説明

放射線保護におけるFGF−20の予防的使用および治療的使用

本発明は、幹細胞増殖および生着の刺激方法、放射線曝露、化学療法、化学兵器/生物兵器薬剤への曝露および/または身体内の急速に増殖する組織を冒す任意の他の傷害と関連する障害、またはその1つ以上の症状の予防および/または処置する方法に関する。特に、本発明は、被験体に、線維芽細胞成長因子−20(FGF−20)タンパク質、またはそのフラグメント、誘導体、バリアント、ホモログ、アナログ、またはそれらの組合せを含む組成物投与することにより、幹細胞の増殖および/または生着を刺激する方法、ならびに1種類以上の身体内の急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線曝露、化学的および/または生物学的傷害)と関連する障害またはその1つ以上の症状予防および/または処置する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、幹細胞の増殖および生着を刺激する方法、ならびに放射線曝露、化学療法、化学兵器/生物兵器薬剤への曝露および/または身体内の急速に増殖する組織を冒す任意の他の傷害と関連する障害もしくはその1つ以上の症状を予防および/または処置する方法に関する。特に、本発明は、被験体に、線維芽細胞成長因子−20(FGF−20)タンパク質、またはそのフラグメント、誘導体、バリアント、ホモログ、アナログ、またはそれらの組合せを含む組成物を投与することにより、幹細胞の増殖および/または生着を刺激する方法、ならびに身体内の1種類以上の急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線曝露、化学的および/または生物学的傷害)と関連する障害もしくはその1つ以上の症状を予防および/または処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
FGFファミリーは、各々が、保存されたアミノ酸コアを含有する20を超えるメンバーからなる(例えば、Powers et al.,Endocr.Relat.Cancer,7(3):65−197(2000)を参照)。FGFは、多様な細胞機能、例えば成長、生存、アポトーシス、運動性および分化などを調節する(例えば、Szebenyi et al.,Int.Rev.Cytol.,185:45−106(1999)を参照)。FGFファミリーのメンバーは、胚形成および成体の一生の間の種々の生理学的および病理学的プロセス、例えば、形態形成、四肢発達、組織修復、炎症、血管形成ならびに腫瘍の成長および浸潤などに関与する(例えば、Powers et al.,Endocr.Relat.Cancer,7(3):165−197(2000);またはSzebenyi et al.,Int.Rev.Cytol.185:45−106(1999)を参照)。相同性に基づくゲノムマイニング法により、FGFファミリーの新たなメンバーであるFGF−20が同定された(米国特許出願第09/494,585号(2000年1月13日出願)および同第09/609,543号(2000年7月3日出願)を参照されたく、その開示は引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0003】
1回の電離放射線への曝露は、フリーラジカルの生成による組織への即時の影響がもたらされ得、多くの場合、放射線宿酔がもたらされる。放射線誘導致死性は、被曝線量に依存する。3つの主な症候群が放射線への1回の被曝線量と関連し、それらは心臓血管/中枢神経系(CNS)症候群、胃腸(GI)症候群および造血(骨髄)症候群である(例えば、Coleman et al.,Radiat.Res.,159(6):812−834(2003)を参照)。死亡時期は、被曝線量にもよるが、心臓血管/中枢神経系(CNS)症候群では数時間、GI症候群では3〜10日間、造血症候群では30〜60日間である。放射線宿酔と関連する他の症状としては、限定されないが、吐き気、嘔吐、下痢、皮膚の熱傷およびただれ、疲労、脱水症、炎症、脱毛症、好中球減少、口腔粘膜およびGI系の潰瘍形成、口腔乾燥症、および出血(例えば、鼻、口および直腸からの出血)が挙げられる。放射線宿酔と関連する症状の下地となる共通の原因は、幹細胞前駆細胞に対する電離放射線の直接的な影響である。有糸分裂が活発な造血前駆細胞は、2〜3Gyの全身被曝後、分裂することができなくなり、リンパ球減少、血小板減少、貧血、骨髄形成不全、その後、感染、出血および創傷治癒不良(これらは、造血症候群の致死性に寄与する)がもたらされる。2Gy未満の線量の放射線は中等度の血球減少を誘導するが、有意な骨髄損傷は伴わない(例えば、Geiselhart et al.,J.Immunol.166(5):3019−3027(2001)を参照)。末梢血リンパ球減少は、中度から高度の線量被曝後、最初の6〜24時間以内に発症し得る(例えば、Mackall et al.,Blood 97(5):1491−1497(2001)を参照)。好中球減少(好中球の数の減少であり、感染のリスクの増大をもたらす)および胃腸の粘膜炎は、電離放射線に起因する死亡の2大原因を表す。マスタードガスなどの発疱薬は、放射線のように、細胞レベルで同様の影響が引き起こされ、これらが一緒に用いられると、罹患率に対して幾何学的影響がもたらされる。
【0004】
緩和的医学的介入、例えば、血液細胞置換、抗生物質、サイトカイン、および高線量の場合は造血幹細胞移植などは、全体的には生存を延長し得る。放射線応答の生物学的修正は、長い間、調査が活発な分野となっている。また、活性な放射線増感剤および保護剤の両方の開発は、放射線療法を受けている患者に治療上の利点を提供し得る(例えば、非特許文献1を参照)。放射線保護剤のさらなる適応としては、例えば、例えば、産業上、医療上または軍事上の環境において電離放射線への偶発的曝露に関わる個人の保護、および原発事故またはテロ攻撃の場合に放射線に曝露される個人の保護が挙げられる。
【0005】
FGFファミリーのある種のメンバーによる処置は、全身への電離放射線後、マウスにおいて生存および造血回復を改善することが示されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6を参照)。酸性FGF(aFGFまたはFGF−1、1〜24 mg)は、840センチグレイ(cGy)の電離放射線を全身に受けたC3H/HeCNRマウスの生存を延長させる(非特許文献7を参照)。3種類の他のFGFファミリーメンバーである塩基性FGF(bFGFまたはFGF−2)、ケラチノサイト成長因子1および2(KGF−1またはFGF−7、およびKFG−2またはFGF−10)の放射線保護効果が、C3H/HeマウスおよびBalbCマウスの両方において調べられた(非特許文献8を参照)。これらの研究により、電離放射線のLD50は、1回の用量(6μg)の成長因子により、およそ100cGy増加することが示された。
【0006】
電離放射線は、放射線粒子が、細胞内または別の箇所の別の分子に衝突すると、反応性イオンを生成する能力によってこのような名称になっている。細胞内で最もよく見られる分子の1つは水(HO)であり、非常に多くの場合、生成するラジカルは、この分子の分解物の形態である(例えば、非特許文献9を参照)。活性酸素種(ROS)としては、限定されないが、スーパーオキシド(O)、ヒドロキシル(OH)および過酸化水素(H)が挙げられる(非特許文献10を参照)。これらの分子中間体は、細胞に、例えば、ミトコンドリア内の電子伝達経路によるエネルギー生成に有用であるが、ROSの過剰存在は、その高度な反応性による組織崩壊をもたらし得る。かかるラジカルが引き起こし得る損傷の類型には、ゲノムDNAの断裂、ミトコンドリア膜の脱分極およびタンパク質の改変がある。ROSに対する防御の身体の第一線は、ラジカルを、より反応性の低い種にスカベンジする酵素である。これらとしては、スーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD、CuZnSOD、細胞外SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼおよび転写因子Nrf2によって誘導される遺伝子が挙げられる(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13を参照)。実際、これらのタンパク質の多くは、過剰発現されたとき、細胞に対して放射線保護性であることが示されている(非特許文献14、および非特許文献15を参照)。また、線維芽細胞成長因子ファミリーの一部の他のメンバー(例えば、KGFなど)は、Nrf2の発現に影響を及ぼすことが示されている(非特許文献16を参照)。
【0007】
放射線曝露および急速に増殖する組織を冒す他の傷害と関連する障害またはその1つ以上の症状からの有効な保護またはその処置を提供し得る、より良好な放射線保護剤に対する大きな臨床的必要性がなお存在する。活性な放射線保護剤の開発はまた、放射線療法を受けている患者に対する治療上の利点、および産業上または軍事上の環境において電離放射線に曝露される現場に最初に到着する人もしくは軍事要員の保護、または原発事故またはテロ行為に起因する電離放射線への一般人集団の曝露の保護を提供し得る。
【非特許文献1】Cancer Chemotherapeutic Agents,1995年,p.501−527
【非特許文献2】Cytokine,1997年,9(1),p.59−65
【非特許文献3】Acta Oncol.,1997年,36(3),p.337−340
【非特許文献4】Acta Oncol.,1995年,34(3),p.435−438
【非特許文献5】Radiat.Res.,1998年,150(2),p.204−11
【非特許文献6】Am.J.Clin.Oncol.,2001年,24(5),p.491−5
【非特許文献7】Cytokine,1997年,9(1),p.59−65
【非特許文献8】Am.J.Clin.Oncol.,2001年,24(5),p.491−5
【非特許文献9】Int.J.Radiat.Biol,1994年,65,p.27−33
【非特許文献10】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1981年,78,p.1001−1003
【非特許文献11】Free Radic.Biol.Med.,1994年,17,p.389−395
【非特許文献12】FASEB J.,1993年,7,p.361−368
【非特許文献13】Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,p.5361−5366
【非特許文献14】Free Radic.Biol.Med.,1994年,17,p.389−395
【非特許文献15】FASEB J.,1993年,7,p.361−368
【非特許文献16】Mol.Cell Biol.,2002年,22,p.5492−5505
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(3.発明の要旨)
本発明は、放射線曝露(1回もしくは複数)、化学療法、放射線類似特性を有する化学兵器および/または生物兵器薬剤への曝露(1回もしくは複数)および/または身体内の急速に増殖する組織を冒す任意の他の傷害への曝露(1回もしくは複数)と関連する1つ以上の障害もしくはその1つ以上の症状を、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程により予防または処置する方法を提供する。一実施形態では、予防および/または処置対象の障害は造血の障害であり、限定されないが、貧血、白血球減少症(例えば、好中球減少症)、血小板減少、汎血球減少症、および凝固障害が挙げられる。別の実施形態では、予防および/または処置対象の障害は骨髄欠損である。別の実施形態では、予防および/または処置対象の障害は移植片対宿主病である。別の実施形態では、予防または処置対象の障害は食事性粘膜炎であり、限定されないが、口腔粘膜炎、食道炎、口内炎、腸炎および直腸炎が挙げられる。別の実施形態では、予防および/または処置対象の障害は、放射線誘発型の前立腺炎、膣炎および/または尿道炎である。別の実施形態では、予防または処置対象の障害は心臓血管および/または中枢神経系症候群である。一部のある実施形態では、上記の1つより多い障害が、本発明の方法によって予防および/または処置され得る。一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法および化学兵器/生物兵器薬剤)と関連する症状としては、限定されないが、下痢、皮膚熱傷、ただれ、疲労、脱水症、炎症、脱毛症、口腔粘膜の潰瘍形成、口腔乾燥症、および出血(例えば、鼻、口および直腸から)が挙げられる。
【0009】
本発明は、一部は、CG53135が、急速に増殖する組織、例えば造血組織および胃腸の組織などを、放射線曝露(1回もしくは複数)、化学療法および1種類以上の化学兵器および/または生物兵器薬剤への曝露(1回もしくは複数)などの傷害から保護し、また、CG53135は、幹細胞(例えば、造血幹細胞および/または胃腸の幹細胞など)の増殖および生着を刺激するという本発明者らの知見に基づく。理論になんら制限されないが、CG53135は、増殖性組織の再生能力と関連する幹細胞を細胞傷害剤の有害効果から保護すると考えられる。この一般的な保護は、最終的に、急速に増殖する組織を冒す傷害と関連する症状の改善および/または罹患率および死亡率の改善をもたらす。
【0010】
したがって、本発明はまた、被験体における酸素スカベンジ経路の上方制御方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。一実施形態では、酸素スカベンジ経路は、1種類以上のスーパーオキシドジスムターゼ(「SOD」)を含む。別の実施形態では、酸素スカベンジ経路は、細胞外シグナル調節キナーゼ(「ERK」)、接着関連キナーゼ(「AKT」)、スーパーオキシドジスムターゼ、シクロオキシゲナーゼ−2(「COX−2」)およびNF−E2関連因子2(「Nrf−2」)からなる群より選択される遺伝子を含む。
【0011】
本発明は、さらに、被験体の細胞由来の1種類以上の内因性サイトカインまたは内因性ケモカインの分泌の刺激方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0012】
本発明は、被験体の造血幹細胞および/または胃腸の幹細胞の増殖の刺激方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、被験体における造血幹細胞の生着の最適化方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0014】
一実施形態において、本発明は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体の造血組織の保護および/または再生方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体の白血球減少症(例えば、好中球減少)の処置方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体の胃腸の組織の保護および/または再生方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体の胃腸の粘膜炎の処置方法であって、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0016】
一部のある実施形態において、本発明は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する障害(例えば、食事性粘膜炎、骨髄欠損、放射線誘発型の前立腺炎、膣炎および/または尿道炎、造血の障害、または心臓血管/中枢神経系症候群)を予防および/または処置する方法、または症状(例えば、下痢、皮膚熱傷、ただれ、疲労、脱水症、炎症、脱毛症、口腔粘膜の潰瘍形成、口腔乾燥症、および出血)を改善する方法であって、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の予防有効量または治療有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する方法を提供する。一実施形態において、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は被験体に、被験体が該傷害に曝露される前に投与される。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は被験体に、被験体が該傷害に曝露された後だが該傷害と関連するなんらかの障害またはその症状が該被験体において発現する前に投与される。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を被験体に、該傷害と関連する1つ以上の障害またはその症状が該被験体において発現された後に投与される。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は、それを必要とする被験体に、なんらかの放射線関連障害および/または症状の発現前(例えば、該傷害の発生前および/または該傷害の発生後だがなんらかの障害および/または症状の発現前)ならびに放射線関連障害および/または症状の発現後の両方で投与される。また別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露されるリスクのある被験体に投与される。特定の一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は、その必要がある被験体に、被験体が急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤)に曝露される前の24時間、20時間、15時間、10時間または5時間以内に投与される。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は、その必要がある被験体に、それぞれ、放射線への曝露の3日前、2日前、1日前(第−3、−2および−1日)、放射線に曝露された日(第0日)、ならびに放射線に曝露された翌日(第1日)に投与される。また別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物は、その必要がある被験体に、それぞれ、第−1、0および1日に投与される。さらに多くの投薬スケジュールが使用され得、かかるスケジュールは本発明に包含される。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、被験体に、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の予防有効量または治療有効量を投与する工程を包含する、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体の生存の改善方法を提供する。該治療有効用量は、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の単回用量、2回用量または2回より多い用量であり得る。
【0018】
別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の単回予防用量を被験体に、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)の後で投与し、このとき、かかる予防用量は、規定の短期作用性の増殖性効果を、増殖性組織(例えば、腸絨毛)内の種々の画分において引き起こす。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の1回より多い予防用量(これは、2回または2回より多い用量であり得る)を、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体に投与し、該傷害と関連する症状を予防、処置または改善する。
【0019】
一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害は放射線曝露である。一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害は、1種類以上のアルカリ化剤、1種類以上の発疱薬(例えば、マスタード剤)、もしくは1種類以上の他の化学療法剤、またはそれらの組合せである。一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害は、1種類以上のアルカリ化剤、1種類以上の化学兵器薬剤(例えば、マスタード剤)または1種類以上の他の化学療法剤との組合せでの放射線曝露である。
【0020】
一部のある実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および放射線類似特性を有する化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する1種類以上の症状を予防、処置または改善するための当該技術分野で知られた1種類以上の他の治療剤との組合せで使用する。
【0021】
薬学的組成物、製剤およびキットもまた本発明に包含される。
【0022】
(3.1.用語)
本明細書で用いる場合、用語「CG53135」は、配列番号2(211個のアミノ酸)のアミノ酸配列を含む1類型のタンパク質(ペプチドおよびポリペプチドを含む)またはかかるタンパク質をコードする核酸もしくはその相補鎖の一類型、またはそのフラグメント、誘導体、バリアント、ホモログもしくはアナログである。好ましい実施形態では、CG53135タンパク質は、FGF−20(配列番号2)の少なくとも一部の生物学的活性を保持している。本明細書で用いる場合、用語「生物学的活性」は、CG53135タンパク質がFGF−20と同じ特性(必ずしも同程度とは限らない)の一部を有するが必ずしもすべてではないことを意味する。
【0023】
CG53135ファミリーの一メンバー(例えば、タンパク質および/または該タンパク質をコードする核酸)は、さらに、識別名が付与され得る。例えば、CG53135−01(配列番号1および2)は、最初に同定されたFGF−20を表す(米国特許出願第09/494,585号を参照);CG53135−05(配列番号8および2)は、コドン至適化完全長FGF−20を表す(すなわち、FGF−20をコードする核酸配列はコドン至適化されているが、このアミノ酸配列は、最初に同定されたFGF−20から変更された);CG53135−12(配列番号21および22)は、FGF−20の単一ヌクレオチド多型(「SNP」)を表し、この場合、CG53135−12内の1個のアミノ酸が、配列番号2と異なる(206位のアスパラギン酸がアスパラギンに変化している、「206D→N」)。CG53135ファミリーのかかるメンバーは、その核酸配列において異なり得るが、同じCG53135タンパク質をコードし、例えば、CG53135−01、CG53135−03およびCG53135−05はすべて、同じCG53135タンパク質をコードする。識別名はまた、インフレームクローン(「IFC」)番号であり得、例えば、IFC 250059629(配列番号33および34)は、完全長FGF−20のアミノ酸63〜196(ベクター内にインフレームでクローン化する)を表す。表1Aは、一部のCG53135ファミリーメンバーの概要を示す。一実施形態において、本発明は、一部のアミノ酸残基、例えば、FGF−20のアミノ酸配列(配列番号2)の1%、2%、3%、5%、10%または15%以下が変化しているFGF−20タンパク質のバリアントを包含する。別の実施形態では、本発明は、FGF−20とストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得る核酸分子を包含する。
【0024】
(表1A.いくつかのCG53135ファミリーメンバーの概要)
【0025】
【表1A】

本明細書で用いる場合、用語「有効量」は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する疾患もしくは障害またはその1つ以上の症状の重篤度および/または持続期間を低減および/または改善、前記疾患もしくは障害の進行の抑制、前記疾患もしくは障害の寛解、該傷害と関連する1種類以上の症状の再発、発現または発症の予防、または別の治療(例えば、予防剤もしくは治療剤)の予防効果もしくは治療効果(1つまたは複数)の増強もしくは改善に充分な治療剤(例えば、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物)の量をいう。
【0026】
本明細書で用いる場合、用語「FGF−20」は、配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質、あるいはかかるタンパク質をコードする核酸配列および/またはその相補鎖をいう。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「ストリンジェント条件下でハイブリダイズする」は、典型的には、互いに少なくとも30%(好ましくは、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%)同一であるヌクレオチド配列が、互いにハイブリダイズしたままの状態で留まるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を示す。かかるストリンジェント条件は当業者に知られており、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見られる。非限定的な一例では、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、約0.1M〜約1.0M ナトリウムイオンの塩濃度、約7.0〜約8.3のpH、少なくとも約6O℃の温度、および0.2×SSC、0.01%BSA中での少なくとも1回の洗浄を含む。別の非限定的な例では、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)にて約45℃でのハイブリダイゼーション後、0.1×SSC、0.2%SDS中にて約68℃で1回以上の洗浄を行なうものである。また別の非限定的な例では、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、6×SSC中にて約45℃でのハイブリダイゼーション後、0.2×SSC、0.1%SDS中にて50〜65℃で1回以上の洗浄(すなわち、50℃、55℃、60℃または65℃での1回以上の洗浄)を行なうものである。本発明の核酸には、このような条件下で、AまたはTヌクレオチドのみからなるヌクレオチド配列にしかハイブリダイズしない核酸分子は包含されないことを理解されたい。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「単離された」は、タンパク質薬剤との関連では、細胞性物質または供給元の細胞もしくは組織源由来の侠雑タンパク質を実質的に含まない、または化学的に合成した場合は化学物質前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないタンパク質薬剤をいう。文言「細胞性物質を実質的に含まない」は、タンパク質薬剤の調製物であって、該タンパク質薬剤が単離された細胞、または組換えにより産生された細胞の細胞画分から分離されたものを包含する。細胞性物質を実質的に含まないタンパク質薬剤としては、約30%、20%、10%、または5%(乾燥重量基準で)未満の宿主細胞タンパク質(「侠雑タンパク質」ともいう)を有するタンパク質薬剤の調製物が挙げられる。また、タンパク質薬剤が組換えにより産生されたものである場合、これは、好ましくは、培養培地を実質的に含まない、すなわち、培養培地は、タンパク質薬剤調製物の約20%、10%、または5%未満の容量を表す。タンパク質薬剤が化学合成によって作製されたものである場合、これは、好ましくは、化学物質前駆体または他の化学物質を実質的に含まない、すなわち、該タンパク質薬剤に合成に関与する化学物質前駆体または他の化学物質から分離されたものである。したがって、タンパク質薬剤のかかる調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量基準で)未満の化学物質前駆体または目的のタンパク質薬剤以外の化合物を有する。特定の一実施形態では、本明細書に開示するタンパク質薬剤は単離されたものである。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「単離された」は、核酸分子との関連では、該核酸分子の天然供給源中に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子をいう。さらに、「単離された」核酸分子(例えば、cDNA分子など)は、組換え技術により作製する場合は、他の細胞性物質もしくは培養培地を実質的に含まないもの、または化学的に合成する場合は、化学物質前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。特定の一実施形態では、核酸分子は単離されたものである。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「併用」は、1種類より多い治療剤の使用をいう。用語「併用」の使用は、治療剤を、それを必要とする被験体に投与する順序を制限しない。第1の治療剤は、第2の治療剤を、それを必要とする被験体に投与する前(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間前)、それと同時、またはその後(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間後)に投与され得る。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、治療剤(例えば、CG53135タンパク質を含む組成物)の投与、または治療剤の組合せの投与の結果もたらされる、被験体における急速に増殖する組織を冒す傷害と関連する障害またはその1つ以上の症状の再発、発症または発現の予防をいう。
【0032】
本明細書で用いる場合、用語「予防有効量」は、急速に増殖する組織に対する傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する疾患もしくは障害またはその1つ以上の症状の発現、再発または発症の予防をもたらすのに充分な、または別の治療剤の予防効果(1つもしくは複数)を増強もしくは改善するのに充分な治療剤(例えば、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物)の量をいう。
【0033】
本明細書で用いる場合、用語「被験体」および「被験体(複数)」は、動物、好ましくは哺乳動物をいい、非霊長類動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、またはイヌ)、霊長類動物(例えば、サル、チンパンジーまたはヒト)が挙げられ、より好ましくは、ヒトをいう。一部のある実施形態では、被験体は、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、または化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露されたか、曝露されることになる哺乳動物、好ましくはヒトである。別の実施形態では、被験体は、同様の傷害に曝露されたか、曝露されることになる家畜(例えば、ウマ、ブタ、もしくはウシ)またはペット(例えば、イヌもしくはネコ)である。用語「被験体」は、本発明において「患者」と互換的に用いられる。
【0034】
本明細書で用いる場合、用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、急速に増殖する組織を冒す傷害と関連する障害の進行、重篤度および/または持続期間の低減、あるいはその1種類以上の症状の改善であって、かかる低減および/または改善が1種類以上の治療剤(例えば、CG53135タンパク質を含む組成物)の投与の結果もたらされるものをいう。
【0035】
本明細書で用いる場合、用語「治療有効量」は、急速に増殖する組織に対する傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)を特徴とする疾患もしくは障害の重篤度を低減させるのに充分な、かかる疾患もしくは障害の持続期間を減少させるのに充分な、かかる疾患もしくは障害の進行を抑制するのに充分な、かかる疾患もしくは障害の寛解を引き起こすのに充分な、急速に増殖する組織に対する傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する1種類以上の症状を改善するのに充分な、または別の治療剤の治療効果(1つもしくは複数)を増強もしくは改善するのに充分な治療剤(例えば、1種類以上の53135タンパク質を含む組成物)の量をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(5.発明の詳細な説明)
限定の目的でなく、開示を明瞭にするために、本発明の詳細な説明を、以下の小区分に分ける。
【0037】
(i)CG53135
(ii)CG53135の調製方法
(iii)CG53135の予防的および治療的使用
(iv)投与および薬学的組成物。
【0038】
(5.1.CG53135)
本発明は、被験体に、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与することにより、幹細胞の増殖および/または生着を刺激する方法ならびに身体内の急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線曝露、化学的および/または生物学的傷害)またはその1つ以上の症状と関連する障害を予防および/または処置する方法を提供する。本明細書で用いる場合、用語「CG53135」は、配列番号2(211個のアミノ酸)のアミノ酸配列を含むタンパク質(ペプチドおよびポリペプチドを含む)またはかかるタンパク質をコードする核酸もしくはその相補鎖の一類型、またはそのフラグメント、誘導体、バリアント、ホモログもしくはアナログをいう。
【0039】
一実施形態では、CG53135タンパク質はFGF−20のバリアントである。当業者には、ある一集団(例えば、ヒト集団)において、FGF−20タンパク質のアミノ酸配列において変化をもたらすDNA配列多型が存在し得ることは認識されよう。FGF−20遺伝子のかかる遺伝的多型は、集団内の個体間での天然対立遺伝子の多様性により存在し得る。かかる天然対立遺伝子の多様性は、典型的には、FGF−20遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の偏差をもたらし得る。任意のあらゆるかかるヌクレオチドの多様性、およびその結果生じるFGF−20タンパク質のアミノ酸多型(これは、FGF−20タンパク質の天然対立遺伝子の多様性の結果である)は、本発明の範囲に含まれるものとする。一実施形態では、CG53135はCG53135−12(配列番号21および22)であり、これは、FGF−20の単一ヌクレオチド多型(「SNP」)(すなわち、206D→N)である。(CG53135−12の詳細な説明については、例えば、米国特許出願第10/702,126号(2003年11月4日出願)を参照されたく、その開示は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。FGF−20 SNPのさらなる例は、米国特許出願第10/435,087号(2003年5月9日出願)の実施例2に見られ、その内容は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
別の実施形態では、CG53135は、他の種に由来するFGF−20タンパク質をコードする核酸分子、またはこれによってコードされるタンパク質をいい、したがって、FGF−20のヒト配列とは異なるヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有する。天然対立遺伝子バリアントに対応する核酸分子および本発明のFGF−20 cDNAのホモログは、本明細書に開示したヒトFGF−20核酸とのその相同性に基づき、ヒトcDNAまたはその一部をハイブリダイゼーションプローブとして用い、標準的なハイブリダイゼーション技術に従って、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件で単離され得る。
【0041】
別の実施形態では、CG53135は、CG53135タンパク質のフラグメントをいい、バリアントFGF−20タンパク質、成熟FGF−20タンパク質、および成熟FGF−20タンパク質のバリアント、ならびにFGF−20核酸の対立遺伝子バリアントおよび単一ヌクレオチド多型にコードされるFGF−20タンパク質のフラグメントが挙げられる。CG53135タンパク質フラグメントの一例としては、限定されないが、FGF−20(配列番号2)の残基2〜211、3〜211、9〜211、12〜211、15〜211、24〜211、52〜211、54〜211、55〜211、63〜196、63〜211、または63〜194が挙げられる。一実施形態において、CG53135は、配列番号2の残基2〜211、3〜211、9〜211、12〜211、15〜211、24〜211、52〜211、54〜211、55〜211、63〜196、63〜211、または63〜194を含むタンパク質フラグメントをコードする核酸をいう。
【0042】
本発明はまた、FGF−20の誘導体およびアナログを包含する。FGF−20と関連する誘導体およびアナログの作製および使用は、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
特定の一実施形態では、該誘導体またはアナログは機能的に活性である、すなわち、完全長の野生型FGF−20に会合する1種類以上の機能的活性を示し得る。FGF−20の誘導体またはアナログは、所望の活性について、当該技術分野で知られた手順(限定されないが、適切な細胞株、動物モデルおよび臨床試験を用いることなど)によって試験され得る。
【0044】
特に、FGF−20誘導体は、機能的に同等な分子をもたらす置換、挿入または欠失によるFGF−20配列の改変によって作製され得る。一実施形態では、FGF−20配列のかかる改変は、FGFタンパク質ファミリーにおいて保存されていない領域内で行なわれる。ヌクレオチドコード配列の縮重により、FGF−20と実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列が、本発明の実施において使用され得る。これらとしては、限定されないが、該配列内において機能的に同等なアミノ酸残基をコードし、したがってサイレントな変化をもたらす異なるコドンの置換によって改変されたFGF−20の全部または一部を含む核酸配列が挙げられる。好ましい実施形態では、野生型FGF−20核酸配列は、配列番号8の核酸配列(CG53135−05)に対してコドン至適化されたものである。同様に、本発明のFGF−20誘導体としては、限定されないが、一次アミノ酸配列として、機能的に同等なアミノ酸残基で該配列内の残基が置換され、サイレントな変化をもたらす改変配列を含むFGF−20のアミノ酸配列の全部または一部含有するものが挙げられる。例えば、該配列内の1個以上のアミノ酸残基が、同様の極性を有し、機能的同等物としての機能を果たし、かつサイレントな改変をもたらす別のアミノ酸で置換され得る。該配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属する類型の他のメンバーから選択され得る。例えば、無極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。また、本発明のFGF−20誘導体としては、限定されないが、一次アミノ酸配列として、アミノ酸残基が同様の化学的特性を有する残基で置換された改変配列を含むFGF−20のアミノ酸配列の全部または一部含有するものが挙げられる。特定の一実施形態では、1、2、3、4、または5個のアミノ酸が置換されたものである。
【0045】
FGF−20の誘導体またはアナログとしては、限定されないが、FGF−20またはそのフラグメントに実質的に相同なタンパク質、またはそのコード核酸が、FGF−20核酸配列にハイブリダイズできるタンパク質が挙げられる。
【0046】
FGF−20の誘導体またはアナログはまた、例えば、PCT公開公報WO 2004/018499 A2、ならびにUS公開公報US 2004/0087505 A1およびUS 2004/0038348 A1(各々の内容は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法に従って作製され得る。
【0047】
本発明のFGF−20の誘導体およびアナログは、当該技術分野で知られた種々の方法によって作製され得る。その産生をもたらす操作は、遺伝子またはタンパク質レベルで行なわれ得る。例えば、クローン化したFGF−20遺伝子配列を、当該技術分野で知られた数多くのストラテジーのいずれか(例えば、Maniatis、T.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,、2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)によって修飾し得る。該配列を、適切な部位で、制限エンドヌクレアーゼ(1種類または複数種類)で切断した後、所望により、さらに酵素的修飾を行ない、単離し、インビトロでライゲートし得る。FGF−20の誘導体またはアナログをコードする遺伝子の作製において、修飾された遺伝子が、翻訳停止シグナルによって分断されることなく、所望のFGF−20活性がコードされている遺伝子領域内のFGF−20と同じ翻訳リーディングフレーム内に残存することが確保されるように注意を払わなければならない。
【0048】
さらに、FGF−20コード核酸配列は、翻訳、開始および/または終止配列を作出および/または破壊するため、コード領域において多様性を作出するため、および/または新たな制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するか、もしくは既存のものを破壊してさらなるインビトロ修飾を助長するために、インビトロまたはインビボで変異させ得る。当該技術分野で知られた突然変異誘発のための任意の手法を用いることができ、限定されないが、インビトロ部位特異的突然変異誘発(Hutchinson,C.eral.,1978,J.Biol.Chem 253:6551)、TAB.RTM.リンカー(Pharmacia)の使用などが挙げられる。
【0049】
FGF−20配列の操作は、タンパク質レベルで行なわれ得る。翻訳中またはその後に、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断、抗体分子もしくは他の細胞のリガンドとの連結などによる誘導体化によって、差示的に修飾されたFGF−20フラグメントまたは他の誘導体もしくはアナログは、本発明の範囲に含まれる。任意の数多くの化学的修飾が、公知の手法、例えば、限定されないが、遊離NH2−基、遊離COOH−基、OH−基、Trp−、Tyr−、Phe−、His−、Arg−、またはLys−の側鎖基の保護または修飾に有用な試薬;臭化シアン、ヒドロキシルアミン、BNPS−Skatole、酸、またはアルカリ加水分解による特異的化学的切断;トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による酵素的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝物合成;などによって行なわれ得る。
【0050】
また、FGF−20のアナログおよび誘導体は、化学的に合成され得る。例えば、所望のドメインを含むFGF−20の一部分に対応するタンパク質、または所望のインビトロ凝集活性もしくはレセプターへの結合を媒介するFGF−20の一部分に対応するタンパク質を、ペプチド合成装置の使用によって合成し得る。さらにまた、所望により、非古典的アミノ酸または化学合成アミノ酸アナログを、置換または付加としてFGF−20配列内に導入し得る。非古典的アミノ酸としては、限定されないが、一般アミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、デザイナーアミノ酸、例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、およびNα−メチルアミノ酸などが挙げられる。
【0051】
特定の一実施形態では、FGF−20誘導体は、ペプチド結合を介し、そのアミノ−および/またはカルボキシ末端で非FGF−20アミノ酸配列と融合させたFGF−20またはそのフラグメントを含むキメラまたは融合タンパク質である。一実施形態では、非FGF−20アミノ酸配列は、FGF−20またはそのフラグメントのアミノ末端で融合されている。別の実施形態では、かかるキメラタンパク質は、該タンパク質をコードする核酸(インフレームで非FGF−20コード配列と連結されたFGF−20−コード配列を含む)の組換え発現によって作製される。かかるキメラ産物は、種々の企業(例えば、Retrogen、Operonなど)によってオーダーメードされたものであってもよく、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を、互いに当該技術分野で知られた方法によって適正なコード枠内でライゲートし、キメラ産物を、当該技術分野において一般に知られた方法によって発現させることにより作製したものであってもよい。あるいはまた、かかるキメラ産物は、例えば、ペプチド合成装置の使用によってタンパク質合成手法により作製され得る。特定の一実施形態では、非相同シグナル配列を有するFGF−20コードするキメラ核酸を、細胞によってキメラタンパク質が発現され、成熟FGF−20タンパク質にプロセッシングされるように発現させる。また、FGF−20および非FGF−20の遺伝子の一次配列を用い、コンピュータシミュレーションを用いて分子の三次構造を予想し得(Hopp and Woods,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:3824−3828)、キメラ組換え遺伝子は、三次構造と生物学的機能との相関性に鑑みて設計され得る。同様に、非相同(非FGF−20)タンパク質コード配列と融合させたFGF−20分子の必須部分を含むキメラ遺伝子を構築し得る。特定の一実施形態では、かかるキメラ構築物は、FGF−20の1種類以上の所望の特性、例えば、限定されないが、FGF−20の安定性、溶解性またはプロテアーゼに対する耐性を増強するために使用され得る。別の実施形態では、キメラ構築物は、FGF−20を特定部位に標的化するために使用され得る。また別の実施形態では、キメラ構築物は、本発明のFGF−20、例えば、His−タグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質(MalE)、セルロース結合タンパク質(CenA)またはマンノースタンパク質などを同定または精製するために使用され得る。一実施形態では、CG53135タンパク質は、カルバミル化されたものである。
【0052】
一部のある実施形態では、CG53135タンパク質は、延長されたインビボ半減期を有するように、当該技術分野で知られた任意の方法を用いて修飾し得る。例えば、不活性なポリマー分子、例えば高分子量ポリエチレングリコール(PEG)をCG53135タンパク質に、多機能性リンカーにより、またはこれなしで、タンパク質のN−もしくはC末端へのPEGの部位特異的コンジュゲーションによるか、またはリシン残基上に存在するε−アミノ基によるかのいずれかによって結合させ得る。もたらされる生物学的活性の低下が最小限である直鎖または分枝鎖ポリマー誘導体化が用いられる。コンジュゲーションの程度は、SDS−PAGEおよび質量分析によって厳密にモニターされ、CG53135タンパク質へのPEG分子の適正なコンジュゲーションを確実にし得る。未反応PEGは、CG53135−PEGコンジュゲートからサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって分離することができる。PEG誘導体化コンジュゲートを、インビボ有効性について当業者に知られた方法を用いて試験し得る。
【0053】
また、CG53135タンパク質は、該タンパク質をインビボでより安定にするため、またはより長期のインビボ半減期を有するようにするため、アルブミンとコンジュゲートさせ得る。この手法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、国際公開公報WO 93/15199、WO 93/15200およびWO 01/77137;ならびに欧州特許第EP 413,622号(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0054】
一部のある実施形態では、CG53135は、CG53135−01(配列番号1および2)、CG53135−02(配列番号3および4)、CG53135−03(配列番号5および2)、CG53135−04(配列番号6および7)、CG53135−05(配列番号8および2)、CG53135−06(配列番号9および10)、CG53135−07(配列番号11および12)、CG53135−08(配列番号13および14)、CG53135−09(配列番号15および16)、CG53135−10(配列番号17および18)、CG53135−11(配列番号19および20)、CG53135−12(配列番号21および22)、CG53135−13(配列番号23および24)、CG53135−14(配列番号25および26)、CG53135−15(配列番号27および28)、CG53135−16(配列番号29および30)、CG53135−17(配列番号31および32)、IFC 250059629(配列番号33および34)、IFC 20059669(配列番号35および36)、IFC 317459553(配列番号37および38)、IFC 317459571(配列番号39および40)、IFC 250059596(配列番号41および10)、IFC316351224(配列番号41および10)、またはそれらの組合せをいう。特定の一実施形態では、CG53135は、カルバミル化されたもの、例えば、カルバミル化されたCG53135−13タンパク質またはカルバミル化されたCG53135−05タンパク質である。
【0055】
(5.2.CG53135の調製方法)
CG53135タンパク質の単離方法の例は、下記のセクション6、ならびに以前に出願された出願、例えば、米国特許出願第09/609,543号(2000年7月3日出願)および同第10/174,394号(2002年6月17日出願)(ともに、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。当該技術分野で知られた任意の手法をCG53135タンパク質の精製に用いることができ、限定されないが、沈殿による分離、吸着による分離(例えば、カラムクロマトグラフィー、膜吸着剤、ラジアルフローカラム、バッチ吸着、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、無機系吸着剤、疎水性吸着剤、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー)、または溶液中での分離(例えば、ゲル濾過、電気泳動、液相分配、デタージェント分配、有機溶媒抽出、および限外濾過)が挙げられる。例えば、Scopes,PROTEIN PURIFICATION,PRINCIPLES AND PRACTICE,3rd ed.,Springer(1994)を参照のこと。精製の間、CG53135の生物学的活性は、1種類以上のインビトロまたはインビボアッセイによってモニターするのがよい。CG53135の純度は、当該技術分野で知られた任意の方法、例えば、限定されないが、ゲル電気泳動によってアッセイし得る。Scopes(supra)を参照のこと。一部のある実施形態では、本発明の組成物に用いられるCG53135タンパク質は、全タンパク質のmgの80〜100パーセントの範囲内、または全タンパク質のmgの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%であり得る。一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質が本発明の組成物に用いられ、全タンパク質の少なくとも99%である。別の実施形態では、CG53135は、例えばドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動によってアッセイしたとき、見かけ上均質になるまで精製する。
【0056】
当該技術分野で知られた方法を用い、CG53135タンパク質を組換えにより作製し得る。CG53135タンパク質をコードする核酸配列を、宿主細胞内での増殖および発現のための発現ベクター内に挿入し得る。
【0057】
発現構築物は、本明細書で用いる場合、適切な宿主細胞内でのCG53135タンパク質の発現を可能にする1種類以上の調節領域と作動可能に会合させたCG53135タンパク質コード核酸配列をいう。「作動可能に会合させた」は、調節領域と発現対象のCG53135配列とが、転写および最終的に翻訳が許容されるような様式で連結および配置されている会合をいう。
【0058】
CG53135の転写に必要な調節領域は、発現ベクターによって提供され得る。また、コグネート開始コドンを欠くCG53135遺伝子配列を発現させる場合、翻訳開始コドン(ATG)を提供してもよい。適合性のある宿主−構築物系では、細胞の転写因子(例えば、RNAポリメラーゼなど)が発現構築物上の調節領域に結合し、修飾されたCG53135配列の転写が宿主生物内で実行される。遺伝子発現に必要とされる調節領域の厳密な性質は、宿主細胞によって異なり得る。一般的に、RNAポリメラーゼに結合でき、かつ作動可能に会合させた核酸配列の転写を促進できるプロモーターが必要とされる。かかる調節領域は、転写および翻訳の開始に関与する5’非コード配列、例えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などを含み得る。コード配列に対して3’の非コード領域は、転写終止調節配列、例えば、ターミネーターおよびポリアデニル化部位などを含み得る。
【0059】
調節機能を有するDNA配列(例えば、プロモーターなど)をCG53135遺伝子配列に結合させるため、またはCG53135遺伝子配列をベクターのクローニング部位内に挿入するため、適切な適合性のある制限部位を提供するリンカーまたはアダプターを、cDNAの末端に、当該技術分野でよく知られた手法(例えば、Wu et al.,1987,Methods in Enzymol,152:343−349を参照)によってライゲートさせてもよい。制限酵素で切断した後、ライゲーション前に、再度消化するか、または単鎖DNA末端内を満たすことにより、平滑末端を作出するための修飾を行ない得る。あるいはまた、所望の制限酵素部位をDNAのフラグメント内に、所望の制限酵素部位を含有するプライマーを伴うPCRを用いた該DNAの増幅によって導入し得る。
【0060】
調節領域と作動可能に会合させたCG53135配列を含む発現構築物は、直接、CG53135タンパク質の発現および産生に適切な宿主細胞内に、さらにクローン化することなく導入され得る。例えば、米国特許第5,580,859号を参照のこと。また、該発現構築物は、例えば相同組換えにより宿主細胞のゲノム内へのCG53135配列の組込みを助長するDNA配列を含み得る。この場合、宿主細胞内でCG53135を増殖および発現させるために、適切な宿主細胞に適した複製起点を含む発現ベクターを用いる必要はない。
【0061】
さまざまな発現ベクターが使用され得、限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミドまたは改変ウイルスが挙げられる。かかる宿主発現系は、CG53135遺伝子のコード配列を作製および続いて精製され得るビヒクルを提示するだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合、CG53135をインサイチュで発現し得る細胞を提示する。これらとしては、限定されないが、CG53135コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌およびB.subtilis)などの微生物;CG53135コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);CG53135コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロ・ウイルス)で感染させた昆虫細胞系;CG53135コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させた、もしくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Ti プラスミド)で形質転換した植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノム由来プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来プロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NSO、および3T3細胞)が挙げられる。好ましくは、大腸菌などの細菌細胞および真核生物細胞が、組換えCG53135分子の発現に使用される。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞が、CG53135配列の発現に有効なサイトメガロウイルスの主な中間期初期遺伝子由来のプロモーターエレメントを保有するベクターとともに使用され得る(Foecking et al.,1986,Gene 45:101;およびCockett et al.,1990,Bio/Technology 8:2)。
【0062】
細菌系では、いくつかの発現ベクターが、発現対象のCG53135分子に意図される用途に応じて好都合に選択され得る。例えば、CG53135分子の薬学的組成物の作製のために大量のCG53135が産生されべき場合は、高レベルの容易に精製される融合タンパク質産物の発現を指向するベクターが望ましかろう。かかるベクターとしては、限定されないが、大腸菌発現ベクター pCR2.1 TOPO(Invitrogen);plN ベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101−3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503−5509)などが挙げられる。pFLAG(Sigma)、pMAL(NEB)およびpET(Novagen)などの一連のベクターもまた、外来タンパク質をFLAGペプチド、malE−またはCBD−タンパク質との融合タンパク質として発現するために使用され得る。このような組換えタンパク質は、細胞膜周辺腔内に指向され得、正しいフォールディングおよび成熟が行なわれる。融合部分は、発現されたタンパク質のアフィニティ精製に使用され得る。特異的プロテアーゼ(エンテロキナーゼなど)のための切断部位の存在により、CG53135タンパク質が融合タンパク質から切断されることが可能になる。また、pGEXベクターは、外来タンパク質を、グルタチオン5−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現するために使用され得る。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、溶解した細胞から、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着および結合の後、遊離グルタチオンの存在下での溶出によって容易に精製され得る。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から遊離され得るように、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位が含まれるように設計される。
【0063】
昆虫系では、外来遺伝子を発現させる多くのベクターが使用され得、例えば、カリフォルニア核多角体病ウイルスウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現させるベクターとして使用され得る。該ウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞など細胞内で成長する。CG53135コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)内に個々にクローン化させ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置させ得る。
【0064】
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルス系発現システムが用いられ得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、対象のCG53135コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび3区分リーダー配列にライゲートさせ得る。このキメラ遺伝子を、次いで、アデノウイルスゲノム内にインビトロまたはインビボ組換えによって挿入し得る。ウイルスのゲノムの非必須領域(例えば、領域ElまたはE3)内への挿入により、感染宿主内で生存可能であり、かつCG53135を発現できる組換えウイルスがもたらされる(例えば、Logan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 1 :355−359を参照)。また、特異的開始シグナルが、挿入されたCG53135コード配列の効率的な翻訳ために必要とされ得る。このようなシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。さらにまた、開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするため、所望のコード配列のリーディングフレームと同位相させなければならない。このような外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源のものであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって増強され得る(例えば、Bittner et al.,1987,Methods in Enzymol.153:51−544を参照)。
【0065】
また、挿入された配列の発現をモジュレートするか、または遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾およびプロセッシングする宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のかかる修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセッシング(例えば、切断)は、そのタンパク質の機能に重要であり得る。種々の宿主細胞は、翻訳後プロセッシングならびにタンパク質および遺伝子産物の修飾に関して特徴的かつ特異的機構を有する。発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセッシングが確実となるように、適切な細胞株または宿主系を選択するのがよい。この目的のため、一次転写物のプロセッシングおよび遺伝子産物の翻訳後修飾(例えば、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化)に適正な細胞機構をもつ真核生物宿主細胞が使用され得る。かかる哺乳動物宿主細胞としては、限定されないが、PC12、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NSO(いずれの免疫グロブリン鎖も外因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3OならびにHsS78Bst細胞が挙げられる。細菌系または酵母系における発現は、翻訳後修飾が、CG53135の所望の活性に必須でないとわかった場合に使用され得る。好ましい実施形態では、大腸菌を用いてCG53135配列を発現させる。
【0066】
適正にプロセッシングされたCG53135の長期で高収量の産生のためには、細胞内での安定な発現が好ましい。CG53135を安定的に発現する細胞株は、選択可能マーカーを含有するベクターを用いることにより操作されたものであり得る。限定されないが、一例として、発現構築物の導入後、操作された細胞を1〜2日間、富化培地中で、次いで選択培地に交換して成長させ得る。発現構築物内の選択可能マーカーは、選択される物質に耐性を付与し、最適には、細胞が、発現構築物をその染色体内に安定的に組み込むこと、培養状態で成長すること、および細胞株に拡大することを可能にする。かかる細胞は、CG53135が継続的に発現される状態で、長期間培養され得る。
【0067】
いくつかの選択系が使用され得、限定されないが、抗生物質耐性(Neo(これは、ゲネチシンに対する耐性を付与する)、またはG−418(Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87−95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596;Mulligan,1993,Science 260:926−932;ならびに Morgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191−217;May,1993,TIB TECH 11(5):l55−2 15);Zeo(例えば、ゼオシンに対する耐性);Bsd(例えば、ブラストサイジンに対する耐性)などのマーカー);代謝拮抗剤耐性(Dhfr(これは、メトトレキセートに対する耐性を付与する。Wigler et al.,1980,Natl.Acad.Sci.USA 77:357;O’Hare et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);gpt(これは、ミコフェノール酸に対する耐性を付与する。Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);およびhygro(これは、ハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre et al.,1984,Gene 30:147)などのマーカー)が挙げられる。また、変異細胞株(例えば、限定されないが、tk−、hgprt−またはaprt−細胞など)が、チミジンキナーゼ、ヒポキサンチン、グアニン−またはアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼに対応する遺伝子を保有するベクターとの組合せで使用され得る。一般に当該技術分野で知られた組換えDNA技術の方法が、所望の組換えクローンを選択するために常套的に適用され得、かかる方法は、例えば、Ausubel et al.,(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);ならびにChapter 12 and 13,Dracopoli et al.,(eds.),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994);Colberre−Garapin et al.,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載されている。
【0068】
組換え細胞は、標準的な温度、インキュベーション時間、光学濃度および培地組成の条件下で培養され得る。しかしながら、組換え細胞の成長条件は、CG53135の発現のものとは異なり得る。また、CG53135の産生を増強するため、改変された培養条件および培地を使用してもよい。当該技術分野で知られた任意の手法が、CG53135の産生のための至適条件を確立するために適用され得る。
【0069】
CG53135またはそのフラグメントを組換え技術によって作製する代替法は、ペプチド合成である。例えば、CG53135全体、またはCG53135の一部分に対応するタンパク質を、ペプチド合成装置の使用によって合成し得る。慣用のペプチド合成または当該技術分野でよく知られた他の合成プロトコールが使用され得る。
【0070】
CG53135のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその一部は、固相ペプチド合成によって、Merrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.,85:2149に記載されたものと同様の手順を用いて合成され得る。合成中、保護された側鎖を有するN−α−保護アミノ酸が、C末端で不溶性高分子支持体(すなわち、ポリスチレンビーズ)と連結された伸長中のポリペプチド鎖に段階的に付加される。該タンパク質は、N−α−脱保護アミノ酸のアミノ基がN−α−保護アミノ酸のα−カルボキシル基(これは、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの試薬と反応させることにより活性化されている)と連結されることにより合成される。遊離アミノ基の活性化カルボキシルへの結合により、ペプチド結合形成がもたらされる。最も一般に使用されるN−α−保護基としては、Boc(これは、酸不安定性である)およびFmoc(これは、塩基不安定性である)が挙げられる。適切な化学合成、樹脂、保護基、保護されるアミノ酸および試薬の詳細は、当該技術分野でよく知られているため、本明細書には詳細に記載しない(Atherton et al.,1989,Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press,およびBodanszky,1993,Peptide Chemistry,A Practical Textbook,2nd Ed., Springer−Verlagを参照のこと).
得られるCG53135の精製は、慣用の手順、例えば、ゲル浸透、分配および/またはイオン交換クロマトグラフィーを用いる分取用HPLCなどによってなされる。適切なマトリックスおよびバッファーの選択は、当該技術分野でよく知られているため、本明細書には詳細に記載しない。
【0071】
CG53135の調製方法の非限定的な例は、下記のセクション6.を見るとよい。
【0072】
(5.3.CG53135の予防的および治療的使用)
本発明は、被験体に、1種類以上の単離されたCG53135タンパク質を含む組成物の予防有効量または治療有効量投与することにより、身体内において、放射線曝露、化学療法、化学兵器/生物兵器薬剤および/または任意の急速に増殖する組織を冒す他の傷害と関連する(例えば、引き起こされる)1つ以上の障害またはそれらの1つ以上の症状を予防および/または処置する方法を提供する。
【0073】
一実施形態において、本発明は、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する、上皮細胞および/または間葉細胞の病理を予防および/または処置する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する、上皮細胞および/または間葉細胞の増殖、分化または移動の刺激方法を提供する。
【0074】
上皮膜は、連続的なシート状の細胞であって、特徴的で特殊化される密接な接触部位(細胞間結合と呼ばれる)を有する細胞境界と隣接している。かかる膜は、1層以上の細胞厚であり得、毛細血管を含まない。上皮は下層の結合組織と、基底膜として知られる構成要素(これは、上皮と結合組織との間に薄層として分布する複合体組成物である細胞間物質の層である)によって結合されている。
【0075】
重層扁平状の非ケラチン化上皮は、吸収性機能が必要とされない部位において、相当な擦れおよび裂けに供される湿った表面上によく見られる。かかる表面を湿った状態に維持するために必要とされる分泌物が、適切な位置にある腺からもたらされているはずである。この型の上皮が内表面となる部位としては、食道ならびに口腔の床および側面が挙げられる。
【0076】
単純な柱状上皮(これも互いに亀甲状に密着している)は、長い細胞の単一の層で構成される。単純な分泌性柱状上皮に加え、粘液を分泌するために特殊化されている。この型の上皮が存在する部位としては、胃の内表面が挙げられる。
【0077】
吸収性細胞および分泌細胞で構成される単純な柱状上皮が腸の内表面となっている。吸収を助長するため、この膜は、細胞1層だけの厚さである。吸収のために特殊化された細胞が散在し、保護的粘液を分泌する多くの杯細胞がある。
【0078】
間葉細胞は、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞および脂肪細胞に分化し得る幹細胞である。間葉−上皮相互作用は、上皮組織の生理機能および病理に重要な役割を果たす。間葉細胞は、上皮基底膜(例えば、周皮細胞および血管周囲単球由来細胞(MDC))と会合しているか、または上皮(MDCおよびT細胞)内に存在し得る。間葉細胞と組織特異的細胞との相互作用の性質は、組織型(例えば、脳対表皮)に、または所与の上皮内の間葉細胞による細胞の自殺状態(アポトーシス)への分化の抑制または許容/刺激に依存し得る。特殊化された間葉細胞(例えば、周皮細胞、MDCおよびTリンパ球など)は、上皮細胞の分化および老化に顕著に影響を与え得る。
【0079】
骨空洞の間質画分は、相互に連結された間葉細胞の網状構造から構成されている。間質細胞は、骨皮質、骨梁および造血細胞と密接に会合している。骨髄−間質微小環境は、細胞、細胞外マトリックス(ECM)と、個体の一生を通じて局所的に骨形成および造血を調節する成長因子およびサイトカインとの複合体である。骨の生理機能および造血のための微小環境の作出における骨髄間質の役割は、間質細胞の特定の小集団にある。これらは、共通の幹細胞から、各々異なる役割を有する特定の系統に分化する。その機能の組合せにより、骨内で活性な骨髄を維持する3D構造の組織化がもたらされる。
【0080】
成体では、血液細胞は骨髄によって生成され、身体の骨は海綿状物質で満たされている。骨髄は、脊髄様およびリンパ様の2種類の血液細胞群を生成する。脊髄の細胞株としては、例えば、以下の:(1)エリスロサイトと呼ばれ、後に赤血球になる未成熟細胞;(2)血液凝固因子(血小板);(3)一部の白血球、例えばマクロファージ(これは、異物粒子のスカベンジ体としての機能を果たす)、好酸球(これは、アレルギーを誘発し、また、寄生虫に対して防御する)、および好中球(細菌感染に対する主な防御因子)が挙げられる。リンパ様細胞株としては、例えば、身体の一次感染攻撃物質であるリンパ球が挙げられる。数ある生体機能の中で、ある種のリンパ球は、特定の外来因子(抗原)を標的化および攻撃し得る因子である抗体の生成を担う。リンパ球は、胸腺または骨髄において生成され、したがって、B細胞(骨髄由来細胞)またはT細胞(胸腺由来細胞)のいずれかに分類される。
【0081】
本発明によれば、CG53135は、上皮細胞および/または間葉細胞の増殖、分化および/または移動を調節し得、したがって、上皮細胞および/または間葉細胞の病理と関連する障害に対して予防的および/または治療的効果を有し得る。
【0082】
一部のある実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、FGF−20タンパク質、FGF−20のフラグメント、誘導体、改変体、ホモログもしくはアナログ、またはそれらの組合せを含む。一部のある実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、CG53135−01(配列番号2)、CG53135−02(配列番号4)、CG53135−03(配列番号2)、CG53135−04(配列番号7)、CG53135−05(配列番号2)、CG53135−06(配列番号10)、CG53135−07(配列番号12)、CG53135−08(配列番号14)、CG53135−09(配列番号16)、CG53135−10(配列番号18)、CG53135−11(配列番号20)、CG53135−12(配列番号22)、CG53135−13(配列番号24)、CG53135−14(配列番号26)、CG53135−15(配列番号28)、CG53135−16(配列番号30)、CG53135−17(配列番号32)、IFC 250059629(配列番号34)、IFC 20059669(配列番号36)、IFC 317459553(配列番号38)、IFC 317459571(配列番号40)、IFC 250059596(配列番号10)、もしくはIFC316351224(配列番号10)、またはCG53135タンパク質の任意の2種類以上の組合せを含む。一実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質および(2)配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。別の実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質、(2)配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質、(3)配列番号26のアミノ酸配列を含むタンパク質、(4)配列番号28のアミノ酸配列を含むタンパク質、(5)配列番号30のアミノ酸配列を含むタンパク質および(6)配列番号32のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。別の実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質、(2)配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質、(3)配列番号28のアミノ酸配列を含むタンパク質、(4)配列番号30のアミノ酸配列を含むタンパク質および(5)配列番号32のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。別の実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、(1)配列番号32のアミノ酸配列を含むタンパク質;(2)配列番号30のアミノ酸配列を含むタンパク質、(3)配列番号28のアミノ酸配列を含むタンパク質;および(4)配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。また別の実施形態では、本発明の方法に従って用いられる組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質、(2)配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質、(3)配列番号28のアミノ酸配列を含むタンパク質、(4)配列番号30のアミノ酸配列を含むタンパク質、(5)配列番号32のアミノ酸配列を含むタンパク質、(6)配列番号24のアミノ酸配列を含むカルバミル化されたタンパク質、および(7)配列番号2のアミノ酸配列を含むカルバミル化されたタンパク質を含む。
【0083】
一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害は放射線曝露である。特定の一実施形態では、該傷害は電離放射線である。別の実施形態では、該傷害は、1種類以上の化学療法剤または1種類以上の化学兵器/生物兵器薬剤(例えば、発疱薬もしくは細菌など)、またはそれらの組合せである。化学療法および化学兵器/生物兵器薬剤の非限定的な例は、アルカリ化剤、発疱薬(例えば、マスタード剤)および微生物である。一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害は1回以上の放射線曝露、1種類以上の化学療法剤、1種類以上の化学兵器/生物兵器薬剤、またはそれらの組合せである。
【0084】
電離放射線などの傷害の影響に対して最も感受性である生物および身体系としては、限定されないが、皮膚、造血およびリンパ系、生殖腺、肺、神経組織、ならびにGI管が挙げられる。一実施形態では、該傷害は、被験体の造血系および/または胃腸の組織に対して特に損傷性である。特定の一実施形態では、予防または処置対象の障害は、造血の障害であり、限定されないが、貧血、白血球減少症(例えば、好中球減少)、血小板減少、汎血球減少症、および凝固障害が挙げられる。別の実施形態では、予防または処置対象の障害は食事性粘膜炎であり、限定されないが、口腔粘膜炎、食道炎、口内炎、腸炎、および直腸炎が挙げられる。別の実施形態では、予防または処置対象の障害は、脳血管症候群である。一部のある実施形態では、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する症状としては、限定されないが、下痢、皮膚熱傷、ただれ、疲労、脱水症、炎症、脱毛症、口腔粘膜の潰瘍形成、口腔乾燥症、および出血(例えば、鼻、口および直腸から)が挙げられる。
【0085】
本発明はまた、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する、被験体における酸素スカベンジ経路の上方制御方法を提供する。一実施形態では、酸素スカベンジ経路は、例えば、限定されないが、細胞内CuZnSODおよびMnSOD、および細胞外−SOD(「EC−SOD」)などの1種類以上のスーパーオキシドジスムターゼ(「SOD」)を含む。別の実施形態では、酸素スカベンジ経路は、ERK、AKT、スーパーオキシドジスムターゼ、シクロオキシゲナーゼ−2(「COX−2」)、およびNrf−2からなる群より選択される遺伝子を含む。放射線に曝露された細胞は、イオン化したラジカル(活性酸素種すなわちROS;このうち、細胞内で最も反応性の種は、HOの電離によって生成される)の有害な効果に対処しなければならない。1種類以上のCG53135タンパク質を被験体に投与すると、ROSをスカベンジし、これらをより反応性の低い過酸化水素などの中間体に変換するスーパーオキシドなどの酵素の転写が増大される。また、1種類以上のCG53135タンパク質を被験体に投与する工程は、放射線などの傷害によって誘導される活性酸素種の負荷を低減する。
【0086】
本発明は、さらに、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する、被験体の細胞からの1種類以上の内因性サイトカインおよび/または内因性ケモカインの分泌の刺激方法を提供する。分泌される内因性サイトカインは、限定されないが、インターロイキン(「IL」)−1b、IL−6、IL−7、IL−8、IL−11、および顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)であり得る。分泌される内因性ケモカインは、限定されないが、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(「CXCL1」)および単球化学誘引物質(「MCP−1」)であり得る。一部のこれらの内因性サイトカインおよびケモカインは、内因性の放射線保護的応答に関与することが示されている。
【0087】
本発明は、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する、被験体の造血幹細胞および/または胃腸の幹細胞の増殖の刺激方法を提供する。一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質の被験体への投与により、造血幹細胞の健常性および増殖能を助長する因子を分泌する骨髄間質内の線維芽細胞が刺激される。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質の被験体への投与により、胃腸の幹細胞の急速増殖性急増がもたらされ、その後、増殖24時間後に対抗調節性抑制がもたらされる。これにより、組織レベルでの細胞周期の同期化がもたらされ、より放射線耐性となる。
【0088】
本発明はまた、被験体に1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を投与する工程を包含する、被験体における造血幹細胞の生着の最適化方法を提供する。一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質の投与により、骨髄高周波焼灼治療後における骨髄移植後のT細胞の成功裏の生着または再増殖が改善される。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質の投与により、骨髄移植後の胸腺内でのT細胞再構成の速度が増大する。
【0089】
本発明の方法を用いて標的化され得る患者集団としては、限定されないが、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露された被験体、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露されたことが疑われる被験体、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露されるであろう被験体、および急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)に曝露されるリスクのある被験体が挙げられる。
【0090】
一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を被験体に、該被験体が身体内の急速に増殖する組織を冒す傷害に曝露される前に投与する。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を被験体に、該被験体が身体内の急速に増殖する組織を冒す傷害曝露された後だが、該傷害と関連する障害またはその症状が該被験体において発現する前に投与する。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を被験体に、身体内の急速に増殖する組織を冒す傷害と関連する障害またはその症状が被験体内において発現された後に投与する。また別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、急速に増殖する組織を冒す傷害への曝露のリスクのある被験体に投与する。
【0091】
1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物はまた、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する障害または1種類以上の症状を予防、処置または改善するために、1種類以上の他の治療剤との組合せで投与され得る。好ましい実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する障害または1種類以上の症状を予防、処置または改善するのに使用されることが知られた1種類以上の他の治療剤との組合せで投与する。かかる他の治療剤の例としては、限定されないが、メスナ(2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)および遊離チオール部分を有する他のアナログ化合物、ジメスナ(2,2’−ジチオビスエタンスルホン酸二ナトリウム)および他のジスルフィド、ならびに例えば、米国特許出願公開公報20030092681に記載されている化合物など、ならびにKGF(例えば、米国特許第6,743,422号を参照)が挙げられる。CG53135を含む組成物との組合せで使用され得る他の薬剤の例を表1Bに示す。
【0092】
【表1B】

一実施形態では、併用療法の際、CG53135タンパク質および/または別の治療剤は、最適以下の量、例えば、当該技術分野で知られた方法によって測定したとき、単独で投与されると検出可能な治療上の有益性を示さない量で投与される。かかる方法において、CG53135タンパク質および別の治療剤の同時投与により、処置の有効性における全般的な改善がもたらされる。
【0093】
一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物および1種類以上の他の治療剤は、患者の同じ診察時に投与する。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、1種類以上の他の治療剤の投与前に投与する。また別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を、1種類以上の他の治療剤の投与の後に投与する。特定の一実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物および1種類以上の他の治療剤を、周期的に被験体に投与する。周期的治療は、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を一定期間投与した後、1種類以上の他の治療剤を一定期間投与し、この逐次投与を反復することを伴う。周期的治療は、1種類以上の治療剤に耐性の発現を低減し、該治療剤のうちの1つの副作用を回避もしくは低減し、および/または処置の有効性を改善し得る。
【0094】
本発明の組成物(例えば、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物)の毒性および治療的有効性は、細胞培養物または実験動物において、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を測定するための標準的な製薬手順によって測定され得る。毒性効果と治療的効果との用量比は、治療上の指標であり、LD50/ED50の比で示され得る。より大きい治療上の指標を示す組成物が好ましい。毒性副作用を示す組成物を使用してもよいが、非感染細胞に対する潜在的な損傷を最小限にし、それにより副作用を低減するため、かかる組成物が罹患組織部位に標的化される送達システムが設計されるように注意を払うべきである。
【0095】
一実施形態では、細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを用い、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を公式化し得る。複合体の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、この範囲内で、用いる投薬形態、用いる投与経路、疾患の重篤度、被験体年齢および体重、ならびに医療専門家(例えば、医師)が通常考慮する他の要素に応じて、異なり得る。本発明の方法で用いられる任意の組成物について、治療有効用量は、最初は、細胞培養アッセイから概算され得る。用量は、細胞培養物において測定したとき、IC50(すなわち、症状の最大抑制の半分量が達成される試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲が達成されるように、動物モデルにおいて公式化され得る。かかる情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0096】
ある特定の障害または状態の処置に有効な本発明の組成物の量は、障害または状態の性質に依存し、標準的な臨床的手法によって測定され得る。また、製剤に用いられる正確な用量は、投与経路、および疾患もしくは障害の深刻さに依存し、施術者の判断および各患者の状況に応じて決定されるのがよい。
【0097】
一実施形態において、本発明により提供されるヒト患者における投与のための1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の投薬量は、少なくとも0.001mg/kg、少なくとも0.005mg/kg、少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.03mg/kg、少なくとも0.05mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも0.3mg/kg、少なくとも0.4mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも0.6mg/kg、少なくとも0.7mg/kg、少なくとも0.8mg/kg、少なくとも0.9mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも2mg/kg、少なくとも3mg/kg、少なくとも4mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも6mg/kg、少なくとも7mg/kg、少なくとも8mg/kg、少なくとも9mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも50mg/kg、少なくとも75mg/kg、または少なくとも100mg/kg(UVアッセイによる測定時)である。別の実施形態では、本発明により提供されるヒト患者における投与のための1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の投薬量は、0.001〜100mg/kg、0.001〜50mg/kg、0.001〜25mg/kg、0.001〜10mg/kg、0.005〜5mg/kg、0.01〜1mg/kg、0.01〜0.9mg/kg、0.01〜0.8mg/kg、0.01〜0.7mg/kg、0.01〜0.6mg/kg、0.01〜0.5mg/kg、または0.01〜0.3mg/kg(UVアッセイによる測定時)である。
【0098】
タンパク質濃度は、当該技術分野で知られた方法、例えば、BradfordアッセイまたはUVアッセイによって測定され得、該濃度は、どのアッセイを使用しているかに応じて異なり得る。非限定的な例では、本発明の薬学的組成物中のタンパク質濃度はUVアッセイによって測定され、これは、波長280nmでのUV吸収の直接測定および充分キャラクタライズされたCG53135タンパク質の参照基準(IgGの代わりに)による較正を使用する。このUV法(CG53135参照基準を使用)で得られた試験結果は、Bradford法(IgGを較正物質として使用)で試験した同じ試料(1種類または複数種類)に関する試験結果よりも3倍少ない。例えば、本発明により提供されるヒト患者における投与のための1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物の投薬量が、UVアッセイで測定したとき0.001〜10mg/kgであるならば、投薬量は、Bradfordアッセイで測定すると0.003〜30mg/kgとなる。
【0099】
一実施形態において、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を被験体に単回用量で投与し、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する障害を予防する、またはその1種類以上の症状を改善する。特定の一実施形態では、かかる組成物を、該傷害に曝露される前の24時間以内、20時間以内、15時間以内、10時間、または5時間以内に投与する。別の実施形態では、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物を被験体に2回以上の用量で投与し、急速に増殖する組織を冒す傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)と関連する障害を予防および/または処置する、またはその1種類以上の症状を改善する。好ましくは、かかる組成物を被験体に、傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)への曝露前と、傷害(例えば、放射線、化学療法、および化学兵器/生物兵器薬剤など)への曝露後の両方で投与する。特定の一実施形態では、かかる組成物を、該傷害の3日間前、2日間前、1日前、および傷害の日、および該傷害の1日後のそれぞれにおいて投与する。
【0100】
化学療法剤、放射線療法および生物学的/免疫治療的薬剤(例えば、サイトカイン)などの処置様式の適切で推奨される投薬量、配合および投与経路は当該技術分野で知られており、Physician’s Desk Reference(58th ed.,2004)などの文献に記載されている。
【0101】
(5.4.投与および薬学的組成物)
種々の送達システムが知られており、本発明の方法に従って用いられる組成物を投与するために使用され得る。かかる送達システムとしては、限定されないが、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内への封入、組換え細胞、レセプター媒介性エンドサイトーシス、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての本発明の核酸の構築物による発現などが挙げられる。導入方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、鞘内、脳室内、硬膜外、静脈内、皮下、鼻腔内、腫瘍内、経皮、経粘膜、経直腸、および経口経路が挙げられる。本発明の方法に従って用いられる組成物は、任意の簡便な経路、例えば、注入またはボーラス注射、上皮または皮膚粘膜内表面(例えば、目の粘膜、口腔粘膜、膣粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与され得、他の生物学的活性剤とともに投与され得る。投与は、全身性または局所であり得る。特定の一実施形態では、本発明は、1つまたは2つのチャンバを有するシリンジであって、好ましくは、ニードル安全対策器具およびより先のとがったニードルが取り付けられ、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物が予め充填されたシリンジの使用を含む。一実施形態において、デュアルチャンバシリンジ(例えば、Vetter Lyo−Jectデュアルチャンバシリンジ、Vetter Pharmar−Fertigung)が使用される。かかるシステムは、凍結乾燥された製剤に望ましく、緊急事態において特に有用である。
【0102】
一部のある実施形態では、本発明の薬学的組成物を、処置を必要とする領域に局所的に投与することが望ましいことがある。これは、例えば、術中の局所注入、または限局適用(例えば、術後に創傷包帯とともに)、注射、カテーテル、坐薬、または埋没物(該埋没物は、多孔質、非多孔質のもの、またはゼラチン系物質、例えば、シラスティック膜などの膜、もしくは繊維である)によってなされ得る。一実施形態では、投与は、傷害(例えば、放射線、化学療法または化学兵器/生物兵器薬剤)に対して非常に感受性である急速に増殖する組織の部位(または上記の部位)への直接注射によるものであり得る。
【0103】
一部のある実施形態において、本発明の組成物が予防剤または治療剤をコードする核酸である場合、該核酸は、コードされたタンパク質(例えば、CG53135タンパク質)の発現を促進するためにインビボで投与され得、これは、該核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、細胞内の一部となるように、例えば、レトロウイルスのベクターの使用、または直接注射、または微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃)の使用、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクション剤でのコーティングによって投与すること、または核内に侵入することがわかっているホメオボクス様ペプチドと連結して投与することなどによりなされる。あるいはまた、本発明の核酸は、細胞内に導入され、相同組換えによって宿主細胞DNA内に組み込まれ、発現され得る。
【0104】
本発明は、単位投薬形態の調製に用いられ得る薬学的組成物の製造に有用なバルク薬組成物を包含する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は薬学的組成物である。かかる組成物は、予防有効量または治療有効量のCG53135、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。好ましくは、該薬学的組成物は、被験体への投与経路に適するように処方される。
【0105】
一実施形態において、用語「薬学的に受容可能な」は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または米国薬局方にリストアップされていること、またはヒトにおける使用に一般的に安全であるとみなされている他のもの(GRAS)を意味する。用語「担体」は、希釈剤、アジュバント、充填剤(例えば、種々の塩形態のアルギニン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム、もしくはスクロース)、賦形剤、またはCG53135を投与するビヒクルをいう。かかる医薬用担体は、滅菌された液体、例えば、水および油(例えば、石油、動物、植物もしくは合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油など)、または固相担体、例えば、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、もしくはカプセル化材料としての機能も果たし得る1種類以上の物質であり得る。水は、薬学的組成物を静脈内投与する場合、好ましい担体である。また、生理食塩溶液およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液も、液状担体として、特に注射溶液に使用され得る。好適な薬学的賦形剤としては、限定されないが、デンプンもしくはその合成改質誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプンなど)、ステアリン酸塩、グリセロール、グルコース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ゼラチン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、またはそれらの組合せが挙げられる。該組成物は、所望により、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでいてもよい。
【0106】
CG53135を含む組成物は、多くの任意の可能な投薬形態、例えば、限定されないが、液状、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、軟質ゲル、丸剤、粉剤、注腸剤、徐放性製剤などに処方され得る。CG53135を含む組成物はまた、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として処方され得る。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランなどをさらに含有し得る。また、懸濁液は安定化剤を含有し得る。該組成物はまた、伝統的な結合剤および担体(例えば、トリグリセリド)を用いて坐薬として処方され得る。経口用製剤は、標準的な担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンもしくはその合成改質誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプンなど)、ステアリン酸塩、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。
【0107】
医薬CG53135を含む組成物は、その意図される投与経路に適合性となるように処方される。特定の一実施形態では、該組成物は、常套的な手順に従って、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内、腫瘍内または限局投与に適合した薬学的組成物として処方される。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌された等張性または高張性水性バッファーの溶液である。必要な場合は、該組成物はまた、可溶化剤および注射部位の痛みを緩和するための局所麻酔剤(例えば、ベンジルアルコールまたはリドカインなど)を含み得る。
【0108】
CG53135を含む薬学的組成物が限局的に投与される場合、該組成物は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、挫剤、スプレー剤、液剤および粉剤の形態で処方され得る。慣用の薬学的担体、水性、粉末状または油状の基剤、増粘剤などが必要または所望され得る。コーティングされたコンドーム、グローブなどもまた有用であり得る。好ましい限局用製剤としては、本発明の組成物が、限局送達剤、例えば、限定されないが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド類、キレート化剤および界面活性剤と混合されているものが挙げられる。CG53135を含む組成物は、リポソーム(特にカチオン系リポソーム)内に封入されたものであってもよく、またはこれと複合体を形成したものであってもよい。あるいはまた、CG53135を含む組成物は、脂質、特にカチオン系脂質と複合体を形成したものであってもよい。噴霧可能でない限局投薬形態では、限局適用に適し、好ましくは水より大きい動粘度を有する担体または1種類以上の賦形剤を含む粘性ないし半固形もしくは固形形態が、代表的に用いられる。他の好適な限局投薬形態としては、活性成分(好ましくは、固形または液状不活性担体との組合せ)が混合物の状態で加圧ボトル(例えば、プロペラントガス、例えば、フレオンまたはハイドロフルオロカーボン)またはスクイーズボトル内にパッケージングされた噴霧可能なエーロゾル調製物が挙げられる。また、所望により、保湿剤または湿潤剤を薬学的組成物および投薬形態に添加してもよい。かかるさらなる成分の例は、当該技術分野において周知である。
【0109】
CG53135を含む組成物は、鼻腔内投与が好ましい場合、エーロゾル形態、スプレー、ミストまたは点滴剤または粉剤の形態で処方され得る。特に、CG53135を含む組成物は、加圧パックまたはネブライザーから、適当なプロペラント(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、他のハイドロフルオロカーボン、二酸化炭素または他の適当なガス)の使用を伴うエーロゾルスプレー提示の形態で簡便に送達され得る。加圧エーロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するためのバルブを設けることにより決定され得る。吸入器またはインサフレーターにおける使用のための、該化合物の粉末ミックスおよび適当な粉末基剤(例えば、二糖またはデンプン)を含有するマイクロカプセル(例えば、ポリマー表面で構成される)が処方され得る。
【0110】
また、1種類以上のCG53135タンパク質を、1種類以上のポリマー(例えば、ヒドロキシエチルデンプン)で表面が構成されたマイクロカプセルに処方し得る。かかる製剤は、低速放出性などの有益性を有する。
【0111】
CG53135を含む組成物は、経口投与が好ましい場合、粉剤、顆粒剤、微粒子、ナノ粒子、水または非水性媒体中の懸濁剤または溶剤、カプセル、ゲルカプセル、サシェ、錠剤またはミニ錠剤の形態で処方され得る。増粘剤、矯味矯臭剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合がある。錠剤またはカプセルは、慣用の手段によって、薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、結合剤(例えば、プレゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ);崩壊剤(例えば、イモデンプンもしくはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて調製され得る。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によってコーティングしてもよい。経口投与のための液状調製物は、慣用の手段によって、薬学的に受容可能な添加剤、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、もしくは水素化された食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンもしくはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコール、もしくは分留された植物油);および保存料(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートもしくはソルビン酸)などを用いて調製され得る。該調製物はまた、適宜、バッファー塩、矯味矯臭剤、着色剤、および甘味剤を含み得る。経口投与用の調製物は、予防剤または治療剤(1種類または複数種類)の徐放、制御放出または持続放出に好適に処方され得る。
【0112】
一実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上の浸透性向上剤、例えば、アルコール、界面活性剤およびキレート化剤との組合せで経口投与される。好ましい界面活性剤としては、限定されないが、脂肪酸およびそのエステルまたは塩、胆汁酸およびその塩が挙げられる。一部のある実施形態では、浸透性向上剤の組合せ、例えば、アルコール、脂肪酸/塩を胆汁酸/塩との組合せで使用される。特定の一実施形態では、ラウリン酸、カプリン酸のナトリウム塩が、UDCAとの組合せで使用される。さらなる浸透性向上剤としては、限定されないが、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明の組成物は、粒状形態、例えば、限定されないが、噴霧される乾燥粒子、または微粒子もしくはナノ粒子を形成した複合体で経口送達され得る。本発明の組成物との複合体形成に使用され得る複合体形成剤としては、限定されないが、ポリアミノ酸、ポリイミン、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリレート、カチオン化ゼラチン、アルブミン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)、DEAE誘導体化ポリイミン、ポルラン、セルロース、およびデンプンが挙げられる。特に好ましい複合体形成剤としては、限定されないが、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノ−メチルエチレン P(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE−メタクリレート、DEAE−ヘキシルアクリレート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、ならびにポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0113】
CG53135を含む組成物は、被験体に、例えば、吸入器またはネブライザーの使用により、エーロゾル化剤を用いて処方された組成物の肺投与によって送達され得る。
【0114】
好ましい実施形態では、CG53135を含む組成物は、注射(例えば、ボーラス注射または連続注入)による非経口投与のために処方される。注射用製剤は、単位投薬形態(例えば、アンプルまたは反復投与用容器)にて保存剤の添加を伴って提示され得る。該組成物は、油状または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり得、製剤用剤、例えば、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤を含有し得る。あるいはまた、活性成分は、使用前に適当なビヒクル(例えば、滅菌発熱物質を含まない水)で構成する粉末の形態であり得る。
【0115】
好ましい実施形態では、該組成物は、常套的な手順に従って、ヒトへの静脈内投与に適合した薬学的組成物として処方される。代表的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌された等張性水性バッファー中の溶液である。必要な場合、該組成物はまた、可溶化剤および注射部位の痛みを緩和するための局所麻酔剤(例えば、ベンジルアルコールまたはリドカインなど)を含み得る。一般的に、該成分は、単位投薬形態で、単独または一緒に混合するかのいずれかで、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末もしくは水を含まない濃縮物として、活性剤の量を示した密封容器(例えば、バイアル、アンプルもしくはサシェなど)にて供給される。該組成物が注入によって投与される場合、これは、滅菌された医薬品グレードの水または生理食塩水を含む注入容器により分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、該成分を投与前に混合するための滅菌注射用水または生理食塩水のアンプルまたはバイアルが提供され得る。
【0116】
CG53135を含む組成物は、中性または塩の形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、限定されないが、遊離アミノ基と形成されたもの、例えば、塩酸,、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するもの、および遊離カルボキシル基と形成されたもの、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものが挙げられる。
【0117】
先に記載した製剤に加え、CG53135を含む組成物はまた、デポー調製物として処方され得る。かかる長時間作用性製剤は、埋込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、該組成物は、適当な高分子または疎水性材料(例えば、許容され得る油中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂とともに処方してもよく、またはやや難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として処方してもよい。リポソームおよびエマルジョンは、親水性薬物の送達用ビヒクルまたは担体の周知の例である。
【0118】
一実施形態において、本発明の方法に従って用いられる組成物の成分は、かかる組成物のレシピエントと同じ種起源または種反応性である被験体に由来するものである。
【0119】
一部のある実施形態では、本発明の方法に従って用いられる製剤は、0.02M〜0.2Mの酢酸塩、0.5〜5%のグリセロール、0.2〜0.5Mのアルギニン−HCl、および1種類以上のCG53135タンパク質を好ましくは、0.5〜5mg/ml(UV)含む。一実施形態において、本発明の方法に従って用いられる製剤は、0.04Mの酢酸ナトリウム、3%のグリセロール(容量/容量)、0.2Mのアルギニン−HCl(pH5.3)、および1種類以上の単離されたCG53135タンパク質を好ましくは、0.8mg/ml(UV)含む。一部のある実施形態では、本発明の方法に従って用いられる製剤は、0.01〜1Mの安定化剤(例えば、種々の塩形態のアルギニン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウム、またはスクロース)、0.01〜0.1Mのリン酸一ナトリウム(NaHPOO)、0.01重量%〜0.1重量%/容量(「w/v」)のポリソルベート80またはポリソルベート20、および1種類以上のCG53135タンパク質を好ましくは、0.005〜50mg/ml(UV)含む。一実施形態において、本発明の方法に従って用いられる製剤は、30mMのクエン酸ナトリウム(pH6.1)、2mMのEDTA、200mMのソルビトール、50mMのKCl、20%グリセロール、および1種類以上の単離されたCG53135タンパク質を含む。
【0120】
本発明はまた、本発明の治療レジメンを行なうためのキットを提供する。かかるキットは、1種類以上の容器内に、予防有効量または治療有効量の本発明の組成物(例えば、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物)を薬学的に受容可能な形態で含む。本発明のキットのバイアル内の該組成物は、例えば、滅菌生理食塩水、デキストロース溶液もしくは緩衝化溶液、または他の薬学的に受容可能な滅菌された液との組み合わされた薬学的に受容可能な溶液の形態であり得る。あるいはまた、該組成物は、凍結乾燥または完全乾燥されたものであり得、この場合、該キットは、任意選択で、容器内に、薬学的に受容可能な溶液(例えば、生理食塩水、デキストロース溶液など)を、好ましくは滅菌された状態でさらに含み、該組成物を再構成して注射目的のための溶液を形成する。
【0121】
別の実施形態では、本発明のキットは、製剤の注射および/またはパッケージングされたアルコールパッドのための、ニードルまたはシリンジを好ましくは滅菌形態でパッケージングされた状態でさらに含む。医師または患者が本発明の製剤を投与するための使用説明書が、任意選択で含まれる。
【0122】
一部のある実施形態において、本発明は、複数の容器を含むキットを提供する。各々が、単回投与に充分な用量の本発明の組成物(例えば、1種類以上のCG53135タンパク質を含む組成物)を含む薬学的製剤または組成物を内包する。
【0123】
任意の医薬製品に関し、パッケージング用材料および容器は、保存および搬送中での該製品の安定性を保護するように設計される。一実施形態において、本発明の組成物は、容器内に、生体適合性界面活性剤(detergent)(例えば、限定されないが、レシチン、タウロコール酸およびコレステロール);または他のタンパク質(例えば、限定されないが、γグロブリンおよび血清アルブミン)とともに保存される。さらに、本発明の製品は、医師、技術者または患者に対し、どのようにして対象の疾患もしくは障害を適切に予防または処置するかに関して忠告する使用または他の材料情報の使用説明書を含む。
【実施例】
【0124】
(6.実施例)
本発明を、以下の非限定的な例によってさらに説明する。
【0125】
(6.1.実施例1 :タンパク質発現および精製)
組換えヒトCG53135を、大腸菌BLR(DE3)細胞(Novagen,Madison,WI)から以下のようにして精製した。DE3細胞を、pET24a ベクター(Novagen)内にクローン化した完全長のコドン至適化CG53135−05で形質転換し、これらの細胞の製造用マスターセルバンク(MMCB)を作製した。MMCBに由来する細胞の発酵によって生成したCG53135−05を含有する細胞ペーストを、溶解バッファー中での高圧ホモジネーションにより溶解し、遠心分離によって清澄化した。CG53135−05を清澄化した細胞ライセートから、2サイクルのイオン交換クロマトグラフィーおよび硫酸アンモニウム沈殿によって精製した。最終タンパク質画分を、配合バッファー(30mM クエン酸塩(pH6.0)、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、200mM ソルビトール、50mM KCl、および20%グリセロール)に対して透析した。ビヒクル(CG53135タンパク質なし)は、30mM クエン酸ナトリウム(pH6.1)、2mM EDTA、200mM ソルビトール、50mM KCl、20%グリセロールを含む。
【0126】
他の型の製剤および精製方法は、下記のセクション6.19で見ることができる。
【0127】
液体クロマトグラフィー、質量分析およびN末端配列決定を用いた最終精製タンパク質生成物の解析は、最終精製タンパク質生成物が、完全長FGF−20に加えて、いくつかの切断型形態のFGF−20(例えば、CG53135−13(配列番号24)、CG53135−15(配列番号28)、CG53135−16(配列番号30)およびCG53135−17(配列番号32))を含み、FGF−20のアミノ酸3−211(CG53135−13、配列番号24)からなるタンパク質が、最終精製タンパク質生成物の大部分を構成することを示す。
【0128】
最終精製産物におけるすべてのバリアント/フラグメントは、増殖アッセイにおいて高活性を有する。したがって、これらのバリアント/フラグメントは、FGF−20と同じ有用性を有することが予測される。便宜上の目的で、用語「CG53135−05大腸菌精製産物」は、本明細書で用いる場合、CG53135−05構築物を発現する大腸菌から精製されたタンパク質生成物をいう。例えば、CG53135−05大腸菌精製産物は、完全長CG53135−05タンパク質(配列番号2)、CG53135−13(配列番号24)、CG53135−15(配列番号28)、CG53135−16(配列番号30)およびCG53135−17(配列番号32)の混合物であって、その大部分がCG53135−13(配列番号24)である混合物を含有し得る。また、CG53135大腸菌精製産物はまた、1種類以上のカルバミル化されたCG53135タンパク質も含有し得る。
【0129】
(RP−HPLCアッセイ:ピーク同定)
精製した薬物物質(それぞれプロセス1およびプロセス2の両方により(下記のセクション6.19参照)を、UVおよびエレクトロスプレー質量分析的検出の両方とともに逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によってさらに解析した。プロセス1またはプロセス2いずれかの精製タンパク質を、タンパク質C4カラム(Vydac、5μm、150mm×4.6mm)上に、標準的なHPLC系(移動相は、水、アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸を含有)を用いて負荷した。この方法での溶出勾配は、それぞれ、4つの異なるクロマトグラフィーピークに分かれる(26.6分、27.3分、28.5分および30.0分で溶出)ように修正した(図1)。これらのピークを、エレクトロスプレー質量分析によって特徴づけした。クロマトグラムから観察されるように、この4つの等効力の異性体は、プロセス1および2由来の精製最終生成物中に存在する。しかしながら、これらのピーク(1、3および4)の割合は、プロセス2によって精製された最終生成物中ではずっと低く、主要な形態はピーク2である。
【0130】
RP−HPLC分離由来の各ピークの同定を表2に示す。
表2:正確な分子量測定に基づいたCG53135−05大腸菌精製産物のRP−HPLC分離由来のピークの同定
【0131】
【表2】

(エドマン配列決定法および全アミノ酸解析)
プロセス1の参照基準であるDEV10、およびプロセス2の暫定参照基準の実験用N末端アミノ酸配列を、定性的に決定した。これらの参照基準は、SDS−PAGEによって分離し、電気泳動でフッ化ポリビニリデン膜に移した。各参照基準に対応するクマシー染色された約23kDaの主要バンドを膜から切り出し、自動エドマン配列決定装置(Procise,Applied Biosystems,Foster City,CA)によって解析した。この2つの主な配列の比較を、以下の表3に示す。各参照基準の主要な配列は同一であり、CG53135−05の理論的N末端配列内の残基3〜20に対応した。
【0132】
表3:それぞれプロセス1および2でのCG53135−05大腸菌精製産物の最初の20個のアミノ酸のエドマン配列決定データ
【0133】
【表3】

DEV10参照基準およびPX3536G001−H参照基準の実験用アミノ酸組成を並行して調べた。各参照基準の四連の試料を、16時間 115℃で、100μLの6N HCl、0.2%フェノール(2nmol ノルロイシンを内部標準として含有)中で加水分解した。試料をSpeed Vac Concentrator内で乾燥させ、2nmol ホモセリンを内部標準として含有する100μLの試料バッファーに溶解した。各試料中のアミノ酸をBeckman Model 7300 アミノ酸解析装置にて分離した。両参照基準のアミノ酸組成は、以下の表4に示されるように、有意差を示さなかった。Cysおよびtrpは、該タンパク質の酸加水分解中に破壊されることに注目されたい。Asnおよびglnは、酸加水分解中に、それぞれaspおよびgluに変換され、したがって、そのそれぞれの合計量をasxおよびglxで報告する。metおよびhisは、ともにこの手順では分離されなかった。
【0134】
表4:それぞれプロセス1およびプロセス2のCG53135−05大腸菌精製産物の定量的アミノ酸解析
【0135】
【表4】

(RP−HPLCによるトリプシンマッピング)
プロセス1および2から精製した薬物物質を還元し、ヨード酢酸によってアルキル化し、次いで、配列決定グレードのトリプシンで消化した。トリプシンペプチドを、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって、UVおよびエレクトロスプレー質量分析的検出の両方を用いて分離した。プロセス1またはプロセス2いずれかのトリプシン消化物を、ODS−1非多孔質シリカカラム(Micra、1.5μm;53×4.6mm)上に、標準的なHPLC系(移動相は、水、アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸を含有)を用いて負荷した。溶出しているペプチドを、214nmでのUV吸収(図2)および陽イオンエレクトロスプレー質量分析によって検出した。プロセス1およびプロセス2についての2つのクロマトグラムの主な差は、プロセス1トレースでは明白な(8.2分のピーク;図2)ピークのピーク面積の減少である。このピークは、T1ペプチドである残基1〜40に対応する。この観察結果は、このペプチドの供給源が、プロセス1の材料中により多く存在する(ピーク3、図1)インタクトなCG53135−05に由来するため、予測されていたものである。
【0136】
(バイオアッセイ)
LCおよびMSによって同定された4つのピークから回収したCG53135−05関連種の生物学的活性を、血清枯渇培養NIH 3T3 マウスの胚線維芽細胞を種々の用量の単離したCG53135−05関連種で処理すること、およびDNA合成中でのブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込みの測定によって測定した。このアッセイでは、細胞を、10%ウシ胎仔血清を加えたダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。細胞は、96ウェルプレート内でコンフルエントまで37℃にて10%CO/空気内で成長させ、次いで、ダルベッコ改変イーグル培地中で24〜72時間枯渇させた。CG53135−05関連種を加え、18時間37℃にて10%CO/空気内でインキュベートした。BrdU(10mM 最終濃度)を添加し、該細胞とともに2時間37℃にて10%CO/空気内でインキュベートした。BrdUの取込みを、酵素免疫測定アッセイによって、製造業者の使用説明書(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)にしたがって測定した。
【0137】
ピーク4は、回収された材料が不充分であったため、このアッセイに含めなかった(ピーク4は、CG53135−05の合計ピーク面積の3%未満である)。CG53135−05および残りのすべての3つの画分(すなわち、ピーク1、2および3)から回収された材料は、NIH 3T3マウス線維芽細胞において用量依存的にDNA合成を誘導した(表5)。PI200は、バックグラウンドの2倍のBrdU取込みをもたらしたタンパク質の濃度と規定した。すべての3つの測定可能なピークから回収されたCG53135−05およびCG53135−05関連種は同様の生物学的活性を示し、PI200は0.7〜11ng/mLであった(表5)。
【0138】
表5:CG53135−05(DEV10)の生物学的活性:DNA合成の誘導
【0139】
【表5】

(6.2.実施例2:放射線曝露からのCG53135の予防的保護的効果)
(6.2.1.急性放射線への1回曝露後の生存に対するCG53135−05の効果(試験N−272))
この試験は、致死量の全身への電離放射線後のマウスにおいて、異なるスケジュールで放射線保護剤として投与されたCG53135−05大腸菌精製産物の効果を調査するために行なった。この実施例におけるタンパク質濃度は、Bradfordアッセイによって測定した。
【0140】
雄性C3H/Heマウス(総数「n」=60)(試験開始時の平均体重は22.1グラム)を、処置群に用いた。動物には、標準的な市販のマウス用飼料を与えた。食餌および水は、随意に与えた。
【0141】
(試験計画)
動物の照射は、Brigham and Women’s Hospital(Boston,MA)にて行なった。試験は、Massachusetts College of Pharmacy(Boston,MA)にて行なった。動物を無作為に4群に分け、15匹のマウスのコントロール群および各々15匹のマウスの3つ試験群とした(表6)。マウスを、600cGyの1回線量の全身電離放射線に曝露した。CG53135−05(12mg/kg)を、それぞれ、放射線後の第2〜3日、放射線後の第4〜7日、または放射線前の第2および1日(−2および−1)に毎日腹腔内(IP)投与した。死亡率(動物数、死亡の日)を各群において記録した。
【0142】
表6:試験計画
【0143】
【表6】

すべての動物に、CG53135−05またはビヒクル(0.1 mL/10g 体重)を1日1回与えた。
【0144】
(統計)
処置群の生存を、Kaplan−Meierログランク解析を用いて比較した。体重変化は、台形公式変換を用いて曲線下面積(AUC)を測定することにより解析した。曲線下面積は、等式
i=(yi(x+1−xi)+(1/2)(yi+1−yi)(x+1−xi)}
(式中、x=時間(d)、y=体重変化のパーセント、およびi=時間点、これにより、xiは時間点iでのxの値であり、yiはその時間点でのyの値であり、xi+1およびyi+1は、次の時間点でのxおよびyの値である)を用いて計算した。t検定およびMann−Whitney Rank Sum解析の両方を用い、異なる処置群で体重変化に関するAUCを比較した。
【0145】
(結果)
放射線前の第−2日および第−1日でのCG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg、Bradford)によるマウスの処置は、未処置と比べて生存を有意に増加させた(P=0.04)が、放射線後の第2〜3日または第4〜7日でのCG53135−05大腸菌精製産物による処置は、生存に対して有意な効果を有さなかった(P>0.05)(図3)。さらにまた、予防用量のCG53135−05(第−2日および第−1日)でも、放射線後の体重減少を抑制された(図4)。また、第−2日および第−1日(13.9%)ならびに第4〜7日(14.8%)におけるCG53135−05による処置は、コントロール(9.7%)と比べて全体的に平均体重増加パーセントの増加をもたらしたが、一元配置ANOVAによる体重変化についての曲線下面積(AUC)の統計学的解析では、この群において有意差は示されなかった(P=0.051)(図4)。この試験の結果は、全身照射前の第−1日および第−2日でのCG53135−05によるマウスの処置は、放射線保護に有効であり、また、胃腸または造血組織に対する全身照射の損傷性の影響からの放射線保護的効果を保護することを示す。
【0146】
(6.2.2.急性電離放射線への曝露後のマウスに対するCG53135−05大腸菌精製産物の予防的効果(試験N−308))
この試験は、後で種々の線量の全身電離放射線に曝露したマウス予防的に投与したCG53135−05大腸菌精製産物の効果を調査するために行なった。従った手順は、セクション6.2.1に詳述したものと同じとした。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイによって測定した。マウスを電離放射線に、麻酔なしで484〜641cGyの線量範囲で第0日に曝露した。動物に、PBS(コントロール)またはCG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg、Bradford、毎日IP)を放射線前の第−1日または第−2日と第−1日に投与した。スケジュールを表7に示す。試験の終点は、生存および体重変化とした。生存は、照射後30日間追跡した。
【0147】
表7.試験計画
【0148】
【表7】

(結果:)
すべての処置群において、生存は、放射線線量が増加するにつれて、減少した。PBSを与えた動物では、最低線量の放射線(484cGy)での30日間生存は93.75%であり、534cGyで50.0%、570cGyで31.25%、606cGyで12.5%、および641cGyで6.25%に減少した(図5)。CG53135を12mg/kg IPで第−1日にのみ投与した動物では、最低線量の放射線(484cGy)の30日間生存は87.5%であったのに比べ、534cGyで87.5%、570cGyで81.25%、606cGyで43.75%、および641cGyで31.25%であった(図6)。GC53135を12mg/kg IPで第−2日および第−1日に投与した動物では、最低線量の放射線(484cGy)での30日間生存は87.5%であったのに比べ、534cGyでは75.0%、570cGyでは37.5%、606cGyでは31.25%、および641cGyでは0であった(図7)。
【0149】
多数の比較試験により、コントロール動物に対する第−1日に処置した動物における生存のオッズの4.8倍増加(p=0.00016)が示された。LD50/30値を、生存のプロビットプロットを95%信頼区間(ブートストラッピングにより計算)で用いて計算した。しかしながら、コントロール動物に対する第−2日および第−1日に処置した動物における生存のオッズは、有意ではなかった(p=0.4162)。この結果は、放射線保護におけるCG53135−05の予防的投与の治療効果を示す。さらに、放射線前の1日処置(第−1日)もまた、最高放射線レベル(641cGy)以外のすべてにおいて動物を体重減少から保護した。この特定の系では、特に高放射線レベルにおいて、単回用量(第−1日)は、2回投与レジメン(それぞれ、第−2日および第−1日)よりも有意に有効であった。
【0150】
上記の結果に加え、本発明は、CG53135−05大腸菌精製産物のさらなる投与レジメン、例えば、CG53135−05大腸菌精製産物を放射線曝露の前および/または後に予防的および/または治療的に投与することなどに拡張され得、これを、同じ動物モデルにおいて、本明細書に記載のものと同じ手順に従って、この化合物の治療的有効性の範囲を規定するために試験し得る。治療処置の投与レジメンとしては、限定されないが、放射線曝露後の第+1、+1および+2日が挙げられ得る。例えば、別の実験では、マウスに、4mg/kg(UV)CG53135−05大腸菌精製産物を全身照射の24時間前に、表示した用量でIP投与した。次いで、マウスの生存を30日間追跡した。図6Bは、570cGyおよび606cGyでの生存についてのKaplan−Meierプロットを示し、CG53135−05大腸菌精製産物での処置群とコントロール群との間にそれぞれ統計学的有意差、すなわちp=0.008およびp=0.015を伴う。図6Cは、投与量範囲全体における生存のプロビット解析を示す。コントロールおよびCG53135−05大腸菌精製産物で処置した動物のLD50/30は、それぞれ 552.4cGyおよび607.4cGyであり、線量修正係数(DMF)は1.10であった。
【0151】
(6.3.実施例3:マウスへのCG53135−05投与による腸の陰窩細胞増殖およびアポトーシスのモジュレーション(試験N−342))
この試験では、幹細胞対娘細胞の効果を識別するため、および胃腸の幹細胞損傷(例えば、粘膜炎)と関連する症候群におけるCG53135の作用様式に関する見識を誘導するため、小腸の陰窩細胞ターンオーバーに対するCG53135の効果を評価した。さらにまた、幹細胞放射線感受性に対するCG53135の効果もまた評価した。この実施例におけるタンパク質濃度はBradfordアッセイによって測定した。
【0152】
「陰窩」は、陰窩基部の方に幹細胞を伴う階層構造である。細胞がより成熟するにつれて、これらは、陰窩底部から陰窩上部に向かって漸次移動する。したがって、幹細胞対その増殖経過中の娘細胞とを冒している可能性のある変化は、各細胞位置での事象頻度の変化を観察することにより検出され得る。その細胞位置を図8においてマーキングしている。したがって、陰窩の微小構造に対するCG53135の効果を、陰窩細胞質との関連で解析した。
【0153】
(実験計画)
動物を、CG53135−05大腸菌精製産物を単回12mg/kg(Bradford、IP)投与後の種々の時点で屠殺した。屠殺する直前、S期細胞を標識し、陰窩細胞増殖/アポトーシスに対する薬物の効果を調べるためにマウスをブロモデオキシウリジン単回注射により標識した。2つのさらなる群のマウスを用い、幹細胞放射線感受性に対する効果を評価した。一方の群は、CG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg、Bradford 単回注射、IP)で処置し、別の群は、プラセボコントロールを注射した。注射の24時間後、動物に1GyX線(特に、幹細胞アポトーシスを誘導するため)を照射し、続いて慣習的なインビボBrdU標識を行なった。動物を4.5時間後(アポトーシスがピークの時間)に屠殺した。
【0154】
マウスを計量し、次いで、CG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg、Bradford、単回注射、IP)を投与した。これらの群の6匹の動物を、CG53135−05の注射の0、3、6、9、12、24、48時間後に致死させた。すべてに、屠殺の40分間前にブロモデオキシウリジンの単回注射を投与した(表8を参照)。
【0155】
さらなる2つの群の6匹のマウスを用い、幹細胞放射線感受性に対するCG53135−05の効果を評価した(第8および9群、表8参照)。1つの群は、CG53135−05(12mg/kg Bradford、単回注射、ip)で処置し、1つの群には、プラセボコントロールを注射した。注射の24時間後、動物に1GyX線を照射し、4.5時間後に致死させた。
【0156】
表8.試験計画
【0157】
【表8−1】

【0158】
【表8−2】

(腸の陰窩細胞増殖およびアポトーシスモジュレーション:手順)
すべてのS期分裂細胞は、注射されたブロモデオキシウリジン(BrdU)を取り込み、したがって、周期細胞として記録された。被照射動物を、麻酔をせずにパースペクスジグ(perspex jig)内に入れ、全身への線量率0.7Gy/分の1GyX線の放射線に供した。この低レベルの放射線は、小腸の幹細胞集団においてアポトーシスを誘導したが、より成熟した細胞では誘導しなかった。
【0159】
小腸を取り出し、カルノア固定液中に固定し、組織学的解析のために処理(パラフィン包埋)した。一組の3mm切片をBrdUに対して免疫標識し、別の一組の切片をH&Eで染色した。小腸の陰窩の縦方向切片を、BrdUまたはアポトーシス性/有糸分裂性のいずれかの核の存在について解析した。1匹の動物あたり半数50の陰窩をスコアリングした。
【0160】
第1〜7群(結果のA群)は、48時間の期間にわたるCG53135−05大腸菌精製産物の効果を調べるために試験した。第8〜9群(結果のB群)は、CG53135−05大腸菌精製産物において低線量照射後に生じるアポトーシス性細胞の数が変化するか否か、すなわち、CG53135−05大腸菌精製産物が放射線感受性幹細胞集団に影響するか否かを調べるために試験した。
【0161】
得られた結果は、各群の動物における陰窩に関する頻度分布を示し、これを、統計学的差についてさらに解析した。組織試料を、CG53135−05大腸菌精製産物による処置の3、6、9、12、24および48時間後に回収した。アポトーシス、有糸分裂指数および増殖は、この試験の評価項目のものとした。
【0162】
(結果:)
A群
第1〜7群(表8)では、CG53135−05大腸菌精製産物は、自発的アポトーシスに対して有意な効果を有さなかった。同様の結果が、有糸分裂指数について得られた(表9)。しかしながら、表9のBrdU取込みの結果では、以下のことが明らかになった。
a)3時間で、増殖性領域の拡張/増加があった(細胞位置12〜22)。
b)9時間までに、大きな増殖性効果が多くの細胞位置において認められた。
c)12時間までに、細胞位置4〜8のみが取込みの増加を示した(幹細胞)。
d)24時間までに、増殖の有意な阻害があった。
e)48時間までに、取込みはコントロールレベルと同等になった。
【0163】
表9. アポトーシス、有糸分裂および増殖の評価後の陰窩における有意な細胞位置の概要
【0164】
【表9】

表9に示す比較は、処置群対非処置群のものである。示した細胞位置は、非処置コントロールとは有意に異なるのものである(P<0.05)。
【0165】
B群:
第8および9群(表8)では、幹細胞放射線感受性を評価した。表8に示すように、CG53135−05大腸菌精製産物またはPBSを、1Gy放射線の照射の1日前に投与した。組織を放射線照射の4.5時間後に回収した。放射線誘導性アポトーシスまたは有糸分裂指数のいずれに対してもCG53135−05の投与の有意な効果はなかった。しかしながら、細胞位置4〜8において12時間までに取込みの増加と、増殖の有意な抑制が、CG53135−05で前処理した照射したマウスにおいて見られ、これは、A群の結果と一致する(表9)。
【0166】
(6.4.実施例4:放射線傷害後のマウス腸陰窩生存に対するCG53135予防的投与の効果(試験N−343))
この試験の目的は、インビボでの放射線誘導性陰窩細胞死亡率に対するCG53135の有効性を、ClonoquantTMアッセイを用いて評価することであった。この実施例におけるタンパク質濃度はBradfordアッセイによって測定した。
【0167】
マウスを計量し、次いで、CG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg)またはプラセボを投与した。照射の24時間前に、腹腔内(ip)に単回注射を行なった。6匹の動物の各群に、以下の表のとおりに照射を行なった。各放射線線量について、薬物処置群とプラセボ処置群の応答を比較した。
【0168】
小腸を取り出し、カルノア固定液中に固定し、組織学的解析のために処理(パラフィン包埋)した。H&E切片を、慣用のプロトコールに従って調製した。各動物について、10例の腸の周縁部を解析し、周縁部1例あたりの生存陰窩の数をスコアリングし、1群あたりの平均を求めた。10個以上の濃くH&E染色された細胞(パネート細胞を除く)を含む陰窩のみ、およびパイアー斑を含まないインタクトな周縁部のみをスコアリングした。
【0169】
また、陰窩サイズの差による誤差のスコアリングを補正するため、平均陰窩幅(その最大幅の点で測定)を測定した。補正は、以下のとおりに適用した。
【0170】
周縁部1例あたりの陰窩の補正された数字=処置群における周縁部1例あたりの生存陰窩平均数×(非処置コントロールの平均陰窩幅/処置動物の平均陰窩幅)
表10:試験計画
【0171】
【表10】

(結果:)
CG53135−05大腸菌精製産物の予防的投与後の陰窩生存は、照射線量に対して逆相関を示した。すなわち、放射線線量が少ないほど、陰窩生存は大きかった(図9および10)。CG53135−05大腸菌精製産物の予防的投与は、陰窩の数を有意に増加させた(P<0.001)。表11は、該タンパク質(CG53135−05大腸菌精製産物)の予防的投与後の放射線線量について得られた保護係数を示す。保護係数(表11)は、処置細胞と非処置細胞での生存陰窩細胞の比を表す。放射線傷害前に動物にCG53135−05大腸菌精製産物を投与した場合、平均で、1.55倍多くの細胞が、12Gyの照射線量に対して生き残った。
【0172】
表11 :
【0173】
【表11】

(6.5.実施例5:被照射腸の陰窩細胞の生存に対するCG53135予防的投薬スケジュールの効果(N−375))
この試験の目的は、照射前に4日間、1日1回投与した場合、CG53135が放射線誘発型の腸の陰窩細胞のインビボでの死亡に対して保護する能力を評価することであった。CG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg)またはPBSを、BDF1マウスの腹腔内(IP)に1日1回連続4日間、第0日に10〜14Gyから致死放射線線量までの曝露前に、投与した。生存再生中の陰窩巣の数を照射の4日後に測定した。この実施例におけるタンパク質濃度はBradfordアッセイによって測定した。
【0174】
動物にCG53135を1日1回4日間投与した場合、PBS処理した被照射動物と比べ、陰窩細胞生存の全体的な増加が認められた(表12)。
表12:照射前のCG53135−05大腸菌精製産物反復投与で得られた腸陰窩保護係数
【0175】
【表12】

保護係数の値は、PBSと比較したときのCG53135−05処置動物における周縁部1例あたりの生存陰窩の数を示し、比で示す。PBS処理コントロール動物の対応する値に対してP≦0.05(ANOVA)による。#=陰窩の数。
【0176】
最大レベルの放射線保護は、13Gyの放射線後に生じ、保護係数は2.09であった(例えば、生存陰窩細胞の数の2倍増加)。陰窩生存曲線は、CG53135−05処置後、放射線に対して有意に低減された感受性を示した(図11)。したがって、CG53135による連続4日間の前処置により、全体的な陰窩細胞生存は増加した。この試験は、放射線保護的特性を伴うスケジュールとしてのCG53135−05の複数日数での予防的投与の使用を示す。
【0177】
(6.6.実施例6:放射線保護ウィンドウの評価(N−382))
1日の投薬または複数の1日1回投薬の後の陰窩細胞の放射線保護に対するCG53135の効果が確立されたため、この試験では、照射の24時間前以外に間隔を空けて投与した場合のCG53135の活性を評価した。CG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg)またはPBSを、BDF1マウスにIP注射によって、それぞれ、線量13Gyの単回ボーラス放射線への曝露の6、12、24、36または48時間前に投与した。生存再生中の陰窩巣の数を、照射の4日後に測定した。この実施例におけるタンパク質濃度はBradfordアッセイによって測定した。
【0178】
照射の24時間または36時間前での単回用量のCG53135−05大腸菌精製産物の投与は、最高レベルの腸の陰窩細胞保護をもたらした。これらのスケジュールでは、それぞれ、80%および31%の陰窩生存がもたらされた(表13)。照射の6、12または48時間前での投薬は、それぞれ、0.78、0.40または0.84の線量修飾係数が得られた。
【0179】
【表13】

保護係数の値は、PBS処理コントロール動物と比較したときのCG53135−05処置動物における周縁部1つあたりの生存陰窩の数を示し、比で示す。対応するPBS処理コントロール動物の値に対してP<0.001(ANOVA)による。#=陰窩の数。
【0180】
これらの結果は、単回用量のCG53135−05大腸菌精製産物の投与に最適なウィンドウは、照射の24〜36時間前であることを示す。
【0181】
(6.7.実施例7:被照射腸の陰窩細胞の生存に対するCG53135投薬スケジュールの効果(N−416))
この試験の目的は、放射線誘導性陰窩細胞死滅に対する保護のレベルを確立するためにCG53135−05投与の最適な投薬スケジュールを確立することであった。この実施例におけるタンパク質濃度は、UV吸光度によって測定した。CG53135−05大腸菌精製産物(4mg/kg)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をBDF1雄マウスに、腹腔内(IP)で1日1回か、または連続する1日間、2日間、3日間、4日間または5日間(−1日目、0日目、1日目、2日目および/または3日目)のいずれかで照射前または照射後(13Gy)に投与した。生存再生中の陰窩巣の数を照射の4日後に測定し、線量修飾係数(DMF)を計算した。
【0182】
−1日目での単回用量のCG53135−05の投与では2.3のDMFが得られた(図12)。−1日目、0日目および1日目でのCG53135−05の投与では、0日目のTBIに対して、3.0のDMFが得られた(例えば、生存陰窩細胞の数の3倍増加)。これらのデータは、CG53135が、GI陰窩細胞の放射線保護性であり、予防的および介入(処置)特性を伴うことを示す。
【0183】
(6.8.実施例8:CG53135の放射線保護機構)
電離放射線の攻撃時に細胞において生じる多くの変化のうち、活性酸素種の増加は、HOの電離により生じる。このプロセスにより、最も反応性の高い分子が細胞内で生成されるので、細胞の損傷を低減させるため、核は、これらのラジカルをより反応性の低い中間体にスカベンジする酵素の転写を増大させる。CG53135は、放射線保護性であることが示されているため、CG53135での細胞の処理により、放射線保護に関与することがわかっている遺伝子のいずれかが上方制御されるか否かを調べることは、細胞に酸素ラジカルスカベンジ経路を「前負荷」する利益のために関連性がある。ROSスカベンジャーおよび転写因子が関与する複雑な経路に対するCG53135の効果の評価は、この薬剤の観察されたインビボ放射線保護効果を、機構的に示す。したがって、発現試験および生存試験を細胞レベルで行なった。
【0184】
(発現試験:)
CG53135による放射線保護の機構を示すため、遊離酸素ラジカルスカベンジャーおよび転写因子(1種類または複数種類)の発現プロフィールを、線維芽細胞および内皮細胞において試験した。NIH3T3(マウス線維芽細胞)、CCD−1070sk(ヒト包皮線維芽細胞)、CCD−18Co(ヒト結腸線維芽細胞)、およびHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)細胞を、0.1%FBSおよび表示した濃度のCG53135−05大腸菌精製産物を含有する基礎培地に移した。18時間のインキュベーション後、細胞を、RNEasy(Qiagen,Valencia,CA)を用いる全RNAのために回収した。RNAは、RT−PCR用Superscript First Strand Synthesis System(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて逆転写し、対象遺伝子を、以下に示すプライマーおよびサイクルを用いて増幅した。
【0185】
【表14】

【0186】
【表15】

(結果)
発現結果を表16にまとめ、図13〜16に示す。
【0187】
【表16】

放射線保護性スーパーオキシドジスムターゼのうち、最も放射線保護性であるMnSODは、細胞株間で一貫してCG53135−05大腸菌精製産物によって誘導されることがわかった(表16、図13〜16)。
【0188】
Nrf2転写因子は、「酸化防止剤応答エレメント」(AREとも称する)であると考えられていたいくつかの酸化防止剤の調節に関与するものであり、これは、試験したすべての細胞株においてCG53135によって誘導された(表16、図13〜16)。また、ERKおよびAktキナーゼは、CG53135によって活性化される。CCD18Coヒト結腸線維芽細胞を、18時間、0.1%BSAを含有する基礎培地中で枯渇させるか、または完全血清(「Comp」)中に放置し、次いで、100ng/ml FGF−20で刺激し、表示した時点で回収した。ライセートを、ヒトERKもしくはAktまたはこれらの表示したリン酸化対応物に対してイムノブロットした。ERKおよびAktキナーゼはともに、CG53135−05大腸菌精製産物による2分間の処理によって活性となった(図15)。これらのキナーゼ(特にAkt)の活性化は放射線保護事象と関連した。
【0189】
細胞が電離放射線から保護される機構の1つは、酸素ラジカルスカベンジ経路の誘導によるものであることが充分確立される。本明細書に詳述する遺伝子発現試験は、これが、CG53135が放射線保護を調節する経路の1つであり得ることを示す。さらにまた、全身照射(TBI)の主な標的臓器の1つは胃腸管である。本明細書に開示するデータは、(1)試験したすべての細胞株のうち最も応答性であるのは胃腸の線維芽細胞(CCD−18co)であったこと;および(2)充分特徴付けられた腸の放射線保護因子であるTff3は、CG53135によって強く上方制御されたことを示す。当該分野で知られた他の放射線保護因子は厳密に骨髄生存に影響を与え、他の区画には影響を与えないことを考慮すると、CG53135が造血幹細胞と同程度に影響を受ける組織において活性であることに注目するのは重要であるが、動物の生存に注目することも同様に重要である。
【0190】
(生存試験:)
一定線量の放射線を受けた細胞は、回復不能な害または起こり得るすべてのこれらの機構の組合せに直面したとき、電離したラジカルの猛攻撃に対する備えを有し、ラジカルによってなされた損傷を修復し、またはアポトーシスの発生を遅延させる。これらの経路の各々は、したがって、細胞の最終的な生存およびそれらが増殖する能力に重要である。細胞の生存は、生存している細胞は、照射後、インビトロでコロニーを形成し得るクローン原性アッセイによって評価した。
【0191】
クローン原性アッセイは、CCD−18co細胞、FaDuヒト扁平上皮細胞癌細胞、IEC6およびIEC18ラット結腸陰窩細胞、ならびにNIH 3T3マウス線維芽細胞を用いて行ない、放射線保護に対するCG53135の効果を評価した。細胞培養条件は、以下のとおりとした。NIH 3T3細胞は、DMEM+10%ウシ血清+50μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン中で増殖させ、IEC6およびIEC18細胞は、DMEM+10%FBS+0.1U/ml インスリン+50μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン中で増殖させ、FaDu細胞は、MEM+10%FBS+1mM ピルビン酸ナトリウム+50μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン+非必須アミノ酸中で増殖させた。細胞を、5×10/10cmデッシュ(NIH3T3)または5×10/6ウェルデッシュの1ウェル(IEC18、IEC6、FaDu)の密度でプレートし、接着させた。次いで、細胞を、CG53135−05大腸菌精製産物により10もしくは100ng/ml(IEC18、IEC6、FaDu)または50および200ng/ml(NIH 3T3)の用量で、0.1%血清(IEC18、IEC6、FaDu)または1%血清(NIH 3T3)を含有する基礎培地中で処理し、16時間(IEC18、IEC6、FaDu)または1時間(NIH 3T3)インキュベートした。次いで、細胞への照射を、0.5mmアルミニウムフィルターが装着され、130kVpで2.5Gy、5Gy、7.5Gy、10Gy、12.5Gyおよび15Gyの放射線速度50cGy/分をもたらすFaxitron X−ray irradiator(Wheeling,IL)を用いて行なった。照射直後、細胞をトリプシン処理し、2連で、NIH 3T3:250、500、1000、2000、5000および10,000細胞/60mmデッシュ;FaDu、IEC18およびIEC6:500、2500細胞/6ウェルデッシュの1ウェルの密度でプレートした。細胞を、完全増殖培地中で1〜2週間、平均直径2mmのコロニーになるまで増殖させ、その後、コロニーをクリスタルバイオレットで染色し、計測した。
【0192】
(結果:)
生存非処理またはCG53135処理細胞の数を放射線線量の関数としてプロットし、生存曲線を作成した。生存曲線の種々の部分の傾きは、異なる特性の放射線細胞死を示し、以下のことが示され得る。
【0193】
D0は、最後の2点間の曲線の傾きであり、高線量の放射線での細胞死滅速度を示す。値は、生存している細胞の割合をグラフ上の前の値を37%低減するのに必要とされた放射線の量を示すと解釈される。数が小さいほど、細胞死滅速度がより急速であることを示す。
【0194】
D1は、最初の2点間の曲線の傾きであり、低線量の放射線での細胞死滅速度を示す。値は、生存している細胞の割合をグラフ上の前の値を37%低減するのに必要とされた放射線の量と解釈される。数が小さいほど、細胞死滅速度がより急速であることを示す。
【0195】
Dqは、細胞生存において指数関数的減少が見られる前の曲線の肩である。これは、本質的には、細胞死滅の発生が見られる前に必要とされる照射の閾値量である。Dq値が大きいほど、細胞は、より低い線量の放射線で完全に保護されることを示す。
【0196】
被照射IEC18細胞の生存に対するCG53135処理の効果を図17に示す。D0およびD1値は、明白な処理関連傾向を示さなかったが、Dq値は、CG53135で処理したIEC18細胞が、非処理細胞と比べ、より低い線量の放射線で、死滅からより保護されることを示す(10ng/mlおよび100ng/ml CG53135で処理した細胞の生存曲線の肩がより広い)。したがって、CG53135−05大腸菌精製産物でのIEC18細胞の処理により、非処理細胞と比べ、細胞死滅は、より高い線量の放射線でもたらされ、CG53135がこれらの細胞において放射線保護因子として作用することを示す。
【0197】
被照射NIH 3T3細胞の生存に対するCG53135処理の効果を図18に示す。50ng/mlまたは200ng/ml CG53135で処理したNIH 3T3細胞のD0値は、非処理細胞のD0値よりも大きいようであり、その差は50ng/ml用量で有意性に近づく。これらの結果は、CG53135が放射線保護因子として作用し得、高線量の放射線でのNIH 3T3細胞の生存を促進し得ることを示す。さらにまた、100ng/mL CG53135で処理した細胞のD1値は、非処理細胞のものよりも小さく、低線量の放射線により低速の細胞死を示す。生存曲線のDq値における傾向は、主に、非処理細胞における生存のばらつきに起因して決定され得なかった。
【0198】
被照射HUVEC細胞の生存に対するCG53135処理の効果を図19に示す。100ng/mL CG53135で処理した細胞のD0値は、非処理HUVEC細胞または10ng/ml CG53135で処理した細胞よりも高く、高放射線線量における低速の細胞死を示す。また、100ng/mL CG53135で処理した細胞のDq値は、非処理HUVEC細胞または10ng/ml CG53135で処理した細胞と比べ、低線量の放射線により低速の細胞死があることを示す。D1値に対するCG53135の処理の明白な効果は観察されなかった。したがって、100ng/ml CG53135−05大腸菌精製産物でのHUVEC細胞の処理により、高線量の放射線において細胞死滅速度の有意な減少がもたらされる。100ng/ml CG53135−05大腸菌精製産物で処理したHUVEC細胞はまた、非処理細胞と比べ、低線量の放射線での死滅からより保護されるようであった。
【0199】
コントロール的に、被照射FaDuおよびIEC6細胞は、CG53135投与の結果として、D0にもDqにもD1値にも明白な傾向を全く示さなかった。
【0200】
別の試験(L−411およびL−432)では、照射後の細胞生存を、腸粘膜の各層内の異なる代表的な細胞型である7種の細胞株:上皮(IEC6およびIEC18、ラット腸の上皮)、間充織(NIH3T3、マウス線維芽細胞;CCD−18Co、ヒト結腸線維芽細胞)、ならびに造血系(32D、マウス造血細胞株)によりクローン原性アッセイ(上記)を用いて調べた。細胞に照射し、完全増殖培地(100ng/ml CG53135−05大腸菌精製産物を含むかまたは含まない)中にプレートし、10〜14日間コロニーを形成させた。データをプロットし、高線量(D0)および低線量の放射線(D1、Dq)での細胞死滅速度について分析した(図20、表17)。
【0201】
【表17】

およびDパラメータは、低線量の放射線での細胞死滅速度を示し、一方、Dパラメータは、高線量の放射線での死滅速度を反映する。非処理と比べたCG53135−05処理細胞におけるこれらのパラメータの増加は保護効果を示す。
【0202】
有意な保護が、32D、NIH3T3、IEC18、IEC6およびU2OS細胞株で観察され、一方、より中程度の保護が、CCD18CoおよびSaos株において見られた(図20、表17)。照射後のFGF−20でのU2OSおよびNIH3T3細胞の処理は、前処理よりも有効であった。
【0203】
まとめると、これらの結果は、CG53135−05大腸菌精製産物は、放射線に対してインビトロで保護効果を有することを示す。
【0204】
(6.9.実施例9:サイトカイン放出に対するCG53135の効果)
サイトカインは、広範囲の生理学的応答を媒介する重要な細胞シグナル伝達タンパク質である。電離放射線は、遺伝子発現およびサイトカインプロフィールにおいて一連の変化を誘発し得る。この試験の目的は、CG53135処理時の、細胞培養物中における経時的なサイトカインプロフィールを評価することであった。
【0205】
BioPlex サイトカインアッセイ(これは、多数のサイトカインを組織培養上清から定量するために設計された複合性ビーズベースのアッセイである)を、サイトカインの検出に使用した。このアッセイの原理は、捕捉型のサンドイッチイムノアッセイと同様である。NIH 3T3細胞を、96ウェルプレート内にプレートした。細胞をDMEM+0.1%ウシ血清(SFM)で洗浄した。CG53135−05大腸菌精製産物を10ng/mlまたは100ng/mlで該細胞に添加した。細胞上清みを、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間および24時間後に回収した。50ngのTNFを陽性コントロールとして用いた。Bioplex 18−Plex サイトカインアッセイ(BioRad Laboratories Inc,CA)を製造業者の手順に従って行なった。
【0206】
(結果:)
図21は、Mo KC放出に対するCG53135−05大腸菌精製産物の効果を示す。Mo KCはまた、ケモカインCXCL1としても知られている(これは、Gro1、メラノーマ成長刺激活性(MSGA)または好中球活性化タンパク質−3(NAP3)とも示されている)。これは、好中球に対する化学誘引物質としての機能を果たし、CXCR1レセプターを介してシグナル伝達する。全身照射に対する応答において、これは独自の放射線保護性性質を有する可能性が高いことが示唆されている(Radiat.Res.160:637−46,2003を参照)。図21は、測定された応答における一貫した用量(p=0.0085)および時間依存的増加(p=4.6×10)を示す。また、CG53135−05大腸菌精製産物の濃度はともに、コントロール(CG53135なし)よりも有意に高い応答を示した。
【0207】
CG53135処理に応答したIL−6およびIL−11の発現もまた調べた。IL−6およびIL−11はいずれも、最近、全身照射に対する応答における関与が示されている。また、IL−11は、化学療法または放射線療法後の血小板減少に対処するための薬剤として使用されている。CCD18Co細胞を100ng/ml CG53135とともに、0.1%BSAを含有する基礎培地中で表示した時間インキュベートした。ならし培地を取り出し、IL−6およびIL−11濃度について、それぞれLuminexまたはELISAによって分析した。図21Bは、IL−6およびIL−11サイトカインがインビトロでのCG53135−05大腸菌精製産物への曝露時に誘導されることを示す。
【0208】
CG53135−05がCXCL1との組合せで放射線保護において相乗的に作用するかを調べるため、インビトロおよびインビボの両方においてさらなる実験を行ない得る。さらにまた、当業者に認識され得るように、他のサイトカイン(例えば、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−10、MCP−1、GM−CSF、RANTES)の誘導もまた、CG53135−05の存在下で種々の細胞株(例えば、HUVEC、CCD−18、NIH3T3)において試験され得る。
【0209】
(6.10.実施例10:放射線曝露後の活性酸素中間体のスカベンジャーの測定)
(CM−HDCFDA法)
活性酸素種が増加した細胞は、第1工程として、スーパーオキシドジスムターゼ−Cu、Zn−SOD、Mn−SODおよび細胞外SODを上方制御し、スーパーオキシドラジカルを過酸化水素にスカベンジする。これらの酵素の活性は、その副生成物であるHによって、アセトキシメチルエステルを用いて間接的に測定され得る。このクラスの誘導体の1つである5−(および−6)−クロロメチル−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(CM−HDCFDAとしても知られる)は、細胞内に効率的に保持され、Hによって酸化されると緑色蛍光を発する。
【0210】
【化1】

IEC18(ラット腸上皮)およびCCD−18Co(ヒト結腸線維芽細胞)細胞を、60mmデッシュに1×10細胞/デッシュの密度でプレートした。接着後、細胞を、0.1%血清および表示した用量のCG53135を含有する培地に交換した。18時間のインキュベーション後、次いで、細胞に2または4GyでX線を、Faxitron X−irradiator(Wheeling,IL)を用いて照射し、続いて、5mM CM−HDCFDA(Molecular Probes,Eugene,OR)とのインキュベーションを15分間行なった。次いで、細胞を洗浄し、トリプシン処理し、Becton Dickinson FACSCalibur(San Jose,CA)においてFL1チャネルにより分析した。
【0211】
結果は、CG53135−05大腸菌精製産物による処理後、IEC18およびCCD18Co細胞が用量応答的に細胞内Hの増加を有することを示す(図22、23および24)。これは、CG53135−05大腸菌精製産物によって誘導されるスーパーオキシドジスムターゼ(主にMnSOD)の発現の増強に起因すると考えられる。
IEC18細胞内でのCG53135−05大腸菌精製産物による細胞内Hの生成は、電離放射線の線量の増加に伴って増強される(図23)。この結果は、放射線による多くの活性酸素種(例えば、スーパーオキシドおよびヒドロキシル)の生成の増加、それゆえCG53135−05大腸菌精製産物によって誘導されるスーパーオキシドジスムターゼの基質の増加を反映する。
【0212】
(Red CC−1方法)
電離放射線曝露時、細胞は、放射線がHOをヒドロキシルラジカル(OH)、スーパーオキシド(O)または過酸化水素(H)に電離させる結果として活性酸素種を蓄積する。豊富に存在するこれらのイオンは、細胞に対して有害な影響を有し得るため、これらの分子をより安定なバリアントにスカベンジする経路が上方制御される。CG53135は、細胞を電離放射線損傷から、サイトゾルのレドックス能力を低下させる経路を上方制御することにより保護し得ると仮定される。レドックスセンサー1(Red CC−1)と呼ばれる色素により、酸化時のサイトゾルのレドックスレベルが、赤色蛍光薬剤に変化する(これは、FACSによってFL2チャネルにおいて測定され得る)ことによりモニタリングされ得る。
【0213】
サイトゾル活性酸素種+Red CC−1 → 酸化されたRed CC−1
IEC18(ラット腸上皮)およびCCD−18Co(ヒト結腸線維芽細胞)細胞を60mmデッシュに、1×10細胞/デッシュの密度でプレートした。接着後、細胞を、0.1%血清および表示した用量のCG53135−05大腸菌精製産物を含有する培地に交換した。18時間のインキュベーション後、次いで、細胞に2または4GyでX線を、Faxitron X−irradiatorを用いて照射し、続いて、5mM Red CC−1(Molecular Probes,Eugene,OR)とのインキュベーションを15分間行なった。次いで、細胞を洗浄し、トリプシン処理し、Becton Dickinson FACSCaliburにおいてFL2チャネルにより分析した。
【0214】
結果:IEC18およびCCD18Co細胞は、CG53135−05での処理後、図25、26および27に示すように、用量応答的にサイトゾルのレドックス潜在性が減少することがわかった。本明細書に示すデータは、CG53135−05大腸菌精製産物によって誘導されたスーパーオキシドジスムターゼ(より強い活性種であるスーパーオキシドおよびヒドロキシルラジカルをスカベンジする)の発現の増強の結果であると考えられる。また、CG53135−05大腸菌精製産物は、重要な酸化防止剤制御転写因子であり、他の様式でサイトゾルの反応性のこの低減に寄与し得るNrf2の発現を増大させることが示されている。
【0215】
(6.11.実施例11:骨髄系細胞株32Dのインビトロ放射線保護)
また、脊髄系細胞におけるCG53135の放射線保護効果を、インビトロ実験によって脊髄系細胞株32Dを用いて試験した。32D細胞に0Gy、1Gy、2Gy、3Gy、4Gyまたは5Gyで照射し、次いで、10ng/ml IL−3を含み、100ng/ml CG53135−05大腸菌精製産物を含むかまたは含まないメチルセルロース含有増殖培地にプレートした。細胞に10日間コロニーを形成させ、次いでスコアリングした。図28は、CG53135−05大腸菌精製産物に曝露した際の32D細胞の生存の増加を示す。細胞生存を、生存割合の自然対数でプロットし、線形二次方程式を用いて曲線を得た。曲線の質、すなわち、放射線保護が観察される点を示すD1、DqおよびD0を、Hall et al.,Radiat.Res.114(3):415−424(1988)(その記載は、参考としてその全体が本明細書に援用される)に記載の方法を用いて得た。細胞死を指数関数的に開始するのに必要とされる放射線の量を示すDq値(または、低放射線線量での曲線の「肩」の幅)の2.10Gyから2.79Gyへの増加が観察された。
【0216】
(6.12.実施例12:骨髄除去に続く骨髄移植後の胸腺の再増殖に対するCG53135の効果)
また、特に胸腺微小環境における免疫系の再構成に対する長期のCG53135の効果を調べた。この実施例におけるタンパク質濃度をUV吸光度によって測定した。CG53135大腸菌精製産物を骨髄除去および移植モデルにおいて試験し、胸腺細胞を有する胸腺の再増殖を調べた。マウスに9Gyを照射して骨髄を除去し、続いて骨髄移植を行なった。この前に、一群のマウスに16mg/kg(UV)CG53135(IP)を1日1回、骨髄除去の日に対して−3日目、−2日目、−1日目、0日目および+1日目を投薬した。骨髄移植の30日後、非処置マウスおよび処置マウスの両方の胸腺を回収し、胸腺細胞を収集した。細胞を計測(A)し、T細胞特異的マーカーCD4およびCD8に関して染色(B)した。
【0217】
図29は、胸腺細胞の全細胞集団、ならびに胸腺内の成熟CD4/CD8陽性T細胞が、CG53135−05大腸菌精製産物で処置した動物において有意に増加したことを示す(p=0.00003)。
【0218】
(6.13.実施例13:マウスにおけるCG53135のIV投薬による最適な用量およびスケジュールの決定)
先の実施例では、齧歯類生存試験において以前に使用されたもの(12mg/kg Bradford)よりも高い用量(16mg/kg UV)での効果が観察された。さらにまた、先の実施例では、CG53135の腹腔内(IP)投薬を用いた。非ヒト霊長類動物におけるCG53135の投与を、好ましい投与経路である静脈内(IV)送達を用いて試験する。マウスにおける全身照射による骨髄不全のLD50は約7Gyである。低線量の放射線は、血液学的損傷をもたらし、照射後10日までに顆粒球、リンパ球、およびエリスロサイトの数が、底まで減少することが示されている。しかしながら、細胞数は、照射後30日までに反跳する。かかる放物線状効果により、損傷性照射からの造血系の保護に対する化合物の有効性をモニタリングすることが可能となり得る。マウスに、0、16または24mg/kg IV(UV)のCG53135−05大腸菌精製産物を、1群あたり60匹のマウスに照射した日を中心に−3日目、−2日目、−1日目、0日目および+1日目に投薬する。−3日目、−2日目、−1日目、0日目および+1日目にCG53135を投薬するスケジュールでは、最も一貫性のある結果が先のセクション(前出)の生存試験および胸腺再構成モデルの両方において提供されている。各群からの20匹のマウスに、0日目に3Gy、4Gyまたは5GyのX線を線量率1Gy/分で照射する。照射後、4日目、12日目、20日目および30日目に、各群からの5匹の動物を致死させ、末梢血を回収して循環血液細胞(CBC、ヘマトクリットなど)を分析し、大腿から骨髄を採取して分化メチルセルロース培地にプレートする。この試験により、臨床上の有益性が齧歯類において実証され得るCG53135−05大腸菌精製産物の最適用量、および霊長類動物試験において試験するための最適用量が特定されるはずである。本試験の概略は、以下のとおりである(この実施例におけるタンパク質濃度をUV吸光度によって測定した)。
【0219】
【表18−1】

【0220】
【表18−2】

(6.14.実施例14:非ヒト霊長類動物におけるCG53135のIV投与のための最適な用量およびスケジュールの決定)
また、CG53135のIV投与の最適な用量およびスケジュールは、造血傷害の非ヒト霊長類動物放射線モデルにおいて試験され得る。歴史的には、放射線保護に関する試験では、雄アカゲザル(Macaca mulatta)を用いている。5匹の動物からなる5群を用いる。齧歯類モデルにおける活性に基づき、CG53135−05大腸菌精製産物の用量を選択し、サルにおいて対応する用量を特定する。この最適用量は、1つのより高い用量および1つのより低い用量とともに一組として扱う。CG53135投薬のスケジュール(−3日目、−2日目、−1日目、0日目、+1日目)は、齧歯類試験で使用したスケジュールと同一である。第0日に、動物に、この種のサルにおいて造血低下が実証された線量4Gyを全身照射する。サルには、Lucite拘束イスにて250kVp X線を線量率13cGy/分で、片側だけに照射する。識別的な全血球算定を、毎日60日間、末梢血(伏在静脈から採取)について行なう。好中球減少および血小板減少などの状態は、特に重要である。およそ2mlのヘパリン化骨髄を、鎮静させた動物から照射後第7、14、21および46日に吸引する。単核細胞を、密度遠心分離により単離し、サイトカイン(GM−CSF、エリトロポイエチン、IL−3、c−kitなど)を含有するメチルセルロースベースの培地中に入れ、脊髄系前駆細胞の存在および健常性を確認する。この試験設計を表19に示す。
【0221】
【表19】

臨床的補助、例えば、抗生物質、新たな被照射全血液および体液などが、必要に応じて、実験を通して動物に提供される。抗生物質(すなわち、ゲンタマイシン、バイトリル)は、照射後、動物が、白血球数を1000個/μl以上に連続3日間および絶対好中球数を500個/μl以上に維持するまで投与される。血小板数が20,000個/μl未満であり、ヘマトクリットが18%未満である場合、新たな被照射全血が、およそ30ml/輸血で投与される。試験の最後に動物を安楽死させ、組織病理学的検査用に骨髄、脾臓、肝臓および空腸を回収する。この試験により、第2の動物種におけるCG53135処置の臨床上の有益性を実証し、ヒトでの最適用量を予測する目的のための、非ヒト霊長類動物でのこのスケジュールおよび投与経路の最適用量が決定されるはずである。
【0222】
(6.15.実施例15:被照射ヒト骨髄由来の造血系および間葉の前駆細胞に対するCG53135の効果)
正常ヒトドナーから採取された新鮮骨髄を、市販の業者から購入する。単核細胞を密度遠心分離によって単離し、次いで、10ng/ml、100ng/mlおよび500ng/mlの濃度のCG53135−05大腸菌精製産物を含むかまたは含まないイスコフ改変ダルベッコ培地を含む組織培養デッシュに移し、1時間インキュベートする。次いで、細胞に0Gy、1Gy、2Gyまたは4Gyを、X線放射線源を用いて照射する。次いで、被照射細胞を適切な密度で、造血幹細胞因子c−kitおよびIL−3ならびに因子GM−CSFおよびエリトロポイエチンを含有するメチルセルロースベースの培地を入れたデッシュに移し、それぞれに顆粒球系統およびエリスロサイト系統に分化させる。デッシュの半数において、CG53135−05大腸菌精製産物を培地に100ng/mlの濃度で添加した。この投薬スケジュールを用い、CG53135が、処理前、処理後または両方において照射に関して活性であるか否かを以下のようにして調べる。
【0223】
【表20】

細胞を10日間増殖させ、代表的な赤血球の系統(BFU−E、CFU−E)、顆粒球/マクロファージ系統(CFU−GM)、または両系統の前駆細胞(CFU−GEMM)のコロニーについてスコアリングする。被照射細胞の部分集合を、イスコフ改変ダルベッコ培地、25%ウマ血清およびヒドロコルチゾンからなる培地中に入れ、間質細胞を増殖させ、前述のものと同様の処理プロトコールに供する。2週間後、コロニーを染色し、線維芽細胞または線維芽細胞/脂肪細胞混在のコロニーに類似する形態についてスコアリングする。
【0224】
(6.16.実施例16:骨髄間質応答の刺激による骨髄再増殖に対するCG53135の間接効果)
CG53135は、他の機構の中で、骨髄間質内の線維芽細胞を刺激し、造血幹細胞の健常性および増殖能を促進する因子を分泌することによって骨髄幹細胞に対して保護的効果または増殖性効果を奏する。CG53135処理によって間質によりどのような因子が分泌されるのかを調べるため、ヒト骨髄間質細胞を購入し、96ウェルデッシュ内にプレートする。CG53135−05大腸菌精製産物を培地に、10、100および500ng/mlの濃度で0時間、1時間、4時間、8時間、24時間および48時間添加する。インキュベーション後、ならし培地を取り出し、サイトカイン放出についてBio−Rad Bio−Plexを用いて分析して17種のヒトサイトカインについてスクリーニングするとともに、ELISAにより、さらなる公知の放射線保護因子(例えば、IL−1αおよびIL−11)、ならびに公知の造血系増殖の刺激因子(例えば、幹細胞ではIL−3およびT−細胞ではIL−7など)を試験する。CG53135は、マウスおよびヒトの線維芽細胞に対して増殖性効果を有することが示されている(Jeffers et al.,2001)。骨髄間質細胞を、CG53135処理に応答して複製するその能力について試験する。細胞を増殖因子無含有培地中で24時間枯渇させ、次いで、10、100または500ng/ml CG53135により1、3、および5日間刺激する。次いで、細胞をBeckman−Coulterパーティクルカウンターを用いて計測する。サイトカイン放出の刺激および間質に対する増殖刺激効果の両方により、CG53135は、生存骨髄幹細胞が増殖および増殖(expand)し得る状態を作出し得る。このことを、CG53135で処理した間質における多能性CD34細胞の増殖を測定することによりインビトロで試験し得る。間質細胞を、サブコンフルエント密度でプレートし、CG53135で処理するか、または非処理で24時間放置するかのいずれかとする。CD34細胞を、次いで、線維芽細胞層の上面にプレートし、2日間、4日間または6日間増殖させる。各時点において、浮遊細胞を回収し、計測して増殖を測定するとともに、CD34およびLin発現に関して染色し、該細胞が分化していないことを確認する。
【0225】
(6.17.実施例17:CG53135は、放射線誘発型下痢の発生、長さおよび重篤度を低減させる(N−438))
この試験は、下痢発生および消化管の形態によって測定される全身照射によって誘発された胃腸の傷害に対するCG53135の活性を評価するために行なった。(この実施例におけるタンパク質濃度は、UV吸光度によって測定した)。
【0226】
(材料および方法:)
投薬:マウスを計量し、次いで、CG53135−05大腸菌精製産物(4または16mg/kg)を投薬するか、または未処置とする。投薬は、表1および2に記載のとおりに行なった。20匹の動物からなる各群に、以下の表のとおりに照射を行なった。CG53135−05大腸菌精製産物の投薬はすべて、0日目の照射直後とした。麻酔は行なわなかった。
【0227】
腸の陰窩細胞損傷誘導:マウスに全身照射を、線量率0.7Gy/分で送達される14または14.5Gyの線量で行なった。動物は、その後、試験期間を通して下痢が発生した。6日後、動物を致死させ、組織学的分析のためにマウスの腸管を回収した。
【0228】
体重:処置群間での動物の体重の起こり得る差を、電離放射線への曝露に対する応答の指標として評価するため、試験期間中毎日、各動物を計量し、その生存を記録した。
【0229】
死亡または瀕死であった動物.下痢開始/進行を正確に評価するため、および瀕死の動物を死亡前に見出すため、動物を1日2回第3日以降、評価した。かかる瀕死の動物は、頸椎脱臼によって致死させた。回腸および結腸中央部を取り出し、保存のためにホルマリン中に固定し、パラフィン内に包埋し(1ブロックあたり動物1匹、1ブロックあたり組織2つ)、必要であればさらに分析/IHCを行なった。死亡していた動物からは組織を取り出さなかった。
【0230】
【表21】

【0231】
【表22】

(結果:)
Excel表計算に、14または14.5Gyを照射した動物の下痢スコアおよび体重を添付した。各放射線線量のデータは、非常に類似していたため、14Gyを照射した動物の分析のみを示す。
【0232】
体重:質量比成長速度を、
【0233】
【化2】

によって計算した。
【0234】
有意性を、一元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定を用いて計算した。試験中、群間での体重の変化に有意差は見られなかった(図30(A)および(B))。
【0235】
下痢スコア:マウスを、下痢の重篤度に関して0〜3の段階で1日2回、照射の4日後から始めて3日間スコアリングした。3日間での平均下痢スコアならびに3日間での下痢スコアの合計を測定し、グラフにした。有意性を、一元配置ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって得た(図31(A)および(B))。
【0236】
各日の観察について分析を行ない、下痢ピークの日数の差を調べた。
有意差は、上記のようにして調べた(−P<0.05、**−P<0.01、***−P<0.001)。(図32)
(結論:)
動物に16mg/kg CG53135を、照射に対して−1日目、0日目および+1日目にそれぞれ投薬すると、放射線誘発性下痢の発生、長さおよび重篤度において高度に有意な低下がもたらされた。また、動物に1日目に6時間毎に4mg/kg CG53135を投薬すると、下痢発生の有意な減少がもたらされた。下痢ピークの日は、照射の5日後であり、この時点では、16mg/kg用量のCG53135のみが、下痢の有意な減少をもたらした。試験過程において、処置群での体重減少における有意差はなかった。
【0237】
(6.18.実施例18:放射線誘発性下痢に対するCG53135の効果(試験N439))
この試験では、致死線量の照射に曝露されたマウスにおいて、CG53135が下痢のレベルおよび重篤度を低下させる能力を調べた。先の試験(N−438)では、−1日目、0日目および+1日目の3回投薬スケジュールで与えた16mg/kg CG53135は、14GyX照射に曝露したマウスにおいて下痢の重篤度を有意に低下させることが示された。逆に、4mg/kgを0日目において照射の0、6、12、18時間後に投薬すると、下痢の重篤度は増大した。この試験では、これらの観察をさらに試験し、他の治療的CG53135処置スケジュールが、該薬物を放射線曝露後にのみ与えた場合で、下痢の重篤度を低下させ得るか否かを評価した。
【0238】
(材料および方法:)
試験物質:この試験に用いた試験物質は、CG53135−05大腸菌精製産物のバッチ番号PT0504Aであった。これは、9.9mg/mlの凍結ストックとして供給され、各バイアルを−80℃から解凍し、必要に応じてAminosyn中1.6または0.4mg/mlまで層流フード内で希釈した。Aminosynは、希釈前に滅菌濾過した。次いで、動物に0.1ml/10g体重をip注射した。CG53135は、各日に新たに調製(希釈)した。
【0239】
試験動物および飼育。140匹の雄BDF1マウス(Harlan,UK)(試験開始時10〜12週齢)を、耳パンチを用いて個々に番号付けした。各処置群は、20匹のマウスで構成され、4つのケージに5匹のマウスを収容した。動物を、個々に換気されるケージ内に収容し、27回換気/時とした。動物は、試験開始前に14日間馴化させた。部屋は、12時間明/暗サイクル(薄明かりなし)の自動タイマー下に置いた。すべてのケージに、試験、用量、動物番号および処置群を識別するために必要な適切な情報を標識した。動物には、標準的な齧歯類維持飼料を与えた。食餌および濾過水を随意に与えた。
【0240】
(実験手順:)
マウスを、動物20匹/群の7つ処置群に分け、識別のために耳パンチした。次いで、表xxのスケジュールに従って、動物に薬物(CG53135)をIP注射によって投薬するか、または非処置のままとした。Pantak PMC 1000、Model HF320機を用い、マウスを、単回線量の14GyX線の全身照射に曝露した(放射線は0.7Gy/分で送達)。すべての照射を13:00〜17:00の間に行なった。動物は、照射期間中、拘束したが、麻酔はしなかった。
【0241】
【表23】

体重および下痢: 動物を毎日計量し、処置群で起こり得る動物の体重変化を評価した。動物の体重が20%より多く減り、苦痛の徴候を示した動物を瀕死とみなし、致死させた。動物を、下痢の発生および重篤度について1日2回、3日目以降観察した。下痢の発生の確認に加え、各処置群について、下痢の重篤度を0〜3の段階で記録した。
【0242】
0=下痢の徴候なし
1=ゆるい便/中等度の下痢
2=下痢、肛門周囲の染み/毛つやなし
3=重度の漿液性下痢、広範な領域に染み/毛つやなし
個々の動物の下痢スコアを記録した。
【0243】
組織病理。致死時に、回腸および結腸中央部を取り出し、ホルマリン生理食塩水中に固定した後、パラフィン包埋した。次いで、これらの包埋試料を切断し、3μm切片を作製し、これを、H&Eで染色し、腸の損傷レベルを目視により評価した。各マウス由来の切片を評価し、1〜5のスコアを割り当てた。
【0244】
1:組織学的正常
2:上皮再生、ほぼ修復
3:潰瘍形成
4:重度の潰瘍形成、わずかに陰窩残存
5:完全に剥離
(結果:)
体重の相対的な減少/群を図33に示す。下痢の重篤度スコアの生データを図34(A)および(B)にまとめる。
【0245】
すべての動物は体重が減少したが、CG53135処置動物は、最初はコントロールよりも多く体重が減少した。この減少の差は、中間期(2日目および3日目)で最大であり、投薬スケジュールと直接的に関連した(最大用量を接種された動物が最も体重が減少した)。しかしながら、試験日数の後半までには、群間での体重減少のレベルに差はなくなった。先のように、動物の体重が20%より多く減り、また、苦痛の徴候を示した場合は、マウスを瀕死とみなし、処分した。動物の体重が20%より多く減ったが活発であったマウスの場合は、これらを取って置き、次の時点で再評価した。取って置いたマウスは偶発的に死亡しており、したがって、組織は採取せず、組織学スコアはない。
【0246】
下痢発生は、1日2回、3日目以降に測定したが、4日目までは下痢は観察されなかった。16mg/kg CG53135−05が下痢の重篤度を低下させたことは、直ちに明確である。照射に対して−1日目、0日目、+1日目での先の有効なプロトコールを用いた投薬は、この場合も、最も有効なプロトコールであり、照射の0、6、12および18時間後での投薬は、最も有効でないプロトコールであった。放射線曝露直後の単回治療的注射または放射線曝露直後および24時間後の投薬もまた、非常に有効であった。前者は、初期の時点では効果が低いようであったが、5日目の晩までには下痢の重篤度が低下した。この中期相の間では、投薬頻度と重篤度との間に相関性があり、動物は、1日の投薬回数が多いほど、より重度の下痢を経験した。
【0247】
合計下痢スコア/群を調べると、−1日目、0日目および+1日目に投薬する効果は、下痢の重篤度を未処置レベルの60%に低下させることになる(瀕死の動物を重篤度スコア3に割り当てると49%)。これは、照射後直後にCG53135を投与したものでは68%まで増加する(瀕死の動物を重篤度スコア3に割り当てると70%)。さらに投薬した動物は、コントロールの69(0日目、1日目に投薬)、80(0日目、1日目、2日目に投薬)および77%(0日目、1日目、2日目、3日目に投薬)の重篤度を有する(瀕死の動物を含めると60、56および63%)。
【0248】
小腸における組織学スコアにより、下痢データを確認する。瀕死のマウスをスコア4に割り当て、合計および平均スコアを調べると、0日目のみに投薬したマウス、および−1日目、0日目、+1日目に投薬したマウスにおける応答が最良であることが明らかとなる。この場合も、0、6、12および18時間後に投与したCG53135が最も有効でなかった。
【0249】
この試験でのさらなる事例観察は、16mg/kg CG53135を投与されたマウスの大部分が、注射するとすぐ射精したことであった。これは、新たな観察であるが、本発明者らは、先の研究のほとんどを4mg/kgを用いて行なったため、これは、薬物が高用量であることに関連し得る。
【0250】
最後に、16mg/kg CG53135−05は、14GyX線照射に曝露されたマウスにおいて、一貫して下痢の重篤度を低下させた。0日目のみ、または−1日目、0日目、+1日目での投薬は、種々のパラメータによって調べた場合、最良の保護をもたらした。さらなる投薬(0日目、1日目;0日目、+1日目、+2日目;および0日目、+1日目、+2日目、+3日目)は、付加的な有益性をもたらさなかった。また、照射の0、6、12および18時間後での投薬も、下痢の総重篤度を低下させなかった。
【0251】
(6.19.実施例19: CG53135−05および薬学的処方物の製造)
臨床開発に好適であり得る構築物を目指し、タグ無し分子をファージ無含有細菌宿主において作製した。コドン至適化された完全長タグ無し分子(CG53135−05)は、最も好ましい薬理学プロフィールを有し、安全性試験および臨床試験のための製品を調製するために使用した。
【0252】
(6.19.1 製造プロセスおよび薬学的処方物(プロセス1))
CG53135−05を、大腸菌BLR(DE3)において、コドン至適化構築物を用いて発現させ、均質に精製し、標準的なタンパク質化学技術によって特徴付けた。単離されたCG53135−05タンパク質を、標準的なSDS−PAGE技術を用いて単一バンド(23キロダルトン)として泳動し、クマシーブルーで染色した。CG53135−05タンパク質を電気泳動にてフッ化ポリビニリデン膜に転写し、染色した23kDバンドを膜から切り出し、自動エドマン配列決定装置(Procise,Applied Biosystems,Foster City,CA)によって分析した。最初の10個のアミノ酸のN末端アミノ酸配列は、推定タンパク質配列と同一であることが確認された。
【0253】
(発酵および一次回収組換え体)
CG53135−05を、大腸菌BLR(DE3)細胞(Novagen)を用いて発現させた。これらの細胞を、完全長のコドン至適化CG53135−05で、pET24aベクター(Novagen)を用いて形質転換した。これらの細胞の製造用マスターセルバンク(MMCB)を作製し、適格とした。発酵および一次回収プロセスを、100L(すなわち、作業容量)規模で再現可能に行なった。
【0254】
種の調製を、MMCBの1〜6個のバイアルを解凍およびプールし、各々750mLの種用培地を入れた4〜7個の振とうフラスコに接種することにより開始した。この時点で、3〜6Lの接種材料を、60〜80Lの開始培地を入れた製造用発酵槽に移した。製造用発酵槽を、温度37℃およびpH7.1で作動させた。攪拌速度、空気スパージング速度および空気の純粋な酸素による富化を操作することにより、溶存酸素を、飽和濃度の30%以上に制御した。供給培地の添加を、30〜40AU(600nm)の細胞密度で開始し、発酵終了まで維持した。細胞を、40〜50AU(600nm)の細胞密度で、1mMイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)を用いて誘導し、誘導後4時間CG53135−05タンパク質を産生させた。発酵は10〜14時間で完了させ、約100〜110Lの細胞培養液を、連続遠心分離を用いて濃縮した。得られた細胞ペーストを−70℃で凍結保存した。
【0255】
凍結細胞ペーストを、溶解バッファー(3M尿素含有、最終濃度)中に懸濁し、高圧ホモジネーションによって破砕した。細胞ライセートを、連続フロー遠心分離を用いて清澄化した。得られた清澄ライセートを、SP平衡バッファー(3M尿素、100mMリン酸ナトリウム、20mM塩化ナトリウム、5mM EDTA、pH7.4)で平衡化したSP−セファロースFast Flowカラムに直接負荷した。CG53135−05タンパク質をカラムから、SP溶出バッファー(100mMクエン酸ナトリウム、1Mアルギニン、5mM EDTA、pH6.0)を用いて溶出した。回収された物質を、次いで、等容量のSP溶出バッファーで希釈した。充分に混合した後、SPセファロースFFプールを、0.2μmPESフィルターに通して濾過し、−80℃で凍結した。
【0256】
(薬物物質の精製)
SP−セファロースFast Flowプールを硫酸アンモニウムで沈殿させた。一晩4℃でインキュベーション後、沈殿物をボトル型遠心分離によって回収し、続いて、フェニル負荷バッファー(100mMクエン酸ナトリウム、500mM L−アルギニン、750mM NaCl、5mM EDTA、pH6.0)中で可溶化した。得られた溶液を0.45μM PESフィルターに通して濾過し、フェニル−セファロースHPカラムに負荷した。カラムを洗浄後、タンパク質を、直線勾配でフェニル溶出バッファー(100mM クエン酸ナトリウム、500mM L−アルギニン、5mM EDTA、pH6.0)により溶出した。フェニル−セファロースHPプールを、0.2μm PESフィルターに通して濾過し、1.8Lアリコートにて−80℃で凍結した。
【0257】
(処方および充填/完成)
4つのバッチの精製薬物物質を、24〜48時間2〜8℃で解凍し、クロスフロー限外濾過(TFF)設備の回収槽にプールした。プールされた薬物物質を、TFFにより約5倍に濃縮した後、処方バッファー(40mM酢酸ナトリウム、0.2M L−アルギニン、3%グリセロール)を用いて約5倍にダイアフィルトレーションした。このバッファー交換した薬物物質を、さらに濃縮して>10mg/mLの標的濃度とした。回収槽に移したら、濃度を、処方バッファーで約10mg/mLに調整した。処方された薬物製品を滅菌槽内で滅菌濾過し、無菌的に充填し(10.5mL/20mL容バイアル)、密封した。充填および密封されたバイアルを、充填の正確さおよび視覚的な欠陥について検査した。特定数のバイアルを抽出し、放出アッセイ、安定性試験、安全性試験および試料保持のために標識した。残りのバイアルは、臨床試験用に標識し、完成薬物製品−80±15℃で保存した。
【0258】
完成薬物製品は、単回使用の注射用滅菌バイアルに入れた滅菌された無色透明の溶液である。CG53135−05大腸菌精製産物を、最終濃度8.2mg/mLで処方した(表24)。
【0259】
【表24】

最適に処方されたCG53135−05大腸菌精製産物の薬物動態を、静脈内、皮下、および腹腔内投与後のラットにおいて評価し、活性な用量での曝露を動物モデルで比較し、ヒトにおける曝露を予測した。CG53135−05大腸菌精製産物の静脈内投与は、高血漿レベル(最大血漿レベル=19,680〜47,252ng/mL)をもたらしたが、これは、最初の2時間以内に30〜70ng/mLまで急速に低下し、曝露の減少が3番目の日毎の用量後に観察された(最大血漿レベル=5373〜7453ng/mL)。CG53135−05大腸菌精製産物の皮下投与は、低速吸収(10時間で最大血漿レベル)および40〜80ng/mLの血漿レベルを投薬から48時間後までもたらし、血漿中でのいくらかの蓄積が3番目の日毎の用量後に見られた。CG53135−05大腸菌精製産物の腹腔内投与は、低速吸収(2〜4時間で最大血漿レベル)および40〜70ng/mLの血漿レベルを投薬から10時間後までもたらし、曝露の減少が3番目の日毎の用量後に見られた。いずれの投与経路によっても有意な性差は観察されなかった。
【0260】
CG53135−05大腸菌精製産物(0.05、5または50mg/kg/日UVで連続14日間)の静脈内投与の安全性を、主な毒物学試験においてラットにて評価した。0.05mg/mL CG53135−05大腸菌精製産物を14日間投与したラットでは、処置関連の所見はなかった。5mg/kgのCG53135を14日間投与したラットでは、食餌消費量が低下し、体重が減少したが、この投薬群では、臓器重量、尿検査、眼科学または組織病理パラメータにおける処置関連変化はなく、また、この処置群では、血液学および臨床化学パラメータにおいて処置関連変化が見られた。50mg/kg CG53135−05大腸菌精製産物を12日間投与したラットでは(活性用量よりも20〜30倍高い推定最大血漿レベル)、食餌消費量は低下し、体重は著しく減少したが、眼科学において処置関連変化はなく、この処置群では、臓器重量、尿検査、血液学、臨床化学および組織病理において有意な処置関連変化が認められた。
【0261】
CG53135−05大腸菌精製産物の静脈内投与の安全性(0または10mg/kg/日UVを連続7日間)を、アカゲザルでの安全性薬理学試験においてさらに評価した。1mg/kg CG53135−05大腸菌精製産物を7日間投与した動物において、処置関連の臨床的観察はなかった。10mg/kg CG53135−05大腸菌精製産物を7日間を投与した動物では、体重に対してわずかな影響が認められ、食餌消費量低下の定性的観察と関連した。いずれの用量群においても、血液学、臨床化学、眼科学または電気生理機能に対する処置関連効果はなかった。
【0262】
(CG53135−05薬物物質の安定性)
cGMP製造中に作製されたCG53135−05大腸菌精製産物に関する安定性試験を行なった。精製薬物物質の安定性を示すアッセイとして用いた分析方法を表25に列挙する。
【0263】
【表25】

PI200=バックグラウンドの2倍のBrdU取込みをもたらしたCG53135−05の濃度
SDS−PAGE、RP−HPLC、およびBradfordアッセイにより、タンパク質分解または巨視的凝集を示す。SEC−HPLCアッセイにより、タンパク質の凝集またはオリゴマー化の変化を検出し、バイオアッセイにより、タンパク質の生物学的活性の損失を検出する。精製薬物物質の安定性試験を−80〜15℃で行ない、試料を3、6、9、12および24ヶ月の間隔で試験した。
【0264】
一例の実験では、完成薬物製品の安定性試験をCambrexによって−80±15℃および−20±5℃で行ない、試料は1、3、6、9、12および24ヶ月の間隔で試験した。1ヵ月後に収集した安定性データは、完成薬物製品が、−80±15℃または−20±5℃で保存した場合、少なくとも1ヶ月安定であることを示す(表26)。
【0265】
【表26】

ロット番号02502001を−80±15℃または−20±5℃でCambrexにて保存し、1ヶ月後に試験した。PI200=バックグラウンドの2倍のBrdU取込みをもたらしたCG53135−05の濃度;合格=安定性基準を満たす結果;NT=試験せず
別の実験では、完成薬物製品の試料を−80±15℃で保存するか、または5±3℃、25±2℃、もしくは37±2℃でストレスを負荷し、種々の間隔で1ヶ月試験した。安定性データは、完成薬物製品が、−80±15℃または5±3℃で1ヶ月間保存後、有意な不安定性を示さなかったことを示す。25±2℃でストレスを負荷した場合、完成薬物製品は少なくとも48時間安定であり、分解は、この温度で1週間後に明確になった。37±2℃でストレスを負荷した場合、完成薬物製品の分解は、4時間以内に明確になった。
【0266】
(6.19.2 CG53135−05の改善された薬学的処方物および製造プロセス(プロセス2))
市販品のための3つの要件:(1)流通し易さのために最低保存温度は2〜8℃でなければならない;(2)製品は、商業用の流通システムのために、保存温度で少なくとも18ヶ月間安定でなければならない;および(3)製品は、商業規模の設備で製造されなければならず、プロセスは、種々の商業的な契約製造業者に譲渡可能でなければならないことを満たす新規処方物を開発した。
【0267】
この新規処方物は、0.5Mアルギニン(硫酸塩として)、0.05Mリン酸一ナトリウムおよび0.01%(w/v)ポリソルベート80中の、セクション6.2(「プロセス2タンパク質」)に記載の方法によって作製される10mg/mLのタンパク質生成物からなる。凍結乾燥品を、加速安定性データに基づいて、少なくとも18ヶ月間2〜8℃で安定であるように計画する。新規処方物とはコントロール的に、米国特許出願第10/435,087号(セクション6.19.1を参照)に記載されるこれまでの処方物は、以下の理由で凍結乾燥が不可能である。第1に、酢酸塩バッファーの酸性成分が酢酸であり、これは、凍結乾燥中、昇華する。凍結乾燥に対する酢酸のこの損失は、pHを>7.5に増加させ、これは標的pH5.3とはほど遠い。第2に、グリセロールは、<−45℃の破壊温度を有し、これは、この処方物を市販用に凍結乾燥不能にする。市販品の凍結乾燥剤のほとんどは、−45℃〜−50℃(±3℃の温度変動を伴う)の範囲の保存温度を有する。
【0268】
CG53135の4つの予期しない特性が明らかになり、新規処方物の開発に用いた。(1)高濃度のアルギニン(>0.4M)は、溶解度を>30mg/mLに増加させる;(2)アルギニンの硫酸塩の使用は、溶解度を少なくとも2〜6倍増加させる;(3)リン酸ナトリウムの緩衝塩としての至適濃度は50mMであり、25、75および100mMの濃度と比べ、溶解度の少なくとも1〜2倍増加を伴う;および(4)ダイアフィルトレーション/限外濾過工程中の界面活性剤の添加は、凝集の形成を最小限に抑える。凍結乾燥製剤の開発において、新規製剤の各成分を、溶解度について個々に評価した。CG53135−05を、沈殿バッファー(50mM NaPi、5mM EDTA、1M L−アルギニンHCl、2.5M(NH4)2SO4)を用いて沈殿させた。沈殿物を25mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)で洗浄し、残留アルギニンおよび硫酸アンモニウムを除去した。洗浄した沈殿物を、次いで、表に示した以下のそれぞれのバッファー中に再溶解した。以下は、データの例である。
【0269】
【表27】

【0270】
【表28】

リン酸ナトリウムの緩衝塩としての至適濃度を観察した(表29)。リン酸ナトリウムの至適濃度は50mMであり、25、75および100mMの濃度と比べ、溶解度の少なくとも1〜2倍の増加を伴う。
【0271】
【表29】

表30は、凝集の形成を最小限に抑えるために、ダイアフィルトレーション/限外濾過工程中に界面活性剤を添加する必要性を示す。限外濾過/ダイアフィルトレーションを、2.5mg/mL CG53135−05大腸菌精製産物を含む0.2Mアルギニンおよび0.05M リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中で行なうことにより、この実験を行なった。7容量の最終バッファー(0.5Mアルギニンおよび0.05Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0))と交換後、濾液(diafiltrate)を約20mg/mLに濃縮する。濾液を、次いで、最終バッファーで約12.5mg/mLに希釈し、凍結乾燥する。ポリソルベート80をダイアフィルトレーションの前または後のいずれかで添加し、最終濃度0.01%とする。
【0272】
【表30】

処方バッファーは全て、0.5Mアルギニン、0.05Mリン酸一ナトリウムおよび0.01%ポリソルベート80を含有する。
【0273】
新規製剤は、以下の利点を有する:(1)2〜8℃の保存温度を有し、少なくとも18ヶ月の計画された保存期間を有する凍結乾燥品(2)CG53135の溶解度は増加し、>30mg/mLの濃度が得られる;および(3)凍結乾燥品は、−30℃の崩壊温度を有し、これは、商業用設備によって容易に凍結乾燥され得る。アルギニン、硫酸塩、リン酸塩および界面活性剤ならびにCG53135間の相互作用は予想外であった。
【0274】
薬物物質および薬物製品の製造のための改善されたプロセスの工程(プロセス2)を表31に示し、各工程を以下に説明する。
【0275】
【表31】

セルバンク:製造用マスターセルバンク(MMCB)を動物成分無含有複合培地において、プロセスの初期に用いた。第2の製造用マスターセルバンク(MMCB)を動物成分を含まない化学的に規定された培地において第1のMMCBから誘導し、製造用ワーキングセルバンク(MWCB)を第2のMMCBから作製した。このMWCBは、表31に記載のように、製造プロセスにおいて用いた。
【0276】
接種材料調製:初期細胞拡大を、振とうフラスコ内で行なう。種調製は、MWCBの2〜3個のバイアルを化学的に規定された培地において解凍およびプールし、各々500mLの化学成分規定種用培地を入れた3〜4個の振とうフラスコに接種することにより行なう。
【0277】
種および最終発酵:対数増殖期(2.5〜4.5OD600単位)の細胞を含む振とうフラスコを用い、種用培地を入れた1つの25L(すなわち、作業容量)種発酵槽に接種する。25L種発酵槽で対数増殖期(3.0〜5.0OD600単位)に達した細胞を、780〜820Lの化学成分規定バッチ培地を入れた1500L製造用発酵槽に移す。発酵中、温度を37±2℃、pHを7.1±0.1に制御し、150〜250rpmで攪拌し、そして0.5〜1.5(vvm)の空気または酸素富化空気によってスパージングして溶存酸素を25%以上に制御する。発泡抑制剤(Fermax アジュバント27)を必要に応じて使用し、発酵槽内での発泡を制御する。培養物のOD(600nm)が25〜35単位に達したら、さらなる化学的に規定された培地を最初は0.7g/kg培養液/分で供給し、次いで、供給速度調整を必要に応じて行なう。CG53135−05タンパク質の発現の誘導は、600nmでのODが135〜165単位に達したときに開始する。誘導の4時間後、発酵を完了する。最終発酵培養液容量はおよそ1500Lである。次いで、培養物を10〜15℃に冷却する。
【0278】
ホモジネーション:冷却した培養物を細胞溶解バッファーで、2部の細胞溶解バッファー(50mMリン酸ナトリウム、60mM EDTA、7.5mM DTT、4.5M尿素(pH7.2))に対して1部の発酵培養液の比率で希釈する。ポリエチレンイミン(PEI)(凝集剤)を希釈発酵培養液に、0.033%(W/V)の最終PEI濃度まで添加する。細胞を10〜15℃で溶解し、高圧ホモジナーザー(750〜850バール)に3回通過させる。
【0279】
捕捉および回収:冷却した細胞ライセートを、予め平衡化したStreamline SP拡張ベッドカチオン交換カラムに、下から上に向かう方向に直接負荷する。負荷中、ベッド膨張係数を、充填ベッドカラム容量の2.5〜3.0倍に維持する。負荷後、カラムを、さらなるStreamline SP平衡バッファー(100mMリン酸ナトリウム、40mM EDTA、10mM硫酸ナトリウム、3M尿素(pH7.0))で、下から上に向かう方向にフラッシュする。次いで、カラムをSP Streamline洗浄バッファー(100mMリン酸ナトリウム、5mM EDTA、25mM硫酸ナトリウム、2.22M デキストロース(pH7.0))で上から下に向かう方向にさらに洗浄する。タンパク質をカラムから、Streamline SP溶出バッファー(100mMリン酸ナトリウム、5mM EDTA、200mM硫酸ナトリウム、1M L−アルギニン(pH7.0))により上から下に向かう方向に溶出する。
【0280】
PPG 650Mクロマトグラフィー:SP Streamline溶出液を、予め平衡化したPPG 650M疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに負荷する。カラムを平衡化し、100mMリン酸ナトリウム、200mM硫酸ナトリウム、5mM EDTA、1M アルギニン(pH7.0)で洗浄する。カラムを、さらに100mMリン酸ナトリウム、5mM EDTA 0.9Mアルギニン(pH7.0)で洗浄する。生成物を100mMリン酸ナトリウム、5mM EDTA、0.2Mアルギニン(pH7.0)で溶出する。
【0281】
CUNO濾過:PPG溶出液を、内毒素結合CUNO 30ZAデプスフィルターに通す。このフィルターを、まず注射用水(WFI)、次いで100mMリン酸ナトリウム、5mM EDTA、0.2Mアルギニン(pH7.0)(PPG溶出バッファー)でフラッシュする。フラッシュ後、PPG溶出液をフィルターに通す。空気圧を用いて最終液状物をフィルターおよびその枠に押し通す。
【0282】
フェニルセファロースクロマトグラフィー:CUNO濾液を、次いで、予め平衡化したフェニルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに負荷する。カラムを平衡化し、100mMリン酸ナトリウム、50mM硫酸アンモニウム、800mM塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン(pH7.0)で洗浄する。生成物を50mMリン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン(pH7.0)で溶出する。
【0283】
濃縮およびダイアフィルトレーション:1%ポリソルベート80をフェニルセファロース溶出液に、薬物物質の最終濃度が0.01%(w/v)となるように添加する。溶出液を、次いで、限外濾過システムにて約2〜3g/Lまで濃縮する。保持液を、次いで、7ダイアフィルトレーション容量の50mMリン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン(pH7.0)(フェニルセファロース溶出バッファー)によりダイアフィルトレーションする。ダイアフィルトレーション後、保持液を12〜15g/Lに濃縮する。保持液を、0.22μmフィルターに通して濾過し、続いて10g/Lに希釈する。
【0284】
バルクの瓶詰め:濃縮およびダイアフィルトレーション工程からの保持液を、0.22μm孔径フィルターに通し、2L用単回使用テフロン(登録商標)ボトル内に濾過する。ボトル−70℃で凍結させる。
【0285】
薬物製品/バイアル:凍結薬物物質を、Formatech Inc、MAにDiosynth−RTP、NCから薬物製品の製造のために搬送する。凍結薬物物質のボトルを周囲温度で解凍する。薬物物質が完全に解凍された後、これを、滅菌容器内にプールし、濾過し、バイアル内に充填し、部分的に栓をし、凍結乾燥する。凍結乾燥プロセスが完了した後、バイアルに栓をし、キャップする。凍結乾燥薬物製品を2〜8℃で保存する。
CG53135−05参照基準をDiosynth RTP Inc、で代表的なバルク薬物物質製造プロセス(一般製造方法に記載)である140L規模の製造プロセスを用いて調製する。参照基準を、1mLアリコートとして2mL容クリオバイアル内に−80℃±15℃で保存した。
【0286】
最終生成物の純度を、SDS−PAGE、RP−HPLC、サイズ排除HPLCおよびウエスタンブロットによって分析した。薬物の効力を、CG53135−05に応答したNIH 3T3細胞の増殖によって測定した。すべてのデータは、最終生成物が臨床使用に好適であることを示した。
【0287】
(7.均等物)
当業者は、単なる常套的な実験を用いて、本明細書に記載する本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物が認識または確認し得る。かかる均等物は、上記の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0288】
したがって、好ましい本発明の実施形態を例示および説明したが、本発明は、変形および修飾が可能であり、記載した正確な用語に限定されるべきでないことは理解されるべきである。本発明者らは、本発明を種々の使用および条件に適合させるためになされ得るかかる変化および改変にも効力があることを所望する。かかる改変および変化としては、例えば、本発明によるタンパク質の哺乳動物への投与のための種々の薬学的組成物;投与される組成物における種々の量のタンパク質;本発明によるタンパク質の投与の種々の時間および手段;および投与用量に含まれる種々の材料、例えば、種々のタンパク質の組合せ、または本発明によるタンパク質と、本明細書に具体的に開示したタンパク質の所望の有用性と同じ、同様のもしくは異なる目的での他の生物学的に活性な化合物との組合せが挙げられ得る。かかる変化および改変はまた、本明細書に記載した特定の所望のタンパク質のアミノ酸配列の改変であって、かかる変化が配列を、該タンパク質の所望の潜在性を変化させないが、投与される薬学的組成物もしくは身体内において該タンパク質の溶解度、または身体による該タンパク質の吸収、保存期間もしくは身体内における該タンパク質の保護を、該タンパク質の生物学的作用が所望の効果を生じる時間まで変化させる様式で改変する修飾、ならびにかかる同様の修飾を含むことを意図する。したがって、かかる変化および改変は、適正に充分均等物の範囲であるとし、したがって、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【0289】
本発明ならびにその作製および使用の様式およびプロセスは、したがって、充分、明確、詳細および正確な観点で、本発明が関するか、非常に密接に関連する分野の任意の当業者が同一のものを作製および使用し得るように記載している。
【図面の簡単な説明】
【0290】
【図1】図1は、CG53135−05大腸菌精製産物の液体クロマトグラフィーおよび質量分析解析を示す。
【図2】図2は、CG53135−05大腸菌精製産物のトリプシンマップを示す。
【図3】図3は、急性放射線線量600cGyへの1回曝露後のマウス生存に対するCG53135の効果を示す。
【図4】図4は、急性放射線600cGyへの1回曝露後のマウスにおける平均体重変化を示す。
【図5】図5は、放射線線量484cGy、534cGy、570cGy、606cGyまたは641cGyへの曝露後のマウス生存に対するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)コントロールの効果を示す。
【図6】図6(A)は、放射線線量484cGy、534cGy、570cGy、606cGyまたは641cGyへの曝露後のマウスの生存に対するCG53135の予防的投与(第−1日)の効果を示す。(B)は、570cGyおよび606cGyでの生存に関するKaplan−Meierプロットを、CG53135処置動物とPBS処理コントロール動物との統計学的有意差とともに示す。(C)放射線線量範囲における生存に関するProbit解析。
【図7】図7は、放射線線量484cGy、534cGy、570cGy、606cGyまたは641cGyへの曝露後のマウスの生存に対するCG53135の予防的投与の効果(第−2および−1日)を示す。
【図8】図8は、陰窩における細胞位置を示す。陰窩の下部は細胞位置1であり、陰窩基部である。小腸では、幹細胞は、細胞位置4周囲に位置し、増殖性細胞は、ほぼ陰窩の半分を占める。細胞は一定して成熟しているため、該細胞は、充分分化し、陰窩の上面にサイクリングしない。幹細胞対その一過的に増幅している娘細胞に影響し得る変化は、各細胞位置における事象(標識、アポトーシス、有糸分裂など)頻度の変化を調べることにより検出され得る。
【図9】図9は、種々の線量放射線後、CG53135またはPBSを予防的に投与したマウス由来の腸の陰窩細胞の生存曲線を示す。
【図10】図10は、放射線傷害後のマウス腸の陰窩生存に対するCG53135の予防的投与の効果を示す。
【図11】図11は、陰窩生存曲線に対する照射前のCG53135反復投与の効果を示す。動物(n=6/群)に、PBSまたはCG53135−05大腸菌精製産物(12mg/kg)を、腹腔内(IP)注射により1日1回連続4日間、1回10、11、12、13または14Gy線量のX線の全身照射第0日の前に投与した。プロットは、陰窩生存に対する放射線線量応答を表す。データ点は、多標的(Puck)解析モデルDRFITを用いて解析した個々の動物における陰窩生存を表す。
【図12】図12は、陰窩生存曲線に対するCG53135反復投与効果を示す。動物(n=6/群)に、PBSまたはCG53135−05大腸菌(4mg/kg)を腹腔内(IP)注射によって1日1回、連続1、2、3、4または5日間のいずれかで、1回線量の(13Gy)全身照射第0日の前または後投与した。プロットは、処置スケジュールに応答した陰窩細胞レベルの保護を表す。保護係数値は、PBSと比べたCG53135−05処置動物における周縁部1例あたりの生存陰窩の数を比で表したものを示す。
【図13】図13Aおよび13Bは、NIH 3T3細胞におけるスカベンジャー、シクロオキシゲナーゼ、三葉型因子、および転写因子のCG53135誘導発現を示す。
【図14】図14は、CCD1070sk細胞におけるスカベンジャー、シクロオキシゲナーゼ、三葉型因子、および転写因子のCG53135誘導発現を示す。
【図15】図15(A)は、CCD18Co細胞におけるスカベンジャー、シクロオキシゲナーゼ、三葉型因子、および転写因子のCG53135誘導発現を示す。(B)は、CG53135によるERKおよびAKTキナーゼの活性化を示す。
【図16】図16は、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)スカベンジャー、シクロオキシゲナーゼ、三葉型因子、および転写因子のCG53135誘導発現を示す。
【図17】図17は、種々のX線線量を照射したIEC 18細胞の生存に対するCG53135の効果を示す。
【図18】図18は、種々のX線線量を照射したNIH 3T3細胞の生存に対するCG53135の効果を示す。
【図19】図19は、種々のX線線量を照射したHUVECの生存に対するCG53135の効果を示す。
【図20−1】図20は、被照射細胞の生存曲線を示す。種々の細胞型(造血−32D;間質−CCDI8−C0およびNIH3T3;上皮−IEC18、IEC6ならびに骨−U2OSおよびSaos−2)に、表示した用量で照射を行ない、次いで、完全成長培地に100ng/ml CG53135−05大腸菌精製産物ありまたはなし(未処置)のいずれかでプレーティングし、コロニーが平均直径2mmに成長するまで、10〜14日間コロニーを形成させた。コロニーをクリスタルバイオレットで染色し、計測した。生存割合の自然log(Ln)をY軸に示し、バーは標準誤差を表す。
【図20−2】図20は、被照射細胞の生存曲線を示す。種々の細胞型(造血−32D;間質−CCDI8−C0およびNIH3T3;上皮−IEC18、IEC6ならびに骨−U2OSおよびSaos−2)に、表示した用量で照射を行ない、次いで、完全成長培地に100ng/ml CG53135−05大腸菌精製産物ありまたはなし(未処置)のいずれかでプレーティングし、コロニーが平均直径2mmに成長するまで、10〜14日間コロニーを形成させた。コロニーをクリスタルバイオレットで染色し、計測した。生存割合の自然log(Ln)をY軸に示し、バーは標準誤差を表す。
【図21】図21(A)は、NIH 3T3細胞におけるサイトカインの放出に対するCG53135の効果を示す。(B)は、CG53135に応答したIL−6およびIL−11発現を示す。
【図22】図22は、4Gy照射後にCG53135で処置したIEC18細胞由来のCM−HDCFDA蛍光の用量応答を示す。
【図23】図23は、2Gyおよび4Gy照射後にCG53135で処置したIEC18細胞由来のCM−HDCFDA蛍光の応答を示す。
【図24】図24は、4Gy照射後にCG53135で処置したCCD−18Co細胞由来のCM−HDCFDA蛍光の用量応答を示す。
【図25】図25は、4Gy照射後にCG53135で処置したIEC18細胞由来のRed CC−1蛍光用量応答を示す。
【図26】図26は、4Gyおよび6Gy照射後にCG53135で処置したIEC18細胞由来のRed CC−1蛍光の応答を示す。
【図27】図27は、10Gy照射の前および後でCG53135で処置したCCD−18Co細胞由来のRed CC−1蛍光応答を示す。
【図28】図28は、CG53135による脊髄の細胞株32Dのインビトロ放射線保護を示す。
【図29】図29は、骨髄除去に続く骨髄移植後の胸腺の再増殖に対するCG53135の効果を示す。
【図30】図30(A)および(B)は、全身照射によって誘発された胃腸の傷害を有する動物における体重に対するCG53135の効果を、それぞれ、一元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定によって解析したものを示す。
【図31】図31(A)および(B)は、全身照射によって誘発された胃腸の傷害を有するマウスにおける下痢スコアに対するCG53135の効果を、それぞれ、一元配置ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって解析したものを示す。
【図32】図32は、各日の観察結果の下痢スコアの解析を示す。
【図33】図33は、試験439の体重の相対減少/群を示す。
【図34】図34(A)は、3日間での平均下痢スコアを示す。図34(B)は、平均下痢の重篤度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、急速に増殖する組織を冒す傷害によって引き起こされる障害またはその1つ以上の症状を予防または処置する方法。
【請求項2】
前記傷害が、放射線曝露、化学薬品もしくは微生物への曝露、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、放射線曝露によって引き起こされる障害またはその1つ以上の症状を予防または処置する方法。
【請求項4】
前記障害が食事性粘膜炎である、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記障害が口腔粘膜炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記障害が胃腸の粘膜炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記障害が造血の障害である、請求項1または3に記載の方法。
【請求項8】
前記障害が、貧血、白血球減少症、血小板減少、汎血球減少症、または凝固障害である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記障害が、骨髄欠損、移植片対宿主病、放射線誘発型の前立腺炎、膣炎、尿道炎、または心臓血管/中枢神経系症候群である、請求項1または3に記載の方法。
【請求項10】
前記症状が、下痢、皮膚熱傷、ただれ、疲労、脱水症、炎症、脱毛症、消化管粘膜の潰瘍形成、口腔乾燥症、出血、またはそれらの組合せである、請求項1または3に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物の有効量が、放射線に曝露されることになる被験体、または放射線に曝露されたが、前記障害もしくはその症状が発現される前である前記被験体に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物の有効量が、放射線に曝露された被験体および障害またはその症状が発現した被験体に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物の有効量が、被験体に単回用量で投与される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物の単回用量が被験体に、該被験体が放射線に曝露される24時間前以内に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物の有効量が、被験体に2回以上の用量で投与される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が被験体に、該被験体が放射線に曝露される前および該被験体が放射線に曝露された後の両方で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が非経口経路によって投与される、請求項1または3に記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与または鼻腔内投与によるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、配列番号24のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項1または3に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、配列番号2、24、26、28、30および32のアミノ酸配列からなる群より選択される2種類以上の単離されたタンパク質を含む、請求項1または3に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1または3に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、0.02〜0.2M酢酸塩、0.5〜5%グリセロール、0.2〜0.5Mアルギニン−HCl、および0.5〜5mg/mlの前記単離されたタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、0.04M酢酸塩、3%グリセロール(容量/容量)、0.2Mアルギニン−HCl(pH5.3)、および0.8mg/mlの前記単離されたタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、0.01〜1Mの塩形態のアルギニン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムもしくはスクロース、約0.01〜0.1Mリン酸一ナトリウム(NaHPO−HO)、約0.01%〜0.1重量%/容量(「w/v」)のポリソルベート80またはポリソルベート20、および約0.005mg/ml〜約50mg/mlの前記単離されたタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記塩形態のアルギニンが、アルギニン、硫酸アルギニン、リン酸アルギニン、および塩酸アルギニンからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記塩形態のアルギニン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンナトリウムまたはスクロースが0.01〜0.7Mである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、塩形態のアルギニンを0.5Mの濃度で含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記リン酸一ナトリウムが0.05Mである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリソルベート80またはポリソルベート20が0.01%(w/v)である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記単離されたタンパク質が5〜30mg/mlの濃度である、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記単離されたタンパク質が10mg/mlの濃度である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、酸素スカベンジ経路を上方制御する方法。
【請求項33】
前記酸素スカベンジ経路が、1種類以上のスーパーオキシドジスムターゼ(「SOD」)を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記スーパーオキシドジスムターゼがCuZnSODまたはMnSODである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸素スカベンジ経路が、細胞外シグナル調節キナーゼ(「ERK」)、接着関連キナーゼ(「AKT」)、スーパーオキシドジスムターゼ、シクロオキシゲナーゼ−2(「COX2」)、およびNF−E2関連因子2(「NRF2」)からなる群より選択される遺伝子を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、被験体の細胞由来の内因性サイトカインまたは内因性ケモカインの分泌を刺激する方法。
【請求項37】
前記方法によって内因性サイトカインの分泌が刺激され、該サイトカインが、インターロイキン−1b(「IL−1b」)、IL−6、IL−7、IL−8、IL−11、または顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記方法によって内因性ケモカインの分泌が刺激され、該ケモカインが、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(「CXCL1」)または単球化学誘引物質タンパク質1(「MCP−1」)である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
(a)配列番号2、4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号2、4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、造血幹細胞増殖を刺激する方法。
【請求項40】
(a)配列番号2、4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号2、4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、造血幹細胞の生着を最適化する方法。
【請求項41】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、胃腸の幹細胞増殖を刺激する方法。
【請求項42】
(a)配列番号2、4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号2、4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、放射線損傷から造血組織を回復または保護する方法。
【請求項43】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している、タンパク質;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、放射線損傷から胃腸の組織を回復または保護する方法。
【請求項44】
(a)配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)(a)のタンパク質に対して1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質であって、ここで、該置換は、配列番号4、7、10、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40のアミノ酸配列の15%以下であり、1つ以上のアミノ酸置換を有する該タンパク質は細胞増殖刺激活性を保持している;および
(c)(a)または(b)のタンパク質のフラグメントであって、細胞増殖刺激活性を保持しているフラグメント
からなる群より選択される単離されたタンパク質を含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、被験体において、発疱薬への曝露に関連する障害またはその1つ以上の症状を予防または処置する方法。
【請求項45】
前記発疱薬がマスタードガスである、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−536382(P2007−536382A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513141(P2007−513141)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010732
【国際公開番号】WO2006/073417
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(301062363)キュラジェン コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】