説明

放射線硬化性シリコーン組成物

【課題】光増感剤を含有しても速硬化が可能である放射線硬化性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(A)式(1)のエポキシ基を含有するカチオン重合性オルガノポリシロキサン:100質量部、
1m2nSiO(4-m-n)/2 (1)
(R1は非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R2はエポキシ基を含有する1価の有機基、m>0、n>0で、0<m+n≦3。)
(B)前記(A)の放射線硬化反応に触媒作用を示す光酸発生剤:0.05〜20質量部、
(C)式(2)の光増感作用を有するアントラセン化合物:0.001〜10質量部


(R3、R4は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基で、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。)
を主成分としてなる放射線硬化性シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性シリコーン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン組成物を硬化させる方法は様々な手段があり、有機金属化合物による縮合反応、有機過酸化物を用いた加硫、白金族金属触媒によるヒドロシリル化反応などが知られている。しかし、上記の硬化方式では加熱を必要とするため、エネルギー効率が悪く、生産性向上や近年の地球温暖化による省エネルギー化傾向により、更にエネルギー効率のよい硬化方式が求められている。そこで、近年加熱を行なわない硬化方法として、放射線による硬化方式が着目されている。その中でも放射線を照射することにより酸を発生する化合物(光酸発生剤)を用い、エポキシ基の開環を行なうカチオン重合を用いた硬化方式は、従来のアクリル基等を用いるラジカル重合に比べ、酸素による硬化阻害を受けず、利便性、操作性に優れているため使用用途が拡大している(特許文献1,2:特許第3384268号公報、特許第3993533号公報)。
【0003】
このカチオン重合における光酸発生剤としては様々なものが提案されているが、主な化合物として分子内に電荷を持つ双性イオンが利用されている(特許文献3,4:特公平02−038602号公報、特許第2557782号公報)。光酸発生剤は放射線を吸収し、励起状態へと遷移し、その後分解反応が進行し、その過程で酸が発生することが知られている。このとき光酸発生剤の光吸収帯は200〜300nmに極大ピークが存在するが、通常放射線硬化性シリコーン組成物を硬化させる場合、一般的な光源である高圧水銀灯、メタルハライド光源等では300〜400nmが最も照射強度が強いため、上記の光源では効率良く光酸発生剤を活性化できていないのが現状である。そこで300〜400nmの波長光を光酸発生剤の活性化に利用する目的で、光増感剤を添加する方法が知られている。同様に放射線硬化性シリコーン組成物にも光増感剤を添加すると、硬化反応は促進されるが(特許文献5:特開2009−013317号公報)、光増感剤を含有しない放射線硬化性シリコーン組成物と比較して実用性が見出せるような速硬化が実現できていない状況があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3384268号公報
【特許文献2】特許第3993533号公報
【特許文献3】特公平02−038602号公報
【特許文献4】特許第2557782号公報
【特許文献5】特開2009−013317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、光増感剤を含有しても速硬化が可能である放射線硬化性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、放射線硬化可能なカチオン重合性シリコーン組成物に、硬化触媒として光酸発生剤、及び光増感剤として式(2)で示されるオルガノオキシ基置換のアントラセン化合物、特に置換基が炭素数1〜10のアルコキシ基であるアントラセン化合物を用いると、従来の光増感剤を用いた場合と比較して、光増感作用が優れているため、速硬化が可能であることを知見した。
更に、上記放射線硬化性シリコーン組成物は、放射線照射量が少ない場合でも容易に硬化し、工業的にも実用性のあるシリコーン硬化物の形成が可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記の放射線硬化性シリコーン組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)下記平均組成式(1)で示されるエポキシ基を含有するカチオン重合性オルガノポリシロキサン:100質量部、
1m2nSiO(4-m-n)/2 (1)
(R1は非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R2はエポキシ基を含有する1価の有機基である。またm>0、n>0であり、更に0<m+n≦3である。)
(B)前記カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A)の放射線硬化反応に触媒作用を示す光酸発生剤:0.05〜20質量部、
(C)下記一般式(2)で示される光増感作用を有するアントラセン化合物:0.001〜10質量部
【化1】

(R3は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、R4は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。)
を主成分としてなる放射線硬化性シリコーン組成物。
〔請求項2〕
(C)成分中のR3、R4が非置換又は置換の炭素数1〜10のアルキル基である請求項1記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
〔請求項3〕
(A)成分中の全有機基(R1とR2の合計)の1〜35モル%が1価のエポキシ官能性有機基であることを特徴とする請求項1又は2記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
〔請求項4〕
(B)成分が、ジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩である請求項1、2又は3記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
〔請求項5〕
波長300〜400nm領域の放射線照射光源による硬化性であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
〔請求項6〕
剥離紙用である請求項1〜5のいずれか1項記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
【発明の効果】
【0008】
光増感剤としてオルガノオキシ基置換のアントラセン化合物を用いた本発明の放射線硬化性シリコーン組成物は、放射線照射量が少ない場合でも容易に硬化し、工業的にも実用性のあるシリコーン硬化物の形成が可能である。また、本発明に用いるアントラセン化合物は、従来の光増感剤と比較して、光増感作用が優れているため、本発明の放射線硬化性シリコーン組成物は従来にはない速硬化が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の放射線硬化性シリコーン組成物は、(A)、(B)、(C)成分から構成されるが、以下個々の成分に関して詳しく説明する。
【0010】
本発明の放射線硬化性シリコーン組成物中の(A)成分は、カチオン重合性オルガノポリシロキサンであり、下記平均組成式(1)で示される。
1m2nSiO(4-m-n)/2 (1)
(R1は非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R2はエポキシ基を含有する1価の有機基である。またm>0、n>0で、0<m+n≦3である。)
【0011】
上記式中、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子などで置換したヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などから選択される非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、R1の80モル%以上がアルキル基であることが望ましく、更にメチル基であることが好ましい。
【0012】
2はエポキシ基を含有する1価の有機基であり、R2のカチオン重合性エポキシ官能基としては、下記構造のものが好ましい。
【化2】

【0013】
硬化性の面から全有機基(即ち、R1とR2の合計)の1〜35モル%が1価のエポキシ官能性有機基(即ち、R2)であるようなカチオン重合性オルガノポリシロキサンが好ましく、より好ましくは全有機基の1〜25モル%が1価のエポキシ官能性有機基であるようなカチオン重合性オルガノポリシロキサンである。このエポキシ官能性有機基量が1モル%未満であると硬化速度が遅くなり硬化不良となる場合があり、35モル%を超える量ではエポキシ基の含有量が多くなり、目立った速硬化性が確認できないおそれがある。
【0014】
上記オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、100万mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10万mPa・s以下である。100万mPa・sより大きくなると組成物の粘度が高くなり、取り扱いが難しくなるおそれがある。なお、上記粘度は回転粘度計を用いて測定した値である。
【0015】
また、このカチオン重合性オルガノポリシロキサン(A)の配合量としては、100質量部を基準にして、他の成分の配合比を調整する。
【0016】
本発明の放射線硬化性シリコーン組成物の(B)成分は、前記カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A)の放射線硬化反応に触媒作用を示す光酸発生剤であり、該光酸発生剤としては、例えば、下記一般式:
52+-、R53+-、R53Se+-、R54+-、又はR54+-
(式中、R5はフェニル基、トリル基、4−(エチル)フェニル基等のアリール基、ピリジル基、N−メチルピリジル基、インドリル基等の複素環基、メトキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基等のアリールオキシ基、4−メトキシピリジル基等の複素環オキシ基であり、R5は互いに結合して環構造を形成していてもよく、X-はSbF6-、AsF6-、PF6-、BF4-、HSO4-、ClO4-などの陰イオンである。)
で示されるジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩などが挙げられる。中でも、硬化反応性の点で、ジアリールヨードニウム、トリアリールスルホニウムの六フッ化アンチモン酸塩が好ましい。
【0017】
(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.05〜20質量部であり、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部である。(B)成分の添加量が少なすぎると硬化が進行しなくなり、多すぎると添加効果による硬化性の促進が期待できない。
【0018】
本発明の放射線硬化性シリコーン組成物の(C)成分は、光増感剤であり、下記一般式(2)で示されるアントラセン化合物である。
【化3】

(R3は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、R4は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
上記式中、R3はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基などアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子などで置換したヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などから選択される非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10の1価炭化水素基である。また、R4はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基などアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子などで置換したヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などから選択される非置換又は置換の炭素数1〜20、特に1〜10の1価炭化水素基である。光増感性、上記カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A)への溶解性の面から、R3、R4は炭素数1〜20のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0020】
(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.001〜10質量部であり、好ましくは0.005〜5質量部である。0.001質量部未満では硬化性が改善されず、10質量部より多く添加しても添加量増加による硬化性の向上はあまり期待できない。
【0021】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、上記成分の所定量を配合することによって得られるが、上記の各成分以外に、任意成分として、顔料、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、溶剤、非反応性の樹脂及びラジカル重合性化合物などの添加剤を使用することができる。任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0022】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、放射線エネルギー線を照射することにより硬化することができる。放射線エネルギー線としては、(B)成分である光酸発生剤の分解を誘発するエネルギーを有する限り、いかなるものでもよいが、好ましくは高圧又は超高圧の水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光灯、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザなどから得られる紫外〜可視光領域(約100〜約800nm)のエネルギー線が用いられる。好ましくは200〜400nm、更に好ましくは300〜400nmに光強度が強い放射線光源、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましい。更に電子線、X線などの高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。
【0023】
放射線エネルギー線の照射時間は、通常は常温で0.1秒〜10秒程度で十分であるが、エネルギー線の透過性が低い場合や硬化性シリコーン組成物の膜厚が厚い場合には、それ以上の時間をかけるのが好ましいことがある。必要であればエネルギー線の照射後、室温〜150℃で数秒〜数時間加熱し、アフターキュアーすることも可能である。
【0024】
本発明の硬化性シリコーン組成物の具体的な用途としては、塗料、コーティング剤、インキ、ポジ型レジスト、レジストフィルム、液状レジスト、感光性材料、接着剤、剥離紙、成形材料、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光造形用材料などが挙げられるが、特に剥離紙用途のようなシリコーン塗工量が2g/m2以下、特に0.05〜2g/m2である薄膜コーティングでは、従来の放射線硬化性シリコーン組成物と比較して、速硬化が可能である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、下記例において、表中の物性は、下記の試験法により測定されたものである。また、構造式中のEpは下記のエポキシ官能基を示す。
【化4】

【0026】
[放射線硬化性シリコーン組成物の硬化性]
放射線硬化性シリコーン組成物を、ポリエチレンラミネート上質紙にロール塗布により約0.7g/m2の塗布量となるように塗布し、80W/cmの高圧水銀灯を2灯用い、15mJ/cm2の照射量の紫外線を照射し、硬化皮膜を形成させた。得られた硬化皮膜の硬化性を指触により評価した。○は組成物全体が硬化した場合を、△は組成物全体が硬化途中である場合を、×は組成物全体が未硬化の場合を示す。
【0027】
[剥離力測定]
放射線硬化性シリコーン組成物を、ポリエチレンラミネート上質紙にロール塗布により約0.7g/m2の塗布量となるように塗布し、80W/cmの高圧水銀灯を2灯用い、15mJ/cm2の照射量の紫外線を照射し、硬化皮膜を形成させた。その硬化皮膜表面に、幅2.5cmのTesa−7475テープ(商品名、テサテープ製のアクリル系粘着剤テープ)を貼り付け、2kgのローラーを一往復させて圧着し、得られた積層体のポリエチレンラミネート上質紙をTesa−7475テープの幅に合わせて裁断し、幅2.5cmのストリップ状の剥離力測定用のサンプルを作製した。このサンプルを20g/cm2の加重をかけたまま70℃で20〜24時間エージングさせた。その後、Tesa−7475テープを硬化皮膜から手で少し剥がし、各々の端部を、引っ張り試験機を用いて180゜の角度で剥離速度0.3m/分で引っ張り、硬化皮膜からTesa−7475テープを剥離するのに要する力(g/25mm)を測定した。
【0028】
[実施例1]
本発明の(A)成分に該当し、下記平均組成式(a)
【化5】

で示され、全有機基の6.5モル%が1価のエポキシ官能性有機基であり、25℃における粘度が90mPa・sであるカチオン重合性オルガノポリシロキサン(a)100質量部に、本発明の(B)成分に該当する光酸発生剤である、ビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及び本発明の(C)成分に該当する9,10−ジブトキシアントラセン(f):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物1を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物1を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。またこの放射線硬化性シリコーン組成物1の硬化皮膜の剥離力を上記の評価方法で測定し、結果を表1に示した。
【0029】
[実施例2]
本発明の(A)成分に該当し、下記平均組成式(b),(c)
【化6】

で示されるカチオン重合性オルガノポリシロキサンの混合物で、全有機基の3.7モル%が1価のエポキシ官能性有機基であり、25℃における粘度が150mPa・sであるオルガノポリシロキサン(d)100質量部に、本発明の(B)成分に該当する光酸発生剤である、ビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及び本発明の(C)成分に該当する9,10−ジブトキシアントラセン(f):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物2を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物2を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。またこの放射線硬化性シリコーン組成物2の硬化皮膜の剥離力を上記の評価方法で測定し、結果を表1に示した。
【0030】
[実施例3]
実施例1のオルガノポリシロキサン(a)100質量部に、本発明の(B)成分に該当する光酸発生剤である、ビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及び本発明の(C)成分に該当する9,10−ビス(2−エチルヘキソキシ)アントラセン(g):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物3を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物3を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。またこの放射線硬化性シリコーン組成物3の硬化皮膜の剥離力を上記の評価方法で測定し、結果を表1に示した。
【0031】
[実施例4]
実施例2のオルガノポリシロキサン(d)100質量部に、本発明の(B)成分に該当する光酸発生剤である、ビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及び本発明の(C)成分に該当する9,10−ビス(2−エチルヘキソキシ)アントラセン(g):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物4を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物4を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。またこの放射線硬化性シリコーン組成物4の硬化皮膜の剥離力を上記の評価方法で測定し、結果を表1に示した。
【0032】
[比較例1]
実施例1のオルガノポリシロキサン(a)100質量部に、光酸発生剤であるビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e)0.5質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物5を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物5を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。
【0033】
[比較例2]
実施例2のオルガノポリシロキサン(d)100質量部に、光酸発生剤であるビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e)0.5質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物6を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物6を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。
【0034】
[比較例3]
実施例1のオルガノポリシロキサン(a)100質量部に、光酸発生剤であるビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及びフェノチアジン(h):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物7を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物7を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。
【0035】
[比較例4]
実施例2のオルガノポリシロキサン(d)100質量部に、光酸発生剤であるビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及びフェノチアジン(h):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物8を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物8を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。
【0036】
[比較例5]
実施例1のオルガノポリシロキサン(a)100質量部に、光酸発生剤であるビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及びチオキサンテン−9−オン(i):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物9を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物9を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。
【0037】
[比較例6]
実施例2のオルガノポリシロキサン(d)100質量部に、光酸発生剤であるビス[4−アルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(e):50質量%、及びチオキサンテン−9−オン(i):7.6質量%が溶解されたトルエン溶液1.0質量部を均一混合し、放射線硬化性シリコーン組成物10を得た。この放射線硬化性シリコーン組成物10を、前記の方法にて硬化させ、指触により硬化性を確認し、結果を表1に示した。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)で示されるエポキシ基を含有するカチオン重合性オルガノポリシロキサン:100質量部、
1m2nSiO(4-m-n)/2 (1)
(R1は非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R2はエポキシ基を含有する1価の有機基である。またm>0、n>0であり、更に0<m+n≦3である。)
(B)前記カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A)の放射線硬化反応に触媒作用を示す光酸発生剤:0.05〜20質量部、
(C)下記一般式(2)で示される光増感作用を有するアントラセン化合物:0.001〜10質量部
【化1】

(R3は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、R4は非置換又は置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。)
を主成分としてなる放射線硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(C)成分中のR3、R4が非置換又は置換の炭素数1〜10のアルキル基である請求項1記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(A)成分中の全有機基(R1とR2の合計)の1〜35モル%が1価のエポキシ官能性有機基であることを特徴とする請求項1又は2記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(B)成分が、ジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩である請求項1、2又は3記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
波長300〜400nm領域の放射線照射光源による硬化性であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の放射線硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
剥離紙用である請求項1〜5のいずれか1項記載の放射線硬化性シリコーン組成物。

【公開番号】特開2011−184506(P2011−184506A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48972(P2010−48972)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】