放射線画像撮影装置
【課題】フレキシブル回路基板上にICを設けて配線を引き回す場合に、画像データに対するノイズの影響を低減することが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1は、放射線検出素子7が二次元状に配列されたセンサ基板4上の配線と、少なくとも放射線検出素子7から読み出された画像データを記憶する記憶手段23が設けられたPCB基板33上の配線とを接続するフレキシブル回路基板12を備え、フレキシブル回路基板12のフィルム12F上には、少なくとも画像データの読み出し処理に用いられるICチップ12aが実装されており、ICチップ12aに電力を供給する配線12bと、上記電力に対応する基準電位を当該ICチップ12aに供給する配線12cとの間を接続するコンデンサ12dが、当該ICチップ12aが実装されているフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に設けられている。
【解決手段】放射線画像撮影装置1は、放射線検出素子7が二次元状に配列されたセンサ基板4上の配線と、少なくとも放射線検出素子7から読み出された画像データを記憶する記憶手段23が設けられたPCB基板33上の配線とを接続するフレキシブル回路基板12を備え、フレキシブル回路基板12のフィルム12F上には、少なくとも画像データの読み出し処理に用いられるICチップ12aが実装されており、ICチップ12aに電力を供給する配線12bと、上記電力に対応する基準電位を当該ICチップ12aに供給する配線12cとの間を接続するコンデンサ12dが、当該ICチップ12aが実装されているフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られてお
り、従来は支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機として構成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
ところで、これらの放射線画像撮影装置では、後述する図4の平面図や図7等の等価回路図に示すように、ガラス基板等のセンサ基板4上に複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設され、走査線5や信号線6で区画されたセンサ基板4上の各領域rに放射線検出素子7がそれぞれ設けられ、放射線や、シンチレータで放射線から変換された電磁波の照射により各放射線検出素子7内に蓄積された電荷を信号線6を介して取り出すことで、各放射線検出素子7の電気信号を画像データとして読み出すようになっている。
【0005】
しかし、放射線画像撮影装置の制御手段22や記憶手段23、バッテリ24等を、走査線5や信号線6、放射線検出素子7等が形成されたセンサ基板4の表面4a(後述する図4参照)と同じ面上に形成すると、放射線画像撮影装置のセンサ基板4が大型化してしまう。そのため、例えば、特許文献4に記載されているように、センサ基板4の表面4a上に走査線5や信号線6、放射線検出素子7等を設け、センサ基板4の端部部分で走査線5や信号線6等にフレキシブル回路基板の一端を接続する。
【0006】
そして、フレキシブル回路基板の他端に、制御手段22や記憶手段23等が設けられたプリント基板(プリント回路板等ともいう。以下、PCB基板という。)を接続し、PCB基板をセンサ基板4の例えば裏面側に配置するように構成される。このように構成することで、放射線画像撮影装置のセンサ基板4を含むセンサパネルSP(後述する図3等参照)のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0007】
そして、特許文献4に記載されているように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートICや、各読み出し回路17が内部に構成された読み出しIC16等の各ICを、PCB基板上ではなく、上記のフレキシブル回路基板上に実装することで、センサパネルSPをさらにコンパクトに形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−58124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2007−57535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のように、走査線5や信号線6等にフレキシブル回路基板を接続して配線を引き回したり、ゲートICや読み出しIC16をフレキシブル回路基板上に設ける等すると、各機能部を接続する配線が長くなる。そのため、配線がアンテナのように作用して、外界からの電波や、放射線画像撮影装置内で各機能部が作動する際に発生する電波を拾い易くなり、ノイズが混入し易くなる。
【0010】
特に、電源回路からフレキシブル回路基板上の各ICに電力を供給する配線にノイズが混入すると、結果的に、読み出される画像データにもノイズが重畳し易くなる等の問題が生じる。そして、画像データにノイズが混入すると、S/N比が悪化して、生成される放射線画像の画質が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、フレキシブル回路基板上にICを設けて配線を引き回す場合でも、画像データに対するノイズの影響を低減することが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
複数の走査線および複数の信号線が互いに交差するように配設され、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域にそれぞれ放射線検出素子が二次元状に配列されたセンサ基板と、
少なくとも前記放射線検出素子から読み出された画像データを記憶する記憶手段が設けられたPCB基板と、
前記センサ基板上の配線と、前記PCB基板上の配線とを接続するフレキシブル回路基板と、
を備え、
前記フレキシブル回路基板のフィルム上には、少なくとも前記画像データの読み出し処理に用いられるICチップが実装されており、
前記ICチップに電力を供給する前記フィルム上の配線と、前記電力に対応する基準電位を当該ICチップに供給する前記フィルム上の配線との間を接続するコンデンサが、当該ICチップが実装されている前記フレキシブル回路基板のフィルムと同一のフィルム上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、フレキシブル回路基板のフィルム上にICチップを実装して信号線等の配線をセンサ基板とPCB基板との間で引き回すように構成する際に、ICチップが実装された同一のフィルム上に、当該ICチップに電力を供給する配線と、当該電力に対応する基準電位を当該ICチップに供給する配線との間を接続する各コンデンサを設けるため、ICチップと各コンデンサとの距離を短縮することが可能となる。
【0014】
そのため、ICチップと各コンデンサとを結ぶ配線の長さが短くなり、その部分を通じて、外界からの電波や放射線画像撮影装置内の各機能部で発生した電波がICチップに流入する量を低減することが可能となる。そして、このように、ICチップに流入する電波の量が低減されるため、読み出される画像データに重畳されるノイズを低減させることが可能となり、読み出された画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図である。
【図2】図1の放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。
【図3】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図4】放射線画像撮影装置のセンサ基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4のセンサ基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられたセンサ基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】センサ基板とPCB基板とを接続するフレキシブル回路基板のフィルム上に実装されたICチップや配線等を説明する図である。
【図10】電源回路からICチップに電力を供給する配線、電力に対応する基準電位を供給する配、それらを接続するコンデンサ、およびICチップとコンデンサとの距離等を説明する図である。
【図11】ICチップが実装されたフレキシブル回路基板のフィルム上に設けられたコンデンサ等を説明する図である。
【図12】フレキシブル回路基板のフィルム上にICチップが接着剤で接着されて実装された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0018】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。また、図3は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1〜図3に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3やセンサ基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
【0019】
図1や図2に示すように、本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。なお、筐体2をこのようないわゆるモノコック型として形成する代わりに、例えば、フロント板とバック板とで形成された、いわゆる弁当箱型とすることも可能である。
【0020】
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の起働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
【0021】
本実施形態では、コネクタ39は、例えば図示しないケーブル等が接続されることにより、外部装置との間で情報や信号等のやり取りを行ったり、放射線画像撮影装置1から外部装置に画像データ等のデータを送信する際の通信手段として機能するようになっている。なお、コネクタ39の設置位置は蓋部材2Bに限定されず、放射線画像撮影装置1の適宜の位置に設置することが可能である。
【0022】
また、本実施形態では、図2に示すように、外部装置との情報や信号等のやり取り等を無線方式で行うための通信手段としてのアンテナ装置41が、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に設けられており、放射線画像撮影装置1は無線方式でも外部装置と通信できるようになっている。図2に示すように、アンテナ装置41は、例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けることが可能であるが、アンテナ装置41は放射線画像撮影装置1の任意の位置に設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置41は1個に限らず、複数設けることも可能である。
【0023】
図3に示すように、筐体2の内部には、センサ基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、センサ基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材36が設けられている。
【0024】
シンチレータ3は、センサ基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0025】
センサ基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、センサ基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。センサ基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0026】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0027】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0028】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(シンチレータ3から照射された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0029】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gに、信号読み出し用の電圧であるオン電圧が印加されるとオン状態になって、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0030】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、センサ基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0031】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれセンサ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0032】
図6に示すように、各入出力端子11には、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC等の各ICチップ12aがフィルム上に実装されたフレキシブル回路基板12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0033】
そして、フレキシブル回路基板12は、センサ基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。また、フレキシブル回路基板12の構成等については、後で説明する。
【0034】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0035】
前述したように、センサ基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0036】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0037】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0038】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0039】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
【0040】
なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。また、図8では、読み出しIC16に電力を供給する電源として、オペアンプ18aに電力を供給する電源供給部18dのみが記載されているが、各読み出しIC16には、この他にも、例えば相関二重サンプリング回路19やA/D変換器20(図8では図示省略)等の読み出しIC16内部の各機能部に対して電力を供給する電源部が、必要な数だけ接続されている。
【0041】
増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0042】
そして、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射された後に行われる画像データの読み出し処理では、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされた状態で、ゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧が印加され、オン状態になった各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出される。そして、放出された電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積されると、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力される。
【0043】
そして、その増幅回路18から出力される電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングし、相関二重サンプリング回路19から出力されたアナログ値の画像データが、アナログマルチプレクサ21(図7参照)を介してA/D変換器20に順次送信され、A/D変換器20でデジタル値の画像データに変換されて記録手段23に保存されるようになっている。
【0044】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記録手段23が接続されている。
【0045】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記録手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。また、バッテリ24には、図示しない充電装置からバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0046】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0047】
以下、本実施形態に係るフレキシブル回路基板12の構成等について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0048】
なお、以下では、ICチップ12a(図6参照)が読み出しIC16(図7、図8参照)である場合について説明するが、ICチップ12aが、走査駆動手段15のゲートドライバ15b(図7参照)を構成するゲートICである場合にも同様に説明される。
【0049】
前述したように、走査線5や信号線6等にフレキシブル回路基板を接続して配線をセンサ基板4とPCB基板33との間で引き回すように構成すると、配線がアンテナのように作用して、外界からの電波や、放射線画像撮影装置内で各機能部が作動する際に発生する電波を拾い易くなりノイズが混入し易くなるといった現象が生じる。
【0050】
しかし、本発明者らの研究によれば、フレキシブル回路基板12のフィルム上に、読み出しIC16等のICチップ12a(図6参照)等を実装する際に、それらの構成を工夫することで、電波やノイズの混入を的確に防止できるという知見が得られた。以下、このことについて説明する。
【0051】
この場合、フレキシブル回路基板12のフィルム上に実装された読み出しIC16等のICチップ12aには、図9に示すように、例えばPCB基板33上に設けられた電源供給部18d(図8参照)等の図示しない各電源回路33a、33b、…が配線12bを介してそれぞれ接続されている。そして、各電源回路33a、33b、…から、例えば増幅回路18や相関二重サンプリング回路19、A/D変換器20等のICチップ12a(すなわちこの場合は読み出し回路16)内の各機能部に対して、それぞれ所定の電力を供給するように構成される。
【0052】
そして、上記のようにそれぞれ所定の電力が供給されることでICチップ12a内の各機能部が作動して、例えば、ICチップ12aが読み出しIC16である場合には、図9に示すように、センサ基板4上の放射線検出素子7から読み出された電荷が信号線6を介して読み出しIC16に流入すると、読み出しIC16内の各読み出し回路17で上記のようにして読み出し処理が行われ、読み出しIC16から出力された画像データが、フレキシブル回路基板12のフィルム上の読出用の配線12Bを伝って、PCB基板33上に設けられた記憶手段23に送信されて記憶される。
【0053】
また、ICチップ12aに対して上記のように各電源回路33a、33b、…からそれぞれ所定の電力を供給する場合、本実施形態では、各電源回路33a、33b、…から供給される各電力に対応する基準電位が、各配線12c(後述する図10等参照)を介してそれぞれICチップ12aに供給されるように構成される。
【0054】
なお、下記の図10等では、図を見やすくするために、各基準電位として接地電位(GND電位)が供給される場合が示されているが、各電力に対応する基準電位は必ずしも接地電位であるとは限らず、基準電位としては、各電力に対応する適切な電位に設定された基準電位がそれぞれ供給される。
【0055】
そして、本実施形態では、図10に示すように、各電源回路33a、33b、…からICチップ12aに電力を供給する各配線12bと、これらの各電力に対応する基準電位を供給する各配線12cとの間を、それぞれ各コンデンサ12dで接続するように構成されている。
【0056】
各電源回路33a、33b、…では、供給する電圧等にノイズが発生し、このノイズが各配線12bを介してICチップ12aに流入する。そして、例えばICチップ12aとして読み出しIC16を用いる場合、各電源回路33a、33b、…からノイズが流入すると、図9に示したように、読み出しIC16から出力される画像データにこれらのノイズが重畳されて、画像データのS/N比が悪化する。
【0057】
そこで、本実施形態のように、配線12b、12c間をコンデンサ12dで接続するように構成することで、各コンデンサ12dが平滑フィルタのように機能して、各電源回路33a、33b、…から各配線12bを介してICチップ12aに流入するノイズを低減する(すなわちいわばノイズを逃がす)ことが可能となる。
【0058】
なお、この効果をより的確に得るために、コンデンサ12dとともに、例えば図示しない抵抗器や、コンデンサや抵抗器等からなるループ構造等を配線12b、12c間等に接続するように構成することも可能である。すなわち、配線12b、12c間に少なくともコンデンサ12dが接続されていればよく、ノイズを低減するための他の種々の構成を適宜採用することが可能である。
【0059】
しかし、上記のように、配線12b、12c間をそれぞれコンデンサ12dで接続するように構成すると、各電源回路33a、33b、…で発生してICチップ12aに流入するノイズを低減することが可能となるが、その場合、本発明者らの研究では、図10に示すように、ICチップ12aとコンデンサ12dとの距離Lが長いと、今度は、その区間の配線12b、すなわちコンデンサ12dからICチップ12aまでの区間の配線12bや配線12cの部分がアンテナのように作用してしまうことが分かった。
【0060】
そして、この部分がアンテナのように作用すると、前述したように、それらの配線12b、12cの部分で、外界からの電波や、放射線画像撮影装置1内で各電源回路33a等の各機能部が作動する際に発生する電波が配線12b、12cを受信し易くなり、すなわち電波が各配線12b、12cに入り込み易くなり、ICチップ12aにノイズが混入して画像データにノイズが重畳され易くなる。
【0061】
一方、本発明者らの研究では、ICチップ12aとコンデンサ12dとの距離Lを短くするほど、すなわち、ICチップ12aからコンデンサ12dまでの配線12b、12cの長さを短くするほど、拾われる電波の量が少なくなり、画像データに重畳されるノイズの大きさが小さくなるこという知見も得られた。
【0062】
すなわち、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cが長くなると、その部分で受信した電波によるノイズがICチップ12aに入り込んでしまうが、その部分の配線12b、12cの長さが短くなれば、その部分で電波を受信しにくくなり、電波によるノイズがICチップ12aに入り込みにくくなることが分かった。
【0063】
なお、その場合、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cの長さが短くなると、逆に、各電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分の配線12b、12cの長さは長くなる。そして、その電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分では、電波を受信し易くなると考えられる。
【0064】
しかし、上記のように、電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分の配線12b、12cの長さが長くなっても、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cの長さが短くなれば、画像データに重畳されるノイズの大きさが小さくなる。このことから、電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分で受信した電波によるノイズは、ICチップ12a側に流れ込もうとしても、コンデンサ12dで平滑化され、コンデンサ12dの部分で遮断されてしまうため、ICチップ12aには流入しなくなると考えられる。
【0065】
そこで、以上の結果から、本実施形態では、図11に示すように、ICチップ12aに電力を供給するフレキシブル回路基板12のフィルム12F上の各配線12bと、その電力に対応する基準電位を当該ICチップ12aに供給するフィルム12F上の各配線12cとの間をそれぞれ接続する各コンデンサ12dを、当該ICチップ12aが実装されているフレキシブル回路基板12のフィルム12Fと同一のフィルム12F上にそれぞれ設けるようになっている。
【0066】
このように、各コンデンサ12dを、ICチップ12aが実装されたフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に設けるように構成することで、例えば各コンデンサ12dをPCB基板33(図9等参照)上に設ける場合に比べて、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離L(すなわちICチップ12aと各コンデンサ12dとを結ぶ配線12b、12cの長さL。以下同じ。)を短くすることが可能となる。
【0067】
そして、そのため、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cの部分で受信した電波がICチップ12aに流入する量を的確に低減することが可能となる。なお、図11では、信号線6や配線12B(図9参照)等の記載が省略されている。また、図11では、コンデンサ12dとしてチップコンデンサが用いられている場合が示されているが、他の形態のコンデンサを用いることも可能である。
【0068】
その際、各コンデンサ12dを、フレキシブル回路基板12のフィルム12F上に実装されたICチップ12aのより近い位置に設けるように構成すれば、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離Lがさらに短くなり、電波のICチップ12aへの流入量をさらに低減することが可能となる。
【0069】
そこで、例えば、各コンデンサ12dをICチップ12aの近傍に設けるように構成することが可能である。
【0070】
また、ICチップ12aをフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に実装する場合、図12に示すように、ICチップ12aの周囲やフィルム12Fとの間に樹脂等の接着剤12eを塗布して接着される場合が多い。そこで、図11に示すように、各コンデンサ12dを、ICチップ12aをフィルム12F上に接着する接着剤12eの周囲の部分、すなわち例えば接着剤12eに隣接する部分に設けられるように構成することも可能である。
【0071】
そして、上記のように構成すれば、各コンデンサ12dを、フレキシブル回路基板12のフィルム12F上に実装されたICチップ12aのごく近傍の位置に設けることが可能となり、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離Lをさらに短縮することが可能となる。そのため、電波のICチップ12aへの流入量をさらに低減することが可能となり、ICチップ12aとしての読み出しIC16から出力される画像データに重畳されるノイズを低減させて、画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、センサ基板4とPCB基板33とを接続するフレキシブル回路基板12のフィルム12F上にICチップ12aを実装するように構成する際に、ICチップ12aが実装された同一のフィルム12F上に、当該ICチップ12aに電力を供給する配線12bと、当該電力に対応する基準電位を当該ICチップ12aに供給する配線12cとの間を接続する各コンデンサ12dを設けた。そのため、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離L(図10参照)を短縮することが可能となる。
【0073】
そのため、ICチップ12aと各コンデンサ12dとを結ぶ配線12b、12cのフィルム12F上での長さLが短くなり、その部分を通じて、外界からの電波や放射線画像撮影装置1内の各機能部で発生した電波がICチップ12aに流入する量を低減することが可能となる。
【0074】
そして、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、このようにICチップ12aに流入する電波の量を低減することが可能となるため、ICチップ12aとしての読み出しIC16から出力される画像データに重畳されるノイズを低減させることが可能となり、読み出された画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態では、ICチップ12aが読み出しIC16であることを前提として説明したが、前述したように、ICチップ12aが、走査駆動手段15のゲートドライバ15b(図7参照)を構成するゲートICである場合にも同様に説明することができる。
【0076】
すなわち、ゲートICに電力を供給する配線と、その電力に対応する基準電位を供給する配線との間にコンデンサが設けられるが、ゲートICとコンデンサとの間の距離が長いと、その部分を通じて、ゲートICに外界等からの電波が流入する。
【0077】
そして、ゲートICに電波が流入すると、TFT8を介して各放射線検出素子7から読み出された電荷を画像データとして読み出す処理の際に、各TFT8のゲート電極8gに印加される信号読み出し用の電圧(すなわちオン電圧)にゆらぎが生じる。そのため、TFT8を介して各放射線検出素子7から読み出される電荷にゆらぎが生じ、それが読み出される画像データのノイズとなって現れる場合がある。
【0078】
そのため、ゲートICに電力を供給する配線と、その電力に対応する基準電位を供給する配線との間を接続するコンデンサを、ゲートICが設けられているフレキシブル回路基板12の同一のフィルム12F上に設けることで、上記と同様に、配線を通じてゲートICに流れ込む電波の量を低減させることが可能となる。そのため、オン電圧に生じるゆらぎが低減され、結果的に、読み出される画像データに重畳されるノイズを低減させることが可能となり、読み出された画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【0079】
なお、上記の本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のように構成すれば、各コンデンサ12dをPCB基板33に設ける必要がなくなるといった副次的な効果も得られる。
【0080】
また、上記の実施形態では、1つのICチップ12a内の各機能部に、複数の電源回路33a、33b、…からそれぞれ電力を供給するように構成されている場合を示したが、必ずしもその構成に限定されず、ICチップ12aに1つの電源回路から電力を供給する場合にも、本発明を適用することができる。
【0081】
さらに、上記の実施形態では、1枚のフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に1つのICチップ12aが設けられている場合を示したが、フィルム12F上に複数のICチップ12aが設けられている場合にも、それぞれのICチップ12aに対して本発明を適用することができる。
【0082】
また、上記の実施形態では、ICチップ12aに電力を供給する1本の配線12bに対して、この電力に対応する基準電位をICチップ12aに供給する配線12cが1本設けられている場合を示したが、例えば複数の配線12bに対して1本の共通の配線12cが設けられている場合にも、本発明を適用することが可能である。
【0083】
また、上記の実施形態では、例えばICチップ12aが読み出しIC16である場合、図7に示したように、A/D変換器20が読み出しIC16内に内蔵されている場合を示したが、例えば、A/D変換器20を含むICチップ12aが、読み出しIC16とは別体とされる場合もある。
【0084】
このような場合には、読み出しIC16としてのICチップ12aと、A/D変換器20を含むICチップ12aとのそれぞれについて、それぞれ本発明を適用することが可能である。
【0085】
また、上記の実施形態では、PCB基板33をセンサ基板4の裏面4b(図6参照)側に配置する場合を示したが、これに限定されず、PCB基板33は、放射線画像撮影装置1内の任意の位置に設けることが可能である。しかし、センサ基板4とPCB基板33とがフレキシブル回路基板12で接続されることが必要である。
【符号の説明】
【0086】
1 放射線画像撮影装置
4 センサ基板
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
12 フレキシブル回路基板
12a ICチップ
12b ICチップに電力を供給する配線
12c 電力に対応する基準電位をICチップに供給する配線
12d コンデンサ
12e 接着剤
12F フィルム
15b ゲートドライバ
16 読み出しIC
23 記憶手段
33 PCB基板
r 領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られてお
り、従来は支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機として構成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
ところで、これらの放射線画像撮影装置では、後述する図4の平面図や図7等の等価回路図に示すように、ガラス基板等のセンサ基板4上に複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設され、走査線5や信号線6で区画されたセンサ基板4上の各領域rに放射線検出素子7がそれぞれ設けられ、放射線や、シンチレータで放射線から変換された電磁波の照射により各放射線検出素子7内に蓄積された電荷を信号線6を介して取り出すことで、各放射線検出素子7の電気信号を画像データとして読み出すようになっている。
【0005】
しかし、放射線画像撮影装置の制御手段22や記憶手段23、バッテリ24等を、走査線5や信号線6、放射線検出素子7等が形成されたセンサ基板4の表面4a(後述する図4参照)と同じ面上に形成すると、放射線画像撮影装置のセンサ基板4が大型化してしまう。そのため、例えば、特許文献4に記載されているように、センサ基板4の表面4a上に走査線5や信号線6、放射線検出素子7等を設け、センサ基板4の端部部分で走査線5や信号線6等にフレキシブル回路基板の一端を接続する。
【0006】
そして、フレキシブル回路基板の他端に、制御手段22や記憶手段23等が設けられたプリント基板(プリント回路板等ともいう。以下、PCB基板という。)を接続し、PCB基板をセンサ基板4の例えば裏面側に配置するように構成される。このように構成することで、放射線画像撮影装置のセンサ基板4を含むセンサパネルSP(後述する図3等参照)のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0007】
そして、特許文献4に記載されているように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートICや、各読み出し回路17が内部に構成された読み出しIC16等の各ICを、PCB基板上ではなく、上記のフレキシブル回路基板上に実装することで、センサパネルSPをさらにコンパクトに形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−58124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2007−57535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のように、走査線5や信号線6等にフレキシブル回路基板を接続して配線を引き回したり、ゲートICや読み出しIC16をフレキシブル回路基板上に設ける等すると、各機能部を接続する配線が長くなる。そのため、配線がアンテナのように作用して、外界からの電波や、放射線画像撮影装置内で各機能部が作動する際に発生する電波を拾い易くなり、ノイズが混入し易くなる。
【0010】
特に、電源回路からフレキシブル回路基板上の各ICに電力を供給する配線にノイズが混入すると、結果的に、読み出される画像データにもノイズが重畳し易くなる等の問題が生じる。そして、画像データにノイズが混入すると、S/N比が悪化して、生成される放射線画像の画質が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、フレキシブル回路基板上にICを設けて配線を引き回す場合でも、画像データに対するノイズの影響を低減することが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
複数の走査線および複数の信号線が互いに交差するように配設され、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域にそれぞれ放射線検出素子が二次元状に配列されたセンサ基板と、
少なくとも前記放射線検出素子から読み出された画像データを記憶する記憶手段が設けられたPCB基板と、
前記センサ基板上の配線と、前記PCB基板上の配線とを接続するフレキシブル回路基板と、
を備え、
前記フレキシブル回路基板のフィルム上には、少なくとも前記画像データの読み出し処理に用いられるICチップが実装されており、
前記ICチップに電力を供給する前記フィルム上の配線と、前記電力に対応する基準電位を当該ICチップに供給する前記フィルム上の配線との間を接続するコンデンサが、当該ICチップが実装されている前記フレキシブル回路基板のフィルムと同一のフィルム上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、フレキシブル回路基板のフィルム上にICチップを実装して信号線等の配線をセンサ基板とPCB基板との間で引き回すように構成する際に、ICチップが実装された同一のフィルム上に、当該ICチップに電力を供給する配線と、当該電力に対応する基準電位を当該ICチップに供給する配線との間を接続する各コンデンサを設けるため、ICチップと各コンデンサとの距離を短縮することが可能となる。
【0014】
そのため、ICチップと各コンデンサとを結ぶ配線の長さが短くなり、その部分を通じて、外界からの電波や放射線画像撮影装置内の各機能部で発生した電波がICチップに流入する量を低減することが可能となる。そして、このように、ICチップに流入する電波の量が低減されるため、読み出される画像データに重畳されるノイズを低減させることが可能となり、読み出された画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図である。
【図2】図1の放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。
【図3】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図4】放射線画像撮影装置のセンサ基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4のセンサ基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられたセンサ基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】センサ基板とPCB基板とを接続するフレキシブル回路基板のフィルム上に実装されたICチップや配線等を説明する図である。
【図10】電源回路からICチップに電力を供給する配線、電力に対応する基準電位を供給する配、それらを接続するコンデンサ、およびICチップとコンデンサとの距離等を説明する図である。
【図11】ICチップが実装されたフレキシブル回路基板のフィルム上に設けられたコンデンサ等を説明する図である。
【図12】フレキシブル回路基板のフィルム上にICチップが接着剤で接着されて実装された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0018】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。また、図3は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1〜図3に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3やセンサ基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
【0019】
図1や図2に示すように、本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。なお、筐体2をこのようないわゆるモノコック型として形成する代わりに、例えば、フロント板とバック板とで形成された、いわゆる弁当箱型とすることも可能である。
【0020】
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の起働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
【0021】
本実施形態では、コネクタ39は、例えば図示しないケーブル等が接続されることにより、外部装置との間で情報や信号等のやり取りを行ったり、放射線画像撮影装置1から外部装置に画像データ等のデータを送信する際の通信手段として機能するようになっている。なお、コネクタ39の設置位置は蓋部材2Bに限定されず、放射線画像撮影装置1の適宜の位置に設置することが可能である。
【0022】
また、本実施形態では、図2に示すように、外部装置との情報や信号等のやり取り等を無線方式で行うための通信手段としてのアンテナ装置41が、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に設けられており、放射線画像撮影装置1は無線方式でも外部装置と通信できるようになっている。図2に示すように、アンテナ装置41は、例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けることが可能であるが、アンテナ装置41は放射線画像撮影装置1の任意の位置に設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置41は1個に限らず、複数設けることも可能である。
【0023】
図3に示すように、筐体2の内部には、センサ基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、センサ基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材36が設けられている。
【0024】
シンチレータ3は、センサ基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0025】
センサ基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、センサ基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。センサ基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0026】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0027】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0028】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(シンチレータ3から照射された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0029】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gに、信号読み出し用の電圧であるオン電圧が印加されるとオン状態になって、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0030】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、センサ基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0031】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれセンサ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0032】
図6に示すように、各入出力端子11には、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC等の各ICチップ12aがフィルム上に実装されたフレキシブル回路基板12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0033】
そして、フレキシブル回路基板12は、センサ基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。また、フレキシブル回路基板12の構成等については、後で説明する。
【0034】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0035】
前述したように、センサ基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0036】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0037】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0038】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0039】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
【0040】
なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。また、図8では、読み出しIC16に電力を供給する電源として、オペアンプ18aに電力を供給する電源供給部18dのみが記載されているが、各読み出しIC16には、この他にも、例えば相関二重サンプリング回路19やA/D変換器20(図8では図示省略)等の読み出しIC16内部の各機能部に対して電力を供給する電源部が、必要な数だけ接続されている。
【0041】
増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0042】
そして、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射された後に行われる画像データの読み出し処理では、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされた状態で、ゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧が印加され、オン状態になった各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出される。そして、放出された電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積されると、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力される。
【0043】
そして、その増幅回路18から出力される電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングし、相関二重サンプリング回路19から出力されたアナログ値の画像データが、アナログマルチプレクサ21(図7参照)を介してA/D変換器20に順次送信され、A/D変換器20でデジタル値の画像データに変換されて記録手段23に保存されるようになっている。
【0044】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記録手段23が接続されている。
【0045】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記録手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。また、バッテリ24には、図示しない充電装置からバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0046】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0047】
以下、本実施形態に係るフレキシブル回路基板12の構成等について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0048】
なお、以下では、ICチップ12a(図6参照)が読み出しIC16(図7、図8参照)である場合について説明するが、ICチップ12aが、走査駆動手段15のゲートドライバ15b(図7参照)を構成するゲートICである場合にも同様に説明される。
【0049】
前述したように、走査線5や信号線6等にフレキシブル回路基板を接続して配線をセンサ基板4とPCB基板33との間で引き回すように構成すると、配線がアンテナのように作用して、外界からの電波や、放射線画像撮影装置内で各機能部が作動する際に発生する電波を拾い易くなりノイズが混入し易くなるといった現象が生じる。
【0050】
しかし、本発明者らの研究によれば、フレキシブル回路基板12のフィルム上に、読み出しIC16等のICチップ12a(図6参照)等を実装する際に、それらの構成を工夫することで、電波やノイズの混入を的確に防止できるという知見が得られた。以下、このことについて説明する。
【0051】
この場合、フレキシブル回路基板12のフィルム上に実装された読み出しIC16等のICチップ12aには、図9に示すように、例えばPCB基板33上に設けられた電源供給部18d(図8参照)等の図示しない各電源回路33a、33b、…が配線12bを介してそれぞれ接続されている。そして、各電源回路33a、33b、…から、例えば増幅回路18や相関二重サンプリング回路19、A/D変換器20等のICチップ12a(すなわちこの場合は読み出し回路16)内の各機能部に対して、それぞれ所定の電力を供給するように構成される。
【0052】
そして、上記のようにそれぞれ所定の電力が供給されることでICチップ12a内の各機能部が作動して、例えば、ICチップ12aが読み出しIC16である場合には、図9に示すように、センサ基板4上の放射線検出素子7から読み出された電荷が信号線6を介して読み出しIC16に流入すると、読み出しIC16内の各読み出し回路17で上記のようにして読み出し処理が行われ、読み出しIC16から出力された画像データが、フレキシブル回路基板12のフィルム上の読出用の配線12Bを伝って、PCB基板33上に設けられた記憶手段23に送信されて記憶される。
【0053】
また、ICチップ12aに対して上記のように各電源回路33a、33b、…からそれぞれ所定の電力を供給する場合、本実施形態では、各電源回路33a、33b、…から供給される各電力に対応する基準電位が、各配線12c(後述する図10等参照)を介してそれぞれICチップ12aに供給されるように構成される。
【0054】
なお、下記の図10等では、図を見やすくするために、各基準電位として接地電位(GND電位)が供給される場合が示されているが、各電力に対応する基準電位は必ずしも接地電位であるとは限らず、基準電位としては、各電力に対応する適切な電位に設定された基準電位がそれぞれ供給される。
【0055】
そして、本実施形態では、図10に示すように、各電源回路33a、33b、…からICチップ12aに電力を供給する各配線12bと、これらの各電力に対応する基準電位を供給する各配線12cとの間を、それぞれ各コンデンサ12dで接続するように構成されている。
【0056】
各電源回路33a、33b、…では、供給する電圧等にノイズが発生し、このノイズが各配線12bを介してICチップ12aに流入する。そして、例えばICチップ12aとして読み出しIC16を用いる場合、各電源回路33a、33b、…からノイズが流入すると、図9に示したように、読み出しIC16から出力される画像データにこれらのノイズが重畳されて、画像データのS/N比が悪化する。
【0057】
そこで、本実施形態のように、配線12b、12c間をコンデンサ12dで接続するように構成することで、各コンデンサ12dが平滑フィルタのように機能して、各電源回路33a、33b、…から各配線12bを介してICチップ12aに流入するノイズを低減する(すなわちいわばノイズを逃がす)ことが可能となる。
【0058】
なお、この効果をより的確に得るために、コンデンサ12dとともに、例えば図示しない抵抗器や、コンデンサや抵抗器等からなるループ構造等を配線12b、12c間等に接続するように構成することも可能である。すなわち、配線12b、12c間に少なくともコンデンサ12dが接続されていればよく、ノイズを低減するための他の種々の構成を適宜採用することが可能である。
【0059】
しかし、上記のように、配線12b、12c間をそれぞれコンデンサ12dで接続するように構成すると、各電源回路33a、33b、…で発生してICチップ12aに流入するノイズを低減することが可能となるが、その場合、本発明者らの研究では、図10に示すように、ICチップ12aとコンデンサ12dとの距離Lが長いと、今度は、その区間の配線12b、すなわちコンデンサ12dからICチップ12aまでの区間の配線12bや配線12cの部分がアンテナのように作用してしまうことが分かった。
【0060】
そして、この部分がアンテナのように作用すると、前述したように、それらの配線12b、12cの部分で、外界からの電波や、放射線画像撮影装置1内で各電源回路33a等の各機能部が作動する際に発生する電波が配線12b、12cを受信し易くなり、すなわち電波が各配線12b、12cに入り込み易くなり、ICチップ12aにノイズが混入して画像データにノイズが重畳され易くなる。
【0061】
一方、本発明者らの研究では、ICチップ12aとコンデンサ12dとの距離Lを短くするほど、すなわち、ICチップ12aからコンデンサ12dまでの配線12b、12cの長さを短くするほど、拾われる電波の量が少なくなり、画像データに重畳されるノイズの大きさが小さくなるこという知見も得られた。
【0062】
すなわち、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cが長くなると、その部分で受信した電波によるノイズがICチップ12aに入り込んでしまうが、その部分の配線12b、12cの長さが短くなれば、その部分で電波を受信しにくくなり、電波によるノイズがICチップ12aに入り込みにくくなることが分かった。
【0063】
なお、その場合、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cの長さが短くなると、逆に、各電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分の配線12b、12cの長さは長くなる。そして、その電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分では、電波を受信し易くなると考えられる。
【0064】
しかし、上記のように、電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分の配線12b、12cの長さが長くなっても、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cの長さが短くなれば、画像データに重畳されるノイズの大きさが小さくなる。このことから、電源回路33a等からコンデンサ12dまでの部分で受信した電波によるノイズは、ICチップ12a側に流れ込もうとしても、コンデンサ12dで平滑化され、コンデンサ12dの部分で遮断されてしまうため、ICチップ12aには流入しなくなると考えられる。
【0065】
そこで、以上の結果から、本実施形態では、図11に示すように、ICチップ12aに電力を供給するフレキシブル回路基板12のフィルム12F上の各配線12bと、その電力に対応する基準電位を当該ICチップ12aに供給するフィルム12F上の各配線12cとの間をそれぞれ接続する各コンデンサ12dを、当該ICチップ12aが実装されているフレキシブル回路基板12のフィルム12Fと同一のフィルム12F上にそれぞれ設けるようになっている。
【0066】
このように、各コンデンサ12dを、ICチップ12aが実装されたフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に設けるように構成することで、例えば各コンデンサ12dをPCB基板33(図9等参照)上に設ける場合に比べて、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離L(すなわちICチップ12aと各コンデンサ12dとを結ぶ配線12b、12cの長さL。以下同じ。)を短くすることが可能となる。
【0067】
そして、そのため、コンデンサ12dからICチップ12aまでの配線12b、12cの部分で受信した電波がICチップ12aに流入する量を的確に低減することが可能となる。なお、図11では、信号線6や配線12B(図9参照)等の記載が省略されている。また、図11では、コンデンサ12dとしてチップコンデンサが用いられている場合が示されているが、他の形態のコンデンサを用いることも可能である。
【0068】
その際、各コンデンサ12dを、フレキシブル回路基板12のフィルム12F上に実装されたICチップ12aのより近い位置に設けるように構成すれば、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離Lがさらに短くなり、電波のICチップ12aへの流入量をさらに低減することが可能となる。
【0069】
そこで、例えば、各コンデンサ12dをICチップ12aの近傍に設けるように構成することが可能である。
【0070】
また、ICチップ12aをフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に実装する場合、図12に示すように、ICチップ12aの周囲やフィルム12Fとの間に樹脂等の接着剤12eを塗布して接着される場合が多い。そこで、図11に示すように、各コンデンサ12dを、ICチップ12aをフィルム12F上に接着する接着剤12eの周囲の部分、すなわち例えば接着剤12eに隣接する部分に設けられるように構成することも可能である。
【0071】
そして、上記のように構成すれば、各コンデンサ12dを、フレキシブル回路基板12のフィルム12F上に実装されたICチップ12aのごく近傍の位置に設けることが可能となり、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離Lをさらに短縮することが可能となる。そのため、電波のICチップ12aへの流入量をさらに低減することが可能となり、ICチップ12aとしての読み出しIC16から出力される画像データに重畳されるノイズを低減させて、画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、センサ基板4とPCB基板33とを接続するフレキシブル回路基板12のフィルム12F上にICチップ12aを実装するように構成する際に、ICチップ12aが実装された同一のフィルム12F上に、当該ICチップ12aに電力を供給する配線12bと、当該電力に対応する基準電位を当該ICチップ12aに供給する配線12cとの間を接続する各コンデンサ12dを設けた。そのため、ICチップ12aと各コンデンサ12dとの距離L(図10参照)を短縮することが可能となる。
【0073】
そのため、ICチップ12aと各コンデンサ12dとを結ぶ配線12b、12cのフィルム12F上での長さLが短くなり、その部分を通じて、外界からの電波や放射線画像撮影装置1内の各機能部で発生した電波がICチップ12aに流入する量を低減することが可能となる。
【0074】
そして、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、このようにICチップ12aに流入する電波の量を低減することが可能となるため、ICチップ12aとしての読み出しIC16から出力される画像データに重畳されるノイズを低減させることが可能となり、読み出された画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態では、ICチップ12aが読み出しIC16であることを前提として説明したが、前述したように、ICチップ12aが、走査駆動手段15のゲートドライバ15b(図7参照)を構成するゲートICである場合にも同様に説明することができる。
【0076】
すなわち、ゲートICに電力を供給する配線と、その電力に対応する基準電位を供給する配線との間にコンデンサが設けられるが、ゲートICとコンデンサとの間の距離が長いと、その部分を通じて、ゲートICに外界等からの電波が流入する。
【0077】
そして、ゲートICに電波が流入すると、TFT8を介して各放射線検出素子7から読み出された電荷を画像データとして読み出す処理の際に、各TFT8のゲート電極8gに印加される信号読み出し用の電圧(すなわちオン電圧)にゆらぎが生じる。そのため、TFT8を介して各放射線検出素子7から読み出される電荷にゆらぎが生じ、それが読み出される画像データのノイズとなって現れる場合がある。
【0078】
そのため、ゲートICに電力を供給する配線と、その電力に対応する基準電位を供給する配線との間を接続するコンデンサを、ゲートICが設けられているフレキシブル回路基板12の同一のフィルム12F上に設けることで、上記と同様に、配線を通じてゲートICに流れ込む電波の量を低減させることが可能となる。そのため、オン電圧に生じるゆらぎが低減され、結果的に、読み出される画像データに重畳されるノイズを低減させることが可能となり、読み出された画像データのS/N比を改善することが可能となる。
【0079】
なお、上記の本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のように構成すれば、各コンデンサ12dをPCB基板33に設ける必要がなくなるといった副次的な効果も得られる。
【0080】
また、上記の実施形態では、1つのICチップ12a内の各機能部に、複数の電源回路33a、33b、…からそれぞれ電力を供給するように構成されている場合を示したが、必ずしもその構成に限定されず、ICチップ12aに1つの電源回路から電力を供給する場合にも、本発明を適用することができる。
【0081】
さらに、上記の実施形態では、1枚のフレキシブル回路基板12のフィルム12F上に1つのICチップ12aが設けられている場合を示したが、フィルム12F上に複数のICチップ12aが設けられている場合にも、それぞれのICチップ12aに対して本発明を適用することができる。
【0082】
また、上記の実施形態では、ICチップ12aに電力を供給する1本の配線12bに対して、この電力に対応する基準電位をICチップ12aに供給する配線12cが1本設けられている場合を示したが、例えば複数の配線12bに対して1本の共通の配線12cが設けられている場合にも、本発明を適用することが可能である。
【0083】
また、上記の実施形態では、例えばICチップ12aが読み出しIC16である場合、図7に示したように、A/D変換器20が読み出しIC16内に内蔵されている場合を示したが、例えば、A/D変換器20を含むICチップ12aが、読み出しIC16とは別体とされる場合もある。
【0084】
このような場合には、読み出しIC16としてのICチップ12aと、A/D変換器20を含むICチップ12aとのそれぞれについて、それぞれ本発明を適用することが可能である。
【0085】
また、上記の実施形態では、PCB基板33をセンサ基板4の裏面4b(図6参照)側に配置する場合を示したが、これに限定されず、PCB基板33は、放射線画像撮影装置1内の任意の位置に設けることが可能である。しかし、センサ基板4とPCB基板33とがフレキシブル回路基板12で接続されることが必要である。
【符号の説明】
【0086】
1 放射線画像撮影装置
4 センサ基板
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
12 フレキシブル回路基板
12a ICチップ
12b ICチップに電力を供給する配線
12c 電力に対応する基準電位をICチップに供給する配線
12d コンデンサ
12e 接着剤
12F フィルム
15b ゲートドライバ
16 読み出しIC
23 記憶手段
33 PCB基板
r 領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線および複数の信号線が互いに交差するように配設され、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域にそれぞれ放射線検出素子が二次元状に配列されたセンサ基板と、
少なくとも前記放射線検出素子から読み出された画像データを記憶する記憶手段が設けられたPCB基板と、
前記センサ基板上の配線と、前記PCB基板上の配線とを接続するフレキシブル回路基板と、
を備え、
前記フレキシブル回路基板のフィルム上には、少なくとも前記画像データの読み出し処理に用いられるICチップが実装されており、
前記ICチップに電力を供給する前記フィルム上の配線と、前記電力に対応する基準電位を当該ICチップに供給する前記フィルム上の配線との間を接続するコンデンサが、当該ICチップが実装されている前記フレキシブル回路基板のフィルムと同一のフィルム上に設けられていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記コンデンサは、前記フレキシブル回路基板のフィルム上に実装された前記ICチップの近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記コンデンサは、前記フレキシブル回路基板のフィルム上に前記ICチップを接着する接着剤の周囲の部分に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記ICチップは、前記各信号線に接続され、前記画像データの読み出し処理の際に、前記各信号線を介して前記各放射線検出素子から読み出された電荷を前記画像データに変換する読み出しICであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記ICチップは、前記画像データの読み出し処理の際に、前記各走査線に信号読み出し用の電圧を印加するゲートドライバを構成するゲートICであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項1】
複数の走査線および複数の信号線が互いに交差するように配設され、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域にそれぞれ放射線検出素子が二次元状に配列されたセンサ基板と、
少なくとも前記放射線検出素子から読み出された画像データを記憶する記憶手段が設けられたPCB基板と、
前記センサ基板上の配線と、前記PCB基板上の配線とを接続するフレキシブル回路基板と、
を備え、
前記フレキシブル回路基板のフィルム上には、少なくとも前記画像データの読み出し処理に用いられるICチップが実装されており、
前記ICチップに電力を供給する前記フィルム上の配線と、前記電力に対応する基準電位を当該ICチップに供給する前記フィルム上の配線との間を接続するコンデンサが、当該ICチップが実装されている前記フレキシブル回路基板のフィルムと同一のフィルム上に設けられていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記コンデンサは、前記フレキシブル回路基板のフィルム上に実装された前記ICチップの近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記コンデンサは、前記フレキシブル回路基板のフィルム上に前記ICチップを接着する接着剤の周囲の部分に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記ICチップは、前記各信号線に接続され、前記画像データの読み出し処理の際に、前記各信号線を介して前記各放射線検出素子から読み出された電荷を前記画像データに変換する読み出しICであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記ICチップは、前記画像データの読み出し処理の際に、前記各走査線に信号読み出し用の電圧を印加するゲートドライバを構成するゲートICであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−83170(P2012−83170A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228623(P2010−228623)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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