説明

放射線撮像装置

【課題】装置全体の重量を増加させることなく、放射線変換パネルの感度を回復させる。
【解決手段】放射線撮像装置(20)は、放射線(16)を放射線画像に変換する放射線変換パネル(116)と、前記放射線変換パネル(116)に電力を供給し且つ外部から充電可能な電源部(270、272)と、前記放射線変換パネル(116)及び前記電源部(270、272)を収容する筐体(29)とを有し、前記電源部(270、272)の充電時の発熱により前記放射線変換パネル(116)が加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルを筐体内に収容した放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野において、被写体を透過した放射線を検出することにより該被写体の放射線画像を撮像する放射線撮像装置(以下、電子カセッテともいう。)が用いられている。電子カセッテでは、可搬性を向上させるために、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、放射線変換パネルに電力を供給するバッテリ等の電源部とを筐体内に収容している(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、例えば、放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換するシンチレータと、該シンチレータにより変換された電磁波を放射線画像に変換する光電変換層とから構成される放射線変換パネルにおいて、シンチレータがヨウ化セシウム(CsI)からなる場合、図19Aに示すように、該シンチレータの温度上昇によって放射線に対する前記シンチレータの感度が低下するので、放射線画像の画質が低下する可能性がある。なお、シンチレータがガドリニウム・オキサイド・サルファ(GOS)からなる場合、図19Bに示すように、該シンチレータの温度上昇に対する感度変化は極めて小さい。
【0004】
また、光電変換層がa−Siからなる場合には、図19Cに示すように、該光電変換層の温度上昇に起因して、前記光電変換層を構成する光電変換素子(フォトダイオード)の電磁波に対する感度が増加することにより、放射線画像の画質が低下する可能性もある。
【0005】
これは、光電変換層を構成するa−Siのフォトダイオードに電磁波(可視光)が入射することにより、浅いトラップ(欠陥)が多数発生する光劣化が惹起され、可視光から変換された電荷が前記トラップに一時的に捕捉されることに起因する。該光劣化は、前記フォトダイオードに入射される可視光の光量が大きい程(大線量の放射線の照射である程)発生しやすい。この場合、前記トラップに捕捉された電荷は、次の撮像時に入射された可視光によって励起され、該トラップから吐き出される。そのため、次の撮像時に、前記光電変換素子は、前記可視光から変換された新たな電荷に加え、前記トラップから吐き出された電荷も、放射線画像に応じた電気信号として出力する。しかも、前記トラップからの電荷の吐き出しは、温度上昇と共に発生しやすいため、図19Cに示すように、前記光電変換素子では、温度上昇に伴って、見掛け上、可視光に対する感度が増加する。
【0006】
しかしながら、このようなトラップは、光電変換層内のどの光電変換素子に発生するのかは分からないので、トラップからの電荷の吐き出しに起因した前記光電変換層での意図しない局所的な感度の増加は、放射線画像での画像ムラの原因となる。
【0007】
なお、前記光電変換層の温度上昇によって、トラップに捕捉された暗電流の電荷が多数吐き出され、該暗電流が増加する場合もあるが、前記暗電流は、極めて浅いトラップに捕捉されるため、可視光の入射がなくても、温度上昇による熱振動によって自然に吐き出される。
【0008】
このように、放射線変換パネルでは、温度変化に起因した感度変化や、局所的な感度変化に起因した画像ムラによって放射線画像の画質が低下する場合がある。
【0009】
なお、特許文献2には、CsIからなるシンチレータを加熱装置で加熱することにより、放射線の照射に起因した前記シンチレータの感度変化を削減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−170212号公報
【特許文献2】特開2003−107163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2の加熱装置が筐体に収容されていれば、電子カセッテの重量が増加して該電子カセッテの可搬性が却って低下する。
【0012】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、装置全体の重量を増加させることなく、放射線変換パネルの感度を回復させることが可能となる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮像装置は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、前記放射線変換パネルに電力を供給し且つ外部から充電可能な電源部と、前記放射線変換パネル及び前記電源部を収容する筐体とを有し、前記電源部の充電時の発熱により前記放射線変換パネルが加熱されることを特徴としている。
【0014】
このように、前記電源部の充電時の発熱を利用して前記放射線変換パネルを加熱するので、特許文献2の加熱装置が不要となり、この結果、装置全体の重量を増加させることなく前記放射線変換パネルの感度を回復させることが可能となる。なお、前記放射線変換パネルの加熱温度は、該放射線変換パネルの使用時の温度よりも高温であればよい。
【0015】
この場合、少なくとも充電時に前記電源部を前記放射線変換パネルに接触させれば、前記放射線変換パネルを確実に加熱することができる。
【0016】
また、前記電源部が少なくとも充電時に前記放射線変換パネルに面接触可能なシート状電池であれば、前記放射線変換パネルを均一に加熱することができる。これにより、前記放射線変換パネルの感度をムラなく回復することができ、この結果、感度回復後の前記放射線変換パネルを用いて被写体に対する放射線画像の撮像を行えば、画像ムラのない放射線画像を確実に取得することができる。
【0017】
ここで、上述した電源部(シート状電池)を用いた本発明の具体的構成(1)〜(7)について詳しく説明する。
【0018】
(1)前記放射線変換パネルは、前記放射線を他の波長の電磁波に変換するシンチレータと、該シンチレータにより変換された前記電磁波を前記放射線画像に変換する光電変換層とから構成され、前記シート状電池は、前記シンチレータ又は前記光電変換層と面接触可能であることが望ましい。これにより、前記シンチレータ又は前記光電変換層を均一に加熱することが可能となり、感度回復後の前記放射線変換パネルを用いて被写体に対する放射線画像の撮像を行えば、画像ムラのない高画質の放射線画像を容易に取得することができる。
【0019】
また、装置全体の軽量化を図ると共に、より高画質の放射線画像を取得する目的で、CsIからなるシンチレータを用いてもよい。
【0020】
ここで、前記CsIからなるシンチレータを用いた放射線変換パネルに対する加熱の必要性と、加熱による効果とについて、具体的に説明する。
【0021】
前記CsIからなるシンチレータは、図19Aに示すように、温度上昇に伴って前記放射線に対する感度が低下する。
【0022】
また、図20Aに示すように、前記放射線の累積の曝射線量(累積照射量)によって前記放射線に対する感度が低下する。
【0023】
これは、累積照射量の増加に伴って、前記CsIのシンチレータに深いトラップ(欠陥)が多数発生する光劣化が惹起され、この結果、次の撮像では、照射された放射線に関する情報(放射線画像情報)が前記トラップに捕捉されて、前記光電変換層に届かないからである。この場合、前記シンチレータ内のどの箇所に深いトラップが発生するのかは分からないため、前記トラップでの前記情報の捕捉に起因して、前記シンチレータでの意図しない局所的な感度変化(感度ムラ)が発生する。そのため、例えば、深いトラップが多数発生していれば、相対的に感度の大きい箇所(感度ムラの目立つ箇所)が局所的に発生する可能性がある。
【0024】
このような深いトラップの発生による感度低下に対しては、図20Bに示すように、使用温度Tを高くすれば(T1<T2)、累積照射量に対して感度を緩やかに低下させることができる(急激な感度低下を抑制することができる)。また、図20Cに示すように、高温状態で保管すれば前記感度が回復する。
【0025】
一方、[背景技術]の項目でも説明したように、光電変換層においては、該光電変換層を構成するa−Siの光電変換素子(フォトダイオード)に発生した浅いトラップに電荷が一時的に捕捉される。該トラップは、前記フォトダイオードに入射される可視光の光量が大きい程(大線量の放射線の照射である程)発生しやすい。そして、次の撮像時には、前記光電変換素子に入射された可視光によって前記電荷が励起され、該トラップから吐き出される。そのため、前記光電変換素子は、前記可視光から変換された新たな電荷に加え、前記トラップから吐き出された電荷も、放射線画像に応じた電気信号として出力する。この場合、前記光電変換層内のどの光電変換素子にトラップが発生するかは分からないため、前記トラップからの電荷の吐き出しに起因して、前記光電変換層での意図しない局所的な感度の増加(感度ムラ)が発生する。
【0026】
また、今回の撮像が大線量での放射線の照射であれば、前記CsIのシンチレータに深いトラップが多数発生すると共に、前記a−Siの光電変換層にも浅いトラップが多数発生し、さらには、多数の浅いトラップには電荷が一時的に捕捉される。これにより、図21Aに示すように、次の撮像では、深いトラップの形成に起因したCsIのシンチレータでの相対的に感度の大きな箇所の形成や、浅いトラップに捕捉された電荷の吐き出しにより、大きな感度変化Δとなって、見掛け上、放射線変換パネルの感度を大幅に増加させる原因となる。
【0027】
このように、CsIのシンチレータとa−Siの光電変換層との組み合わせにおいては、今回の撮像での放射線の照射量が大きい場合、次の撮像では、局所的に感度が大きくなって、放射線画像の画像ムラが目立ってしまうおそれがある。また、CsIに深いトラップが形成されると共に、a−Siに浅いトラップが形成される場合、図21Bに示すように、大きな感度変化Δが解消されるまでに数日程度を要する。
【0028】
そこで、本発明では、前記CsIからなるシンチレータと前記シート状電池とを面接触可能とすれば、前記シート状電池の熱で前記CsIからなるシンチレータと前記a−Siからなる光電変換層とを平面的に加熱(前記放射線変換パネルの使用温度よりも高温で平面的に加熱)できるので、前記光電変換層の浅いトラップに捕捉された電荷を吐き出させると共に、該浅いトラップを消失させる一方で、前記シンチレータの深いトラップも消失させることができる。この結果、前記シンチレータ及び前記光電変換層を均一に感度回復させることが可能となる。
【0029】
従って、本発明では、前記CsIからなるシンチレータと前記a−Siからなる光電変換層とを均一に加熱することで、前記シンチレータ及び前記光電変換層を確実に感度回復させて、前記シンチレータ及び前記光電変換層の性能を維持させることが可能となる。
【0030】
(2)上記(1)の場合において、前記放射線の照射方向に沿って、前記光電変換層、前記シンチレータ及び前記シート状電池の順に配置すれば、前記シンチレータの加熱を容易に行うことができると共に、前記放射線の照射による前記シート状電池の劣化も回避可能となる。
【0031】
(3)前記放射線撮像装置は、前記放射線変換パネルに向けて前記シート状電池を送出することにより前記シート状電池と前記放射線変換パネルとを面接触可能な送出機構をさらに有してもよい。前記送出機構により前記シート状電池を自動的に送出すれば、前記放射線変換パネルと面接触可能となるので、前記放射線変換パネルの加熱を効率よく行うことができる。
【0032】
この場合、前記送出機構は、前記シート状電池を巻き取り可能な巻取部と、前記巻取部に対して前記シート状電池の巻き取り及び引き出しを行わせる駆動部とから構成される。これにより、前記巻取部への前記シート状電池の巻き取りと、前記シート状電池の引き出しによる前記シート状電池と放射線変換パネルとの面接触とを効率よく行うことができる。
【0033】
また、2つの前記送出機構を用いて、前記シート状電池の一端部側を一方の送出機構の巻取部に巻き取り、前記シート状電池の他端部側を他方の送出機構の巻取部に巻き取り、前記シート状電池のうち、前記各巻取部から引き出された部分を前記放射線変換パネルと面接触可能としてもよい。これにより、前記シート状電池と前記放射線変換パネルとを確実に且つ効率よく面接触させることができる。
【0034】
さらに、前記シート状電池の少なくとも一部が前記巻取部に巻き取られている場合に、前記少なくとも一部を冷却部材で冷却することにより、前記巻芯に巻き取られた部分の熱が、前記放射線変換パネルや他の構成要素に不用意に伝達されることを回避することができる。
【0035】
(4)前記送出機構は、2本のローラと、該2本のローラを回転させることにより前記2本のローラ間で前記シート状電池を移動させる駆動部とから構成されてもよい。これにより、例えば、前記送出機構及び前記シート状電池をキャタピラ構造とした状態で該シート状電池を移動させて、前記放射線変換パネルと前記シート状電池とを面接触させることが可能となる。
【0036】
(5)前記筐体内のスペースを有効利用するために、前記筐体内における前記放射線変換パネルの周縁部に前記送出機構を配置してもよい。
【0037】
特に、前記筐体がモノコック構造の六面体であり、前記筐体の対向する2つの側面が外方に膨出していれば、前記筐体内における前記2つの側面近傍がデッドスペースとなりやすい。そこで、該デッドスペースに前記送出機構を配置することで、前記デッドスペースを有効活用することができる。
【0038】
なお、モノコック構造の筐体とすることで、装置全体の軽量化を実現できると共に、外部からの応力(例えば、前記筐体の落下、被写体からの荷重、外部からの衝撃)を筐体全体として受けることができ、この結果、該筐体の機械的強度を向上させることができることは勿論である。
【0039】
また、前記2つの側面を外方に向けて円弧状又はテーパ状に形成すれば、前記筐体の製造が容易になると共に、機械的強度が増加し、さらには、前記デッドスペースに前記送出機構を配置しやすくなる。
【0040】
(6)前記放射線を遮蔽するシート状の放射線遮蔽部材が前記シート状電池に連結されている場合に、前記放射線変換パネルへの前記放射線の入射時には、前記放射線変換パネルにおける前記放射線の入射面とは反対側の面に前記放射線遮蔽部材が配置されているか、前記反対側の面と離間して前記放射線遮蔽部材が配置されているか、又は、前記反対側の面と前記シート状電池との間に前記放射線遮蔽部材が配置されていればよい。これにより、前記反対側の面から離間して配置された他の構成要素(例えば、前記放射線変換パネルを制御するための制御モジュール)が前記放射線の照射により劣化することを阻止することができる。
【0041】
また、2枚の前記シート状電池を用い、前記放射線遮蔽部材の一端に一方のシート状電池を連結し、前記放射線遮蔽部材の他端に他方のシート状電池を連結し、いずれかのシート状電池が前記放射線変換パネルに面接触した状態で充電されていれば、いずれかのシート状電池を充電しつつ、前記放射線変換パネルを加熱することができる。
【0042】
また、複数の前記シート状電池を前記筐体内に収容することで、一方のシート状電池から電力供給を行っている最中に電池切れとなったときには、直ちに他方のシート状電池から電力供給を行えばよいので、撮像時に電池切れで前記放射線撮像装置が使用できなくなることを回避することができる。すなわち、複数の前記シート状電池を備えることにより、ホットスワップ機能を実現することもできる。
【0043】
なお、2枚の前記シート状電池は、同じ容量の電池であってもよいし、あるいは、互いに異なる容量の電池であってもよい。異なる容量の電池である場合には、例えば、撮影オーダで指定された撮像枚数や、前記放射線変換パネルの感度低下の状況に応じて、適切なシート状電池を選択し、選択したシート状電池を前記放射線変換パネルに面接触させて充電することにより、該シート状電池に対する充電と前記放射線変換パネルの感度回復とを、撮影オーダや感度低下の状況に応じて、適切に且つ効率よく行うことができる。
【0044】
(7)前記放射線撮像装置は、前記放射線変換パネルに対する前記電源部の接触の要否を判定する接触判定部と、前記接触判定部の判定結果に基づいて前記電源部を前記放射線変換パネルに接触させる接触機構とをさらに有してもよい。これにより、前記電源部を前記放射線変換パネルに確実に接触させることができる。
【0045】
この場合、前記接触機構は、前記筐体の厚み方向に沿って膨張又は収縮することにより前記電源部と前記放射線変換パネルとの接触制御を行うエアバッグと、前記エアバッグに不活性ガスを送り込んで該エアバッグを前記厚み方向に膨張させるインフレータとから構成される。これにより、前記電源部と前記放射線変換パネルとの接触を確実に且つ効率よく行うことができる。また、前記筐体の厚み方向に前記エアバッグを膨張させて前記電源部と前記放射線変換パネルとを接触させるので、該エアバッグの膨張時における前記放射線撮像装置の耐荷重性、耐衝撃性及び耐落下性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、電源部の充電時の発熱を利用して放射線変換パネルを加熱するので、特許文献2の加熱装置が不要となり、この結果、装置全体の重量を増加させることなく前記放射線変換パネルの感度を回復させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態に係る電子カセッテが適用される放射線撮像システムの構成図である。
【図2】図1の電子カセッテの斜視図である。
【図3】図2の筐体の分解斜視図である。
【図4】図4A及び図4Bは、図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6A及び図6Bは、図2のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】送出機構の要部断面図である。
【図8】筐体への放射線検出ユニットの収容を説明するための斜視図である。
【図9】筐体への電源ユニットの収容を説明するための斜視図である。
【図10】図9の電源ユニットの平面図である。
【図11】図11A〜図11Cは、放射線変換パネルに対する電源ユニットの配置を模式的に示す説明図である。
【図12】図12A及び図12Bは、放射線変換パネルの内部構成を示す断面図である。
【図13】図1の電子カセッテのブロック図である。
【図14】図1の電子カセッテを用いた被写体の撮像を説明するためのフローチャートである。
【図15】電子カセッテの他の構成を示す断面図である。
【図16】図16A及び図16Bは、図15の電子カセッテの断面図である。
【図17】図17A及び図17Bは、放射線変換パネルの内部構成を示す断面図である。
【図18】図18A及び図18Bは、電源ユニットがキャタピラー構造である場合を示す断面図である。
【図19】図19Aは、CsIからなるシンチレータでの温度と感度との関係を示すグラフであり、図19Bは、GOSからなるシンチレータでの温度と感度との関係を示すグラフであり、図19Cは、a−Siからなる光電変換素子での温度と感度との関係を示すグラフである。
【図20】図20A及び図20Bは、CsIからなるシンチレータでの累積照射量と感度との関係を示すグラフであり、図20Cは、CsIからなるシンチレータでの高温状態での保管時間と感度との関係を示すグラフである。
【図21】図21Aは、1回の照射量と感度との関係を示すグラフであり、図21Bは、経過日数と感度変化との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明に係る放射線撮像装置の好適な実施形態について、図1〜図18Bを参照しながら以下詳細に説明する。なお、実施形態の説明では、必要に応じて、図19A〜図21Bも参照しながら説明する。
【0049】
[本実施形態に係る放射線撮像装置の構成の説明]
先ず、本実施形態に係る放射線撮像装置としての電子カセッテ20について、図1〜図13を参照しながら説明する。
【0050】
図1は、本実施形態に係る電子カセッテ20が適用される放射線撮像システム10の構成図である。
【0051】
放射線撮像システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14である患者に対して、放射線16を照射する放射線源18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ20と、放射線源18及び電子カセッテ20を制御するコンソール22と、放射線画像を表示する表示装置24とを備える。
【0052】
コンソール22と電子カセッテ20と表示装置24との間には、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.60.a/b/g/n等の無線LAN(Local Area Network)、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0053】
コンソール22には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)26が接続され、RIS26には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)28が接続されている。
【0054】
図2は、図1に示す電子カセッテ20の斜視図である。
【0055】
電子カセッテ20は、撮影台12と被写体14との間に配置される略矩形状(六面体)の筐体29を有する。
【0056】
筐体29は、中空の角筒状のハウジング本体30と、ハウジング本体30の開口部分を両側から閉塞する2つの蓋部材32、34とを有するモノコック構造の筐体であり、外部からの応力(例えば、筐体29の落下、被写体14からの荷重、外部からの衝撃)を筐体29全体として受ける構造となっている。また、筐体29(のハウジング本体30及び蓋部材32、34)は、放射線16を透過可能なカーボンやプラスチック等の材料から形成されている。
【0057】
被写体14が横臥する筐体29の上面は、放射線16が照射される照射面36とされている。照射面36には、被写体14の撮像領域及び撮像位置を示すガイド線38が形成され、ガイド線38の外枠は、放射線16の最大照射範囲(照射野)を示す撮像可能領域40とされている。また、ガイド線38の中心位置(十字状に交差する2本のガイド線38の交点)は、該撮像可能領域40の中心位置である。
【0058】
図2及び図3に示すように、ハウジング本体30を構成する4つの側面42a〜42dのうち、側面42aと側面42bとの間にはx方向に沿って中空部41が形成され、中空部41に連通する側面42aの開口部44aを蓋部材32で閉塞すると共に、中空部41に連通する側面42bの開口部44bを蓋部材34で閉塞することにより、筐体29が構成される。従って、筐体29は、照射面36と、蓋部材32の側面52と、蓋部材34の側面81と、ハウジング本体30の2つの側面42c、42dを含む2つの側面43、45と、ハウジング本体30の底面47を含む底面46とを有する六面体として構成される。また、筐体29のy1方向の側面43は、y1方向に円弧状に膨出すると共に、筐体29のy2方向の側面45は、y2方向に円弧状に膨出している。従って、開口部44a、44bや中空部41は、y方向に沿った長円状に形成されている。
【0059】
蓋部材32のx2方向側の側面52には、電子カセッテ20を起動するための電源スイッチ54、各種情報を表示するディスプレイ56、外部から充電を行なうためのACアダプタの入力端子58、外部機器との間での情報の送受信や外部からの充電が可能なインターフェース手段としてのUSB(Universal Serial Bus)端子60、PCカード等のメモリカード62を装填するためのカードスロット64、及び、電子カセッテ20の各種の状況等を表示するLED等のインジケータ66が配設されている。
【0060】
また、電子カセッテ20では、インジケータ66とディスプレイ56とが配設されているが、インジケータ66の表示機能をディスプレイ56が代行することで、インジケータ66を不要にすることができる。また、ディスプレイ56での一部の表示機能をインジケータ66が代行することで、ディスプレイ56を不要にすることもできる。
【0061】
蓋部材32は、側面52を備え且つ電源スイッチ54、ディスプレイ56、入力端子58、USB端子60、カードスロット64及びインジケータ66が配設された蓋本体68と、該蓋本体68のx1方向側に形成され、開口部44aに嵌合可能な挿入部70と、挿入部70のy方向に沿った両端から開口部44aに向かって突出する係合片72とから構成されている。また、2つの係合片72の外側面(図3の左側の係合片72ではy1方向の側面、及び、右側の係合片72ではy2方向の側面)には係合凸部74が形成され、ハウジング本体30内壁の開口部44a側には、係合凸部74に係合可能な係合凹部76が形成されている。
【0062】
従って、蓋部材32をx1方向に進行させて、開口部44aと挿入部70とを嵌合させ、且つ、ハウジング本体30の中空部41に進入した2つの係合片72の係合凸部74と係合凹部76とをそれぞれ係合させると、蓋部材32とハウジング本体30とを一体化した状態で開口部44aを蓋部材32により閉塞することができる。
【0063】
一方、蓋部材34は、電源スイッチ54、ディスプレイ56、入力端子58、USB端子60、カードスロット64及びインジケータ66が配設されていない点を除いては、前述の蓋部材32と略同じ構成である。すなわち、蓋部材34は、蓋本体68と略同一形状であり且つ側面52と対向するx1方向の側面81を有する蓋本体80と、該蓋本体80のx2方向側に形成され、開口部44bに嵌合可能な挿入部82と、挿入部82のy方向に沿った両端から開口部44bに向かって突出する係合片84とから構成されている。また、2つの係合片84の外側面(図3の左側の係合片84ではy1方向の側面、及び、右側の係合片84ではy2方向の側面)にも係合凸部86が形成され、ハウジング本体30内壁の開口部44b側には、係合凸部86に係合可能な係合凹部88が形成されている。
【0064】
従って、蓋部材32の場合と同様に、蓋部材34をx2方向に進行させて、開口部44bと挿入部82とを嵌合させ、且つ、ハウジング本体30の中空部41に進入した2つの係合片84の係合凸部86と係合凹部88とをそれぞれ係合させると、蓋部材34とハウジング本体30とを一体化した状態で開口部44bを蓋部材34により閉塞することができる。
【0065】
図4A〜図6Bは、筐体29内を図示した電子カセッテ20の断面図である。
【0066】
ハウジング本体30の開口部44a、44bを2つの蓋部材32、34でそれぞれ閉塞することにより、筐体29内には、中空部41である室110が形成される。
【0067】
室110は、図4A及び図4Bに示すように、y方向に沿って長円状に形成されている。また、図4A、図4B、図6A及び図6Bに示すように、室110における筐体29の底面46(を構成するハウジング本体30の底面47)側には、ハウジング本体30の厚み方向(z方向)に膨張及び収縮が可能なエアバッグ258が配置されている。エアバッグ258は、一般的な自動車用のエアバッグと同様の構造を有し、後述するインフレータ348(図13参照)から送り込まれる不活性ガスによってz方向に膨張可能である。なお、エアバッグ258には、不活性ガスを排出する図示しない排出孔が形成されており、排出孔を介して不活性ガスを排出することにより、エアバッグ258を収縮することが可能である。また、エアバッグ258とインフレータ348とによって、後述する帯状部266を放射線変換パネル116に接触させる接触機構349が構成される。
【0068】
室110の側面42c、42d側におけるエアバッグ258の近傍には、円弧状の側面42c、42dに沿って2つの支持部材254がそれぞれ配置されている。各支持部材254は、図4A及び図4Bの側面視で略1/4円の形状であり、エアバッグ258側の角部には段差部256が形成されている。2つの段差部256に基台112の両端部を配置することにより、エアバッグ258上方に基台112を配置することができる。なお、図4A及び図4Bでは、一例として、各支持部材254に段差部256を形成した場合を図示しているが、エアバッグ258上方で基台112をスライド可能に支持できればよいので、該段差部256に代えてレール又は溝を形成し、前記レール又は前記溝に基台112をスライド可能に配置してもよい。また、基台112には、電子部品等を含む制御モジュール133が配置されている。
【0069】
室110の照射面36側には、ハウジング本体30の照射面36側を透過して該室110に入射した放射線16を放射線画像に変換する放射線変換パネル116が配置されている。放射線変換パネル116は、撮像可能領域40に対応する程度の大きさであることが望ましく、放射線16を透過可能な接着層260を介してハウジング本体30の照射面36側の内壁に接着されている。従って、図4Aのように、エアバッグ258がz1方向に収縮していれば、制御モジュール133と放射線変換パネル116とが離間した状態となる。
【0070】
放射線変換パネル116は、放射線16を可視光等の他の波長の電磁波に変換するシンチレータ118と、該シンチレータ118により変換された電磁波を電気信号に変換する光電変換層120とから構成された、いわゆる間接変換型の放射線検出器である。
【0071】
また、シンチレータ118と光電変換層120とは、熱による反りの発生を考慮して、分離可能な状態で積層してもよい。あるいは、シンチレータ118に光電変換層120を直接形成するか、又は、光電変換層120にシンチレータ118を直接形成してもよい。
【0072】
なお、図4A〜図6Bでは、放射線16の照射方向に沿って光電変換層120とシンチレータ118との順に配置された表面読取方式としてのISS(Irradiation Side Sampling)方式の放射線検出器を図示しているが、放射線16の照射方向に沿ってシンチレータ118と光電変換層120との順に配置された、裏面読取方式であるPSS(Penetration Side Sampling)方式の放射線検出器であってもよい。また、シンチレータ118としては、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)又はガドリニウム・オキサイド・サルファ(GOS)から構成されるシンチレータを用いればよい。さらに、本実施形態では、上述した間接変換型の放射線検出器に代えて、シンチレータ118を用いずに放射線16を電気信号に直接変換する、いわゆる直接変換型の放射線検出器を使用することも可能である。以下の説明では、ISS方式の放射線変換パネル116を用いた場合について説明する。
【0073】
図5に示すように、放射線変換パネル116(の光電変換層120)のx1方向の側面には、複数のフレキシブル基板126が所定間隔毎に配置され、各フレキシブル基板126にはIC128がそれぞれ配置されている。この場合、各フレキシブル基板126及び各IC128は、光電変換層120を駆動するための制御信号を光電変換層120に供給するためのフレキシブル基板及びICと、制御信号の供給によって駆動された光電変換層120から放射線画像に応じた電気信号を読み出すためのフレキシブル基板及び前記電気信号に対して所定の信号処理を行うICとに、それぞれ割り当てられている。なお、図6A及び図6Bに示すように、各フレキシブル基板126は、制御モジュール133に接続されている。
【0074】
そして、上述した基台112、放射線変換パネル116、フレキシブル基板126、IC128及び制御モジュール133により、放射線16を検出して放射線画像に変換するための放射線検出ユニット250が構成される。
【0075】
一方、放射線変換パネル116と制御モジュール133との間には、電源ユニット252が配設されている。
【0076】
電源ユニット252は、図4A〜図5に示すように、室110における側面42c、42d近傍にそれぞれ配置された2つの巻取部262、264と、各巻取部264、264から引き出されて、放射線変換パネル116と制御モジュール133との間に配置される帯状部266とを有する。
【0077】
前述のように、筐体29の側面43、45は、外方に円弧状に膨出した形状となっており、室110における側面42c、42d近傍の箇所(支持部材254上方の略半円のスペース)は、放射線検出ユニット250が配置されないデッドスペースとなる。そこで、電子カセッテ20では、これらのデッドスペースを有効利用する目的で、電源ユニット252の2つの巻取部262、264を前記各デッドスペースにそれぞれ配置している。従って、2つの巻取部262、264は、放射線検出ユニット250(を構成する放射線変換パネル116)の周縁部に配置されることになる。
【0078】
巻取部262、264は、帯状部266を巻き取ると共に、室110に配置された放射線検出ユニット250に対する緩衝材として機能させるために、樹脂製の中空円筒であることが望ましい。従って、帯状部266は、巻取部262、264に巻き取り可能な程度の可撓性を有する。
【0079】
また、帯状部266は、図4Aに示すシート状の放射線遮蔽部材268と、図4Bに示すシート状電池(電源部)270、272とから構成され、放射線変換パネル116と略同じ平面積となるように、2つの巻取部262、264から引き出されている(図4A〜図6B参照)。
【0080】
ここで、放射線遮蔽部材268は、放射線16を遮蔽可能な鉛又は銅のシートである。一方、シート状電池270、272は、電子カセッテ20の各部に電力供給が可能なバッテリであり、外部からの充電が可能なシート型のポリマーリチウムイオン二次電池が望ましい。なお、シート状電池270は、被写体14に対する放射線画像の撮像回数が比較的少ない場合に電力供給を行うことができる比較的小容量のバッテリであり、シート状電池272は、撮像回数が比較的多い場合に電力供給を行うことができる比較的大容量のバッテリである。
【0081】
前述のように、巻取部262、264が樹脂製の中空円筒であり、帯状部266が可撓性を有し、シート状電池270、272がポリマーリチウムイオン二次電池である。そのため、電源ユニット252は、室110における緩衝材として機能し、電子カセッテ20の耐落下性能を向上させることが可能である。
【0082】
図4A及び図6Aに示すように、エアバッグ258がz1方向に収縮している状態では、放射線変換パネル116と、帯状部266と、制御モジュール133とがz方向に沿って互いに離間している。この場合、2つの巻取部262、264から放射線遮蔽部材268が引き出された状態で、放射線16が照射面36に照射されると、ハウジング本体30の照射面36側を透過して室110に入射した放射線16は、放射線変換パネル116で放射線画像に変換される。また、一部の放射線16が放射線変換パネル116を通り抜けた場合でも、該一部の放射線16は、放射線遮蔽部材268で遮蔽されるので、制御モジュール133への放射線16の照射が阻止される。
【0083】
ところで、電子カセッテ20の軽量化を図る目的で、CsIからなるシンチレータ118を用いた場合、図19Aに示すように、該シンチレータ118の温度上昇によって放射線16に対するシンチレータ118の感度が低下し、この結果、放射線画像の画質が低下する可能性がある。
【0084】
また、図20Aに示すように、放射線16の累積の曝射線量(累積照射量)の増加によって放射線16に対するシンチレータ118の感度が低下する。
【0085】
これは、累積照射量の増加に伴って、CsIのシンチレータ118に深いトラップ(欠陥)が多数発生する光劣化が惹起され、この結果、次の撮像では、照射された放射線16に関する情報(放射線画像情報)が深いトラップに捕捉されて、光電変換層120に届かないからである。この場合、シンチレータ118内のどの箇所に深いトラップが発生するかは分からないため、深いトラップでの前記情報の捕捉に起因して、シンチレータ118での意図しない局所的な感度変化(感度ムラ)が発生する。そのため、例えば、深いトラップが多数発生していれば、相対的に感度の大きい箇所(感度ムラの目立つ箇所)が局所的に発生する可能性がある。
【0086】
このような深いトラップの発生による感度低下に対しては、図20Bに示すように、使用温度Tを高くすれば(T1<T2)、累積照射量に対して感度を緩やかに低下させることができ(急激な感度低下を抑制することができる)、その一方で、図20Cに示すように、高温状態で保管すれば感度は回復する。
【0087】
なお、GOSからなるシンチレータ118では、図19Bに示すように、温度変化に対する感度の変化は小さい。
【0088】
また、光電変換層120についても、温度変化によって電磁波に対する該光電変換層120の感度が変化し、放射線画像の画質が低下する可能性がある。
【0089】
例えば、a−Siからなる光電変換層120では、光強度の大きな可視光が入射されるとSiのダングリングボンドが増加して導電率が劣化するステブラー・ロンスキー(Staebler−Wronski)効果が発生する。これにより、Siでの欠陥密度が増加して、光電変換層120内でのキャリアの移動が阻害されてしまう。但し、欠陥密度は、可視光の入射によって増加するが、該入射が続くと飽和する。また、欠陥密度は、Siに熱が加わることで時間経過と共に減少する。
【0090】
さらに詳しく説明すると、光電変換層120においては、該光電変換層120を構成するa−Siの光電変換素子(フォトダイオード)に発生した浅いトラップに電荷が一時的に捕捉される。該トラップは、フォトダイオードに入射される可視光の光量が大きい程(大線量の放射線16の照射である程)発生しやすい。そして、次の撮像時には、光電変換素子に入射された可視光によって電荷が励起され、浅いトラップから吐き出される。従って、光電変換素子は、可視光から変換された新たな電荷に加え、浅いトラップから吐き出された電荷も、放射線画像に応じた電気信号として出力する。この場合、光電変換層120内のどの光電変換素子に浅いトラップが発生するかは分からないため、浅いトラップからの電荷の吐き出しに起因して、光電変換層120での意図しない局所的な感度の増加(感度ムラ)が発生する。
【0091】
しかも、今回の撮像が大線量での放射線16の照射であれば、シンチレータ118に深いトラップが多数発生すると共に、光電変換層120にも浅いトラップが多数発生し、これらの浅いトラップに電荷が一時的に捕捉される。そのため、図21Aに示すように、次の撮像では、深いトラップの発生に起因したシンチレータ118での相対的に感度の大きな箇所の発生や、浅いトラップに捕捉された電荷の吐き出しにより、大きな感度変化Δとなって、見掛け上、放射線変換パネル116の感度を大幅に増加させてしまう。
【0092】
このように、CsIのシンチレータ118とa−Siの光電変換層120と空構成される放射線変換パネル116においては、今回の撮像での放射線16の照射量が大きい場合、次の撮像では、局所的に感度が大きくなって、放射線画像の画像ムラが目立ってしまうおそれがある。また、CsIに深いトラップが発生すると共に、a−Siに浅いトラップが発生する場合、図21Bに示すように、大きな感度変化Δが解消されるまでに数日程度を要する。
【0093】
このように、放射線変換パネル116では、温度変化に起因した感度変化や、局所的な感度変化に起因した画像ムラによって放射線画像の画質が低下する場合があるため、加熱によって感度を回復できることが望ましい。しかしながら、放射線変換パネル116を加熱する加熱装置を筐体29内に内蔵させると、電子カセッテ20の重量が増加して可搬性が低下するおそれがある。
【0094】
そこで、本実施形態に係る電子カセッテ20では、図4B及び図6Bに示すように、電源ユニット252を構成する2つの巻取部262からシート状電池270又はシート状電池272を引き出した状態で、エアバッグ258をz2方向に膨張させて基台112及び制御モジュール133をz2方向に変位させることにより、基台112と、制御モジュール133と、シート状電池270又はシート状電池272とを放射線変換パネル116に押し付ける。この状態で、外部から入力端子58又はUSB端子60を介してシート状電池270又はシート状電池272を充電することにより、充電による発熱で放射線変換パネル116(を構成するCsIからなるシンチレータ118)を加熱して、該シンチレータ118の感度を回復するようにしている。
【0095】
この場合、シンチレータ118と光電変換層120とが積層されているので、シート状電池270又はシート状電池272の充電による発熱で、CsIからなるシンチレータ118に加え、a−Siからなる光電変換層120も加熱して感度回復させることが可能である。すなわち、シート状電池270又はシート状電池272の熱でCsIからなるシンチレータ118とa−Siからなる光電変換層120とを平面的に加熱(放射線変換パネル116の使用温度よりも高温で平面的に加熱)するため、光電変換層120の浅いトラップに捕捉された電荷を吐き出させると共に、該浅いトラップを消失させる一方で、シンチレータ118の深いトラップも消失させて、シンチレータ118及び光電変換層120を均一に感度回復させる。
【0096】
なお、シンチレータ118がGOSからなる場合には、GOSからなるシンチレータ118を介して光電変換層120を加熱することにより、該光電変換層120の感度回復に加え、残像の低減も可能である。
【0097】
図5及び図7に示すように、室110の側面42c側に配置された巻取部262内には、帯状部266が巻回され且つ電気的に絶縁された巻芯274がx方向に貫通している。巻芯274のx1方向の端部は、蓋部材34に接触する支持部材276に嵌合する。また、巻芯274のx2方向の端部は、蓋部材32に接触するモータ(駆動部)278に連結されている。そして、巻取部262、巻芯274及びモータ278によって、帯状部266を送出する送出機構279が構成される。
【0098】
一方、室110の側面42d側に配置された巻取部264内には、帯状部266が巻回され且つ電気的に絶縁された巻芯280がx方向に貫通している。巻芯280のx1方向の端部は、蓋部材34に接触する支持部材282に嵌合する。また、巻芯280のx2方向の端部は、蓋部材32に接触するモータ(駆動部)284に連結されている。そして、巻取部264、巻芯280及びモータ284によって、帯状部266を送出する送出機構285が構成される。
【0099】
図7に示すように、巻芯274、280は、x1方向側の端部を構成する中空の円筒部材290と、円筒部材290に連結し且つモータ278、284にまで延在する中空の円筒部材(冷却部材)292とからそれぞれ構成されている。この場合、帯状部266は、大部分が円筒部材292にかかり、x1方向側の一部が円筒部材290にかかるように巻芯274、280に巻回される。
【0100】
円筒部材290の中空部分には、ワイヤ294、296が配置されている。各ワイヤ294、296の一端部は、巻芯274、280に巻回されたシート状電池270、272のx1方向側の端部に接続されている。また、各ワイヤ294、296の他端部は、巻芯274、280のx1方向の端部(円筒部材290のx方向側)に設けられた接続端子298、300にそれぞれ接続されている。この場合、ワイヤ294、296のうち、一方のワイヤは、シート状電池270、272の正極側に接続される電線であり、他方のワイヤは、シート状電池270、272の負極側に接続される電線である。
【0101】
なお、巻芯274、280は、円筒部材290、292から構成されるので、接続端子298は、巻芯274、280のx方向に沿った中心軸90x上に設けられると共に、接続端子300は、接続端子298を中心として同心円状に設けられていることが望ましい。
【0102】
前述のように、巻芯274、280(を構成する円筒部材290)のx1方向側の端部は、支持部材276、282にそれぞれ嵌合している。そのため、円筒部材290と嵌合する支持部材276、282の凹部には、各接続端子298、300に対向するように、接続端子302、304がそれぞれ設けられている。この場合、各接続端子298、300、302、304は、板バネやコネクタ等のように、機械的な接続により電気的に接続されるものであればよい。
【0103】
従って、巻芯274、280の円筒部材290が支持部材276、282の凹部にそれぞれ嵌合することにより、接続端子298と接続端子302、及び、接続端子300と接続端子304がそれぞれ電気的に接続されていれば、外部から入力端子58又はUSB端子60と、接続端子302、304と、接続端子298、300と、ワイヤ294、296とを介してシート状電池270、272を充電することが可能となる。また、シート状電池270、272からワイヤ294、296と、接続端子298、300と、接続端子302、304とを介して、電子カセッテ20内の各部に電力供給を行うことも可能となる。
【0104】
一方、円筒部材292は、ネジ部材310によって円筒部材290のx2方向側と螺合することにより該円筒部材290と同軸に連結される。円筒部材292の中空部312には、巻芯274、280に巻回されたシート状電池270、272を冷却するための冷却液体316が充填され、蓋部材314により密封されている。従って、ネジ部材310を回して円筒部材290から円筒部材292を取り外した状態で冷却液体316の充填又は交換を行ってもよいし、ネジ部材310と円筒部材290とを螺合させて、巻芯274、280を構成した状態で冷却液体316の充填又は交換を行ってもよい。
【0105】
巻芯274、280(を構成する円筒部材292)のx2方向側の端部は、中空部312に冷却液体316が充填された状態でモータ278、284に挿入されている。従って、モータ278、284の駆動作用下にモータ軸としての巻芯274、280が回転することにより、巻取部262、264から帯状部266(放射線遮蔽部材268、シート状電池270、272)を引き出し、あるいは、巻取部262、264に帯状部266を巻き取ることが可能となる。
【0106】
蓋部材34に接触する支持部材276、282は、2つのバネ部材306、308によって上下方向(z方向)に支持されている。また、モータ278、284も2つのバネ部材318、320によって上下方向に支持されている。従って、巻芯274、280が支持部材276、282及びモータ278、284によってそれぞれ支持されることにより、巻取部262、264を含む電源ユニット252が室110で上下方向に支持される。
【0107】
また、エアバッグ258がz方向に膨張又は収縮することにより、巻取部262、264から引き出された帯状部266がz方向に変位した場合、巻取部262、264及び巻芯274、280を介して支持部材276、282及びモータ278、284もz方向に変位可能である。この結果、エアバッグ258のz方向への膨張又は収縮に起因して、室110において電源ユニット252を全体的にz方向に変位させることができる。
【0108】
図8及び図9は、筐体29への放射線検出ユニット250及び電源ユニット252の組み込みを説明するための斜視図である。
【0109】
先ず、図8に示すように、ハウジング本体30の開口部44bから中空部41(室110)に放射線検出ユニット250を挿入する。この場合、ハウジング本体30の底面47側にエアバッグ258及び2つの支持部材254を予め配置し、エアバッグ258を収縮状態としておけば、フレキシブル基板126及びIC128をx1方向に向けた状態で、2つの支持部材254の段差部256に基台112の両端部を配置して、放射線検出ユニット250をx2方向にスライドさせれば、該放射線検出ユニット250を中空部41に容易に配置することができる。なお、段差部256の代わりにレール又は溝が形成されている場合でも、前記レール又は前記溝に沿って基台112をx2方向にスライドさせるだけで、放射線検出ユニット250を中空部41に配置可能である。
【0110】
次に、放射線変換パネル116をハウジング本体30の照射面36側の内壁に接着層260を介して接着させる。接着層260(図4A、図4B、図6A及び図6B参照)の接着方法としては、例えば、前記内壁と放射線変換パネル116との間にホットメルト樹脂を介在させた後に、該接着層260を加熱して流動化させ、その後、接着層260を冷却して硬化させるとよい。放射線変換パネル116の接着後、開口部44bを蓋部材34で閉塞して、ハウジング本体30と蓋部材34とを一体化させる。
【0111】
次に、図9に示すように、ハウジング本体30の開口部44aから中空部41(室110)に電源ユニット252を挿入する。この場合、エアバッグ258を収縮状態としておけば、放射線変換パネル116と基台112との間に帯状部266を挿入するためのスペースが確保できるので、中空部41に電源ユニット252を挿入しやすくなる。また、放射線検出ユニット250のフレキシブル基板126及びIC128がx1方向側に配置されているので、電源ユニット252の挿入時に、フレキシブル基板126及びIC128と電源ユニット252とが干渉することもない。
【0112】
そして、巻芯274、280(の円筒部材290)のx1方向の端部を蓋部材34に設けられた支持部材276、282にそれぞれ嵌合させ、次に、巻芯274、280(の円筒部材292)のx2方向の端部が蓋部材32に設けられたモータ278、284に挿入されるように、ハウジング本体30の開口部44aを蓋部材32で閉塞する。これにより、ハウジング本体30と蓋部材32とが一体化されて筐体29内に室110が形成されると共に、該室110に放射線検出ユニット250及び電源ユニット252を収容することができる。
【0113】
なお、筐体29から放射線検出ユニット250及び電源ユニット252を取り出す場合には、上述した挿入方向とは逆方向に各開口部44a、44bからそれぞれ取り出せばよい。
【0114】
このように、ハウジング本体30の2つの開口部44a、44bのうち、一方の開口部44bから放射線検出ユニット250を出し入れし、他方の開口部44aから電源ユニット252を出し入れするので、出し入れ時における放射線検出ユニット250と電源ユニット252との干渉の発生を回避することができる。
【0115】
図10は、電源ユニット252の一構成例であり、巻取部262から比較的小容量のシート状電池270が引き出される一方で、巻取部264から比較的大容量のシート状電池272が引き出され、各シート状電池270、272間にシート状の放射線遮蔽部材268が連結されている。
【0116】
従って、放射線16の照射時(図4A及び図6A参照)には、平面視で、放射線遮蔽部材268と放射線変換パネル116とが重なり合うように、モータ278、284(図5及び図7参照)を駆動して巻取部262、264から放射線遮蔽部材268を引き出せばよい。
【0117】
また、シート状電池270の充電中(図4B及び図6B参照)は、平面視で、シート状電池270と放射線変換パネル116とが重なり合うように、モータ278、284を駆動して巻取部262からシート状電池270を引き出すと共に、放射線遮蔽部材268及びシート状電池272を巻取部264に巻き取ればよい。
【0118】
さらに、シート状電池272の充電中は、平面視で、シート状電池272と放射線変換パネル116とが重なり合うように、モータ278、284を駆動して巻取部264からシート状電池272を引き出すと共に、放射線遮蔽部材268及びシート状電池270を巻取部262に巻き取ればよい。
【0119】
なお、図10では、異なる容量の2つのシート状電池270、272を用いた場合を図示しているが、同じ容量(大容量又は小容量)のシート状電池を用いてもよいし、3つ以上のシート状電池を用いてもよいことは勿論である。
【0120】
図11A〜図11Cは、放射線変換パネル116と電源ユニット252との配置関係を示す説明図である。
【0121】
図11Aのように、放射線16の照射時には、放射線変換パネル116から離間して放射線遮蔽部材268を配置することにより、放射線遮蔽部材268直下の制御モジュール133(図4A、図4B、図6A及び図6B参照)に放射線16が照射されることを阻止することができる。
【0122】
また、図11Bのように、シート状電池270、272の充電中は、放射線変換パネル116にシート状電池270、272を接触させた状態で充電を行なうことにより、充電による発熱で放射線変換パネル116を加熱させて、該放射線変換パネル116の感度回復や残像の低減化を実現することができる。
【0123】
さらに、図11Cのように、放射線16の照射時に、放射線変換パネル116に放射線遮蔽部材268又はシート状電池270、272を接触させてもよい。放射線遮蔽部材268を放射線変換パネル116に接触させた場合には、制御モジュール133への放射線16の照射を阻止することができる。
【0124】
また、放射線16は、放射線変換パネル116で放射線画像に変換されるので、一部の放射線16が放射線変換パネル116を通り抜けることがなければ、シート状電池270、272を放射線変換パネル116に接触させてもよい。従って、シート状電池270、272を放射線変換パネル116に接触させた場合には、撮像中であっても、シート状電池270、272の熱で放射線変換パネル116を均一に温めることができる。
【0125】
図12Aは、光電変換層120にCsIのシンチレータ118が直接蒸着されている場合を図示したものである。
【0126】
この場合、光電変換層120は、接着層260を介してハウジング本体30の照射面36側の内壁に接着された可撓性を有するプラスチック基板等の蒸着基板330と、蒸着基板330に形成されたa−Si等からなる薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor;TFT)層332と、TFT層332上に形成されたa−Si等からなるフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換膜334とから構成されている。
【0127】
CsIのシンチレータ118は、CsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を真空蒸着法により短冊状の柱状結晶構造336として光電変換膜334上に形成したものである。なお、CsI(Tl)のシンチレータ118は、柱状結晶構造336が湿度に弱いという特性を有するので、ポリパラキシリレン樹脂からなる光透過性の防湿保護材338で封止されている。また、防湿保護材338の帯状部266側には、アルミニウム等からなる金属の反射層340が形成されている。反射層340は、柱状結晶構造336で放射線16から変換された可視光が帯状部266側に進行してきた場合に、該可視光を光電変換膜334側に反射させるために用いられる。
【0128】
図12Bは、CsIのシンチレータ118に光電変換層120を形成した場合を図示したものである。
【0129】
この場合、CsIのシンチレータ118は、アルミニウム等からなる金属の蒸着基板342上に真空蒸着法により柱状結晶構造336を形成し、該柱状結晶構造336を防湿保護材338で封止している。また、防湿保護材338の照射面36側にa−Si等からなる光電変換膜334と、a−Si等からなるTFT層332とが順に形成され、該TFT層332が接着層260を介してハウジング本体30の照射面36側の内壁に接着されている。なお、蒸着基板342は、柱状結晶構造336で放射線16から変換された可視光が帯状部266側に進行してきた場合に、該可視光を光電変換膜334側に反射する。
【0130】
図13は、電子カセッテ20のブロック構成図である。
【0131】
光電変換層120は、放射線16(図1、図2、図4A、図6A及び図11A参照)を電荷に変換して蓄積可能なpin型のフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換素子140と、スイッチング素子としてのTFT142とを有する。なお、前述した光電変換膜334が光電変換素子140に対応し、TFT層332がTFT142に対応する。また、図13では、光電変換素子140がpin型のフォトダイオードである場合を図示している。
【0132】
この場合、光電変換層120では、図12Aの蒸着基板330の一面又は図12BのTFT層332の一面に複数の信号線144とゲート線146とを互いに交差させるように配設し、各ゲート線146と各信号線144とにより区画された小領域に光電変換素子140とTFT142とをそれぞれ設けることで、複数の光電変換素子140及び複数のTFT142を二次元マトリクス状に配列させている。また、1つの光電変換素子140には1本のバイアス線148が接続され、各バイアス線148は、1本の結線150を介してバイアス電源172に接続されている。
【0133】
ここで、光電変換素子140のアノード電極は、バイアス線148に接続され、カソード電極は、TFT142のソース電極Sに接続されている。一方、TFT142のゲート電極Gは、ゲート線146を介してゲート駆動回路152に接続され、ドレイン電極Dは、信号線144を介して信号読出回路154に接続されている。この場合、ゲート駆動回路152は、複数のIC128に対応する放射線変換パネル116を駆動するための駆動回路部であり、一方で、信号読出回路154は、複数の他のIC128に対応する放射線画像に応じた電気信号を読み出す読出回路部である。
【0134】
バイアス電源172は、結線150及び各バイアス線148を介して各光電変換素子140に逆方向にバイアス電圧(逆バイアス電圧)を印加する。なお、図13では、pin型の光電変換素子140のp層側にアノード電極を介してバイアス線148が接続されているので、バイアス電源172からは、光電変換素子140のアノード電極に結線150及びバイアス線148を介して逆バイアス電圧として負の電圧(カソード電極よりも所定電圧以上低い電圧であればよい。)が印加されるようになっている。なお、光電変換素子140のpin型の積層順を逆に形成して(光電変換素子140の極性が逆となるように形成して)カソード電極にバイアス線148を接続する場合には、バイアス電源172からはカソード電極に逆バイアス電圧として正の電圧(アノード電極よりも所定電圧以上高い電圧であればよい。)が印加される。その場合には、図13における光電変換素子140のバイアス電源172に対する接続の向きが逆向きになる。
【0135】
ゲート駆動回路152からゲート線146を介してTFT142のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧(制御信号)が印加されると、TFT142のゲートが開き、光電変換素子140に蓄積された電荷、すなわち、電気信号(放射線画像信号)が、TFT142のソース電極Sを介してドレイン電極Dから信号線144に読み出される。
【0136】
信号読出回路154では、各信号線144に対して、増幅器160、サンプルホールド回路162、マルチプレクサ164及びAD変換器166が順に接続されている。従って、各信号線144を介して読み出された電気信号は、チャージアンプからなる増幅器160によって増幅され、サンプルホールド回路162によってサンプリングされた後、マルチプレクサ164を介してAD変換器166に順次供給され、デジタル信号(デジタル値)に変換される。AD変換器166は、デジタル値に変換された各光電変換素子140の電気信号を後述するカセッテ制御部174に順次出力する。
【0137】
また、電子カセッテ20は、装置全体を制御するための制御部170を有する。
【0138】
制御部170は、前述した電源スイッチ54、ディスプレイ56、入力端子58、USB端子60、カードスロット64、インジケータ66、電源部94及びバイアス電源172に加え、放射線変換パネル116、ゲート駆動回路152及び信号読出回路154等を制御するカセッテ制御部174と、コンソール22との間で無線通信により信号の送受信を行う通信部176と、シート状電池270、272の電圧を所望の電圧に変換して電子カセッテ20内の各部に供給可能なDC/DCコンバータ等の電力変換回路である電源回路178とを有する。なお、バイアス電源172、カセッテ制御部174、通信部176及び電源回路178は、前述した制御モジュール133(図4A、図4B、図6A、図6B、図8及び図9参照)に含まれる。
【0139】
カセッテ制御部174は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、図示しないCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。
【0140】
具体的に、カセッテ制御部174は、画像メモリ182、残量検出部184、記憶部186、接触動作判定部350、エアバッグ制御部352及び電源制御部354を有する。
【0141】
画像メモリ182は、放射線変換パネル116から信号読出回路154を介して取得した放射線画像を記憶する。残量検出部184は、現在使用しているシート状電池270又はシート状電池272の残量を検出する。記憶部186は、電子カセッテ20を特定するためのカセッテID情報を記憶する。
【0142】
接触動作判定部350は、電源ユニット252を構成する帯状部266(放射線遮蔽部材268、シート状電池270、272)を放射線変換パネル116に接触させるべきか否かを判定する。
【0143】
エアバッグ制御部352は、帯状部266と放射線変換パネル116との接触が必要であると接触動作判定部350が判定した場合には、インフレータ348を制御して、エアバッグ258を膨張させる。インフレータ348は、図示しない点火剤を点火して窒素ガス又はヘリウムガス等の不活性ガスを発生させ、発生した不活性ガスをエアバッグ258に送り込む。エアバッグ258は、インフレータ348から不活性ガスが送り込まれると、そのガス圧によりz2方向に膨張する。
【0144】
また、エアバッグ制御部352は、帯状部266と放射線変換パネル116との接触が不要と接触動作判定部350が判定した場合には、インフレータ348に対する制御を行わない(エアバッグ258を収縮状態にするか、あるいは、該エアバック258の収縮状態を維持する)。
【0145】
電源制御部354は、シート状電池270又はシート状電池272と放射線変換パネル116との接触が必要と接触動作判定部350が判定した場合には、モータ278、284を駆動させて、巻取部262、264からシート状電池270又はシート状電池272を引き出させる。
【0146】
また、電源制御部354は、放射線遮蔽部材268と放射線変換パネル116との接触が必要と接触動作判定部350が判定した場合や、シート状電池270又はシート状電池272と放射線変換パネル116との接触を停止すべきと接触動作判定部350が判定した場合には、モータ278、284を駆動させて、巻取部262、264から放射線遮蔽部材268を引き出す一方で、シート状電池270及びシート状電池272を巻き取る。
【0147】
さらに、電源制御部354は、シート状電池270又はシート状電池272と放射線変換パネル116との接触を停止すべきと接触動作判定部350が判定した場合であっても、エアバッグ258の収縮によってシート状電池270又はシート状電池272と放射線変換パネル116とが離間するのであれば、モータ278、284の駆動を禁止する。
【0148】
[本実施形態に係る放射線撮像装置の動作]
次に、本実施形態に係る電子カセッテ20を含む放射線撮像システム10の動作について、図14のフローチャートに従って説明する。なお、この動作説明では、必要に応じて、図1〜図13も参照しながら説明する。
【0149】
ここでは、一例として、放射線16の照射前に、図11Bに示す状態で、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272に対する充電と、充電による発熱を利用した放射線変換パネル116の感度回復とを行い、その後、図11Aに示す状態で、放射線16の照射が行われる場合について説明する。
【0150】
先ず、ステップS1において、ユーザは、病院内の放射線科等の所定の保管場所から撮影台12(図1参照)にまで電子カセッテ20を運搬する。この場合、電子カセッテ20は、電源回路178(図13参照)がカセッテ制御部174にのみ電力供給を行って、該カセッテ制御部174のみが動作しているスリープ状態である。
【0151】
なお、電子カセッテ20の運搬中における放射線検出ユニット250及び電源ユニット252のがたつきを防止するために、接触動作判定部350は、インフレータ348を制御して、エアバッグ258を膨張させてもよい。この場合、インフレータ348が点火剤を点火して不活性ガスを発生させれば、該不活性ガスがエアバッグ258に送り込まれ、エアバッグ258は、前記不活性ガスのガス圧によりz2方向に膨張する。これにより、基台112、制御モジュール133及び帯状部266が放射線変換パネル116に押し付けられてz方向に位置決め固定されるので、運搬時における電子カセッテ20の耐落下性や耐衝撃性が向上し、この結果、放射線検出ユニット250及び電源ユニット252をがたつかせることなく電子カセッテ20を運搬することができる。
【0152】
次に、ユーザは、照射面36を上方に向けた状態で電子カセッテ20を撮影台12に配置した後に、電源スイッチ54を投入する。これにより、先ず、カセッテ制御部174は、該カセッテ制御部174に加え、ディスプレイ56、インジケータ66及び通信部176にも電力供給を行うように電源部94を制御する。この結果、ディスプレイ56は、電子カセッテ20の起動を画面表示する。また、インジケータ66は、LED等によって電子カセッテ20の起動を示す発光を行う。ユーザは、ディスプレイ56の画面表示又はインジケータ66の発光を視認することにより、電子カセッテ20が起動したことを把握することができる。さらに、通信部176は、コンソール22との間での無線による信号の送受信が可能となる。
【0153】
次に、ユーザは、コンソール22を操作することにより、撮像対象である被写体14に関わる被写体情報等の撮像条件(例えば、放射線源18の管電圧や管電流、放射線16の曝射時間)を含めた撮影オーダを登録する。なお、撮像枚数や撮像部位や撮像方法が予め決まっている場合に、ユーザは、これらの条件も撮影オーダに含めて登録しておく。前述のように、コンソール22と通信部176との間は、無線による信号の送受信が可能であるため、カセッテ制御部174は、通信部176を介して無線通信によりコンソール22に撮影オーダの送信を要求し、コンソール22は、電子カセッテ20からの送信要求に応じて、前記撮影オーダを無線通信により電子カセッテ20に送信する。通信部176で受信された前記撮影オーダは、記憶部186に記憶される。
【0154】
また、ユーザは、図示しないクレードルと入力端子58又はUSB端子60とをケーブルで接続する。これにより、シート状電池270又はシート状電池272に対する充電が開始される(ステップS2)。
【0155】
この場合、接触動作判定部350は、記憶部186に記憶された撮影オーダに含まれる撮像枚数から、該撮像枚数分の電力量を供給可能なシート状電池270、272を特定し、特定したシート状電池270、272に対して充電を行なわせる。例えば、撮像枚数が比較的少ない撮影オーダであれば、比較的小容量のシート状電池270に対して充電が行なわれ、一方で、撮像枚数が比較的多い撮影オーダであれば、比較的大容量のシート状電池272に対して充電が行なわれる。
【0156】
また、接触動作判定部350は、クレードルと入力端子58又はUSB端子60とがケーブルで接続されて、シート状電池270、272に対する充電が可能になったことを検出した時点で、前述した充電対象のシート状電池270又はシート状電池272と放射線変換パネル116とを接触させる必要があると判定する。
【0157】
これにより、先ず、電源制御部354は、接触動作判定部350の判定結果に基づきモータ278、284を駆動させて巻芯274、280を回転させ、巻取部262、264から充電対象のシート状電池270又はシート状電池272を引き出させて、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272と放射線変換パネル116とを対向させる。なお、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272が既に引き出されている場合には、電源制御部354は、モータ278、284の駆動制御を行わない。
【0158】
次に、エアバッグ制御部352は、接触動作判定部350の判定結果に基づいてインフレータ348を制御する。これにより、インフレータ348は、点火剤を点火して不活性ガスを発生させ、発生した不活性ガスをエアバッグ258に送り込む。エアバッグ258は、送り込まれた不活性ガスのガス圧によりz2方向に膨張し、基台112と、制御モジュール133と、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272とを放射線変換パネル116に押し付ける。
【0159】
充電対象のシート状電池270又はシート状電池272は、既に充電が始まっているため、充電による発熱により放射線変換パネル116を直ちに該放射線変換パネル116の使用温度よりも高温で加熱することができる。従って、シンチレータ118がCsIからなる場合には、加熱によって該シンチレータ118の感度を回復することができる。また、a−Siから構成される光電変換層120についても、シンチレータ118を介して熱が伝わるので、感度を回復することが可能である。一方、シンチレータ118が温度変化に対する感度変化の少ないGOSからなる場合でも、シンチレータ118を介してa−Siの光電変換層120に熱が伝われば、該光電変換層120の感度を回復することができる。いずれの場合であっても、充電による発熱を利用して放射線変換パネル116の使用温度よりも高温で放射線変換パネル116を加熱することにより該放射線変換パネル116の感度を回復させることが可能である。
【0160】
なお、カセッテ制御部174の残量検出部184は、充電中のシート状電池270又はシート状電池272の現在の残量を検出し、検出した残量をディスプレイ56に画面表示する。従って、ユーザは、ディスプレイ56の画面表示を視認することで、充電中のシート状電池270又はシート状電池272の残量を容易に把握することができる。
【0161】
このようにして、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272に対する充電と、充電による発熱を利用した放射線変換パネル116の感度回復とが行われている最中のステップS3において、ユーザ及び電子カセッテ20は、撮影準備を行う。
【0162】
この場合、カセッテ制御部174は、ディスプレイ56、インジケータ66、カセッテ制御部174及び通信部176以外の電子カセッテ20内の各部にも電力供給を行うように、電源回路178を制御する。これにより、電源回路178は、充電中のシート状電池270又はシート状電池272の電圧を所望の電圧に変換して電子カセッテ20内の各部に供給する。従って、電源回路178からの電力供給を受けたバイアス電源172は、逆バイアス電圧を各光電変換素子140に印加し、該各光電変換素子140は、電荷蓄積が可能な状態に至る。また、カセッテ制御部174は、ゲート駆動回路152を制御して、全てのTFT142をオフ状態とする。
【0163】
一方、ユーザは、放射線源18と放射線変換パネル116との間の距離をSID(線源受像画間距離)に調整すると共に、照射面36に被写体14を配置させて、該被写体14の撮像部位が撮像可能領域40に入り、且つ、該撮像部位の中心位置が撮像可能領域40の中心位置と略一致するように、該被写体14のポジショニングを行う。
【0164】
このようにして撮影準備が完了した後のステップS4において、接触動作判定部350は、残量検出部184の検出した残量が撮像枚数に応じた電力量以上の所定量に到達したか、又は、満充電になり、且つ、放射線変換パネル116の感度回復に必要な所定の加熱時間を経過した場合には、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272に対する充電が完了したと共に、放射線変換パネル116の感度が十分に回復したと判定する。
【0165】
これにより、先ず、エアバッグ制御部352は、インフレータ348への制御を停止する。この結果、インフレータ348からエアバッグ258への不活性ガスの供給が停止するので、該エアバッグ258は、排出孔を介して不活性ガスを排出し、z1方向に収縮する。そのため、基台112と、制御モジュール133と、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272とは、放射線変換パネル116から離間し、図4A及び図6Aの位置に戻る。
【0166】
次に、電源制御部354は、接触動作判定部350の判定結果に基づいて、モータ278、284を駆動させることにより巻芯274、280を回転させ、充電対象のシート状電池270又はシート状電池272を巻取部262又は巻取部264に巻き取る代わりに、巻取部262又は巻取部264から放射線遮蔽部材268を引き出させて、放射線変換パネル116と対向させる。
【0167】
このように、放射線変換パネル116に対する放射線遮蔽部材268、制御モジュール113、基台112及びエアバッグ258の位置関係が図4A及び図6Bの状態に戻った時点で、カセッテ制御部174は、充電と放射線変換パネル116の感度回復動作とがそれぞれ完了し、被写体14に対する撮像が可能になったことをユーザに通知するため、ディスプレイ56にこれらの通知内容を画面表示させると共に、インジケータ66にこれらの通知内容に応じた発光を行わせる。ユーザは、ディスプレイ56の画面表示又はインジケータ66の発光を視認することにより、充電の完了と、放射線変換パネル116の感度回復と、被写体14に対する撮像が可能になったこととを容易に認識することができる。
【0168】
次のステップS5において、ユーザは、コンソール22又は放射線源18に備わる図示しない曝射スイッチを投入する。
【0169】
コンソール22に曝射スイッチが備わっている場合には、曝射スイッチの投入後、コンソール22から無線通信によって撮像条件が放射線源18に送信される。また、放射線源18に曝射スイッチが備わっている場合には、曝射スイッチの投入後、放射線源18から無線通信によりコンソール22に対して撮像条件の送信が要求され、該コンソール22は、放射線源18からの送信要求に応じて、前記撮像条件を無線通信により放射線源18に送信する。
【0170】
放射線源18は、撮像条件を受信すると、該撮像条件に従って、所定の線量からなる放射線16を所定の曝射時間だけ被写体14に照射する。放射線16は、被写体14を透過してハウジング本体30内の放射線変換パネル116に至る。この場合、シンチレータ118は、放射線16の強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層120を構成する各光電変換素子140は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する(ステップS6)。
【0171】
この場合、放射線変換パネル116と制御モジュール133との間に放射線遮蔽部材268が配置されているため、一部の放射線16が放射線変換パネル116を通り抜けても、該一部の放射線16は、放射線遮蔽部材268により遮蔽され、制御モジュール133に到達することはない。
【0172】
次のステップS7において、カセッテ制御部174は、ゲート駆動回路152を制御して、ゲート駆動回路152から1本のゲート線146に信号読み出し用の電圧(制御信号)を印加させる。これにより、該ゲート線146にゲート電極Gが接続されている全てのTFT142のゲートが開き、これらのTFT142が接続されている各光電変換素子140に蓄積された電荷(図13のpin型の光電変換素子140では電子)が、電気信号として各信号線144にそれぞれ読み出される。各増幅器160は、読み出された電気信号を増幅し、各サンプルホールド回路162は、増幅後の電気信号をサンプリングし、マルチプレクサ164を介してAD変換器166に順次供給する。AD変換器166は、順次供給された電気信号に対するAD変換を行い、デジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された電気信号に応じた放射線画像は、カセッテ制御部174の画像メモリ182に一旦記憶される(ステップS8)。
【0173】
このようにして、1本のゲート線146に接続された各光電変換素子140に対する電気信号(に応じた放射線画像)の読み出しの完了後、カセッテ制御部174は、ゲート駆動回路152を制御して、信号読み出し用の電圧を印加するゲート線146を順次切り替え、切り替えたゲート線146に接続された各光電変換素子140に対する電気信号の読み出しを順次行う。従って、電子カセッテ20では、全てのゲート線146に接続された各光電変換素子140からの放射線画像の読み出しが完了するまで、ステップS7及びS8の処理を繰り返し行う。
【0174】
全ての光電変換素子140からの放射線画像の読み出しが完了し、被写体14の放射線画像が画像メモリ182に記憶された後のステップS9において、カセッテ制御部174は、画像メモリ182に記憶された放射線画像をディスプレイ56に表示させると共に、当該放射線画像と、記憶部186に記憶されたカセッテID情報とを共に通信部176を介して無線通信によりコンソール22に送信する。コンソール22は、受信した放射線画像に対して所定の画像処理を行い、画像処理後の放射線画像を無線通信により表示装置24に送信する。表示装置24は、受信した放射線画像を表示する。従って、ユーザは、ディスプレイ56に表示された放射線画像、又は、表示装置24に表示された放射線画像を視認することにより、被写体14に対して撮影オーダに応じた適切な撮像が行われたか否かを容易に判断することができる。
【0175】
そして、ステップS10において、被写体14に対する撮像が完了した場合(ステップS10:YES)、ユーザは、被写体14を解放して撮像を終了させ(ステップS11)、次に、電源スイッチ54を押して、電子カセッテ20をスリープ状態に移行させる。その後、ユーザは、電子カセッテ20を所定の保管場所まで運搬する(ステップS12)。なお、運搬時には、ステップS1と同様に、エアバッグ258を動作させて、基台112、制御モジュール133及び帯状部266を放射線変換パネル116に押し付けてもよい。
【0176】
一方、被写体14に対して複数枚の撮像を行う場合であって、全ての撮像が完了していない場合には(ステップS10:NO)、ステップS2又はステップS5に戻り、次の撮像、又は、次の撮像のための撮影準備が行われる。
【0177】
なお、上記の説明では、撮影オーダに指定された撮像枚数に従ってシート状電池270、272を選択する場合について説明したが、放射線変換パネル116の感度低下の状況に応じて、適切なシート状電池270、272を選択し、選択したシート状電池270、272を放射線変換パネル116に押し付けた状態で充電を行なってもよい。この場合でも、充電と感度回復とを適切に且つ効率よく行うことができる。
【0178】
[本実施形態に係る放射線撮像装置の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る電子カセッテ20によれば、シート状電池270、272の充電時の発熱を利用して放射線変換パネル116を加熱するので、特許文献2の加熱装置が不要となり、この結果、装置全体の重量を増加させることなく放射線変換パネル116の感度を回復させることが可能となる。なお、放射線変換パネル116の加熱温度としては、該放射線変換パネル116の使用温度よりも高温であればよい。
【0179】
この場合、少なくとも充電時にシート状電池270、272を放射線変換パネル116に面接触させれば、放射線変換パネル116を均一に且つ確実に加熱することができる。これにより、放射線変換パネル116の感度をムラなく回復することができ、この結果、感度回復後の放射線変換パネル116を用いて被写体14に対する放射線画像の撮像を行えば、画像ムラのない放射線画像を確実に取得することができる。
【0180】
また、シート状電池270、272がシンチレータ118と面接触可能であるため、シンチレータ118を均一に加熱し、さらには、該シンチレータ118を介して光電変換層120を均一に加熱することが可能となり、この結果、感度回復後の放射線変換パネル116を用いて被写体14に対する放射線画像の撮像を行えば、画像ムラのない高画質の放射線画像を容易に取得することができる。さらに、光電変換層120を加熱することにより、感度回復に加え、残像の低減も図ることができる。
【0181】
特に、装置全体の軽量化を図ると共に、より高画質の放射線画像を取得する目的で、CsIからなるシンチレータ118を用いた場合には、温度上昇や累積照射量によって放射線16に対する感度が局所的に増加して放射線画像の画像ムラの原因となる一方で、高温状態で保管すれば感度が回復する。そこで、該シンチレータ118とシート状電池270、272とを面接触可能とすることにより、シート状電池270、272の熱でCsIからなるシンチレータ118とa−Siからなる光電変換層120とを平面的に加熱(放射線変換パネル116の使用温度よりも高温で平面的に加熱)することができるので、光電変換層120の浅いトラップに捕捉された電荷を吐き出させると共に、該浅いトラップを消失させる一方で、シンチレータ118の深いトラップも消失させることができる。この結果、シンチレータ118及び光電変換層120を均一に感度回復させることが可能となる。
【0182】
従って、本実施形態では、CsIからなるシンチレータ118とa−Siからなる光電変換層120とを均一に加熱することで、シンチレータ118及び光電変換層120を確実に感度回復させて、シンチレータ118及び光電変換層120の性能を維持させることが可能となる。
【0183】
また、本実施形態をISS方式の電子カセッテ20に適用する場合、放射線16の照射方向に沿って、光電変換層120、シンチレータ118及びシート状電池270、272の順に配置すれば、シンチレータ118の加熱を容易に行うことができると共に、放射線16の照射によるシート状電池270、272の劣化も回避可能となる。
【0184】
送出機構279、285により自動的にシート状電池270、272を送出して(引き出して)、引き出したシート状電池270、272と放射線変換パネル116とを面接触させることで、放射線変換パネル116の加熱を効率よく行うことができる。
【0185】
また、巻取部262、264、巻芯274、280及びモータ278、284によって送出機構279、285がそれぞれ構成されるので、巻取部262、264へのシート状電池270、272の巻き取りと、シート状電池270、272の引き出しによる該シート状電池270、272と放射線変換パネル116との面接触とを確実に且つ効率よく行うことができる。
【0186】
さらに、シート状電池270、272の少なくとも一部が巻取部262、264に巻き取られている場合に、少なくとも一部を冷却液体316が充填された円筒部材292で冷却することにより、巻芯274、280に巻き取られた部分の熱が、放射線変換パネル116や制御モジュール133等に不用意に伝達されることを回避することができる。
【0187】
また、モノコック構造の筐体29とすることで、装置全体の軽量化を実現できると共に、外部からの応力(例えば、筐体29の落下、被写体14からの荷重、外部からの衝撃)を筐体29全体として受けることができ、この結果、該筐体29の機械的強度(耐落下性、耐荷重性、耐衝撃性)を向上させることができる。
【0188】
そして、送出機構279、285は、モノコック構造の筐体29内のスペースを有効利用するために、筐体29内における放射線変換パネル116の周縁部、具体的には、デッドスペースとなりやすい筐体29内の2つの側面42c、42d近傍に配置されているので、デッドスペースを有効に活用することができる。
【0189】
また、2つの側面42c、42dを外方に向けて円弧状に形成すれば、筐体29の製造が容易になると共に、機械的強度が増加し、さらには、デッドスペースに送出機構279、285を配置しやすくなる。なお、2つの側面42c、42dが外方に向けてテーパ状に形成されていても、デッドスペースが形成されるので、この箇所に送出機構279、285を配置すれば、円弧状の場合と同様の効果が得られることは勿論である。
【0190】
また、放射線変換パネル116への放射線16の入射時に、放射線変換パネル116の照射面36と対向する面(z1方向の面)に放射線遮蔽部材268が面接触しているか、又は、離間した状態で配置されているので、制御モジュール133が放射線16の照射により劣化することを阻止することができる。
【0191】
また、2枚のシート状電池270、272を用い、放射線遮蔽部材268の一端部に比較的小容量のシート状電池270を連結し、放射線遮蔽部材268の他端部に比較的大容量のシート状電池272を連結し、いずれかのシート状電池270、272が放射線変換パネル116に面接触した状態で充電されていれば、いずれかのシート状電池270、272を充電しつつ、放射線変換パネル116を加熱することができる。
【0192】
また、複数のシート状電池270、272を筐体29内に収容することで、一方のシート状電池から電力供給を行っている最中に電池切れとなったときには、直ちに他方のシート状電池から電力供給を行うことができるので、撮像時に電池切れで電子カセッテ20が使用できなくなることを回避することができる。すなわち、電源ユニット252は、複数のシート状電池270、272を備えることにより、ホットスワップ機能も有する。
【0193】
なお、2枚のシート状電池270、272は、同じ容量の電池であってもよいし、あるいは、互いに異なる容量の電池であってもよい。異なる容量の電池である場合には、撮影オーダで指定された撮像枚数や、放射線変換パネル116の感度低下の状況に応じて、適切なシート状電池270、272を選択し、選択したシート状電池270、272を放射線変換パネル116に面接触させて充電することにより、該シート状電池270、272に対する充電と放射線変換パネル116の感度回復とを、撮影オーダや感度低下の状況に応じて、適切に且つ効率よく行うことができる。
【0194】
さらに、接触動作判定部350により放射線変換パネル116に対するシート状電池270、272の接触の要否を判定し、その判定結果に基づいてエアバッグ制御部352が接触機構349のインフレータ348を制御してエアバッグ258を動作させるので、シート状電池270、272を放射線変換パネル116に確実に且つ効率よく接触させることができる。また、筐体29の厚み方向にエアバッグ258を膨張させてシート状電池270、272と放射線変換パネル116とを接触させるので、該エアバッグ258の膨張時における電子カセッテ20の耐荷重性、耐衝撃性及び耐落下性も向上させることができる。
【0195】
[本実施形態に係る放射線撮像装置の変形例の説明]
次に、本実施形態に係る電子カセッテ20の変形例について、図15〜図18Bを参照しながら説明する。
【0196】
図15〜図16Bの変形例では、放射線変換パネル116(の光電変換層120)のy1方向の側面に、光電変換層120を駆動するための制御信号を光電変換層120に供給するための複数のフレキシブル基板122を所定間隔毎に配置し、各フレキシブル基板122に、前記制御信号を生成するIC124をそれぞれ配置する。この場合、フレキシブル基板126及びIC128は、制御信号の供給によって駆動された光電変換層120から放射線画像に応じた電気信号を読み出すためのフレキシブル基板と、前記電気信号を読み出して所定の信号処理を行うICとになる。また、各フレキシブル基板122は、巻取部262を跨いで制御モジュール133に接続されている。
【0197】
この変形例においても、フレキシブル基板122及びIC124を配置する点以外は、図1〜図14の電子カセッテ20と同様な構成であるため、前述した各効果が得られる。
【0198】
また、この変形例でも、ハウジング本体30に対して放射線検出ユニット250及び電源ユニット252を図8及び図9のように出し入れすれば、フレキシブル基板122、126及びIC124、128と電源ユニット252とが干渉するおそれもない。
【0199】
図17A及び図17Bは、PSS方式の放射線変換パネル116の内部構成の一例を図示している。
【0200】
図17Aは、光電変換層120にCsIのシンチレータ118を直接蒸着した場合を図示しており、光電変換層120は、帯状部266に接触可能な蒸着基板330と、蒸着基板330に形成されたa−Si等からなるTFT層332と、TFT層332上に形成されたa−Si等からなる光電変換膜334とから構成されている。また、光電変換膜334には、CsIのシンチレータ118の柱状結晶構造336が形成され、防湿保護材338で封止されている。また、防湿保護材338の照射面36側には、金属の反射層340が形成されている。従って、反射層340は、接着層260を介してハウジング本体30の照射面36側の内壁に接着されている。
【0201】
また、図17Bは、CsIのシンチレータ118に光電変換層120を形成した場合を図示したものであり、CsIのシンチレータ118は、蒸着基板342上に柱状結晶構造336を形成し、該柱状結晶構造336を防湿保護材338で封止している。また、防湿保護材338の帯状部266側にa−Si等からなる光電変換膜334と、a−Si等からなるTFT層332とを順に形成し、該TFT層332が帯状部266に接触可能である。なお、蒸着基板342は、接着層260を介してハウジング本体30の照射面36側の内壁に接着されている。
【0202】
図17A及び図17BのPSS方式の場合には、シート状電池270、272がa−Siからなる光電変換層120を直接加熱することになるので、該光電変換層120の感度回復や残像の低減を確実に且つ効率よく行うことができる。この場合、光電変換層120を介してCsIのシンチレータ118に熱が伝達されるので、該シンチレータ118の感度回復も可能である。
【0203】
図18A及び図18Bの変形例では、室110における側面42c側のデッドスペースに、ローラ362と、該ローラ362に連結されたモータ364とを配置すると共に、室110における側面42d側のデッドスペースに、ローラ366と、該ローラ366に連結されたモータ368とを配置し、2本のローラ366にベルト状の帯状部360を掛け渡すことでキャタピラ構造の電源ユニット252が構成される。従って、放射線遮蔽部材268とシート状電池270、272とをベルト状に連結することにより帯状部360が構成される。また、ローラ362及びモータ364により送出機構279が構成されると共に、ローラ366及びモータ368により送出機構285が構成される。
【0204】
この場合、エアバッグ258がz1方向に収縮して、放射線変換パネル116と電源ユニット252と制御モジュール133及び基台112とが互いに離間した状態で、電源制御部354の制御によってモータ364、368が駆動することにより2本のローラ362、366が回転し、該2本のローラ362、366間でベルト状の帯状部360を移動させることができる。
【0205】
図18Aは、放射線遮蔽部材268と放射線変換パネル116とが対向するように帯状部360を移動させた後に、エアバッグ258をz2方向に膨張させて放射線遮蔽部材268と放射線変換パネル116とを接触させ、その後、放射線16の照射が行われた場合を図示している。
【0206】
図18Bは、シート状電池270、272と放射線変換パネル116とが対向するように帯状部360を移動させた後に、エアバッグ258をz2方向に膨張させてシート状電池270、272と放射線変換パネル116とを接触させ、その後、該シート状電池270、272に対する充電と、充電による発熱を利用した放射線変換パネル116の感度回復とを行った場合を図示している。
【0207】
図18A及び図18Bの変形例では、電源ユニット252全体をキャタピラー構造とし、シート状電池270、272を移動させて、放射線変換パネル116とシート状電池270、272とを面接触させることが可能であるため、前述した図1〜図14の電子カセッテ20の各効果を容易に得ることができる。
【0208】
また、図1〜図14の場合と同様に、この変形例でも、帯状部360に2以上のシート状電池を設けてもよい。この場合でも、撮影オーダに指定された撮像枚数や放射線変換パネル116の感度低下の状況に応じて適切なシート状電池を選択し、選択したシート状電池を放射線変換パネル116に接触させて充電することにより、充電と感度回復とを適切に且つ効率よく行うことが可能となる。
【0209】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0210】
16…放射線
20…電子カセッテ
29…筐体
30…ハウジング本体
42a、42b、42c、42d…側面
110…室
112…基台
116…放射線変換パネル
118…シンチレータ
120…光電変換層
133…制御モジュール
174…カセッテ制御部
250…放射線検出ユニット
252…電源ユニット
258…エアバッグ
260…接着層
262、264…巻取部
266、360…帯状部
268…放射線遮蔽部材
270、272…シート状電池
274、280…巻芯
278、284、364、368…モータ
279、285…送出機構
290、292…円筒部材
316…冷却液体
348…インフレータ
349…接触機構
350…接触動作判定部
352…エアバッグ制御部
354…電源制御部
362、366…ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、
前記放射線変換パネルに電力を供給し、且つ、外部から充電可能な電源部と、
前記放射線変換パネル及び前記電源部を収容する筐体と、
を有し、
前記電源部の充電時の発熱により前記放射線変換パネルが加熱されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記電源部は、少なくとも充電時には前記放射線変換パネルに接触していることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記電源部は、少なくとも充電時には前記放射線変換パネルに面接触可能なシート状電池であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記放射線変換パネルは、前記放射線を他の波長の電磁波に変換するシンチレータと、該シンチレータにより変換された前記電磁波を前記放射線画像に変換する光電変換層とから構成され、
前記シート状電池は、前記シンチレータ又は前記光電変換層と面接触可能であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記シンチレータがCsIからなる場合に、前記シート状電池は、前記シンチレータと面接触可能であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の装置において、
前記放射線の照射方向に沿って、前記光電変換層、前記シンチレータ及び前記シート状電池の順に配置されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の装置において、
前記放射線変換パネルに向けて前記シート状電池を送出することにより前記シート状電池と前記放射線変換パネルとが面接触可能な送出機構をさらに有することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、
前記送出機構は、前記シート状電池を巻き取り可能な巻取部と、前記巻取部に対して前記シート状電池の巻き取り及び引き出しを行わせる駆動部とから構成されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
2つの前記送出機構を有し、
一方の送出機構の巻取部は、前記シート状電池の一端部側を巻き取り可能であり、
他方の送出機構の巻取部は、前記シート状電池の他端部側を巻き取り可能であり、
前記シート状電池のうち、前記各巻取部から引き出された部分が前記放射線変換パネルと面接触可能であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の装置において、
前記シート状電池の少なくとも一部が前記巻取部に巻き取られている場合に、前記少なくとも一部を冷却する冷却部材をさらに有することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項11】
請求項7記載の装置において、
前記送出機構は、2本のローラと、該2本のローラを回転させることにより前記2本のローラ間で前記シート状電池を移動させる駆動部とから構成されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記送出機構は、前記筐体内における前記放射線変換パネルの周縁部に配置されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記筐体は、モノコック構造の六面体の筐体であり、
前記筐体の対向する2つの側面は、外方に膨出し、
前記筐体内における前記2つの側面近傍に前記送出機構が配置されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、
前記2つの側面は、外方に向けて円弧状又はテーパ状に形成されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項15】
請求項3〜14のいずれか1項に記載の装置において、
前記シート状電池に連結され、且つ、前記放射線を遮蔽するシート状の放射線遮蔽部材をさらに有し、
前記放射線変換パネルへの前記放射線の入射時には、前記放射線変換パネルにおける前記放射線の入射面とは反対側の面に前記放射線遮蔽部材が配置されているか、前記反対側の面と離間して前記放射線遮蔽部材が配置されているか、又は、前記反対側の面と前記シート状電池との間に前記放射線遮蔽部材が配置されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項16】
請求項15記載の装置において、
2枚の前記シート状電池を有し、
前記放射線遮蔽部材の一端に一方のシート状電池が連結され、
前記放射線遮蔽部材の他端に他方のシート状電池が連結され、
いずれかのシート状電池は、前記放射線変換パネルに面接触した状態で充電されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項17】
請求項2〜16のいずれか1項に記載の装置において、
前記放射線変換パネルに対する前記電源部の接触の要否を判定する接触判定部と、
前記接触判定部の判定結果に基づいて、前記電源部を前記放射線変換パネルに接触させる接触機構と、
をさらに有することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項18】
請求項17記載の装置において、
前記接触機構は、前記筐体の厚み方向に沿って膨張又は収縮することにより、前記電源部と前記放射線変換パネルとの接触制御を行うエアバッグと、前記エアバッグに不活性ガスを送り込んで該エアバッグを前記厚み方向に膨張させるインフレータとから構成されることを特徴とする放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−181025(P2012−181025A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42224(P2011−42224)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】