説明

放射線画像変換パネル

【課題】柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層と支持体の密着性に優れた放射線画像変換パネルの提供。
【解決手段】支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された柱状結晶を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体層領域のエッジ箇所(A:膜厚t1(μm))と該エッジ箇所を基準位置として支持体周辺に向かったとき膜厚t1/2(μm)となる箇所Bとの距離│A−B│(mm)を0<│A−B│≦2にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用等に用いられる輝尽性蛍光体(以下、単に蛍光体ともいう)を含有する放射線画像変換パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輝尽性蛍光体を利用した放射線画像変換パネルにより放射線像を画像化する方法が用いられるようになってきた。
【0003】
この放射線像変換方法に用いられる放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層には、放射線吸収率及び光変換率が高いこと、画像の粒状性がよく、高鮮鋭性であることが要求される。
【0004】
これらの感度や画質に関する複数の因子を調整して感度、画質を改良するため、これまで様々な検討がされてきており、それらの内、放射線画像の鮮鋭性改善の為の手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0005】
これらの試みの1つとして、例えば特開昭61−142497号等には微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0006】
又、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されたような、支持体の面に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線画像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載のように、支持体の上面に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0007】
又、気相堆積法によって支持体(以下、基板ともう)上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
これらの輝尽性蛍光体層の形状をコントロールする試みにおいては、いずれも輝尽性蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光(又輝尽発光)の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0008】
これらの気相成長(堆積)により形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいては前記感度と鮮鋭性の関係が向上するが、また、擬柱状或いは柱状の輝尽性蛍光体結晶からなる蛍光体層に更に低屈折率層を組み合わせることによって、放射線画像変換パネル中の層界面での反射や屈折を抑え、画質を更に向上させるなどの試みがされている。(例えば、特許文献2を参照)
しかしながら、これらの柱状輝尽性蛍光体結晶からなる輝尽性蛍光体層は、細長い柱状の結晶を基板上に形成しているため、基板への付着性(接着性)が充分でない場合があり、形成後、剥離しやすく、耐久性の改良が必要であった。
【特許文献1】特開平2−58000号公報
【特許文献2】特開平1−131498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層と支持体の密着性に優れた放射線画像変換パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は以下の構成により達成される。
【0011】
(請求項1)
支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された柱状結晶を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体層領域のエッジ箇所(A:膜厚t1(μm))と該エッジ箇所を基準位置として支持体周辺に向かったとき膜厚t1/2(μm)となる箇所(b)との距離│A−B│(mm)が0<│A−B│≦2であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0012】
(請求項2)
前記│A−B│が0.5≦│A−B│≦2であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【0013】
(請求項3)
前記輝尽性蛍光体層が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【0014】
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiから選ばれる少なくとも一種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′およびX″は各々F原子、Cl原子、Br原子およびI原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
即ち、本発明者らは、種々検討した結果、輝尽性蛍光体層領域のエッジ形状を制御することにより輝尽性蛍光体層領域の端部を基点とした支持体からの剥離が抑えられることを見いだした。
【発明の効果】
【0015】
本発明による放射線画像変換パネルは、柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層と支持体の密着性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を更に詳細に述べる。
【0017】
本発明は、支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された柱状結晶を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体層領域のエッジ箇所(A:膜厚t1(μm))と該エッジ箇所を基準位置として支持体周辺に向かったとき膜厚t1/2(μm)となる箇所(b)との距離│A−B│(mm)が0<│A−B│≦2であることを特徴とする放射線画像変換パネルであり、これらの構成により本発明の目的が達成される。
【0018】
本発明者らは、落下衝撃により生じる剪断力により輝尽性蛍光体層の剥離に対し、輝尽性蛍光体層にエッジ箇所(図1(a)の右側の図の如く)を有することにより、応力が分散され輝尽性蛍光体層の剥離が抑えられると推定している。
【0019】
10は輝尽性蛍光体層、11は支持体、12が輝尽性蛍光体層領域のエッジ箇所である。
【0020】
エッジ部は大きいほど剥離に対する耐性は良好であった。しかし一方、放射線画像読取システムにおいては蛍光体層領域のエッジ検出が一般的行われており、エッジ形状が大きすぎる(│A−B│<)と、エッジ検出精度が悪化してしまう。
【0021】
輝尽性蛍光体領域のエッジ形状は図1(b)のようなマスクを用いることにより制御することが可能である。蒸着源から発生した蛍光体原料の蒸気13が、マスク14のギャップA/Bにより形成された空間へと回り込むことによりエッジ形状はA/B及び真空度を調整することにより、任意のエッジ形状に調整することができる。
【0022】
また、│A−B│は0.5<│A−B│≦2であることが本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0023】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は保護層を有していることが好ましい。
【0024】
保護層は保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手段を取ってもよい。
【0025】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層としてもちいることもできる。
【0026】
また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al23等の無機物質を積層して形成してもよい。
【0027】
これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
【0028】
本発明の支持体は通常放射線画像変換パネルに使用される、例えば、アルミニウム基板、石英ガラス、プラスティック樹脂、樹脂等が用いられるが、本発明の効果をより奏する点では、アルミニウムを主成分とする金属基板、CFRP、アラミド積層板が好ましく用いられる。
【0029】
次に、本発明に好ましく用いられる前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体について説明する。
【0030】
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体において、MIは、Na、K、Rb及びCs等の各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表し、中でもRb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、更に好ましくはCs原子である。
【0031】
2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNi等の各原子から選ばれる少なくとも1種の二価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Be、Mg、Ca、Sr及びBa等の各原子から選ばれる二価の金属原子である。
【0032】
3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びIn等の各原子から選ばれる少なくとも1種の三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びIn等の各原子から選ばれる三価の金属原子である。
【0033】
AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。中でも好ましいのはEu金属原子である。
【0034】
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X′及びX″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子を表すが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましく、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が更に好ましい。
【0035】
本発明においては、輝尽性蛍光体として、CsBr:Euが好ましい。
【0036】
本発明の一般式(1)で表される輝尽性蛍光体は、例えば以下に述べる製造方法により製造される。
【0037】
蛍光体原料としては、例えば、
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の化合物が用いられる。
【0038】
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCI2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の化合物が用いられる。
【0039】
(c)AlCl3、GaBr3及びInCl3の化合物から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の化合物が用いられる。
【0040】
(d)賦活部の原料としては、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMg等の各原子から選ばれる金属原子を有する化合物が用いられる。
【0041】
また、一般式(I)で表される化合物において、aは0≦a<0.5、好ましくは0≦a<0.01、bは0≦b<0.5、好ましくは0≦b≦10-2、eは0<e≦0.2、好ましくは0<e≦0.1である。
【0042】
上記の数値範囲の混合組成になるように前記(a)〜(d)の蛍光体原料を秤量し、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合する。
【0043】
尚、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば蛍光体の発光輝度を更に高めることができる、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却してもよい。また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0044】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は気相成長法によって形成される。
【0045】
輝尽性蛍光体の気相成長法としては蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0046】
本発明においては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0047】
第1の方法の蒸着法は、まず、支持体を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とする。
【0048】
次いで、前記輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0049】
この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0050】
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0051】
蒸着終了後、必要に応じて前記輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対の側に保護層を設けることにより本発明の放射線画像変換パネルが製造される。尚、保護層上に輝尽性蛍光体層を形成した後、支持体を設ける手順をとってもよい。
【0052】
さらに、前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体(支持体、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱してもよい。
【0053】
また、蒸着終了後輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法においては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0054】
第2の方法としてのスパッタリング法は、蒸着法と同様、保護層又は中間層を有する支持体をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体上に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0055】
前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0056】
第3の方法としてCVD法があり、又、第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0057】
また、前記気相成長における輝尽性蛍光体層の成長速度は0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には本発明の放射線画像変換パネルの生産性が低く好ましくない。また成長速度が300μm/分を越える場合には成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。
【0058】
放射線画像変換パネルを、前記の真空蒸着法、スパッタリイング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので輝尽性蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線画像変換パネルが得られ、好ましい。
【0059】
蒸着を行うるつぼは蒸着方式を抵抗加熱方式、ハロゲン加熱方式EB(エレクトロンビーム)方式などの加熱方式によって異なる。
【0060】
前記輝尽性蛍光体層の膜厚は、放射線画像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により異なるが、本発明に記載の効果を得る観点から50μm〜1mmが好ましく、より好ましくは50〜800μmである。
【0061】
本発明においては、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい、これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0062】
高反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高い物質のことをいい、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銀、インジウム、その他の金属等、白色顔料及び緑色〜赤色領域の色材を用いることができる。白色顔料は輝尽発光も反射することができる。
【0063】
白色顔料としては、例えば、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの各原子から選ばれるの少なくとも一種の原子であり、XはCl原子又はBr原子である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。
【0064】
これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
【0065】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボンブラック、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンブラックは輝尽発光も吸収する。
【0066】
また、色材は、有機又は無機系色材のいずれでもよい。
【0067】
有機系色材としては、例えば、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。
【0068】
また、カラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。
【0069】
無機系色材としては群青、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系等の無機顔料があげられる。
【0070】
即ち、これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で支持体の表面をマット面としてもよい。
【0071】
本発明の輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射画像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で、且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は680nmであることが好ましく、本発明の放射線画像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、680nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0072】
即ち、本発明の輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を高めることができる。
【0073】
レーザとしては、例えば、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。
【0074】
また、特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0075】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0076】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C−39、C−40、V−40、V−42、V−44、コーニング社製7−54、7−59、スペクトロフィルム社製BG−1、BG−3、BG−25、BG−37、BG−38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【実施例】
【0077】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0078】
(実施例)
《放射線画像変換パネル試料1〜7(試料No.1〜7)の作製》
以下にしめすように、0.5mm厚のアルミニウム板支持体の表面(平均表面粗さ0.02μm)に図1(b)で示されるマスクを装着し、図2で示した蒸着装置を用いて、輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0079】
真空チャンバー内を一旦排気した後、Arガスを導入して1.0×10-2Paとなるように真空度を調整し、支持体の表面温度を100℃となるように保持しながら、輝尽性蛍光体層の膜厚が400μmとなるまで蒸着を行ない放射線像変換パネル試料を形成した。
【0080】
なお図2に示した蒸着装置においては、支持体中心と直交する法線上に蒸着源を配置することとし支持体と蒸着源との距離d1(60cm)とした。蒸着中は支持体を回転させながら蒸着操作を行なった。
【0081】
次いで、この輝尽性蛍光体層を温度150℃で加熱処理した。乾燥空気の雰囲気内で輝尽性蛍光体層を有するアルミニウム板支持体を保護層袋に入れ密封した後、該支持体をCFRP基板(4.0mm)に貼り付け放射線像変換パネル試料1(試料No.1)を得た。
【0082】
│A−B│をギャップA/B及び真空度を調整して、表1の値にした以外は放射線像変換パネル試料1と同様にして、放射線像変換パネル試料2〜7(試料No.2〜7)を得た。各試料について、以下の評価を行った。
【0083】
エッジ検出評価
得られた各放射線画像パネル全面に、管電圧80kVpのX線を照射し、各試料を100mWの半導体レーザー(680nm)で走査して励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を光電子増倍率管(浜松ホトニクス製:光電子増倍率管R1305)を用いて受光して電気信号に変換し、アナログ/デジタル変換して磁気テープにより記録した。
【0084】
エッジ検出ソフトを用い磁気テープに記録されているX線平面画像データを分析し、検出されたエッジを目視評価した。
【0085】
○:4辺ともエッジが直線である
×:少なくとも1つの辺のエッジがゆがんでいる
(接着性の評価)
エッジ検出評価を行った放射線画像変換パネル試料を50cmの高さから図1(a)のように落下させた。落下後の放射線画像変換パネル試料全面に、管電圧80kVpのX線を照射し、各試料を100mWの半導体レーザー(680nm)で走査して励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を光電子増倍率管(浜松ホトニクス製:光電子増倍率管R1305)を用いて受光して電気信号に変換し、アナログ/デジタル変換して磁気テープにより記録した。
【0086】
磁気テープに記録されているX線平面画像に、剥離が生じ欠陥となっている領域の画素数をコンピュウターを用いて分析し、剥離画素数/輝尽性蛍光体層画素数を算出し、評価した。評価の結果を表1に示す。
【0087】
○:剥離画素数/輝尽性蛍光体層画素数が0〜0.05%未満
△:剥離画素数/輝尽性蛍光体層画素数が0.05〜0.1%未満
×:剥離画素数/輝尽性蛍光体層画素数が0.1%以上
【0088】
【表1】

【0089】
表1から明らかなように本発明の試料が比較の試料に比して優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】放射線画像変換パネルを落下させている状態の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の輝尽性蛍光体層の形成に用いる蒸着装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0091】
1 蒸着装置
2 真空チャンバー
3 支持体回転機構(支持体回転機能)
4 支持体
5 蒸発源
6 支持体表面温度制御ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に気相堆積法(気相法)により形成された柱状結晶を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体層領域のエッジ箇所(A:膜厚t1(μm))と該エッジ箇所を基準位置として支持体周辺に向かったとき膜厚t1/2(μm)となる箇所(b)との距離│A−B│(mm)が0<│A−B│≦2であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【請求項2】
前記│A−B│が0.5≦│A−B│≦2であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【請求項3】
前記輝尽性蛍光体層が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(1)
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiから選ばれる少なくとも一種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′およびX″は各々F原子、Cl原子、Br原子およびI原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−133152(P2006−133152A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324737(P2004−324737)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】