説明

放射線硬化型インクジェット用インクのプライマー・コーティングのドットサイズの制御

【課題】放射線硬化型インクジェット用インクのプライマー・コーティングのドットサイズの制御を行う。
【解決手段】アルキル基が少なくとも8つの炭素原子を有する単官能基アルキル・アクリルレートと、光重合開始剤と、アルコキシル化ジアクリレート及びトリアクリレートと、アミノ・アクリレートと、単官能基モノマー及び多機能モノマーと、オリゴマーと、それらの混合物とを備えているアクリレート・モノマーと、を備えるプライマー組成物を、プライマー・コーティングを形成している基板上へ塗布し、かつ、紫外線硬化型のインクジェット用インクを前記プライマー・コーティングの表面に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化されるプライマー・コーティングに堆積される放射線硬化型インクジェット用インクのドットサイズを調整又は制御するために用いられる、放射線硬化型プライマー・コーティングについて記載する。
【背景技術】
【0002】
このセクションにおける提示は、単に、本開示に関する背景情報を提供するものであって、従来技術を構成するものではない。
【0003】
理論的には、300 DPI(Dots Per Inch)プリンタの場合には119ミクロンとなるであろう√2/DPIの滴サイズが望ましいであろうが、多くの場合には、それよりも大きな滴サイズとすることが好ましいであろう。実在している印刷システムでは、印刷ヘッドの移動は、滴の固着精度に影響を与えている。通常、このような要因は、2つのヘッドの継合ポイントでは、より増すであろう。印刷ヘッドと基板との隙間が1mmを超えているときに、その隙間からインクを堆積させる要求がある場合には、固着精度の不正確さが更に増加するであろう。商業利用では、多くの場合、滴拡散を配置ずれ補償に適合させる必要があるので、論理的には、最良の滴サイズの大きさでは、最良の印刷品質が得られない。したがって、多数の印刷ヘッドと印刷インクとを組み合わせて使用できるように、ユーザが滴拡散を制御及び調整することが可能となる手段を有していることは、非常に好都合となるであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、放射線硬化型インクジェット用インクによって印刷するための印刷方法であって、まず、アルキル基が少なくとも8つの炭素原子を有していて表面張力が23dyn/cm〜31dyn/cmの範囲の低表面張力単官能基アルキルアクリレートモノマーと、光重合開始剤と、他の紫外線硬化型モノマー及びオリゴマーと、を備えるプライマー組成物を、基板に塗布する印刷方法を提供する。その後、プライマー組成物は、活性放射線によって硬化される。その後、紫外線硬化型又はカチオン硬化型のインクジェット用インクを、硬化されたプライマー・コーティングの表面に印刷する。
【0005】
さらに、本発明は、印刷されるインクジェット用インクのドットサイズの調整方法であって、(i)アルキル基が少なくとも8つの炭素原子を有していて表面張力が30dyn/cm未満であるアルキル基の単官能基アルキル(メセドリン)アクリレートと、(ii)光重合開始剤と、(iii)アルコキシル化ジアクリレート、アルコキシル化トリアクリレート、アミノ・アクリルアクリレート、単官能基モノマー及び多機能モノマー、オリゴマー、及び、それらの混合物から実質的になる一群から選択されるモノマーを備えるアクリレート材料を備える、プライマー組成物を、基板の少なくとも一部に塗布し、プライマー・コーティングを形成するために塗布された前記プライマー組成物を硬化させ、かつ、前記プライマー・コーティングの表面に放射線効果型インクジェット用インクを印刷し、前記単官能基アクリレート(i)の含有量が、塗布された紫外線硬化型インクジェット用インクの所望のドットサイズを生成するように選択される調整方法を提供する。
【0006】
適切な更なる範囲については、本願明細書に提供される説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の技術説明は、一以上の発明における、主題の本質、製造品、及び、使用についての単なる例示的に過ぎない。また、以下の技術説明は、本願、又は、本願の優先権主張の基礎とされた出願或いはこれから取得される特許となる可能性があるこの種の他の出願で請求される、いかなる特定の発明の範囲、用途、使用を限定することを意図していない。以下の定義及び限定的でない概要は、本願明細書で示されている技術の説明を検討する際に考慮しなければならない。
【0008】
この技術の実施例で示している説明及び具体例は、説明するといった目的のみを意図していて、技術範囲を制限することは意図していない。さらに、一定の特性についての多数の実施例の詳説は、付加的な特性を有する他の実施例、又は、一定の特性の色々な組合せを包含する他の実施例を除外することは意図していない。特定の例が、この技術の組成物及び方法の作成手法、使用手法、実行手法の例示的な目的のために提供されているが、これに反する記述がない限り、これらの例は、この技術の所定の実施例が実行され或いはテストされ、又は、実行されていない或いはテストされていないことを示すことは意図していない。
【0009】
本願明細書では、単語「好適な」及び「好ましい」とは、特定の状況下で、特定の利点をもたらす実施例を指す。しかしながら、同じの状況下又は他の状況下において、他の実施例が好ましいこともある。さらにまた、一つ以上の好適な実施例の詳説は、他の実施例が有用でないこと、及び、他の実施例を技術範囲から除外する意図することを意味しているわけではない。
【0010】
本願明細書では、単語「含む」及びその変語とは、限定的でないことを意図しており、リストの項目中での詳説が、この技術の素材、組成物、デバイス、及び、方法においても有用であろう他の項目を除外するものではない。
【0011】
本明細書では、「一つ」とは、その項目が「少なくとも一つ」存在していることを示し、文脈が明らかにそれ以外を示すのでなければ、この種の複数の項目が存在していることも示す。数値に利用される「約」は、算出又は測定による僅かに不正確な数値が存在することが許容されることを示す(いくつかのアプローチとしては、この数値が正確である場合、この数値に対して大体近似する又は適度に近似する場合、或いは、密接に近似する場合がある)。何らかの理由で、「約」によって提供される不正確さが、技術的に通常の意味に照らして他の形態では理解できない場合には、本明細書における「約」は、その数値の5%まで変化可能であることを示す。
【0012】
次に開示される放射線硬化型プライマー・コーティングは、硬化されるプライマー・コーティングに堆積される放射線硬化型インクジェット式インクの滴サイズを調整又は制御するように、そのインクジェット式インクを印刷する前に、塗布され、かつ、硬化される。プライマー組成物は、フレキソ印刷浸水コートを含むがこれに限定されない、いかなる通常の印刷方法によっても塗布することができる。さらに、プライマー組成物は、インクジェット印刷のような適切な印刷方法によって、一以上の領域における基板表面の一部にのみ堆積することができる。これにより、プライマー・コーティングは、コーティングに堆積される印刷画像にほぼ一致する。通常、硬化用の放射線は、紫外線又は電子ビーム放射線であるが、紫外線が好ましい。
【0013】
プライマー組成物は、一部が単官能基となりかつ少なくとも一部が多機能基となるであろうモノマー或いはオリゴマー又はこれらの双方の混合物と、適切な光重合開始剤又は光重合開始剤の組合せと、23dyne/cm〜31dyne/cmの範囲の少なくとも一つの低表面張力モノマーとを備える。この低表面張力モノマーの含有量は、硬化されるプライマー組成物上に塗布される紫外線硬化型のインクジェット式インクが、所望のドットサイズとなるように選択される。この低表面張力モノマーは、硬化を妨げない濃度まで付加することができる。この低表面張力モノマーの含有量は、硬化されるプライマー・コーティングが、印刷されたインクジェット式インクの滴サイズを調整及び制御するようにされていて、この結果、より微細な印刷品質での印刷が得られる。この低表面張力モノマーは、プライマー組成物における紫外線硬化型組成物の総量に対して、プライマー組成物の最終含有量として約30重量%まで付加することができる。とはいえ、いくつかの実施例では、この低表面張力モノマーは、プライマー組成物における紫外線硬化型組成物の総量に対して、この低表面張力モノマーの約25%まで又は約20%まで含めることが有益であろう。低表面張力モノマーの濃度を増加させると、被覆されたインクジェット式インクの滴拡散が減少する。いくつかの実施例では、プライマー組成物は、プライマー組成物における放射線硬化型組成物の総量に対して、この低表面張力モノマーの少なくとも約1%、少なくとも約5%、又は、少なくとも約10%含まれている。
【0014】
プライマー組成物は、低表面張力モノマーに加えて、基板をコートするであろう塗布方法に適切な粘性を付与することに適した、モノマー及びオリゴマーを含む。各種実施形態では、プライマー組成物は、アクリレートベースの放射線硬化組成物である。さらに、プライマー組成物は、低表面張力モノマーに加えて、1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレートなどのジアクリレート、トリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、プロポキシル化-2-ネオペンチル・グリコール・ジアクリレート又はアルコキシル化ヘキサンジオール・ジアクリレートなどのアルコキシル化アクリレートを含んでいてもよい。プライマー組成物は、硬化速度を増加させる高機能のアクリレートを含んでいてもよい。ある種の実施形態では、含めることが可能な高機能アクリレートの含有量は、選択される塗布方法に対する所望の塗布粘性によって制限することができる。高機能モノマーの例は、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパン・トリアクリレート、ペンタエリスリトール・テトラアクリレートである。いくつかの実施例では、エポキシ・アクリレート、ウレタン・アクリレート及びポリエステル・アクリレートなどの多官能オリゴマーを含めることもできる。
【0015】
ある実施例では、官能基数15で粘性350cps(25℃時)であるサートマー(Satomer)社のCN2302のような、高機能化された超分岐ポリエステル・ポリアクリレートを、プライマー組成物に少量含有させてもよい。いくつかの実施例では、プライマー組成物は、インクジェット式印刷ヘッドを用いて塗布される。この場合には、粘性は、高くても70℃までのインクジェットの印刷温度で4cps〜16cpsに保持すればよい。インクジェット印刷におけるこの粘性要求によって、プライマー組成物に含まれる、エポキシ・アクリレート、ウレタン・アクリレート及びポリエステル・アクリレートのような、オリゴマーの含有量は制限される。
【0016】
その他の実施例では、プライマー組成物は、被覆されたインクジェット式インクの滴サイズを減少させるために、低表面張力モノマーとして、低表面張力モノマー、イソデシル・アクリレート、イソオクチルアクリレート、3,3,5-トリメチル・シクロヘキシル・アクリレート、及び、それらの混合物から選択される低表面張力アクリレート・モノマーを備える。各種実施形態では、これらの低表面張力モノマーの濃度は、約1%から約30%まで、或いは、約5%から約25%まで、或いは、約10%から約20%まで、或いは、約12%から約19%までの範囲とすることができ、又は、これらの範囲のいずれかの範囲内(この種の範囲の一つの端点を含む)としてもよい。一般に、上記の実施例のような、これらの低表面張力アクリレート・モノマーは、表面張力が30dyne/cm未満である。表面張力が28.6dyne/cmであるイソデシル・アクリレート、表面張力が28.6dyne/cmであって粘性の範囲が約5 cps〜約7cpsのイソオクチルアクリレート、又は表面張力が23.7dyne/cmの3,3,5-トリメチル・シクロヘキシル・アクリレート(シートマー社のCD420)のような低表面張力モノマーは、所望のドットサイズにインクジェット式インクの滴拡散を調整又は制御するために付加することができる。
【0017】
表面エネルギーは、一滴の滴の前進濡れ角から判断する動的接触角法によって測定することができる。水とジヨードメタンとを用いた二液法を、表面エネルギーを定量化するために用いることができる。表面エネルギーの算出に用いられる方法は、広範囲に用いられていて、かつ、当業者間では当たり前のオーエンス、ウェント、ラベル、ケルブレの方法によって提供される。この種の方法は、分散的でかつポーラな2種類の添加成分が包含されている。
【0018】
クリアコート・プライマー組成物がフレキソ印刷、グラビア・コーティングによって、又は、カーテン・コート或いはスロット・コートなどのコートを用いる例として利用可能ないくつかの他の方法によって塗布される場合には、プライマー組成物の粘性は、より高めることができる。この組成物は、さらに、ビニルカプロラクタムのようなアクリレートが実際的に共重合された、付加的な放射線硬化型モノマーを含むことができる。クリアコート・プライマー組成物は、優れた印刷特性、優れた硬化、及び、優れた接着性のインクジェット式のインク印刷を提供する。
【0019】
プライマー組成物は、さらに、紫外線によって硬化される光重合開始剤を含んでもよい。適切な光重合開始剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ベンゾイン・メチル・エチル、ベンゾイン・エチル、ベンゾイン・フェニル・エチルなどのベンゾイン・エチル、メチル・ベンゾイン、エチルベンゾインなどのアルキル・ベンゾイン、ベンジル・ジメチル・ケタールを含むベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニル・イミダゾールダイマー、2-(o-クロロフェニル))-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾールダイマー、2-(o-フルオロ・フェニル)-4,5-フェニルイミダゾールダイマー、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニル・イミダゾールダイマー、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニル・イミダゾールダイマー、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾールダイマー、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニル・イミダゾールダイマーなどのトリアリール・イミダゾールダイマー、9-フェニル・アクリジン、及び、1,7-ビス(9,9´-アクリジニル)ヘプタン、N-フェニルグリシンアクリジン、トリメチル・ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、2-クロロ、及び、2-エチル-チオ・キサントン(2,2-ジメトキシ-2-フェニル・アセトフェノン)のような2,2-ジ・エトキシ・アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチル・ビニル)フェニル]プロパノン、1-ヒドロキシ・シクロヘキシル-アセトフェノン、及び、2-エチル-ヒドロキノンなどの芳香族ケトン、2,4,6-トリメチル・ベンゾイル・ジフェニル・ホスフィン・オキシドなどのホスフィン・オキシド、及び、これらの組合せを含む。光重合開始剤は、通常、混合物の総重量の約5%から約15%とされる。光重合開始剤の限定的でない例には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノンなどのα-ヒドロキシ・ケトン類が含まれる。他の部類の光重合開始剤としては、αアミノケトン、アシル・ホスフィン、ベンゾフェノン誘導体、チオ・キサントン、及び、アミン共同開始剤が含まれる。光重合開始剤パッケージは、電子ビーム放射線によって硬化される場合には、アクリレートベースのインクに必要とされないであろう。
【0020】
市販の光重合開始剤としては、たとえば、チバ(Ciba)社(スイス拠点)製のもの及びランバーティ(Lamberti)社(イタリア拠点)製のものが利用可能である。
【0021】
カチオン的に硬化されるプライマー組成物には、グリコール・ジビニルエチルのようなビニル・エチル、又は、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)社(ミッドランド)から市販されている、脂環式エポキシドUVR-6105のような脂肪族エポキシを含められる。各種実施形態において、プライマー組成物は、さらに、使用される光重合開始剤パッケージに依存する、コモノマーと共同開始剤との双方として作用しうる、共同開始剤又はアミノ・アクリレートのようなアミンを備えることができる。アミン及びアミノ・アクリレートは、表面硬化を増加させ、かつ、酸素の有害な影響をなくすために包含される。いくつかの実施例では、クリアコート・プライマー組成物を安定させ、かつ、尚早の硬化を阻害させるために、例えば、チバ社のUV10といった実質的に遊離基捕捉剤である安定剤を付加することができる。
【0022】
プライマー組成物には、活性放射線硬化型インク及びコーティングで通常用いられる添加剤を含めることができる。プライマー組成物は、クリアコート・プライマー・コーティングを形成するために、無着色とすることができる。これ代えて、プライマー組成物には、顔料などの少なくとも一つの染料を含めてもよい。使用可能な顔料の例は、限定的ではないが、無機顔料、及び、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、黄土、シエナ土、アンバー、赤鉄鉱、褐鉄鉱、赤色酸化鉄、透明赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、茶色酸化鉄、酸化クロム緑、ストロンチウム・クロム酸塩、亜鉛リン酸塩、フェロシアン化アンモニウム鉄(プルシアンブルー)ウルトラマリンなどの充填材、及び、金属被覆されたアゾ赤、金属被覆されていないアゾレッド、キナクリドンレッド、及び、バイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー、及び、銅フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリリド、及び、ジアリリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリル・オレンジ、ナフトール・オレンジなどの有機色素を含む。
【0023】
プライマー組成物は、様々なタイプの基板上にコーティングを形成するために用いることができ、特に、ラベル印刷に用いることができる。これらは、処理済みの或いは未処理のポリオレフィン・フィルム、ポリ(エチレン・テレフタレート)(PET)などのポリエステルフィルム、及び、ビニル・フィルムを含んでもよい。このコーティングは、さらに、紙ラベルストックに用いることもできる。ラベルストックの例としては、光沢ストック、半光沢ストック、カレンダーストック、及び艶消しストックが含まれる。光沢ストックは、例えば、クレーコートストックでコートされていてもよい。
【0024】
プライマー組成物は、インクジェット式インクの前に、基板に塗布される。インクジェット式インクは、プライマー組成物をプライマー・コーティングの形成のために硬化させた後に、プライマー・コーティング上に印刷される。
【0025】
典型的なインクジェット式インク製剤は、アクリレート、及び、低粘性ビニル素材のモノマーを含む。多官能モノマーは、ポリアクリレートを含むことができる。さらに、インクは、反応性オリゴマーを含むことができる。適切な反応性オリゴマーの例としては、これらに限定されるものではないが、アクリレート化エポキシ・オリゴマ、アクリレート化ポリウレタン・オリゴマ、アクリレート化ポリエステル類、及び、これらの組み合わせなどのエチレンで不飽和二重結合の少なくとも一つを含むオリゴマーである。これらのうち、二以上を含むオリゴマーは好ましい。好適なオリゴマーは、約1.6〜約2.0の平均官能性を有する。それは、さらに、分子量が約300〜約500のオリゴマーを用いることが好ましい。このインクには、約6.0重量%の反応性オリゴマーが含まれているが、約2.0重量%〜約5.0重量%までの反応性オリゴマーが含まれることが好ましく、約2.5重量%〜約4.0重量%までの反応性オリゴマーが含まれることがより好ましい。様々な濃度の低表面張力モノマーを含むクリアコート・プライマー組成物は、基板に堆積され、かつ、硬化される。インクジェット式インクは、印刷され、その後、基板にコーティングされたクリアコート・プライマーの表面が標準条件下で硬化される。
【0026】
さらに、このインクは、1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレートなどのアクリルエネジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノール・ジアクリレート、トリエチレングリコール・ジアクリレートなどのポリ・アルキレン・グリコール・ジ(メセドリン)アクリレート、ネオペンチルグリコールル・ジアクリレートなどのエチル改良モノマー、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、トリメチロールエタン・トリアクリレート、及び、ペンタ・エリトリトール・テトラアクリレート等の高機能モノマーなどの、多官能モノマーを含んでいてもよい。
【0027】
インクジェット式インクの顔料は、インクジェット式インクに適切な、いかなるものも用いることができる。一般に、インクジェット式のインク用の顔料の最大粒子サイズは、印刷中のインクジェットが妨げられることを回避できる程度の大きさである。顔料は、粒子サイズ分布が狭いことが好ましい。列挙可能なものとしては、CI顔料黄色93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185及び193、CI顔料オレンジ34、36、43、61、63及び71、CI顔料赤色122、202、254、及び、CI顔料赤色122及び202の固溶体、CI顔料青色15:3及び15:4、CI顔料バイオレット19、23及び33、CI顔料黒色7がある。インクジェット式のインクは、画像のフルカラー印刷を提供するために、一組で用いることが好ましい。好適な実施例では、シアン色、マゼンタ色、黄色、及び、黒色(CMYK)インクを含む一組のインクが用いられる。たとえば、CI顔料黄色138、151、154、180及び185を黄色インクとして用いることができ、CI顔料赤色122、及び、202、254、並びにCI顔料バイオレッド19をマゼンタインクとして用いることができ、CI顔料青色15をシアン・インクに用いることができ、CI顔料黒色7の酸性顔料又は中間顔料を黒色インクとして用いることができる。
【0028】
インクに含まれている顔料の含有量は、たとえば、どの顔料が用いられるかに依存するであろう。一般に、インクジェット式インクは、約0.5重量%〜約15重量%の顔料を含む。所望のインクの色密度に到達するように、充分な含有量の顔料が含まれている場合であっても、さらにより多くの顔料を含ませると、インクの粘性が増加する傾向にある。適切な顔料としては、これらに限定されるものではないが、たとえば、ロードアイランドのコベントリーにあるクラリアント社、スイス・バーゼルにあるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のものが利用可能である。いくつかの実施例では、他のインクジェット式インク添加剤は、これに限定されるものではないが、ほぼ10%の溶媒を追加してもよい。
【0029】
インクジェット式インクは、硬化されるクリアコート・プライマー・コーティング上に印刷される。インクジェット式インクは、ドロップ・オン・デマンド(drop-on-demand:DOD)インクジェット・プリンタを用いて印刷させてもよい。インクジェット式インクは、印刷ヘッドにおける圧電性結晶を屈曲させることにより、デジタル駆動画像に従って射出されるので、特に、圧電駆動DODヘッド(モジュール)を用いて印刷される。印刷モジュールは、通常、多数のノズルを備え、かつ、プリンタは、位置合わせされたモジュール群から成るであろう。圧電駆動印刷モジュールの例としては、公称80ピコリットルの滴をジェットする、スペクトラ社のSL-128印刷ヘッドがある。
【0030】
好適な実施例では、インクジェット式のインクは、東芝テックのレパード(商品名)などのグレースケール圧電印刷ヘッドを用いて、プライマー・コーティング上に印刷される。この印刷ヘッドは、8離散のグレー濃度を生成することができる。シングルパスのCMYKプリンタで300DPIの印刷を行う場合には、この8離散のグレー濃度は、写真品質に匹敵する品質とすることができる。この高品質に到達するためには、滴サイズの正確な制御が必要である。
【0031】
各種実施形態では、インクジェット式インク及びプライマー組成物は、紫外線及び電子ビーム放射線を含む活性放射線を用いて硬化することができる。いくつかの実施例では、硬化は、一般に公知技術のカチオン硬化系を用いて実現することができる。
【0032】
本発明は、以下の例で更に例示される。

【0033】
様々な濃度の低表面張力モノマー(表面エネルギーが30dyne/cm未満のモノマー)を含むクリアコート・プライマー組成物を、基板に堆積させ、かつ、硬化させる。インクジェット式インクは、標準条件下でジェットされ、硬化され、かつ、ドットサイズが測定される。ベース組成物としては、クリアコート・プライマー組成物サンプルを作成するために、以下のものが準備される。すなわち、
-50%のエトキシル化(3)トリメチロールプロパン・トリアクリレート(サートマー社から入手可能なSR454)、
-40%の1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレート(サートマー社から入手可能なSR238)、
-10%の2-ヒドロキシ-1-2メチル-フェニルプロパノン(チバ社から入手可能なDarocur1173)。
【0034】
比較例A
ベース組成物が、作成され、かつ、PET基板上に塗布される。下記の表に示されているイソデシル・アクリレートの濃度の変化による組成物の発明例1-3は、ベース組成物の30%まで1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレートを置換することによって作成されている。
【0035】
サンプルのクリアコート・プライマー組成物は、ほぼ10ミクロンのコーティング厚を与える6メイヤーロッドによってPETサンプルに堆積される。このサンプルは、100フィート/分で、Hバルブを用いるフュージョン社製のライトハンマー6を用いて硬化される。その後、このサンプルは、ジェトリオン社(ミシガン州イプシランティ)によって生成されたシアン・インク(ジェトリオンEFI)を用いて、グレースケール・ヘッド(東芝テック社のレパード)によって印刷される。紫外線硬化型グレースケール・インクは、60フィート/分で、クリアコート・プライマー・コーティング及びベース組成物コーティングの表面に印刷されて、かつ、0.5秒周期でランプが露光される。紫外線硬化型グレースケール・インクのドットサイズは、光学顕微鏡、及び、ソフトウェアSCION imageを用いて測定することができる。表面エネルギーは、95%〜98%となり、圧倒的に分散している点に留意されたい。
表1
最終インクジェット用インキの組成物の表面エネルギーのモノ・アクリレート、イソデシル・アクリレートの濃度の変化による効果

【0036】
このデータは、クリアコート・プライマー組成物のイソデシル・アクリレートのパーセント濃度を増加させることにより、その結果として、より小さいインクジェット式インクの滴が、クリアコート・プライマコート基板に堆積されることを例証している。さらに、組成物に用いられているイソデシル・アクリレートのパーセントが増加するため、その結果、インクジェット式インクの表面エネルギーの減少が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基が少なくとも8つの炭素原子を有する単官能基アルキル・アクリルレートと、
光重合開始剤と、
アルコキシル化ジアクリレート及びトリアクリレートと、アミノ・アクリレートと、単官能基モノマー及び多機能モノマーと、オリゴマーと、それらの混合物とを備えているアクリレート・モノマーと、
を備えるプライマー組成物を、
プライマー・コーティングを形成している基板上へ塗布し、かつ、
紫外線硬化型のインクジェット用インクを前記プライマー・コーティングの表面に印刷する、
印刷方法。
【請求項2】
前記アクリレートのアルキル基が分岐している、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
アルキル(メセドリン)アクリレートは、イソデシル・アクリレート、イソオクチルアクリレート、3,3,5-トリメチル・シクロヘキシル・アクリレート、及び、それらの混合物からなる一群から選択される、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記プライマー組成物は、無着色である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
(a) (i)アルキル基が少なくとも8つの炭素原子を有していて、表面張力が30dyne/cm(0.03N/m)未満の単官能基アルキル(メセドリン)アクリレートと、(ii)光重合開始剤と、(iii)アルコキシル化ジアクリレート、アルコキシル化トリアクリレート、アミノ・アクリレート、単官能基モノマー及び多機能モノマー、オリゴマー、及び、それらの混合物からなる一群から選択されるモノマーを含むアクリレート・モノマーとを備える、プライマー組成物を基板の少なくとも一部に塗布し、
(b) プライマー・コーティングを形成するために塗布された前記プライマー組成物を硬化させ、かつ、
(c) 前記プライマー・コーティングの表面に放射線硬化型インクジェット用インクを印刷し、
前記単官能基アクリレート(i)の含有量が、塗布された前記放射線硬化型インクジェット用インクの所望のドットサイズを生成するように選択される、
インクジェット式インクのドットサイズの調整方法。
【請求項6】
前記単官能基アルキル・アクリレートは、イソデシル・アクリレート、イソオクチルアクリレート、3,3,5-トリメチル・シクロヘキシル・アクリレート、及び、それらの混合物を備える、請求項5に記載のインクジェット式インクのドットサイズの調整方法。
【請求項7】
更に、グレースケール・インクの滴直径を調整するために、表面張力が30dyne/cm未満の単官能基アルキル・アクリレートの濃度を調整する、請求項5に記載のインクジェット式インクのドットサイズの調整方法。
【請求項8】
前記プライマー組成物は、無着色である、請求項5に記載のインクジェット式インクのドットサイズの調整方法。

【公表番号】特表2010−506748(P2010−506748A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527421(P2009−527421)
【出願日】平成19年9月8日(2007.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/019518
【国際公開番号】WO2008/030555
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(500235870)エレクトロニクス フォー イメージング,インク. (4)
【Fターム(参考)】