説明

放射線画像撮影システム、プログラム、及び放射線画像撮影方法

【課題】被検体に対する被曝量を抑制しつつ、視認性よく放射線画像を観察することができる。
【解決手段】被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、被検体における移動する関心領域について動画撮影を行うように放射線画像撮影部を制御する(S206〜S210)とともに、動画撮影により得られた動画像を表示部に表示するように制御し(S212)、当該動画撮影の終了時に、関心領域が含まれ、かつ関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行うように放射線画像撮影部を制御する(S220〜222)とともに、静止画撮影により得られた静止画像を表示部に表示するように制御する制御手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像を撮影する放射線画像撮影システム、当該放射線画像撮影システムにより実行されるプログラム、及び当該放射線画像撮影システムによる放射線画像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡を患者の体内に挿入し、患者の体内の状態をディスプレイ装置に表示されている放射線動画像によりリアルタイムで観察しながら内視鏡を病変部まで到達させ、当該内視鏡を用いて病変部を観察しつつ、病変部の治療を行う技術が普及している。
【0003】
また、先端に様々な器具を取り付けたカテーテルを患者の体内に挿入して、患者の体内の状態をディスプレイ装置に表示される放射線動画像によりリアルタイムで観察しながらカテーテルの先端を病変部まで到達させ、カテーテルを体外で操作することにより治療を行うIVR(Interventional Radiology)も急速に普及している。
【0004】
これらの内視鏡、カテーテル等の医療器具の患者の体内における挿入状態を放射線動画像によって観察する技術では、患者に対して放射線を連続的に照射する必要があるが、この際の患者の被曝線量を極力少なくすることが望ましい。
【0005】
そこで、従来、患者の体内に挿入された医療器具が存在する位置を含む比較的狭い領域を関心領域とし、コリメータを用いて当該関心領域のみにX線等の放射線を照射しつつ、放射線動画像の撮影を行い、当該動画像をリアルタイムで表示する技術があった。
【0006】
ところで、以上のような医療器具を体内の病変部等といった治療等を行う位置(以下、「目的位置」という。)まで挿入する技術では、最終的に医療器具の到達した位置が正確な目的位置となっているか否かや、当該到達した位置における医療器具の向き等の医療器具の状態を詳細に確認したい場合がある。また、患者に対して治療を行う際には、術者によって所望のタイミングで、より詳細に放射線画像を確認したい場合がある。
【0007】
しかしながら、上述したコリメータを用いる技術では、動画像を表示するものとされているため、医療器具の到達位置における放射線画像が、必ずしも視認性のよい状態で表示されているとは限らなかった。
【0008】
そこで、この問題を解決するために適用できる技術として、特許文献1および特許文献2には、動画撮影による最終フレーム画像を自動的にキャプチャして表示する技術が開示されている。
【0009】
これらの技術を、上述したコリメータを用いる技術に適用し、医療器具が目的位置に到達した時点や術者等によって指定されたタイミング等で、それまでの動画撮影によって得られた最終フレーム画像をキャプチャして表示することにより、動画像を表示し続ける場合に比較して、視認性のよい画像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−25942号公報
【特許文献2】特開2008−212550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この技術においても、必ずしも視認性のよい状態で放射線画像が表示されるとは限らない、という問題点があった。
【0012】
すなわち、患者に対する被曝線量の抑制や、リアルタイムでの画像の表示を可能とするため、動画撮影時には、静止画撮影時に比較して放射線量および撮影画像の解像度を低減させることが一般的であり、これによって画像の品質も静止画像に比較して低いことが一般的である。
【0013】
従って、この場合には、動画像の最終フレーム画像をキャプチャして表示したとしても、視認するのに十分な画像品質を得ることができない場合が多い。
【0014】
また、この技術では、患者に対する被曝量を抑制するために比較的狭い領域とされた関心領域のみについて動画像の最終フレーム画像をキャプチャするため、この点においても、必ずしも視認性のよい状態で放射線画像が表示されるとは限らない、という問題点もあった。
【0015】
すなわち、前述した内視鏡やカテーテル等の医療器具を用いて治療を行う際には、治療の内容や条件によっては比較的広範囲な領域の放射線画像を詳細に観察したい場合があるが、上記動画像の最終フレーム画像は、比較的狭い領域とされた関心領域のみの画像であるため、必ずしも十分な範囲の放射線画像を表示できるとは限らないのである。
【0016】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、被検体に対する被曝量を抑制しつつ、視認性よく放射線画像を観察することができる放射線画像撮影システム、プログラムおよび放射線画像撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る放射線画像撮影システムは、請求項1に記載したように、被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、前記被検体における移動する関心領域について動画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記動画撮影により得られた動画像を前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部に表示するように制御し、当該動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記静止画撮影により得られた静止画像を前記表示部に表示するように制御する制御手段と、を備えている。
【0018】
請求項1に記載の放射線画像撮影システムによれば、被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部が備えられていて、制御手段により、前記被検体における移動する関心領域について動画撮影が行われるように前記放射線画像撮影部が制御されるとともに、前記動画撮影により得られた静止画像を前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部に表示するように制御され、当該動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部が制御されるとともに、前記静止画撮影により得られた静止画像を前記表示部に表示するように制御される。
【0019】
このように、請求項1に記載の放射線画像撮影システムによれば、動画撮影終了時に動画撮影時より広い領域で静止画撮影を行っているので、被検体に対する被曝量を抑制しつつ、視認性よく放射線画像を観察することができる、という効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項2に記載したように、前記制御手段は、前記静止画撮影を行う際、前記動画撮影時と比較して放射線量及び撮影画像の解像度の少なくとも一方を増加させるように制御するようにしても良い。これにより動画撮影により得られた画像よりも鮮明な画像を観察することができる、という効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項3に記載したように、前記放射線の照射野を変更するコリメータをさらに備え、前記制御手段は、前記コリメータにより前記放射線の照射野を変更することで前記撮影対象領域を変更するようにしても良い。これにより、簡易に撮影対象領域を変更することができる、という効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項4に記載したように、前記関心領域の移動経路が全て含まれる領域を前記撮影対象領域として前記静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するようにしても良い。これにより、移動する関心領域の移動経路全体を観察することができる、という効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項5に記載したように、撮影停止の指示を入力する指示入力手段をさらに備え、前記制御手段は、前記指示入力手段により前記指示が入力された場合、前記動画撮影を終了して前記静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するようにしても良い。これにより、指示入力に基づいて動画撮影を終了して静止画撮影を行うことができる、という効果を奏する。
【0024】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項6に記載したように、前記制御手段は、前記静止画撮影を行うように制御した後、前記動画撮影により得られた動画像における最終フレーム画像を前記静止画像に重ねて表示するように前記表示部を制御するようにしても良い。これにより、関心領域より広い領域の静止画像と最終フレーム画像との双方を同時に用いて、撮影対象部位を観察することができる、という効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項7に記載したように、前記制御手段が前記静止画撮影を行うように制御した後、前記放射線の照射を停止させる停止手段をさらに備えたようにしても良い。これにより、被検体の被曝量を低減させることができる、という効果を奏する。
【0026】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項8に記載したように、前記制御手段は、前記停止手段により前記放射線の照射が停止された場合、前記放射線の照射が行われていない旨を前記表示部に表示するように制御するようにしても良い。これにより、無駄な放射線照射が行われていない旨を報知することができる、という効果を奏する。
【0027】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項9に記載したように、前記制御手段は、前記静止画撮影によって得られた静止画像を、当該静止画像と異なるタイミングで得られた静止画像と並べて前記表示部に表示するように制御するようにしても良い。これにより、撮影対象部位の変化を把握することができる、という効果を奏する。
【0028】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項10に記載したように、前記関心領域は、前記被検体に挿入された医療器具の先端部の位置を含む領域であるようにしても良い。これにより、被検体に挿入された医療器具の先端部付近を視認性よく観察することができる、という効果を奏する。
【0029】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項11に記載したように、前記医療器具は、内視鏡またはカテーテルであるようにしても良い。これにより、被検体に挿入された内視鏡またはカテーテルの先端部が撮影された放射線画像を視認性よく観察することができる、という効果を奏する。
【0030】
また、本発明に係る放射線画像撮影システムにおいて、請求項12に記載したように、前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部をさらに備えるようにしても良い。これにより、放射線画像撮影部により撮影された画像を放射線画像撮影システムに設けられた表示部に表示させることができる、という効果を奏する。
【0031】
一方、上記目的を達成するために、請求項13に記載のプログラムは、被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、前記放射線画像部により撮影された画像を表示する表示部とを備えた放射線画像撮影システムにて実行されるプログラムであって、コンピュータを、前記被検体における移動する関心領域について動画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記動画撮影により得られた動画像を表示するように前記表示部を制御する第1制御手段と、当該動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記静止画撮影により得られた静止画像を表示するように前記表示部を制御する第2制御手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0032】
従って、請求項13に記載のプログラムによれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、被検体に対する被曝量を抑制しつつ、視認性よく放射線画像を観察することができる、という効果を奏する。
【0033】
一方、上記目的を達成するために、請求項14に記載の放射線画像撮影方法は、被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、前記放射線画像部により撮影された画像を表示する表示部とを備えた放射線画像撮影システムにおける放射線画像撮影方法であって、前記被検体の移動する関心領域について動画撮影を行う動画撮影ステップと、前記動画撮影により得られた動画像を表示する動画像表示ステップと、前記動画撮影ステップによる前記動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行う静止画撮影ステップと、前記静止画撮影により得られた静止画像を表示する静止画表示ステップと、を備えている。
【0034】
従って、請求項14に記載の放射線画像撮影方法によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、被検体に対する被曝量を抑制しつつ、視認性よく放射線画像を観察することができる、という効果を奏する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、被検体に対する被曝量を抑制しつつ、視認性よく放射線画像を観察することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係る放射線画像撮影システムが設置された手術室の様子を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る電子カセッテの内部構成を示す一部破断斜視図である。
【図3】実施の形態に係る放射線照射装置の要部構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る気管支ファイバー検査を実施している際の様子を示す概略図である。
【図5】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分に注目した等価回路図である。
【図7】実施の形態に係る間接変換方式の放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図8】実施の形態に係るTFT基板の構成を概略的に示した断面図である。
【図9】表面読取方式と裏面読取方式を説明するための断面側面図である。
【図10】実施の形態に係る放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施の形態に係る静止画像撮影処理ルーチンプログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】(A)実施の形態に係るコンソールのディスプレイの表示画面の一例を示す図であり、(B)は、実施の形態に係る電子カセッテのディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図13】実施の形態に係る放射線画像撮影システムにおいて静止画像の撮影対象領域を設定する際の設定方法を説明するための図である。
【図14】(A)及び(B)は、実施の形態に係るコンソールのディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図15】実施の形態に係る放射線照射処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0038】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム(以下、単に「撮影システム」ともいう。)10の構成について説明する。
【0039】
同図に示すように、本実施の形態に係る撮影システム10は、医師12や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行うものである。撮影システム10は、患者14が横たわるベッド16と、予め設定された撮影条件に従った放射線量からなる放射線Xを患者14に照射する放射線照射装置18と、患者14を透過した放射線Xを検出して、検出した放射線量に応じた放射線画像を示す放射線画像情報(以下、単に「画像情報」ともいう。)を生成し、当該画像情報を予め定められた記憶領域に記憶することにより撮影を行う可搬型撮影装置(以下、「電子カセッテ」ともいう。)20と、ベッド16に設けられ、ベッド16の患者14が横たわる側で電子カセッテ20を片持ち支持する支持部材22と、放射線照射装置18および電子カセッテ20を制御するコンソール26と、を備えている。
【0040】
ベッド16は、放射線Xを透過させる材料で構成され、患者14が横たわる略矩形平板状の載置台16Aと、載置台16Aの四隅に設けられ、載置台16Aを支持する脚部16Bと、を備えている。
【0041】
ここで、放射線照射装置18は、載置台16Aの裏側(患者14が横たわる側の反対側)から載置台16A上の患者14に放射線Xが照射されるように載置台16Aの裏側に配置されている。
【0042】
一方、本実施の形態に係る電子カセッテ20は、裏面に、撮影した放射線画像が表示されるディスプレイ28を備え、ディスプレイ28の表示面28Aを上方に向けた状態で、放射線照射装置18から照射された放射線Xが載置台16Aおよび患者14を透過して後述する放射線検出器36により検出されるように載置台16Aの表側(患者14が横たわる側)に配置されている。
【0043】
載置台16Aの患者14が横たわる側の面には支持部材22が設けられている。支持部材22は、略L字状に屈曲しており、基端部が載置台16Aに固定されており、先端部には電子カセッテ20が着脱自在に取付けられている。
【0044】
図2には、本実施の形態に係る電子カセッテ20の内部構成が示されている。
【0045】
同図に示すように、電子カセッテ20は、放射線Xを透過させる材料からなる略矩形平板状の筐体30を備えている。電子カセッテ20は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、筐体30を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ20を繰り返し続けて使用することができる。
【0046】
また、電子カセッテ20の筐体30の側面には通信ケーブルを接続するための接続端子20Aが設けられている。また、筐体30の内部には、放射線Xが照射される筐体30の照射面32側から、放射線Xの散乱線を除去するグリッド34と、ディスプレイ28の表示面28Aの反対方向を向くように表示面28Aの反対側に配置され、放射線Xが照射される略矩形状の照射面36Aを備え、患者14を透過して照射面36Aから照射された放射線Xの放射線量を検出して、当該放射線量に応じた放射線画像を示す画像情報を出力する放射線検出器36と、ディスプレイ28と放射線検出器36との間に介在され、放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板38と、が順に配設されている。
【0047】
また、筐体30の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路および充電可能な二次電池を収容するケース40が配置されている。放射線検出器36および電子回路は、ケース40に収容された二次電池から供給される電力によって作動する。ここで、ケース40内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース40の照射面32側には鉛板等の放射線を遮蔽する遮蔽部材を配設しておくことが望ましい。
【0048】
図3には、本実施の形態に係る放射線照射装置18の要部構成を示す斜視図が示されている。
【0049】
同図に示されるように、放射線照射装置18は、放射線Xを射出する放射線源42と、放射線源42と電子カセッテ20との間に設けられ、4枚のスリット板44A,44B,44C,44Dを含んで構成された絞り部44(コリメータ)とを備えている。
【0050】
各スリット板44A〜44Dは、鉛やタングステン等の放射線Xを遮蔽する材料で構成された、平面視矩形状の板状部材により構成されており、絞り部44では、スリット板44Aとスリット板44Bとの一側面同士が対向し、かつスリット板44Cとスリット板44Dとの一側面同士が対向すると共に、各スリット板44A〜44Dの当該対向する各々の側面により平面視矩形状の開口領域51が形成されるように各スリット板44A〜44Dが配置されている。
【0051】
ここで、スリット板44Aおよびスリット板44Bは同図x方向に移動可能に構成されているのに対し、スリット板44Cおよびスリット板44Dは上記x方向とは直交する方向である同図y方向に移動可能に構成されている。なお、本実施の形態に係る絞り部44では、各スリット板44A〜44Dの移動可能な範囲が、対向配置されているスリット板同士の先端部が接触する状態、すなわち、開口領域51が全閉状態とされている状態から、開口領域51が平面視矩形状を保ち、かつ最大の面積となる状態(以下、「全開状態」という。)までの範囲とされている。
【0052】
また、本実施の形態に係る放射線照射装置18では、スリット板44Aがモータ146(図5参照。)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されて移動し、スリット板44Bがモータ148(図5参照。)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されて移動し、スリット板44Cがモータ150(図5参照。)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されて移動し、さらに、スリット板44Dがモータ152(図5参照。)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されて移動する。
【0053】
一方、図1に示すように、本実施の形態に係る放射線照射装置18は、鉛やタングステン等の放射線Xを遮蔽する材料で構成され、放射線源42および絞り部44が収容される収容箱52を備えている。同図に示すように、収容箱52には、放射線源42から射出され、絞り部44を経た放射線Xを電子カセッテ20の照射面32に向けて照射するための開口部52Aが形成されている。
【0054】
開口部52Aは、絞り部44における各スリット板44A〜44Dが全開状態とされているときに開口領域51を通過した放射線Xが射出できる大きさとされている。また、本実施の形態に係る撮影システム10では、絞り部44の各スリット板44A〜44Dが全開状態とされている場合に、電子カセッテ20における照射面32の全面に放射線Xが照射されるように、電子カセッテ20および放射線照射装置18が予め位置決めされている。
【0055】
一方、図4には、患者14に対して気管支ファイバー検査を実施している様子の一例を示す概略図が示されている。
【0056】
同図に示されるように、この気管支ファイバー検査では、内視鏡60が用いられる。 本実施の形態に係る撮影システム10では、一例として図4に示すように、内視鏡60を用いた気管支ファイバー検査を行うことができる。この際、本実施の形態に係る撮影システム10では、放射線照射装置18および電子カセッテ20を用いて放射線動画像の撮影を行い、当該撮影によって得られた動画像を電子カセッテ20に設けられたディスプレイ28の表示面28Aによりリアルタイムで表示する。術者は当該動画像を参照しつつ、内視鏡60が検査対象とする領域を撮影可能な位置まで挿入する。
【0057】
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る撮影システム10の電気系の要部構成について説明する。
【0058】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線照射装置18には、コンソール26と通信を行うための接続端子18Aが設けられている。これに対し、本実施の形態に係るコンソール26には、放射線照射装置18と通信を行うための接続端子26A、電子カセッテ20と通信を行うための接続端子26が設けられている。
【0059】
放射線照射装置18は、通信ケーブル70を介してコンソール26に接続されている。電子カセッテ20は、放射線画像の撮影時に、接続端子20Aに通信ケーブル72が接続され、当該通信ケーブル72を介してコンソール26に接続される。なお、本実施の形態では、電子カセッテ20とコンソール26との間のデータ転送の高速化を図るために、通信ケーブル72に光ファイバーを採用した光通信ケーブルを用いており、光通信によって電子カセッテ20とコンソール26との間でデータの転送を行っている。
【0060】
電子カセッテ20に内蔵された放射線検出器36は、放射線をシンチレータで光に変換した後にフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換方式、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式の何れでもよい。直接変換方式の放射線検出器36は、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板74上に、放射線Xを吸収し、電荷に変換する光電変換層が積層されて構成されている。光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、放射線Xが照射されると、照射された放射線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線Xを電荷へ変換する。間接変換方式の放射線検出器36は、アモルファスセレンのような放射線Xを直接的に電荷に変換する放射線−電荷変換材料の代わりに、蛍光体材料と光電変換素子(フォトダイオード)を用いて間接的に電荷に変換してもよい。蛍光体材料としては、ガドリニウム硫酸化物(GOS)やヨウ化セシウム(CsI)がよく知られている。この場合、蛍光体材料によって放射線X−光変換を行い、光電変換素子のフォトダイオードによって光−電荷変換を行う。本実施の形態に係る電子カセッテ20は、間接変換方式の放射線検出器36を内蔵するものとする。
【0061】
また、TFTアクティブマトリクス基板74上には、光電変換層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量76と、蓄積容量76に蓄積された電荷を読み出すためのTFT78とを備えた画素部80(図5では個々の画素部80に対応する光電変換層や光電変換素子を光電変換部82として模式的に示している)がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ20への放射線Xの照射に伴って光電変換層で発生された電荷は、個々の画素部80の蓄積容量76に蓄積される。これにより、電子カセッテ20に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器36に保持される。
【0062】
また、TFTアクティブマトリクス基板74には、一定方向(行方向)に延設され、個々の画素部80のTFT78をオンオフさせるための複数本のゲート配線84と、ゲート配線84と直交する方向(列方向)に延設され、オンされたTFT78を介して蓄積容量76から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線86が設けられている。個々のゲート配線84はゲート線ドライバ88に接続されており、個々のデータ配線86は信号処理部90に接続されている。個々の画素部80の蓄積容量76に電荷が蓄積されると、個々の画素部80のTFT78は、ゲート線ドライバ88からゲート配線84を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT78がオンされた画素部80の蓄積容量76に蓄積されている電荷は、電荷信号としてデータ配線86を伝送されて信号処理部90に入力される。従って、個々の画素部80の蓄積容量76に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0063】
図6には、本実施の形態に係る放射線検出器36の1画素部分に注目した等価回路図が示されている。
【0064】
同図に示すように、TFT78のソースは、データ配線86に接続されており、このデータ配線86は、信号処理部90に接続されている。また、TFT78のドレインは蓄積容量76および光電変換部82に接続され、TFT78のゲートはゲート配線84に接続されている。
【0065】
信号処理部90は、個々のデータ配線86毎にサンプルホールド回路92を備えている。個々のデータ配線86を伝送された電荷信号はサンプルホールド回路92に保持される。サンプルホールド回路92はオペアンプ92Aとコンデンサ92Bを含んで構成され、電荷信号をアナログ電圧に変換する。また、サンプルホールド回路92にはコンデンサ92Bの両電極をショートさせ、コンデンサ92Bに蓄積された電荷を放電させるリセット回路としてスイッチ92Cが設けられている。
【0066】
サンプルホールド回路92の出力側にはマルチプレクサ94、A/D(アナログ/デジタル)変換器96が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はアナログ電圧に変換されてマルチプレクサ94に順に(シリアルに)入力され、A/D変換器96によってデジタルの画像情報へ変換される。
【0067】
図5に示すように、信号処理部90にはラインメモリ98が接続されており、信号処理部90のA/D変換器96から出力された画像情報はラインメモリ98に順に記憶される。ラインメモリ98は放射線画像を示す画像情報を所定ライン分記憶可能な記憶容量を有しており、1ラインずつ電荷の読み出しが行われる毎に、読み出された1ライン分の画像情報がラインメモリ98に順次記憶される。
【0068】
ラインメモリ98は電子カセッテ20全体の動作を制御するカセッテ制御部100と接続されている。カセッテ制御部100は、マイクロコンピュータによって実現されており、光通信制御部102が接続されている。この光通信制御部102は、接続端子20Aに接続されており、接続端子20Aを介して接続された外部機器との間での各種情報の伝送の制御を行う。従って、カセッテ制御部100は、光通信制御部102を介して外部機器との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0069】
また、電子カセッテ20は、ディスプレイ28による表示の制御を行うディスプレイドライバ104を備えており、ディスプレイドライバ104にはカセッテ制御部100が接続されている。カセッテ制御部100は、ラインメモリ98に記憶されている画像情報を読み出し、当該画像情報により示される放射線画像をディスプレイ28の表示面28Aに表示させる。なお、本実施の形態に係るディスプレイ28には、放射線検出器36により得られた画像情報により示される放射線画像が略実寸サイズで表示される。
【0070】
さらに、電子カセッテ20は電源部106を備えており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ88、信号処理部90、ラインメモリ98、光通信制御部102やカセッテ制御部100として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部106から供給された電力によって作動する。電源部106は、電子カセッテ20の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路や素子へ電力を供給する。
【0071】
コンソール26は、サーバ・コンピュータとして構成されており、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、操作メニューや撮影された放射線画像等の各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、ユーザがタッチペンで上記タッチパネルに触れることにより所望の情報や指示が入力されるUI(User Interface)パネル110と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル112と、を備えている。
【0072】
また、コンソール26は、装置全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit)114と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)116と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)118と、各種データを記憶して保持するHDD(Hard Disk Drive)120と、を備えている。
【0073】
また、コンソール26は、UIパネル110のディスプレイの制御を行うと共に、タッチパネルに対する操作状態を検出するUIパネル制御部122と、操作パネル112に対する操作状態を検出する操作入力検出部124と、接続端子26Aに接続され、接続端子26Aおよび通信ケーブル70を介して放射線照射装置18との間で曝射条件や放射線照射装置18の状態情報等の各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部126と、接続端子26Bに接続され、接続端子26Bおよび通信ケーブル72を介して電子カセッテ20との間で画像情報等の各種情報の送受信を行う光通信制御部128と、を備えている。
【0074】
CPU114、ROM116、RAM118、HDD120、UIパネル制御部122、操作入力検出部124、通信I/F部126、光通信制御部128、および外部I/F部130は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU114は、ROM116、RAM118、HDD120へのアクセスを行うことができると共に、UIパネル制御部122を介したUIパネル110のディスプレイへの各種情報の表示の制御、UIパネル制御部122を介したUIパネル110のタッチパネルに対するユーザの操作状態の把握、操作入力検出部124を介した操作パネル112に対するユーザの操作状態の把握、通信I/F部126を介した放射線照射装置18との各種情報の送受信の制御、光通信制御部128を介した電子カセッテ20との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。
【0075】
なお、本実施の形態に係るUIパネル110のタッチパネルは、透明電極を用いた多数のスイッチがマトリクス状に配列されて構成されている。UIパネル110のディスプレイの画面に患者14の放射線画像が表示されている状態で、ユーザがタッチペン(図示省略)でUIパネル110のディスプレイの画面に触れると、タッチパネルの多数のスイッチのうちの何れか1つがオンする。UIパネル制御部122は、タッチパネルの何れかのスイッチがオンになると、オンになったスイッチの位置をマトリクスにおける2次元直交座標で表した座標情報をCPU114へ出力する。CPU114は、UIパネル制御部122から座標情報が入力されると、当該座標情報をHDD120に記憶する。
【0076】
一方、放射線照射装置18は、放射線照射装置18全体の動作を制御する照射装置制御部140を備えている。照射装置制御部140はマイクロコンピュータによって実現されており、通信I/F部142が接続されている。通信I/F部142は、接続端子18Aに接続されており、接続端子18Aを介して接続されたコンソール26との間での各種情報の伝送の制御を行う。従って、照射装置制御部140は、通信I/F部142を介してコンソール26との間での各種情報の送受信が可能とされている。また、照射装置制御部140には放射線源42が接続されており、照射装置制御部140は、通信I/F部142を介して受信した曝射条件に基づいて放射線源42を制御する。
【0077】
また、放射線照射装置18は、スリット板44Aを移動させるための駆動力を発生するモータ146と、スリット板44Bを移動させるための駆動力を発生するモータ148と、スリット板44Cを移動させるための駆動力を発生するモータ150と、スリット板44Dを移動させるための駆動力を発生するモータ152と、を備えている。
【0078】
また、放射線照射装置18は、モータ146の駆動制御を行うモータドライバ154と、モータ148の駆動制御を行うモータドライバ156と、モータ150の駆動制御を行うモータドライバ158と、モータ152の駆動制御を行うモータドライバ160と、を備えている。
【0079】
モータ146は、モータドライバ154を介して照射装置制御部140に、モータ148は、モータドライバ156を介して照射装置制御部140に、モータ150は、モータドライバ158を介して照射装置制御部140に、モータ152は、モータドライバ160を介して照射装置制御部140に、各々接続されている。従って、モータ146,148,150,152の駆動は、コンソール26からの指示に応じて、照射装置制御部140によって制御される。
【0080】
次に、蛍光体材料と光電変換素子を用いて放射線を間接的に電荷に変換する間接変換方式とした場合の放射線検出器36の構成について説明する。
【0081】
図7は、本発明の一実施形態である間接変換方式の放射線検出器36の3つの画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0082】
この放射線検出器36は、絶縁性の基板300上に、信号出力部302、光電変換部82、及びシンチレータ304が順次積層しており、信号出力部302、光電変換部82により画素部が構成されている。画素部は、基板300上に複数配列されており、各画素部における信号出力部302と光電変換部82とが重なりを有するように構成されている。
【0083】
シンチレータ304は、光電変換部82上に透明絶縁膜306を介して形成されており、上方(基板300と反対側)から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ304を設けることで、被写体を透過した放射線を吸収して発光することになる。
【0084】
シンチレータ304が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器36によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0085】
シンチレータ304に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0086】
シンチレータ304は、例えば、CsI(Tl)等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板への蒸着によって形成されてもよい。このように蒸着によってシンチレータ304を形成する場合、蒸着基板は、X線の透過率、コストの面からAlの板がよく使用されるがこれに限定されるものではない。なお、シンチレータ304としてGOSを用いる場合、蒸着基板を用いずにTFTアクティブマトリクス基板74の表面にGOSを塗布することにより、シンチレータ304を形成してもよい。
【0087】
光電変換部82は、上部電極310、下部電極312、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜314を有している。
【0088】
上部電極310は、シンチレータ304により生じた光を光電変換膜314に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ304の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極310としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極310は、全画素部で共通の一枚構成としてもよく、画素部毎に分割してもよい。
【0089】
光電変換膜314は、シンチレータ304から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜314は、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光電変換膜314であれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ304による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光電変換膜314であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ304による発光以外の電磁波が光電変換膜314に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜314で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0090】
光電変換膜314を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ304で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ304の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ304の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ304から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ304の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0091】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ304の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜314で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0092】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器36に適用可能な光電変換膜314について具体的に説明する。
【0093】
本発明に係る放射線検出器36における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の下部電極312,上部電極310と、該下部電極312,上部電極310間に挟まれた有機光電変換膜314を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0094】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0095】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0096】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0097】
この有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料、及び光電変換膜314の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光電変換膜314は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0098】
光電変換膜314の厚みは、シンチレータ304からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜314の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜314に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0099】
なお、図7に示す放射線検出器36では、光電変換膜314は、全画素部で共通の一枚構成であるが、画素部毎に分割してもよい。
【0100】
下部電極312は、画素部毎に分割された薄膜とする。下部電極312は、透明又は不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。また、下部電極312の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0101】
光電変換部82では、上部電極310と下部電極312の間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜314で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極310に移動させ、他方を下部電極312に移動させることができる。本実施形態の放射線検出器36では、上部電極310に配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極310に印加されるものとする。又、バイアス電圧は、光電変換膜314で発生した電子が上部電極310に移動し、正孔が下部電極312に移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であっても良い。
【0102】
各画素部を構成する光電変換部82は、少なくとも下部電極312、光電変換膜314、及び上部電極310を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜316及び正孔ブロッキング膜318の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0103】
電子ブロッキング膜316は、下部電極312と光電変換膜314との間に設けることができ、下部電極312と上部電極310間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極312から光電変換膜314に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0104】
電子ブロッキング膜316には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0105】
実際に電子ブロッキング膜316に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜314の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜314の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0106】
電子ブロッキング膜316の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、光電変換部82の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0107】
正孔ブロッキング膜318は、光電変換膜314と上部電極310との間に設けることができ、下部電極312と上部電極310間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極310から光電変換膜314に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。また、正孔ブロッキング膜318には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0108】
正孔ブロッキング膜318の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、光電変換部82の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0109】
実際に正孔ブロッキング膜318に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜314の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜314の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0110】
なお、光電変換膜314で発生した電荷のうち、正孔が上部電極310に移動し、電子が下部電極312に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜316と正孔ブロッキング膜318の位置を逆にすれば良い。又、電子ブロッキング膜316と正孔ブロッキング膜318は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0111】
各画素部の下部電極312下方の基板300の表面には信号出力部302が形成されている。
【0112】
図8には、信号出力部302の構成が概略的に示されている。
【0113】
下部電極312に対応して、下部電極312に移動した電荷を蓄積する蓄積容量76と、蓄積容量76に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力するTFT78が形成されている。蓄積容量76及びTFT78の形成された領域は、平面視において下部電極312と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における信号出力部302と光電変換部82とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器36(画素部)の平面積を最小にするために、蓄積容量76及びTFT78の形成された領域が下部電極312によって完全に覆われていることが望ましい。
【0114】
蓄積容量76は、基板300と下部電極312との間に設けられた絶縁膜319を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極312と電気的に接続されている。これにより、下部電極312で捕集された電荷を蓄積容量76に移動させることができる。
【0115】
TFT78は、ゲート電極320、ゲート絶縁膜322、及び活性層(チャネル層)324が積層され、さらに、活性層324上にソース電極326とドレイン電極328が所定の間隔を開けて形成されている。活性層324は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層324を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0116】
活性層324を構成可能な非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層324を構成可能な非晶質酸化物は、これらに限定されるものではない。
【0117】
活性層324を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0118】
TFT78の活性層324を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部302におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0119】
また、活性層324をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT78のスイッチング速度の高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低いTFT78を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層324を形成する場合、活性層324に極微量の金属性不純物が混入するだけで、TFT78の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0120】
ここで、上述した非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板300としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0121】
また、基板300には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0122】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために,透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板300を形成してもよい。
【0123】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板300を形成できる。
【0124】
本実施の形態では、基板300上に、信号出力部302、光電変換部82、透明絶縁膜306を順に形成し、当該基板300上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いてシンチレータ304を貼り付けることにより放射線検出器36を形成している。以下、透明絶縁膜306まで形成された基板300をTFTアクティブマトリクス基板(以下「TFT基板」ともいう。)74と称する。
【0125】
本実施の形態に係る電子カセッテ20では、放射線検出器36がTFT基板74側から放射線Xが照射されるように内蔵されている。
【0126】
ここで、放射線検出器36は、図9に示すように、シンチレータ304が形成された側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の裏面側に設けられたTFT基板74により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式(所謂PSS(Penetration Side Sampling)方式)とされた場合、シンチレータ304の同図上面側(TFT基板74の反対側)でより強く発光し、TFT基板74側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の表面側に設けられたTFT基板74により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式(所謂ISS(Irradiation Side Sampling)方式)とされた場合、TFT基板74を透過した放射線がシンチレータ304に入射してシンチレータ304のTFT基板74側がより強く発光する。TFT基板74に設けられた各光電変換部82には、シンチレータ304で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器36は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板74に対するシンチレータ304の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0127】
また、放射線検出器36は、光電変換膜314を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜314で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器36は、表面読取方式により放射線がTFT基板74を透過する場合でも光電変換膜314による放射線の吸収量を少ないため、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFT基板74を透過してシンチレータ304に到達するが、このように、TFT基板74の光電変換膜314を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜314での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
【0128】
また、TFT78の活性層324を構成する非晶質酸化物や光電変換膜314を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板300を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板300は放射線の吸収量を少ないため、表面読取方式により放射線がTFT基板74を透過する場合でも、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。
【0129】
また、例えば、放射線検出器36をTFT基板74が照射面32側となるように筐体30内の照射面32部分に貼り付けるものとし、基板300を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器36自体の剛性が高くいため、筐体30の照射面32部分を薄く形成することができる。また、基板300を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器36自体が可撓性を有するため、照射面32に衝撃が加わった場合でも放射線検出器36が破損しづらい。
【0130】
次に、本実施の形態に係る撮影システム10の作用を説明する。
【0131】
本実施の形態に係る撮影システム10を利用して患者14に対して気管支ファイバー検査を実施する場合、気管支ファイバー検査を行う術者は、気管支ファイバー検査の開始を指示する指示操作を行う。
【0132】
コンソール26は、当該指示操作が行われると、放射線画像撮影処理を実行する。
【0133】
次に、図10を参照して、放射線画像撮影処理の実行時におけるコンソール26の作用を説明する。なお、図10は、この際にコンソール26のCPU114によって実行される放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM116の所定領域に予め記憶されている。
【0134】
ステップS202では、コンソール26は、準備段階として、静止画像を撮影する静止画像撮影処理を行う。ここで、図11を参照して、静止画像撮影処理の実行時におけるコンソール26の作用を説明する。なお、図11は、この際にコンソール26のCPU114によって実行される静止画像撮影処理ルーチンプログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM116の所定領域に予め記憶されている。
【0135】
ステップS300では、コンソール26は、準備段階における静止画撮影を行う際の予め定められた曝射条件を放射線照射装置18および電子カセッテ20へ送信することにより当該曝射条件を設定する。これに応じて照射装置制御部140は、受信した曝射条件での曝射準備を行う。
【0136】
次のステップ302では、コンソール26は、準備段階における静止画撮影を行う際の予め定められた絞り部44の開口状態(本実施の形態では、全開状態)の設定を指示する設定指示情報を放射線照射装置18に送信する。
【0137】
上記設定指示情報が受信されると、放射線照射装置18では、照射装置制御部140により、絞り部44の開口状態が全開状態となるように各スリット板44A〜44Dの位置を制御する。
【0138】
次のステップS303では、コンソール26は、静止画像での撮影を行うことを指示する静止画撮影指示情報を電子カセッテ20に送信し、次のステップS304では、コンソール26は、曝射開始指示を示す曝射開始指示情報を放射線照射装置18および電子カセッテ20へ送信する。これに応じて、放射線源42は、放射線照射装置18がコンソール26から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流等で放射線を発生して射出する。
【0139】
放射線源42から照射された放射線Xは、絞り部44を介して患者14を透過した後に電子カセッテ20に到達する。これにより、電子カセッテ20に内蔵された放射線検出器36の各画素部80の蓄積容量76には電荷が蓄積される。
【0140】
電子カセッテ20のカセッテ制御部100は、静止画像撮影指示情報を受信してから放射線検出器36の各画素部80の蓄積容量76への電荷の蓄積が終了するまでの期間として予め定められた期間の経過後にゲート線ドライバ88を制御してゲート線ドライバ88から1ラインずつ順に各ゲート配線84にオン信号を出力させ、各ゲート配線84に接続された各TFT78を1ラインずつ順にオンさせる。
【0141】
放射線検出器36は、各ゲート配線84に接続された各TFT78を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各蓄積容量76に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線86に流れ出す。各データ配線86に流れ出した電気信号は信号処理部90でデジタルの画像情報に変換されて、ラインメモリ98に記憶される。
【0142】
カセッテ制御部100は、ラインメモリ98に記憶された画像情報に対し、予め定められた画像補正処理を施した後に光通信制御部102を介してコンソール26へ送信する。
【0143】
そこで、次のステップS306では、コンソール26は、1フレーム分の画像情報が電子カセッテ20から受信されるまで待機し、次のステップS308にて、コンソール26は、受信した画像情報をHDD120に記憶すると共に、当該画像情報により示される放射線画像の表示を開始する静止画像表示指示情報を電子カセッテ20に送信した後、本静止画像撮影処理ルーチンプログラムを終了する。
【0144】
上記静止画像表示指示情報が受信されると、電子カセッテ20は、コンソール26に送信した画像情報により示される静止画像のディスプレイ28の表示面28Aへの表示を開始する。
【0145】
一方、静止画像撮影処理ルーチンプログラムが終了すると、放射線画像撮影処理プログラム(図10)のステップS206では、コンソール26は、動画像の撮影を行う際の条件として予め定められた曝射条件(本実施の形態では、放射線源42の管電流、管電圧)を放射線照射装置18および電子カセッテ20へ送信することにより当該曝射条件を設定(更新)する。これに応じて照射装置制御部140は、受信した曝射条件での曝射をするように放射線源42を制御する。なお、本実施の形態では、上記動画像の撮影を行う際の曝射条件として、放射線Xの曝射量が静止画像の撮影の際の1/10〜1/1000程度となるようにする。
【0146】
次のステップS207では、コンソール26は、絞り部44の開口状態(開口面積および形状)を、関心領域を撮影する際の状態として予め定められた状態となるように指示する開口状態指示情報を放射線照射装置18に送信する。
【0147】
上記開口状態指示情報が受信されると、放射線照射装置18では、照射装置制御部140により、当該開口状態指示情報により示される状態となるように各スリット板44A〜44Dの位置を制御する。なお、本実施の形態に係る撮影システム10では、上記予め定められた状態として、患者14の放射線Xが照射される領域が関心領域となる面積および形状として術者によって予め設定された面積(少なくとも全開状態時より狭い面積)および形状を適用している。
【0148】
なお、上記予め設定された面積は、放射線Xが照射される面積を決定するものであるため、検査対象とする部位の大きさや、同一患者に対する放射線Xの累積照射量等に応じて適宜設定する形態が好ましいが、例えば、放射線検出器36の照射面36Aの面積に対する予め定められた割合(一例として10%)の面積に放射線Xが照射される面積等といった、予め固定的に定められた面積を適用する形態としてもよい。
【0149】
次のステップS208では、コンソール26は、動画像での撮影を行うことを指示する動画撮影指示情報を電子カセッテ20に送信する。
【0150】
上記動画撮影指示情報が受信されると、電子カセッテ20は、動画像の撮影を開始する。なお、この際、電子カセッテ20のカセッテ制御部100は、静止画撮影時の動作と同様の動作を静止画像の撮影時より解像度(本実施の形態では、静止画撮影時の1/4の解像度)を低くし、かつ動画像の撮影速度として予め定められた速度(本実施の形態では、30フレーム/秒)で実行すると共に、上記画像補正処理が施された画像情報により示される放射線画像をディスプレイ28により表示するようにディスプレイドライバ104を制御する。
【0151】
そこで、次のステップS210では、コンソール26は、1フレーム分の画像情報が電子カセッテ20から受信されるまで待機し、次のステップS212にて、コンソール26は、受信した画像情報をHDD120に記憶すると共に、当該画像情報により示される放射線画像を、確認等を行うためにUIパネル110のディスプレイによって表示させるようにUIパネル制御部122を制御する。
【0152】
図12(A)は、UIパネル110のディスプレイの表示内容の一例を示す図であり、図12(B)は、電子カセッテ20のディスプレイ28の表示面28Aの表示内容の一例を示す図である。図12(A)に示すように、UIパネル110のディスプレイに、内視鏡60により撮影されている動画像170と、準備段階にて撮影した静止画像においてステップS206にて受信した画像情報が示す動画像170が、対応する位置に組み込まれた静止画像171とが並べて表示される。これにより、術者は、内視鏡60にて撮影されている動画像170と電子カセッテ20にて撮影されている放射線画像171とを相互に比較しながら施術することができる。
【0153】
また、図12(B)に示すように、コンソール28のディスプレイ28の表示面28Aに、静止画像171が等身大の大きさで表示される。この際、静止画像171上において、対応する位置(動画像の撮影領域172)に動画像172Aが上に重ねて表示されている。これにより、術者は、電子カセッテ20のディスプレイにより、患者の体内における内視鏡60の位置を等身大の大きさで確認することができる。
【0154】
次のステップS214では、コンソール26は、内視鏡60の先端部の位置を示す位置情報(以下、「先端位置情報」という。)を取得する位置情報取得処理を実行する。
【0155】
本実施の形態に係る位置情報取得処理では、まず、上記ステップS202の静止画像撮影処理ルーチンプログラムによって取得した画像情報により示される静止画像と、直前の上記ステップS210によって取得した画像情報により示される動画像とを比較する。
【0156】
そして、この比較の結果、上記静止画像と動画像とで異なる物体(内視鏡60)が映し出されている領域であり、かつ当該領域の当該物体における先端部の位置を示す位置情報を上記先端位置情報として生成する。
【0157】
本実施の形態に係る位置情報取得処理では、上記静止画像と動画像の同一位置に対応する画素情報同士の差分を当該動画像の全領域について算出し、当該差分が予め定められた閾値以上である複数の画素により構成される領域であり、かつ予め定められた大きさ以上の塊となる領域を内視鏡60の領域であるものと特定する。なお、本実施の形態では、上記静止画像および動画像の分解能が異なるため、上記差分を算出する際には、各画像の分解能を合わせるようにする。また、上記差分を算出するに先立って、上記静止画像および動画像の各画像情報に対して2値化処理を施し、2値化処理された画像情報の差分を演算するようにすると、多値のままで差分を演算する場合に比較して処理の高速化が見込めるため、好ましい。
【0158】
そして、本実施の形態に係る位置情報取得処理では、特定した内視鏡60の領域の先端部の位置をさらに特定し、特定した先端部の位置を示す位置情報を上記先端位置情報として生成する。なお、本実施の形態では、この先端部の位置の特定を、特定した内視鏡60の領域で、かつ対応する動画像の周縁部に位置する端部とは反対側の端部を上記先端部の位置として特定する。
【0159】
このように、本実施の形態では、先端位置情報を、放射線画像に基づいて取得しているので、少なくとも内視鏡60の先端部は放射線画像に顕在化される(映る)材質の部材で構成する。
【0160】
また、このように、本実施の形態では、静止画像と動画像との差分に基づいて先端位置情報を取得しているが、これに限らず、例えば、内視鏡60の先端部の放射線画像を予め取得しておき、当該放射線画像と上記動画像との従来既知のパターン・マッチングにより先端位置情報を取得する形態等としてもよい。
【0161】
次のステップS216では、コンソール26は、取得した位置情報により示される内視鏡60の先端部の位置を示す情報を、絞り部44の開口状態の変更を指示する変更指示情報と共に放射線照射装置18に送信する。
【0162】
上記変更指示情報が受信されると、放射線照射装置18は、照射装置制御部140により、当該変更指示情報と共に受信した情報により示される内視鏡60の先端部の位置に対応する位置が開口領域51の中心となり、かつ開口領域51の形状および面積が上記予め定められた形状および面積となるように各スリット板44A〜44Dの位置を制御する。
【0163】
次のステップS218では、コンソール26は、放射線画像の撮影を終了するタイミングが到来したか否かを判定する。否定判定となった場合は上記ステップS210に戻る一方、肯定判定となった時点でステップS220に移行する。なお、本実施の形態に係る放射線画像撮影処理プログラムでは、上記ステップS218における撮影を終了するタイミングが到来したか否かの判定を、術者により、操作パネル112等の入力手段を介して放射線画像の撮影を終了することを指示する指示情報が入力されたか否かを判定することによって行っているが、これに限定されず、電子カセッテ20または放射線照射装置18の図示しない電源スイッチがオフされたか否かを判定することにより行う形態等、他の形態としてもよいことは言うまでもない。
【0164】
次のステップS220では、コンソール26は、位置特定処理プログラムにより記憶した内視鏡60の先端部の位置を示す位置情報をRAM118から読み出し、位置情報から関心領域の移動経路を示す経路情報を生成する。
【0165】
そして、次のステップS222では、コンソール26は、上述した静止画像撮影処理を行う。この際、ステップS218にて生成した経路情報に基づいて、絞り部44の開口状態の変更を指示する変更指示情報を放射線照射装置18に送信する。
【0166】
図13は、ステップS222における静止画像の撮影対象領域173を設定する際の設定方法を説明するための図である。同図に示すように、撮影対象領域173は、動画像の各フレーム画像172a1乃至172anの移動経路174を全て含むように設定される。
【0167】
このようにコンソール26は、関心領域の移動経路が全て撮影対象領域に含まれるように絞り部44の開口状態を変更するように、放射線照射装置18を制御する。なお、静止画像を撮影する際の撮影対象領域は、患者の被曝量をできる限り低減するために、関心領域の移動経路が全て含まれる最小の領域とすることが好ましいが、予め定められた領域を撮影対象領域としても良い。
【0168】
放射線照射装置18は、上記変更指示情報を受信すると、照射装置制御部140により、当該変更指示情報により示される内視鏡60の先端部の位置に対応する位置が開口領域51の中心となり、かつ開口領域51の形状および面積が上記予め定められた形状および面積となるように各スリット板44A〜44Dの位置を制御する。
【0169】
放射線画像撮影システム10において、静止画撮影を行う際には、照射停止直前の最終画像は動画像より高画質で撮影されることが望ましいが、動画撮影時の曝射条件では線量が不十分になる可能性があることが考慮され、静止画撮影時に照射される放射線の線量は、動画撮影時に照射される放射線の線量の10〜1000倍程度に設定される。また、静止画撮影時の放射線の照射時間は、動画撮影時の放射線の照射時間より長く設定される。さらに、静止画撮影時の画像解像度は、動画撮影時の画像解像度より高く設定される。
【0170】
図14(A)及び(B)は、UIパネル110のディスプレイの表示画面の一例を示す図である。図14(A)に示すように、UIパネル110のディスプレイには、内視鏡60によって撮影された動画像のうちの最終フレーム画像170と、ステップS222にて受信した放射線画像(動画撮影終了後に静止画撮影によって得られた静止画像175)とが並べて表示される。これにより、術者は、内視鏡60にて撮影されている動画像の最後フレーム画像と動画撮影の終了時に電子カセッテ20にて撮影された静止画像とを相互に比較しながら施術結果を確認することができる。
【0171】
この際、UIパネル110のディスプレイには、放射線を照射していない旨を示す警告176が表示される。これにより、術者及び患者は、放射線が照射されていないことを認識でき、放射線が照射され続けているのではないかという不安感が生じるのを回避することができる。
【0172】
また、図14(B)に示すように、UIパネル110のディスプレイに、上記準備段階にて撮影した放射線画像(静止画撮影にて得られた静止画像171)と、ステップS222にて受信した放射線画像(動画撮影終了後に静止画撮影によって得られた静止画像175)とが並べて表示されても良い。これにより、術者は、術前に撮影した静止画像と術後に撮影した静止画像を比較することで術部の変化を把握することができる。
【0173】
次のステップS224にて、コンソール26は、上記ステップS208の処理により記憶した画像情報を図示しないRIS(Radiology Information System)サーバへ図示しない病院内ネットワークを介して送信した後、本放射線画像撮影処理プログラムを終了する。なお、上記RISサーバでは、コンソール26から受信した画像情報を用いて、医師が撮影された放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる。
【0174】
ここで、放射線照射装置18は、所定時間毎に、コンソール26から受信した各種指示を示す情報に基づいて放射線照射処理を実行する。
【0175】
図15を参照して、放射線照射処理の実行時における放射線照射装置18の作用を説明する。なお、図15は、この際に放射線照射装置18の照射装置制御部140によって実行される放射線照射処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは照射装置制御部140が有するROM等の記憶装置の所定領域に予め記憶されている。
【0176】
ステップS400では、放射線照射装置18は、コンソール26から曝射条件を示す情報を受信したか否かを判定する。曝射条件を示す情報を受信した場合、ステップS402では、放射線照射装置18は、曝射条件が当該曝射条件となるように放射線源42を制御する。曝射条件を示す情報を受信しなかった場合、ステップS404に移行する。
【0177】
ステップS404では、放射線照射装置18は、コンソール26から絞り状態を示す情報を受信したか否かを判定する。絞り状態を示す情報を受信した場合、ステップS406では、放射線照射装置18は、絞り部44が当該絞り状態となるように各スリット板44A〜44Dの位置を制御する。絞り状態を示す情報を受信しなかった場合、ステップS408に移行する。
【0178】
ステップS408では、放射線照射装置18は、コンソール26から曝射開始指示を示す曝射開始指示情報を受信したか否かを判定する。曝射開始指示情報を受信した場合、ステップS410では、放射線照射装置18は、曝射が開始されるように放射線源42を制御する。曝射開始指示情報を受信しなかった場合、ステップS412に移行する。
【0179】
ステップS412では、放射線照射装置18は、コンソール26から曝射停止指示を示す曝射停止指示情報を受信したか否かを判定する。曝射停止指示情報を受信した場合、ステップS414では、放射線照射装置18は、曝射が停止されるように放射線源42を制御する。曝射停止指示情報を受信しなかった場合、当該放射線照射処理を終了する。
【0180】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、コンソール26は、患者14に照射される放射線Xを絞る絞り部44の開口領域51の面積を可変とすると共に、患者14の予め定められた領域に対して放射線Xが照射されるように絞り部44を制御する。また、コンソール26は、動画撮影終了時に、動画撮影が行われた全領域について静止画撮影を行って撮影画像を表示させるので、患者14に対する被曝量を抑制しつつ、術者が撮影対象領域の放射線画像を観察することができる。
【0181】
また、本実施の形態では、絞り部44を、開口領域51の形状および位置を変更可能に構成しているので、放射線Xの照射形状を変更することができると共に、放射線Xの照射位置を変更することができる。
【0182】
電子カセッテ20は、撮影を行うことにより電源部106や、ゲート線ドライバ88、信号処理部90などの各種回路や各素子が発熱する。また、気管支ファイバー検査などで動画撮影を行う場合、撮影時間が長時間となる。このため、シンチレータ304としてCsIを用いた電子カセッテ20では、動画撮影に各種回路や各素子からの熱によりシンチレータ304の感度が低下する場合がある。気管支ファイバー検査を行う術者は、診断に必要な画質を維持しようとした場合、照射する放射線の線量を増加させるが、線量を増加させた場合、患者への被曝量も増加してしまう。そこで、本実施の形態のように、患者14に照射される放射線Xを絞る絞り部44の開口領域51の面積を可変とすると共に、開口領域51の周縁部から離れるに従って放射線Xの透過線量が少なくなるように絞り部44を構成することにより、患者への被曝量の増加を抑制することができる。
【0183】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0184】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る
【0185】
例えば、上記実施の形態では、患者14の体内における内視鏡60の進入量を利用して内視鏡60の先端部の患者14の体内における位置を特定する場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、画像認識技術を用いて特定する形態、ICタグを用いて特定する形態、磁性体を用いて特定する形態等の他の形態としてもよい。
【0186】
画像認識技術を用いて特定する場合の形態としては、当該特定を行う際に電子カセッテ20から取得した画像情報により示される画像と、予め電子カセッテ20による内視鏡60の先端部に対する撮影によって得られた画像情報により示される画像との間でパターン・マッチングを行うことにより、上記特定を行う際に取得した画像情報により示される画像における内視鏡60の先端部の位置を特定する形態を例示することができる。
【0187】
また、ICタグを用いて特定する場合の形態としては、内視鏡60の先端部に予め定められた信号を発信するICタグを取り付けると共に、手術室内に複数のアンテナを設けておき、アンテナにより受信されている上記信号の受信強度に基づいて、三角測量の技術により発信元のICタグの位置を特定することにより、内視鏡60の先端部の位置を特定する形態を例示することができる。
【0188】
さらに、磁性体を用いて特定する場合の形態としては、内視鏡60の先端部に磁石を取り付けると共に、電子カセッテ20の照射面32の放射線検出器36と重ならない位置(例えば、ケース40の位置)に、内視鏡60の先端に取り付けられた磁石の磁力の大きさを測定する測定器を設け、当該測定器により測定された磁力の大きさから、測定器から内視鏡60の先端部に取り付けられた磁石までの距離を推定し、当該距離および上記進入予定経路の座標情報に基づいてUIパネル110のタッチパネルにおける内視鏡60の先端部の位置を推定する形態を例示することができる。
【0189】
また、この変形例として、内視鏡60の先端部に取り付けられた磁石の磁力の大きさを測定すると共に、当該磁力の発生源の方角を取得することにより内視鏡60の先端部の位置を推定する形態としてもよい。この場合、上記進入予定経路の座標情報は不要となる。また、磁石の代わりに超音波発信器やγ線発信器などを用いてもよく、この場合、当該発信器から発信される物理量の大きさを測定することにより測定器から当該発信器までの距離を推定し、当該距離を利用して内視鏡60の先端部の位置を推定する。このように、患者14の体内に挿入された内視鏡60の先端部の患者14の体内における位置を推定する方法は如何なる方法であってもよい。
【0190】
また、上記実施の形態では、患者14の体内に挿入された内視鏡60の先端部の患者14の体内における位置を推定する場合の形態例を挙げて説明したが、同様の方法により、患者14の体内に挿入された内視鏡60の先端部以外の部位の患者14の体内における位置を推定する形態としてもよい。
【0191】
また、上記実施の形態では、絞り部44を、開口領域51の面積、形状、および位置の全てが変更可能に構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの何れか1つ、または2つの組み合わせについて変更可能に構成する形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と略同様の効果を奏することができる。
【0192】
また、上記実施の形態では、動画撮影及び静止画撮影を行う際に、絞り部44を用いて撮影対象領域を変更する場合について説明したが、これに限定されず、動画撮影を行うための放射線照射装置、及び静止画撮影を行うための放射線照射装置をそれぞれ別個に備えていても良い。この場合には、動画撮影から静止画撮影に切り替える際、または静止画撮影から動画撮影に切り替える際に、放射線照射装置を切り替えることで、絞り部44を用いずとも撮影対象領域を変更することができる。
【0193】
また、上記実施の形態では、患者14の体内に挿入する医療器具として、気管支ファイバー検査における内視鏡60を例に挙げて説明したが、その他の医療器具にも適用できることは言うまでもない。その他の医療器具は、例えば、先端にカメラが設けられたカテーテルやカプセル内視鏡等である。当該カプセル内視鏡を用いる場合には、無線で画像データ等の送受信を行う形態とするとよい。この場合、体内における内視鏡の位置は、例えばマイクロ波の送受信を行うことによって位置検出する手法等によって検出することができる。
【0194】
また、上記実施の形態では、コンソール26のCPU114が放射線画像撮影処理および位置特定処理を実行する場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線照射装置18の照射装置制御部140または電子カセッテ20のカセッテ制御部100がこれらの処理を実行してもよい。
【0195】
その他、上記実施の形態で説明した撮影システム10の構成(図1〜図6参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において変更可能であることは言うまでもない。
【0196】
また、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影処理プログラム(図10参照。)および位置特定処理プログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0197】
10 放射線画像撮影システム
14 患者
18 放射線照射装置
20 電子カセッテ
22 支持部材
26 コンソール
28 ディスプレイ
28A 表示面
36 放射線検出器
36A 照射面
42 放射線源
43,44,44’,46,48,50 絞り部
44A〜44D スリット板
46A〜46D スリット板
48A〜48D スリット板
50A〜50D スリット板群
51 開口領域
60 内視鏡
114 CPU
146,148,150,152 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記被検体における移動する関心領域について動画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記動画撮影により得られた動画像を前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部に表示するように制御し、当該動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記静止画撮影により得られた静止画像を前記表示部に表示するように制御する制御手段と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記静止画撮影を行う際、前記動画撮影時と比較して放射線量及び撮影画像の解像度の少なくとも一方を増加させるように前記放射線画像撮影部を制御する
請求項1記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線の照射野を変更するコリメータをさらに備え、
前記制御手段は、前記コリメータにより前記放射線の照射野を変更することで前記撮影対象領域を変更する
請求項1または2記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記関心領域の移動経路が全て含まれる領域を前記撮影対象領域として前記静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御する
請求項1乃至3の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
撮影停止の指示を入力する指示入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記指示入力手段により前記指示が入力された場合、前記動画撮影を終了して前記静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御する
請求項1乃至4の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記静止画撮影を行うように制御した後、前記動画撮影により得られた動画像における最終フレーム画像を前記静止画像に重ねて表示するように前記表示部を制御する
請求項1乃至5の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記制御手段が前記静止画撮影を行うように制御した後、前記放射線の照射を停止させる停止手段をさらに備えた
請求項1乃至6の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記停止手段により前記放射線の照射が停止された場合、前記放射線の照射が行われていない旨を表示するように前記表示部を制御する
請求項7記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記静止画撮影によって得られた静止画像を、当該静止画像と異なるタイミングで得られた静止画像と並べて表示するように前記表示部を制御する
請求項1乃至8の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記関心領域は、前記被検体に挿入された医療器具の先端部の位置を含む領域である
請求項1乃至9の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項11】
前記医療器具は、内視鏡またはカテーテルである
請求項10記載の放射線画像撮影システム。
【請求項12】
前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部をさらに備えた
請求項1乃至11の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項13】
被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部を備えた放射線画像撮影システムにて実行されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記被検体における移動する関心領域について動画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記動画撮影により得られた動画像を前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部に表示するように制御する第1制御手段と、
当該動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行うように前記放射線画像撮影部を制御するとともに、前記静止画撮影により得られた静止画像を前記表示部に表示するように制御する第2制御手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
被検体を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影部を備えた放射線画像撮影システムにおける放射線画像撮影方法であって、
前記被検体の移動する関心領域について動画撮影を行う動画撮影ステップと、
前記動画撮影により得られた動画像を前記放射線画像撮影部により撮影された画像を表示する表示部に表示する動画像表示ステップと、
前記動画撮影ステップによる前記動画撮影の終了時に、前記関心領域が含まれ、かつ当該関心領域より広い領域を撮影対象領域として静止画撮影を行う静止画撮影ステップと、
前記静止画撮影により得られた静止画像を前記表示部に表示する静止画表示ステップと、
を備えた放射線画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−94501(P2013−94501A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241560(P2011−241560)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】