60重量パーセント;および四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレートを、バインダの総重量に基づくと、10〜30重量パーセント。これらの実施形態において、本発明のそのような組成物中のさまざまな(メタ)アクリレートの量は、列挙された数値を含んで、列挙された数値のあらゆる組み合わせの間を変動し得る。
【0032】
特定の実施形態において、本発明の放射線で硬化可能な組成物は、モノ(メタ)アクリレートおよび/またはジ(メタ)アクリレートを実質的に含まない、または場合によってはまったく含まない。本明細書中で使用するとき、「モノ(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たりひとつの(メタ)アクリレート基を備えるモノマーおよびポリマーを含む。本明細書中で使用するとき、「ジ(メタ)アクリレート」という用語は、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるモノマーおよびポリマーを含む。
【0033】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、バインダ中に分散された、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の、粒子を含む。特定の実施形態において、その粒子は一次粒子の平均の大きさが約20ナノメートルのシリカ粒子を備える。
【0034】
粒子の平均の大きさは、透過電子顕微鏡(「TEM」)画像の電子顕微鏡写真を視覚的に検査し、画像の中の粒子の直径を測定し、そしてTEM画像の倍率に基づいて粒子の平均の大きさを計算することによって決定され得る。例えば、105,000倍の倍率のTEM画像が作られ得て、そして変換因子がその倍率を1000で除算することで得られる。視覚的に検査した際、粒子の直径はミリメートルで測定され、そしてその測定値は変換因子を用いてナノメートルに変換される。粒子の直径とは、粒子を完全に囲む球の最小の直径をいう。
【0035】
粒子の形状(または形態)は本発明の具体的な実施形態およびその意図される用途によって変わり得る。例えば、概して球状の形態(例えば、中実のビーズ、マイクロビーズ(microbeads)または中空の球)が使用され得るし、同様に、立方体状、扁平状、または針状(細長いまたは繊維状)の粒子も使用され得る。さらに、粒子は中空、多孔質または空隙無しの内部構造、または前述のあらゆるものの組み合わせ(例えば、中空の中心と、多孔質または中実の壁)を有し得る。
【0036】
異なる組成物、粒子の平均の大きさおよび/または形態を有する一種以上の粒子の混合物が、本発明の組成物に所望の特性および特徴を与えるために、組成物の中に混入され得る。
【0037】
本発明のコーティング組成物中での使用に好適な粒子は、例えば、米国特許第7,053,149号、第19欄第5行〜第23欄第39行に記載されているそれらのものを含み、この引用部分は本明細書中で参考として援用される。
【0038】
混入前において、本発明で使用され得るひとつの部類の粒子は、オルガノゾルのような粒子のゾルを含む。これらのゾルは、上で定められたような範囲の粒子の平均の大きさを有する、幅広い種類の小さい粒子のコロイド状シリカであり得る。
【0039】
特定の実施形態において、粒子は、混入の前において、シリカナノ粒子および重合性(メタ)アクリレート結合剤を含むシリカオルガノゾルを備える。これらの実施形態において、重合性(メタ)アクリレート結合剤は、前述の膜形成有機バインダの少なくとも一部を形成する。本明細書中で使用するとき、「シリカオルガノゾル」という用語は、本発明の特定の実施形態においては重合性(メタ)アクリレートを含む有機結合剤中に分散された、微粉化された、非晶質シリカ粒子などのシリカ粒子のコロイド状分散をいう。本明細書中で使用するとき、「シリカ」という用語は、SiOのことをいう。
【0040】
本発明の特定の実施形態のコーティング組成物中に存在するシリカオルガノゾル中の結合剤としての使用に好適な重合性(メタ)アクリレートとしては、以下のものが挙げられる:例えば、二官能性(メタ)アクリレートおよび上述の多官能性(メタ)アクリレートなどの、不飽和(メタ)アクリレートのモノマーおよびオリゴマー。
【0041】
本発明における使用に好適なシリカオルガノゾルは市販されている。その例としては、Hanse Chemie社(ゲースタハト、ドイツ)より入手可能なNanocryl(登録商標)C系統の製品が挙げられる。これらの製品は、シリカの含有量が50重量パーセント以下の低粘性のオルガノゾルである。本発明における使用に好適なそのような製品の例しては、Nanocryl(登録商標)C150、Nanocryl(登録商標)C152、およびNanocryl(登録商標)C153が挙げられる。同様に好適なものとしては、ナノ粒子を含むポリエーテルアクリレートオリゴマーである、BASF社のLaromer PO9026Vがある。
【0042】
場合によっては、そのようなシリカ粒子は不活性の有機溶媒中に分散されており、例えばNanopol(登録商標)C784の場合がそうであり、これはシリカナノ粒子が酢酸n−ブチル中で分散されたものである。
【0043】
特定の実施形態において、コーティング組成物中に存在する前述の粒子の量は、20〜30重量パーセント、または、場合によっては、約25重量パーセントなどの、10重量パーセントより多くかつ40重量パーセント未満であって、これはコーティング組成物の総固体、つまり不揮発性物質、の重量に基づく。本発明の組成物中のそのような粒子の量は、列挙された数値を含んで、列挙された数値のあらゆる組み合わせの間を変動し得る。
【0044】
驚いたことに、前述のシリカ粒子といった粒子の粒子の大きさ、およびコーティング組成物中にそのような粒子を添加することの、特定の組み合わせが、膜形成有機バインダの特定の組成と同様に、以下のものを得るために重要であると発見された:必要とされる程度の比較的大きな膜厚(2ミルまで)での初期透明性(後述)および低色彩(低黄変)を有すると共に、必要とされる程度の耐摩耗性(後述)および可撓性を有する放射線硬化コーティング。実際に、本明細書中に記述のポリウレタンアクリレートの量が本発明のコーティング組成物中に10〜60重量パーセント(バインダの総重量に基づく)存在することが、以下のために重要であることは予想され得なかった:それは、本明細書中で求められる、膜厚2ミルまでにおける所望の高い初期透明性および低色彩(低黄変)特性を達成することである。予想され得たのは、本明細書中に記述のコーティング組成物中で使用されるナノ粒子の量および大きさがこれらの特性を決定し得るということである。しかしながら、発見されたことは、仮に、最適な量および大きさのナノ粒子が用いられたとしても、本発明の特定のバインダ組成物がいっしょに用いられない限りは、2ミルの膜厚での初期透明性はいまだに不十分であるということである。
【0045】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物はさらに有機溶媒を含む。存在している溶媒の量は、20〜90重量パーセント(コーティング組成物の総重量に基づく)の間を変動してもよく、使用される特定の組成物および所望の塗布の技法に依存する。好適な溶媒としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ベンゼン;トルエン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;アセトン;エタノール;テトラヒドロフルフリルアルコール;プロピルアルコール;ブチルアルコール;プロピレンカーボネート;N−メチルピロリジノン;N−ビニルピロリジノン;N−アセチルピロリジノン;N−ヒドロキシメチルピロリジノン;N−ブチルピロリジノン;N−エチルピロリジノン;N−(N−オクチル)−ピロリジノン;N−(n−ドデシル)ピロリジノン;2−メトキシエチルエーテル;キシレン;シクロヘキサン;3−メチルシクロヘキサノン;酢酸エチル;酢酸ブチル;テトラヒドロフラン;メタノール;プロピオン酸アミル;プロピオン酸メチル;ジエチレングリコールモノブチルエーテル;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;エチレングリコール;ユニオンカーバイド社からCELLOSOLVE工業用溶媒という名称で販売されている、エチレングリコールのモノ−およびジ−アルキルエーテルならびにその誘導体;ダウ・ケミカル社よりDOWANOL(登録商標)PMおよびPMA溶媒という名称でそれぞれ販売されている、プロピレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;および列挙された溶媒の混合物。
【0046】
所望の塗布の技法に応じて、本発明のコーティング組成物は、溶媒および水を実質的に含まない液体のコーティング組成物、つまり実質的に100%固体のコーティングとして具体化してもよい。本明細書中で使用するとき、「実質的に100%固体」という用語は、組成物が、実質的に揮発性有機溶媒(「VOC」)を含まず、かつ、VOCの放出が基本的にゼロであり、かつ、実質的に水を含まないことを意味する。特定の実施形態において、本発明の実質的に100%固体のコーティングは、VOCおよび水を、コーティング組成物の重量に対して5パーセント未満含み、場合によっては、コーティング組成物の2重量パーセント未満含み、さらに他の場合においては、コーティング組成物の1重量パーセント未満含み、そして、さらに他の場合においては、コーティング組成物中に全くVOCおよび水を含まない。
【0047】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は付加的な任意成分をさらに含んでいてもよく、例えば表面コーティングの調製の分野においてよく知られている成分などが挙げられる。そのような任意成分は以下に例示されるものを含んでいてもよい:界面活性剤、流動性改良剤(flow control agent)、揺変性付与剤(thixotropic agent)、脱気剤(anti−gassing agent)、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤およびその他の通常の助剤。当該分野において周知のそのようなあらゆる添加物も使用され得る。
【0048】
特定の実施形態において、特に本発明のコーティング組成物が紫外線放射によって硬化される場合において、そのような組成物は光開始剤をも含む。光開始剤は硬化の際に放射線を吸収し、そしてそれを重合に利用可能な化学的エネルギーに変換することは、当業者によって理解されるだろう。光開始剤はその作用の様式に基づいて2つの主要なグループに分類され、そのうちのひとつまたは両方が本発明の組成物中に使用され得る。開裂型(Cleavage−type)光開始剤としては以下のものが挙げられる:アセトフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ベンゾインエーテル、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシド、ならびにこれらの混合物。水素引き抜き型(Abstraction−type)光開始剤としては以下のものが挙げられる:ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン(Michler’s ketone)、チオキサントン、アントラキノン、カンファーキノン、フルオロン、ケトクマリン、およびこれらの混合物。
【0049】
本発明の特定の実施形態のコーティング組成物に使用され得る光開始剤としては以下の具体例が挙げられるが、これらに限定されない:ベンジル;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル;ベンゾインイソブチルエーテルベンゾフェノール;アセトフェノン;ベンゾフェノン;4,4’−ジクロロベンゾフェノン;4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;ジエトキシアセトフェノン;例えば、スペクトラグループ社より入手可能なH−Nuシリーズの開始剤などのフルオロン類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2−イソプロピルチキサントン;例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノンなどのα−アミノアルキルフェノン;例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、および2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類;例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、およびビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのビスアシルホスフィンオキシド類;およびこれらの混合物。
【0050】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、0.01〜15重量パーセントの光開始剤を含み、またはいくつかの実施形態においては0.01〜10重量パーセント、またはさらに他の実施形態においては0.01〜5重量パーセントの光開始剤を含み、これはコーティング組成物の総重量に基づく。コーティング組成物中に存在する光開始剤の量は列挙された数値を含んで、これらの数値のあらゆる組み合わせの間を変動し得る。
【0051】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物はさらに着色剤を含む。本明細書中で使用するとき、「着色剤」という用語は、組成物に色彩および/またはその他の不透明性および/またはその他の視覚効果を与えるあらゆる物質を意味する。着色剤は、離散粒子、分散液、溶液および/またはフレークなどの、あらゆる好適な形態でコーティングに添加され得る。単一の着色剤、または二種以上の着色剤の混合物が、本発明のコーティング中に使用され得る。
【0052】
着色剤の例としては以下のものが挙げられる:塗料工業で使用される、および/またはDry Color Manufacturers Association(DCMA)によって列挙される、顔料、染料およびチント(tint)ならびに特殊効果組成物。着色剤は、例えば、不溶性であるが使用条件下で湿潤性をもつ(wettable)微粉化された固体粉末を含み得る。着色剤は有機化合物または無機化合物でも良く、凝集性でも非凝集性でもよい。着色剤は当業者にその使用が知られているアクリル研磨材(grind vehicle)のような研磨材を用いることにより、コーティングに混入されることができる。
【0053】
顔料および/または顔料組成物の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩型(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、縮合物、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダンスロン、アンスラピリミジン、フラバンスロン、ピランスロン、アンスアンスロン、ジオキサジン、トリアリルカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラックおよびこれらの混合物。「顔料」および「着色充填剤」という用語は互換的に使用され得る。
【0054】
染料の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:フタログリーンまたはブルー、酸化鉄、バナジウム酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、アルミニウムおよびキナクリドンなどの溶剤性および/または水性のもの。
【0055】
チントの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:Degussa社から市販のAQUA−CHEM896、Eastman Chemical社のAccurate Dispersions部門から市販のCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなどの、水性または水混和性担体中に分散させた顔料。
【0056】
上述のように、着色剤は、ナノ粒子分散液を含むがこれに限定はされない分散液の形態であってもよい。ナノ粒子分散液は、所望の可視の色彩および/または不透明性および/または視覚効果を生じる、一種以上の高分散ナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含み得る。ナノ粒子分散液は、70nm未満または30nm未満などの150nm未満の粒子の大きさを有する顔料または染料などの着色剤を含み得る。ナノ粒子は、0.5mm未満の粒子の大きさを有する粉砕媒体で、ストックの有機または無機顔料を粉砕することにより作られ得る。ナノ粒子分散液およびそれらの製造方法の例は、米国特許第6,875,800B2号の中に確認され、それは本明細書中で参考として援用される。ナノ粒子分散液は、結晶化、沈殿、気相凝縮、および化学摩耗(すなわち部分溶解)によっても作られ得る。コーティング中のナノ粒子の再凝集を最小限にするために、樹脂コーティングされたナノ粒子の分散液が使用され得る。本明細書で使用するとき、「樹脂コーティングされたナノ粒子の分散液」は、ある連続相を意味し、この連続相の中に、ナノ粒子およびこのナノ粒子上の樹脂コーティングを含む、目立たない(discreet)「複合微粒子」が分散されている。樹脂コーティングされたナノ粒子の分散液およびそれらの製造方法の例は、2004年6月24日に出願された米国特許出願公開第2005−0287348A1号、2003年6月24日に出願された米国仮出願第60/482,167号、および2006年1月20日に出願された米国特許出願シリアル番号第11/337,062号で確認され、それらもまた本明細書中で参考として援用される。
【0057】
本発明の組成物に用いられ得る特殊効果組成物の例としては以下のものが挙げられる:反射率(reflectance)、真珠光沢、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、感光性、サーモクロミズム、視角依存多色性(goniochromism)および/または色彩変化などのひとつ以上の外観的効果を生じる顔料および/または組成物。付加的な特殊効果組成物は、不透明性やテクスチャなどのその他の知覚可能な特性を提供し得る。非限定的な実施形態において、特殊効果組成物は、コーティングがさまざまな角度で見られた場合にコーティングの色彩が変化するような、カラーシフトを生じ得る。色彩効果組成物の例は、米国特許第6,894,086に確認されており、それは本明細書中で参考として援用される。付加的な色彩効果組成物は以下のものを含み得る:透明コーティングされた雲母および/または合成雲母、コーティングされたシリカ、コーティングされたアルミナ、透明液晶顔料、液晶コーティング、および/または、物質の表面および空気の間の屈折率の差によってではなく、物質中の屈折率の差により干渉がもたらされる、あらゆる組成物。
【0058】
一般に、着色剤は、所望の視覚および/または色彩効果を与えるのに十分であればどんな量で存在してもよい。着色剤は本組成物の0.1〜10重量パーセントまたは0.5〜5重量パーセントなどの0.1〜65重量パーセントを構成してもよく、重量パーセントは本発明の組成物の総重量に基づく。
【0059】
本発明のコーティング組成物は、本明細書中の実施例に記述されるそれらのものを含む、あらゆる好適な技法で作られ得る。コーティング成分は、他にもあるが、例えば、撹はん槽、インライン式溶解機(inline dissolver)を含む溶解機、ビーズミル、攪拌ミル、スタティックミキサーを用いて混合され得る。適切であるならば、それは、化学線で硬化可能な本発明のコーティングへの損傷を防ぐために化学線を排除して行われる。調製の過程において、本発明の混合物の個々の構成要素は別々に混合され得る。あるいは、本発明の混合物が別々に調製され、そして他の構成要素と混合され得る。
【0060】
本発明のコーティング組成物はあらゆる好適な基材に塗布し得るが、しかしながら、多くの場合、基材は熱可塑性の基材などの可塑性の基材であり、これは以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリフェニレンエーテルおよびポリスチレンの混合物、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリスルホン、アクリル、およびこれらの共重合体および/またはこれらの混合物。
【0061】
コーティング組成物をそのような基材に塗布する前に、基材の表面はクリーニング処理されてもよい。プラスチックの有効な処理技法としては以下のものが挙げられる:超音波クリーニング;イソプロパノール:水、またはエタノール:水の、50:50の混合物などの、有機溶媒の水性混合物を用いた洗浄;紫外線処理;低温プラズマまたはコロナの放電を用いた処理などの、活性ガス処理;および、フッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)を含んでもよい、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ性の水溶液を用いて表面をエッチングするといった、水酸化などの化学処理。高分子有機材料の表面処理について述べている、米国特許第3,971,872号、第3欄第13〜第25行、米国特許第4,904,525号、第6欄第10〜第48行、および米国特許第5,104,692号、第13欄第10〜第59行を参照すること。
【0062】
本発明のコーティング組成物は、例えば、あらゆる従来のコーティング技法を用いて基材に塗布されてもよく、このコーティング技法としては以下のものが挙げられる:フローコーティング(flow coating)、ディップコーティング(dip coating)、スピンコーティング(spin coating)、ロールコーティング(roll coating)、カーテンコーティング(curtain coating)および噴霧コーティング(spray coating)。基材へのコーティング組成物の塗布は、所望されるならば、クリーンルームなどの、ほこりまたは汚染物質を実質的に含まない環境で行われてもよい。本発明の方法で作られるコーティングは、厚さが0.1〜50ミクロン(μm)の間で変動し得る。しかしながら、3〜20μmのコーティングの厚さが後述の透明性および耐摩耗性の特性を達成するために決め手となり得ることが発見された。
【0063】
本発明のコーティング組成物の基材への塗布に続いて、コーティングされた基材を前述の条件で空気中において化学線にさらすなどして、コーティングは硬化される。本明細書で使用するとき、「硬化された」および「硬化」という用語は、硬化(すなわち架橋)されることが意図されるコーティングの成分を少なくとも部分的に架橋することをいう。特定の実施形態において、架橋密度、すなわち架橋の度合いは、完全な架橋の35〜100パーセントの範囲にわたる。架橋の存在および度合い、すなわち架橋密度は、さまざまな方法で決定され得て、例えば、米国特許第6,803,408号第7欄第66行〜第8欄第18行に記述されるようなPolymer Laboratories社のMK III DMTAアナライザーを用いた動的熱機械分析(DMTA)により決定され得る。この引用部分は本明細書中で参考として援用される。
【0064】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物から形成されたコーティングは、耐摩耗性を有し、かつ、2ミルまでの膜厚で優れた初期透明性を示す。本発明の目的のために、「初期透明性」という用語は、全てのテーバー摩耗以前の硬化コーティングが1%未満の初期ヘイズ(%)を有することを意味する。本発明の目的のために、「耐摩耗性」という用語は、標準的なテーバー摩耗検査(Taber Abrasion Test)(実施例で述べられる条件を用いて修正されたASTM D1044−49)に従った、100回のテーバー摩耗サイクルの後に測定された場合、硬化コーティングが15%未満のヘイズ(%)、場合によっては10%未満のヘイズ(%)を有することを意味する。また、特定の実施形態において、標準的なテーバー摩耗検査(実施例NSI/SAE26.1−1996で述べられる条件を用いて修正されたASTM D1044−49)に従った、300回のテーバー摩耗サイクルの後に測定された場合、本発明の硬化コーティングが25%未満のヘイズ(%)、場合によっては15%未満のヘイズ(%)を有する。さらに、本発明のコーティング組成物は低色彩を示し、これは、HunterLab社の分光光度計を用いてASTM D1925に従って測定した場合、コーティングが1.3未満の黄色指数を有することを意味する。
【0065】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、しかしながら、これらの詳細に本発明が限定されると考慮してはいけない。そうでないと示されない限り、以下の実施例のみならず本明細書の全体にわたって全ての部およびパーセンテージは、重量の単位とする。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
コーティング組成物を表1に列挙された成分により調整した。投入物(charge)Iを好適なフラスコに加え、混合した。次に投入物IIをフラスコに加え、そして投入物Iおよび投入物IIの混合物を固体が溶解された状態のもとで混合した。次に、投入物IIIを継続的な攪拌のもとで加えた。投入物I、IIおよびIIIを予め混合した配合を、次に投入物IVを収容しているフラスコに攪拌のもとで加えた。得られた配合を0.45μmのフィルターで2回濾過した。
【0067】
【表1】

1分子当たり2つのアクリレート基を備えるポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含む、分子量が約3,000のポリウレタンアクリレート樹脂が、有機溶媒中にある、固形分73%の溶液。
ペンシルバニア州エクストンのSartomer社から市販されている、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート。
ペンシルバニア州エクストンのSartomer社から市販されている、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート。
CIBA Specialty Chemicals社から市販されている、光開始剤。
CIBA Specialty Chemicals社から市販されている、光開始剤。
Rahn社から市販されている、光開始剤。
Byk−Chemie社から市販されている、ポリエーテルで修飾されたアクリル官能性ポリジメチルシロキサン。
Cytec Surface Specialties社から市販されている、流動調整剤(flow modifier)。
ドイツ、エッセンのTego Chemie社から市販されている、流動調整剤。
10ゲースタハトのHanse Chemie社から市販されている、シリカオルガノゾルであって、これは一次粒子の平均の大きさが約20ナノメートルの非晶質シリカ粒子の、トリメチロールプロパントリアクリレート中における50/50重量パーセントの分散液である。
【0068】
サンプルを前述の組成物でコーティングするために、透明なポリカーボネートのプラークであるMokrolon(登録商標)(Bayer社)を2−プロパノールで拭いた。コーティング溶液を、下塗りされていない基材にスピン塗布し、そして1J/cmのUVA線量、および空気中において0.6W/cmの強度を有するHバルブを用いて硬化した。3〜18μmの範囲にわたる種々の最終乾燥膜厚を有するサンプルを調整した。コーティングされたサンプルを、接着性、光学的透明度およびテーバー耐摩耗性について評価した。
【0069】
表2で示されているように、本発明のコーティングでコーティングされたポリカーボネートのサンプルは、種々の膜厚にわたって透明性が高く、初期ヘイズが低かった。また、コーティングは良好な接着性および耐摩耗性を提供した。
【0070】
【表2】

接着性:クロスハッチ、NichibonLP−24粘着テープ。0〜5の評価尺度(接着性無し〜テープ引張り後に100%の接着性)。
ヘイズ(%)をHunterLab社の分光光度計を用いて計測した。
テーバー摩耗:Taber社5150アブレーダー、CS−10ホイール、S−11リフェイシングディスク(refacing disk)、500グラムの重り。ヘイズ(%)を300回のテーバーサイクルの後で計測した。300回のテーバーサイクル後のヘイズ(%)25%未満は容認される。
【0071】
(比較例2、3、4)
実施例2、3、4の、放射線で硬化可能なコーティング組成物を表3に列挙された成分により調整した。撹拌のもとで、投入物IIIに続いて、投入物Iおよび投入物IIをフラスコに加えた。混合物を透明な溶液を形成するための適切な時間だけ攪拌した。
【0072】
【表3】

Cytec Industries社から市販されている、六官能性脂肪族ウレタンアクリレート。
Cytec Industries社から市販されている、多官能性ポリエステルアクリレート。
Cray Valley社から市販されている、二官能性モノマー。
CIBA Specialty Chemicals社から市販されている、光開始剤。
CIBA Specialty Chemicals社から市販されている、光開始剤。
Clariant社から市販されている、イソプロパノール中に含まれる、30%コロイド状シリカ。
Clariant社から市販されている、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中に含まれる、30%コロイド状シリカ。
Clariant社から市販されている、ジアクリレート中に含まれる、30%コロイド状シリカ。
ゲースタハトのNanoresins社から市販されている、シリカオルガノゾルであって、これは一次粒子の平均の大きさが約20ナノメートルの非晶質シリカ粒子の、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中における50/50重量パーセントの分散液である。
【0073】
サンプルを前述の組成物でコーティングするために、透明なポリカーボネートのプラークであるMakrolon(登録商標)(Bayer社)を2−プロパノールで拭いた。コーティング溶液を、下塗りされていない基材にスピン塗布し、そして1J/cmのUVA線量、および空気中において0.6W/cmの強度を有するHバルブを用いて硬化した。約15.0μmの最終乾燥膜厚を有するサンプルを調整した。コーティングされたサンプルを、光学的透明度および黄色度について評価した。
【0074】
表4で示されているように、ナノシリカ分散液に基づく異なるアクリレートコーティング系を用いてコーティングされたポリカーボネートのサンプルは、異なる程度の初期ヘイズおよび黄色度を示した。
【0075】
【表4】

ヘイズ(%)をHunterLab社の分光光度計を用いて計測した。
黄色指数に基づく色彩を、HunterLab社の分光光度計を用いて計測した。
【0076】
(実施例5、6、7)
実施例5、6および7の、放射線で硬化可能なコーティング組成物を表5に列挙された成分により調整した。撹拌のもとで、投入物IVに続いて、投入物Iおよび投入物IIをフラスコに加えた。次に、撹拌のもとで、投入物IIIを加えた。混合物を透明な溶液を形成するための適切な時間だけ攪拌した。
【0077】
【表5】

2つのアクリレート基を備えるポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、かつ分子量が約3,000のポリウレタンアクリレート樹脂が、有機溶媒中にある、固形分73%の溶液。
ペンシルバニア州エクストンのSartomer社から市販されている、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート。
ペンシルバニア州エクストンのSartomer社から市販されている、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート。
CIBA Specialty Chemicals社から市販されている、光開始剤。
CIBA Specialty Chemicals社から市販されている、光開始剤。
Rahn社から市販されている、光開始剤。
Byk−Chemie社から市販されている、ポリエーテルで修飾されたアクリル官能性ポリジメチルシロキサン。
Cytec Surface Specialties社から市販されている、流動調整剤。
ドイツ、エッセンのTego Chemie社から市販されている、流動調整界面活性剤(Flow modifier surfactant)。
10ゲースタハトのNanoresins社から市販されている、シリカオルガノゾルであって、これは一次粒子の平均の大きさが約20ナノメートルの非晶質シリカ粒子の、トリメチロールプロパントリアクリレート中における50/50重量パーセントの分散液である。
【0078】
サンプルを前述の組成物でコーティングするために、透明なポリカーボネートのプラークであるMakrolon(登録商標)(Bayer社)を2−プロパノールで拭いた。コーティング溶液を、下塗りされていない基材にスピン塗布し、そして1J/cmのUVA線量、および空気中において0.6W/cmの強度を有するHバルブを用いて硬化した。コーティングされたサンプルを、耐摩耗性、光学的透明度および黄色度について評価した。
【0079】
表6で示されているように、バインダ中に60%より多くポリウレタンアクリレートを有するコーティングでコーティングされたポリカーボネートのサンプル(すなわち実施例5)は、低い耐摩耗性、高い黄色度および約2ミルの膜厚で低い透明性を示した。ポリウレタンアクリレートを含まないコーティングでコーティングされたサンプル(すなわち実施例6)は、低い可撓性を示した。
【0080】
【表6】

ヘイズ(%)をHunterLab社の分光光度計を用いて計測した。
テーバー摩耗:Taber社5150アブレーダー、CS−10ホイール、S−11リフェイシングディスク、500グラムの重り。ヘイズ(%)を100回および300回のテーバーサイクルの後計測した。300回のテーバーサイクル後のヘイズ(%)25%未満は容認される。
黄色指数に基づく色彩を、HunterLab社の分光光度計を用いて計測した。
【0081】
前述の説明に開示される趣旨から逸脱することなく、本発明に対して改良を行うことができることは、当業者によって容易に理解されるだろう。続く特許請求の範囲の中の請求項においてそうではないとそれらの言葉で明言されなければ、そのような改良は含まれると理解される。従って、本明細書中に詳細に述べられている特定の実施形態は、例示に過ぎず、かつ本発明の範囲を限定せず、その範囲は、添付の請求項ならびにいかなるおよび全てのそれらの均等物の、最大限の広さが与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線で硬化可能なコーティング組成物であって、
(a)膜形成有機バインダであって、
(i)該バインダの総重量に基づくと、10〜60重量パーセントの、ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレート、および
(ii)該バインダの総重量に基づくと、40〜90重量パーセントの、多官能性(メタ)アクリレート、を含む該膜形成有機バインダ、ならびに
(b)該組成物の総固体重量に基づくと、10重量パーセントより多くかつ40重量パーセント未満の、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子を含む、組成物。
【請求項2】
前記硬化コーティングは膜形成無機バインダを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記膜形成有機バインダは、
(i)前記バインダの総重量に基づくと、20〜40重量パーセントの、前記ウレタン(メタ)アクリレート、
(ii)前記バインダの総重量に基づくと、40〜60重量パーセントの、三官能性(メタ)アクリレート、および
(iii)前記バインダの総重量に基づくと、10〜30重量パーセントの、四官能性および/またはより多い官能性の(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒子はシリカ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記シリカ粒子は非晶質シリカ粒子を含む、請求項4に記載の組成物
【請求項6】
前記シリカ粒子の一次粒子の平均の大きさが約20ナノメートルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
放射線硬化コーティングであって、
(a)ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備える膜形成有機バインダ、および
(b)該バインダ中に分散された、一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子を含み、
該硬化コーティングは、
(1)3〜20ミクロンの厚さ、
(2)1%未満の初期ヘイズ、および
(3)15%未満のヘイズを100回のテーバーサイクルの後に有する、硬化コーティング。
【請求項8】
前記粒子はシリカ粒子を含む請求項7に記載の硬化コーティング。
【請求項9】
前記粒子は、前記コーティング組成物中に、前記硬化コーティングの総重量に基づくと、10重量パーセントより多くかつ40重量パーセント未満の量で存在する、請求項7に記載の硬化コーティング。
【請求項10】
前記硬化コーティングが可塑性の基材に付着される、請求項7に記載の硬化コーティング。
【請求項11】
前記硬化コーティングは、ANSI/SAE26.1−1996に従った100回のテーバー摩耗サイクルの後に測定された場合に10%未満のヘイズ(%)、およびANSI/SAE26.1−1996に従った300回のテーバー摩耗サイクルの後に測定された場合に15%未満のヘイズ(%)を有する、請求項7に記載の硬化コーティング。
【請求項12】
前記硬化コーティングは膜形成無機バインダを実質的に含まない、請求項7に記載の硬化コーティング。
【請求項13】
基材をコーティングする方法であって、
(a)該基材の少なくとも一部に対して、
(1)ポリイソシアネートおよびポリオールの反応生成物を含み、1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基を備えるウレタン(メタ)アクリレートを含む放射線で硬化可能な膜形成有機バインダ、および
(2)一次粒子の平均の大きさが25ナノメートル以下の粒子、を含むコーティング組成物を付着する工程、ならびに
(b)該組成物を空気中で化学線にさらすことによって該組成物を硬化し、硬化コーティングを製造する工程であって、
(1)3〜20ミクロンの厚さ、
(2)1%未満の初期ヘイズ、および
(3)15%未満のヘイズを100回のテーバーサイクルの後に有する、工程を含む、方法。
【請求項14】
前記粒子はシリカ粒子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子は、前記コーティング組成物中に、前記硬化コーティングの総重量に基づくと、10重量パーセントより多くかつ40重量パーセント未満の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基材が可塑性の基材である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記硬化コーティングは膜形成無機バインダを実質的に含まない、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2011−500896(P2011−500896A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529015(P2010−529015)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079271
【国際公開番号】WO2009/049000
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】