放射線撮影装置及び製造方法
【課題】反射層の反射効率を低下させることなく、シンチレータで発生した長波長成分のクロストークを抑制する。
【解決手段】センサパネル23を透過した放射線は、シンチレータ37の放射線入射領域で光に変換される。この光の短波長成分90aは、柱状結晶39内を全反射しながら反射層25に向けて進行し、ダイクロイックフィルタからなる第1の反射層42により鏡面反射されてセンサパネル23に向かうので、センサパネル23の検出光量が低下することはない。また、光の長波長成分90bは、屈折しにくいため、シンチレータ37の柱状結晶39間を透過し、光の発生位置から離れた位置で反射層25に入射するが、長波長成分90bは、第1の反射層42を透過し、再帰性反射層である第2の反射層43によって再帰反射されるので、光の発生位置から近い位置でセンサパネル23に入射される。
【解決手段】センサパネル23を透過した放射線は、シンチレータ37の放射線入射領域で光に変換される。この光の短波長成分90aは、柱状結晶39内を全反射しながら反射層25に向けて進行し、ダイクロイックフィルタからなる第1の反射層42により鏡面反射されてセンサパネル23に向かうので、センサパネル23の検出光量が低下することはない。また、光の長波長成分90bは、屈折しにくいため、シンチレータ37の柱状結晶39間を透過し、光の発生位置から離れた位置で反射層25に入射するが、長波長成分90bは、第1の反射層42を透過し、再帰性反射層である第2の反射層43によって再帰反射されるので、光の発生位置から近い位置でセンサパネル23に入射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって放射線から変換された光を検出するセンサパネルとを備えた放射線撮影装置及び製造方法に関し、更に詳しくは、シンチレータで変換された光をセンサパネルに向けて反射する反射層を備えた放射線撮影装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを対面配置した間接変換方式の放射線検出器を用いて、照射された放射線により表される放射線画像を撮影できるようにした放射線撮影装置が実用化されている。また、シンチレータから放射された光を有効利用するため、シンチレータのセンサパネルに対面する光出射方向とは反対側に、シンチレータから放射された光をセンサパネルに向けて反射する鏡面状の反射層を備えた放射線撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
シンチレータには、ヨウ化セシウム(以下、CsIと呼ぶ)等を基板に蒸着することにより、光出射方向に沿って複数の柱状結晶を立設したものがある。柱状結晶からなるシンチレータでは、放射線の照射によって発生した光は、柱状結晶のライトガイド効果によって柱状結晶中を全反射しながらセンサパネルに向けて進行するので、シンチレータから出射される光の散乱が抑制される。したがって、柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線撮影装置では、照射された放射線を画像として検出する際に、画像の鮮鋭度の低下を抑制することができる。
【0004】
柱状結晶からなるシンチレータでは、クロストークと呼ばれる現象の発生を防止するため、複数の柱状結晶間に隙間が設けられている。クロストークとは、柱状結晶同士が接触することにより、柱状結晶中を進行する光の一部が接触している他の柱状結晶へ移る現象である。シンチレータでクロストークが発生すると、シンチレータ内での光の発生位置と、その光がセンサパネルに入射する位置とに大きなずれが生じ、放射線画像のボケが引き起こされてしまう。
【0005】
上記クロストークは、柱状結晶同士が接触していなくても発生する。図13は、複数の柱状結晶121を備えたシンチレータ120の模式図であり、柱状結晶121a中を全反射しながら進行する光122は、柱状結晶121aの内壁面に対する入射角度θxが臨界角θc以下になったときに柱状結晶121aから放射され、隣接する柱状結晶121b内に入射してしまうためである。なお、CsIからなる柱状結晶の屈折率を1.8、柱状結晶間に存在する空気の屈折率を1.0としたとき、臨界角θcはおよそ34°となる。
【0006】
また、柱状結晶121aから柱状結晶121bに入射した光122は、柱状結晶121bから更に隣接する柱状結晶に放射され、柱状結晶121bから遠く離れた柱状結晶まで透過していくことがある。これは、柱状結晶121aと柱状結晶121bとの間隔が非常に狭いため、柱状結晶121aから放射された光122はほとんど屈折せず、光122の長波長成分122bは短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、柱状結晶121bに対する入射角度が臨界角θc以下となる状態が維持されるためである。
【0007】
上述した光の入射角度を原因とするクロストークは、シンチレータから直接センサパネルに向かって進行する光だけでなく、反射層によって反射されてセンサパネルに向かう光でも発生する。図14に示すように、シンチレータ120に入射した放射線は、シンチレータ120の入射領域で多くが光に変換される。この光のうち、短波長成分122aは、比較的屈折しやすいため、柱状結晶121a内を全反射しながら反射層124に向かう。また、短波長成分122aの反射層124に対する入射角度が臨界角以下となり、柱状結晶121aから柱状結晶121bに短波長成分122aが放射された場合でも、短波長成分122aは、屈折して臨界角以上の入射角度になりやすいため、シンチレータ120内での発生位置と、センサパネル125に対する入射位置とが大きく離れることはない。
【0008】
これに対し、図15に示すように、シンチレータ120の柱状結晶121cの入射領域で発生した光の長波長成分122bは、短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、反射層124まで伝播される間に光の発生位置から大きく離れてしまい、反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に、光の発生位置から更に遠くまで離れた柱状結晶121dの位置でセンサパネル125に入射してしまう。
【0009】
また、間接変換方式の放射線検出器には、図14に示すように、放射線の入射側からセンサパネル125、シンチレータ120及び反射層124を順に配置し、センサパネル125を透過した放射線をシンチレータ120で光に変換してセンサパネル125で検出する「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と、詳しくは図示しないが、放射線の入射側から反射層、シンチレータ及びセンサパネルを順に配置し、反射層を透過した放射線をシンチレータで光に変換する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」とがある。PSS方式では、シンチレータの放射線入射領域で発生した光は、すぐ近くに配置されている反射層により反射されてセンサパネルに向かうが、ISS方式では、シンチレータの放射線入射領域で発生した光は、シンチレータ内を反射層まで伝播され、反射層で反射されて再びシンチレータ内を伝播してセンサパネルに入射されるため、光の伝播距離がPSS方式のほぼ2倍となり、クロストークの影響が大きくなる。
【0010】
上記問題を解決するため、反射層に再帰性反射層を用いることが考えられる(例えば、特許文献2、3参照)。反射層に再帰性反射層を用いると、反射層に入射した光は、反射層によって入射方向に反射されるため、屈折しにくい長波長成分の光であっても、シンチレータ内での光の発生位置から比較的近い位置でセンサパネルに入射させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−271504号公報
【特許文献2】特開2002−055168号公報
【特許文献3】特開平09−090100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
再帰性反射層には、多数の微小なガラスビーズを用いたものと、多数の微小なプリズムを用いたものとがあるが、光の入射位置や入射角度によって光が再帰反射されずに、吸収または拡散する場合がある。そのため、再帰性反射層は、鏡面反射層に比べて反射効率が低いことが知られている。このような再帰性反射層を放射線撮影装置の反射層として用いた場合、センサパネルに対する入射光量が低下してしまい、放射線画像の画質が悪化することが懸念される。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するため、反射層の反射効率を低下させることなく、シンチレータで発生した長波長成分の光のクロストークを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の放射線撮影装置は、照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータの光出射側に配置され、シンチレータにより変換された光を検出するための光センサを有するセンサパネルと、シンチレータの光出射側と反対側に配置され、シンチレータによって変換された光を光出射側に向けて、選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層と、を備えている。
【0015】
反射層は、シンチレータにより変換された光の波長に応じて、選択的に鏡面反射または再帰反射を行なうようにしてもよい。この場合、反射層は、シンチレータによって変換された光の短波長成分を鏡面反射し、長波長成分を再帰反射することが好ましい。
【0016】
反射層は、短波長成分の光を鏡面反射し、長波長成分の光を透過させる第1の反射層と、第1の反射層を透過した長波長成分の光を再帰反射する第2の反射層とから構成してもよい。この場合、第1の反射層として、ダイクロイックフィルタを用いてもよい。
【0017】
本発明は、シンチレータの放射線照射側にセンサパネルが配置され、シンチレータには、センサパネルを透過した放射線が照射されるようにされた構成に対して特に有効である。また、本発明は、複数の立設された柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線撮影装置にも有効である。このようなシンチレータの材質としては、CsI:Tlを用いるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の放射線撮影装置の製造方法は、放射線を光に変換するシンチレータを、シンチレータによって変換された光を検出するための光センサを備えたセンサパネルに形成する工程と、シンチレータのセンサパネル側と反対側の面に、シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、から構成してもよい。
【0019】
また、本発明の別の放射線撮影装置の製造方法としては、支持基板上に設けられた剥離層上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、シンチレータから剥離層及び支持基板を剥離する工程と、シンチレータに、シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、シンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、から構成してもよい。
【0020】
また、本発明の更に別の放射線撮影装置の製造方法としては、光透過性を有する支持基板上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、支持基板上にシンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、シンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、から構成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、比較的屈折しやすくクロストークが発生しにくい短波長成分の光を選択的に鏡面反射するので、センサパネルによる検出光量の低下を防止することができる。また、短波長成分の光に比べて屈折しにくく、クロストークが発生しやすい長波長成分の光を選択的に再帰反射するので、長波長成分のクロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】放射線撮影装置を一部破断して示す斜視図である。
【図2】放射線撮影装置の概略断面図である。
【図3】放射線検出器の端部側断面図である。
【図4】CsI:Tlの発光特性を示すグラフである。
【図5】CsI:Naの発光特性を示すグラフである。
【図6】光センサの構成を模式的に示した断面図である。
【図7】放射線撮影装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】シンチレータの放射線入射領域で発生した光の短波長成分及び長波長成分の反射状態を示す模式的に示す概略図である。
【図10】シンチレータの反射層近傍で発生した長波長成分の光の反射状態を模式的に示す概略図である。
【図11】シンチレータ及び反射層の製造手順を模式的に示す概略図である。
【図12】シンチレータ及び反射層の別の製造手順を模式的に示す概略図である。
【図13】従来のシンチレータ内での光の経路を模式的に示す概略図である。
【図14】反射層により鏡面反射された短波長成分の光の経路を模式的に示す概略図である。
【図15】反射層により鏡面反射された長波長成分の光の経路を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、本発明に係る放射線撮影装置10は、全体形状がおよそ箱形で、矩形状の上面が放射線の照射面11とされた筐体12を備えている。筐体12は、放射線を透過させる材料からなり、照射面11が設けられている天板13以外の部分は、例えばABS樹脂等から構成され、天板13は例えばカーボン等から構成されている。これにより、天板13による放射線の吸収を抑制しつつ、天板13の強度が確保される。なお、筐体12は、放射線により感光材料に画像を記録する構成を備えた旧来のカセッテと同サイズであり、当該カセッテに代えて使用できるようになっている。
【0024】
放射線撮影装置10の照射面11には、複数個のLEDからなり、放射線撮影装置10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量等の動作状態を表示するための表示部16が設けられている。なお、表示部16は、LED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部16は、照射面11以外の部位に設けてもよい。
【0025】
放射線撮影装置10の筐体12内には、照射面11に対面するように、被撮影者の体を透過した放射線を検出するために、パネル状の放射線検出器19が配置されている。また、筐体12の内部には、照射面11の短手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ(二次電池)を収容するケース20が配置されている。放射線検出器19を含む放射線撮影装置10の各種電子回路は、ケース20内に収容されたバッテリから供給される電力によって作動する。筐体12内のうちケース20の照射面11側には、ケース20内に収容された各種電子回路が放射線の照射に伴って損傷することを回避するため、鉛板等からなる放射線遮蔽部材が配設されている。
【0026】
放射線検出器19は、放射線が照射される方向に沿って、照射面11側からセンサパネル23、シンチレータパネル24及び反射層25が積層された構成を有している。図2に示すように、センサパネル23は、天板13の内面に全面に亘って接着剤により貼り付けられている。センサパネル23の下面には、シンチレータパネル24が配置されており、シンチレータパネル24の下面には、反射層25が配置されている。シンチレータパネル24の外周には、シンチレータを湿気などから保護する封止剤28が設けられている。筐体12内の底面には、制御基板29が配置されている。制御基板29とセンサパネル23とは、フレキシブルケーブル30を介して電気的に接続されている。
【0027】
図3は、放射線検出器19の端縁側の断面図である。センサパネル23は、シンチレータパネル24から放射された光を検出するものであり、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされたセンサ基板33と、センサ基板33の下面に設けられた光センサ34とを備えている。センサ基板33には、光センサ34を構成するフォトダイオード(PD:PhotoDiode)を、例えばアモルファスシリコンの蒸着によって形成するため、耐熱性を有するガラス基板が用いられている。センサ基板33の厚みは、例えば700μm程度である。
【0028】
シンチレータパネル24は、センサ基板33上に蒸着により設けられたシンチレータ37と、シンチレータ37の外周を覆う保護膜38とから構成されている。シンチレータ37は、被撮影者の体を透過して筐体12の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過して照射された放射線を吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができる。本実施形態では、シンチレータ37として、センサ基板33にCsI:Tlを蒸着することにより、シンチレータ37からセンサパネル23に向かう光出射方向に沿って、複数の柱状結晶39を形成している。柱状結晶39は、その平均径が柱状結晶39の長手方向に沿っておよそ均一である。
【0029】
シンチレータ37で発生した光は、柱状結晶39のライトガイド効果によって柱状結晶39内を進行し、センサパネル23へ射出される。その際に、センサパネル23側へ射出される光の拡散が抑制されるので、放射線撮影装置10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ37の深部に到達した光は、反射板25によってセンサパネル23側へ反射されるので、センサパネル23に入射される光量(シンチレータ37で発光された光の検出効率)が向上する。
【0030】
上記構成のシンチレータ37におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。すなわち、CsIの充填率が過小(例えば70%未満)になるとシンチレータ37の発光量の低下が顕著になる一方、CsIの充填率が過大に(例えば85%よりも高く)なると、ある厚み以上では隣り合う柱状結晶が接触し始めるために、柱状結晶間で光のクロストークが発生する。このクロストークが発生すると、シンチレータ37への放射線照射量のパターンに対してシンチレータ37からの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。従って、放射線検出の感度及び精度を確保するために、隣り合う柱状結晶の間には適当な大きさの隙間を設ける必要がある。
【0031】
保護膜38には、大気中の水分に対してバリア性を有する材料が用いられ、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。有機膜としては、ポリパラキシリレン製樹脂の熱CVD法によって形成された気相重合膜、または含フッ素化合物不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜が用いられる。また有機膜と無機膜の積層構造を用いることも出来、無機膜の材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)膜、酸化珪素(SiOx)膜、酸窒化珪素(SiOxNy)膜、Al2O3等が好適である。
【0032】
なお、本実施形態では、シンチレータパネル24の放射線照射面側にセンサパネル23が配置されているが、シンチレータとセンサパネルとをこのような位置関係で配置する方式は、「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは、放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部の受光量が増大することで、結果として放射線撮影装置の感度が向上する。
【0033】
反射層25は、シンチレータパネル24の下面に密着された第1の反射層42と、第1の反射層42の下面に貼り合わされた第2の反射層43とから構成されている。第1の反射層42は、ダイクロイックフィルタからなり、長波長域の光を透過し、それ以下の波長域の光を鏡面反射する。図4に示すように、CsI:Tlが発生する光は、発光ピーク波長が565nmであるが、幅広い波長域(400nm〜700nm)の光を含んでいる。本実施形態における長波長域の光とは、シンチレータ37の発光ピーク波長565nmよりも長い波長域であり、例えば、620〜630nm以上の波長域の光を表している。
【0034】
また、図5に示すように、シンチレータ37として、CsI:Naを用いた場合には、第1の反射層42は、CsI:Naの発光ピーク波長(例えば、400nm程度)よりも長波長域の光、例えば480nm以上の波長域の光を透過し、それ以下の波長域の光を鏡面反射する。
【0035】
第2の反射層43は、再帰性反射層からなり、第1の反射層42を透過してきた長波長域の光をその入射方向に向けて再帰反射する。第2の反射層43を構成する再帰性反射層には、例えば、微小なガラスビーズを塗料内に混在させた再帰性反射塗料が塗布された再帰性反射板や、表面に多数のマイクロプリズムが設けられた再帰性反射板が用いられる。
【0036】
第1の反射層42は、センサパネル23にシンチレータ37が蒸着され、保護膜38によってシンチレータ37が覆われた後に、保護膜38の密着力を用いてシンチレータパネル24に密着されている。なお、光透過性の高い接着剤により、第1の反射層42とシンチレータパネル24とが貼り合わされていてもよい。また、第2の反射層43は、光透過性の高い接着剤によって第1の反射層42に貼り合わされている。
【0037】
次に、センサパネル23の光センサ34について説明する。図6に示すように、光センサ34は、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等からなる光電変換部46、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)47、及び蓄積容量48を備えた画素部49からなり、画素部49は、センサ基板33上にマトリクス状に複数形成されている。また、センサパネル23のうち、放射線の到来方向と反対側の面には、センサ基板33上を平坦にするための平坦化層50が形成されている。上述したように、センサパネル23は、接着層51によって天板13に貼り付けられている。
【0038】
光電変換部46は、下部電極46aと上部電極46bとの間に、シンチレータ37から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜46cが配置されて構成されている。なお、下部電極46aは、シンチレータ37から放出された光を光電変換膜46cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ37の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。
【0039】
なお、下部電極46aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極46aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0040】
光電変換膜46cを構成する材料は、光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜46cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ37から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。アモルファスシリコンからなる光電変換膜46cの形成には、蒸着を行う必要があるため、センサ基板33には、耐熱性を有するガラス基板を用いるのが好ましい。
【0041】
TFT47は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0042】
図7に示すように、光センサ34には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT47をオンオフさせるための複数本のゲート配線54と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT47を介して読み出すための複数本のデータ配線55が設けられている。
【0043】
センサパネル23の個々のゲート配線54はゲート線ドライバ58に接続されており、個々のデータ配線55は信号処理部59に接続されている。被撮影者の体を透過した放射線(被撮影者の体の画像情報を担持した放射線)が放射線撮影装置10に照射されると、シンチレータ37のうち照射面11上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部49の光電変換部46では、シンチレータ37のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部49の蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積される。
【0044】
上記のようにして個々の画素部49の蓄積容量48に電荷が蓄積されると、個々の画素部49のTFT47は、ゲート線ドライバ58からゲート配線54を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT47がオンされた画素部49の蓄積容量48に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線55を伝送されて信号処理部59に入力される。従って、個々の画素部49の蓄積容量48に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0045】
信号処理部59は、個々のデータ配線55毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線55を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0046】
信号処理部59には画像メモリ62が接続されており、信号処理部59のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ62に順に記憶される。画像メモリ62は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ62に順次記憶される。
【0047】
画像メモリ62は、放射線撮影装置10全体の動作を制御する制御部64と接続されている。制御部64は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU64a、ROM及びRAMを含むメモリ64b、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部64cを備えている。
【0048】
また、制御部64には無線通信部66が接続されている。無線通信部66は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。制御部64は、無線通信部66を介してコンソール70(図8参照)と無線通信が可能とされており、コンソール70との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0049】
また、放射線撮影装置10には電源部67が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ58や信号処理部59、画像メモリ62、無線通信部66、制御部64等)は電源部67と各々接続され(図示省略)、電源部67から供給された電力によって作動する。電源部67は、放射線撮影装置10の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。ゲート線ドライバ58、信号処理部59、画像メモリ62、制御部64、無線通信部66及び電源部67は、上述したケース20内、もしくは制御基板29に設けられている。
【0050】
図8に示すように、コンソール70はコンピュータからなり、装置全体の動作を司るCPU71、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM72、各種データを一時的に記憶するRAM73、及び、各種データを記憶するHDD74を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部75及び無線通信部76が接続され、ディスプレイ77がディスプレイドライバ78を介して接続され、更に、操作パネル79が操作入力検出部80を介して接続されている。
【0051】
通信I/F部75は接続端子75a、通信ケーブル82及び放射線発生装置83の接続端子83aを介して放射線発生装置83と接続されている。コンソール70(のCPU71)は、放射線発生装置83との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部75経由で行う。無線通信部76は放射線撮影装置10の無線通信部66と無線通信を行う機能を備えており、コンソール70(のCPU71)は放射線撮影装置10との間で、画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部76経由で行う。また、ディスプレイドライバ78はディスプレイ77への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール70(のCPU71)はディスプレイドライバ78を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ77に表示させる。また、操作パネル79は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部80は操作パネル79に対する操作を検出し、検出結果をCPU71へ通知する。
【0052】
放射線発生装置83は、放射線源85と、コンソール70との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部86と、コンソール70から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源85を制御する線源制御部87とを備えている。
【0053】
次に本実施形態の作用を説明する。放射線撮影装置10を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、被撮影者の撮影対象部位と撮影台との間に、照射面11側を上方へ向けた放射線撮影装置10を挿入し、向きや位置等を調整する準備作業を行う。
【0054】
撮影者は、準備作業が完了すると、操作パネル79を操作して撮影開始を指示する。これにより、コンソール70では、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置83へ送信し、放射線発生装置83は放射線源85から放射線を射出させる。放射線源85から射出された放射線は、被撮影者の体を透過して放射線撮影装置10の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過してシンチレータ37の照射/光射出面に照射される。シンチレータ37は照射/光射出面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を射出する。
【0055】
センサパネル23は、画素部49に照射された光を画像として検出し、画像メモリ62に画像データを記憶する。CPU64aは、画像メモリ62に記憶された画像データを無線通信部66によってコンソール70へ送信する。コンソール70のCPU71は、放射線撮影装置10から受信した画像データを、RAM73を介してHDD74に記憶する。また、CPU71は、ディスプレイドライバ78を介して、HDD74に記憶されている画像データからなる放射線画像をディスプレイ77に表示させる。
【0056】
図15に示すように、従来の放射線検出器では、シンチレータ120の入射領域で発生した光の長波長成分122bは、短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、反射層124まで伝播される間にその発生位置から大きく離れてしまい、反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に、光の発生位置から更に遠くまで離れてしまう傾向があった。シンチレータ内での光の発生位置と、その光がセンサパネルに入射する位置とが離れていると、放射線画像にボケが生じてしまう。また、再帰性反射層を用いた従来の放射線検出器では、再帰性反射層の反射効率が鏡面反射層よりも低いため、センサパネルによる検出光量が低下するという問題があった。センサパネルの検出光量が低下すると、放射線画像の画質が低下する。
【0057】
これに対し、本実施形態の放射線検出器19では、図9に示すように、シンチレータ37で発生した光の短波長成分90aは、第1の反射層42によって鏡面反射されるので、高い反射効率を得ることができ、検出光量の低下を防止することができる。また、短波長成分90aは、比較的屈折しやすく、柱状結晶39に対する入射角度が臨界角以上になりやすいので、鏡面反射を用いた場合でも、シンチレータ37内での光の発生位置から近い位置でセンサパネル23に入射させることができ、画像のボケを抑制することができる。
【0058】
また、短波長成分90aよりも屈性しにくい長波長成分90bは、反射層25に向けて伝播される間に光の発生位置から離れていくが、第1の反射層42を透過して第2の反射層43により再帰反射されるので、光の発生位置に近い位置でセンサパネル23に入射させることができる。これにより、長波長成分90bのクロストークを原因とする画像のボケを抑制することができる。このように、本発明では、光の波長に応じて鏡面反射と再帰反射とを選択的に適用しているので、鏡面反射と再帰反射とメリットを同時に享受しながら、鏡面反射と再帰反射とのデメリットは抑制することができるので、放射線画像の画質が向上する。
【0059】
なお、シンチレータ37に放射された放射線は、反射層25の近傍でシンチレータ37により光に変換される場合もある。図15に示す従来の放射線検出器では、反射層124の近傍で発生した長波長成分122bも反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に光の発生位置から遠くまで離れてしまう。しかし、図10に示すように、本実施形態では、長波長成分90bは、第2の反射層42を透過して第2の反射層43により再帰反射されるので、反射された光をその発生位置まで近付けることができる。
【0060】
上記実施形態では、シンチレータ37から発生された光の波長に応じて鏡面反射と再帰反射とを選択的に適用しているが、例えば光の入射角度に応じて鏡面反射と再帰反射とを選択的に適用してもよい。この場合、例えば、反射層に対する光の入射角度が柱状結晶の臨界角以上であるときには、第1の反射層で鏡面反射し、反射層に対する光の入射角度が柱状結晶の臨界角以下であるときには、第1の反射層を透過させ、第2の反射層で再帰反射すればよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、シンチレータ37をセンサパネル23に直接蒸着して形成したが、別の支持基板に蒸着してシンチレータ37を形成し、その後にシンチレータとセンサパネル23とを貼り合わせてもよい。この場合、例えば、図11(A)に示すように、アルミニウム等からなる支持基板100上に設けられた剥離層101にシンチレータ37を蒸着し、同図(B)に示すように、シンチレータ37から支持基板100及び剥離層101を剥離し、同図(C)に示すように、シンチレータ37に反射層25を密着させるとよい。
【0062】
また、図12(A)に示すように、光透過性及び耐熱性を有する樹脂からなる支持基板105上にシンチレータ37を蒸着し、同図(B)に示すように、支持基板105の他方の面に反射層25を形成し、あるいは反射層25を貼り合わせてもよい。この場合、支持基板105に用いる樹脂としては、透明ポリイミド、ポリアリレート(PAR)、二軸延伸ポリスチレンシート、アラミド等を用いることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、光電変換部46の光電変換膜46cをアモルファスシリコンによって構成したが、光電変換膜46cは、有機光電変換材料を含む材料で構成してもよい。この場合、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜46cによるシンチレータ37から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜46cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料からなる光電変換膜46cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料をセンサ基板33上に付着させることで形成させることができ、センサ基板33に対して耐熱性は要求されない。このため、ガラス以外の材質からなるセンサ基板を用いることもできる。
【0064】
光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜46cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するようにセンサパネル23が配置される表面読取方式(ISS)において、センサパネル23を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0065】
光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ37から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ37の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ37の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ37から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ37の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0066】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ37の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜46cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0067】
放射線検出パネルに適用可能な光電変換膜46cについて具体的に説明する。放射線検出パネルにおける電磁波吸収/光電変換部位は、電極46a、46bと、該電極46a,46bに挟まれた光電変換膜46cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0068】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0069】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜46cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0070】
また、光電変換部46は、少なくとも電極対46a,46bと光電変換膜46cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0071】
電子ブロッキング膜は、上部電極46bと光電変換膜46cとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極46bから光電変換膜46cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0072】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0073】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜46cと下部電極46aとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極46aから光電変換膜46cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0074】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0075】
なお、光電変換膜46cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極46aに移動し、電子が上部電極46bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0076】
また、TFT47の活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0077】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0078】
TFT47の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT47のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT47における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT47の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0080】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜46cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT47と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わるセンサパネル23の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0081】
また、センサ基板3は、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT47の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部46の光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、センサ基板33としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、センサ基板33には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0082】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層してセンサ基板33を形成してもよい。
【0083】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べてセンサ基板33を薄型化できる。
【0084】
センサ基板33としてガラス基板を用いた場合、センサパネル23全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、センサ基板33として光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いることにより、センサパネル23全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、センサパネル23に可撓性をもたせることができる。また、センサパネル23に可撓性をもたせることで、放射線撮影装置10の耐衝撃性が向上し、放射線撮影装置10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、センサ基板33をこれらの材料で形成した場合、センサ基板33による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)によりセンサパネル23を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0085】
上記実施形態では、センサパネル23として、光電変換部46及びTFT47からなる光センサ34を用いたが、CMOSセンサ、あるいは光電変換部(フォトダイオード)に有機光電変換材料を用いた有機CMOSセンサを光センサとして使用してもよい。基板に単結晶シリコンを用いるCMOSセンサまたは有機CMOSセンサは、アモルファスシリコンを用いた光電変換部と比べてキャリア移動度が3〜4桁ほど速く、放射線透過性が高いという特性を有しているためISS方式の放射線検出器に好適である。なお、有機CMOSセンサについては、特開2009−212377号公報において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0086】
上記CMOSセンサまたは有機CMOSセンサにフレキシブル性を付与するため、CMOSセンサまたは有機CMOSセンサを、プラスチックフイルム上に形成された有機薄膜トランジスタによって構成してもよい。なお、有機薄膜トランジスタについては、「Tsuyoshi Sekitani、「Flexible organic transistors and circuits with extreme bending stability」、Nature Materials 9、平成22年11月7日、p.1015-1022」において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0087】
また、上記CMOSセンサまたは有機CMOSセンサにフレキシブル性を付与するため、フレキシブル性を有するプラスチック基板上に、単結晶シリコンによって形成されたフォトダイオード及びトランジスタを配置した構成を用いてもよい。プラスチック基板上へのフォトダイオード及びトランジスタの配置には、例えば、数十ミクロン程度の大きさのデバイスブロックを溶液中で散布し、任意の基板上の必要な位置に配置する技術であるFluidic Self-Assembly(FSA)法を用いることができる。なお、FSA法については、「前澤宏一、「Fluidic Self-Assemblyのための共鳴トンネルデバイスブロック作製技術」、電子情報通信学会技術研究報告 ED,電子デバイス、社団法人電子情報通信学会、平成20年6月6日、108巻、87号、p.67-71」において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0088】
上記実施形態では、柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線検出器を例に説明したが、柱状結晶以外のシンチレータを用いた放射線検出器にも適用可能である。また、ISS方式の放射線検出装置を例に説明したが、本発明は、PSS方式の放射線検出装置にも適用が可能である。また、放射線検出器をカセッテサイズの筐体に組み込む例について説明したが、立位型、臥位型の撮影装置や、マンモグラフィ装置に組み込むことも可能である。その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線撮影装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
10 放射線撮影装置
19 放射線検出器
23 センサパネル
24 シンチレータパネル
25 反射層
37 シンチレータ
38 保護膜
39 柱状結晶
42 第1の反射層
43 第2の反射層
90a 短波長成分
90b 長波長成分
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって放射線から変換された光を検出するセンサパネルとを備えた放射線撮影装置及び製造方法に関し、更に詳しくは、シンチレータで変換された光をセンサパネルに向けて反射する反射層を備えた放射線撮影装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを対面配置した間接変換方式の放射線検出器を用いて、照射された放射線により表される放射線画像を撮影できるようにした放射線撮影装置が実用化されている。また、シンチレータから放射された光を有効利用するため、シンチレータのセンサパネルに対面する光出射方向とは反対側に、シンチレータから放射された光をセンサパネルに向けて反射する鏡面状の反射層を備えた放射線撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
シンチレータには、ヨウ化セシウム(以下、CsIと呼ぶ)等を基板に蒸着することにより、光出射方向に沿って複数の柱状結晶を立設したものがある。柱状結晶からなるシンチレータでは、放射線の照射によって発生した光は、柱状結晶のライトガイド効果によって柱状結晶中を全反射しながらセンサパネルに向けて進行するので、シンチレータから出射される光の散乱が抑制される。したがって、柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線撮影装置では、照射された放射線を画像として検出する際に、画像の鮮鋭度の低下を抑制することができる。
【0004】
柱状結晶からなるシンチレータでは、クロストークと呼ばれる現象の発生を防止するため、複数の柱状結晶間に隙間が設けられている。クロストークとは、柱状結晶同士が接触することにより、柱状結晶中を進行する光の一部が接触している他の柱状結晶へ移る現象である。シンチレータでクロストークが発生すると、シンチレータ内での光の発生位置と、その光がセンサパネルに入射する位置とに大きなずれが生じ、放射線画像のボケが引き起こされてしまう。
【0005】
上記クロストークは、柱状結晶同士が接触していなくても発生する。図13は、複数の柱状結晶121を備えたシンチレータ120の模式図であり、柱状結晶121a中を全反射しながら進行する光122は、柱状結晶121aの内壁面に対する入射角度θxが臨界角θc以下になったときに柱状結晶121aから放射され、隣接する柱状結晶121b内に入射してしまうためである。なお、CsIからなる柱状結晶の屈折率を1.8、柱状結晶間に存在する空気の屈折率を1.0としたとき、臨界角θcはおよそ34°となる。
【0006】
また、柱状結晶121aから柱状結晶121bに入射した光122は、柱状結晶121bから更に隣接する柱状結晶に放射され、柱状結晶121bから遠く離れた柱状結晶まで透過していくことがある。これは、柱状結晶121aと柱状結晶121bとの間隔が非常に狭いため、柱状結晶121aから放射された光122はほとんど屈折せず、光122の長波長成分122bは短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、柱状結晶121bに対する入射角度が臨界角θc以下となる状態が維持されるためである。
【0007】
上述した光の入射角度を原因とするクロストークは、シンチレータから直接センサパネルに向かって進行する光だけでなく、反射層によって反射されてセンサパネルに向かう光でも発生する。図14に示すように、シンチレータ120に入射した放射線は、シンチレータ120の入射領域で多くが光に変換される。この光のうち、短波長成分122aは、比較的屈折しやすいため、柱状結晶121a内を全反射しながら反射層124に向かう。また、短波長成分122aの反射層124に対する入射角度が臨界角以下となり、柱状結晶121aから柱状結晶121bに短波長成分122aが放射された場合でも、短波長成分122aは、屈折して臨界角以上の入射角度になりやすいため、シンチレータ120内での発生位置と、センサパネル125に対する入射位置とが大きく離れることはない。
【0008】
これに対し、図15に示すように、シンチレータ120の柱状結晶121cの入射領域で発生した光の長波長成分122bは、短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、反射層124まで伝播される間に光の発生位置から大きく離れてしまい、反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に、光の発生位置から更に遠くまで離れた柱状結晶121dの位置でセンサパネル125に入射してしまう。
【0009】
また、間接変換方式の放射線検出器には、図14に示すように、放射線の入射側からセンサパネル125、シンチレータ120及び反射層124を順に配置し、センサパネル125を透過した放射線をシンチレータ120で光に変換してセンサパネル125で検出する「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と、詳しくは図示しないが、放射線の入射側から反射層、シンチレータ及びセンサパネルを順に配置し、反射層を透過した放射線をシンチレータで光に変換する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」とがある。PSS方式では、シンチレータの放射線入射領域で発生した光は、すぐ近くに配置されている反射層により反射されてセンサパネルに向かうが、ISS方式では、シンチレータの放射線入射領域で発生した光は、シンチレータ内を反射層まで伝播され、反射層で反射されて再びシンチレータ内を伝播してセンサパネルに入射されるため、光の伝播距離がPSS方式のほぼ2倍となり、クロストークの影響が大きくなる。
【0010】
上記問題を解決するため、反射層に再帰性反射層を用いることが考えられる(例えば、特許文献2、3参照)。反射層に再帰性反射層を用いると、反射層に入射した光は、反射層によって入射方向に反射されるため、屈折しにくい長波長成分の光であっても、シンチレータ内での光の発生位置から比較的近い位置でセンサパネルに入射させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−271504号公報
【特許文献2】特開2002−055168号公報
【特許文献3】特開平09−090100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
再帰性反射層には、多数の微小なガラスビーズを用いたものと、多数の微小なプリズムを用いたものとがあるが、光の入射位置や入射角度によって光が再帰反射されずに、吸収または拡散する場合がある。そのため、再帰性反射層は、鏡面反射層に比べて反射効率が低いことが知られている。このような再帰性反射層を放射線撮影装置の反射層として用いた場合、センサパネルに対する入射光量が低下してしまい、放射線画像の画質が悪化することが懸念される。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するため、反射層の反射効率を低下させることなく、シンチレータで発生した長波長成分の光のクロストークを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の放射線撮影装置は、照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータの光出射側に配置され、シンチレータにより変換された光を検出するための光センサを有するセンサパネルと、シンチレータの光出射側と反対側に配置され、シンチレータによって変換された光を光出射側に向けて、選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層と、を備えている。
【0015】
反射層は、シンチレータにより変換された光の波長に応じて、選択的に鏡面反射または再帰反射を行なうようにしてもよい。この場合、反射層は、シンチレータによって変換された光の短波長成分を鏡面反射し、長波長成分を再帰反射することが好ましい。
【0016】
反射層は、短波長成分の光を鏡面反射し、長波長成分の光を透過させる第1の反射層と、第1の反射層を透過した長波長成分の光を再帰反射する第2の反射層とから構成してもよい。この場合、第1の反射層として、ダイクロイックフィルタを用いてもよい。
【0017】
本発明は、シンチレータの放射線照射側にセンサパネルが配置され、シンチレータには、センサパネルを透過した放射線が照射されるようにされた構成に対して特に有効である。また、本発明は、複数の立設された柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線撮影装置にも有効である。このようなシンチレータの材質としては、CsI:Tlを用いるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の放射線撮影装置の製造方法は、放射線を光に変換するシンチレータを、シンチレータによって変換された光を検出するための光センサを備えたセンサパネルに形成する工程と、シンチレータのセンサパネル側と反対側の面に、シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、から構成してもよい。
【0019】
また、本発明の別の放射線撮影装置の製造方法としては、支持基板上に設けられた剥離層上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、シンチレータから剥離層及び支持基板を剥離する工程と、シンチレータに、シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、シンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、から構成してもよい。
【0020】
また、本発明の更に別の放射線撮影装置の製造方法としては、光透過性を有する支持基板上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、支持基板上にシンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、シンチレータと、シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、から構成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、比較的屈折しやすくクロストークが発生しにくい短波長成分の光を選択的に鏡面反射するので、センサパネルによる検出光量の低下を防止することができる。また、短波長成分の光に比べて屈折しにくく、クロストークが発生しやすい長波長成分の光を選択的に再帰反射するので、長波長成分のクロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】放射線撮影装置を一部破断して示す斜視図である。
【図2】放射線撮影装置の概略断面図である。
【図3】放射線検出器の端部側断面図である。
【図4】CsI:Tlの発光特性を示すグラフである。
【図5】CsI:Naの発光特性を示すグラフである。
【図6】光センサの構成を模式的に示した断面図である。
【図7】放射線撮影装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】シンチレータの放射線入射領域で発生した光の短波長成分及び長波長成分の反射状態を示す模式的に示す概略図である。
【図10】シンチレータの反射層近傍で発生した長波長成分の光の反射状態を模式的に示す概略図である。
【図11】シンチレータ及び反射層の製造手順を模式的に示す概略図である。
【図12】シンチレータ及び反射層の別の製造手順を模式的に示す概略図である。
【図13】従来のシンチレータ内での光の経路を模式的に示す概略図である。
【図14】反射層により鏡面反射された短波長成分の光の経路を模式的に示す概略図である。
【図15】反射層により鏡面反射された長波長成分の光の経路を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、本発明に係る放射線撮影装置10は、全体形状がおよそ箱形で、矩形状の上面が放射線の照射面11とされた筐体12を備えている。筐体12は、放射線を透過させる材料からなり、照射面11が設けられている天板13以外の部分は、例えばABS樹脂等から構成され、天板13は例えばカーボン等から構成されている。これにより、天板13による放射線の吸収を抑制しつつ、天板13の強度が確保される。なお、筐体12は、放射線により感光材料に画像を記録する構成を備えた旧来のカセッテと同サイズであり、当該カセッテに代えて使用できるようになっている。
【0024】
放射線撮影装置10の照射面11には、複数個のLEDからなり、放射線撮影装置10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量等の動作状態を表示するための表示部16が設けられている。なお、表示部16は、LED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部16は、照射面11以外の部位に設けてもよい。
【0025】
放射線撮影装置10の筐体12内には、照射面11に対面するように、被撮影者の体を透過した放射線を検出するために、パネル状の放射線検出器19が配置されている。また、筐体12の内部には、照射面11の短手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ(二次電池)を収容するケース20が配置されている。放射線検出器19を含む放射線撮影装置10の各種電子回路は、ケース20内に収容されたバッテリから供給される電力によって作動する。筐体12内のうちケース20の照射面11側には、ケース20内に収容された各種電子回路が放射線の照射に伴って損傷することを回避するため、鉛板等からなる放射線遮蔽部材が配設されている。
【0026】
放射線検出器19は、放射線が照射される方向に沿って、照射面11側からセンサパネル23、シンチレータパネル24及び反射層25が積層された構成を有している。図2に示すように、センサパネル23は、天板13の内面に全面に亘って接着剤により貼り付けられている。センサパネル23の下面には、シンチレータパネル24が配置されており、シンチレータパネル24の下面には、反射層25が配置されている。シンチレータパネル24の外周には、シンチレータを湿気などから保護する封止剤28が設けられている。筐体12内の底面には、制御基板29が配置されている。制御基板29とセンサパネル23とは、フレキシブルケーブル30を介して電気的に接続されている。
【0027】
図3は、放射線検出器19の端縁側の断面図である。センサパネル23は、シンチレータパネル24から放射された光を検出するものであり、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされたセンサ基板33と、センサ基板33の下面に設けられた光センサ34とを備えている。センサ基板33には、光センサ34を構成するフォトダイオード(PD:PhotoDiode)を、例えばアモルファスシリコンの蒸着によって形成するため、耐熱性を有するガラス基板が用いられている。センサ基板33の厚みは、例えば700μm程度である。
【0028】
シンチレータパネル24は、センサ基板33上に蒸着により設けられたシンチレータ37と、シンチレータ37の外周を覆う保護膜38とから構成されている。シンチレータ37は、被撮影者の体を透過して筐体12の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過して照射された放射線を吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができる。本実施形態では、シンチレータ37として、センサ基板33にCsI:Tlを蒸着することにより、シンチレータ37からセンサパネル23に向かう光出射方向に沿って、複数の柱状結晶39を形成している。柱状結晶39は、その平均径が柱状結晶39の長手方向に沿っておよそ均一である。
【0029】
シンチレータ37で発生した光は、柱状結晶39のライトガイド効果によって柱状結晶39内を進行し、センサパネル23へ射出される。その際に、センサパネル23側へ射出される光の拡散が抑制されるので、放射線撮影装置10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ37の深部に到達した光は、反射板25によってセンサパネル23側へ反射されるので、センサパネル23に入射される光量(シンチレータ37で発光された光の検出効率)が向上する。
【0030】
上記構成のシンチレータ37におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。すなわち、CsIの充填率が過小(例えば70%未満)になるとシンチレータ37の発光量の低下が顕著になる一方、CsIの充填率が過大に(例えば85%よりも高く)なると、ある厚み以上では隣り合う柱状結晶が接触し始めるために、柱状結晶間で光のクロストークが発生する。このクロストークが発生すると、シンチレータ37への放射線照射量のパターンに対してシンチレータ37からの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。従って、放射線検出の感度及び精度を確保するために、隣り合う柱状結晶の間には適当な大きさの隙間を設ける必要がある。
【0031】
保護膜38には、大気中の水分に対してバリア性を有する材料が用いられ、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。有機膜としては、ポリパラキシリレン製樹脂の熱CVD法によって形成された気相重合膜、または含フッ素化合物不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜が用いられる。また有機膜と無機膜の積層構造を用いることも出来、無機膜の材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)膜、酸化珪素(SiOx)膜、酸窒化珪素(SiOxNy)膜、Al2O3等が好適である。
【0032】
なお、本実施形態では、シンチレータパネル24の放射線照射面側にセンサパネル23が配置されているが、シンチレータとセンサパネルとをこのような位置関係で配置する方式は、「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは、放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部の受光量が増大することで、結果として放射線撮影装置の感度が向上する。
【0033】
反射層25は、シンチレータパネル24の下面に密着された第1の反射層42と、第1の反射層42の下面に貼り合わされた第2の反射層43とから構成されている。第1の反射層42は、ダイクロイックフィルタからなり、長波長域の光を透過し、それ以下の波長域の光を鏡面反射する。図4に示すように、CsI:Tlが発生する光は、発光ピーク波長が565nmであるが、幅広い波長域(400nm〜700nm)の光を含んでいる。本実施形態における長波長域の光とは、シンチレータ37の発光ピーク波長565nmよりも長い波長域であり、例えば、620〜630nm以上の波長域の光を表している。
【0034】
また、図5に示すように、シンチレータ37として、CsI:Naを用いた場合には、第1の反射層42は、CsI:Naの発光ピーク波長(例えば、400nm程度)よりも長波長域の光、例えば480nm以上の波長域の光を透過し、それ以下の波長域の光を鏡面反射する。
【0035】
第2の反射層43は、再帰性反射層からなり、第1の反射層42を透過してきた長波長域の光をその入射方向に向けて再帰反射する。第2の反射層43を構成する再帰性反射層には、例えば、微小なガラスビーズを塗料内に混在させた再帰性反射塗料が塗布された再帰性反射板や、表面に多数のマイクロプリズムが設けられた再帰性反射板が用いられる。
【0036】
第1の反射層42は、センサパネル23にシンチレータ37が蒸着され、保護膜38によってシンチレータ37が覆われた後に、保護膜38の密着力を用いてシンチレータパネル24に密着されている。なお、光透過性の高い接着剤により、第1の反射層42とシンチレータパネル24とが貼り合わされていてもよい。また、第2の反射層43は、光透過性の高い接着剤によって第1の反射層42に貼り合わされている。
【0037】
次に、センサパネル23の光センサ34について説明する。図6に示すように、光センサ34は、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等からなる光電変換部46、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)47、及び蓄積容量48を備えた画素部49からなり、画素部49は、センサ基板33上にマトリクス状に複数形成されている。また、センサパネル23のうち、放射線の到来方向と反対側の面には、センサ基板33上を平坦にするための平坦化層50が形成されている。上述したように、センサパネル23は、接着層51によって天板13に貼り付けられている。
【0038】
光電変換部46は、下部電極46aと上部電極46bとの間に、シンチレータ37から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜46cが配置されて構成されている。なお、下部電極46aは、シンチレータ37から放出された光を光電変換膜46cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ37の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。
【0039】
なお、下部電極46aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極46aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0040】
光電変換膜46cを構成する材料は、光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜46cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ37から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。アモルファスシリコンからなる光電変換膜46cの形成には、蒸着を行う必要があるため、センサ基板33には、耐熱性を有するガラス基板を用いるのが好ましい。
【0041】
TFT47は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0042】
図7に示すように、光センサ34には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT47をオンオフさせるための複数本のゲート配線54と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT47を介して読み出すための複数本のデータ配線55が設けられている。
【0043】
センサパネル23の個々のゲート配線54はゲート線ドライバ58に接続されており、個々のデータ配線55は信号処理部59に接続されている。被撮影者の体を透過した放射線(被撮影者の体の画像情報を担持した放射線)が放射線撮影装置10に照射されると、シンチレータ37のうち照射面11上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部49の光電変換部46では、シンチレータ37のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部49の蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積される。
【0044】
上記のようにして個々の画素部49の蓄積容量48に電荷が蓄積されると、個々の画素部49のTFT47は、ゲート線ドライバ58からゲート配線54を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT47がオンされた画素部49の蓄積容量48に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線55を伝送されて信号処理部59に入力される。従って、個々の画素部49の蓄積容量48に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0045】
信号処理部59は、個々のデータ配線55毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線55を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0046】
信号処理部59には画像メモリ62が接続されており、信号処理部59のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ62に順に記憶される。画像メモリ62は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ62に順次記憶される。
【0047】
画像メモリ62は、放射線撮影装置10全体の動作を制御する制御部64と接続されている。制御部64は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU64a、ROM及びRAMを含むメモリ64b、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部64cを備えている。
【0048】
また、制御部64には無線通信部66が接続されている。無線通信部66は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。制御部64は、無線通信部66を介してコンソール70(図8参照)と無線通信が可能とされており、コンソール70との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0049】
また、放射線撮影装置10には電源部67が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ58や信号処理部59、画像メモリ62、無線通信部66、制御部64等)は電源部67と各々接続され(図示省略)、電源部67から供給された電力によって作動する。電源部67は、放射線撮影装置10の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。ゲート線ドライバ58、信号処理部59、画像メモリ62、制御部64、無線通信部66及び電源部67は、上述したケース20内、もしくは制御基板29に設けられている。
【0050】
図8に示すように、コンソール70はコンピュータからなり、装置全体の動作を司るCPU71、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM72、各種データを一時的に記憶するRAM73、及び、各種データを記憶するHDD74を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部75及び無線通信部76が接続され、ディスプレイ77がディスプレイドライバ78を介して接続され、更に、操作パネル79が操作入力検出部80を介して接続されている。
【0051】
通信I/F部75は接続端子75a、通信ケーブル82及び放射線発生装置83の接続端子83aを介して放射線発生装置83と接続されている。コンソール70(のCPU71)は、放射線発生装置83との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部75経由で行う。無線通信部76は放射線撮影装置10の無線通信部66と無線通信を行う機能を備えており、コンソール70(のCPU71)は放射線撮影装置10との間で、画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部76経由で行う。また、ディスプレイドライバ78はディスプレイ77への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール70(のCPU71)はディスプレイドライバ78を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ77に表示させる。また、操作パネル79は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部80は操作パネル79に対する操作を検出し、検出結果をCPU71へ通知する。
【0052】
放射線発生装置83は、放射線源85と、コンソール70との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部86と、コンソール70から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源85を制御する線源制御部87とを備えている。
【0053】
次に本実施形態の作用を説明する。放射線撮影装置10を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、被撮影者の撮影対象部位と撮影台との間に、照射面11側を上方へ向けた放射線撮影装置10を挿入し、向きや位置等を調整する準備作業を行う。
【0054】
撮影者は、準備作業が完了すると、操作パネル79を操作して撮影開始を指示する。これにより、コンソール70では、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置83へ送信し、放射線発生装置83は放射線源85から放射線を射出させる。放射線源85から射出された放射線は、被撮影者の体を透過して放射線撮影装置10の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過してシンチレータ37の照射/光射出面に照射される。シンチレータ37は照射/光射出面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を射出する。
【0055】
センサパネル23は、画素部49に照射された光を画像として検出し、画像メモリ62に画像データを記憶する。CPU64aは、画像メモリ62に記憶された画像データを無線通信部66によってコンソール70へ送信する。コンソール70のCPU71は、放射線撮影装置10から受信した画像データを、RAM73を介してHDD74に記憶する。また、CPU71は、ディスプレイドライバ78を介して、HDD74に記憶されている画像データからなる放射線画像をディスプレイ77に表示させる。
【0056】
図15に示すように、従来の放射線検出器では、シンチレータ120の入射領域で発生した光の長波長成分122bは、短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、反射層124まで伝播される間にその発生位置から大きく離れてしまい、反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に、光の発生位置から更に遠くまで離れてしまう傾向があった。シンチレータ内での光の発生位置と、その光がセンサパネルに入射する位置とが離れていると、放射線画像にボケが生じてしまう。また、再帰性反射層を用いた従来の放射線検出器では、再帰性反射層の反射効率が鏡面反射層よりも低いため、センサパネルによる検出光量が低下するという問題があった。センサパネルの検出光量が低下すると、放射線画像の画質が低下する。
【0057】
これに対し、本実施形態の放射線検出器19では、図9に示すように、シンチレータ37で発生した光の短波長成分90aは、第1の反射層42によって鏡面反射されるので、高い反射効率を得ることができ、検出光量の低下を防止することができる。また、短波長成分90aは、比較的屈折しやすく、柱状結晶39に対する入射角度が臨界角以上になりやすいので、鏡面反射を用いた場合でも、シンチレータ37内での光の発生位置から近い位置でセンサパネル23に入射させることができ、画像のボケを抑制することができる。
【0058】
また、短波長成分90aよりも屈性しにくい長波長成分90bは、反射層25に向けて伝播される間に光の発生位置から離れていくが、第1の反射層42を透過して第2の反射層43により再帰反射されるので、光の発生位置に近い位置でセンサパネル23に入射させることができる。これにより、長波長成分90bのクロストークを原因とする画像のボケを抑制することができる。このように、本発明では、光の波長に応じて鏡面反射と再帰反射とを選択的に適用しているので、鏡面反射と再帰反射とメリットを同時に享受しながら、鏡面反射と再帰反射とのデメリットは抑制することができるので、放射線画像の画質が向上する。
【0059】
なお、シンチレータ37に放射された放射線は、反射層25の近傍でシンチレータ37により光に変換される場合もある。図15に示す従来の放射線検出器では、反射層124の近傍で発生した長波長成分122bも反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に光の発生位置から遠くまで離れてしまう。しかし、図10に示すように、本実施形態では、長波長成分90bは、第2の反射層42を透過して第2の反射層43により再帰反射されるので、反射された光をその発生位置まで近付けることができる。
【0060】
上記実施形態では、シンチレータ37から発生された光の波長に応じて鏡面反射と再帰反射とを選択的に適用しているが、例えば光の入射角度に応じて鏡面反射と再帰反射とを選択的に適用してもよい。この場合、例えば、反射層に対する光の入射角度が柱状結晶の臨界角以上であるときには、第1の反射層で鏡面反射し、反射層に対する光の入射角度が柱状結晶の臨界角以下であるときには、第1の反射層を透過させ、第2の反射層で再帰反射すればよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、シンチレータ37をセンサパネル23に直接蒸着して形成したが、別の支持基板に蒸着してシンチレータ37を形成し、その後にシンチレータとセンサパネル23とを貼り合わせてもよい。この場合、例えば、図11(A)に示すように、アルミニウム等からなる支持基板100上に設けられた剥離層101にシンチレータ37を蒸着し、同図(B)に示すように、シンチレータ37から支持基板100及び剥離層101を剥離し、同図(C)に示すように、シンチレータ37に反射層25を密着させるとよい。
【0062】
また、図12(A)に示すように、光透過性及び耐熱性を有する樹脂からなる支持基板105上にシンチレータ37を蒸着し、同図(B)に示すように、支持基板105の他方の面に反射層25を形成し、あるいは反射層25を貼り合わせてもよい。この場合、支持基板105に用いる樹脂としては、透明ポリイミド、ポリアリレート(PAR)、二軸延伸ポリスチレンシート、アラミド等を用いることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、光電変換部46の光電変換膜46cをアモルファスシリコンによって構成したが、光電変換膜46cは、有機光電変換材料を含む材料で構成してもよい。この場合、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜46cによるシンチレータ37から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜46cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料からなる光電変換膜46cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料をセンサ基板33上に付着させることで形成させることができ、センサ基板33に対して耐熱性は要求されない。このため、ガラス以外の材質からなるセンサ基板を用いることもできる。
【0064】
光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜46cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するようにセンサパネル23が配置される表面読取方式(ISS)において、センサパネル23を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0065】
光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ37から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ37の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ37の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ37から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ37の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0066】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ37の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜46cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0067】
放射線検出パネルに適用可能な光電変換膜46cについて具体的に説明する。放射線検出パネルにおける電磁波吸収/光電変換部位は、電極46a、46bと、該電極46a,46bに挟まれた光電変換膜46cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0068】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0069】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜46cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0070】
また、光電変換部46は、少なくとも電極対46a,46bと光電変換膜46cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0071】
電子ブロッキング膜は、上部電極46bと光電変換膜46cとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極46bから光電変換膜46cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0072】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0073】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜46cと下部電極46aとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極46aから光電変換膜46cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0074】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0075】
なお、光電変換膜46cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極46aに移動し、電子が上部電極46bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0076】
また、TFT47の活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0077】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0078】
TFT47の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT47のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT47における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT47の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0080】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜46cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT47と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わるセンサパネル23の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0081】
また、センサ基板3は、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT47の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部46の光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、センサ基板33としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、センサ基板33には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0082】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層してセンサ基板33を形成してもよい。
【0083】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べてセンサ基板33を薄型化できる。
【0084】
センサ基板33としてガラス基板を用いた場合、センサパネル23全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、センサ基板33として光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いることにより、センサパネル23全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、センサパネル23に可撓性をもたせることができる。また、センサパネル23に可撓性をもたせることで、放射線撮影装置10の耐衝撃性が向上し、放射線撮影装置10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、センサ基板33をこれらの材料で形成した場合、センサ基板33による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)によりセンサパネル23を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0085】
上記実施形態では、センサパネル23として、光電変換部46及びTFT47からなる光センサ34を用いたが、CMOSセンサ、あるいは光電変換部(フォトダイオード)に有機光電変換材料を用いた有機CMOSセンサを光センサとして使用してもよい。基板に単結晶シリコンを用いるCMOSセンサまたは有機CMOSセンサは、アモルファスシリコンを用いた光電変換部と比べてキャリア移動度が3〜4桁ほど速く、放射線透過性が高いという特性を有しているためISS方式の放射線検出器に好適である。なお、有機CMOSセンサについては、特開2009−212377号公報において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0086】
上記CMOSセンサまたは有機CMOSセンサにフレキシブル性を付与するため、CMOSセンサまたは有機CMOSセンサを、プラスチックフイルム上に形成された有機薄膜トランジスタによって構成してもよい。なお、有機薄膜トランジスタについては、「Tsuyoshi Sekitani、「Flexible organic transistors and circuits with extreme bending stability」、Nature Materials 9、平成22年11月7日、p.1015-1022」において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0087】
また、上記CMOSセンサまたは有機CMOSセンサにフレキシブル性を付与するため、フレキシブル性を有するプラスチック基板上に、単結晶シリコンによって形成されたフォトダイオード及びトランジスタを配置した構成を用いてもよい。プラスチック基板上へのフォトダイオード及びトランジスタの配置には、例えば、数十ミクロン程度の大きさのデバイスブロックを溶液中で散布し、任意の基板上の必要な位置に配置する技術であるFluidic Self-Assembly(FSA)法を用いることができる。なお、FSA法については、「前澤宏一、「Fluidic Self-Assemblyのための共鳴トンネルデバイスブロック作製技術」、電子情報通信学会技術研究報告 ED,電子デバイス、社団法人電子情報通信学会、平成20年6月6日、108巻、87号、p.67-71」において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0088】
上記実施形態では、柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線検出器を例に説明したが、柱状結晶以外のシンチレータを用いた放射線検出器にも適用可能である。また、ISS方式の放射線検出装置を例に説明したが、本発明は、PSS方式の放射線検出装置にも適用が可能である。また、放射線検出器をカセッテサイズの筐体に組み込む例について説明したが、立位型、臥位型の撮影装置や、マンモグラフィ装置に組み込むことも可能である。その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線撮影装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
10 放射線撮影装置
19 放射線検出器
23 センサパネル
24 シンチレータパネル
25 反射層
37 シンチレータ
38 保護膜
39 柱状結晶
42 第1の反射層
43 第2の反射層
90a 短波長成分
90b 長波長成分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線を光に変換するシンチレータと、
前記シンチレータの光出射側に配置され、前記シンチレータにより変換された光を検出するための光センサを有するセンサパネルと、
前記シンチレータの光出射側と反対側に配置され、前記シンチレータによって変換された光を前記光出射側に向けて、選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記反射層は、前記シンチレータにより変換された光の波長に応じて、選択的に鏡面反射または再帰反射を行なうことを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記反射層は、前記シンチレータによって変換された光の短波長成分を鏡面反射し、長波長成分を再帰反射することを特徴とする請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記反射層は、短波長成分の光を鏡面反射し、長波長成分の光を透過させる第1の反射層と、前記第1の反射層を透過した長波長成分の光を再帰反射する第2の反射層と、を備えていることを特徴とする請求項3記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記第1の反射層は、ダイクロイックフィルタであることを特徴とする請求項4記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記センサパネルは、前記シンチレータの放射線照射側に配置されており、前記シンチレータには、前記センサパネルを透過した放射線が照射されることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記シンチレータは、複数の立設された柱状結晶からなることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記シンチレータは、CsI:Tlからなることを特徴とする請求項7記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
放射線を光に変換するシンチレータを、前記シンチレータによって変換された光を検出するための光センサを備えたセンサパネルに形成する工程と、
前記シンチレータの前記センサパネル側と反対側の面に、前記シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置の製造方法。
【請求項10】
支持基板上に設けられた剥離層上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、
前記シンチレータから、前記剥離層及び前記支持基板を剥離する工程と、
前記シンチレータに、前記シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、
前記シンチレータと、前記シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置の製造方法。
【請求項11】
光透過性を有する支持基板上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、
前記支持基板上に、前記シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、
前記シンチレータと、前記シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置の製造方法。
【請求項1】
照射された放射線を光に変換するシンチレータと、
前記シンチレータの光出射側に配置され、前記シンチレータにより変換された光を検出するための光センサを有するセンサパネルと、
前記シンチレータの光出射側と反対側に配置され、前記シンチレータによって変換された光を前記光出射側に向けて、選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記反射層は、前記シンチレータにより変換された光の波長に応じて、選択的に鏡面反射または再帰反射を行なうことを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記反射層は、前記シンチレータによって変換された光の短波長成分を鏡面反射し、長波長成分を再帰反射することを特徴とする請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記反射層は、短波長成分の光を鏡面反射し、長波長成分の光を透過させる第1の反射層と、前記第1の反射層を透過した長波長成分の光を再帰反射する第2の反射層と、を備えていることを特徴とする請求項3記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記第1の反射層は、ダイクロイックフィルタであることを特徴とする請求項4記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記センサパネルは、前記シンチレータの放射線照射側に配置されており、前記シンチレータには、前記センサパネルを透過した放射線が照射されることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記シンチレータは、複数の立設された柱状結晶からなることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記シンチレータは、CsI:Tlからなることを特徴とする請求項7記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
放射線を光に変換するシンチレータを、前記シンチレータによって変換された光を検出するための光センサを備えたセンサパネルに形成する工程と、
前記シンチレータの前記センサパネル側と反対側の面に、前記シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置の製造方法。
【請求項10】
支持基板上に設けられた剥離層上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、
前記シンチレータから、前記剥離層及び前記支持基板を剥離する工程と、
前記シンチレータに、前記シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、
前記シンチレータと、前記シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置の製造方法。
【請求項11】
光透過性を有する支持基板上に、放射線を光に変換するシンチレータを形成する工程と、
前記支持基板上に、前記シンチレータによって変換された光を選択的に鏡面反射または再帰反射する反射層を設ける工程と、
前記シンチレータと、前記シンチレータによって変換された光を検出するセンサパネルとを貼り合わせる工程と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−220272(P2012−220272A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84511(P2011−84511)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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