説明

放射線画像変換パネル及びその製造方法

【課題】 粒状性が優れ、吸湿による性能劣化が少なく、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層中にシランカップリング剤と輝尽性蛍光体以外の親水性微粒子とを含有し、該輝尽性蛍光体が多面体粒子であることを特徴とする放射線画像変換パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝尽性蛍光体(以下、単に蛍光体ともいう)を有する放射線画像変換パネルとその製造方法に関し、特に粒状性が優れ、吸湿による性能劣化が少なく長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用などの分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
【0003】
しかしながら、近年では、ハロゲン化銀塩を有する感光材料による画像形成方法に代わり、蛍光体層から直接画像を取り出す新たな方法が提案されている。
【0004】
この方法としては、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体を例えば光または熱エネルギーで励起することにより、この蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出し画像化する方法がある。
【0005】
具体的には、例えば、米国特許第3,859,527号明細書及び特開昭55−12144号公報などに記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。
【0006】
この方法は、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換パネルを使用するもので、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号を感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
【0007】
上記の放射線画像の再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で、かつ情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点を有している。
【0008】
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が600〜800nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0009】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0010】
放射線画像変換パネルは、その使用過程において、長期間にわたり得られる放射線画像の画質が劣化することなく、常に安定した性能が付与できることが望まれている。しかしながら、放射線画像変換パネルの製造で使用される輝尽性蛍光体の多くは、一般に吸湿性が高く、このため、一般的な環境条件下に放置すると、徐々に空気中の水分を吸収し、時間の経過とともに、性能の著しい劣化を招く。具体的には、例えば、輝尽性蛍光体を高湿度雰囲気下で長期間保存すると、吸収した水分の増大に伴い、輝尽性蛍光体の放射線感度が低下する結果となる。
【0011】
従来、輝尽性蛍光体の吸湿による性能劣化を防止する方法として、例えば、透湿度の低い防湿性保護層や防湿性樹脂フィルムで輝尽性蛍光体層を被覆することにより、蛍光体層に到達する水分を低減させる方法、疎水性微粒子による方法(特許文献1参照)、シランカップリング剤による方法(特許文献2参照)、チタネート系カップリング剤による方法(特許文献3参照)、シリコーンオイルによる方法(特許文献4参照)等が開示されている。
【0012】
しかしながら、防湿性保護フィルムや防湿性樹脂フィルムで輝尽性蛍光体層を被覆しても、水分の透過を完全には防止することができず、また、疎水性微粒子で蛍光体粒子を被覆する撥水化処理により、透過した水分が輝尽性蛍光体層と防湿性フィルムとの間に溜まり、画像の鮮鋭性が劣化するという問題が明らかになり、早急な改良手段の開発が望まれている。
【0013】
また、輝尽性蛍光体層中にシランカップリング剤と輝尽性蛍光体以外の親水性微粒子とを含有させる方法(特許文献5参照)が開示されているが、このとき粒状性がばらつき、低下することがあった。
【特許文献1】特公昭62−177500号公報
【特許文献2】特公昭62−209398号公報
【特許文献3】特公平2−278196号公報
【特許文献4】特公平5−52919号公報
【特許文献5】特開2002−277598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、粒状性が優れ、吸湿による性能劣化が少なく、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0016】
(請求項1)
輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層中にシランカップリング剤と輝尽性蛍光体以外の親水性微粒子とを含有し、該輝尽性蛍光体が多面体粒子であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0017】
(請求項2)
前記輝尽性蛍光体が、前記親水性微粒子で表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
(請求項3)
前記親水性微粒子の含有量が、前記輝尽性蛍光体に対して0.01質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
(請求項4)
前記親水性微粒子の平均粒径が、2nm以上、50nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0020】
(請求項5)
前記シランカップリング剤が、メルカプト基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0021】
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルが、1)輝尽性蛍光体粒子を親水性微粒子で表面処理する工程、2)表面処理された該輝尽性蛍光体粒子を有機溶剤中で結合剤と混合、分散して塗布液を調製した後、該塗布液を塗布、乾燥して蛍光体シートを形成する工程、及び3)蛍光体シートを防湿性フィルムで被覆、密閉する工程、を経て製造されることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、粒状性が優れ、吸湿による性能劣化が少なく、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明者は鋭意研究の結果、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体層中にシランカップリング剤と輝尽性蛍光体以外の親水性微粒子とを含有し、該輝尽性蛍光体が多面体形状の微粒子を用いることにより、粒状性が優れ、吸湿による性能劣化が少なく、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルが得られることを見出した。
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
請求項1に係る放射線画像変換パネルにおいては、輝尽性蛍光体層中にシランカップリング剤と輝尽性蛍光体以外の親水性微粒子とを含有することが特徴である。
本発明においては、親水性微粒子は、蛍光体粒子の表面を被覆している状態でも、蛍光体層内に独立して存在していても良い。
【0026】
本発明でいう親水性微粒子とは、メタノールウエッタビリティー法による疎水化度(MW値)が5以下の微粒子をいう。本発明に係る親水性微粒子としては、特に制限はないが、シリカ、アルミナ、酸化チタンの1種又は2種以上からなり、平均粒径が2〜50nmのものが好ましい。平均粒径が2nm以下の親水性微粒子は工業的に入手困難であり、また、平均粒径が50nmを越えると、蛍光体粒子の表面を効果的に被覆することができず、また、蛍光体層内に均一に存在させることが難しいため好ましくはない。
【0027】
本発明に係る親水性微粒子の具体例としては、例えば、火炎加水分解法やアーク法によるシリカ、アルミナ、二酸化チタンのような乾式法親水性微粒子のほか、ケイ酸ナトリウムのような塩の酸による分解で得られる湿式法親水性微粒子、オルガノゲルの加水分解によるものなど各種の製造方法によって得られるものを挙げることができる。
【0028】
平均粒径が数μm〜数十μmの蛍光体粒子に対し、適当量の親水性微粒子を混合するには公知の混合方法を用いることができ、例えば、ターブラシェーカーミキサー(例えば、シンマルエンタープライゼス社製)のような混合装置を使用して、親水性微粒子全量に対して蛍光体粒子を徐々に添加していく混合方法や、0.5〜10.0質量%の親水性微粒子分散液中で蛍光体粒子を撹拌した後、濾過、乾燥する方法等を挙げることができ、これらの方法は蛍光体粒子への均一被覆の観点から好ましい。
【0029】
また、親水性微粒子を蛍光体塗布液の調製時に添加するには、予め結合剤、溶剤と混合し、ビーズミルなどでスラリー状に分散した後、添加することが、蛍光体層内での分布の状態を均一にすることができ好ましい。この場合の親水性微粒子の添加量は0.05〜5質量%が好ましく、さらには0.1〜2質量%が好ましい。
【0030】
本発明に係るシランカップリング剤は、特に制限はないが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
一般式(1)において、Rは脂肪族或いは芳香族の炭化水素基を表し、不飽和基(例えば、ビニル基)を介在していてもよいし、R2OR3−、R2COOR3−、R2NHR3−(R2はアルキル基又はアリール基を表し、R3はアルキレン基又はアリーレン基を表す)、その他の置換基で置換されていてもよい。
【0033】
またX1、X2、X3は各々脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、アシル基、アミド基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基又はハロゲン原子を表す。ただし、X1、X2、X3の少なくとも1つは炭化水素以外の基である。また、X1、X2、X3は各々加水分解を受ける基であることが好ましい。
【0034】
一般式(1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩及びアミノシラン配合物などが挙げられ、特に、ビニル系、メルカプト系、グリシドキシ系、メタクリロキシ系が好ましく、特に、請求項5に係る発明では、シランカップリング剤が、メルカプト基を有していることが特徴である。
【0035】
親水性微粒子で被覆した蛍光体粒子に、上記シランカップリング剤を付着するにあたっては、公知の方法を使用することができ、例えば、ヘンシェルミキサーを用い、蛍光体粒子を攪拌混合しながらシランカップリング剤を滴下又は噴霧する乾式法、スラリー状の蛍光体にシランカップリング剤を滴下しながら攪拌し、滴下終了後に蛍光体を沈澱させ濾過してから蛍光体を乾燥させ残留溶媒を除去するスラリー法、蛍光体を溶媒に分散させ、これにシランカップリング剤を添加して攪拌した後、溶媒を蒸発して付着層を形成する方法又はシランカップリング剤を輝尽性蛍光体用塗布分散液に添加する方法などが挙げられる。
【0036】
また、シランカップリング剤の乾燥は、蛍光体との反応を確実なものにするため、60〜130℃で10〜200分程度行うことが好ましい。このような処理方法の一例としては、親水性微粒子とシランカップリング剤を含む分散液中で、焼成直後の蛍光体粒子を液中解砕し、蛍光体の解砕と同時に親水性微粒子での被覆とシランカップリング剤での表面処理を行ったのち濾過乾燥する方法や親水性微粒子とシランカップリング剤を輝尽性蛍光体層形成用の塗布液中に添加する方法等を挙げることができるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0037】
請求項3に係る発明では、親水性微粒子の含有量が、前記輝尽性蛍光体に対して0.01質量%以上、10質量%以下であることが特徴であり、10質量%を越えると感度低下を引き起こし、また0.01質量%より少ないと本発明の効果を十分に発揮することができない。
【0038】
次に、多面体形状の輝尽性蛍光体について説明する。
【0039】
本発明の多面体粒子とは、4つ以上の平面で囲まれた立体状の粒子をいい、例えば六面体,八面体、四角錐等を意味し、特に限定するものではない。
【0040】
多面体粒子は以下の製造条件により得られる。すなわち、酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物輝尽性蛍光体の液相における製造方法であって、ハロゲン化バリウム水溶液に無機弗化物水溶液を添加して、希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物輝尽性蛍光体前駆体結晶の沈澱物を得る工程と、反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から溶媒を除去する工程を同時に行うことにより得ることができる(特開2003−268369号公報参照)。
【0041】
次に、輝尽性蛍光体層について説明する。
【0042】
輝尽性蛍光体層は、主に輝尽性蛍光体粒子と高分子樹脂より構成され、支持体上にコーターを用いて塗設、形成される。輝尽性蛍光体層で用いることのできる輝尽性蛍光体としては、波長400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が一般的に使用される。
【0043】
〔輝尽性発光体〕
以下に、本発明に係る輝尽性蛍光体層で好ましく用いることのできる輝尽性蛍光体の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(1)特開昭55−12145号公報に記載されている(Ba1−X、M(II)X)FX:yA、(式中、M(II)はMg、Ca、Sr、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、およびErのうちの少なくとも一つ、そしては、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0045】
a)特開昭56−74175号公報に記載されている、X′、BeX″、M(III)X″′3、式中、X′、X″、およびX″′はそれぞれCl、BrおよびIの少なくとも一種であり、M(III)は三価金属である。
【0046】
b)特開昭55−160078号公報に記載されているBeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al23、Y23、La23、In23、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb25、Ta25およびThO2などの金属酸化物。
【0047】
c)特開昭56−116777号公報に記載されているZr、Sc。
【0048】
d)特開昭57−23673号公報に記載されているB。
【0049】
e)特開昭57−23675号公報に記載されているAs、Si。
【0050】
f)特開昭58−206678号公報に記載されているM・L、式中、MはLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である。
【0051】
g)特開昭59−27980号公報に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;特開昭59−56479号公報に記載されているNaX′、式中、X′はCl、BrおよびIのうちの少なくとも一種である。
【0052】
h)特開昭59−56480号公報に記載されているV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiなどの遷移金属;特開昭59−75200号公報に記載されているM(I)X′、M′(II)X″2、M(III)X″′3、A、式中、M(I)はLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′(II)はBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属を表し、M(III)はAl、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、Aは金属酸化物であり、X′、X″、およびX″′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0053】
i)特開昭60−101173号公報に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0054】
j)特開昭61−23679号公報に記載されているM(II)′X′2・M(II)′X″2、式中、M(II)′はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′およびX″はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である;更に、特開昭61−264084号公報に記載されているLnX″3、式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0055】
(2)特開昭60−84381号公報に記載されているM(II)X2・aM(II)X′2:xEu2+(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX′はCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0056】
a)特開昭60−166379号公報に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0057】
b)特開昭60−221483号公報に記載されているKX″、MgX″′2、M(III)X″″3、式中、M(III)はSc、Y、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X″′およびX″″はいずれもF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0058】
c)特開昭60−228592号公報に記載されているB、特開昭60−228593号公報に記載されているSiO2、P25等の酸化物、特開昭61−120882号公報に記載されているLiX″、NaX″、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0059】
d)特開昭61−120883号公報に記載されているSiO;特開昭61−120885号公報に記載されているSnX″2、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0060】
e)特開昭61−235486号公報に記載されているCsX″、SnX″′2、式中、X″およびX″′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;更に、特開昭61−235487号に記載されているCsX″、Ln3+、式中、X″はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である。
【0061】
(3)特開昭55−12144号公報に記載されているLnOX:xA(式中、LnはLa、Y、Gd、およびLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ;AはCeおよびTbのうち少なくとも一つ;xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素賦活希土類オキシハライド蛍光体。
【0062】
(4)特開昭58−69281号公報に記載されているM(II)OX:xCe(式中、M(II)はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム賦活三価金属オキシハライド蛍光体。
【0063】
(5)特開昭62−25189号公報に記載されているM(I)X:xBi(式中、M(I)はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体。
【0064】
(6)特開昭60−141783号公報に記載されているM(II)5(PO43X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0065】
(7)特開昭60−157099号公報に記載されているM(II)2BO3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体。
【0066】
(8)特開昭60−157100号公報に記載されているM(II)2(PO43X:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0067】
(9)特開昭60−217354号公報に記載されているM(II)HX:xEu2+(式中、M(II)はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体。
【0068】
(10)特開昭61−21173号公報に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+、(式中、LnおよびLn′はそれぞれY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XおよびX′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体。
【0069】
(11)特開昭61−21182号公報に記載されているLnX3・aM(I)X′3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M(I)はLi、Na、K、CsおよびRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体。
【0070】
(12)特開昭61−40390号公報に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+、(式中、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体。
【0071】
(13)特開昭61−236888号公報に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+、(式中、XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体。
【0072】
(14)特開昭61−236890号公報に記載されているM(II)X2・aM(I)X′:xEu2+、(式中、M(II)はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M(I)はLi、RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体。
【0073】
上記の輝尽性蛍光体のうちでも、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体等が、高輝度の輝尽発光を示すため好ましく、特に、輝尽性蛍光体がEu賦活BaFI化合物であることが好ましい。
【0074】
〔高分子樹脂〕
本発明に係る輝尽性蛍光体は、結合剤として高分子樹脂に分散された形態で輝尽性蛍光体層中に含有されていることが好ましい。
【0075】
本発明で用いることのできる高分子樹脂としては、公知の高分子樹脂を用いることができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。中でも主鎖にウレタン結合を有する高分子樹脂が好ましい。主鎖にウレタン結合を有する高分子樹脂は、一般にウレタン樹脂と総称され、樹脂構造中に、イソシアネート基の活性水素化合物に対する反応性を利用したポリイソシアネートとポリオール等の活性化合物との重付加反応によって得られるウレタン結合や、ウレア(尿素)結合、ビューレット・アロファネート結合等のイソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合、活性水素化合物分子内に含まれるエステル結合、エーテル結合、アミド結合、及び、イソシアネート基同士の反応で生成するウレトジオン、イソシアヌレート、カルボジイミド等をも含む高分子化合物である。
【0076】
一般的にポリウレタン樹脂は、分子内に存在する凝集エネルギーの大きいウレタン結合やウレア結合等による分子間2次結合のため、機械的特性、耐磨耗性、耐久性、耐薬品性に優れた性能を持っている。又、ポリイソシアネート、活性水素化合物等の使用原料の種類、組成比反応条件等をコントロールすることで大きく性能を変化することができる。
ポリウレタン樹脂の合成に用いられるポリイソシアネートとしては、次のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)チオフォスフェート、ウレタン変成トルエンジイソシアネート、アロファネート変成トルエンジイソシアネート、ビウレット変成トルエンジイソシアネート、イソシアヌレート変成トルエンジイソシアネート、ウレタン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ウレトニミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、アシル尿素変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等。
【0077】
これらのイソシアネート化合物は単品で用いてもよく、又、あらかじめ複数の種類のポリイソシアネートの反応物、又、メタノールやエタノールのエチレンオキシド付加物とポリイソシアネートの反応物、又、1分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とポリイソシアネートとの反応によって得られる遊離イソシアネート基を有する化合物として用いてもよい。
【0078】
ポリウレタン樹脂の具体的な合成法は、特開平5−127306号、同6−67328号、同6−293821号、特開平4−96919号、特開昭58−63716号、同58−80320号、同63−301251号、同56−151753号、特開平2−269723号、同7−10950号等の各公報に詳しく記載されている。又、ギュンター オーテル著「ポリウレタンハンドブック」(1985)、今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」(1987)、技術情報協会刊「水系塗料とコーティング技術」(1992)などにも詳しいポリウレタン合成法の記載がある。
【0079】
市販されているポリウレタン樹脂としては、例えば、第一工業製薬(株)製スーパーフレックスシリーズ107、110、126、150、160、190、300、361、410、460、750、820、スーパーフレックスEシリーズ E−2000、E−2500、E−4500、武田薬品工業(株)製タケラックWシリーズ W−6015、W−621、W−511、XW−75−P15、W−512A、W−635、W−7004、XW−97−W6、AW−605、ACW−54HD、シラノール基を含有したタケラックXWシリーズ、大日本インキ化学工業(株)製パンデックスシリーズ、日本ポリウレタン工業(株)製ニッポランシリーズ等が挙げられる。又、熱反応型水系ポリウレタン樹脂としては、第一工業製薬(株)製エラストロンシリーズ、武田薬品(株)製タケネートWBシリーズ WB−700、WB−710、WB−720、WB−730、WB−920等が挙げられる。これらのうち、本発明ではMDI骨格を持つものが特に好ましく、その一例として日本ポリウレタン工業(株)製ニッポラン2304等が挙げられる。
【0080】
放射線画像変換パネルの製造には輝尽性蛍光体層塗布液を使用する。これは、適当な有機溶媒中に高分子樹脂と輝尽性蛍光体粒子とを添加し、例えば、ディスパーザーやボールミル等を使用して、攪拌、混合して、高分子樹脂中に輝尽性蛍光体が均一に分散するようにして調製する。輝尽性蛍光体層塗布液の調製に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0081】
輝尽性蛍光体層塗布液の調製は、通常、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機などの分散装置を用いて行なわれる。調製された塗布液は、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、押し出しコーター等の公知の塗布コーターを用いて、支持体上に塗設した後、乾燥することにより、下引き層上への輝尽性蛍光体層の形成が完了する。
【0082】
本発明の放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、高分子樹脂と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0083】
支持体上に輝尽性蛍光体層が塗設された蛍光体シートは、所定の大きさに断裁される。断裁に当たっては、一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0084】
本発明の放射線画像変換パネルには、輝尽性蛍光体層の表面を物理的、化学的に保護するための保護膜(保護フィルムともいう)を設けることが好ましく、それらの構成は目的、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0085】
本発明の放射線画像変換パネルに設ける保護層としては、ASTMD−1003に記載の方法により測定したヘイズ率が、5%以上60%未満の励起光吸収層を備えたポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、さらには、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0086】
保護層で用いるフィルムのヘイズ率は、使用する樹脂フィルムのヘイズ率を選択することで容易に調整でき、また任意のヘイズ率を有する樹脂フィルムは工業的に容易に入手することができる。放射線画像変換パネルの保護フィルムとしては、光学的に透明度の非常に高いものが想定されている。そのような透明度の高い保護フィルム材料として、ヘイズ値が2〜3%の範囲にある各種のプラスチックフィルムが市販されている。本発明の効果を得るために好ましいヘイズ率としては5%以上60%未満であり、更に好ましくは10%以上50%未満である。ヘイズ率が5%未満では、画像ムラや線状ノイズを解消する効果が低く、又60%以上では鮮鋭性の向上効果が損なわれ、好ましくない。
【0087】
本発明において、保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性に合わせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知の何れの方法を用いても良い。
【0088】
また、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としてもよい。
【0089】
保護フィルムは、輝尽性蛍光体層に接着層を介して密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止又は封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するに当たっては、公知の何れの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、又この封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0090】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても、接着していなくてもよい。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。又、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
〔支持体〕
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては各種高分子材料が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上、可撓性のあるシート或いはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。
【0092】
これら支持体の膜厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着力を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0093】
また、支持体の反射性を上げ、放射線画像変換パネルの輝度を向上させる観点からは、気泡を含有するポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。気泡を含有するポリエチレンテレフタレートは、特開平3−76727号公報及び同6−226894号公報に記載の手法にてポリエチレンテレフタレート中に気泡を含有させて輝尽蛍光に対する反射能を高め、放射線画像変換パネルの輝度が向上した支持体が作製できる。また、市販品としては、東レ(株)社製E60L等の気泡を含有するポリエチレンテレフタレートがある。
【0094】
また、前記気泡を含有するポリエチレンテレフタレート支持体の厚みは一般的には800〜1000μmであり取り扱い上の観点から、好ましくは50〜500μmである。
これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、反射層や、光吸収層及び輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0095】
さらに、これらの支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引き層を設けてもよい。
【0096】
下引き層は主として架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有している。
【0097】
下引き層に含有される高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、その平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが好ましく、さらに25〜200℃のTgを有することが好ましい。
【0098】
下引き層に含有される架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができる。特に多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン工業(株)社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0099】
下引き層は、例えば以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0100】
まず、上記の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0101】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に15〜50質量%であることが好ましい。
下引き層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特に好ましくは5〜40μmであることが好ましい。
【0102】
支持体上に下引き層を塗設した後、輝尽性蛍光体層を塗布する前に、下引き層に含有した高分子樹脂と架橋剤との反応をより完遂させるため、40〜150℃で2〜100時間の熱処理を行うことが好ましい。熱処理方法としては、特に制限はなく、作製したシート状、ロール状等の下引き層塗設済み試料が完全に収納でき、かつ温度、湿度が制御できる恒温室であれば何れの方法を用いても良い。熱処理条件としては、40〜150℃で2〜100時間であることが特徴であるが、好ましくは55〜100℃、5〜50時間である。
【0103】
支持体上に下引き層を形成した後、ロール状で積層した形態、或いはシート状で積層した形態で上記加熱処理を行う際に、各積層試料間に、保護シートを挿入し、加熱処理後に保護シートを取り除いた後、蛍光体層を塗設するのがよい。この方法を採ることにより、加熱処理時の下引き層と支持体裏面とのブロッキングを効果的に防止することができ好ましい。
【0104】
本発明で用いることのできる保護シートとして、用いる材料に特に制限はなく、接着或いは融着が防止でき、かつ保護シートと下引き層或いは支持体裏面との接着力が極めて弱いものであれば良く、例えば、前述の保護フィルムとして用いる各種樹脂フィルムを適宜選択して用いることができる。又、保護シートには、加熱処理後の剥離を容易とするため、離型剤が塗布されていることが好ましい。
【0105】
本発明では、下引き層に限定することなく他の層にも上記の架橋剤を用いることのできる。
【0106】
本発明において、高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば、輝尽性蛍光体層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して塗布液を調製する。
【0107】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に15〜50質量%であることが好ましい。
【0108】
本発明では、蛍光体シートを得た段階で圧縮処理を行った方がよい。圧縮処理とは、支持体或いは下引層を設けた支持体上に輝尽性蛍光体層塗布液を塗設し、所望の条件で乾燥させて、輝尽性蛍光体層を形成して蛍光体シートとした後、例えば、通常直径1〜100cmの平滑性の高いニップローラーとそれに対面する加熱可能なローラーの間を温度と圧力をかけて処理することを指す。この圧縮処理を施すことにより、第1の効果は輝尽性蛍光体層中における輝尽性蛍光体の充填率を向上させることができ、高い発光輝度と鮮鋭性の向上を達成でき、第2の効果としては、加圧、加熱条件を特定の条件とすることにより、圧縮処理時の蛍光体シートの高い均一性を得ることができる。
【0109】
カレンダーロールを用いた圧縮方法に関しては、特にその方法に制限はないが、例えば、「樹脂加工技術ハンドブック(高分子学会編):日刊工業新聞社編、1965年6月12日刊」に記載されている方法を参照して適用することができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0111】
実施例1
《放射線画像変換パネル1〜4の作製》
[輝尽性蛍光体の調整]
〔輝尽性蛍光体A1(多面体粒子)の調製〕
ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、2つの孔をもつ耐圧容器にBaI2水溶液(4mol/L)2500mlとEuI3水溶液(0.2mol/L)26.5mlを反応器に入れた。更に、水溶液中にヨウ化カリウム992gを添加した。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。乾燥空気を10l/minの割合で通気しながら弗化アンモニウム水溶液(10mol/L)600mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させ、そのままの温度で90分間攪拌した。その後ろ過しエタノール2000mlで洗浄した後、80℃で乾燥させ、石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。燒結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、850℃で2時間焼成しユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子Aを得た。
【0112】
次いで、上記調製したユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体Aを、親水性微粒子(a1)とシランカップリング剤を添加したエタノール分散液中に浸してスラリー状とした後、濾過、乳鉢解砕して、80℃で3時間乾燥した後、分級して、輝尽性蛍光体A1を調製した。
【0113】
なお、走査型電子顕微鏡写真より輝尽性蛍光体が平均粒径7μmで、多面体粒子であることを確認した。
【0114】
ユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子A 100g
シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン) 5.0g
親水性微粒子(a1:シリカ粒子 日本アエロジル社製 平均粒径12nm)
1.0g
〔輝尽性蛍光体A2〜4(多面体粒子)の調製〕
上記輝尽性蛍光体A1の調製において、親水性微粒子a1に代えて、親水性微粒子a2、a3、疎水性微粒子b1を用いた以外は同様にして、輝尽性蛍光体A2〜A4を調製した。なお、a2、a3、b1の詳細は以下の通りである。
a2:アルミナ粒子(日本アエロジル社製 平均粒径13nm)
a3:シリカ/アルミナ混合粒子 質量比5:1(日本アエロジル社製)
b1:疎水化処理済みシリカ粒子(日本アエロジル社製、オクチルシラン処理 平均粒径12nm)
[放射線画像変換パネル1〜4の作製]
〔下引き層塗布液の調製〕
Tgが30℃のポリエステル樹脂(バイロン53SS、東洋紡績(株)社製)100質量部と架橋剤として多官能イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業(株)製)3質量部とを混合し、この混合物をメチルエチルケトン:トルエンの1:1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度500mPa・sの下引き層塗布液を調製した。
【0115】
〔下引き層の塗布〕
厚さ250μmのカーボン錬り込みをした黒色ポリエチレンテレフタレート支持体上に、上記調製した下引き層塗布液を、乾燥膜厚が30μmとなるようナイフコーターを用いて塗布した後、乾燥して下引き層塗設済試料を作製した。
【0116】
〔蛍光体層塗布液1〜4の調整〕
上記調製した各輝尽性蛍光体500gと、樹脂量/(蛍光体量+樹脂量)=25Vol%(固形比)となる量の、Tgが30℃のポリウレタン樹脂(ニッポラン2304、MDI系、固形分35%日本ポリウレタン工業(株)製)とをシクロヘキサノン:メチルエチルケトン:トルエンの=6:2:2混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し蛍光体層塗布液1〜4を調製した。
【0117】
〔蛍光体層の形成、蛍光体シート1〜4の作製〕
上記調製した蛍光体層塗布液を、上記形成した下引き層上に、膜厚が180μmとなるように塗布を行い、蛍光体シート1〜4を作製した。
【0118】
[防湿性保護フィルムの作製]
上記作製した各蛍光体シートの蛍光体層塗設面側の保護フィルムとして下記構成(a)のものを使用した。
【0119】
構成(a)
VMPET12//VMPET12//PET12//シーラントフィルムPET:ポリエチレンテレフタレート
シーラントフィルム:熱融着性フィルムでCPP(キャステングポリプロピレン)又はLLDPE(低密度線状ポリエチレン)を使用
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、フィルムの膜厚(μm)を示す。
【0120】
上記「//」はドライラミネーション接着層で、接着剤層の厚みが2.5μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。この時、使用した接着剤溶液にあらかじめメチルエチルケトンに分散溶解させた有機系青色着色剤(ザボンファーストブルー3G、ヘキスト社製)を添加しておくことで、接着剤層の全てを励起光吸収層とした。又このときの添加量を調節することで励起光吸収層の光透過率を調節した。
【0121】
蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、シーラントフィルム/アルミ箔フィルム9μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。又、この場合の接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0122】
[放射線画像変換パネル1〜4の作製]
前記作製した各蛍光体シート1〜4を、各々一辺が20cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護フィルムを用いて、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着、封止して、放射線画像変換パネル1〜4を作製した。なお、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0123】
[放射線画像変換パネル5の作製]
上記放射線画像変換パネル1の作製において、蛍光体A1に代えて、下記に示す方法に従って調製した蛍光体A5を用いた以外は同様にして、放射線画像変換パネル5を作製した。
【0124】
〔輝尽性蛍光体A5(不定形粒子)の調製〕
ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(4mol/L)2500mlとEuI3水溶液(0.2mol/L)26.5mlを反応器に入れた。更に、水溶液中にヨウ化カリウム332gを添加した。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。弗化アンモニウム水溶液(10mol/L)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させ、そのままの温度で90分間攪拌した。その後ろ過しエタノール2000mlで洗浄した後、80℃で乾燥させ。その後輝尽性蛍光体Aの調整時と同様にして、焼成、分級し、ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子A5を得た。
【0125】
尚、走査型電子顕微鏡写真より輝尽性蛍光体が平均粒径7μmで、多面体粒子であることを確認した。
【0126】
《評価》
以上のようにして作製した各蛍光体シート及び各放射線画像変換パネルを用いて、以下に示す評価を行った。
【0127】
[感度安定性の評価]
各放射線画像変換パネルを、40℃、90%RH環境下で5日間の強制劣化処理(強制劣化処理パネル)を施した後、未処理の放射線画像変換パネル(基準パネル)とともに、以下に示す方法で感度測定を行った。
【0128】
感度の測定は、強制劣化処理有無の各放射線画像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを感度と定義し、基準パネルに対する強制劣化処理パネルの感度劣化率を算出し、下記の基準に則りランク付けを行った。
【0129】
◎:感度劣化率が10%未満
○:感度劣化率が10〜20%未満
×:感度劣化率が20%以上
上記ランクにおいて、○以上であれば、実用上問題ないと判定した。
【0130】
[鮮鋭性の安定性評価]
感度安定性の評価と同様にして、基準パネル及び強制劣化処理パネルを作製し、以下に示す方法に従い、強制劣化処理有無による鮮鋭性の安定性評価を行った。
【0131】
鮮鋭性については、放射線画像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して磁気テープに記録されているX線像の1サイクル/mmにおける変調伝達関数(MTF)を調べ、基準パネルのMTFに対する強制劣化処理パネルのMTFの劣化率を算出し、鮮鋭性の劣化率とした。その劣化率を、下記の基準に則りランク付けを行った。
【0132】
◎:鮮鋭度劣化率が5%未満
○:鮮鋭度劣化率が5〜10%未満
×:鮮鋭度劣化率が10%以上
上記ランクにおいて、○以上であれば、実用上問題ないと判定した。
【0133】
[粒状性]
作製した放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を均一に照射した後、蛍光体層塗設面側から、He−Neレーザー光(633nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光してその画像を読み取り、さらにその画像をレーザー書き込み式のフィルムプリンタを用いて出力し、その画像粒状度(ざらつき感)を下記の基準に則り、目視に則り3段階評価を行なった。なお、△以下は実用上X線による診断に適さないものと判断した。
【0134】
○:ざらつき感なく均一なベタ画像である
△:粒状感があり、均一感が損なわれている
×:目視で明らかにざらついており、均一感がない
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0135】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層中にシランカップリング剤と輝尽性蛍光体以外の親水性微粒子とを含有し、該輝尽性蛍光体が多面体粒子であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項2】
前記輝尽性蛍光体が、前記親水性微粒子で表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項3】
前記親水性微粒子の含有量が、前記輝尽性蛍光体に対して0.01質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項4】
前記親水性微粒子の平均粒径が、2nm以上、50nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が、メルカプト基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルが、1)輝尽性蛍光体粒子を親水性微粒子で表面処理する工程、2)表面処理された該輝尽性蛍光体粒子を有機溶剤中で結合剤と混合、分散して塗布液を調製した後、該塗布液を塗布、乾燥して蛍光体シートを形成する工程、及び3)蛍光体シートを防湿性フィルムで被覆、密閉する工程、を経て製造されることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。

【公開番号】特開2006−226758(P2006−226758A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38952(P2005−38952)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】