説明

放射線硬化型コーティング組成物

【課題】
指紋の拭き取り性及びリコート性に優れた硬化塗膜を得ることができる放射線硬化型コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】
放射線硬化型樹脂(A)と、
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B1)とジイソシアネートとの反応物(B2)と
を含むことを特徴とする放射線硬化型コーティング組成物。

{R-(OX)ni-}mQ (1)

Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OXはオキシアルキレン基、Rはアルキル基、共重合性二重結合含有基基及び/又は水素原子、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OXの総数(Σni×m)は20〜100の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線硬化型コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋の拭き取り性に優れた硬化塗膜を得ることができるものとして、フッ素系界面活性剤含んでなる放射線硬化型樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の放射線硬化型樹脂組成物を用いた硬化塗膜では、硬化体表面へのリコート性が著しく悪く、硬化塗膜上への印刷や多重コーティングができないという問題点がある。すなわち、本発明の目的は、指紋の拭き取り性及びリコート性に優れた硬化塗膜を得ることができる放射線硬化型コーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物の特徴は、放射線硬化型樹脂(A)と、
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B1)とジイソシアネートとの反応物(B2)と
を含む点を要旨とする。

{R-(OX)ni-}mQ (1)
【0006】
Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OXは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、共重合性二重結合含有基及び/又は水素原子を表し、m個のR及びm個の(OX)niは同じでも異なっていてもよく、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OXの総数(Σni×m)は20〜100の整数である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物を用いると、指紋拭き取り性及びリコート性に優れた硬化塗膜を容易に得ることができる。したがって、本発明の放射線硬化型コーティング組成物は、携帯電話やタッチパネル等に用いられる傷つき防止用コーティング剤として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<放射線硬化型樹脂>
放射線硬化型樹脂(A)としては、放射線{電子線、紫外線、可視光線及び赤外線等}の照射を受けた際に、硬化反応を開始する樹脂であれば制限がなく、公知の樹脂{たとえば、特開2005−154609号公報に記載された(メタ)アクリレートや(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー、及び特開2004−149758号公報に記載のエポキシ樹脂等}等が使用できる。
【0009】
放射線硬化型樹脂(A)としては、(メタ)アクリレート(A1)及び/又は(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー(A2)を含むことが好ましい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0010】
(メタ)アクリレート(A1)のうち、(メタ)アクリロイル基を分子中に1〜8個含有する(メタ)アクリレートが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリロイル基を分子中に2〜6個含有する(メタ)アクリレート、特に好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAエチレンオキシド2〜4モル付加物のジ(メタ)アクリレートである。
【0011】
(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー(A2)のうち、イソシアナト基含有ウレタンプレポリマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて製造され得るウレタンアクリレートオリゴマーが好ましく、さらに好ましくはイソシアナト基を2〜5個有するウレタンプレポリマーと(メタ)アクリロイル基を2〜5個有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物、特に好ましくはイソシアナト基を2〜3個有する脂環式ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリロイル基を2〜5個有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物である。
【0012】
(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー(A2)は公知の方法{たとえば特開2003−342525号公報及び特開2006−028499号公報等}等により調製できるが、市場から入手できるものをそのまま用いてもよい。
【0013】
市場から入手できるオリゴマーとしては、アートレジンUN−904、アートレジンUN−903、アートレジンHMP−2、アートレジンUN−3320HA及びアートレジンUN−3320HC{以上、根上工業(株)製};NKオリゴ U−15HA及びNKオリゴ U−9HA{以上、新中村化学(株)製};並びにUA−306I及びUA−306H{以上、共栄社化学(株)製}等が挙げられる。
【0014】
なお、これらの(メタ)アクリレート(A1)及び/又は(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー(A2)は単独で用いてもよいし、また2種類以上を併用してもよい。硬化膜の形成性の観点から、(メタ)アクリレート(A1)と(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー(A2)を組みあわせて用いることが好ましい。
【0015】
<ポリオキシアルキレン化合物(B1)、ポリオキシアルキレン化合物(B1)とジイソシアネートとの反応物(B2)>
非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類としては、蔗糖(サッカロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオース等が含まれる。これらのうち、指紋拭き取り性の観点から、蔗糖、トレハロース、ゲンチアノース、ラフィノース及びプランテオースが好ましく、さらに好ましくはトレハロース及び蔗糖であり、供給性及びコスト等の観点から特に好ましくは蔗糖である。これらは単独で、または混合して用いてもよい。
【0016】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OX)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合等が含まれる。これらのうち、指紋拭き取り性の観点から、オキシプロピレン及びオキシエチレンが好ましく、さらに好ましくはオキシプロピレンである。
【0017】
ni個のOXは、同じでも異なっていてもよく、また、m個の(OX)niは同じでも異なってもよい。OX内に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、これらのオキシアルキレン基の結合順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び含有割合には制限ない。
【0018】
Rのうち、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル及びiso−ブチル等が挙げられる。また、共重合性二重結合含有基としては、(メタ)アクリロイル含有基及び炭素数2〜3のアルケニル基等が含まれる。
【0019】
(メタ)アクリロイル含有基としては、(メタ)アクリロイル基、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシメチルエチル及び(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノカルボニル等が含まれる。
【0020】
アルケニル基としては、ビニル、2−プロペニル及び1−プロペニルが挙げられる。
これらのRのうち、アルキル基及びアルケニルが好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル、iso−プロペニル及び2−プロペニル、特に好ましくはメチル、エチル及び2−プロペニル、最も好ましくはメチル及びエチルである。m個のRは同じでも異なっていてもよい。
【0021】
m個のR中に、アルキル基及び/又は共重合性二重結合含有基を含む場合、すべてのRのうち、水素原子の数は、mが4のとき0〜3が好ましく、さらに好ましくは0〜2,特に好ましくは0又は1であり、mが3のとき、0〜3が好ましく、さらに好ましくは0又は1であり、mが2のとき、0又は1が好ましい。
【0022】
niは、0〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜98の整数、特に好ましくは5〜95の整数、最も好ましくは7〜90の整数である。この範囲であると指紋拭き取り性がさらに良好となる。
【0023】
mは、2〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは3又は4、特に好ましくは3である。この範囲であると指紋拭き取り性がさらに良好となる。このmは、非還元性の二又は三糖類の1級水酸基の数に対応する。
【0024】
iは、1〜mの整数を表し、m個のniは同じ値でも異なった値でもよいが少なくとも1つのniは1以上である。すなわち、たとえば、m=4のとき、niは、n1、n2、n3、n4であることを意味する。
【0025】
OXの総数(Σni×m)は、20〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは25〜95の整数、特に好ましくは30〜90の整数、最も好ましくは35〜85の整数である。この範囲であると指紋拭き取り性がさらに良好となる。
【0026】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)としては、たとえば、国際特許出願パンフレットWO2004/101103(再公表2004−101103号公報)に記載されたもの等が好ましく例示できる。
【0027】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)とジイソシアネートとの反応物(B2)について、ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応により得られるジイソシアネートプレポリマーが含まれる。
【0028】
脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数6〜8のアルキレンジイソシアネート等が用いられ、1,4−ジイソシアナトブタン及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜15のアリレンジイソシアネート等が用いられ、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート及び1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数12〜15のシクロアルキレンジイソシアネート等が用いられ、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加MDI、トランス1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加TDI及び水素添加1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
ジオールとしては、ヒドロキシ基を2個有する化合物であれば制限なく使用でき、炭素数2〜10のジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメチロール等)、及びこれら炭素数2〜10のジオールのアルキレンオキシド(炭素数2〜3)付加物(付加数1〜50)、ジフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物(付加数1〜50)(エチレンオキシド変性ビスフェノールA及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールA等)が用いられる。この他に、ジオールとジカルボン酸から製造され得る末端ヒドロキシ基の直鎖ポリエステルジオール等も使用することもできる。ジカルボン酸としては、カルボキシ基を2個有する化合物であれば制限なく使用でき、炭素数2〜10のジカルボン酸等が用いられ、シュウ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0030】
これらのジイソシアネートのうち、指紋拭き取り性等の観点から、HDI、IPDI、MDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素添加MDI及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応により得られるジイソシアネートプレポリマーが好ましく、さらに好ましくはHDI、IPDI及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応により得られるジイソシアネートプレポリマーである。ジオールのうち、指紋拭き取り性の観点から、炭素数2〜10のジオール、炭素数2〜10のジオールのアルキレンオキシド(炭素数2〜3)付加物(付加数1〜50)が好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜10のジオールである。
【0031】
反応物(B2)について、ジイソシアネートの使用量(モル部)としては、ポリオキシアルキレン化合物(B1)1モル部に対して、0.1〜0.8が好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.75、特に好ましくは0.2〜0.7、最も好ましくは0.25〜0.65である。
【0032】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び反応物(B2)は、公知の方法{国際特許出願パンフレットWO2004/101103(再公表2004−101103号公報)、特開2007−92040号公報、特開平2004−224945号公報等}で容易に得ることができる。
【0033】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又は反応物(B2)の含有量(重量%)は、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて、0.01〜10であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜5、特に好ましくは0.05〜2、最も好ましくは0.1〜1である。この範囲であると、放射線硬化型コーティング組成物としての性能(硬度、密着性及び耐硬化クラック性等)を悪化させることなく、指紋拭き取り性をさらに良好とすることができる。
【0034】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、光学特性や擦り傷防止を向上させる目的で、必要によりさらにフィラー(C)を含有することが好ましい。フィラー(C)としては、無機フィラー(C1)及び有機フィラー(C2)等が含まれる。
【0035】
無機フィラー(C1)としては、シリカ、酸化チタン、タルク、クレー、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、珪藻土シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化ジルコニウム及び水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0036】
有機フィラー(C2)としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド及びポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0037】
これらのフィラーは単独で用いてもよいし、また2種類以上を併用してもよい。これらのフィラー(C)のうち、無機フィラー(C1)が好ましく、さらに好ましくは酸化チタン及びシリカ、特に好ましくはシリカである。
【0038】
フィラー(C)の体積平均粒子径(μm)としては、0.001〜30が好ましく、さらに好ましくは0.01〜20、特に好ましくは0.1〜10である。
なお、体積平均粒子径は、JIS Z8825−1−2001「粒子径解析−レーザー回折法」に準拠した測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、(株)島津製作所製SALD−1100、堀場製作所(株)製LA−920等)で測定される。
【0039】
フィラー(C)を含有する場合、この含有量(重量%)は、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて、1〜100が好ましく、さらに好ましくは3〜50、特に好ましくは5〜30である。
【0040】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、指紋の拭き取り性をさらに向上させる目的で、さらにポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)を含むことが好ましい。ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)としては、分岐型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D1)、末端変性型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D2)及びブロック型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D3)等が含まれる。
【0041】
分岐型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D1)としては、SH3746[HLB=10]、SH8428[HLB=0]、SH3771[HLB=14]、BY16−036[HLB=9]、BY16−027[HLB=7]、SH8400[HLB=8]、SH3749[HLB=7]、SH3748[HLB=5]、SF8410[HLB=6]、L−77[HLB=10]、L−7001[HLB=7]、L−7002[HLB=7]、L−7604[HLB=13]、Y−7006[HLB=7]、FZ−2101[HLB=9]、FZ−2104[HLB=14]、FZ−2105[HLB=11]、FZ−2110[HLB=1]、FZ−2118[HLB=12]、FZ−2120[HLB=6]、FZ−2123[HLB=8]、FZ−2130[HLB=7]、FZ−2161[HLB=18]、FZ−2162[HLB=15]、FZ−2163[HLB=13]、FZ−2164[HLB=8]、FZ−2166[HLB=5]及びFZ−2191[HLB=5]{以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製};KF−351[HLB=12]、KF−352[HLB=7]、KF−353[HLB=10]、KF−354L[HLB=16]、KF−355A[HLB=12]、KF−615A[HLB=10]、KF−945[HLB=4]、KF−618[HLB=11]、KF−6011[HLB=12]及びKF−6015[HLB=4]{以上、信越化学工業(株)製};TSF4440[HLB=12]、TSF4445[HLB=7]、TSF4446[HLB=7]、TSF4452[HLB=7]、TSF4453[HLB=6]及びTSF4460[HLB=1]{以上、東芝シリコーン(株)製};並びにTEGOPREN5000シリーズ[HLB=3〜15]{以上、DEGUSSA社製}等が挙げられる。
【0042】
末端変性型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D2)としては、L−720[HLB=7]及びFZ−2122[HLB=1]{東レダウコーニングシリコーン(株)製}等が挙げられる。
【0043】
ブロック型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D3)としては、SF8427[HLB=10]及びBY16−004[HLB=0]{以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製};KF−6004[HLB=5]{以上、信越化学工業(株)製};FZ−2203[HLB=1]、FZ−2207[HLB=3]及びFZ−2208[HLB=7]{以上、日本ユニカー(株)製};並びにTEGOPREN3000シリーズ[HLB=1〜5]{以上、DEGUSSA社製}等が挙げられる。
【0044】
これらのポリオキシアルキレン変性シリコーンのうち、指紋の拭き取り性の観点等から、分岐型ポリエーテル変性シリコーン(D1)が好ましい。これらのポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)は1種又は2種以上の混合物として用いることができるが、2種以上の混合物として用いる場合、分岐型ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D1)を含むことが好ましい。
【0045】
ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)の親水親油バランス(HLB)は、20以下であることが好ましく、さらに好ましくは15以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは5以下である。これらの範囲であると、指紋拭き取り性がさらに良好となり好ましい。なお、HLBは、新・界面活性剤入門(三洋化成工業(株)刊)の127頁に記載された界面活性剤の有機性と無機性の比から計算する方法で求める事が出来る。
【0046】
ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)を含有する場合、この含有量(重量%)は、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて、0.01〜2が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1、特に好ましくは0.1〜0.5である。
【0047】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、さらに光重合開始剤(E)を含有させることが好ましい。光重合開始剤(E)としては、光ラジカル開始剤(E1)及び光カチオン開始剤(E2)等が含まれる。
【0048】
光ラジカル開始剤(E1)としては、紫外線(波長200〜400nm程度)を受けることによりラジカルを発生する化合物であれば制限なく使用でき、ベンゾイル基含有ラジカル開始剤、モルフォニル基含有ラジカル開始剤、リン原子含有ラジカル開始剤及びイオウ原子含有ラジカル開始剤等が使用できる。
【0049】
ベンゾイル基含有ラジカル開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及びベンゾフェノン等が挙げられる。
【0050】
モルフォニル基含有ラジカル開始剤としては、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等が挙げられる。
【0051】
リン原子含有ラジカル開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
【0052】
イオウ原子含有ラジカル開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサントン及びイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0053】
光カチオン開始剤(E2)としては、紫外線(波長200〜400nm程度)を受けることによりカチオンを発生する化合物であれば制限なく使用でき、ヘキサフルオロリン酸塩及びヘキサフルオロアンチモン塩等が使用できる。
【0054】
ヘキサフルオロリン酸塩としては、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート及び(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0055】
ヘキサフルオロアンチモン酸塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート及びジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0056】
これらの光重合開始剤(E)は単独で用いてもよいし、また2種類以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤(E)のうち、光ラジカル開始剤(E1)が好ましく、さらに好ましくはベンゾイル基含有ラジカル開始剤、モルフォニル基含有ラジカル開始剤及びリン原子含有ラジカル開始剤、特に好ましくはモルフォニル基含有ラジカル開始剤及びリン原子含有ラジカル開始剤である。
【0057】
光重合開始剤(E)を含有する場合、この含有量(重量%)は、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて、1〜15が好ましく、さらに好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜8である。この範囲であると放射線硬化型コーティング組成物の硬化性がさらに良好となる。
【0058】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、紫外線重合開始剤(E)と共に光増感剤(F)を併用してもよい。
光増感剤(F)としては、公知の光増感剤等が使用でき、アルキルアミノ光増感剤(F1)及びジアルキルアミノフェニル光増感剤(F2)等が含まれる。
【0059】
アルキルアミノ光増感剤(F1)としては、モノアルキルアミン(n−ブチルアミン及び2−エチルヘキシルアミン等)、ジアルキルアミン(ジn−ブチルアミン、ジエタノールアミン及びメチルデシルアミン等)、トリアルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン及び2−ジメチルアミノエチル安息香酸等)が挙げられる。
【0060】
ジアルキルアミノフェニル光増感剤(F2)としては、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸2−(n−ブトキシ)エチル及びジメチルアミノ安息香酸イソアシル等が挙げられる。
【0061】
これらの他に、トリn−ブチルホスフィン等のりん化合物も使用できる。これらの光増感剤(F)のうち、トリアルキリアミン及びジアルキルアミノフェニル光増感剤(F2)が好ましく、さらに好ましくはジアルキルアミノフェニル増感剤、特に好ましくは4,4'−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。
【0062】
光増感剤(F)を含有する場合、この含有量(重量%)は、光重合開始剤(E)の重量に基づいて、5〜100が好ましく、さらに好ましくは10〜80、特に好ましくは20〜50である。この範囲であると、放射線硬化型コーティング組成物の硬化性がさらに良好となる。
【0063】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、耐候性を向上させる目的で、紫外線吸収剤(光安定剤を含む)(G)を含有することができる。
紫外線吸収剤(G)としては、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(G1)、ヒンダードアミン紫外線吸収剤(G2)、ベンゾフェノン紫外線吸収剤(G3)、サリチル酸紫外線吸収剤(G4)及びトリアジン紫外線吸収剤(G5)等が含まれる。
【0064】
ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(G1)としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0065】
ヒンダードアミン紫外線吸収剤(G2)としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート及びビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0066】
ベンゾフェノン紫外線吸収剤(G3)としては、2,4−ジヒドロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン及び2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0067】
サリチル酸紫外線吸収剤(G4)としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート及びp−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0068】
トリアジン紫外線吸収剤(G5)としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン及び2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0069】
これらの紫外線吸収剤は単独で用いてもよいし、また2種類以上を併用してもよく、2種以上併用する場合、ヒンダードアミン紫外線吸収剤(G2)とトリアジン紫外線吸収剤(G5)との併用が好ましい。
【0070】
これらの紫外線吸収剤(G)のうち、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(G1)、ヒンダードアミン紫外線吸収剤(G2)及びトリアジン紫外線吸収剤(G5)が好ましく、さらに好ましくはヒンダードアミン紫外線吸収剤(G2)及びトリアジン紫外線吸収剤(G5)である。
【0071】
紫外線吸収剤(G)を含有する場合、この含有量(重量%)は、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜8、特に好ましくは0.5〜5である。
【0072】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、塗工適性を向上させる目的で必要によりさらに溶剤(H)を含有することができる。溶剤(H)としては、アルコール(H1)、ケトン(H2)、エステル(H3)、エーテル(H4)、芳香族炭化水素(H5)、脂環式炭化水素(H6)及び脂肪族炭化水素(H7)等が含まれる。
【0073】
アルコール(H1)としては、炭素数1〜10のアルコール等が使用でき、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0074】
ケトン(H2)としては、炭素数3〜6のケトン等が使用でき、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0075】
エステル(H3)としては、炭素数4〜10のエステル等が使用でき、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0076】
エーテル(H4)としては、炭素数4〜10のエーテル等が使用でき、エチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0077】
芳香族炭化水素(H5)としては、炭素数6〜9の芳香族炭化水素等が使用でき、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びトリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0078】
脂環式炭化水素(H6)としては、炭素数5〜10の脂環式炭化水素等が使用でき、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカン等が挙げられる。
【0079】
脂肪族炭化水素(H7)としては、炭素数5〜10の脂肪族炭化水素等が使用でき、ペンタン、ヘキサン、ペプタン、オクタン、ノナン及びデカン等が挙げられる。
【0080】
以上の他に、石油エーテル及び石油ナフサ等も使用できる。これらの溶剤(H)のうち、アルコール(H1)、ケトン(H2)及びエーテル(H4)が好ましく、さらに好ましくはアルコール(H1)及びケトン(H2)、特に好ましくはアルコール(H1)である。
【0081】
これらの溶剤は単独で用いてもよいし、また2種類以上を併用してもよい。併用する場合はアルコール(H1)とケトン(H2)との併用が好ましい。
【0082】
溶剤(H)を含有する場合、この含有量(重量%)は放射線硬化型コーティング組成物の粘度等によって適宜決定されるが、本発明の放射線硬化型コーティング組成物{溶剤(H)を含む。}の重量に基づいて、20〜95が好ましく、さらに好ましくは40〜90、特に好ましくは50〜85である。
【0083】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物には、さらに添加剤(S){消泡剤、保存安定化剤、着色剤、抗菌剤、増粘剤及び/又は粘弾性調整剤等}を添加し、これらの機能を付与することができる。消泡剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の放射線硬化型コーティング組成物(消泡剤を含む。)の重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2、特に好ましくは0.5〜1である。保存安定化剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて、0.005〜1が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5、特に好ましくは0.03〜0.1である。着色剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の放射線硬化型コーティング組成物(着色剤を含む。)の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。抗菌剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、本発明の放射線硬化型コーティング組成物(抗菌剤を含む。)の重量に基づいて、0.1〜15が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜5である。増粘剤及び/又は粘弾性調整剤を添加する場合、これらの含有量は放射線硬化型コーティング組成物の粘度等によって適宜決定される。
【0084】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物は、放射線硬化型樹脂(A)及びポリオキシアルキレン化合物(B)、並びに必要によりフィラー(C)、ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)、光重合開始剤(E)、光増感剤(F)、紫外線吸収剤(G)、溶剤(H)及び/又は添加剤(S)を均一混合して得ることができる。均一混合は、均一に混合できれば制限なく通常の方法が適用できる。
【0085】
撹拌混合温度(℃)としては均一撹拌混合できれば特に制限はないが、25〜60が好ましく、さらに好ましくは30〜50、特に好ましくは35〜45である。撹拌混合時間(時間)としては均一撹拌混合できれば特に制限はないが、0.5〜4が好ましく、さらに好ましくは0.75〜3、特に好ましくは1〜2である。
【0086】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物は、公知の塗工方法によりコーティングでき、ディップ塗工、スプレー塗工、バーコーター塗工、ロールコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工及びスピンコーター塗工等によりコーティングされる。
【0087】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物をコーテイングする場合、コーティング層の厚さは、2〜100μm程度が好ましい。なお、溶剤(H)を用いた場合は、乾燥後にこの厚さになることが好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
<製造例1>
加熱、攪拌、冷却、滴下、加圧及び減圧の可能な反応容器に、蔗糖{商品名;スクロース、和光純薬工業(株)製、1級}342部(1モル部)及びジメチルホルムアミド(DMF){三菱ガス化学(株)製}1000部を均一混合した後、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作(加圧窒素置換)を3回繰り返した。その後、攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にてプロピレンオキシド(PO)4350部(75モル部)を4時間かけて滴下した後、同温度にて30分間攪拌を続けて残存するEOを反応させた。次いで120℃まで加熱し、同温度に保持しながら0.01〜0.1MPaの減圧下にてDMFを留去し、次いで90℃に冷却し、イオン交換水20部を加えた後、キョーワード700{協和化学工業(株)製合成無機吸着剤、「キョワード」は同社の登録商標である。}100部を加え、同温度にて1時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してキョーワード700を取り除き、さらに0.01〜0.02MPaの減圧下120℃にて1時間脱水して、ポリオキシアルキレン化合物(b11)(蔗糖/PO75モル)を得た。
【0089】
<製造例2>
「プロピレンオキシド(PO)4350部(75モル部)」を「エチレンオキシド(EO)2640部(60モル部)」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(b12)(蔗糖/EO60モル)を得た。
【0090】
<製造例3>
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、ポリオキシアルキレン化合物(b2)298部(0.1モル部)、アクリル酸{試薬特級、和光純薬工業(株)製}8.6部(0.12モル部)、ハイドロキノン{試薬特級、和光純薬工業(株)製}0.1部及びナフテン酸コバルト{試薬特級、和光純薬工業(株)製}0.05部を仕込み、反応液中に窒素を流しながら80℃にて1時間、次いで100℃にて2時間さらに120℃にて3時間攪拌したところ還流管に水の留出が見られなくなった。還流管、窒素導入管を取り外し、減圧下、80℃にて1時間脱水して、ポリオキシアルキレン化合物(b13)(蔗糖/EO60モル/アクリル酸1モル)を得た。
【0091】
<製造例4>
加熱、冷却、攪拌及び密閉が可能な耐圧反応容器に、製造例1で得たポリオキシアルキレン化合物(b11)469部(0.1モル)を仕込み、1.3〜2.7Paの減圧下100℃にて1時間脱水した。ついで50℃まで冷却後HDI{三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネート700}12部(0.07モル)を加え、製造例1と同様の方法で窒素置換を3回繰り返した。その後、攪拌しつつ1時間で120℃まで昇温し、同温度にて12時間攪拌を続けた後にイソシアナト基の消失を確認して、反応物(b21)を得た。
【0092】
<製造例5>
加熱、冷却、攪拌及び密閉が可能な耐圧反応容器に、製造例2で得たポリオキシアルキレン化合物(b12)298部(0.1モル)を仕込み、1.3〜2.7Paの減圧下100℃にて1時間脱水した。ついで50℃まで冷却後IPDI{住友バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールI}11部(0.05モル)を加え、製造例1と同様の方法で窒素置換を3回繰り返した。その後、攪拌しつつ1時間で120℃まで昇温し、同温度にて13時間攪拌を続けた後にイソシアナト基の消失を確認し、反応物(b22)を得た。
【0093】
<製造例6>
加熱、冷却、攪拌及び密閉が可能な耐圧反応容器に、テトラエチレングリコール0.1モル(19部)、HDI 0.2モル(34部)を仕込み、製造例1と同様の方法で窒素置換を3回繰り返した。その後、攪拌しつつ1時間で110℃まで昇温し、同温度で5時間攪拌を続けた後、製造例1で得たポリオキシアルキレン化合物(b11)563部(0.12モル)を仕込み、同温度でさらに5時間攪拌を続けた後、イソシアナト基の消失を確認し、反応物(b23)を得た。
【0094】
<実施例1>
攪拌羽及びモーター付ステンレス製配合槽に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート{共栄社化学(株)製、ライトアクリレートDPE−6A}20部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(a2){共栄社化学(株)製、ライトアクリレートDCP−A}5部及びウレタンアクリレートオリゴマー(a3){根上工業(株)製、UN−3320HA}13部を仕込み、40℃で1時間攪拌混合して、放射線硬化型樹脂(aa1)を得た。
【0095】
引き続き、同じ装置で、放射線硬化型樹脂(aa1)38部、製造例1で調製したポリオキシアルキレン化合物(b11)0.1部、光重合開始剤(e2){チバスペシャルティケミカルズ(株)製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)}2部及び溶剤(h1){プロピレングリコールモノメチルエーテル}60部を、40℃で1時間攪拌混合して、本発明の放射線硬化型コーティング組成物(1)を得た。
【0096】
<実施例2〜22>
「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a1)20部」、「トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(a2)5部」及び「ウレタンアクリレートオリゴマー(a3)13部」を、表1又は2に示した放射線硬化型樹脂の組成及び配合量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、放射線硬化型樹脂(aa2)〜(aa22)を得た。
【0097】
引き続き、「放射線硬化型樹脂(aa1)38部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)0.1部」、「光重合開始剤(e2)2部」及び「溶剤(h1)60部」を、表1又は2に示した組成及び量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の放射線硬化型コーティング組成物(2)〜(22)を得た。
【0098】
【表1】



【0099】
【表2】



【0100】
a1:共栄社化学(株)製ライトアクリレートDPE−6A(ジペンタエリストールヘキサアクリレート)
a2:共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)
a3:根上工業(株)製UN−3320HA(ウレタンアクリレートオリゴマー)
a4:ダイセル化学工業(株)製セロキサイドEHPEL3150CE(脂環式エポキシ樹脂)、「セロキサイド」は同社の登録商標である。
【0101】
b11:製造例1で調製したポリオキシアルキレン化合物(b1)
b12:製造例2で調製したポリオキシアルキレン化合物(b2)
b13:製造例3で調製したポリオキシアルキレン化合物(b3)
b21:製造例4で調製した反応物(b21)
b22:製造例5で調製した反応物(b22)
b23:製造例6で調製した反応物(b22)
【0102】
c1:アドマファイン社製SO−C3(体積平均粒子径1.0μmのシリカ)
c2:綜研化学(株)製MR−10HG(体積平均粒子径10μmのアクリルフィラー)
【0103】
d1:東レダウコーニングシリコーン(株)製FZ−2110(分岐型ポリエーテル変性シリコーン[HLB=1])
d2:東レダウコーニングシリコーン(株)製L−720(末端変性型ポリエーテル変性シリコーン[HLB=7])
【0104】
e1:チバスペシャルティケミカルズ(株)製イルガキュア907(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
e2:チバスペシャルティケミカルズ(株)製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
e3:サンアプロ(株)製CPI−200K(トリアリールスルフォニウム塩)
【0105】
h1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
h2:メチルエチルケトン
【0106】
<比較例1〜16>
ポリオキシアルキレン化合物(B)を用いないこと以外、実施例1〜16と同様にして、比較用の放射線硬化型コーティング組成物(H1)〜(H16)を得た。
【0107】
<比較例17>
攪拌羽及びモーター付ステンレス製配合槽に、ペンタエリスリトールトリアクリレート{共栄社化学(株)製、ライトアクリレートPE−3A}40部、シリカ{日産化学(株)オルガノシリカゾルMEK−ST−L、体積平均粒子径50nm、30重量%のメチルエチルケトン分散液}88.7部、光重合開始剤(e2){チバスペシャルティケミカルズ(株)製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)}3.3部、フッ素系界面活性剤{パーフルオロオクチルエチルアクリレートとヘキサプロピレングリコールモノメタクリレートの共重合ポリマー(ポリスチレン換算重量平均分子量40000)}0.33部を仕込み、40℃で1時間攪拌混合して、比較用の放射線硬化型コーティング組成物(H17)を得た。
【0108】
実施例及び比較例で得た放射線硬化型コーティング組成物について、以下のようにして、指紋拭き取り性及びリコート性について評価し、これらの評価結果を表3に示した。
<評価用試料の調整>
易接着処理ポリエステルフィルム{東洋紡(株)製、品番A4100、厚み188μm}を30cm(縦)×15cm(横)角に切り出し、表面の保護フィルムを剥がし、塗工面をイソプロピルアルコールで拭き取り乾燥して被塗工フィルムを用意した。次いで、JIS K5101−4(2004)「顔料試験方法−第4部:隠蔽力−隠蔽率試験紙法−4(d)バーコーター」と同等のバーコーター(No.6:ステンレス綱径0.15mm)を用いて、放射線硬化型コーティング組成物を被塗工フィルムに、縦方向にバーコーターを移動させて塗工して塗装フィルムを得た。引き続き、塗工面が縦方向に垂直になるようにして塗工フィルムを吊るして、22℃で1分間で放置し、さらに80℃の乾燥機内で3分間放置した後、塗工面に紫外線(高圧水銀灯,500mJ/cm)を、塗工面に対して垂直に照射することによって放射線硬化型コーティング組成物を硬化して、評価用試料を調製した。
【0109】
<指紋拭き取り性>
各評価用試料(各5枚)の塗工面に、無作為に5人の試験者の親指を押しつけて塗工面に指紋を付着させた後(1人/1枚)、付着した指紋を日本薬局タイプIの脱脂綿を用い、(株)井元製作所製ラビングテスターで500g/cmの荷重をかけて拭き取り、指紋の跡が見えなくなるまでの拭き取り、その回数を測定し、合計値を表3に示した(拭き取り回数の合計値が150以上の場合は×を表示した。)。
【0110】
<リコート性>
ゼブラ(株)製ハイマッキー(油性マーカー、6mm巾、4色;黒、赤、青及び黄色)を用いて、評価用試料の塗工面に直線を5cmの長さ、約1.5cm間隔で各色4本づつ引き、各4色の直線それぞれについて、次の基準に従い評価し、これらの合計点数をリコート性とした。リコート性の最大値は16点であり、合計点数が少ないほどリコート性に優れる。リコート性が2点以下であると実用性において問題のないが、3点以上であると、実用性に乏しいと判断できる。
【0111】
はじきがない場合、0点
1〜2ヶ所にはじきを確認できた場合、1点
3ヶ所以上にはじき又は線の端の一部欠けていた場合、2点
線の端が全て欠けていた場合、3点
線として残っていない場合、4点
【0112】
【表3】



【0113】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物(実施例1〜22)は、比較例の放射線硬化型コーティング組成物に比較して、指紋拭き取り性に優れており、リコート性についても実用的に全く問題がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の放射線硬化型コーティング組成物は、木材、石、ガラス、コンクリート、金属、プラスチック及び金属蒸着プラスチック等のコーティング剤又は接着剤等として使用することができる。さらに、3次元造形用放射線硬化型コーティング組成物として成型体にすることもできる。これらのうち、プラスチック及び金属蒸着プラスチック等のコーティング剤又は接着剤等として好適であり、特にプラスチックのコーティング剤として好適である。プラスチックのコーティング剤のうち、指紋の拭き取り性に優れたプラスチック成型体用コーティング剤として最適である。
【0115】
プラスチックとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−メタクリル樹脂、トリアセチルセルロース、、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリサルホン及びポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及びスチレン−メタクリル樹脂等の透明性の高いプラスチックに好適である。
【0116】
プラスッチック成型体としては、家電製品用成型体、車両用成型体及び建築材料用成型体等が含まれる。家電製品用成型体としては、テレビ、オーディオ又は携帯電話の外装材及び液晶等の保護板等が挙げられる。車両用成型体としては、ヘッドランプレンズ、ウインカーレンズ、サンルーフ、メーターカバー、バイクの風防及びヘルメットシールド等が挙げられる。建築材料用成型体としては、高速道路防音壁、間仕切り板及び採光窓等が挙げられる。これらの他に、額縁用プラスチック板、展示用パネル、光学レンズ、プラスチック容器及び装飾品等にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化型樹脂(A)と、
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B1)とジイソシアネートとの反応物(B2)と
を含むことを特徴とする放射線硬化型コーティング組成物。

{R-(OX)ni-}mQ (1)

Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OXは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、共重合性二重結合含有基及び/又は水素原子を表し、m個のR及びm個の(OX)niは同じでも異なっていてもよく、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OXの総数(Σni×m)は20〜100の整数である。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又は反応物(B2)の含有量が、放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて0.01〜10重量%である請求項1に記載の放射線硬化型コーティング組成物。
【請求項3】
放射線硬化型樹脂(A)として(メタ)アクリレート(A1)及び/又は(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー(A2)を含む請求項1又は2に記載の放射線硬化型コーティング組成物。
【請求項4】
さらにフィラー(C)を含み、フィラー(C)の含有量が放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて1〜100重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の放射線硬化型コーティング組成物。
【請求項5】
さらにポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)を含み、ポリオキシアルキレン変性シリコーン(D)の含有量が放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて0.01〜2重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の放射線硬化型コーティング組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤(E)を含み、光重合開始剤(E)の含有量が放射線硬化型樹脂(A)の重量に基づいて1〜15重量%である請求項1〜5のいずれかに記載の放射線硬化型コーティング組成物。
【請求項7】
指紋付着防汚性コーティング層を形成するための請求項1〜6のいずれかに記載の放射線硬化型コーティング組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の放射線硬化型コーティング組成物をコーティングしてなるプラスチック成型体。

【公開番号】特開2009−215537(P2009−215537A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22712(P2009−22712)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】