説明

放射線画像読取装置

【課題】蓄積性蛍光体シート表面の傷を検出し、撮影画像から傷画像を取り除くことにより、蓄積性蛍光体シートに撮影された放射線画像の画質を向上させることができる放射線画像読取装置を提供する。
【解決手段】放射線画像読取装置は、励起光を照射した時に蓄積性蛍光体シートから発せられる輝尽発光光を集光ガイドで伝達して受光し、これを電気信号に変換して放射線画像データを生成する第1の光電変換回路と、蓄積性蛍光体シートに照射される励起光の散乱光を受光し、これを電気信号に変換して傷検出画像データを生成する第2の光電変換回路と、傷検出画像データに基づいて、放射線画像データに含まれる傷画素を検出し、検出した傷画素を補正して放射線画像データに対応する放射線画像を生成する画像処理部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄積性蛍光体シートに記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、照射された放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)のエネルギーを蓄積する記録媒体として、シート状の支持体の上に輝尽性蛍光体を塗布した蓄積性蛍光体シートを提案し、既にイメージングプレート(IP)として商品化している。放射線エネルギーが蓄積された蓄積性蛍光体シートに励起光を照射すると、蓄積性蛍光体から、蓄積された放射線エネルギーに対応する光量の輝尽発光光が発せられる。
【0003】
放射線画像読取装置は、被写体(被検者)の放射線画像が撮影された蓄積性蛍光体シートから発せられる輝尽発光光を読み取り、可視画像化して放射線画像を生成する。放射線画像読取装置は、例えば、蓄積性蛍光体シートを励起光で2次元的に走査し、蓄積性蛍光体から発せられる輝尽発光光を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて、蓄積性蛍光体シートに撮影された放射線画像を生成する。
【0004】
ところで、例えば、歯科用放射線画像読取装置では、蓄積性蛍光体シートを繰り返し使用する過程で、蓄積性蛍光体シートに、歯科特有の形状の切り傷、擦り傷、噛み傷が生じる。そのため、これらの傷が、種類によって、撮影された放射線画像に現れるという問題がある。
【0005】
ここで、特許文献1〜3には、ゴミ傷を照明して取得したゴミ傷画像を用いて、本画像を補正する方法が開示されている。特許文献1,2の実施例によると、カラーフィルムを異なる波長の光で照明し、その透過光を直接観測することにより、本画像と傷画像を取得する方法が示されているが、歯科用の蓄積性蛍光体シートは不透明であるから、この方法は適用できない。
【0006】
また、特許文献3には、蓄積性蛍光体シート面での反射光(直接反射光)を検出して傷を検出する方法が示されている。しかし、歯科用途での撮影、取扱いで発生する、歯科特有の深さと方向のある傷を検出する際に反射光を直接観測すると、幅が広く、方向のある傷を、傷の方向と平行に照射した場合、平らな面と傷のある部分で反射光に差が出ず、画像から正しく傷の位置を特定できないことがある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−75039号公報
【特許文献2】特開2003−304395号公報
【特許文献3】特開昭60−165641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、蓄積性蛍光体シート表面の傷を検出し、撮影画像から傷画像を取り除くことにより、蓄積性蛍光体シートに撮影された放射線画像の画質を向上させることができる放射線画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、蓄積性蛍光体シートに励起光を照射して主走査方向に走査しながら、前記蓄積性蛍光体シートを主走査方向と略直交する副走査方向に搬送して2次元的に走査し、前記蓄積性蛍光体シートに記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置であって、
励起光を照射した時に前記蓄積性蛍光体シートから発せられる輝尽発光光を集光ガイドで伝達して受光し、これを電気信号に変換して放射線画像データを生成する第1の光電変換回路と、
前記蓄積性蛍光体シートに照射される励起光の散乱光を受光し、これを電気信号に変換して傷検出画像データを生成する第2の光電変換回路と、
前記傷検出画像データに基づいて、前記放射線画像データに含まれる傷画素を検出し、前記検出した傷画素を補正して前記放射線画像データに対応する放射線画像を生成する画像処理部とを備えていることを特徴とする放射線画像読取装置を提供するものである。
【0010】
ここで、前記画像処理部は、前記放射線画像を生成する前に、前記検出した傷画素が誤検出であるか否かを検出し、誤検出であることを検出した傷画素を正常画素に戻すことが好ましい。
【0011】
また、前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を中心とする所定サイズの第1の正方形領域内に含まれる傷画素数を算出し、前記算出した傷画素数が第1の閾値以下の時に誤検出であると判断することが好ましい。
【0012】
また、前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を中心とする所定サイズの第2の正方形領域内に含まれる傷画素数に基づいて第2の閾値を決定し、前記第2の正方形領域内に含まれる、前記第2の正方形領域よりも小さいサイズの第3の正方形領域内に含まれる傷画素数が前記第2の閾値以下の時に誤検出であると判断することが好ましい。
【0013】
また、前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を共通の角として隣接する、同一サイズの4つの正方形領域毎に傷画素数を算出し、前記算出した傷画素数が最大の正方形領域に含まれる傷画素数が第3の閾値以下の時に誤検出であると判断することが好ましい。
【0014】
また、前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を中心として拡大縮小処理を行って前記拡大縮小処理の回数が異なる2枚の傷検出画像を生成し、前記2枚の傷検出画像の差分画像を生成し、前記生成した差分画像に含まれる各々の差分画素に基づいて擦り傷領域を求め、前記擦り傷領域内の全ての画素が誤検出であると判断することが好ましい。
【0015】
また、前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、線状の傷画像の各位置の傷幅を検出し、前記線状の傷画像の幅が均一になるように凸凹箇所周辺の画素を傷画素ないしは正常画素にすることが好ましい。
【0016】
また、前記画像処理部は、誤検出ではないことを検出した傷画素の位置に基づいて、前記放射線画像データに含まれる傷画素を補正することが好ましい。
【0017】
また、前記第2の光電変換回路は、主走査方向に沿って所定の間隔で配置された複数の光電変換回路を有し、
前記画像処理部は、各々の前記光電変換回路で生成される電気信号のピークの領域を含まないように、主走査方向の走査位置に応じて前記複数の光電変換回路を切り換えて、各々の前記光電変換回路で生成される傷検出画像データを連結した切換画像データを生成することが好ましい。
【0018】
また、前記画像処理部は、各々の前記光電変換回路で生成される傷検出画像データ毎に傷検出を行い、前記傷検出をした複数の光電変換回路の傷検出画像データを連結して前記切換画像データを生成することが好ましい。
【0019】
また、前記複数の光電変換回路の切換は、主走査方向において、各々の前記光電変換回路で生成される電気信号が交差する位置で行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザ光の直接反射光ではなく、傷による散乱光を観測することで、例えば、歯科特有の形状の傷なども容易に検出することができ、蓄積性蛍光体シートに撮影された放射線画像の画質を向上させることができる。また、傷画素の検出後、誤検出された傷画素を正常画素に戻すことで、S/N比の小さいレーザ光の散乱光から生成される電気信号から正しく傷の位置を検出できる。さらに、傷の種類によって傷検出方法を変えることにより、傷の種類毎に傷を正しく検出できるとともに、例えば、特定の種類、深さ、幅の傷が発生した場合にユーザに通知することなどもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の放射線画像読取装置を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の放射線画像読取装置の構成を表す一実施形態の斜視図、図2は、その一部を表す側面図である。これらの図に示す放射線画像読取装置10は、蓄積性蛍光体シートSに励起光を照射して主走査方向Xに走査しながら、蓄積性蛍光体シートSを主走査方向Xと略直交する副走査方向Yに搬送して2次元的に走査し、蓄積性蛍光体シートSに記録された放射線画像を読み取るものである。読取装置10は、主走査光学部12と、副走査搬送部14と、輝尽発光光の検出部16と、画像処理部18とによって構成されている。
【0023】
主走査光学部12は、励起光を主走査方向Xに偏光し、蓄積性蛍光体シートSを走査する部位である。主走査光学部12は、励起光としてのレーザ光を射出するレーザ光源20と、光偏向器であるポリゴンミラー22と、fθレンズ等を含む走査レンズ群24と、光路変更用ミラー26と、集光ミラー28とによって構成されている。これらの構成要素は、レーザ光の進行方向に沿ってこの順序で配設されている。
【0024】
副走査搬送部14は、蓄積性蛍光体シートSを載置して、主走査方向Xと略直行する副走査方向Yに搬送する部位である。図示例の場合、副走査搬送部14として、ベルトコンベアが用いられている。ベルトコンベアは、エンドレスベルト30と、このエンドレスベルト30を張架するようにエンドレスベルト30内に配設された2本のローラ32,34とによって構成されている。ローラ32,34を回転させることでエンドレスベルトは副走査方向Yの向きに移動される。
【0025】
輝尽発光光の検出部16は、励起光を照射した時に蓄積性蛍光体シートSから発せられる輝尽発光光、および、蓄積性蛍光体シートSに照射される励起光の散乱光を、それぞれ受光し、これを光電変換して電気信号に変換する部位である。輝尽発光光の検出部16は、集光ガイド36と、それぞれ、輝尽発光光および励起光の散乱光を光電変換するフォトマルチプライヤ(PMT)38およびフォトダイオード(PD)40と、A/D変換器42とによって構成されている。
【0026】
集光ガイド36は、導光性材料を成形して作られたものである。集光ガイド36は、輝尽発光光の入射端面が、主走査方向Xに沿って延びるように集光ミラー28に対向する位置に配設され、輝尽発光光の集光端面(射出端面)にPMT38の受光面が結合されている。また、PMT38から出力される電気信号(アナログデータ)は、A/D変換器42に供給される。一方、PD40は、集光ガイド36の背面側(集光ガイド36の、レーザ光の照射位置とは反対側の面)に、集光ガイドを設けることなく配設されている(図1では省略、図2を参照)。
【0027】
画像処理部18は、輝尽発光光の検出部16から供給される、励起光の散乱光を光電変換して生成された傷検出画像データに基づいて、輝尽発光光を光電変換して生成された放射線画像データに含まれる傷画素を検出し、検出した傷画素を補正して放射線画像データに対応する放射線画像を生成する部位である。画像処理部18は、例えば、入力手段、表示手段、記憶手段、制御手段等を有するパーソナルコンピュータ(PC)と、このPC上で動作するソフトウェア(プログラム)で構成される。
【0028】
次に、読取装置10の動作を説明する。
【0029】
レーザ光源20から射出されたレーザ光は、ポリゴンミラー22に入射され、ポリゴンミラー22の回転に応じて主走査方向Xに偏光されつつ、反射される。続いて、レーザ光は、走査レンズ群24により蓄積性蛍光体シートS上で集束するように焦点を調整され、光路変更用ミラー26により光路が蓄積性蛍光体シートSへ向かうように変更(反射)され、蓄積性蛍光体シートS上に照射される。
【0030】
一方、ベルトコンベア上に載置された蓄積性蛍光体シートSは、一定の速度で副走査方向Yに搬送される。すなわち、蓄積性蛍光体シートSは、主走査光学部12により主走査されつつ、副走査搬送部14により副走査されることによって、2次元的に全面を走査される。
【0031】
蓄積性蛍光体シートSは、レーザ光が照射されると、そこに蓄積されている放射線エネルギーに対応する光量の輝尽発光光を発する。この輝尽発光光は、集光ガイド36の入射口に直接、あるいは、集光ミラー28により反射されて集光ガイド36の入射口に入射し、集光ガイド36によりPMT(光電変換回路)38まで伝達される。その後、輝尽発光光はPMT38により光電変換され、放射線画像データ(アナログ電圧)に変換される。
【0032】
また同時に、蓄積性蛍光体シートSに照射されるレーザ光の散乱光が、PD(光電変換回路)40により光電変換され、傷検出画像データ(アナログ電圧)に変換される。レーザ光等の励起光が蓄積性蛍光体シートSに照射された時の直接反射光は、蓄積性蛍光体シートS表面の傷の種類や方向によって強度が安定しない。そのため、レーザ光の直接反射光を避け、かつ、集光ガイドを使わずにPD40でレーザ光の散乱光を検出する。
【0033】
放射線画像データおよび傷検出画像データは、A/D変換器42により、それぞれのアナログ電圧に対応するデジタルデータに変換され、画像処理部18に供給される。
【0034】
画像処理部18は、輝尽発光光の検出部16から供給される傷検出画像データ(デジタルデータ)に基づいて、同放射線画像データ(デジタルデータ)を補間によって補正し、傷画素がない、もしくは、傷画素が大幅に軽減された放射線画像を生成する。傷画素は、被写体を撮影した放射線画像において有効な画像信号を失っているので、近傍の正常画素を用いて補間することによって補正する。
【0035】
次に、傷の検出方法について説明する。
【0036】
本実施形態では、歯科用途で蓄積性蛍光体シートSに生じる傷として、切り傷、擦り傷、噛み傷の、3種類の傷を想定する。
【0037】
切り傷は、単発の、比較的長く深い線状の傷である。蓄積性蛍光体シートSを取り扱う際に、鋭利なものに引っかけられた時に傷が付く可能性がある。
擦り傷は、密集した、比較的細く浅い線状の傷の集合である。蓄積性蛍光体シートSを取り扱う際に、机などに押し付けられて摩擦を受けた場合に生じる。
噛み傷は、比較的面積の大きい、丸に近い不定形(略円形、楕円形)の傷である。
【0038】
なお、上記切り傷、擦り傷、噛み傷の特徴の説明は一般的なものであり、3種類の傷の区別が難しい場合も当然ありえる。切り傷、擦り傷、噛み傷における、傷の数(密集度)、長さ、幅、深さ、形状などの特徴は3種類の傷を比較した場合の特徴の違いであり、3種類の傷を区別するためのそれぞれの特徴の閾値は、例えば、試行錯誤による結果に基づいて最適値を決定するなどして適宜設定すべきものである。
【0039】
以下、上記切り傷、擦り傷、噛み傷の特徴を利用し、これらの傷を区別して検出する方法を説明する。
【0040】
PD40は、集光ガイドを使用しないので、レーザ光の直接反射光ではなく散乱光を検出する。しかし、散乱光に含まれる傷の信号は小さいため、単なる閾値処理(例えば、所定の閾値以上である場合に傷と判断する)では、ノイズの影響で正常画素を傷画素として誤認識する虞がある。そのため、複数のPD40を利用して傷の検出性能を上げ、画像処理部18により、放射線画像を生成する前に、検出した傷画素が誤検出であるか否か(正検出であるか)を検出し、誤検出であることを検出した傷画素を正常画素に戻す処理を行う。
【0041】
画像処理部18は、誤検出であるか否かを検出し、誤検出の傷画素を正常画素に戻すことにより、誤検出ではないことを検出した傷画素の位置に基づいて、放射線画像データに含まれる傷画素を補正することができる。
【0042】
上記のように、PD40は、集光ガイドを使用せずにレーザ光の散乱光を受光するので、PD40で検出される散乱光(傷検出画像データ)は、PD40の位置と蓄積性蛍光体シートSの各点との関係に応じて大きく変動する。すなわち、単一のPD40で取得される電気信号(傷検出画像データ)は、PD40近傍位置において強いピークを示す。そのため、PD40近傍位置のピーク領域を傷であると誤認識してしまう。
【0043】
図3は、傷検出画像データの主走査方向Xのプロファイルを表すグラフである。このグラフの縦軸は、PD40により光電変換された電気信号(傷検出画像データ)の値を表し、横軸は主走査方向Xの位置を表す。このグラフは、2つのPD40を主走査方向Xに沿って所定の間隔で配置し、2つのPD40の主走査方向Xにおける傷検出画像データのプロファイルを表したものである。
【0044】
このグラフに示すように、2つのPD40のそれぞれで生成される電気信号(信号波形)は、PD40の位置近傍において強いピークを示す。そこで、各々のPD40で生成される電気信号のピークの領域を含まないように、主走査方向Xの走査位置に応じて2つのPD40を切り換えて、各々の光電変換回路で生成される傷検出画像データを連結した切換画像データ(傷検出画像データ)を生成する。
【0045】
図3のグラフに示すように、2つのPD40の切換は、主走査方向Xにおいて、各々のPD40で生成される電気信号が交差する位置(主走査方向Xの位置)で行われる。
【0046】
なお、2つのPD40の切換制御は、ハードウェアで行ってもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行ってもよい。ただし、画像処理部は、2つのPD40で生成される傷検出画像データ毎に以下に述べる傷検出を行い、傷検出をした2つのPD40の傷検出画像データを連結して切換画像データを生成することが望ましい。これにより、2つのPD40の切換位置において筋(切換によるノイズ)が発生することを防止できる。
【0047】
画像処理部18は、上記切換画像データを使用して、主走査方向Xの各画素の切換画像データの値が、所定の閾値以上である時に傷画素であると判断し、前記の閾値未満である時には傷画素ではないと判断することによって、傷の検出を行う。この時、既に述べたように、傷画素ではないのに傷画素であると誤検出される場合があるので、以下に述べる方法で、傷画素であると誤検出された画素を検出して正常画素に戻す処理を行う。
【0048】
誤検出を検出する1つ目の方法は、画素中心探索による方法である。この方法は、これ以降の誤検出除去を高速化するために一部の誤検出を除去する前処理である。切り傷および噛み傷は傷画素が多く連結していることを利用する。図4に示すように、画像処理部18は、各々の傷画素を注目画素として、注目画素を中心とするサイズL1の正方形領域(探索領域)内に含まれる傷画素数を算出し、算出した傷画素数が所定の閾値B1以下の時に注目画素は誤検出であると判断する。
【0049】
注目画素が本当の傷(正検出)であれば、傷は所定の長さ、ないしは、大きさがあるので、注目画素の周囲にも傷画素が存在する。そのため、正方形領域内に含まれる傷画素数は必然的に多くなる。
【0050】
2つ目の方法は、2段探索による方法である。この方法は、傷画素近傍の誤検出を精度よく除去する処理である。図5に示すように、画像処理部18は、各々の傷画素を注目画素として、注目画素を中心とするサイズLL2の正方形領域1に含まれる傷画素数に基づいて閾値B2を決定し、正方形領域1内に含まれる、正方形領域1よりも小さいサイズLS2の正方形領域2内に含まれる傷画素数が閾値B2以下の時に注目画素は誤検出であると判断する。
【0051】
サイズが大きい方の正方形領域1内に含まれる傷画素数が閾値B2以上の時には、1つ目の画素中心探索による方法と同様に、正方形領域2内を傷が横切っていると判断できる。この場合、サイズが小さい方の正方形領域2内を傷が横切っている可能性があるので閾値B2を増加し(大きくし)、逆に、正方形領域1内に含まれる傷画素数が閾値B2未満の時には閾値B2を減少する(小さくする)。
【0052】
3つ目の方法は、4領域誤検出除去である。この方法は、切り傷の端部近傍の誤検出を除去する処理である。図6に示すように、画像処理部18は、各々の傷画素を注目画素として、注目画素を共通の角として隣接する、1辺の長さがL3の同一サイズの4つの正方形領域毎に傷画素数を算出する。算出した傷画素数が最大の正方形領域に含まれる傷画素数が所定の閾値B3以下の時に注目画素は誤検出であると判断する。
【0053】
切り傷の端部近傍の注目画素を中心として、図6に示すように、隣接する4つの正方形領域を設定すると、本当の切り傷である場合には、切り傷が4つの正方形領域のうちの少なくとも1つの領域内を通過する。図6は、左下の正方形領域を判定に用いる探索領域とした時に、この正方形領域内を切り傷が通過している例である。4つの正方形領域のうち、傷画素数が最大の領域内を切り傷が通過している可能性が最も高い。
【0054】
4つ目の方法は、擦り傷除去である。擦り傷は、放射線画像に傷として現れないので、傷として検出してはならない。切り傷は、拡大縮小(widening/narrowing)処理の回数に関わらず処理後の形状はほとんど変わらないが、擦り傷は密集して傷間の距離が短いため、拡大縮小処理の回数によって処理後の形状が大きく異なる。そのため、画像処理部18は、各々の傷画素を注目画素として、注目画素を中心として拡大縮小処理を行って拡大縮小処理の回数が異なる2枚の傷検出画像を生成する。そして、2枚の傷検出画像の差分画像を生成し、生成した差分画像に含まれる各々の差分画素に基づいて擦り傷領域を求め、擦り傷領域内の全ての画素が誤検出であると判断する。
【0055】
傷画素領域の拡大縮小処理について説明する。画像処理部18は、拡大縮小処理として、拡大処理を行う場合、注目画素の周辺の8画素をすべて傷画素とし、傷画素の領域を拡大する。一方、縮小処理を行う場合、注目画素の周辺の8画素のうち、少なくとも1つの正常画素があれば、注目画素を正常画素とし、傷画素の領域を縮小する。
【0056】
擦り傷除去処理について、図7を参照しながら説明する。同図(a)が元画像である。この例では、擦り傷に相当する、3本の密集した細い線が描かれている。画像処理部18が擦り傷除去処理を行う場合、以下に述べる(1)〜(7)の処理が順次行われる。
【0057】
(1)同図(a)の元画像に対してN1回拡大処理を行い、同図(b)に示すN1回拡大処理後の画像を得る。
(2)同図(a)の元画像に対してN2回拡大処理を行い、同図(c)に示すN2回拡大処理後の画像を得る。
(3)同図(b)のN1回拡大処理後の画像に対してN1回縮小処理を行い、同図(d)に示すN1回縮小処理後の画像を得る。
(4)同図(c)のN2回拡大処理後の画像に対してN2回縮小処理を行い、同図(e)に示すN2回縮小処理後の画像を得る。
(5)同図(d)のN1回縮小処理後の画像と同図(e)のN2回縮小処理後の画像との差分を求め、同図(e)のN2回縮小処理後の画像で傷画素、かつ、同図(d)のN1回縮小処理後の画像で正常画素となる差分画素を抽出して、同図(f)に示す差分画素画像を得る。
(6)同図(f)の各々の差分画素を注目画素として、注目画素を中心とするサイズS1の正方形領域内にある差分画素数を算出し、算出した差分画素数が所定の閾値以上の時に注目画素を傷画素(擦り傷画素)であると判断する。
(7)同図(g)に示すように、各々の擦り傷画素を中心とするサイズS2の正方形領域を擦り傷領域とする。この擦り傷領域内には、傷画素と正常画素の両方が含まれているかもしれないが、傷画素か正常画素かを判断する必要はなく、擦り傷領域内の全ての画素を誤検出として扱い、傷画素として検出しない。
【0058】
5つ目の方法は、傷エッジ平滑化である。上記方法によって検出された傷(切り傷)であっても、傷近傍の誤検出が除去しきれていない場合、傷画像は、そのエッジ部分が凸凹した線になっている。5つ目の方法は、各々の傷画素を注目画素として、切り傷として検出された線状の傷画像の各位置の傷幅を検出し、傷幅の変化が滑らかになる(切り傷と判断された線状の傷画像の幅が均一になる)ように凸凹箇所周辺の画素を傷画素ないしは正常画素にする。
【0059】
傷画像の幅は、傷画像自身の幅(場合によっては斜め方向の長さ)を算出してもよいが、例えば、傷画像の主走査方向Xや副走査方向Yの幅(長さ)、あるいは、両者を組み合わせて使用することで簡単に検出することができる。
【0060】
なお、誤検出を検出するための各閾値の値や正方形領域のサイズ等は同様に、前述と同様に、例えば、試行錯誤による結果に基づいて最適値を決定するなどして適宜設定すべきものである。
【0061】
読取装置10では、レーザ光の直接反射光ではなく、傷による散乱光を観測することで歯科特有の形状の傷などを容易に検出することができ、蓄積性蛍光体シートに撮影された放射線画像の画質を向上させることができる。また、傷画素の検出後、誤検出された傷画素を正常画素に戻すことで、S/N比の小さいレーザ光の散乱光から生成される電気信号から正しく傷の位置を検出できる。さらに、傷の種類によって傷検出(誤検出の検出)方法を変えることにより、傷の種類毎に傷を正しく検出できるとともに、例えば、特定の種類、深さ、幅の傷が発生した場合にユーザに通知することなどもできる。
【0062】
なお、本発明は、歯科用途に特に有用なものであるが、これに限定されるわけではない。主走査光学部および副走査搬送部の具体的な構成は何ら制限されず、同様の機能を果たす各種の構成を採用することができる。本発明の第2の光電変換回路は、実施形態のPDに限らず、同じく同様の機能を果たす部材を用いることができる。また、画像処理部の具体的な構成は例示していないが、当業者であれば、上記の機能を実現する構成の画像処理部を容易に実現できて当然である。
【0063】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の放射線画像読取装置の構成を表す一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示す放射線画像読取装置の一部を表す側面図である。
【図3】傷検出画像データの主走査方向のプロファイルを表すグラフである。
【図4】傷画像の誤検出を検出する時の概念図である。
【図5】傷画像の誤検出を検出する時の概念図である。
【図6】傷画像の誤検出を検出する時の概念図である。
【図7】(a)〜(g)は、傷画像の誤検出を検出する時の状態の変化を表す概念図である。
【符号の説明】
【0065】
10 放射線画像読取装置
12 主走査光学部
14 副走査搬送部
16 輝尽発光光の検出部
18 画像処理部
20 レーザ光源
22 ポリゴンミラー
24 走査レンズ群
26 光路変更用ミラー
28 集光ミラー
30 エンドレスベルト
32,34 ローラ
36 集光ガイド
38 フォトマルチプライヤ(PMT)
40 フォトダイオード(PD)
42 A/D変換器
S 蓄積性蛍光体シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積性蛍光体シートに励起光を照射して主走査方向に走査しながら、前記蓄積性蛍光体シートを主走査方向と略直交する副走査方向に搬送して2次元的に走査し、前記蓄積性蛍光体シートに記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置であって、
励起光を照射した時に前記蓄積性蛍光体シートから発せられる輝尽発光光を集光ガイドで伝達して受光し、これを電気信号に変換して放射線画像データを生成する第1の光電変換回路と、
前記蓄積性蛍光体シートに照射される励起光の散乱光を受光し、これを電気信号に変換して傷検出画像データを生成する第2の光電変換回路と、
前記傷検出画像データに基づいて、前記放射線画像データに含まれる傷画素を検出し、前記検出した傷画素を補正して前記放射線画像データに対応する放射線画像を生成する画像処理部とを備えていることを特徴とする放射線画像読取装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記放射線画像を生成する前に、前記検出した傷画素が誤検出であるか否かを検出し、誤検出であることを検出した傷画素を正常画素に戻すことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像読取装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を中心とする所定サイズの第1の正方形領域内に含まれる傷画素数を算出し、前記算出した傷画素数が第1の閾値以下の時に誤検出であると判断することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像読取装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を中心とする所定サイズの第2の正方形領域内に含まれる傷画素数に基づいて第2の閾値を決定し、前記第2の正方形領域内に含まれる、前記第2の正方形領域よりも小さいサイズの第3の正方形領域内に含まれる傷画素数が前記第2の閾値以下の時に誤検出であると判断することを特徴とする請求項2または3に記載の放射線画像読取装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を共通の角として隣接する、同一サイズの4つの正方形領域毎に傷画素数を算出し、前記算出した傷画素数が最大の正方形領域に含まれる傷画素数が第3の閾値以下の時に誤検出であると判断することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、前記注目画素を中心として拡大縮小処理を行って前記拡大縮小処理の回数が異なる2枚の傷検出画像を生成し、前記2枚の傷検出画像の差分画像を生成し、前記生成した差分画像に含まれる各々の差分画素に基づいて擦り傷領域を求め、前記擦り傷領域内の全ての画素が誤検出であると判断することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、各々の前記傷画素を注目画素として、線状の傷画像の各位置の傷幅を検出し、前記線状の傷画像の幅が均一になるように凸凹箇所周辺の画素を傷画素ないしは正常画素にすることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、誤検出ではないことを検出した傷画素の位置に基づいて、前記放射線画像データに含まれる傷画素を補正することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項9】
前記第2の光電変換回路は、主走査方向に沿って所定の間隔で配置された複数の光電変換回路を有し、
前記画像処理部は、各々の前記光電変換回路で生成される電気信号のピークの領域を含まないように、主走査方向の走査位置に応じて前記複数の光電変換回路を切り換えて、各々の前記光電変換回路で生成される傷検出画像データを連結した切換画像データを生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の放射線画像読取装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、各々の前記光電変換回路で生成される傷検出画像データ毎に傷検出を行い、前記傷検出をした複数の光電変換回路の傷検出画像データを連結して前記切換画像データを生成することを特徴とする請求項9に記載の放射線画像読取装置。
【請求項11】
前記複数の光電変換回路の切換は、主走査方向において、各々の前記光電変換回路で生成される電気信号が交差する位置で行われることを特徴とする請求項9または10に記載の放射線画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−8468(P2010−8468A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164291(P2008−164291)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】