説明

放射線撮影装置

【課題】見かけ上のバイアス電圧における変動の影響を排除して、コンデンサ行列の検出信号を取得し、生成される画像に偽像が写りこむことがない放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成は、X線管3のX線ビームの照射を禁止する照射禁止部7と、読み出し制御部8の読み出しを禁止する読み出し禁止手段とを備え、照射禁止部7によってX線管3のX線の照射が禁止されたときは、読み出し禁止部9は、検出信号の読み出しの開始を禁止する構成となっている。この様にすると、X線ビームの照射と、FPD4の検出信号の読み出しとが1対1で対応する。すると、コンデンサ行列の1列が読み出される度に、見かけ上のバイアス電圧は、一定となっているのである。かくして、本発明の構成によれば、X線ビームの影響が写りこんでいないX線透視画像が取得できるのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線を検出信号に変換する放射線検出器を備えた放射線撮影装置に関し、特に、放射線を電荷に変換するアモルファス・セレン層を有し、アモルファス・セレン層にバイアス電圧がかけられる放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線をイメージングする放射線撮影装置は、放射線を検出信号に変換する放射線検出器を有している。それには、放射線を電荷に変換する変換層を有するものがある。この様な放射線検出器の従来の構成について説明する。従来の放射線検出器51は、図7に示すように、表面電極層52と、アモルファス・セレン層53と、支持層54と、コンデンサ55を有している。そして、表面電極層52,アモルファス・セレン層53,支持層54は、この順に積層されている。そして、表面電極層52は、バイアス電圧供給端子52aと電気的に接続されている。また、支持層54には、収集電極54aが埋め込まれている。放射線検出器51において、この収集電極54aは、複数個設けられており、収集電極54aは、各層52,53,54の広がる平面に沿って二次元的に配列されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
収集電極54aは、アモルファス・セレン層53に接触しているとともに、コンデンサ55に電気的に接続されている。
【0004】
従来の放射線検出器51の動作について説明する。放射線rは、表面電極層52を貫通してアモルファス・セレン層53に進入する。ここで放射線rは、電子とホールからなるキャリア対に変換される。つまり、アモルファス・セレン層53は、放射線rが照射されている間、弱い起電力を有している。
【0005】
ところで、表面電極層52には、一定のバイアス電圧がかけられており、アモルファス・セレン層53は、所定の電場が生成された状態となっている。つまり、キャリア対は、この生成された電場によって誘導され、収集電極54aによって、いずれか一種類のキャリアが収集電極54aに収集される。この収集されたキャリアは、コンデンサ55によって蓄積される。つまり、コンデンサ55には、電荷が蓄積される。この電荷の蓄積量が放射線の照射強度を示しているのである。
【0006】
このコンデンサ55の各々には、蓄積された電荷を読み出すためのトランジスタが設けられている。トランジスタのゲートを制御することで、コンデンサ55に蓄積された電荷が読み出され、これが、放射線の検出強度を表した検出信号となる。
【0007】
コンデンサ55は、図8に示すように、収集電極54aと同様に、二次元的に配列され、コンデンサ行列を形成している。検出信号を読み出すときには、一度にコンデンサ行列の全域について読み出しを実行することはできないので、同じ列Cに属するコンデンサ55について同時に読み出し、以降、列Cを変えながら、一列づつコンデンサ55の読み出しが行われる。すなわち、放射線検出器51に設けられたコンデンサ行列の全域について読み出しが完了するには、所定の時間を要するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−34509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
従来の構成によれば、放射線が照射されると、アモルファス・セレン層53には、弱い起電力が発生していることを無視した構成となっているのである。図9に示すようにアモルファス・セレン層53に放射線が照射されると、アモルファス・セレン層53が起電力を有し、バイアス電圧HVは急激に低下する。そして、放射線の照射が終了すると、アモルファス・セレン層53は起電力を失い、バイアス電圧HVは、先程の急激な低下の反動で穏やかに上昇する。やがて、バイアス電圧HVは穏やかに降下して、一定の値に落ち着く。このようなバイアス電圧HVの変動は、約20ミリ秒の間続く。
【0010】
放射線検出器51から検出信号を読み出すときに、図10の点線で示す各区画ごとにキャリアが読み出されるものとする。つまり図11のタイミングチャートが示すように、シーケンスXで示すX線の照射が終了した後、シーケンスRで示すようにキャリアは区画R1から順に区画Rnまで逐次読み出される。全ての読み出しが終わると、X線が続いて曝射され、キャリアは再び区画R1から区画Rnの順に読み出される。この様に、放射線検出器51は、X線が照射される毎に何度も読み出され、一回の読み出しに注目すれば、キャリアは、区画R1から区画Rnまで逐次読み出される。コンデンサ55の各列は、区画の各々に対応している。したがって、コンデンサ55の一列を読み出せば、区画R1〜Rnのいずれかを読み出すことになる。
【0011】
図11に示すように、バイアス電圧HVは、放射線が照射中、急激な低下を見せ、そこから穏やかに変化する。そして、次の放射線の照射は、バイアス電圧HVの電圧が安定するのを待たずに行われる。つまり、バイアス電圧HVの経時変化は、放射線の照射のたびにリセットされる。
【0012】
ところで、放射線検出器51における検出データの読み出しは、共通クロック信号を基準として行われる。この共通クロック信号は、検出データの読み出しの後段の処理である、画像生成処理や、画像変換処理の基準ともなっている。この様にすることで、検出データの処理に関する一連のフローを同期させ、レスポンスの速い画像生成が可能となる。
【0013】
X線照射の間隔を広げて放射線検出器51のおける検出データの読み出し頻度を減少させたい場合、共通クロック信号のクロックを下げずに、放射線の照射Xの回数を間引いて減少させる。共通クロックを遅くしてX線照射の間隔を広げることもできるが、共通クロック信号は、画像生成処理や、画像変換処理の基準ともなっているので、画像の生成に遅延が生じてしまう。そこで、共通クロック信号のクロックを下げない構成としているのである。
【0014】
共通クロックが下がっていないので、放射線の照射が行われていないにもかかわらず検出信号の読み出しが行われる場合が生じる。この動作を「検出信号の空読み」と呼び、空読みで取得された検出信号は画像の生成には使用されない。この様子を図12に示す。符号Vは、検出信号の空読みを示している。放射線検出器51の読み出しは、空読みであっても区画R1〜区画Rnの順に逐一、実行される。なお、放射線検出器51における検出データの読み出しは、空読みと区別して「実読み」と呼ぶことにする。これは、図12において符号Aで表している。
【0015】
空読みVの実行中は、バイアス電圧HVが一定であれば望ましい。区画R1〜区画Rnの読み出しに亘ってバイアス電圧HVが低下すると、次の様な不具合が起こる。区画R1の空読みにおいては、キャリアが強い電場で吸い出され、区画R1におけるキャリアが少ない状態となる。そして、区画R2〜区画Rnを続けて空読みすると徐々にバイアス電圧HVが低下するので、キャリアを吸引する電場は徐々に弱くなり、区画Rnにおいては、読み出されず残ったキャリアが区画R1よりも多い状態となる。つまり、空読みを行うと、区画R1〜区画Rnに亘って残ったキャリアの分布にムラが出てしまう。このような空読みによるキャリアの分布にムラが残存したまま放射線検出器51に放射線を照射して画像の生成を行うと、このムラが画像に写りこむ。すなわち、画像の区画R1に相当する付近は暗く、そこから区画Rnに相当する部分に向けて明るくなるような偽像が写りこむ。
【0016】
一方、実読みAの実行中もバイアス電圧HVが一定であれば望ましい。区画R1〜区画Rnの読み出しに亘ってバイアス電圧HVが上昇すると、次の様な不具合が起こる。区画R1の実読みにおいては、キャリアが弱い電場で吸い出され、区画R1におけるキャリアを十分に検出することができない。そして、区画R2〜区画Rnを続けて実読みすると徐々にバイアス電圧HVが上昇するので、キャリアを吸引する電場は徐々に強くなり、区画Rnにおいて吸い出されるキャリアは、区画R1よりも多い状態となる。実読みされた検出信号を組み立てて画像を生成すると、画像の区画R1に相当する付近は暗く、そこから区画Rnに相当する部分に向けて明るくなるような偽像が写りこむ。
【0017】
空読Vみと実読みAを交互に行う場合、図12に示すXの黒いバーで示す示す放射線が照射中、バイアス電圧HVは、低下する。そこから期間T1の間、バイアス電圧HVが上昇し、その後の期間T2の間、バイアス電圧HVが低下する。実読みAは、期間T1の最中に行われ、空読みVは、期間T2の最中に行われる。つまり、実読みAの期間中はバイアス電圧HVが高まり、空読みVの期間中はバイアス電圧HVが弱まる。
【0018】
これらのことからすると、画像には、空読みV、および実読みAの両方に影響されて同様の分布の偽像が重なって写りこむことになる。2つの偽像は重なって強め合い、画像に目立って表れてしまう。すなわち、X線照射の間隔を広げて放射線検出器51のおける検出データの読み出し頻度を減少させたい場合、実読みAと空読みVとが入り混じって実行されるので、画像の区画R1に相当する付近は暗く、そこから区画Rnに相当する部分に向けて明るくなるような偽像がはっきりと現れてしまう。
【0019】
また、バイアス電圧HVの経時変化は、上述のような波形をしているとは限らず、図13に示すように複数のピークを有する場合もある。このような波形は、バイアス電圧HVがハンチングして生じるものであり、これも、偽像の原因となる。いずれにせよ、放射線が照射されると、同様の波形が繰り返し発生する。
【0020】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、見かけ上のバイアス電圧における変動の影響を排除して、コンデンサ行列の検出信号を取得し、生成される画像に偽像が写りこむことがない放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、この様な目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る発明は、放射線を照射する放射線源と、蓄積された電荷を出力することで放射線の検出信号を出力する放射線検出手段と、放射線源を制御する放射線源制御手段と、放射線検出手段の検出信号の読み出しを制御する読み出し制御手段と、検出信号を基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、(A1)読み出し制御手段の読み出しを禁止する読み出し禁止手段と、(B)読み出し制御手段に読み出しの開始のタイミングを示す動作クロック信号を送出するクロック信号発生手段とを更に備え、(C1)読み出し禁止手段は、放射線源が照射された時に検出信号の読み出しを許可し、動作クロック信号の送出に係らずこれ以外のタイミングでの読み出しの開始を禁止することを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]本発明によれば、放射線の照射の影響による偽像が放射線透視画像に出現することを抑制することができる。本発明の構成は、読み出し禁止手段は、放射線源が照射された時に検出信号の読み出しを許可し、動作クロック信号の送出に係らずこれ以外のタイミングでの読み出しの開始を禁止する。具体的には、読み出し禁止手段は、放射線源が一度照射された後に検出信号の読み出しを一度だけ許可し、これ以外のタイミングでの読み出しを動作クロック信号の送出に係らず禁止する構成となっている。
【0023】
この様にすると、放射線の照射と、放射線照射手段の検出信号の読み出しとが1対1で対応する。すると、放射線の照射に起因する検出信号の変動と、検出信号の読み出しとの相対的なタイミングは、放射線の照射の度に再現される。放射線照射手段における検出信号の読み出しのうち、最初に読み出されるコンデンサにおける読み出し(アモルファス・セレン層などの変換層における最初に読み出される区画の読み出し)は、放射線の照射の度ごとに実行されることになる。そのときに、今回の読み出しにおける検出信号の変動と、次回の読み出しにおける検出信号の変動とが互いに相殺するので、結局、最初に読み出しで取得された検出信号には、放射線の照射に起因する検出信号の変動は、キャンセルされる。このような関係は、最初の一列に限らず、コンデンサ配列の各々(アモルファス・セレン層の区画の各々)にも当てはまる。かくして、本発明の構成によれば、放射線の照射の影響が写りこんでいない放射線透視画像が取得できるのである。
【0024】
また、請求項2に係る発明は、放射線を照射する放射線源と、蓄積された電荷を出力することで放射線の検出信号を出力する放射線検出手段と、放射線源を制御する放射線源制御手段と、放射線検出手段の検出信号の読み出しを制御する読み出し制御手段と、検出信号を基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、(A2)読み出し制御手段の読み出しを遅延させる読み出し遅延手段と、(C2)読み出し遅延手段は、放射線が照射されてから、所定の遅延時間だけ検出信号の読み出しを遅延させ、以降、放射線源から放射線が照射される度に、読み出し遅延手段は、所定の遅延時間だけ検出信号の読み出しを遅延させることを特徴とするものである。
【0025】
[作用・効果]本発明の構成によれば、放射線の照射の影響による偽像が放射線透視画像に出現することを抑制することができる。本発明の構成は、放射線源の放射線の照射が許可された場合と禁止された場合とがある。しかも、本発明の構成は、読み出し制御手段の読み出しを遅延させる読み出し遅延手段とを備えている。そして、放射線が照射されたとき、読み出し遅延手段は、放射線の照射から所定の遅延時間だけ検出信号の読み出しを遅延され、以降、放射線源から放射線が照射される度に、読み出し遅延手段は、所定の遅延時間だけ検出信号の読み出しを遅延させる構成となっている。
【0026】
この様な構成となっていると、放射線の照射を基準として、放射線検出手段における検出信号の読み出しが遅延される。つまり、放射線検出手段における検出信号の読み出しの期間と、放射線の照射に起因する検出信号の変動が生じている期間とが、重ならないようにすることができるので、放射線の照射に起因して、検出信号が過大・過小なものとなることはない。
【0027】
また、請求項2の構成によれば、必ずしも放射線の照射と、検出信号の読み出しとが1対1で対応させる必要はない。つまり、放射線検出手段において、空読みを実行する構成とすることができるのである。動画のフレームレートを遅くしようとして、放射線の照射の間隔を長くすると、検出信号の読み出しが実行される間隔も長いものとなる。その間に、例えば、可視光線が放射線検出手段に照射することなどによって、放射線によらない電荷の蓄積がコンデンサで生じることがある。請求項2の構成によれば、放射線の照射の間隔を長くしても、放射線の照射におけるインターバルの期間中に、空読みを実行することで、検出信号の読み出しが実行される間隔を短くすることができる。したがって、放射線検出手の有するコンデンサは、常にリフレッシュされ、放射線によらない電荷の蓄積を極力抑制することができる。
【0028】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の放射線撮影装置において、放射線検出手段は、放射線を電荷に変換する変換手段と、電荷を蓄積する蓄積手段と、変換手段に所定の電場を生成することで、電荷を蓄積手段に誘導する電場生成手段とを備え、そして、放射線撮影装置は、電荷の発生に起因する所定の電場の撹乱状況を記憶する撹乱状況記憶手段を更に備え、読み出し遅延手段は、撹乱状況記憶手段に記憶された所定の電場の撹乱状況を基に、放射線の照射から電場の撹乱が収束するまでの時間を求め、これを遅延時間とすることを特徴とするものである。
【0029】
[作用・効果]請求項2の構成によれば、放射線検出手段の検出信号をどの程度遅延させるかが問題となる。請求項3の構成は、この遅延時間を求めるための具体的な態様を示したものである。すなわち、請求項3の構成は、電荷の発生に起因する所定の電場の撹乱状況を記憶する撹乱状況記憶手段を備えている。そして、読み出し遅延手段は、撹乱状況記憶手段に記憶された所定の電場の撹乱状況を基に、放射線の照射から電場の撹乱が収束するまでの時間を把握し、これを遅延時間とする。この様な構成とすれば、遅延時間の経過後には、電場の撹乱は、確実に収束していることになる。したがって、より確実に放射線検出手段における検出信号の読み出しの期間と、放射線の照射に起因する検出信号の変動が生じている期間とが、重ならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
従来の構成によれば、放射線検出手段の読み出しが、放射線の照射によって乱されるという事実を無視した構成となっている。したがって、放射線の照射に起因して、検出信号が過大・過小なものとなるので、放射線透視画像には、偽像が生じる。そこで、本発明は、このような偽像と放射線検出手段の読み出しのタイミングとの関係に注目して、放射線検出手段から検出データを読み出す度に変換手段に生成された電場の状況が再現される構成としたのである。具体的には、放射線照射手段の検出信号の読み出しとを1対1で対応させる構成とすることもできれば、放射線検出手段における検出信号の読み出しの期間と、放射線の照射に起因する検出信号の変動が生じている期間とが、重ならないようにする構成とすることもできる。いずれの場合においても、放射線検出手段から検出データを読み出す度に変換手段に生成された電場の状況が再現されることには変わりはない。このように構成することで、放射線の照射に起因して、検出信号が過大・過小なものとなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図4】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図5】実施例2に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図6】実施例2に係るX線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図7】従来の放射線撮影装置の構成を説明する断面図である。
【図8】従来の放射線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【図9】従来の放射線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図10】従来の放射線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図11】従来の放射線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図12】従来の放射線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図13】従来の放射線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。
【実施例1】
【0032】
以降、本発明に係る放射線撮影装置の各実施例について、図面を参照して説明する。また、以降の各実施例において、放射線の具体例として、X線を例に挙げて説明する。
【0033】
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。図1は、実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線撮影装置1には、被検体Mを載置する天板2と、その天板2の上部に設けられ、パルス状のX線ビームを照射するX線管3と、天板2の下部に設けられ、被検体Mを透過したX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)4と、FPD4に入射する散乱X線を除去するX線グリッド5とが設けられている。また、実施例1の構成は、X線管3の管電圧、管電流やX線ビームの照射時間を制御するX線管制御部6と、X線管3のX線照射を一定時間のあいだ禁止することで、X線ビームの照射回数を間引く照射禁止部7とを備えている。そのうえ、実施例1の構成は、FPD4に対して検出信号の読み出しを制御する読み出し制御部8と、FPD4の信号の読み出しを一定時間のあいだ禁止する読み出し禁止部9とが備えられている。また、実施例1の構成は、FPD4から出力された検出信号を受信し、被検体の透視像が写りこんだX線透視画像を生成する画像生成部11と、X線透視画像を受信して、明るさの処理等を行って、X線透視画像をより視認に好適なものとする画像編集部12とを備えている。なお、X線管3は、本発明の放射線源に相当し、X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当する。また、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当し、読み出し制御部8は、本発明の読み出し制御手段に相当する。また、読み出し禁止部9は、本発明の読み出し禁止手段に相当し、照射禁止部7は、本発明の照射禁止手段に相当する。また、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0034】
また、X線撮影装置1は、オペレータの指示を受け付ける操作卓23と、X線透視画像、または動画が表示される表示部24とを備えている。
【0035】
また、X線撮影装置1は、X線管制御部6,照射禁止部7,読み出し制御部8,読み出し禁止部9,画像生成部11,画像編集部12に共通クロック信号Cを送出するコンダクタ21を備えている。X線管制御部6,読み出し制御部8,画像生成部11,および画像編集部12の各々における動作の処理速度は、この共通クロック信号Cによって決定される。例えば、読み出し制御部8が画像一枚分の検出信号をFPD4から読み出す間に、画像生成部11は、共通クロック信号Cの1クロック前にFPD4から読み出された検出データを基に一枚の元画像を生成するのである。その間に、画像編集部12は、共通クロック信号の2クロック前にFPD4から読み出された検出信号に対し輝度の調節を行い、X線透視画像を一枚だけ生成する。これが表示部24に次々と出力される。つまり、表示部24には、動画が表示されるのである。コンダクタ21は、本発明のクロック信号発生手段に相当する。共通クロック信号は、本発明の動作クロック信号に相当する。
【0036】
各部が共通クロック信号に従って動作する構成となっていることで、検出データの処理に関する一連のフローを同期させ、レスポンスの速い画像生成が可能となる。具体的には、X線管制御部6が共通クロック信号を受信し、単発のX線ビームをFPD4に向けて照射すると、読み出し制御部8,画像生成部11,および画像編集部12を通じて、X線透視画像が生成されるのであるから、X線ビームが照射されてから僅か3クロック分だけ遅れて表示部24に表示されることになり、時間的に無駄のない動画の表示が可能となっている。
【0037】
さらにまた、X線撮影装置1は、X線管制御部6,照射禁止部7,読み出し制御部8,読み出し禁止部9,画像生成部11,画像編集部12,およびコンダクタ21を統括的に制御する主制御部22を備えている。この主制御部22は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。
【0038】
X線管3は、X線管制御部6の制御にしたがって、所定の管電流、管電圧、照射時間でX線ビームを被検体に向けて照射される。このX線管制御部6は、コンダクタ21から送出された共通クロック信号にしたがって、1クロックに対して1回だけX線ビームを照射するようにX線管3を制御する。また、検査時間が長いなどの理由で、単位時間当たりの被検体のX線照射量を抑制したい場合、例えば、X線管3は、共通クロック信号の2クロックに対して1回だけX線ビームを照射するようになる。すなわち、照射禁止部7は、X線管制御部6にX線の照射を禁止する禁止信号をX線管制御部6に向けて送出する。なお、この照射禁止部7は、コンダクタ21に従うことで、他の制御部と同期されている。この様に、X線管制御部6のX線ビームの照射命令は、間引かれて、X線ビームの照射の周期が調節される。
【0039】
このX線ビームを間引く操作は、X線ビームの照射を禁止する照射禁止部7が所定の期間中、X線ビームの照射を禁止することで実現されることになる。なお、表示部24にて表示される動画のフレームレートは、このX線ビームの照射の周波数に一致していることになる。照射禁止部7がX線ビームの照射を禁止している期間中にコンダクタ21より出力されたクロック信号が本発明の非参照クロック信号である。非参照クロック信号は、X線管制御部6がX線照射の参照にしないクロック信号である。これとは逆に照射禁止部7がX線ビームの照射を禁止していない期間中にコンダクタ21より出力されたクロック信号が本発明の照射参照クロック信号である。照射参照クロック信号は、X線管制御部6がX線照射の参照にするクロック信号である。
【0040】
FPD4の読み出しを禁止する読み出し禁止部9の動作については、後述のものとする。
【0041】
次に、実施例1に係るFPD4の構成について説明する。FPD4は、図7に示すような従来構成の放射線検出器と同様な構成となっている。なお、アモルファス・セレン層53は、本発明の変換手段に相当し、表面電極層52は、本発明の電場生成手段に相当する。また、コンデンサ55は、本発明の蓄積手段に相当する。
【0042】
図8に示すように、実施例1に係るFPD4の検出データの読み出しは、コンデンサ配列の列Cごとに行われる。具体的には、コンデンサ毎にトランジスタが設けられ、トランジスタ行列が生成されるとともに、トランジスタ行列の各列毎に、ゲートドライブが設けられている。このゲートドライブの1つをONとすると、このゲートドライブに対応するトランジスタ行列のうちの一列に属するトランジスタが一斉にONされ、一列に配列されたコンデンサにおいて、蓄積された電荷が一斉に読み出される。以降、FPD4の有するゲートドライブの全てを逐次ONしていくのである。この様にして、コンデンサの各列において検出信号の読み出しが行われ、FPD4の全域についての信号の読み出しが完了する。
【0043】
以上のような構成のX線撮影装置1の動作について説明する。図2は、実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。実施例1に係るX線撮影装置1にて検査を行う動作は、被検体Mを天板2に載置する載置ステップS1と、オペレータが表示部24に表示される動画のフレームレートを設定するフレームレート設定ステップS2,オペレータが撮影の開始を指示する撮影開始ステップS3と、設定されたフレームレートで動画が表示部24に表示される表示ステップS4を備えている。以降、これらの各ステップの詳細を、図面を参照しながら順を追って説明する。
【0044】
<被検体載置ステップS1,およびフレームレート設定ステップS2>
まず、天板2に被検体Mが載置される。そして、オペレータは、操作卓23を通じてこれから撮影しようとする動画のフレームレートを設定する。照射禁止部7の動作を変更することで、X線ビームの照射の周波数を設定する。たとえば、コンダクタ21が送出する共通クロックが30Hzであるとすると、X線ビームの照射の周波数は、30Hzとなるので、動画のフレームレートは、30Hzとなる。照射禁止部7の動作を変更して、例えば、1クロックおきにX線ビームが照射される設定とすると、X線ビームの照射の周期は倍となり、周波数に換算すると、15Hzとなるので、フレームレートは、先程よりも下がって15Hzとなる。以降、オペレータは、動画のフレームレートを15Hzに設定したものとして、以降の動作説明を行う。
【0045】
<撮影開始ステップS3,および表示ステップS4>
オペレータが操作卓23を通じて、X線照射の開始の指示を行うと、X線管3は、X線管制御部6,および照射禁止部7の指令に基づいて、X線ビームを所定の期間中、被検体Mに向けて照射する。図3は、実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。図3に示すように、共通クロック信号Cの周波数は、30Hzである。図3中のXが示すバー群は、X線管3の動作期間を示している。X線ビームの照射は、共通クロック信号Cの1クロックおきに実行され、15Hzとなっている。すなわち時点P1において、共通クロック信号Cの信号を受けて、X線管3は、X線ビームを照射する。
【0046】
図3中のBが示すバー群は、照射禁止部7の動作期間を示している。時点P2は、照射禁止部7がX線の照射を禁止している期間に属するので、X線ビームの照射は、実行されない。こうして、X線ビームの照射は、1クロックおきに間引かれる。
【0047】
この共通クロック信号Cは、読み出し制御部8にも送出されている。読み出し制御部8は、X線ビームの照射が終了するまで待機したあと、FPD4の検出信号の読み出しが開始させる。X線ビームの照射が終了した直後、読み出し禁止部9は、動作していないので、FPD4の読み出しが開始されることになる。なお、この読み出し禁止部9の動作は、照射禁止部7と同様である。すなわち、時点P2において、FPD4の検出信号の読み出しの開始が禁止される。読み出し禁止部9は、読み出し制御部8に読み出しの禁止を指示する信号を送出し、これが送出されている間、FPD4から検出信号が読み出されることがない。こうして、FPD4の検出信号の読み出しの周波数は、X線ビームの照射のと同じ15Hzとなる。このように、実施例1の構成によれば、読み出しとX線ビームの照射が1対1で対応し、空読みが排除された構成となっている。つまり、読み出し禁止部9は、X線ビームの照射が終了して最初に行われるFPD4の検出信号の読み出しのみを許可し、それ以外のタイミングにおける読み出しを禁止する。たとえ、共通クロック信号Cが読み出し制御部8に送出されても、読み出し禁止部9の指示の方が優先され、読み出し制御部8はこれに従う。なお、X線ビームの照射が終了して最初に行われるFPD4の読み出しのタイミングは、共通クロック信号Cに従う。
【0048】
FPD4の検出信号は、画像生成部11に送出され、元画像となる。元画像は、画像編集部12において、輝度が調節されて、X線透視画像が生成される。これが、X線ビームが被検体Mに照射される後に次々と表示されて、検査は、終了となる。
【0049】
以上のような構成としたことで、X線ビームの影響によって偽像がX線透視画像に出現することを抑制することができる。X線ビームは、FPD4によって検出され、検出信号に変換される。より具体的には、FPD4は、X線を電荷に変換するアモルファス・セレン層53を有し、このアモルファス・セレン層53には、電荷を収集するために、バイアス電圧がかけられている。そして、収集された電荷は、複数のコンデンサ55によって蓄積され、読み出されて検出信号とされる。アモルファス・セレン層53にかけられる電圧が変化すると、それによって検出信号が変動するので、可能な限りバイアス電圧を一定としている。しかし、X線ビームがアモルファス・セレン層53に入射すると、アモルファス・セレン層53は、弱い起電力を有するので、バイアス電圧が見かけ上、変化してしまう。実施例1の構成は、X線管3のX線ビームの照射を禁止する照射禁止部7と、読み出し制御部8の読み出しを禁止する読み出し禁止手段とを備え、X線管3,読み出し制御部8,画像生成部11,照射禁止部7,および読み出し禁止部9は、共通クロック信号Cを通じて同期的に制御され、照射禁止部7によってX線管3のX線の照射が禁止されたときは、読み出し禁止部9は、検出信号の読み出しの開始を禁止する構成となっている。
【0050】
この様にすると、図3に示すように、X線ビームの照射と、FPD4の検出信号の読み出しとが1対1で対応する(X線ビームの照射の周波数と、FPD4の検出信号の読み出しの周波数が一致する)。すると、FPD4の検出信号の読み出しにおける期間の前半における見かけ上のバイアス電圧Fには、電圧が撹乱された撹乱期間Aが出現している。この撹乱期間Aの出現するタイミングは、各読み出しを通じて一定であるとともに、撹乱期間Aにおける電圧の挙動は、再現性があるものとみなせる。
【0051】
撹乱期間Aの間にコンデンサ行列を構成するある列C1が読み出されたとする。このときアモルファス・セレン層53にかけられたバイアス電圧をSとすると、見かけ上のバイアス電圧Fは、F=S+αで表すことができる。このαは、X線ビームの照射に起因する電圧の撹乱成分である。この撹乱期間Aと、列C1の読み出しとの相対的なタイミングの関係は、X線ビームを照射する度に再現される。
【0052】
ここで、再びX線ビームが照射され、再び列C1が読み出されたとする。このときの見かけ上のバイアス電圧Fは、やはりS+αとなっている。つまり、列C1が読み出される度に、見かけ上のバイアス電圧Fは、一定となっているのである。見かけ上のバイアス電圧Fが変化しなければ、今回の読み出しにおける撹乱成分の影響と、次回の読み出しにおける撹乱成分αの影響とが互いに相殺するので、結局、列C1の読み出しで取得された検出信号には、撹乱成分αの影響は、キャンセルされる。このような関係は、列C1に限らず、撹乱期間Aの間に読み出されるコンデンサの列の全てに当てはまる。かくして、実施例1の構成によれば、X線ビームの影響が写りこんでいないX線透視画像が取得できるのである。
【0053】
最後に、図4を参照して本願発明の効果を強調する。図4(a)は、動画のフレームレートが30Hzの場合である。この場合、照射禁止部7,読み出し禁止部9は動作しない。図中のDが示すバーは表示部24にX線透視画像が表示される期間を表している。図4(a)を参照すれば分かるように、FPD4から読み出された検出信号は、3クロック後に表示部24にて表示される。
【0054】
ここで、図4(b)に示すように、動画のフレームレートを低下させようとして、共通クロック信号Cの周波数を低下させたとする。この場合においても、FPD4から読み出された検出信号は、3クロック後に表示部24にて表示されることに留意する必要がある。すなわち、共通クロック信号の周波数を単純に低下させると、共通クロック信号Cが3クロックを刻むのに要する時間は、長いものとなり、結局、検出信号がFPD4から読み出されてから表示部24にて表示されるまでの時間が長いものとなる。つまり、動画表示のレスポンスが低下してしまう。
【0055】
そこで、実施例1の構成は、図4(c)に示すように、動画のフレームレートに係らず、共通クロック信号Cの周波数を一定としたのである。つまり、読み出し制御部8によるFPD4からの検出信号の読み出しの速度、画像生成部11,および画像編集部12の処理速度は、動画のフレームレートに係らず変化しない。これにより、動画のフレームレートを変更したとしても、動画表示のレスポンスは、良好なものとなるのである。
【実施例2】
【0056】
次に、実施例2に係るX線撮影装置の構成について説明する。図5は、実施例2に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例2の構成に係るX線撮影装置20は、実施例1に係るものと類似しているが、読み出し制御部8に代わって、読み出し遅延部10を備え、新たに、撹乱状況記憶部13を備えている点で異なっている。読み出し遅延部10,および撹乱状況記憶部13は、本発明の読み出し遅延手段、撹乱状況記憶手段の各々に相当する。なお、コンダクタ21は、読み出し遅延部10に共通クロック信号Cを送出する。なお、実施例2においては、共通クロック信号Cの2クロックおきにX線が放射されるものとする。読み出し遅延部10は、本発明の読み出し遅延手段に相当し、撹乱状況記憶部13は、本発明の撹乱状況記憶手段に相当する。
【0057】
読み出し遅延部10は、FPD4の検出データの読み出しの開始を遅延させる。実施例2の構成によれば、例えば、33ミリ秒(約1クロック)だけ読み出しの開始を遅延させる。
【0058】
撹乱状況記憶部13は、X線をFPD4に照射したときの見かけ上のバイアス電圧Fの変化を記憶している。バイアス電圧は、FPD4の有するアモルファス・セレン層53にかけられており、アモルファス・セレン層53には、所定の電場が生成されている。この電場が撹乱すると、それが読み出された検出データに影響してしまうことになる。撹乱状況記憶部13は、この見かけ上のバイアス電圧の時系列的な変化をX線の照射が終了した時点を基点として記憶している。すなわち、撹乱状況記憶部13は、アモルファス・セレン層53における電場の撹乱状況を記憶していることになる。
【0059】
X線をFPD4に照射して、所定時間が経過すると、見かけ上のバイアス電圧の変動が収束し、アモルファス・セレン層53に生成された電場は、所定のものとなる。読み出し遅延部10は、この所定時間を求めるのである。すなわち、読み出し遅延部10は、撹乱状況記憶部13に記憶されたバイアス電圧の変化を基に、前放射線の照射から前記電場の撹乱が収束するまでの時間を求める。具体的には、読み出し遅延部10は、X線照射の直後からバイアス電圧が元に戻るまでの時間に余裕分の時間を付加して変動が収束するまでの時間とする。求められる時間は、1クロックの時間幅の整数倍であることが望ましいがこれに限られない。そして、求められた時間を遅延時間(例えば、33ミリ秒)とする。
【0060】
実施例2に係るX線撮影装置20の動作は、実施例1のそれと略同一であるが、FPD4の検出データの読み出しに関する制御が異なっている。図6は、実施例2に係るX線撮影装置の動作を説明するタイミングチャート図である。図6に示すように、共通クロック信号Cの周波数は、30Hzである。図6中のXが示すバー群は、X線管3の動作期間を示している。X線ビームの照射は、共通クロック信号Cの2クロックおきに実行され、10Hzとなっている。すなわち時点P1において、共通クロック信号Cの信号を受けて、X線管3は、X線ビームを照射する。
【0061】
この共通クロック信号Cは、読み出し制御部8にも送出されている。読み出し制御部8は、X線ビームの照射が終了するまで待機したあと、FPD4の検出信号の読み出しが読み出し制御部8で指示される。しかしながら、実際は、この読み出しが開始されるのは、指示が行われた時点から33ミリ秒後になる。読み出し遅延部10が、33ミリ秒だけFPD4の読み出しの開始を遅延させるからである。実施例2の場合は、実施例1の構成と異なり、FPD4の検出信号の読み出しの周波数は、共通クロック信号の周波数と同様の30Hzであり、X線ビームの照射の周波数の3倍となっている。したがって、実施例1の構成と異なり、実施例2は、FPD4の読み出しは、空読みVを含んだ構成となっている。なお、P1の時点における読み出しが約1クロック分だけ遅延され、P2の時点まで移動している。しかし、P2の時点には、共通クロック信号Cに従って、次の読み出しが行われるはずなのである。つまり、P2の時点において、2つの読み出しが重複してしまう。実施例1の構成によれば、読み出し遅延部10が読み出しを遅延させると、遅延された読み出しが次の読み出しが重複する場合、読み出し遅延部10は、次の読み出しを実行させない構成となっている。
【0062】
以上のような構成としたことで、X線ビームの影響によって偽像がX線透視画像に出現することを抑制することができる。上述のように、X線ビームがアモルファス・セレン層53に入射すると、アモルファス・セレン層53は、弱い起電力を有するので、バイアス電圧が見かけ上変化してしまう。しかしながら、実施例2の構成によれば、X線管3のX線の照射を禁止する照射禁止部7と、読み出し制御部8の読み出しを遅延させる読み出し遅延部10とを備え、X線管3,読み出し制御部8,画像生成部11,照射禁止部7,および読み出し遅延部10は、前記共通クロック信号を通じて同期的に制御され、照射禁止部7によってX線の照射が禁止されずにX線管3からX線が照射されたとき、読み出し遅延部10は、所定の遅延時間だけ検出信号の読み出しを遅延され、以降、X線管3からX線が照射される度に、読み出し遅延部10は、所定の遅延時間だけ検出信号の読み出しを遅延させる構成となっている。
【0063】
この様な構成となっていると、図6に示すように、FPD4の検出データの読み出しの期間と、撹乱期間Aとは、重なることがない。したがって、読み出しが実行されている期間内における見かけ上のバイアス電圧Fは、全て設定どおりとなっている。
【0064】
コンデンサ行列を構成するある列C1が読み出されたとする。このとき、アモルファス・セレン層53にかけられたバイアス電圧をSとすると、見かけ上のバイアス電圧Fは、Sとなっている。ここで、再びX線ビームが照射され、再び列C1が読み出されたとする。このときの見かけ上のバイアス電圧Fは、やはりSとなっている。つまり、列C1が読み出される度に、見かけ上のバイアス電圧Fは、一定となっているのである。このような関係は、列C1に限らず、コンデンサの列の全てに当てはまる。かくして、実施例2の構成によれば、X線ビームの影響が写りこんでいないX線透視画像が取得できるのである。
【0065】
本発明は、上記の各実施例の構成に限られることなく、下記のように変形実施することができる。
【0066】
(1)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0067】
(2)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【符号の説明】
【0068】
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
6 X線管制御部(放射線源制御手段)
7 照射禁止部(照射禁止手段)
8 読み出し制御手段(読み出し制御手段)
9 読み出し禁止部(読み出し禁止手段)
10 読み出し遅延部(読み出し遅延手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
13 撹乱状況記憶部(撹乱状況記憶手段)
21 コンダクタ(クロック信号発生手段)
52 表面電極層(電場生成手段)
53 アモルファス・セレン層(変換手段)
55 コンデンサ(蓄積手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、蓄積された電荷を出力することで前記放射線の検出信号を出力する放射線検出手段と、前記放射線源を制御する放射線源制御手段と、前記放射線検出手段の検出信号の読み出しを制御する読み出し制御手段と、前記検出信号を基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、
(A1)前記読み出し制御手段の読み出しを禁止する読み出し禁止手段と、
(B)前記読み出し制御手段に読み出しの開始のタイミングを示す動作クロック信号を送出するクロック信号発生手段とを更に備え、
(C1)前記読み出し禁止手段は、前記放射線源が照射された時に前記検出信号の読み出しを許可し、前記動作クロック信号の送出に係らずこれ以外のタイミングでの読み出しの開始を禁止することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
放射線を照射する放射線源と、蓄積された電荷を出力することで前記放射線の検出信号を出力する放射線検出手段と、前記放射線源を制御する放射線源制御手段と、前記放射線検出手段の検出信号の読み出しを制御する読み出し制御手段と、前記検出信号を基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、
(A2)前記読み出し制御手段の読み出しを遅延させる読み出し遅延手段と、
(C2)前記読み出し遅延手段は、前記放射線が照射されてから、所定の遅延時間だけ前記検出信号の読み出しを遅延させ、以降、前記放射線源から放射線が照射される度に、前記読み出し遅延手段は、所定の遅延時間だけ前記検出信号の読み出しを遅延させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記放射線検出手段は、
前記放射線を電荷に変換する変換手段と、
前記電荷を蓄積する蓄積手段と、
前記変換手段に所定の電場を生成することで、前記電荷を前記蓄積手段に誘導する電場生成手段とを備え、
そして、前記放射線撮影装置は、前記電荷の発生に起因する前記所定の電場の撹乱状況を記憶する撹乱状況記憶手段を更に備え、
前記読み出し遅延手段は、前記撹乱状況記憶手段に記憶された前記所定の電場の撹乱状況を基に、前記放射線の照射から前記電場の撹乱が収束するまでの時間を求め、これを遅延時間とすることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−220651(P2010−220651A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68089(P2009−68089)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】