説明

放射線硬化させたインクジェット印刷画像を含むプライマー処理した基材

【課題】屋外で使用する時に、放射線硬化させたインクジェット印刷画像に耐久性を付与できる各種商業用グラフィックフィルム用シートを提供する。
【解決手段】1種以上の成膜性樹脂を含む少なくとも1種の非反応性の水系または溶媒系プライマー組成物をシート基材に塗布し処理した後に、放射線硬化性インクをインクジェット印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化させたインクジェット印刷画像を含むプライマー処理した基材、およびプライマーの塗布を採用した、放射線硬化性インクをインクジェット印刷するための方法に関する。この画像形成させた物品は屋外使用のための耐久性を有する。標識ならびに広告および宣伝用ディスプレーのための商業用グラフィックフィルムのための各種の各種のシート(sheeting)を含め、各種のポリマーシートをプライマー処理することができる。
【背景技術】
【0002】
各種のシート材料に画像形成するためには、各種の印刷方法が採用されてきた。一般的に採用される印刷方法の例を挙げれば、グラビア、オフセット、フレキソ印刷、リソグラフィ、エレクトログラフィック、電子写真(レーザー印刷およびゼログラフィを含む)、イオン蒸着(電子ビーム画像形成(electron beam imaging(EBI)とも呼ばれる)、マグネトグラフィ、インクジェット印刷、スクリーン印刷および感熱転写などがある。そのような方法に関しては、標準的な印刷についての書籍によってさらに詳しい情報を得ることができる。
【0003】
当業者ならば、これら各種の印刷方法における違いを熟知しており、ある印刷方法においては高い画像品質が得られるようなインクと受容基材の組み合わせでも、別な印刷方法では全く異なった画像品質を示すことも多いことを知っている。たとえば、スクリーン印刷のような接触型の印刷方法では、ブレードによってインクを押し込んで受容基材を濡らす。画像の欠陥で典型的なものは、それに伴って基材に対するインクの接触角が後退することが原因となっている。インクジェット印刷のような非接触型の印刷方法の場合には、個々のインクの液滴は単に表面に付着させられるだけである。良好な画像品質を得るためには、インクの液滴が拡がり、合体し、実質的に均質で平坦な膜を形成する必要がある。こうなるためには、インクと基材の間の前進接触角が小さくなければならない。どのようなインク/基材の組み合わせであっても通常は、前進接触角の方が後退接触角よりははるかに大きい。したがって、スクリーン印刷のような接触型の方法によって印刷をすると良好な画像品質が得られるようなインク/基材の組み合わせでも、インクジェット印刷のような非接触型の印刷方法で画像形成させると濡れが不充分になることも多い。濡れが不充分であると、基材表面での個々のインクの液滴の半径方向への拡散(「ドットゲイン」とも呼ばれる)が少なく、色濃度が低く、そして帯状化効果(banding effect)(たとえば、液滴の並びの間の隙間)が現れることになる。
【0004】
スクリーン印刷とインクジェット印刷の間のもう1つの重要な違いは、インクの物理的性質である。スクリーン印刷用のインク組成物には典型的には、40%を超える固形分を含み、その粘度もインクジェット印刷用のインクの粘度よりは、少なくとも2桁は高い。スクリーン印刷用のインクを希釈してインクジェット印刷に適合するようにしようとしても、通常はうまくいかない。大量の低粘度希釈剤を添加すると、インク性能および性質、特に耐久性が、極端に悪化する。さらに、スクリーン印刷用のインクに採用されているポリマーは通常分子量が高く、顕著な弾性を示す。それとは対照的に、インクジェット用のインク組成物は典型的にはニュートン流体である。
【0005】
インクジェット印刷は、良好な解像度、多様性、高速性、値ごろ感などのために、好適なデジタル印刷方法として広まっている。インクジェットプリンタの動作では、受容基材の上に、狭い間隔のインクの微小液滴を調節したパターンで吐出する。インクの微小液滴のパターンを選択的に調節することによって、インクジェットプリンタはたとえば、テキスト、グラフィック、ホログラムなど、広い範囲の印刷形態を作ることができる。インクジェットプリンタに最も一般的に使用されているインクは、水系または溶媒系のものである。水系のインクの場合には、多孔質の基材または吸水性のある特別なコーティングを有する基材を必要とする。
【0006】
もう一方で、溶媒系のインクには通常約90%の有機溶媒を含んでいる。製造業者らは溶媒排出を抑制したいと考えているので、インクを乾燥させる際に大量の溶媒が蒸発するのは望ましいことではない。さらに、この乾燥プロセスがインクジェット印刷の律速段階になって、生産速度を低下させる可能性もある。水系および溶媒系のインクにともなう問題点を避ける目的で、重合性成分を含む放射線硬化性インク組成物の開発が進められてきた。この重合性成分は、硬化させる前に組成物の粘度を低下させるための溶媒として機能するだけでなく、硬化後にはバインダーまた場合によって架橋剤としても機能する。未硬化の状態では、これらの組成物の粘度は低く、容易にインクジェット印刷が可能である。この重合性成分は適当な放射線源(たとえば紫外光線、電子ビーム)に暴露させることによって容易に反応し、架橋されたポリマーネットワークを形成する。放射線硬化を使用することによって、組成物が放射線硬化される速度の観点からして、インクが自体「直ちに乾燥」することが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、放射線硬化性のインクジェット用インクに関わる1つの問題点は、インク組成物がどの基材に対しても均質に付着する訳ではないということである。したがって典型的には、対象としている基材の上への付着が最適となるようにインク組成物を変性する。さらに、濡れおよび各種の基材への流れを良くするように、インクと基材の相互作用を利用して調節する。その相互作用によって、先に述べたように基材上でのインクの前進接触角を充分に小さくなるようにするのが好ましい。したがって、同一のインク組成物であっても、その画像品質(たとえば色濃度およびドットゲイン)は、印刷する基材によって変わってくる。たとえば溶媒による拭き取り、ブロー(blowing)、コロナ処理、火炎処理およびUV前処理などによって、基材を処理することが提案されている(「ピエゾDOD印刷におけるUV反応性インクの使用に関する実務的考察(Practical Considerations for Using UV Reactive Inks in Piezo DOD Print)」、IS&T NIP 15: 1999 International Conference on Digital Printing Technologies)。さらにポリマー材料の上へのインクジェット印刷の場合については、WO99/29788号には、火炎処理、プラズマエッチング、またはコロナ処理による前処理で表面エネルギーを高めることが記載されている。しかしながら、実用面からは、多くのインクジェット印刷操作では、画像形成に先立って基材をそのような方法で前処理するようにはなっていない。したがって産業界では、この問題に対処できるような基材とインクジェット印刷方法には大きなメリットを認めるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プライマー処理した表面部分を有するシートまたはポリマー材料を含む物品、および前記プライマー処理した表面部分に配した放射線硬化させたインクジェット印刷画像に関する。この基材、プライマーおよびインクは、その物品を屋外使用しても耐久性があるようなものを選択する。そのポリマー材料は熱可塑性であっても、熱硬化性であってもよい。好適なポリマーシート材料としては、アクリル含有フィルム、ポリ(塩化ビニル)含有フィルム、ポリ(フッ化ビニル)含有フィルム、ウレタン含有フィルム、メラミン含有フィルム、ポリビニルブチラール含有フィルム、ポリオレフィン含有フィルム、ポリエステル含有フィルムおよびポリカーボネート含有フィルムなどが挙げられる。再帰反射性可視表面(retroreflective viewing surface)を含むシートが好ましい。
【0009】
その画像は、そのようなプライマーを含まない同じ画像形成シートに比較すると、総合的な印刷品質の面において改良が認められる。このインクとプライマーは、ASTM D 3359−95Aによれば、少なくとも約80%の付着を示す。この画像は、少なくとも約1.5の黒の色濃度と、少なくとも[(2)1/2]/dpiの最終的なインクドットサイズとを有しているのが好ましいが、ここでdpiは印刷の解像度で、直線1インチあたりのドット数である。
【0010】
一実施態様において、プライマー処理した表面部分には、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンおよびそれらの混合物を含む少なくとも1種の成膜性樹脂を含む。アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂およびそれらの混合物が好ましい。
【0011】
また別の実施態様において、プライマー処理した表面部分には架橋させたポリ(メタ)アクリレートを含む。
【0012】
また別の実施態様において、プライマー処理した表面部分には少なくとも1種の着色剤を含む。
【0013】
この物品は、標識および商業用グラフィックフィルムの中間製品または最終製品として有用である。
【0014】
他の実施態様において、本発明は、プライマーの使用を採用したインクジェット印刷方法に関する。
【0015】
一実施態様において、この方法に含まれるのは、シートまたはポリマー基材の少なくとも一部に水系プライマー組成物または溶媒系プライマー組成物の少なくとも1種を塗布する工程;水または溶媒を蒸発させてプライマー処理した表面を形成する工程;前記プライマー処理した表面の上に放射線硬化性インク組成物をインクジェット印刷する工程;および、前記インクを硬化させて画像形成させた物品を形成する工程、である。このプライマー組成物は、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはそれらの混合物であるのが好ましい。
【0016】
また別の実施態様において、この方法に含まれるのは、シートまたはポリマー基材の少なくとも一部に放射線硬化性プライマー組成物を塗布して、プライマー処理した表面を形成する工程;前記プライマー処理した表面の上に放射線硬化性インク組成物をインクジェット印刷する工程;および、前記インクを硬化させて画像形成させた物品を形成する工程、である。この方法には、インクジェット印刷をする前にプライマーを硬化させることをさらに含めてもよい。このプライマー組成物には、少なくとも1種の放射線硬化性ポリマー、オリゴマー、マクロモノマー、モノマー、またはそれらの混合物を含んでいるのが好ましい。
【0017】
その方法のいかんに関わらず、この物品は屋外使用のための耐久性を有している。このインク組成物には、少なくとも1種の放射線硬化性ポリマー、オリゴマー、マクロモノマー、モノマー、またはそれらの混合物を含む。そのインクは、プリントヘッド温度において約3センチポアズ〜約30センチポアズの粘度を有する。そのインクには、プライマー処理した表面の中へと拡散していく液状成分が含まれている。このプライマー組成物はインクに対して、反応性であっても、非反応性であってもよい。基材表面全体をプライマー処理してもよいし、一部分だけをプライマー処理してもよい。プライマー処理する表面を実質的に、画像と同じ大きさおよび形状に相当させるのが好ましい。
【0018】
インクには、オリゴ/樹脂成分および、低Tgの複素環式モノマーおよび/またはペンダントしたアルコキシル化官能基を含むモノマーを含む付着促進性放射線硬化性成分を0.1〜50質量%含む反応性希釈剤を含むのが好ましいが、ただし、反応性希釈剤の約10質量%未満には主鎖のアルコキシル化官能基を含むモノマーが含まれる。このインクには、少なくとも1種の高Tg成分、多官能性モノマー、低界面張力成分、光沢成分、およびそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。このインクには、実質的に溶媒を含まないのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、放射線硬化させたインクジェット印刷画像を含む物品に関する。本明細書において使用する「インクジェット印刷画像」および「インクジェット印刷した」という用語はいずれも、放射線硬化性インク組成物を採用したインクジェット印刷によって形成された画像を指している。この画像はテキスト、グラフィックス、コーディング(たとえばバーコード)などであってよく、また単色、多色あるいは可視光線スペクトルでは見えないものであってもよい。
【0020】
物品には基材を含むが、その表面の少なくとも一部にはプライマー組成物が含まれ、プライマー処理した表面部分を形成している。製造を容易にする目的で、基材表面の全体にプライマー組成物を含んでいてもよい。放射線硬化性のインクは、プライマー処理した表面の上にインクジェット吐出またはインクジェット印刷し、硬化させて放射線硬化させたインクジェット印刷画像を形成する。最も単純な構成では、プライマーを基材の上に直接配する。他の実施態様において、追加のコーティングを塗布する場合には、インクジェット印刷したプライマーを物品の基材と可視表面の中間に配してもよい。たとえば、物品には画像形成したプライマー層の上に配した追加のトップコートまたはトップフィルムが含まれていてもよい。あるいは、プライマーをトップフィルムの上に塗布してもよい。そのようにプライマー処理した部分を次いで、画像反転させて第2の基材に結合させてもよい。好ましい実施態様において、このプライマー、インク組成物、さらには物品全体が、良好な耐候性を有し、屋外使用のための耐久性を有している。このインクおよびプライマー組成物は、追加の保護層を必要としない程度の充分な耐久性を有しているのが好ましい。
【0021】
「屋外使用のための耐久性」とは、物品が極限温度、露の付着から暴風雨までの水分への暴露に耐え、そして、日光の紫外線照射に対する色堅牢性を有することを指す。耐久性の閾値はその物品が暴露される条件によって決まるので、一定ではない。しかしながら、本発明の物品は最小限、環境温度(25℃)で水に24時間浸漬させた時、または約−40℃〜約140゜F(60℃)の範囲の温度(湿熱または乾熱)に暴露させた時に、剥離したり劣化したりすることはない。
【0022】
交通整理のための標識の場合、その物品が、少なくとも1年、より好ましくは少なくとも3年の風雨に耐え得るような、充分な耐久性を有しているのが好ましい。これは、ASTM D4956−99「交通整理のための再帰反射性シート標準規格(Standard Specification of Retroreflective Sheeting for Traffic Control)」によって決めることができるが、それには、いくつかのタイプの再帰反射性シートについて、用途に応じて、初期および続けての加速屋外耐候性の両方について、最小限の要求性能が記載されている。初期には、反射性基材は最小再帰反射性係数に適合またはそれを超えている。タイプIのホワイト・シート(「エンジニアリング・グレード」)では、観測角0.2度、照射角−4度での最小の再帰反射性係数が70cd/fc/ft2であり、一方タイプIIIのホワイト・シート(「ハイ・インテンシティ」)では、観測角0.2度、照射角−4度での最小再帰反射性係数が250cd/fc/ft2である。それに加えて、収縮、柔軟性接着性、耐衝撃性および光沢の最低限の規格値には適合しているのが好ましい。シートのタイプと用途によって異なるが、12、24または36ヶ月の加速屋外耐候性試験の後でも、再帰反射性シートには、目に見えるようなひび割れ、剥がれ、点蝕、ブリスター、縁のめくれまたは巻き上がり、あるいは、定められた試験期間の間に0.8ミリメートルを超える収縮または膨張が認められないことが好ましい。さらに、耐候性試験にかけた後の再帰反射性物品では、少なくとも最低限の再帰反射性係数と色堅牢性を示しているのが好ましい。たとえば規格に適合するためには、恒久的な標識用途のためのタイプIの「エンジニアリング・グレード」再帰反射性シートは、24ヶ月の屋外耐候性試験の後でも、初期の最小再帰反射性係数の少なくとも50%は保持しており、恒久的な標識用途のためのタイプIIIのハイ・インテンシティタイプの再帰反射性シートは、36ヶ月の屋外耐候性試験の後でも、初期の最小再帰反射性係数の少なくとも80%は保持していなければならない。初期および屋外耐候性試験の後の両方で、この再帰反射性係数の数値は、再帰反射性基材の上に放射線硬化させたインクジェット印刷画像を存在させると、典型的には約50%低くなる。
【0023】
この物品または基材(たとえばフィルム、シート)には2つの主表面がある。本明細書においては「可視表面(viewing surface)」と呼ぶ、第1の表面には、プライマーおよび放射線硬化させたインクジェット印刷画像が含まれる。その物品の反対側の表面にも、印刷された画像をおいて、「第2の可視表面」を形成させてもよい。そのような実施態様においては、第2の可視表面にも、プライマー組成物および放射線硬化させたインクジェット印刷画像を含んでいてもよい。あるいは、むしろこちらの方が普通であるが、その反対側の面は非視表面(non−viewing surface)として、典型的には剥離牲ライナーで保護した感圧接着剤を含む。後にこの剥離牲ライナーを除いて、画像形成した基材(たとえばシート、フィルム)を対象の表面、たとえば、標識の裏材、広告板、乗用車、トラック、航空機、ビルディング、日よけ、窓、床などに接着させる。
【0024】
プライマーは、使用するインク組成物、さらには使用する基材に応じて選択する。このプライマーが基材の表面の性質を変えて、インクと基材表面の間を相互になじませ、その結果、良好な画像品質が得られる。プライマーとしては、対象とするインク組成物の主な液状成分(たとえばUV硬化性モノマー)がそのプライマー層の中へかなりの拡散を示すようなものを選択する。乾燥および/または硬化プライマー組成物について、このことを定性的に調べるには、目的の放射線硬化性インクジェット用インクのベタのブロックを厚み5ミクロンのプライマー層の上に被覆率(coverage)200%で印刷し、次いでその印刷した物品を5分間垂直に立てておく。インクモノマーがプライマー層の中にかなりの拡散を示さない場合には、そのベタのブロックの境界を越えて印刷した(未硬化の)インクが流れ落ちるであろう。他方、インクモノマーのプライマー中への拡散があまりにも早いと、そのインクがプライマーを溶解させ、垂直に立てたときに、インク層の「垂れ」(sagging)が観察されることになる。
【0025】
非常に遅い、または測定できないほどの拡散だと、インクとプライマーの相互作用が乏しくなり、その結果プライマーへインクが付着しにくいことになる。逆に拡散が早いと、ドットゲインが充分でなく色濃度が低下するが、それは、側方拡散(lateral diffusion)が早いと、インクの液滴の半径方向への拡散性能が抑制され、その結果ドットゲインが低くなるからである。典型的には、プライマー処理しない基材上へのモノマーの拡散が非常に低いという意味合いで、インクがその基材と相互作用を持たないような場合には、それに対するインクの拡散がより大きなプライマーを選択して、インクの付着性を改良する。逆に、インクと基材の相互作用が、プライマー処理しない基材へのモノマーの拡散が高すぎるような関係にある場合には、プライマーを存在させることによって側方拡散を抑制して色濃度を改良する。典型的には、画像品質を最適化するためには、プライマーの厚みを適当に選択して、インクの液滴が示す側方拡散を限定させ、その結果としてある程度の半径方向への拡散をさせて、受容可能なドットゲインを得る。プライマーの厚みを増やすことが採用されるのは、典型的には、付着性を改良するためであり、一方プライマーの厚みを減らすことが採用されるのは、側方拡散を抑制するためである。
【0026】
良好な画像品質を達成するためには、印刷されたインクの液滴が許容される範囲に拡がって、完全に塗りつぶすようにしなければならない。インクの液滴の拡がりが不充分だと、埋められていない背景領域のために色濃度が低下し、縞模様(banding defects)(すなわち、液滴の並びの間の隙間)がもたらされる。他方では、インクの液滴の拡がりが大きすぎると、解像度の低下や端部の鋭さの低下が目立ち、また、多色グラフィックの場合には色の間でのブリードが起きる。この画像品質は、色濃度を基準とし最終的なインクドットの直径に関連させて、定量的に表現することが可能である(米国特許第4,914,451号明細書参照)。黒の色濃度が少なくとも約1.5あるのが好ましい。基材の上での最終的なインクドットの直径は、[(2)1/2]/dpiよりは大きいが2/dpi以下であるのが好ましいが、ここでdpiは印刷の解像度で、直線1インチあたりのドット数である。
【0027】
このプライマー組成物は広い範囲の基材に好適に使用できる。プライマー組成物をたとえば紙のような基材に塗布することもできるが、通常雨にあたれば紙は傷んでしまうので、屋外使用のための充分な耐久性があるとはいえない。同様に、プライマー組成物を軟化点の低い、たとえば約100゜F(38℃)未満の基材または基材層に塗布することもできる。しかしながら、この構成もまた耐久性には乏しい。したがって、典型的には基材の軟化点は、約120゜F(49℃)より上、好ましくは約140゜F(60℃)より上、より好ましくは約160゜F(71℃)より上、さらにより好ましくは約180゜F(82℃)より上、最も好ましくは約200゜F(93℃)より上であるのがよい。基材として使用するのには一般に適さないその他の材料の例としては、水の存在下で腐食(酸化)したり溶解する材料で、たとえば各種の金属、金属酸化物および塩などが挙げられる。
【0028】
本発明の物品で基材として使用するのに適した材料の例としては、各種のシート、好ましくは熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料でできている、フィルムのようなものを挙げることができる。さらに、このプライマーは特に、表面エネルギーの低い基材には好適である。「表面エネルギーが低い」ということは、約50ダイン/cm(すなわち50ミリニュートン/メートル)未満の表面張力を有する材料のことを指している。このポリマー基材は典型的には非孔質である。しかしながら、ミクロポーラスや開口部を有する材料や、さらにはシリカのような水吸収性粒子および/または超吸収性ポリマーを含むような材料も使用することが可能であるが、ただし、先に述べたように、その基材が水や極限温度に暴露したときに劣化や剥離を起こすようなものであってはならない。その他の好適な基材としては、織布または不織布、特にポリエステル、ナイロンおよびポリオレフィンのような合成繊維でできているものが挙げられる。
【0029】
本発明で使用するための基材や画像形成させた物品(たとえばシート、フィルム、ポリマー材料)は、透明、半透明、不透明のいずれであってもよい。さらに、この基材および画像形成させた物品は、無色でもあっても、べた一色であっても、あるいは複数の色の模様付きであってもよい。さらに、この基材画像形成させた物品(たとえばフィルム)は、透過性であっても、反射性であっても、あるいは再帰反射性であってもよい。
【0030】
本発明における基材として使用できるポリマー材料(たとえばシート、フィルム)の代表例としては、アクリル含有フィルム(たとえばポリ(メチル)メタクリレート[PMMA])、ポリ(塩化ビニル)含有フィルム(たとえば、ビニル、ポリマー材料化(polymeric materialized)ビニル、強化ビニル、ビニル/アクリルブレンド)、ポリ(フッ化ビニル)含有フィルム、ウレタン含有フィルム、メラミン含有フィルム、ポリビニルブチラール含有フィルム、ポリオレフィン含有フィルム、ポリエステル含有フィルム(たとえばポリエチレンテレフタレート)およびポリカーボネート含有フィルムなどの単一層または多層構成を挙げることができる。さらに、この基材にはそのようなポリマー種からのコポリマーを含んでいてもよい。本発明における基材として使用できるその他の具体的なフィルムとしては、酸変性、または酸/アクリレート変性したエチレン酢酸ビニル樹脂を含む画像受容層を有する多層フィルムが挙げられるが、このものについては、米国特許第5,721,086号明細書(エムスランダー(Emslander)ら)に開示されている。この画像受容層には、少なくとも2種のモノエチレン性不飽和モノマー単位を含むポリマーを含み、ここで、1つのモノマー単位にはそれぞれの分岐に0〜約8の炭素原子を含む置換アルケンを含み、また1つの他のモノマー単位には非3級のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを含むが、そのアルキル基は1〜約12の炭素原子を含み、そのアルキル鎖の中にはヘテロ原子を含んでいてもよく、そしてそのアルコールは、性質としては直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよい。耐引裂き性の高い好適なフイルムの例としては、米国特許第5,591,530号明細書および同第5,422,189号明細書に記載されているような多層ポリエステル/コポリエステルフィルムが挙げられる。
【0031】
基材のポリマー材料および厚みを選択することによって、その基材(たとえばシート、フィルム)を固くも柔らかくもできる。
【0032】
市販されているフィルムとしては、標識および商業用グラフィック用途のために通常使用される多くのフィルムがあるが、たとえば、ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社(Minnesota Mining and Manufacturing Company)(「3M」社)から商品名「パナフレックス(Panaflex)」、「ノーマッド(Nomad)」、「スコッチカル(Scotchcal)」、「スコッチライト(Scotchlite)」、「コントロールタック(Controltac)」、および「コントロールタック・プラス(Controltac Plus)」として販売されているものがある。
【0033】
乾燥後および/または硬化後のプライマーコーティングの厚みは典型的には約0.10ミクロン〜約50ミクロンの範囲である。このプライマーは、先に述べたように、インクと基材との間で所望の相互作用が得られるような量で存在させる。プライマーの厚みは、好ましくは少なくとも約0.50ミクロン、より好ましくは少なくとも約1ミクロンである。逆に、必要最小限のプライマーを採用するのが典型的には望ましく、その厚みは好ましくは約25ミクロン未満、より好ましくは約10ミクロン未満、そして最も好ましくは約5ミクロン未満である。プライマーが厚すぎると、インクが基材表面を「アンダーウェット(under wet)」よりは、「オーバーウェット(over wet)」にしてしまう。全体としての印刷品質が、プライマー処理しない基材の場合のドットゲインが不充分な状態から、同一の基材をプライマー処理した後ではインクが少しまだら模様の(mottling)状態へと変化することからも、この挙動は明らかである。あるいは、プライマーの厚みが薄すぎると、インクがプライマー処理した表面に充分に付着しないこともある。
【0034】
このプライマーは、硬化させた放射線硬化性インクジェット組成物に対する良好な付着性を示すもので、ASTM D 3359−95Aによる測定において、プライマーが少なくとも50%の付着率、好ましくは少なくとも80%の付着率を示す。このプライマー組成物としては、所望のインク付着性と画像品質に寄与するならば、どのような組成物を採用してもよい。基材に対しても充分な付着性を示すプライマー組成物が好ましい。プライマーの基材に対する付着性もまた、同じ方法で評価することができる。しかしながら、プライマーの基材に対する付着性が乏しい場合には、基材からは、単にインクだけでなく、インクとプライマーの両方が剥離する。プライマー組成物が基材に対する良好な付着性に加えて、良好なインク付着性も示すような実施態様では、追加の結合層(たとえば結束層(tie layer)、接着剤層)は必要ない。
【0035】
好適なプライマーおよびインク組成物は、少なくとも基材と同程度の柔軟性を有しているのが好ましい。「柔軟性」という用語は、画像形成した厚み50ミクロンのプライマー層を25℃で折り曲げても、画像形成したプライマー層に目に見えるようなひび割れが入らないという物理的性質を指している。
【0036】
このプライマー組成物とインク組成物(ただし、カーボンブラック、二酸化チタンまたは有機黒色染料のような不透明な着色剤を含むインク組成物は例外とする)は典型的には、ASTM 810「再帰反射性シートの再帰反射性係数のための標準試験方法(Standard Test Method for Coefficient of Retroreflection of Retroreflective Sheeting)」によって測定したときに、透過性である。すなわち、再帰反射性の基材にコーティングしたときに、そのようなフィルムの表面に当たった可視光線がそれを透過して再帰反射性シート成分に届くということである。この性質があることで、この物品が屋外での標識用途、特に交通整理のための標識システムに特に有用なものとなっている。さらに乾燥および/または硬化させたこのプライマー組成物は、実質的にべとつきが無く、そのためにその印刷された画像への埃の付着などが起きにくい。
【0037】
一般的には、屋外使用のための耐久性を向上させるためには、プライマー組成物とインク組成物の両方が脂肪族系で、実質的に芳香族成分を含まないようにするのが好ましい。さらに、ポリウレタン系および/またはアクリル系のプライマー組成物が好ましい。
【0038】
本発明で使用するためのプライマー組成物には、水系プライマー組成物、溶媒系プライマー組成物、および(たとえば押出し可能な)固形分100%の組成物などがある。このプライマー組成物は非反応性であっても、反応性であってもよい。本明細書で使用するとき「反応性」とは、インク組成物がプライマー組成物と反応することを意味する。この用語はまた、インクやプライマー組成物の中に存在する、当然反応するものと考えられる官能基による、予想通りの反応についても当てはまる。放射線硬化性プライマー組成物は、プライマーでコーティングされた表面が放射線硬化性インク組成物を用いたインクジェットジェットジェット印字される前に、硬化(たとえば架橋)させておいてもよい。あるいは、放射線硬化性プライマーと放射線硬化性インクを同時並行して硬化させることもできる。溶媒(たとえば水、有機溶媒)の蒸発および/または放射線硬化させることによって、プライマー組成物が連続膜を形成する。このプライマー組成物は、インクジェット印刷をする部分にだけに塗布してもよい。そのような実施態様においては通常、プライマー組成物もまたインクジェット吐出して、コーティングした部分の全体にわたって連続膜を形成させる。しかしながら、この膜は全体としては基材の表面に関しては不連続である。
【0039】
水系および溶媒系プライマー組成物には、1種以上の成膜性樹脂が含まれる。各種の成膜性樹脂が知られている。代表的な成膜性樹脂としては、(単一または複数の)アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0040】
ポリエステル樹脂の例としては、マサチューセッツ州ミドルトン(Middleton、MA)のボスティック社(Bostik Inc.)から商品名「バイテル(Vitel)2300BG」として市販されているコポリエステル樹脂;テネシー州キングスポート(Kingsport、TN)のイーストマン・ケミカル(Eastman Chemical)から商品名「イースター(Eastar)」として入手可能なコポリエステル樹脂、さらには、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburg、PA)のバイエル(Bayer)から商品名「ムルトロン(Multron)」および「デスモフェン(Desmophen)」として入手可能なポリエステル樹脂;インド国マハルシュトラ・マンビアのスペクトラム・アルキド・アンド・レジンズ社(Spectrum Alkyd and Resins Ltd.)からの商品名「スペクトラアルキド(Spectraalkyd)」および、イリノイ州シカゴ(Chicago、IL)のアクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)からの商品名「セタリン(Setalin)」などのアルキド、などが挙げられる。ポリビニル樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコールのターポリマー樹脂で、ミシガン州ミッドランド(Midland、MI)のダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)(「ダウ(Dow)」)の子会社であるユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)から商品名「ユーカル・バウ(UCAR VAGH)」として市販されているものが挙げられる。その他のポリ塩化ビニル樹脂は、カリフォルニア州ロサンゼルス(Los Angeles、CA)のオクシデンタル・ケミカル(Occidental Chemical);オハイオ州クリーブランド(Cleveland、Ohio)のBF・グッドリッチ・パフォーマンス・マテリアルズ(BF Goodrich Performance Materials);およびニュージャージー州マウント・オリーブ(Mount Olive、NJ)のBASFなどから入手可能である。好適な成膜性アクリレート樹脂としては、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia、PA)のローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Co.)から商品名「パラロイド(Paraloid)B−66」として市販されているメチルメタクリレート/ブチルメタクリレートコポリマーがある。その他のポリアクリル系材料としては、ウィスコンシン州ラシーン(Racine、WI)のS.C.ジョンソン(S.C.Johnson)からの商品名「ジョンクリル(Joncryl)」アクリリックス、およびミズーリ州ワイルドウッド(Wildwood、MO)のイネオス・アクリリックス(Ineos Acrylics)からの商品名「エルバサイト(Elvacite)」樹脂などが挙げられる。
【0041】
溶媒系プライマー組成物の成膜性樹脂は、溶媒と混合しておく。この溶媒は、単独物質でもよいし、ブレンド溶媒でもよい。このプライマー組成物には、プライマー組成物の全量を基準にして、好ましくは約5〜約80質量部の樹脂、より好ましくは約10〜約50部の樹脂、そして最も好ましくは約15〜約30部の樹脂を含む。
【0042】
この溶媒は、単独物質でもよいし、ブレンド溶媒でもよい。好適な溶媒を挙げてみれば、水、アルコール類たとえばイソプロピルアルコール(IPA)またはエタノール;ケトン類たとえばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK);シクロヘキサノンまたはアセトン;芳香族炭化水素たとえばトルエン;イソホロン;ブチロラクトン;N−メチルピロリドン;テトラヒドロフラン;エステル類たとええば、ラクテート類、アセテート類で、たとえば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMアセテート)、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルアセテート(DPMアセテート);イソ−アルキルエステル類、たとえばイソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテートまたはその他のイソ−アルキルエステル類;それらを組み合わせなどがある。
【0043】
好適な溶媒系および水系プライマー組成物には、少なくとも約25質量%、好ましくは少なくとも約50質量%のアクリル樹脂の乾燥樹脂を含む。他の好適な溶媒系および水系プライマー組成物には、少なくとも約10質量%、好ましくは少なくとも約25質量%ポリウレタンの乾燥樹脂を含む。溶媒系プライマーを例示すれば、3M社から商品名「スコッチライト・プロセス・カラー・シリーズ・インク(Scotchlite Process Color Series Ink)用880Iトナー」として市販されているものがある。さらに、水系プライマーとして使用できる組成物を例示すれば、スルホポリ(エステルウレタン)組成物を含むものがあり、たとえば米国特許第5,929,160号明細書に記載されている。
【0044】
本発明においては、各種の放射線硬化性プライマー組成物および放射線硬化性インク組成物を採用することができる。「放射線硬化性」という用語は、適当な硬化エネルギー源に暴露されることによって反応(たとえば架橋)するような、モノマー、オリゴマーまたはポリマーの主鎖から直接または間接的にペンダントしている官能性基(場合によって異なるが)を指している。放射線硬化性インク組成物は典型的には自己架橋性であるのに対して、プライマー組成物は、インク成分または基材の官能基と反応、結合することが可能で、したがって、必ずしも自己架橋性である必要はない。そのような官能性基には一般に、放射線暴露をすることでカチオン性のメカニズムによって架橋する基だけでなく、フリーラジカルメカニズムによって架橋する基も含まれる。本発明を実施するのに好適な放射線架橋性基の代表例をあげれば、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、オレフィン性炭素−炭素二重結合、アリルオキシ基、アルファ−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアナートエステル基、ビニルエーテル基、それらの組み合わせなどがる。フリーラジカル的に重合する基が好ましい。これらの中では、(メタ)アクリル部分が最も好ましい。本明細書で使用するとき「(メタ)アクリル」という用語には、アクリルおよび/またはメタクリルを含む。
【0045】
放射線硬化性官能基の架橋を達成するために使用するエネルギー源としては、化学線(たとえば、スペクトルの紫外線または可視光線の領域の波長を有する放射線)、加速粒子(たとえば、電子ビーム照射)、熱(たとえば、加熱または赤外線照射)などを用いるこことができる。そのエネルギーが化学線または加速粒子であるのが好ましいが、その理由は、それらのエネルギーでは架橋の開始および速度をうまく調節することができるからである。それに加えて、化学線および加速粒子は温度が比較的に低い場合でも、硬化に使用することができる。そのことによって、加熱硬化技術で使用する際に放射線硬化性基の架橋を開始させるのに必要な比較的高い温度に対して敏感な成分を劣化させずにすむことになる。好適な化学線の線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、電子ビームエネルギー、日光などが挙げられる。紫外線照射、特に中圧水銀ランプからの紫外線照射が最も好ましい。
【0046】
放射線硬化性インク組成物と同様に、放射線硬化性プライマー組成物は、単一の放射線硬化性のモノマー、オリゴマー、マクロモノマー、ポリマーであってもよいし、あるいはそれらの成分の各種混合物であってもよい。この放射線硬化性成分は、放射線硬化性部分に関しては、単官能、2官能、3官能、4官能、あるいはさらに多官能であってもよい。
【0047】
本明細書で使用するとき、「モノマー」という用語は、比較的分子量の低い原料を意味する(すなわち、分子量が約500g/モル未満)。「オリゴマー」という用語は、相対的に中程度の分子量のものを意味する(すなわち、分子量が約500〜約100,000g/モル)。「マクロモノマー」という用語は、その分子量が約3,000g/モル〜約15,000g/モル、好ましくは約6,000g/モル〜約10,000g/モルのもので、1種以上の繰り返し単位からできていて、1つまたは複数の重合性基、典型的には重合性末端基を有するものを意味する。「ポリマー」という用語は、繰り返しモノマー下部構造を有する1種以上のモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマー成分から形成された下部構造を含み、さらなる放射線重合性基は有しない分子を意味する。「分子量」という用語は、本明細書の全体において、特に断らない限り、数平均分子量を意味する。
【0048】
このオリゴマー、マクロモノマーおよびポリマーは、直鎖状でも、分岐状でも、および/または環状でもよいが、分岐を伴うものの方が同程度の分子量を有する直鎖状の同等物よりは粘度が低くなる傾向を有する。
【0049】
硬化したプライマーおよび/またはインク組成物が相互貫入ポリマーネットワークを形成することが望まれるような実施態様では、モノマー(類)、オリゴマー(類)、マクロモノマー(類)およびポリマー(類)には、異なった種類の(すなわち、放射線硬化ではない)架橋性官能基、たとえばペンダントした水酸基などが含まれていてよい。イソシアナート架橋剤が存在する場合には、ペンダントしたヒドロキシル部分がNCO基とウレタン架橋反応する。
【0050】
単官能の放射線硬化性モノマーの代表例を挙げてみれば、スチレン、アルファ−メチルスチレン、置換スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシド、アルファ−エポキシド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイミドおよびその誘導体、イタコン酸、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N−ビニルカプロラクタム、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能性カプロラクトンエステル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、それらの組み合わせなどがある。
【0051】
多官能の放射線硬化性モノマーの例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、それらの組み合わせなどがある。
【0052】
マクロモノマーの好適な繰り返し単位としては、エチレン性不飽和カルボン酸、エステル、および放射線硬化を妨害しないその他の基が挙げられる。マクロモノマーの重合性末端基には、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。好適なマクロモノマーには次の(I)または(II)の化合物が含まれる:
R−(R1n−(CH21〜5−R2−X (I)
R−(R1)n−X (II)
式中、
Rは、H、直鎖状または分岐状のC1〜20アルキル、または直鎖状または分岐状のC1〜20アルコキシであり、
R2は直鎖状または分岐状のC1〜20アルキレンで、次式の1つまたは複数のもので分断されていてもよく、
−CONR3−、−NR3CO−、−COO−、または−OCO−結合;
R1は、
【化1】

であり、式中、R3およびR4はそれぞれ独立して、Hまたは直鎖状もしくは分岐状のC1〜6アルキルであり;
Xは
【化2】

であり、式中、R5はHまたはC1〜6アルキルであり;そして、
nは、所望の分子量を与えるのに充分な数、典型的には約10〜210である。
【0053】
好ましいマクロモノマーは、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートまたはイソブチルメタクリレート/イソオクチルアクリレートの繰り返し単位と、メタクリル性の末端基を有するものである。好適なメチルメタクリレートマクロモノマーは市販されていて、たとえば日本国東京の東亞合成(株)からのマクロモノマー樹脂AA−10およびAA−6や、ミズーリ州ワイルドウッド(Wildwood、MO)のイネオス・アクリリックス社(Ineos Acrylics Inc.)からのマクロモノマー樹脂のエルバサイト(ELVACITE)EP−M1010などがある。
【0054】
好適な放射線硬化性オリゴマーおよびポリマーとしては、(メタ)アクリレート化ウレタン(すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化エポキシ(すなわち、エポキシ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化ポリエステル(すなわち、ポリエステル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリリックス、(メタ)アクリレート化シリコーン、(メタ)アクリレート化ポリエーテル(すなわち、ポリエーテル(メタ)アクリレート)、ビニル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリレート化オイルなどが挙げられる。好ましい(メタ)アクリレート化脂肪族ウレタンは、ヒドロキシ末端を有するのNCO鎖伸長脂肪族ポリエステルまたは脂肪族ポリエーテルのジ(メタ)アクリレートエステルである。(メタ)アクリレート化ポリエステルは、(メタ)アクリル酸と脂肪族二塩基酸/脂肪族ジオール系のポリエステルとの間の反応生成物である。
【0055】
市販されている(メタ)アクリレート化ウレタンおよびポリエステルの例としては、ニュージャージー州ホーボーケン(Hoboken、NJ)のヘンケル社(Henkel Corp.)から市販されている商品名、「フォトマー(Photomer)」;ジョージア州スマーナ(Smyrna、GA)のUCB・ラドキュア社(UCB Radcure Inc.)から市販されている商品名「エベクリル(Ebecryl)」のシリーズの、284、810、4830、8402、1290、1657、1810、2001、2047、230、244、264、265、270、4833、4835、4842、4866、4883、657、770、80、81、811、812、83、830、8301、835、870、8800、8803、8804;ペンシルバニア州エクストン(Exton、PA)のサルトマー社(Sartomer Co.)から市販されている商品名サルトマーCN(Sartomer CN)シリーズの、CN964B−85、CN292、CN704、CN816、CN817、CN818、CN929、CN944B−85、CN945A−60、CN945B−85、CN953、CN961、CN962、CN963、CN965、CN966、CN968、CN980、CN981、CN982、CN983、CN984、CN985;ニュージャージー州ニューブランズウィック(New Brunswick、NJ)のアクロス・ケミカルズ(Akcross Chemicals)から市販されている商品名「アクチレーン(Actilane)」;およびイリノイ州シカゴ(Chicago、IL)のモートン・インターナショナル(Morton International)から市販されている商品名「ユビセン(Uvithane)」などが挙げられる。
【0056】
好ましいアクリレート化アクリリックスは、後の反応でフリーラジカルを形成することが可能な、反応性のペンダントまたは末端(メタ)アクリル酸基を有するアクリル系のオリゴマーまたはポリマーである。市販されている(メタ)アクリレート化アクリリックスの例としては、UCB・ラドキュア社(UCB Radcure Inc.)から市販されている商品名「エベクリル(Ebecryl)」シリーズの745、754、767、1701および1755がある。
【0057】
好ましい放射線硬化性オリゴマーは、ポリエステルポリウレタンオリゴマーで、これは2つ以上のイソシアナート基を含む脂肪族ポリイソシアナートと、1つまたは複数の放射線硬化性部分、1つまたは複数のヒドロキシル部分、および1つまたは複数のポリカプロラクトンエステル部分を含む放射線硬化性アルコールとの間の反応生成物である。この放射線硬化性アルコールは好ましくは次式のものであり、
【化3】

式中、nは約1〜10、好ましくは約2〜5の範囲であってこの放射線硬化性アルコールを反応性希釈剤に可溶とする数であり、Rは1価の置換基である。
【0058】
ポリイソシアナートは、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、およびそれらの混合物を含み、イソホロンジイソシアナートおよび/またはイソシアナート官能性イソシアヌレートの少なくとも1種と組み合わせて採用するのが好ましい。
それに代わるポリイソシアナートとしては、次式の化合物を含むものでもよく、
【化4】

式中、Rはそれぞれ独立してn+1価の部分であり、nはそれぞれ独立して1〜3である。
【0059】
屋外用途のためには、ポリウレタン、ならびにアクリル系のモノマー(類)、マクロモノマー(類)、オリゴマー(類)およびポリマー(類)が好ましい。分子量が高いもののも、反応性希釈剤に容易に溶解する傾向がある。
【0060】
成分の少なくとも1つが放射線硬化性であるのならば、放射線硬化性プライマーおよび/またはインク組成物には、放射線硬化性ではない成分も含まれていてよい。たとえば、ポリウレタン、アクリル系原料、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ポリスチレンなどのようなポリマーや、さらには置換ポリスチレン含有原料、シリコーン含有原料、フッ素化原料、それらの組み合わせなどを、反応性希釈剤(たとえばモノマー)と組み合わせることができる。
【0061】
いくつかの実施態様においては、放射線硬化性プライマー組成物は、放射線硬化性インク組成物と実質的に同じものである。プライマー組成物は、特に物品の表面全体に塗布する場合には、実質的に着色剤を含まないが普通である。しかしながら、プライマーが着色剤を含んでいてもよく、そのような着色プライマー層は着色層に使用するのに適している。それとは別な方法で、無色のプライマーを画像の下に直接塗布するだけとすることもできるが、その場合にはプライマー処理する表面を画像の大きさおよび形状と実質的に一致させる。
【0062】
プライマー組成物と放射線硬化性インク組成物とが同一である限りにおいては、好適な放射線硬化性インク組成物に関する以下の説明は、特に基材表面にプライマーをインクジェット印刷の手段を用いて塗布するような場合には、放射線硬化性プライマー組成物にも当てはまる。
【0063】
プライマー処理したポリマーシートに放射線硬化性インクを用いて画像形成させる。インクジェット印刷のための放射線硬化性インク、特にUV硬化性インクは公知である。本発明で使用するための代表的なインクジェット組成物としては、米国特許第5,275,646号明細書、米国特許第5,981,113号明細書、WO97/31071号およびWO99/29788号に記載されているようなものがある。
【0064】
放射線硬化性プライマーは使用する塗装方法に応じて、約5センチポアズ〜約10,000センチポアズの範囲の粘度とすればよいが、放射線硬化性インクは特性の上では低粘度とする。インクジェット印刷可能なプライマーも同様であるが、このインク組成物は、インクジェット吐出をさせる温度(典型的には室温から約65℃まで)におけるその粘度が約30センチポアズ未満であるのが好ましく、より好ましくは約25センチポアズ未満、そして最も好ましくは約20センチポアズ未満とする。放射線硬化性組成物の1つまたは複数の成分が揮発したり反応する可能性があるために、放射線硬化性インク組成物は通常、約65℃を超えない温度、好ましくは約50℃を超えない温度でジェット吐出させるのが好ましい。ある組成物における最適な粘度特性は、ジェット吐出温度と、その基材の上にその組成物を塗布するために使用するインクジェットシステムのタイプに依存する。たとえば、ピエゾインクジェットで用いる場合には、望ましい粘度は典型的には、プリンターヘッド部の温度で、約3〜約30センチポアズである。インクジェット組成物およびインクジェット吐出可能なプライマー組成物は典型的には、その硬化前では、中から低のレベルの表面張力を有する。プリンターヘッドの操作温度における表面張力を、約20mN/m〜約50mN/mの範囲、より好ましくは約22mN/m〜約40mN/mの範囲とするような配合が好ましい。
【0065】
さらに、インク組成物およびインクジェット吐出可能なプライマー組成物は、硬化させる前には、ニュートン粘性または実質的にニュートン粘性を有しているのが好ましい。ニュートン流体は、剪断速度とは少なくとも実質的に独立した粘度を有している。本明細書で使用するとき、その流体のベキ乗則指数が0.95以上ならば、流体の粘度は剪断速度には実質的に依存しない、すなわち少なくとも実質的にニュートン流体と見なすことにする。流体のベキ乗則指数は、次式で表される。
η=mγn-1
式中、ηは剪断粘度、γはs-1で表した剪断速度、mは定数、nはベキ乗則指数である。ベキ乗則指数の原理については、C.W.マコスコ(Macosko)『レオロジー:その原理、測定法および応用(Rheology:Principles,Measurements、and Application)』(ISBN、#1−56081−579−5)の第85頁に詳細に記述されている。
【0066】
放射線硬化性インク組成物には、放射線硬化性反応性希釈剤、1種以上のオリゴマー(類)、マクロモノマー(類)およびポリマー(類)、ならびに1種以上の任意の補助薬剤を含んでいるのが好ましい。オリゴマー(類)、マクロモノマー(類)およびポリマー(類)として好適なものは、数平均分子量が約100,000未満、好ましくは約500〜約30,000、より好ましくは約700〜約10,000のものである。
【0067】
一般的な指針として、インクジェット組成物には、約0.1〜約50質量%のオリゴマー(類)、マクロモノマー(類)およびポリマー(類)を含んでいるのが好ましい。分子量がより高いポリマー原料を用いている場合には、インク組成物には典型的には約0.1〜約30、好ましくは約5〜約20質量%のポリマーを含む。分子量がより低いオリゴマーおよびマクロモノマー原料を用いている場合には、そのインク組成物には、約0.1〜約50、好ましくは約15〜約40質量%のオリゴマーまたはマクロモノマーを含む。
【0068】
このインク組成物に好適なオリゴマー(類)、マクロモノマー(類)およびポリマー(類)は、反応性がなくても、あるいは場合によっては官能性であってもよいが、それらについてはすでに説明した。
【0069】
このインク組成物の反応性希釈剤には一般に、1種以上の放射線硬化性モノマーを含むが、これについてもすでに説明した。このモノマー(類)は、希釈剤または溶媒として、粘度低下剤として、硬化の際のバインダーとして、そして場合によっては架橋剤として機能する。放射線硬化性インク組成物には一般的に、約25〜約100、好ましくは約40〜約90質量%のそのようなモノマーを含んでいるのが好ましい。
【0070】
放射線硬化性プライマーおよび/またはインク組成物は、硬化させたインクおよび/またはプライマーにおけるある種の性能基準に寄与するような、1種以上の放射線硬化性モノマーまたはそれらを組み合わせたものと配合することができる。
【0071】
たとえば先に説明したような、多官能放射線硬化性原料(たとえば多官能モノマー)を反応性希釈剤に組み入れて、架橋密度、硬度、タック性、表面摩耗抵抗などの性質を向上させることもできる。1種以上の多官能性原料が存在している場合には、その反応性希釈剤には、そのような多官能性原料を約0.5〜約50、好ましくは約0.5〜約35、より好ましくは約0.5〜約25質量%含ませる。
【0072】
あるいは、または上記に加えて、硬度および耐摩耗性を向上させるために、「高Tg成分」放射線硬化性モノマーを加えることもでき、それにより、そのような高Tg成分を含まないことを別にすれば同一の配合のものと比較して、硬化させた材料がより高いガラス転移温度(Tg)を有する結果が得られる。モノマーのTgとは、そのモノマーのホモポリマーからの硬化膜のガラス転移温度を指し、そのTgは示差走査熱量計(DSC)法によって測定される。高Tg成分として使用するために好適なモノマー成分としては一般に、硬化させた状態でのそのホモポリマーのTgが少なくとも約50℃、好ましくは少なくとも約60℃、より好ましくは少なくとも約75℃となるようなモノマーを挙げることができる。使用する場合には、この高Tg成分が放射線硬化性反応性希釈剤の約0.5〜約50、好ましくは約0.5〜約40、より好ましくは約0.5〜約30質量%を占めるようにすることができる。高Tg成分のタイプを例示すれば、一般的には、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分と、少なくとも1つの非芳香族、環状脂肪族および/または非芳香族複素環部分とを有するモノマー、たとえばイソボルニル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートは、代表的な高Tg成分モノマーのもう1つの例である。
【0073】
別な場合、または上記に加えて、「付着促進性成分」をプライマーおよび/またはインク組成物の中に加えてもよいが、それにより、そのような付着促進性成分を含まないことを別にすれば同一の配合のものと比較して、未硬化および/または硬化させた材料が、所望の受容基材に対してより高い付着性を有するようになる。付着促進性モノマーは基材またはプライマーの内部への拡散する傾向を有していて、硬化させたときに物理的なロックを形成する。1種以上の比較的低Tgの複素環、放射線硬化性モノマーおよび/またはペンダントしたアルコキシル化官能基を含むアルコキシル化モノマーを含む付着促進性成分を、約0.1〜約50質量%の量で用いるのが好ましい。本明細書で使用するとき、「低Tg」という用語は、そのモノマーを硬化させたホモポリマー膜のTgが約40℃未満、好ましくは約10℃未満、より好ましくは約−10℃未満であることを意味している。主鎖に官能基を有するアルコキシル化モノマーもまた採用することができるが、ただし、それの濃度が全反応性希釈剤の濃度の約10質量%を超えてはならない。
【0074】
低Tgの複素環式放射線硬化性モノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびビニルカプロラクタムが挙げられる。ペンダントしたアルコキシル化官能基を含むモノマーの具体例としては、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートがあるが、一方では、プロポキシエチル(メタ)アクリレートおよびプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートには主鎖にアルコキシル化官能基が含まれている。
【0075】
付着促進特性を有するモノマーを組み合わせるのが有利である。特に好ましい組み合わせの1つとしては、5〜15質量部の複素環(メタ)アクリレートあたり、1〜10質量部のアルコキシル化(メタ)アクリレートを含むものがある。そのような組み合わせの特に好ましい実施態様では、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートとテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートとが含まれる。このプライマー組成物および特にインク組成物には、その反応性希釈剤の中に1種以上のモノマー(以後、光沢成分と呼ぶ)を組み合わせてもよく、それにより、そのような光沢成分を含まないことを別にすれば同一の膜と比較して、良好な初期光沢および光沢保持性を硬化後の印刷形態に付与することができる。放射線硬化性反応性希釈剤には、その原料から硬化させたホモポリマー膜が、ASTM D 523「鏡面光沢の標準試験方法(Standard Test Method for Specular Gloss)」に従って測定したときの60度での光沢が少なくとも70、好ましくは少なくとも90となるのに充分な量の光沢成分が含まれているのが好ましい。光沢成分を使用する場合には、反応性希釈剤に、光沢成分が0.5〜30、好ましくは0.5〜15、より好ましくは0.5〜10質量%含まれるようにすることができる。
【0076】
この光沢成分の中には広い範囲の好適なモノマーを、単独または組み合わせて組み込むことができる。そのようなタイプのモノマーには、室温では固体の、たとえばN−ビニルカプロラクタムやN−ビニルピロリジノンのような放射線硬化性モノマーが含まれる。
【0077】
濡れを促進させる成分として好ましいのは、表面張力が約30mN/m以下と低い成分である。濡れを促進させるモノマーの1つのタイプとしては、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分と、少なくとも1つの直鎖状または分岐状の脂肪族部分とを含むものがある。この脂肪族部分は、炭素原子3〜20を含む分岐状ヒドロカルビル部分であるのが好ましい。具体的の例をあげれば、イソオクチルアクリレートと、炭素原子3〜20を含む分岐状炭化水素部分を含む(メタ)アクリレートモノマーとを含むものがある。
【0078】
所望の性質のバランスをとるために、各種の反応性希釈剤を組み合わせることができる。たとえば、そのような反応性希釈剤の具体例の1つには、10〜40質量%の高Tg成分(好ましくはイソボルニル(メタ)アクリレート)、15〜50質量%の付着促進性成分(好ましくは、1〜20質量部のテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートあたり1〜20質量部の2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートを組み合わせたもの)、5〜10質量%の光沢成分(好ましくはN−ビニルカプロラクタム)、5〜20質量%の多官能放射線硬化性モノマー(好ましくは1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート)、および5〜20質量%の表面張力低下成分(好ましくはイソオクチル(メタ)アクリレート)を含むものが挙げられる。
【0079】
本発明の反応性希釈剤の好ましいもう1つの例を挙げれば、30〜50質量%の高Tg成分(好ましくはイソボルニル(メタ)アクリレート)、30〜50質量%の付着促進性成分(好ましくは2(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートおよび/またはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート)、および5〜15質量%の多官能放射線硬化性モノマー(好ましくは1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート)を含むものがある。
【0080】
未硬化のインクジェット組成物(すなわち、プライマーおよび/またはインク)には溶媒を含んでいても、あるいは実質的に溶媒を含んでいなくてもよい。「実質的に溶媒を含まない」という用語は、受容基材に塗布する前のその未硬化の組成物には、10未満、好ましくは2未満、より好ましくは0.5質量%未満の溶媒しか含んでいないということを意味する。それらの溶媒では、反応性希釈剤の表面張力よりも少なくとも2mN/m低い表面張力を有しているのが好ましいが、ただしその上に、それらの溶媒が25℃で約30mN/m未満、好ましくは25℃で約28mN/m未満の表面張力を有していればさらに好ましい。好適な溶媒ではまた、少なくとも約50℃、好ましくは少なくとも約60℃という比較的高い引火点を有しているのが望ましい。
【0081】
一般的な指針としては、本発明の放射線硬化性インクおよびプライマー組成物には、0.1〜40、好ましくは0.5〜15、より好ましくは1〜約10質量%の溶媒成分を含めることができる。
【0082】
この溶媒成分には、1種以上の溶媒を含むことができるが、それらは先にも述べたように、水性または有機系、極性または非極性などのものでよい。有機溶媒は、放射線硬化の間により容易に乾燥する傾向がある。エステル、特に分岐状脂肪族部分たとえばイソ−アルキル部分含むエステルは、好適な溶媒の1つのタイプである。
【0083】
このプライマーおよびインク組成物には、各種の任意に加え得る添加剤を含むことができる。そのような任意に加え得る添加剤の例としては、1種以上の流動調節剤、光重合開始剤、着色剤、滑り調節剤、チキソトロープ剤、発泡剤、消泡剤、流動その他のレオロジー調節剤、ワックス、オイル、ポリマー材料化剤(polymeric materializers)、バインダー、抗酸化剤、光重合開始剤用安定剤、光沢剤、殺真菌剤、殺菌剤、有機および/または無機充填剤粒子、レベリング剤、乳白剤、帯電防止剤、分散剤などを挙げることができる。
【0084】
印刷された画像グラフィック、特に屋外環境で日光に暴露されるものの耐久性を向上させるために、各種の市販されている安定化用薬剤をこれらのインクおよびプライマー組成物に任意に添加することができる。これらの安定剤は、熱安定剤、紫外光線安定剤、およびフリーラジカル捕捉剤といったカテゴリーに分類することができる。
【0085】
熱安定剤は得られた画像グラフィックを熱による影響から保護するために一般に使用されるもので、コネチカット州グレニッチ(Greenwich、CT)のウィトコ社(Witco Corp.)から商品名「マーク(Mark)V1923」として市販されているもの、およびオハイオ州ウォルトンヒルズ(Walton Hills、OH)のフェロ社(Ferro Corp.)ポリマー添加剤ディビジョンから商品名「シンプロン(Synpron)1163」、「フェロ(Ferro)1237」および「フェロ(Ferro)1720」として市販されているものがある。そのような熱安定剤は、約0.02〜約0.15質量%の範囲の量で存在させることができる。
【0086】
紫外光線安定剤は、プライマーまたはインクの全量の約0.1〜約5質量%の範囲の量で存在させることができる。市販されているベンゾフェノン型のUV−吸収剤としては、ニュージャージー州パーシッパニー(Parsippany、NJ)のBASF社(BASF Corp.)からの商品名「ユビノール(Uvinol)400」;ニュージャージー州ウェスト・パターソン(West Patterson、NJ)のサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)からの商品名「サイアソーブ(Cyasorb)UV1164」およびニューヨーク州タリータウン(Tarrytown、NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からの商品名「チヌビン(Tinuvin)900」、「チヌビン(Tinuvin)123」および「チヌビン(Tinuvin)1130」などがある。
【0087】
フリーラジカル捕捉剤は、プライマーまたはインク組成物の全量の約0.05〜約0.25質量%の範囲の量で存在させることができる。フリーラジカル捕捉剤の例を非限定的に挙げてみると、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物、ヒドロキシルアミン、立体的にヒンダーされたフェノールなどがある。
【0088】
HALS化合物として市販されているものとしては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商品名「チヌビン(Tinuvin)292」およびサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)からの商品名「サイアソーブ(Cyasorb)UV3581」などがある。
【0089】
各種のその他の光沢剤も広く使用できる。その例としては、アミノベンゾエート、2級アミン、シリコーン、ワックス、モルホリンアダクト、商品名「サルトマー(Sartomer)」CN386、CN381、CN383として入手可能な原料などがある。
【0090】
インク組成物の中で使用する顔料によって所望の色が得られる。先にも説明したように、顔料および/または染料はプライマーの中にも組み込むことができる。インクで使用するには耐久性顔料が好ましく、それに対してプライマーには耐久性顔料および/または染料が好ましいが、その意味は、この顔料および/または染料が良好な屋外耐久性を示し、日光および風雨への暴露による退色耐光性も有しているからである。
【0091】
本発明において有用な顔料は、有機、無機いずれでもよい。好適な無機顔料の例としてはカーボンブラックおよびチタニア(TiO2)を挙げることができ、一方好適な有機顔料としては、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、カルバゾール、モノアゾ−およびジスアゾベンズイミダゾロン、イソインドリノン、モノアゾナフトール、ジアリーリデピラゾロン、ローダミン、インジゴイド、キナクリドン、ジアゾピランスロン、ジニトラアニリン、ピラゾロン、ジアニシジン、ピランスロン、テトラクロロイソインドリノン、ジオキサジン、モノアゾアクリライド、アントラピリミジンなどを挙げることができる。当業者には周知のことであるが、主分子についている官能基によって、有機顔料は退色性が異なり、さらには別の色に変色してしまうこともある。
【0092】
市販されている有用な有機顔料としては、『ザ・カラー・インデックス(The Colour Index)第1〜8巻』(ソサイエティ・オブ・ダイヤーズ・アンド・カラリスツ(Society of Dyers and Colourists)、英国ヨークシャー(Yorkshire、England))に記載されているものがあり、その名称は、ピグメント・ブルー1、ピグメント・ブルー15、ピグメント・ブルー15:1、ピグメント・ブルー15:2、ピグメント・ブルー15:3、ピグメント・ブルー15:4、ピグメント・ブルー15:6、ピグメント・ブルー16、ピグメント・ブルー24、およびピグメント・ブルー60(ブルー顔料);ピグメント・ブラウン5、ピグメント・ブラウン23、およびピグメント・ブラウン25(ブラウン顔料);ピグメント・イエロー3、ピグメント・イエロー14、ピグメント・イエロー16、ピグメント・イエロー17、ピグメント・イエロー24、ピグメント・イエロー65、ピグメント・イエロー73、ピグメント・イエロー74、ピグメント・イエロー83、ピグメント・イエロー95、ピグメント・イエロー97、ピグメント・イエロー108、ピグメント・イエロー109、ピグメント・イエロー110、ピグメント・イエロー113、ピグメント・イエロー128、ピグメント・イエロー129、ピグメント・イエロー138、ピグメント・イエロー139、ピグメント・イエロー150、ピグメント・イエロー154、ピグメント・イエロー156、およびピグメント・イエロー175(イエロー顔料);ピグメント・グリーン1、ピグメント・グリーン7、ピグメント・グリーン10、およびピグメント・グリーン36(グリーン顔料);ピグメント・オレンジ5、ピグメント・オレンジ15、ピグメント・オレンジ16、ピグメント・オレンジ31、ピグメント・オレンジ34、ピグメント・オレンジ36、ピグメント・オレンジ43、ピグメント・オレンジ48、ピグメント・オレンジ51、ピグメント・オレンジ60、およびピグメント・オレンジ61(オレンジ顔料);ピグメント・レッド4、ピグメント・レッド5、ピグメント・レッド7、ピグメント・レッド9、ピグメント・レッド22、ピグメント・レッド23、ピグメント・レッド48、ピグメント・レッド48:2、ピグメント・レッド49、ピグメント・レッド112、ピグメント・レッド122、ピグメント・レッド123、ピグメント・レッド149、ピグメント・レッド166、ピグメント・レッド168、ピグメント・レッド170、ピグメント・レッド177、ピグメント・レッド179、ピグメント・レッド190、ピグメント・レッド202、ピグメント・レッド206、ピグメント・レッド207、およびピグメント・レッド224(レッド顔料);ピグメント・バイオレット19、ピグメント・バイオレット23、ピグメント・バイオレット37、ピグメント・バイオレット32、およびピグメント・バイオレット42(バイオレット顔料);およびピグメント・ブラック6または7(ブラック顔料)などである。
【0093】
染料は一般に、プライマーのポリマー材料との溶解性を基準にして選択する。アクリル系含有(たとえば架橋させたポリ(メタ)アクリレート)プライマー用に好適な染料としては、アントラキノン染料の、たとえば、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh、PA)のバイエル社(Bayer Corp.)塗料および着色剤ディビジョンから市販されている商品名「マクロレックス(Macrolex)レッドGN」および「マクロレックス(Macrolex)グリーン5B」および独国ルートウィヒスハーフェン(Ludwigshafen、Germany)のBASF社(BASF Akt.)から市販されている商品名「サーモプラスト(Thermoplast)レッド334」および「サーモプラスト(Thermoplast)ブルー684」;ピラゾロン染料の、たとえば、BASF社(BASF Akt.)から市販されている商品名「サーモプラスト(Thermoplast)イエロー104」;およびペリノン染料の、たとえば、バイエル社(Bayer Corp.)から市販されている商品名「マクロレックス(Macrolex)オレンジ3G」などがある。
【0094】
顔料は一般に、選択された反応性のモノマー(類)、マクロモノマー(類)、オリゴマー(類)および/またはポリマー(類)の中に顔料を混練することによって、インクおよび/またはプライマー組成物に組み込む。インクを再帰反射性の裏材と組み合わせて使用するような用途でインクを使用するならば、再帰反射性を与えるに充分な透過性と再帰反射の色が得られるようになるまで顔料を充分に混練りしなければならない。これは、顔料をたとえば、混練することによって達成できる。
【0095】
顔料の形態の着色剤を使用する場合には、顔料を安定化させるために場合によっては分散剤の使用が望ましいことがある。分散剤を選択するのに影響する因子は、たとえば、使用する顔料のタイプ、配合の中のモノマー(類)、オリゴマー(類)、マクロモノマー(類)およびポリマー(類)のタイプ、その中に顔料を分散させる単一または複数の相の組成などである。市販されている好適な分散剤の例としては、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington、DE)のアベシア社(Avecia Inc.)からの商品名「ソルスパース(Solsperse)」;オハイオ州ウィクリフ(Wickliff、OH)のルブリゾール社(Lubrizol Corp.)からの商品名「エフカ(EFKA)」;およびコネチカット州ウォリングフォード(Wallingford、CT)のBYKヘミー・USA(BYK Chemie USA)からの商品名「BYK」などが挙げられる。複数の分散剤を混合して使用することも可能である。添加する分散剤の量は、その顔料のタイプと濃度によって決める。典型的には、100質量部の有機顔料あたり約20〜約100質量部の分散剤、100質量部の無機顔料あたり約5〜約80質量部の分散剤を使用する。インクの不安定化を防ぐために、この分散剤は、インクおよび/またはプライマー組成物の中の他の成分よりも顔料に対する親和性が高いのが望ましい。
【0096】
UV硬化性プライマーと同様にインクも、UV照射を用いて硬化させるが、そのためには通常少なくとも1種の光重合開始剤を存在させる必要がある。しかしながら、電子ビーム硬化の場合には、光重合開始剤は必要ない。光重合開始剤のタイプは、組成物中の着色剤の選択、および放射線の波長によって決まる。本発明に好適な市販されているフリーラジカルを発生する光重合開始剤としては、たとえば(これらに限定される訳ではないが)、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテルおよびアシルホスフィン光重合開始剤、たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商品名「イルガキュア(Irgacure)」および「ダロキュア(Darocur)」として市販されているものがある。
【0097】
インクおよび/またはプライマー中の着色剤が入射放射線の一部を吸収し、光重合開始剤(類)を活性化させるために使用しうるエネルギーを消耗させることもある。そのために、硬化速度が低下して、塗布したインクの内部および/または表面の硬化が不充分になることもありうる。したがって、表面および内部の硬化を得るためには光重合開始剤を混合して使用するのが好ましい。使用する光重合開始剤(類)の量は典型的には、着色剤を含む配合に対して約1〜約15質量%、好ましくは約3〜約12質量%、より好ましくは約5〜約10質量%の間で変化させる。無色のインクおよびプライマーの場合には、開始剤濃度を下げることができる。硬化速度を改良するために、共開始剤およびアミン相乗剤を使用することもできる。例を挙げれば、イソプロピルチオキサントン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチルヘキシルジメチルアミノベンゾエート、およびジメチルアミノエチルメタクリレートなどがある。
【0098】
インクおよびプライマー組成物は、所望の成分を適当な方法を用いて混合することによって作製する。たとえば、1段法では、すべての成分をまとめてブレンドし、攪拌、混練または他の方法で混合して、均質な組成物を形成する。別の方法としては、少なくとも幾分かの成分と少なくとも幾分かの溶媒または反応性希釈剤とを、第1のステップでブレンドする。次いで、1つまたは複数の追加のステップで、(もしあれば)成分の中の残りと、1種以上の添加剤とを先の組成物の中に、ブレンド、混練または他の混合方法を使用して組み込む。
【0099】
さらに他の方法で、顔料着色剤を加える場合に特に好ましい方法では、好適な加工方法として、着色剤の顔料粒子サイズが5マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満、理想的には0.5マイクロメートル未満となるような組成物を調製することが含まれる。顔料着色剤の粒子サイズは、動的光散乱(DLS)または顕微鏡など適当な方法で特性測定をすればよい。そのような微細な顔料着色剤を含むインクジェット印刷可能な組成物は、特にその組成物が屋外標識の再帰反射性標識の上に印刷する着色インクであるような用途では、優れた彩度、透過性およびジェット印刷性を与える。
【0100】
最初に、顔料着色剤を約1〜約80質量%、残りを反応性希釈剤および(もし望むなら)他の添加剤が占める分散体を調製する。このステージで、顔料をその分散体の中に、メーカーから供給されたままの形態で加えてもよい。それに続く混練によって、顔料のサイズを、目的とする微細な粒子サイズにまで小さくする。この最初の分散体は、まず分散剤を液状成分に予備溶解させ、次いで所望の量の顔料粉体を添加して調製してもよい。最初に顔料を濡らすためには、高剪断混合を用いる。次いで、この分散体を高エネルギー混練方法にかけて顔料を所望の粒子サイズまで細かくするが、そのような方法としてはたとえば、ボールミル、サンドミル、水平メディアミル(horizontal media mill)、アトリターミル、2本ロールまたは3本ロールミル、などがある。この混練をさせた後に得られる分散体は、並はずれて安定である(すなわち、長期間たとえば26週間経過しても、分散体は均質なままで、その粒子サイズが増大することもない)。この混練加工に続けて、この顔料分散体を、追加の溶媒、モノマー、オリゴマー、マクロモノマー、ポリマー、分散剤、流動化剤、界面活性剤、光重合開始剤、UVA、HALSなどで希釈してもよい。この混練ベースは、それらの追加の成分を添加して取り込んだ後でもやはり安定を保つ。たとえば、パットン(Patton)による『ペイント流動および顔料分散(Paint Flow and Pigment Dispersion)』(ISBN#0−471−89765−5)を参照されたい。
【0101】
本発明の物品を製造している過程で、プライマー組成物を基材表面に塗布する。このプライマーは適当ならばどのようなコーティング方法を用いて塗布してもよいが、たとえば、スクリーン印刷、スプレー法、インクジェット法、押出しダイコーティング、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビアコーティング、ナイフコーティング、刷毛塗り、カーテンコーティング、巻線ロッド(wire−wound rod)コーティング、バーコーティングなどが挙げられる。このプライマーは典型的には、直接基材に塗布する。別な方法として、プライマーを剥離牲ライナーの上にコーティングして、それを基材の上に転写コーティングすることもできる。しかしながら、プライマー表面が暴露されてその結果べとつきが無くなっているような実施態様では、追加の結合層が必要となることもある。
【0102】
プライマー組成物をインクジェット吐出するような実施態様では、そのプライマー組成物には実質的に着色剤を加えないでおくか、またはインクのベース組成物とは異なった組成物で構成する。「ベース組成物」という用語は、着色剤を含まないインクの組成物を指す。インクジェット吐出するプライマーは、画像とサイズおよび形状が実質的に相当するように塗布するのが好ましい。このプライマーは、それぞれの色を塗布する直前に、1回ずつ画像の部分に塗布することもできる。別な方法として、プライマーを画像形成する表面の部分全体に1度に塗布することもできる。
【0103】
コーティングした後で、溶媒系および水系組成物を乾燥させる。コーティングした基材は、室温で少なくとも24時間乾燥させるのが好ましい。別な方法として、コーティングした基材を温度約40℃〜約70℃の加熱炉の中に約5〜約20分間入れて乾燥させた後に、室温で約1〜3時間乾燥させてもよい。
【0104】
この放射線硬化性インクおよびプライマー組成物は、適当なフルエンスとタイプの硬化エネルギーを用いて硬化させることができる。プライマー組成物は、インクジェット法による画像形成の前に硬化させておいてもよい。別な方法として、放射線硬化性インクジェット組成物を未硬化のプライマーの上にジェット印刷し、インクとプライマーとを同時並行して硬化させてもよい。硬化をさせるために使用する硬化エネルギーの量は多くの因子の影響を受けるが、そのような因子としては、参画する反応剤の量と種類、エネルギー源、ウェブ速度、エネルギー源からの距離、硬化させる材料の厚みなどがある。一般には、エネルギー強度が高いほど、硬化速度も大きくなる傾向がある。また、組成物中に存在する光触媒および/または光重合開始剤の量が多くなるほど、硬化速度も大きくなる傾向がある。一般的な指針としては、化学線は典型的には約0.1〜約10ジュール/平方センチメートルの総エネルギー照射となり、電子ビーム照射では典型的に、1メガラド未満〜100メガラド以上、好ましくは1〜10メガラドの総エネルギー照射となる。暴露時間は、約1秒未満から10分以上まででよい。放射線の暴露は、空気中で行ってもよいし、窒素のような不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0105】
画像形成したポリマーシートは最終製品としてもよいし、中間製品としてもよいが、標識および商業用グラフィックフィルムなど各種の物品に有用である。標識には、交通整理のための各種の再帰反射性シート製品や、バックライト付きの標識のような非再帰反射性標識などがある。
【0106】
この物品の好適な用途には次のようなものがある、すなわち、垂れ幕、旗、のぼり、およびその他の交通関連の警戒物品で、たとえば、ロールアップシート、コーンラップシート、ポストラップシート、バレルラップシート、ナンバープレートシート、バリケードシートおよび信号シート;車両標示および部分的な車両標示ビヒクル;歩道標示テープおよびシート;さらには再帰反射性テープなどである。この物品はまた広い範囲の再帰反射性安全用品でも有用で、そのような物品としてはたとえば、衣類、建設現場用ベスト、ライフジャケット、雨着、ロゴ、パッチ、販売促進用物品、旅行鞄、ブリーフケース、ブックバッグ、バックパック、救命いかだ、杖、傘、動物の首輪、トラックの標示、トレーラーのカバーおよび幕などが挙げられる。
【0107】
再帰反射性物品の場合、可視表面の再帰反射性係数は、最終の物品が要求される性能によって決まってくる。しかしながら、一般的には、再帰反射層の典型的な再帰反射性係数は、ASTM E−810「再帰反射性シートの再帰反射性係数に試験方法(test method for coefficient of retroreflection of retroreflective sheeting)」に従って観測角2度、照射角−4度で測定したときに、着色再帰反射層の場合の約5カンデラ/ルクスから約1500カンデラ/ルクス/m2の範囲である。コーナーキューブシート用では、再帰反射性係数は好ましくは蛍光オレンジ色では少なくとも約200カンデラ/ルクス、白色では少なくとも約550カンデラ/ルクスである。
【0108】
使用に適した最も一般的なタイプの2つの再帰反射性シートは、微小球タイプシートおよびコーナーキューブタイプシートである。時には「ビーズ型シート」と呼ばれることもある、微小球シートは、当業者には周知のもので、典型的には少なくとも一部がバインダー層に埋め込まれた無数の微小球を含み、(たとえば、金属蒸気またはスパッターコーティング、金属フレーク、または顔料粒子などの)鏡面または散乱反射材料を伴っている。「封入レンズ(enclosed lens)」型のシートとは、ビーズが反射材とは距離をとった関係にあるが、全体が樹脂に覆われているような再帰反射性シートのことを言う。「カプセル化レンズ(encapsulated lens)」型の再帰反射性シートでは、反射材がビーズに直接接触しているが、そのビーズの反対側の界面は気体になるように設計されている。微小球タイプのシートを説明している例は、米国特許第4,025,159号明細書(マグラス(McGrath));同第4,983,436号明細書(ベイリー(Bailey));同第5,064,272号明細書(ベイリー(Bailey));同第5,066,098号明細書(クルト(Kult));同第5,069,964号明細書(トリバー(Tolliver));および同第5,262,225号明細書(ウィルソン(Wilson))に開示されている。
【0109】
コーナーキューブシートは、時にはプリズム型、ミクロプリズマ型、あるいは3面鏡反射材シートとも呼ばれているものであるが、典型的には入射光を再帰反射させるための無数のコーナーキューブ要素を含むものである。典型的にはコーナーキューブ型の再帰反射材は、一般には平面状の前面と、背面から突出して並んでいるコーナーキューブ要素を有するシートを含んでいる。コーナーキューブ反射要素は一般に3面体構造を有していて、それは、1つの隅にほぼ互いに直角に3つの側面が集まっている構造、すなわちコーナーキューブをとっている。使用する場合には、この再帰反射材を、その前面が想定している観察者と光源の方に向かうように配列させる。前面に入射された光線はそのシートの中に入り、シートの本体を通過してから、要素の3つの面で反射され、実質的に光源のある方向へ向かって前面から出て行く。内部全反射の場合には、空気との界面にはごみ、水および接着剤があってはならず、したがってシール用のフィルムで封入する。光線は典型的には、全反射によるか、または先に述べたように、側面の裏面上に設けた反射コーティングによって、側面から反射される。コーナーキューブシート用として好適なポリマーとしては、ポリ(カーボネート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、脂肪族ポリウレタン、さらにはエチレンコポリマーおよびそれらのアイオノマーなどを挙げることができる。コーナーキューブシートは、米国特許第5,691,846号明細書(ベンソン(Benson))に記載されているようにして、フィルムの上に直接キャスティングによって作製することができるが、この特許は参考として引用し本明細書に組み入れる。放射線硬化させたコーナーキューブのために好適なポリマーとしては、架橋させたアクリレートたとえば多官能アクリレート、または単官能および多官能モノマーとブレンドしたエポキシおよびアクリレート化ウレタンなどを挙げることができる。さらに、上述のようなコーナーキューブは、より柔軟性の高いコーナーキューブシートを目的として、可塑化ポリ塩化ビニルフィルムの上にキャスティングすることもできる。これらのポリマーが好ましいのは、熱安定性、環境に対する安定性、透明性、工具や型からの優れた脱離性、反射性コーティングの受容性などを含む1つまたは複数の理由からである。
【0110】
シートが湿分に暴露される可能性があるような実施態様では、コーナーキューブ再帰反射性要素をシール用のフィルムで封入するのが好ましい。コーナーキューブシートを再帰反射層として採用するような場合には、積層物または物品を見えにくくしたり、引っ掻きやえぐり抵抗性を改良したり、および/またはシール用のフィルムがブロッキングする傾向を抑えたりする目的で、バッキング層を存在させてもよい。コーナーキューブタイプの再帰反射性シートを説明している例は、米国特許第5,138,488号明細書(スチェック(Szczech));同第5,387,458号明細書(パベルカ(Pavelka));同第5,450,235号明細書(スミス(Smith));同第5,605,761号明細書(バーンズ(Burns));同第5,614,286号明細書(ベーコン(Bacon))および同第5,691,846号明細書(ベンソン・ジュニア(Benson、Jr.))に開示されている。
【0111】
商業用グラフィックフィルムとしては、各種の広告、販売促進、およびコーポレートアイデンティティー画像フィルムなどが挙げられる。このフィルムには通常、目的の表面たとえば、乗用車、トラック、航空機、広告板、ビルティング、日よけ、窓、床などにこのフィルムを接着できるようにするために、その非視表面上に感圧接着剤を有している。
【実施例】
【0112】
本発明の目的と利点を以下の実施例によってさらに説明するが、実施例に記載する特定の原材料およびそれらの量ならびにその他の条件および詳細は、本発明を限定すると不当に受け取ってはならない。すべての部、パーセントおよび比率は、特に断らない限り、質量基準である。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
インク#1〜7は、以下の一般的な手順によって調製した:それぞれの分散体は、まず液状成分に予備溶解させてから、顔料粉末を添加して調製した。最初に顔料を濡らすためには、高剪断混合を用いた。次いでその分散体を、高エネルギー混練にかけて、その粒子サイズを0.5ミクロン未満にまで細かくした。この分散体とインク組成物の残りのその他のすべての成分とを、容器に一緒にいれて、充分に混合して成分全体を完全に溶解させた。
【0117】
メーカーから入手して使用したその他のインク:
インク#8:英国ケンブリッジ(Cambridge、UK)のザール社(Xaar Limited)から商品名「ザール・ジェット・UV・ブラック・インク(Xaar Jet UV Black Ink)」として市販されている、ブラックインク。
インク#9:ニュージャージー州カールシュタット(Carlstadt、NJ)のサン・ケミカル社(Sun Chemical Corp.)から商品名「サン・UV・フレキソ・ブラック・インク(Sun UV Flexo Black Ink)」として市販されているブラックインク。
【0118】
【表7】

【0119】
実施例で使用したプライマー組成物
溶媒系プライマー組成物A(「プライマーA」)は、80%の1910DRトナーと20%のCGS50の溶液であった。
【0120】
溶媒系プライマー組成物B(「プライマーB」)は、50%の880Iトナーと50%のDPMAの溶液であった。
【0121】
溶媒系プライマー組成物C(「プライマーC])は、33%の1910DRトナーと67%のCGS50の溶液であった。
【0122】
溶媒系プライマー組成物D(「プライマーD」)は、25%の880Iトナーと75%のCGS50の溶液であった。
【0123】
溶媒系プライマー組成物E(「プライマーE」)は、16.6%の1910DRトナーと83.4%とCGS50の溶液であった。
【0124】
溶媒系プライマー組成物F(「プライマーF」)は、50%の880Iトナーと50%のCGS50の溶液であった。
【0125】
溶媒系プライマー組成物G(「プライマーG」)は、15%のパラロイド(Paraloid)B−66と85%のCGS50の溶液であった。
【0126】
溶媒系反応性プライマー組成物H(「プライマーH」)は、25%のAA−6と75%のCGS50の溶液であった。
【0127】
溶媒系反応性プライマー組成物I(「プライマーI])は、25%のエルバサイト(Elvacite)1040と75%のMEKの溶液であった。
【0128】
100%固形分の放射線硬化性プライマー組成物J(「プライマーJ」)は、22.0%のCN964B−85、24.4%のTHFFA、24.4%のEEEA、24.4%のIBOA、4.4%のイルガキュア(Irgacure)500および0.44%のテゴラッド(Tegorad)2500の溶液であった。
【0129】
水系プライマー組成物K(「プライマーK」)は、90%のUCAR626と10%のSUSの溶液であった。
【0130】
溶媒系プライマーA〜Gは、成分をジャーに入れ、その混合物をジャーローラーの上で一夜回転させて完全に均質な溶液とすることにより調製した。
【0131】
溶媒系の反応性プライマーH〜Iは、成分をフラスコに入れ、マグネチックスターラーで攪拌して溶液を均質にすることによって調製した。
【0132】
100%固形分の放射線硬化性プライマーJは、プライマーH〜Iと同様にして調製した。
【0133】
水系プライマーKは、プライマーH〜Iと同様にして調製した。
【0134】
実施例で用いた一般的な手順と情報
インクジェット吐出をさせる前に、すべてのインクは、直径25mmの使い捨て式の細孔径2.7ミクロンのシリンジフィルター(ニュージャージー州クリフトン(Clifton、NJ)のホワットマン社(Whatman、Inc.)より市販)を通すことによって濾過した。
【0135】
プライマーのマイヤー(Meyer)バーコーティングは、指定のUS#マイヤーロッドを取り付けた型番KCC303のKコーターを使用して実施した(ニューヨーク州アミティビル(Amityville、NY)のテスティング・マシンズ社(Testing Machines、Inc.)から入手可能)。
【0136】
ザール・ジェット(Xaar Jet)XJ128−200プリンターヘッドは、英国ケンブリッジ(Cambridge、UK)のザール社(Xaar Limited)から市販されているものである。
【0137】
スペクトラ・ミアタ(SPECTRA MIATA)プリンターヘッドは、ニュージャージー州ハノーバーのスペクトラ社(Spectra Inc.)から市販されているものである。
【0138】
プライマーおよび/またはインクを硬化させるのに使用したのは、次のいずれかである:指定のバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)(メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg、MD)のヒュージョン・システムズ社(Fusion Systems Inc.)から市販)、または、2個の30.5cm中圧水銀バルブを取り付けたRRC・UV・プロセッサー(RRC UV Processor)イリノイ州プレーンフィールド(Plainfield、IL)のRPC社(RPC Industries)から市販)。
【0139】
特に指摘のある実施例では、インクを瞬間的に部分硬化させるために、イーフォス・ウルトラキュア(EFOS ULTRACURE)100SSプラス・ランプも使用した。この方法を用いることによって、イーフォスユニットランプからの紫外(「UV」)光線を、ゲルを充満させた可動式接続を介して、プリンターヘッドに近接した位置に送ることができた。この構成では、印刷から硬化までの経過時間は1秒の数分の一になった。この光線の出力では、完全な硬化をさせるに充分では無かった。したがって、オフラインでヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を用いて硬化を完了させた。
【0140】
実施例で使用した試験方法
パーセント付着量(「付着率(%)」)は、硬化させた物品で測定した、基材またはプライマーへのインクの付着である。付着率の測定を実施する前少なくとも24時間は、その硬化させた物品を室温でコンディショニングし、測定はASTM D 3359−95A「テープ試験による付着率測定のための標準試験方法 B(Standard Methods for Measuring Adhesion by Tape Test Method B)」に記載の手順に従って実施した。
【0141】
硬化させた物品の色濃度(Color Density、「CD」)は、スイス国レーゲンスドルフ(Regensdorf、Switzerland)のグレターク−マクベス社(Gretag−Macbeth AG)から入手可能なグレターク(Gretag)SPM−55濃度計を用いて測定した。バックグラウンドの差は配慮せず、また報告した数値は3つの測定の平均値である。CDが高くなるということは、べたのインクの塗り(solid ink fill)が増大あるいは改良されたことに関連する。
【0142】
硬化させたインクの個々の液滴のドットサイズを光学顕微鏡を用いて測定した。報告値は、6個の別々の液滴の直径を平均して得たものである。実施例で採用した印刷の解像度(約300×300dpi)のためには、理論的なインクドット直径は21/2/dpi(120ミクロン)よりは大きく、しかも2/dpi(170ミクロン)よりは小さくなくてはならない。しかしながら現実の問題として、最適な画像品質はこの範囲を20%拡げたときに得られることを我々は見いだしたが、その理由は、ノズルが無吐出または誤吐出したり、インクの液滴サイズが均一でないのを補償してやるためである。したがって、実際の最適なインクドット直径の範囲は、144ミクロン〜204ミクロンである。
【0143】
この実施例を通して、以下の評価尺度を用いて、定性的な印刷品質の差を表現した。
【0144】
総合印刷品質(「OPQ」)評価尺度
1− = 解像度が粗い;液滴が合体してインク液滴の拡がりに乏しい;べたのインクの塗り不充分;低光沢。
2− = 解像度やや劣る;1−よりはインク液滴の合体が少ない;1−よりはべたのインクの塗り改善あり。
3 = 優れた解像度;べたのインクの塗りは完璧;エッジが明瞭で切れがよい;高光沢。
2+ = インクの液滴の拡がりには改善あるものの、やや外見がややまだら。
1+ = インク液滴が拡がり過ぎ;べた塗りで斑ら;エッジがやや曖昧。
【0145】
どの場合においても好ましいOPQ評価は「3」である。評価が「1−」および「2−」ということは、インクとプライマーが特定の組み合わせの場合にインクの流れが完璧なべた塗りを生むには不充分であったということで、「2−」は、「1−」よりは「3」に近い。それとは逆に「1+」および「2+」の評価は、インクの流れが速すぎて、画像のシャープネスが失われることを示している。
【0146】
以下の実施例では、それぞれの基材の大きさは約20cm×25cmである。いくつかの実施例では、プライマー処理しない基材およびプライマーでコーティングした基材は別々のシートで、それぞれが約20cm×25cmの大きさであるが、別な実施例では、1枚の20cm×25cmのシートの約1/4をプライマー処理なしとし、そのシートの残りの部分にはプライマーをコーティングしている。それぞれの基材に印刷したテストパターンのサイズは、約15cm×15cmから約17cm×22cmの範囲である。
【0147】
以下の実施例において、実施例番号に続く文字記号(A、Bなど)は、使用したプライマーを示している。
【0148】
以下の実施例では、溶媒系プライマーは、実施例1〜11および16〜19において使用している。溶媒系反応性プライマーは、実施例12〜15において使用している。100%固形分の放射線硬化性プライマーは、実施例20〜23において使用している。水系プライマーは、実施例24〜25において使用している。
【0149】
一般的に言って、これらの実施例では、プライマー処理をしない各種の基材では付着性、色濃度およびドットサイズが大きく変化していることが明らかに認められるが、プライマーを使用すると基材のタイプのいかんに関わらず、均一な結果が得られることが、わかる。
【0150】
環境条件下における、インクおよび/またはプライマーの劣化耐性および、プライマーおよび/または基材からのインクおよび/またはプライマーの剥離を評価する目的で、1A、9B、13H、13I、15H、15I、18Gおよび19Gを除いた本発明の以下の全実施例を水浴浸漬および加熱エージングを行った。少なくとも一部には画像を形成していない、2.5cm平方の試験サンプルを物品からはさみで切り取った。この試験サンプルを長さ28cm×幅7cm×厚み0.06cmのアルミニウムパネル(5052H38;アルカリエッチングおよび酸デスマット処理したもの、オハイオ州クリーブランド(Cleveland、OH)のQパネル社(Q Panel Company)から販売)に貼り付けた。粘着剤を使用していないサンプル(実施例2A、7B、7C、10D、10E、16Cおよび22J)では、幅12.7mmの粘着テープ1本(3M社から、商品名「スコッチ・ダブル・スティック・テープ(Scotch Double Stick Tape)として市販されているもの)を、試験サンプルの画像形成していない表面の中央部に貼り付けた。次いでこの試験サンプルをパネルに手で押さえつけて貼り付けた。他のサンプルはすべて粘着剤層を有しているので、まずライナーを剥がし、それからその物品をハンドローラーで圧力をかけながらパネルに押しつけることによって、パネルに貼り付けた。
【0151】
水浴試験では、それぞれのパネルを25℃の水浴中に24時間浸漬させた。水浴から取り出したら、それぞれのパネルを紙タオルで穏やかに拭いて乾かした。タオルで拭いた後直ちに、それぞれの物品を目視で確認して、軽く指でこすった。それぞれの物品は、エージング試験前の同一の物品からは変化していなかった、すなわち、インクおよび/またはプライマーの劣化も、プライマーおよび/または基材からのインクおよび/またはプライマーの剥離も認められなかった。これらの試験結果から、画像形成させた物品は屋外使用での充分な耐久性を有していることが判る。
【0152】
加熱エージング試験では、それぞれのパネルを60℃のオーブンに24時間入れておいた。オーブンから取り出した後直ちに、それぞれの物品を目視で確認して、軽く指でこすった。それぞれの物品は、エージング試験前の同一の物品からは変化していなかった、すなわち、インクおよび/またはプライマーの劣化も、プライマーおよび/または基材からのインクおよび/またはプライマーの剥離も認められなかった。これらの試験結果から、画像形成させた物品は屋外使用での充分な耐久性を有していることが判る。
【0153】
(比較例1〜3および実施例1〜3)
比較例(「比較例番号」)1〜3および実施例1〜3を、各種の基材の上にインク#1をジェット吐出させて、調製した。この基材は、プライマー処理しないもの、またはプライマーAでコーティングしたもののいずれかで、US#16マイヤーロッドを取り付けたKCCのKコーターを使用して供給した。公称のプライマー厚み(すなわち、コートされたウェットな厚み)は36.6ミクロンで、計算上のドライ厚みは9ミクロンであった。テストパターンをそれぞれの基材の上に、脱気装置(deairation lung)付きのスペクトラ・ミアタ(SPECTRA MIATA)プリンターヘッドを使用し、30℃で300×300dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hランプを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、1パス、200mJ/cm2の線量で、印刷インクを硬化させた。結果は表1にまとめた。
【0154】
表1のデータから、プライマー処理しない基材に対する付着率に比較すると、すべての実施例において付着率が明らかに改良されていることがわかる。実施例1Aではまた、画像形成したプライマー処理しない基材での総合印刷品質と比較して、総合品質で顕著に改良されていることもわかる。
【0155】
【表8】

【0156】
(比較例4〜7および実施例4〜7)
比較例4〜7および実施例4〜7を、プライマー未処理、プライマーBコーティング、またはプライマーCコーティング、の各種の基材の上にインク#2をジェット吐出させて、調製した。プライマーBおよびプライマーCはそれぞれ独立して、US#6マイヤーロッドおよびUS#12マイヤーロッドを使用して基材の上にコーティングしたが、US#6マイヤーロッドの場合の結果だけを表2に示している。US#6マイヤーロッドおよびUS#12マイヤーロッドを使用したときの公称プライマー厚みは、それぞれ、13.7ミクロンおよび27.4ミクロンであった。プライマーBで、US#6マイヤーロッドおよびUS#12マイヤーロッドを使用したときの計算上の乾燥後の厚みは、それぞれ、2.6ミクロンおよび5.0ミクロンであった。プライマーCで、US#6マイヤーロッドおよびUS#12マイヤーロッドを使用したときの計算上の乾燥後の厚みは、それぞれ、1.7ミクロンおよび3.5ミクロンであった。
【0157】
テストパターンをそれぞれの基材の上に、脱気装置(deairation lung)付きのスペクトラ・ミアタ(SPECTRA MIATA)プリンターヘッドを使用し、30℃で300×300dpiの精度でXYステージ上で印刷した。US#6マイヤーロッドを使用してコーティングした基材と、それに対応する比較例のプライマー処理しない基材の場合には、プリンターヘッドは1パスとした。US#12マイヤーロッドを使用してコーティングした基材と、それに対応する比較例のプライマー処理しない基材の場合には、プリンターヘッドは2パスとした。
【0158】
印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、1パス、240mJ/cm2の線量で、印刷インクを硬化させた。US#6マイヤーロッドを使用したときの結果を表2に示す。
【0159】
US#12マイヤーロッドを使用してプライマーをコーティングしたサンプルではすべて、表2(US#6マイヤーロッドを使用)に示したのと同じ傾向を示したが、ただし、より暗色でより飽和したレッドインク色が観察されたが、そのインクはインクの流動を調節するプライマーの能力を超えるものではなかった。
【0160】
表2のデータから、実施例5Bの総合印刷品質を例外として、すべての実施例における付着率および総合印刷品質が、プライマー処理しない基材で測定したそれらの性質と比べて、同等または改良されていることがわかる。さらに、色濃度の測定から、測定したすべてのプライマー/インクの組み合わせにおいて、べたのインクの塗りが改良されていることがわかる。
【0161】
【表9】

【0162】
ポリプロピレンフィルムのUV光透過率を測定した。ポリプロピレンフィルム(厚み25.4ミクロン)は、プライマー未処理、または「変性プライマーB」(100%が880Iトナー(DPMAを含まない)のプライマーB)および「変性プライマーC」(74%の1910DRトナーおよび26%のCGS50のプライマーC)を用いてそれぞれ独立してコーティングしたものである。これらのプライマーは、KCCのKコーターを使用してフィルムの上にコーティングした。
【0163】
変性プライマーBを、ポリプロピレンフィルムの上に、US#6マイヤーロッド、US#12マイヤーロッドおよびUS#20マイヤーロッドを使用してそれぞれ独立にコーティングしたが、それぞれその公称プライマー厚みは、13.7ミクロン、27.4ミクロンおよび45.7ミクロン、計算上の乾燥後の厚みは、5.0ミクロン、10.0ミクロンおよび17.0ミクロンとなった。
【0164】
変性プライマーCを、ポリプロピレンフィルムの上に、US#5マイヤーロッド、US#10マイヤーロッドおよびUS#16マイヤーロッドを使用してそれぞれ独立にコーティングしたが、それぞれその公称プライマー厚みは、11.4ミクロン、22.9ミクロンおよび36.6ミクロン、計算上の乾燥後の厚みは、3.2ミクロン、6.4ミクロンおよび10.2ミクロンとなった。
【0165】
コーティングしたフィルムを一夜かけて風乾させた。プライマーコーティングしたポリプロピレンフィルムについて、下層のポリマー基材にUV照射が最も有害な260nm未満の領域におけるUV吸収を、マサチューセッツ州ボストン(Boston、MA)のパーキン・エルマー社(Perkin Elmer Inc.)から販売されている、UV/VIS・スペクロトメーター・ラムダ19(UV/VIS Spectrometer Lambda 19)を使用して測定した。
【0166】
プライマー処理しないUV光透過性ポリプロピレンフィルムでの透過率が90%であったのに対し、変性プライマーBでコーティングおよび変性プライマーCでコーティングしたポリプロピレンフィルムでは、その透過率がそれぞれ、30%および20%であった。変性プライマーBと変性プライマーCのいずれにおいても、プライマー厚みが異なる3つのすべてのサンプルで、結果を正規化すれば、同一のUV吸収スペクトルを示した。透過率が顕著に減少したことは、プライマーによって260nm未満のUB吸収が促進されていることを示していて、そのために、HIや180−10のようなUV照射に敏感な基材での劣化が抑制できる。
【0167】
(比較例8〜9および実施例8〜9)
比較例8〜9および実施例8〜9を、比較例1〜3および実施例1〜3の記載に従って調製したが、ただし、インク#5を使用した。インク粘度をジェット吐出可能な60℃で18.6cPおよび1000s-1に下げるために、ジェット吐出させる温度を60℃まで上げた。粘度は、カップと回転子を用いた応力調節レオメーター(controlled stress rheometer with the cup and bob geometry)である、レオメトリックス(Rheometrics)SR−200(ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway、NJ)のレオメトリックス・サイエンティフィック社(Rheometric Scientific Inc.)製)を用いて測定した。
【0168】
プライマーは、それぞれ独立して、US#6マイヤーロッドおよびUS#12マイヤーロッドを使用して基材の上にコーティングしたが、US#6マイヤーロッドの場合の結果だけを表3に示している。表3のプライマーを基材の上にUS#12マイヤーロッドを使用してコーティングする場合には、インクを基材の上に2パスでジェット吐出させた。一般に、US#12マイヤーロッドを使用した時の結果は、表3で得られた結果(プライマーをコーティングするのにUS#6マイヤーバーを使用)より顕著になっていた。
【0169】
表3におけるデータから、プライマー処理しない基材への付着率に比較すると、プライマー処理した基材への付着率に改善が認められ、特にたとえば実施例8では、付着率が50から99〜100%にまで上がっている。たとえば実施例9Cでは、インクの流動性とべたのインクの塗りの面での改良があって、印刷品質比較例9での1−から、2−にまで向上している。
【0170】
【表10】

【0171】
(比較例10および実施例10)
比較例10および実施例10を基材2033の上にインク#8をジェット吐出させて調製した。この基材は、プライマー未処理、プライマーDでのコーティング、または、プライマーEでのコーティングをしたものである。プライマー処理した基材は、不織布フィルム基材2033の上に、手持ち式のスプレーボトルを用いて、プライマーをハンドスプレーすることによって調製した。乾燥させた後、プライマー処理した不織布構成物を秤量したところ、コーティング質量は約0.0039g/cm2であった。
【0172】
テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200プリンターヘッドを使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、2パス、480mJ/cm2の合計線量で、印刷インクを硬化させた。
【0173】
プライマー処理しない2033の上に印刷された画像は解像度が低く、シートの繊維に沿ってインクの吸い上げが認められ、文字の可読性がなく、線が解像されていなかった。一方では、プライマーDでコーティングされた基材(実施例10D)またはプライマーEでコーティングされた基材(実施例10E)のいずれの基材の上に印刷した画像においても、画像のシャープネス、線の解像度および文字の可読性において顕著な改良が認められた。
【0174】
(比較例11および実施例11)
比較例11および実施例11は、基材3540Cの上にインク#9をジェット吐出させて調製した。この基材は、プライマー未処理か、またはプライマーFでコーティングしたもので、プライマーは、US#6マイヤーロッドを使用して塗布し、その後一夜、風乾させた。テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、2パス、480mJ/cm2の合計線量で、印刷インクを硬化させた。結果は表4にまとめた。
【0175】
表4のデータから、プライマー処理しない基材に対するインク付着性と比較して、プライマー処理した基材に対するインク付着性が改良されていることがわかる。プライマー処理しない3540Cの上に印刷された画像と比較して、プライマーFでコーティングした3540Cの上に印刷された画像では色濃度およびドットサイズの両方ともに大きくなっていて、これは、べたのインクの塗りがより完璧になっている証拠である。
【0176】
【表11】

【0177】
(比較例12〜15および実施例12〜15)
比較例12〜15および実施例12〜15は、基材HIおよびDGの上にインク#7をジェット吐出させて調製した。これらの基材は、プライマー未処理、プライマーHでコーティング、またはプライマーIでコーティングしたものである。プライマーHおよびプライマーIは、それぞれ独立して、基材の上にフィルム2枚分の厚みで(at two film thicknesses)、US#6マイヤーロッドおよびUS#10マイヤーロッドを取り付けたKCCのKコーターを使用して、コーティングし、次いで、一夜風乾させた。
【0178】
テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、2パス、480mJ/cm2の合計線量で、印刷インクを硬化させた。付着率を測定し、その結果を表5に示す。
【0179】
表5のデータから、プライマー処理しない基材に対するインク付着性と比較して、プライマー処理した基材に対するインク付着性が顕著に改良されていることがわかる。目視により観察では、プライマー処理した基材の上に印刷された画像は、優れた解像度を有しエッジが明瞭で切れがよいが、それに対して、プライマー処理しない基材の上に印刷された画像のエッジは曖昧であった。
【0180】
【表12】

【0181】
(比較例16および実施例16)
比較例16および実施例16は、基材SP700の上にインク#8をジェット吐出させて調製した。この基材は、プライマー未処理か、またはプライマーCでコーティングしたもので、プライマーは、US#6マイヤーロッドを使用して塗布し、その後一夜、風乾させた。テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、2パス、480mJ/cm2の合計線量で、印刷インクを硬化させた。結果は表6にまとめた。
【0182】
表6のデータから、プライマー処理しないSP700の上に印刷された画像と比較して、プライマーCでコーティングされたSP700の上に印刷された画像の方が、色濃度およびドットサイズでの顕著な増加が認められる。
【0183】
【表13】

【0184】
(比較例17および実施例17)
比較例17および実施例17は、基材3540Cの上にインク#8をジェット吐出させて調製した。この基材は、プライマー未処理、プライマーCでのコーティング、または、プライマーFでのコーティングをしたものである。プライマーCおよびプライマーFはそれぞれ独立して、US#6マイヤーロッドを使用して基材3540Cの上にコーティングし、その後一夜、風乾させた。テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、2パス、480mJ/cm2の合計線量で、印刷インクを硬化させた。結果を表7に示す。
【0185】
表7のデータから、プライマー処理しない3540Cの上に印刷された画像と比較して、プライマーコートされた3540Cフィルムの上に印刷された画像では、総合印刷品質、黒の色濃度およびドットサイズが著しく向上していることがわかる。インク#7で注目すべきは、プライマーFでコーティングした3540Cは、最適の画像品質を与えたのに対し、プライマーCでコーティングすると画像品質とドットゲインが過剰に補償しあうことである。
【0186】
【表14】

【0187】
(比較例18〜19および実施例18〜19)
比較例18〜19および実施例18〜19は、基材HIおよびDGの上にインク#7をジェット吐出させて調製した。この基材はプライマー未処理か、またはプライマーGでコーティングしたものである。プライマーGをUS#3マイヤーロッドを使用して基材の上にコーティングし、一夜、風乾させた。テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、印刷したインクをRPCプロセッサー使用して次の条件下に硬化させた:ノーマル/ノーマルセッティング、140フィート/分、140〜170mJ/cm2
【0188】
表7のデータから、プライマー処理しないHI(比較例18)およびプライマー処理しないDG(比較例19)に対して印刷された画像の付着率はいずれの場合も0%であったのに対し、プライマー処理したHI(実施例18G)およびプライマー処理したDG(実施例19G)に対して印刷された画像の付着率がそれぞれ、99%および98%であることがわかる。表7のデータからさらに、印刷する前に基材にプライマーを塗布すると、黒の色濃度が上がり、ドットサイズで小さくなって最適な範囲に収まることもわかる。
【0189】
【表15】

【0190】
(比較例20〜23および実施例20〜23)
比較例20〜23および実施例20〜23は、各種の基材の上にインク#6をジェット吐出させて調製した。これらの基材は、プライマー未処理、プライマーJをコーティングしたものであるが、プライマーはUS#6マイヤーロッドを使用して塗布した。テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。実施例20J、21J、22Jおよび23Jでは、インク#6を未硬化のプライマー処理した表面の上に印刷し、イーフォス硬化ユニットを使用して、インライン(プライマー処理した基材へインクの液滴が到達してから1秒以内)で硬化させた。次いで、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、3パス、720mJ/cm2の合計線量で、印刷された画像全体を硬化させた。結果は表9にまとめた。
【0191】
表9のデータから、プライマー処理しない基材に対するインク付着率と比較して、プライマーJでコーティングした基材の上へのインクの付着率は同等または改良されていることがわかる。プライマー処理した基材上でのドットサイズも改良されていて、ドットサイズが小さい基材ではドットサイズが大きくなり、あるいは、インクが流れすぎていた基材ではドットサイズが小さくなった。このプライマーJをコーティングした基材は、目標とする144ミクロン〜102ミクロンの範囲内で均一なドットサイズを示した。
【0192】
【表16】

【0193】
(比較例24〜25および実施例24〜25)
比較例24〜25および実施例24〜25は、基材HIおよびDGの上にインク#7をジェット吐出させて調製した。この基材はプライマー未処理か、またはプライマーKでコーティングしたものである。プライマーKは、US#6マイヤーロッドを取り付けたKCCのKコーターを使用して基材の上にコーティングし、次いで、一夜、風乾させた。テストパターンをそれぞれの基材に上に、ザール(XAAR)XJ128−200を使用し、317×295dpiの精度でXYステージ上で印刷した。印刷した直後に、Hバルブを取り付けたヒュージョン・システムズ・UV・プロセッサー(Fusion Systems UV Processor)を100%出力で使用し、2パス、480mJ/cm2の合計線量で、印刷インクを硬化させた。結果は表10にまとめた。
【0194】
表10のデータから、プライマー処理しない基材の上に印刷された画像の付着率が0%であるのと比較して、プライマーKでコーティングした基材HIおよびDGの上に印刷された画像の付着率が(99%に)著しく向上したことがわかる。目視により観察では、プライマー処理した基材の上に印刷された画像は、優れた解像度を有しエッジが明瞭で切れがよいが、それに対して、プライマー処理しない基材の上に印刷された画像はまだらでエッジが曖昧であった。
【0195】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)プライマー処理した表面部分を有するシートと、
b)前記プライマー処理した表面部分に配した放射線硬化させたインクジェット印刷画像と、
を含む物品であって、前記物品が屋外使用のための耐久性を有している物品。
【請求項2】
前記シートがポリマー材料を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリマー材料が熱可塑性または熱硬化性である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記ポリマーシート材料が、アクリル含有フィルム、ポリ(塩化ビニル)含有フィルム、ポリ(フッ化ビニル)含有フィルム、ウレタン含有フィルム、メラミン含有フィルム、ポリビニルブチラール含有フィルム、ポリオレフィン含有フィルム、ポリエステル含有フィルムおよびポリカーボネート含有フィルムの少なくとも1つである、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記シートが再帰反射性可視表面を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記画像が、同一のシートであるがプライマー処理していない前記シートの上にインクジェット印刷した同一の画像と比較して、総合的な印刷品質において改良を示す、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記インクジェット印刷画像が、ASTM D 3359−95A測定法による、プライマー処理した表面部分への付着率が少なくとも約80%を示すインクを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記プライマー処理した表面部分が、ASTM D 3359−95A測定法による、シートへの付着率が少なくとも約80%を示すプライマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記画像が少なくとも約1.5の黒の色濃度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記画像が、少なくとも[(2)1/2]/dpiのインクドット直径を有し、ここで印刷の解像度におけるdpiが直線1インチあたりのドット数である、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記プライマー処理した表面部分が、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンおよびそれらの混合物を含む少なくとも1種の成膜性樹脂を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記プライマー処理した表面部分が少なくとも25質量%のアクリル樹脂を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記プライマー処理した表面部分が少なくとも50質量%のアクリル樹脂を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記プライマー処理した表面部分が少なくとも10質量%のポリウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記プライマー処理した表面部分が少なくとも25質量%のポリウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記プライマー処理した表面部分が架橋させたポリ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記プライマー処理した表面部分が少なくとも1種の着色剤を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記インクが架橋させたポリ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
a)プライマー処理した表面部分を有するポリマー基材と、
b)前記プライマー処理した表面部分に配した放射線硬化させたインクジェット印刷画像と、
を含む物品であって、前記物品が屋外使用のための耐久性を有している物品。
【請求項20】
請求項1に記載の物品を含む標識。
【請求項21】
請求項1に記載の物品を含む商業用グラフィックフィルム。
【請求項22】
a)少なくとも1種の水系プライマー組成物または溶媒系プライマー組成物をシートまたはポリマー基材の少なくとも一部に塗布する工程と、
b)水または溶媒を蒸発させてプライマー処理した表面を形成する工程と、
c)前記プライマー処理した表面の上に放射線硬化性インク組成物をインクジェット印刷する工程と、
d)前記インクを硬化させて画像形成させた物品を形成する工程と、
を含み、前記物品が屋外使用のための耐久性を有しているインクジェット印刷方法。
【請求項23】
前記インク組成物が、プライマー表面中へと拡散する液状成分を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プライマー組成物が前記インクに対して反応性である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記プライマー組成物が前記インクに対して非反応性である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記プライマー処理した表面が実質的に前記画像と同じ大きさおよび形状に相当する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記プライマー組成物が少なくとも25質量%のアクリル樹脂を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記プライマー組成物が少なくとも50質量%のアクリル樹脂を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記プライマー組成物が少なくとも10質量%のポリウレタン樹脂を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記プライマー組成物が少なくとも25質量%のポリウレタン樹脂を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記インクが、プリントヘッド温度において約3センチポアズ〜約30センチポアズの粘度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記インク組成物が少なくとも1種の放射線硬化性成分を含み、前記成分がポリマー、オリゴマー、マクロモノマー、モノマー、またはそれらの混合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記インクが、
(a)オリゴ/樹脂成分と、
(b)低Tgの複素環式モノマーおよび/またはペンダントしたアルコキシル化官能基を含むモノマーを含む付着促進性放射線硬化性成分を0.1〜50質量%含む反応性希釈剤と、
を含み、ただし反応性希釈剤の約10質量%未満が主鎖にアルコキシル化官能基を含むモノマーを占める、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記インクが、高Tg成分、多官能性モノマー、低界面張力成分、光沢成分、およびそれらの混合物の少なくとも1種をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記インクが実質的に溶媒を含まない、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
a)放射線硬化性プライマー組成物をシートまたはポリマー基材の少なくとも一部に塗布して、プライマー処理した表面を形成する工程と、
b)前記プライマー処理した表面の上に放射線硬化性インク組成物をインクジェット印刷する工程と、
c)前記インクを硬化させて画像形成させた物品を形成する工程と、
を含み、前記物品が屋外使用のための耐久性を有しているインクジェット印刷方法。
【請求項37】
インクジェット印刷の前に前記プライマー組成物を硬化させることをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記インク組成物が、プライマー表面中へと拡散する液状成分を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記プライマー組成物が前記インクに対して反応性である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記プライマー組成物が前記インクに対して非反応性である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記プライマー組成物が実質的に着色剤を含まない、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記プライマー処理した表面が実質的に前記画像と同じ大きさおよび形状に相当する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記プライマー組成物が少なくとも1種の放射線硬化性成分を含み、前記成分がポリマー、オリゴマー、マクロモノマー、モノマー、またはそれらの混合物である、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記インク組成物が少なくとも1種の放射線硬化性成分を含み、前記成分がポリマー、オリゴマー、マクロモノマー、モノマー、またはそれらの混合物である、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記インクが、プリントヘッド温度において約3センチポアズ〜約30センチポアズの粘度を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記インクが、
(a)オリゴ/樹脂成分と、
(b)低Tgの複素環式モノマーおよび/またはペンダントしたアルコキシル化官能基を含むモノマーを含む付着促進性放射線硬化性成分を0.1〜50質量%含む反応性希釈剤と、
を含み、ただし反応性希釈剤の約10質量%未満が主鎖にアルコキシル化官能基を含むモノマーを占める、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記インクが、高Tg成分、多官能性モノマー、低界面張力成分、光沢成分、およびそれらの混合物の少なくとも1種をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記インクが実質的に溶媒を含まない、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記画像の上に配した保護層をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項50】
前記画像の上に配した保護層をさらに含む、請求項19に記載の物品。

【公開番号】特開2009−34995(P2009−34995A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−177137(P2008−177137)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2007−18354(P2007−18354)の分割
【原出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】