説明

放射線硬化性ポリウレタンで少なくとも部分的に被覆された顔料、その生産と利用

放射線硬化性ポリウレタンで少なくとも部分的に被覆された顔料、その生産と利用
少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された顔料(B)からなり、その少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)が
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物との反応により得られたことを特徴とする水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された顔料(B)に関する。ただし、その少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)は、
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合とを有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物との反応により得られる。
【背景技術】
【0002】
本発明はまた、少なくとも一種の顔料(B)と少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を分散することにより得られる少なくとも部分的に被覆された顔料に関し、
その放射線硬化性ポリウレタン(A)は、
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物との反応により得られる。
【0003】
本発明はさらに、本発明の少なくとも部分的に被覆された顔料及び本発明の水性分散液の生産に関し、またこれらの用途にも関する。
【0004】
顔料を処理して例えば記録用の流体、特にインクを得る場合、顔料を液体、特に水性の液体に分散することがしばしば必要となる。この点で、インクジェット方式(例えば、サーマルインクジェット、ピエゾインクジェット、コンティニュアスインクジェット、バルブジェット、転写印刷方式)で使用されるインクには、特に厳格な要求事項が課せられることとなる。これらの液体は、印刷に適した粘性や表面張力を持たねばならないし、保管中に安定である、つまり凝固や凝集を起こしてはならないし、プリンターノズルの閉塞を起こしてはならない。特にこれは、分散状、即ち非溶解状の色素粒子を含むインクの場合に問題となる。保存安定性からは、これらの記録流体、及び特に色素粒子が分散しているインクが、沈降してはならない。また、連続式のインクジェットの場合、インクは導電性塩の添加に対して安定である必要があり、またイオン含量の増加により凝集する傾向を示してはならない。また、得られた印刷物は、色に関する要求事項を満たす、つまり光沢や色の深みの条件を満たし、優れた堅牢性、例えば必要なら定着などの後処理や乾燥の後のおいても、乾燥摩擦堅牢度、耐光堅ろう度、水堅牢度や湿潤摩擦堅牢度に優れている必要がある。
【0005】
特に好ましい堅牢性、例えば乾燥摩擦堅牢度や湿潤摩擦堅牢度、洗濯堅牢度を被印刷物に与えるには、印刷物がいわゆる照射硬化により定着できることが望ましい。いわゆる放射線硬化インクを、この目的に用いてもよい(例えば、US5,623,001及びEP0993495を参照)。放射線硬化インクジェットインクは、化学線照射への暴露により硬化する材料を通常含んでいる。また、放射線硬化インクジェットインクが光開始剤を含んでいる場合もある。
【0006】
しかし、場合によっては照射硬化の程度が被印刷物全面にわたり均一ではない、という問題がある。ある場所では硬化がよく進むが、他の場所、つまり軟スポットとよばれる場所では硬化が遅い。不均一な硬化は、いくつかの領域の摩擦堅牢度を低下させる。また、被印刷物の手触りが低下し、これは、特に布製の被印刷物の場合に特に好ましくない。このため、均一な硬化を可能とするインクジェット方式のインクが特に求められている。
【0007】
放射線硬化性のジ−及びポリウレタンは公知である(例えば、EP−B1144476、及びEP1118627)。上記参考文献に記載の放射線硬化性ポリウレタンは、家具や自動車の塗装に使用可能である。これらの性能特性の改良がさらに必要な分野がまだまだ数多くある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は顔料の水性分散液を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、化学線照射の作用で特に容易に硬化するインクジェット方式用のインクを提供することである。本発明のさらに他の目的は、インクジェット方式のインクの製造方法を提供することである。本発明の最後の目的は、特に好ましい手触り及び堅牢度を持つ被印刷物、及び特に布製の被印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は、冒頭に定義した水性分散液により本目的が達成されることを見出した。
【0010】
本発明において、「インクジェット方式のインク」と「インクジェットインク」は同一である。
【0011】
本発明の目的において、ポリウレタンとは、単にウレタン基のみにもっぱら結合しポリマーだけでなく、より広い意味でジ−又はポリ−イソシアネートと活性水素を持つ化合物とを反応させて得たポリマーを示すと解すべきである。したがって本発明のポリウレタンは、尿素、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、アミド、エステル、エーテル、ウレトンイミン、ウレチジオン、イソシアヌレート又はオキサゾリジン基、及びウレタン基を含んでいてもよい。一般的な参考書として、次の例を示す:プラスチックハンドブック(Kunststoffhandbuch)/Saechtling, 26th edition, Carl-Hanser-Verlag, Munich 1995、p.491以降。より具体的にいえば、本発明のポリウレタンはアロファネート基を含有する。
【0012】
本発明の一実施様態によれば、この放射線硬化性ポリウレタン(A)は、超分岐ポリウレタンではない。超分岐ポリウレタンは公知であり、例えば、J.M.S. Rev. Macromol. Chem. Phys. 1997, C37(3), 555に記載されている。
【0013】
本発明の水性分散液は、少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された少なくとも一種の顔料(B)を含んでいる。以下において、「少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された顔料」とは、外表面が放射線硬化性ポリウレタンにより完全に又は部分的に覆われた粒子状の顔料をいう。粒子状顔料の混合物であって、顔料中の顔料粒子の一定パーセントが放射線硬化性ポリウレタンで覆われてなく、他の顔料粒子の外表面が完全に又は部分的に放射線硬化性ポリウレタンで覆われているものも、「少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された顔料」の定義に合致している。
【0014】
本発明の一実施様態によれば、少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された顔料は、その外表面の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%が、放射線硬化性ポリウレタンで覆われている。
【0015】
被覆の程度は、例えば光学顕微鏡法や電子顕微鏡法(TEM、極低温TEM、SEM)などの顕微鏡法でゼータ電位を測定することで決定可能であり、より具体的には、凍結割断法を用いたり、乾燥した少なくとも部分的に被覆された顔料をNMR分光学又は光電子分光学的に調べることで決定できる。
【0016】
本発明において、少なくとも部分的に被覆された顔料(B)は、ドイツ工業標準規格DIN55944の定義に該当する実質的に水不溶性で微粉砕された有機又は無機色素を、少なくとも部分的に被覆することで得られる。本発明の水性分散液は、好ましくは有機顔料から得られ、カーボンブラックを含む。特に好ましい顔料(B)の例を以下に示す。
【0017】
有機顔料:
−モノアゾ顔料:C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントオレンジ5、13、36、及び67;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245、及び251;C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151、及び183;
−ジスアゾ顔料:C.I.ピグメントオレンジ16、34、及び44;C.I.ピグメントレッド144、166、214、及び242;C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176、及び188;
−アンサンスロン顔料:C.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3);
−アントラキノン顔料:C.I.ピグメントイエロー147及び177;C.I.ピグメントバイオレット31;
−アントラキノン顔料:C.I.ピグメントイエロー147及び177;C.I.ピグメントバイオレット31;
−アントラピリミジン顔料:C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20);
−キナクリドン顔料:C.I.ピグメントレッド122、202、及び206;C.I.ピグメントバイオレット19;
−キノフタロン顔料:C.I.ピグメントイエロー138;
−ジオキサジン顔料:C.I.ピグメントバイオレット23及び37;
−フラバントロン顔料:C.I.ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1);
−インダンスロン顔料:C.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)、及び64(C.I.バットブルー6);
−イソインドリン顔料:C.I.ピグメントオレンジ69;C.I.ピグメントレッド260;C.I.ピグメントイエロー139及び185;
−イソインドリノン顔料:C.I.ピグメントオレンジ61;C.I.ピグメントレッド257及び260;C.I.ピグメントイエロー109、110、173、及び185;
−イソビオラントロン顔料:C.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1);
−金属錯体顔料:C.I.ピグメントイエロー117、150、及び153;C.I.ピグメントグリーン8:
−ペリノン顔料:C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットオレンジ7);C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15);
−ペリレン顔料:C.I.ピグメントブラック31及び32;C.I.ピグメントレッド123、149、178、179(C.I.バットレッド23)、190(C.I.バットレッド29)、及び224;C.I.ピグメントバイオレット29;
−フタロシアニン顔料:C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、及び16;C.I.ピグメントグリーン7及び36;
−ピランスロン顔料:C.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4):
−チオインジゴ顔料:C.I.ピグメントレッド88及び181(C.I.バットレッド1);C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3);
−トリアリルカルボニウム顔料:C.I.ピグメントブルー1、61、及び62;C.I.ピグメントグリーン1;C.I.ピグメントレッド81、81:1、及び169;C.I.ピグメントバイオレット1、2、3、及び27;C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー);C.I.ピグメントブラウン22。
【0018】
無機顔料:
−白色顔料:二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、亜鉛白、着色酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リトポン;鉛白;
−黒色顔料:黒酸化鉄(C.I.ピグメントブラック11)、鉄−マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27);カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7);
−着色顔料:酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン;クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48);コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50);ウルトラマリングリーン;コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28、及び36);ウルトラマリンブルー;鉄青(C.I.ピグメントブルー27);マンガンブルー;ウルトラマリンバイオレット;コバルト、及びマンガンバイオレット;酸化鉄赤(C.I.ピグメントレッド101);硫セレン化カドミウム(C.I.ピグメントレッド108);モリブデン赤(C.I.ピグメントレッド104);ウルトラマリンレッド;
酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネル、及びコランダム相(C.I.ピグメントブラウン24、29、及び31)、クロムオレンジ;
酸化鉄黄(C.I.ピグメントイエロー42);ニッケルチタンイエロー(C.I.ピグメントイエロー53;C.I.ピグメントイエロー157及び164);クロムチタンイエロー;硫化カドミウム、及び硫化亜鉛カドミウム(C.I.ピグメントイエロー37、及び35);クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34)、亜鉛黄、アルカリ土類金属クロム酸塩;ネープルスイエロー;バナジン酸ビスマス(C.I.ピグメントイエロー184);
−干渉顔料:被覆金属板小片製の金属光沢顔料;マイカ片被覆金属酸化物製のパール光沢顔料;液晶顔料。
【0019】
このような含量中で好ましい顔料(B)としては、モノアゾ顔料(特にBONS顔料レーキ、ナフトールAS顔料)、ジスアゾ顔料(特に、ジアリールイエロー顔料、ビスアセトアセトアニリド顔料、ジスアゾピラゾロン顔料)、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリアリルカルボニウム顔料(アルカリブルー顔料、ローダミンレーキ、染料の複素アニオン塩)、イソインドリン顔料、及びカーボンブラックが挙げられる。
【0020】
特に好ましい顔料(B)の具体例としては、カーボンブラック、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122及び146、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38、及び43、及びC.I.ピグメントグリーン7が挙げられる。
【0021】
本発明の目的の放射線硬化性ポリウレタン(A)は、
(a)1分子当たり数平均で、平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合とを持つ少なくとも一つのジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物とを反応させることにより得られる。
【0022】
重量平均で好ましくは数平均で、平均して1〜10個の、好ましくは最大5個のアロファネート基と、平均して分子当たり1〜10個の、好ましくは最大5個のC−C二重結合とを含む少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネート(a)は、触媒の存在下で少なくとも一種のジイソシアネート(a1)と少なくとも一種の一般式I
【0023】
【化1】

で表される化合物とを反応させることにより得られる化合物である。
【0024】
以下この化合物を、化合物(a2)と称する。
【0025】
なお、上記一般式において、
1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、及びメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどのC1〜C10アルキル基から選択され、さらに好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルなどのC1〜C4アルキル基から選択され、特に好ましくはメチル基である。
【0026】
1は、酸素及びN−R3から選択される。
1は、C1〜C20アルキレン基、好ましくはC2〜C10−アルキレン基から選択され、例えば、−CH2−、−(CH212−、−(CH214−、−(CH216−、−(CH220−、好ましくは−(CH22−、−(CH23−、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、−(CH28−、又は−(CH210である。
なお、これらの基は、無置換でも一つ以上置換されていてもよい。この置換基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルなどのC1〜C4アルキル基、好ましくはメチル基、
フェニル基、又は−O−CH3、−O−C25、−O−n−C37、−O−CH(CH32、−O−n−C49、−O−iso−C49、−O−sec−C49、−O−C(CH33などの−O−C1−C4−アルキル基が挙げられ、置換C1〜C20アルキレン基の例としては、−CH(CH3)−、−CH(C25)−、−CH(C65)−、−CH2−CH(CH3)−、cis−、及びtrans−CH(CH3)−CH(CH3)−、−(CH2)−C(CH32−CH2−、−CH2−CH(C25)−、−CH2−CH(n−C37)−、−CH2−CH(iso−C37)−が挙げられる。
置換又は非置換C1〜C20アルキレン基において、一つ以上の非隣接CH2基が酸素で置換されてもよく、その例としては、−CH2−O−CH2−、−(CH22−O−(CH22−、−[(CH2)2−O]2−(CH22−、−[(CH2)2−O]3−(CH22−が挙げられる。
【0027】
2は、NH−R3より選択され、好ましくは酸素である。
【0028】
いずれのR3も、同一でも異なっていてもよく、水素、フェニル、及び、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルなどのC1〜C10アルキル基より、さらに好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルなどのC1〜C4アルキル基から選択され、特に好ましくはメチル基である。
【0029】
一般式Iで表される特に好ましい化合物は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。
【0030】
放射線硬化性ポリウレタンを、触媒の非存在下で合成してもよいが、好ましくは少なくとも一種の触媒の存在下で合成する。
【0031】
ポリウレタン化学で常用される触媒はいずれも、有用な触媒として使用できる。
【0032】
ポリウレタン化学で常用される触媒は、好ましくは有機アミン、特に第三級脂肪族、環状脂肪族又は芳香族アミン、及びルイス−酸性有機金属化合物である。
【0033】
有用なルイス−酸性有機金属化合物の例としては、スズ化合物が、具体的には、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、及びラウリン酸スズ(II)などの有機カルボン酸スズ(II)塩;及びジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジブチレート、ジブチルスズビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジアセテートなどの有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)誘導体が挙げられる。鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、及びコバルトなどの金属のアセチルアセトネートなどの金属錯体も使用可能である。他の有用な金属化合物が、ブランク等、Progress in Organic Coating, 1999, 35, 19ffに記載されている。
【0034】
好ましいルイス酸性有機金属化合物としては、ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジブチレート、ジブチルスズビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、及びジルコニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが挙げられる。
【0035】
同様に、ビスマス及びコバルト触媒、またセシウム塩も、親水性触媒として使用可能である。有用なセシウム塩としては、以下のアニオンを持つセシウム化合物が挙げられる。F-、Cl-、ClO-、ClO3-、ClO4-、Br-、I-、IO3-、CN-、OCN-、NO2-、NO3-、HCO3-、CO32-、S2-、SH-、HSO3-、SO32-、HSO4-、SO42-、S222-、S242-、S252-、S262-、S272-、S282-、H2PO2-、H2PO4-、HPO42-、PO43-、P274-、(OCn2n+1-、(Cn2n-12-、(Cn2n-32-、及び(Cn+12n-242-。ただし、nは1〜20の整数を表す。
【0036】
好ましくは、式(Cnn-12-及び式(Cn+12n-242-で表されるアニオンを有するセシウムカルボキシレート類である。ただし、nは1〜20である。特に好ましいセシウム塩は、一般式(Cn2n-12-で表されるモノカルボキシレートをアニオンとして有するものである。ただし、nは1〜20の整数を表す。特に好ましいのは、ギ酸、アセテート、プロピオネート、ヘキサノエート、及び2−エチルヘキサノエートである。
【0037】
通常使用される有機アミンの例としては、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、3−メチル−6−ジメチルアミノ−3−アザペントール、ジメチルアミノプロピルアミン、1,3−ビスジメチルアミノブタン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、N−シクロヘキシルモルホリン、2−ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノ−N−メチルエタノールアミン、N−メチルイミダゾール、N−ホルミル−N,N’−ジメチルブチレンジアミン、N−ジメチルアミノエチルモルホリン、3,3’−ビスジメチルアミノ−ジ−n−プロピルアミン及び/又は2,2’−ジピパラジンジイソプロピルエーテル、ジメチルピパラジン、トリ(N,N−ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサヒドロトリアジン、さらに、1,2−ジメチルイミダゾール、4−クロロ−2,5−ジメチル−1−(N−メチル−アミノエチル)イミダゾール、2−アミノプロピル−4,5−ジメトキシ−1−メチルイミダゾール、1−アミノプロピル−2,4,5−トリブチルイミダゾール、1−アミノエチル−4−ヘキシルイミダゾール、1−アミノブチル−2,5−ジメチル−イミダゾール、1−(3−アミノプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール及び/又は1−(3−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類が挙げられる。
【0038】
好ましい有機アミンとしては、独立して二個のC1〜C4アルキル基と一個の炭素原子数が4〜20のアルキル基又はシクロアルキル基とを有するトリアルキルアミンが、例えばジメチルドデシルアミン又はジメチル−C3〜C8シクロアルキルアミンなどのジメチル−C4〜C15アルキルアミンが挙げられる。同様に好ましい有機アミンは、必要ならさらに一個の酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでもよいビシクロアミン類であり、例えば1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが挙げられる。
【0039】
アンモニウムアセテート又はトリエチルアミンを使用することが特に好ましく、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アンモニウム2−エチルヘキサノエートを使用することがさらに好ましい。
【0040】
上記化合物の二つ以上の混合物を触媒として用いてもよいであろう。
【0041】
上記化合物から選択される触媒であり、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン及び/又はN−エチルピロリドンなどの有機溶剤に可溶であるものを使用することが特に好ましい。
【0042】
触媒の使用量は、好ましくは、ジイソシアネート(a1)あたり、0.0001〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜5重量%である。
【0043】
この触媒又は混合触媒は、その性状に応じて、固体状、液体状で、あるいは溶液として添加してもよい。有用な溶媒としては、水非混和性溶媒が、たとえば、酢酸エチル、ヘキサン、及びシクロヘキサンなどの芳香族又は脂肪族炭化水素や酢酸エチルなどのカルボン酸エステル類が挙げられ、他の有用な溶媒としては、アセトン、THF、N−メチルピロリドンやN−エチルピロリドンが挙げられる。この触媒又は混合触媒は、好ましくは固体状か液体状で添加され、最も好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン又はN−エチルピロリドンなどの有機溶剤に溶解した溶液として添加される。
【0044】
ジイソシアネート(a1)は、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及び環状脂肪族ジイソシアネートから選択される。芳香族ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、及びいわゆるTDI混合物(2,4−トリレンジイソシアネート混合物や2,6−トリレンジイソシアネート混合物)が挙げられる。
【0045】
脂肪族ジイソシアネートの例としては、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられ、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
【0046】
環状脂肪族ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2−イソシアネートプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、及び4−メチルシクロヘキサン1,3−ジイソシアネート(H−TDI)が挙げられる。
異なる反応性基を有する他のイソシアネートの例としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、及び2,6−トリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
もちろん、上記ジイソシアネート類の混合物を用いてもよい。
【0048】
ジイソシアネート(a1)と上記化合物(a2)とは、例えば10:1〜1:1、好ましくは5:1〜5:4のモル比で使用できる。
【0049】
本発明の一実施様態によれば、ジイソシアネート(a1)と上記化合物(a2)とを、20〜150℃、好ましくは50〜130℃の範囲の温度で反応させることができる。
【0050】
本発明の一実施様態においては、ジイソシアネート(a1)と化合物(a2)とを、溶媒中、好ましくは、トルエン、アセトン又はテトラヒドロフランなどの有機溶剤又はこれらの有機溶剤の混合物中で反応させてよい。本発明の他の実施様態においては、溶媒を使用せずにジイソシアネート(a1)と化合物(a2)とを反応させる。
【0051】
本発明の一実施様態によれば、ジイソシアネート(a1)と化合物(a2)との反応の反応条件、例えばジイソシアネート(a1)と化合物(a2)のモル比は、ジイソシアネート(a)が二つのイソシアネート基と1〜10個のアロファネート基と1〜10個のC−C二重結合を持つがO−CO−NH基を持たなくなるように選ばれる。本発明の他の実施様態においては、ジイソシアネート(a1)と化合物(a2)との反応の反応条件は、例えばジイソシアネート(a1)と化合物(a2)のモル比は、ジイソシアネート(a)が2個のイソシアネート基と1〜9個のアロファネート基と1〜9個のC−C二重結合を持ち、さらに一つ以上のO−CO−NH基をもつように選ばれる。
【0052】
ジイソシアネート(a1)と化合物(a2)の反応の終了後、例えばジイソシアネート(a1)や化合物(a2)などの出発原料を除去してジ−又はポリ−イソシアネート(a)を単離してもよい。ジイソシアネート(a1)や化合物(a2)などの未反応出発原料の除去方法としては、蒸留、好ましくは減圧蒸留が挙げられる。薄膜蒸発機が特に好適である。好ましくは、未反応のジイソシアネート(a1)は、蒸留以外の方法で除去される。
【0053】
本発明の一実施様態によれば、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)は、23℃において、500〜2000mPa・sの範囲、好ましくは600〜1800mPa・sの範囲、最も好ましくは700〜1500mPa・sの範囲の粘度を持つ。
【0054】
本発明の一実施様態によれば、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)の、例えば滴定により求められるNCO含量は、8〜20重量%の範囲、好ましくは12〜17重量%の範囲である。
【0055】
放射線硬化性ポリウレタン(A)は、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)と少なくとも一種の他のジイソシアネート(b)とを反応させることで得られる。ジイソシアネート(b)を、上記の脂肪族ジイソシアネートや芳香族ジイソシアネーット、環状脂肪族ジイソシアネートから選択してもよい。ジイソシアネート(b)は、ジイソシアネート(a)とは異なるため、本発明においては、「他のジイソシアネート」と称する。
【0056】
本発明の一実施様態においては、ジイソシアネート(b)は、ジイソシアネート(a1)と異なるように選択される。
【0057】
本発明の一実施様態によれば、ジイソシアネート(b)は、ジイソシアネート(a1)と同一となるように選択される。本発明の特定の実施様態では、ジイソシアネート(b)は、ジイソシアネート(a)の製造終了後に分離されずに残存する未消費ジイソシアネート(a1)と同一となるように選択される。
【0058】
放射線硬化性ポリウレタン(A)は、また、少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物(c)(本発明の化合物(c)ともいう)と反応させることで製造される。特に好ましいイソシアネート易反応性基としては、例えば上記のSH基、水酸基、NH2基、及びNHR3基(ただしR3は上述の定義どおりである)などの基が挙げられる。
【0059】
化合物(c)は、親水性であっても疎水性であってもよい。
【0060】
少なくとも一種の化合物(c)は、好ましくは1,1,1−トリメチロール酢酸、1,1,1−トリメチロールプロパン酸、1,1,1−トリメチロール酪酸などの1,1,1−トリメチロール−C1−C4−アルキル−カルボン酸;クエン酸;1,1−ジメチロール酢酸、1,1−ジメチロールプロパン酸、1,1−ジメチロール酪酸などの1,1−ジメチロール−C1〜C4アルキルカルボン酸;1,1−ジメチロール−C1〜C4アルキルスルホン酸;1分子当たり平均3〜300個のアルキレンオキサイド単位を有するポリ−C2〜C3アルキレングリコール、特に1分子当たり平均(数平均)3〜300個のエチレンオキサイド単位を有するポリエチレングリコール;及び1分子当たり平均(数平均)3〜300個のエチレンオキサイド単位を有しエチレンオキサイドのモル分率がプロピレンオキサイドのモル分率より高いエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの重付加物;
COOM基又はSO3M基を有する親水性ジアミン、例えば
【0061】
【化2】

【0062】
(ただし、Mが、アルカリ金属イオン(特にNa+)及びアンモニウムイオンから選択されるものである。);
少なくとも一種の脂肪族又は環状脂肪族ジオール、好ましくはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、cis−1,4−シクロヘキサンジオール、trans−1,4−シクロヘキサンジオール、cis−及びtrans−1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン(シクロヘキサンジメタノール)と、少なくとも一種の脂肪族、芳香族又は環状脂肪族ジカルボン酸、例えばこはく酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸とを重縮合して得られるポリエステルジオールから選択される。
【0063】
本発明のある実施様態では、ポリエステルジオールの製造において、少なくとも二つのジカルボン酸が選択され、一方が芳香族で他方が脂肪族ジカルボン酸である。その例としては、こはく酸とイソフタル酸、グルタル酸とイソフタル酸、アジピン酸とイソフタル酸、こはく酸とテレフタル酸、グルタル酸とテレフタル酸、アジピン酸とテレフタル酸が挙げられる。
【0064】
二つ以上のジカルボン酸を用いてポリエステルジオールを製造する場合、どのようなモル比を用いてもよい。芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸をそれぞれ一種用いる場合、そのモル比は、10:1〜1:10の範囲が好ましく、モル比が1.5:1〜1:1.5の範囲が特に好ましい。
【0065】
本発明の一実施様態においては、化合物(c)として用いられるポリエステルジオールのドイツ工業標準規格DIN53240に準じて求めたヒドロキシル価は、20〜200mg・KOH/gの範囲であり、好ましくは50〜180の範囲、最も好ましくは100〜160mg・KOH/gの範囲である。
【0066】
本発明の一実施様態においては、化合物(c)として用いられるポリエステルジオールの分子量Mwは、500〜100000g/molの範囲、好ましくは700〜50000g/molの範囲、さらに好ましくは最大30000g/molである。
【0067】
他の好ましい化合物(b)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,1−ジメチロールプロパンが挙げられる。
【0068】
本発明のある実施様態では、少なくとも二つの化合物(c)が反応させられ、そのうち一種は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,1−ジメチロールプロパンから選択される。
【0069】
本発明のある実施様態においては、
(a)さらに、一般式Iで表される少なくとも一種の化合物を、
(b)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(c)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(d)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物との反応に添加することにより放射線硬化性ポリウレタン(A)が製造される。
式Iの化合物は、上述のとおりである。
【0070】
1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートを製造するのに用いるものとは異なる一般式Iの化合物を、一般式Iの化合物(d)として用いてもよい。しかし、好ましくは、化合物(d)と化合物(a2)は同じである。
【0071】
放射線硬化性ポリウレタン(a)の合成は、ポリウレタン化学で使用される通常の方法で行ってよい。
【0072】
本発明のある実施様態においては、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、及び化合物(c)、及び必要なら他の一般式Iの化合物(d)が、それぞれ放射線硬化性ポリウレタン(A)に対して次の比で使用される:
0.1〜10重量%、好ましくは1〜6重量%のジ−又はポリ−イソシアネート(a)、
20〜60重量%、好ましくは30〜55重量%の他のジイソシアネート(b)、
3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の化合物(c)、
0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の一般式Iの化合物(d)。
【0073】
各重量%は、合成される全放射線硬化性ポリウレタン(A)量あたりの値である。
【0074】
本発明のある好ましい様態においては、放射線硬化ポリイソシアネート(A)の製造に当たり、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、及び化合物(c)、及び必要な場合他の一般式Iの化合物(d)以外に、少なくとも一種の求核性のアルコール又はアミン、好ましくはモノアルコール又はモノアミンを用いてもよい。この場合、これらの化合物は、いずれの場合もストッパーとして作用するため、以下ストッパー(e)と称する。好ましいストッパー(e)の例としては、モノ−及びジ−C1〜C4アルキルアミン類、特にジエチルアミンが挙げられる。ストッパー(e)は、合成される放射線硬化性ポリウレタン(A)当たり最高10重量%まで使用可能である。
【0075】
ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、化合物(c)、及び必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)からの放射線硬化性ポリウレタン(A)の製造は、一段で行ってもよいし多段で行ってもよい。例えば、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)と化合物(c)との反応を第一段で、好ましくは存在下触媒で行い、その反応終了後、さらにジイソシアネート(b)や一般式Iの化合物(d)、及び必要な場合ストッパー(e)を添加してもよい。また、例えば、他のジイソシアネート(b)を過剰量使用しながら、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)及び化合物(c)を順番に反応させ、ストッパー(e)を添加して反応を停止させてもよい。
【0076】
本発明の一実施様態によれば、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、化合物(c)、及びもし必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)は、溶媒に、好ましくは、トルエン、アセトン又はテトラヒドロフランなどの有機溶剤又はこれらの有機溶剤の混合物に溶解される。本発明の他の実施様態においては、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、化合物(c)、及びもし必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)の反応は、溶媒を使用せずに実施される。
【0077】
本発明のある実施様態においては、ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、及び化合物(c)、及びもし必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)の反応は、20〜150℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲の温度で実施される。
【0078】
ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、化合物(c)、及びもし必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)の反応の加速のために、上記触媒から選択される一種以上の好ましい触媒を用いてもよい。
【0079】
ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、化合物(c)、及びもし必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)の反応の後に、ジイソシアネート(b)、化合物(c)、及びもし必要なら他の一般式Iの化合物(d)、及び必要ならストッパー(e)などの未反応出発原料を除去して、放射線硬化性ポリウレタン(A)を単離してもよい。(b)、(c)、及び必要なら(d)、及び(e)などの未反応出発原料の好ましい除去方法は、蒸留、好ましくは減圧蒸留である。薄膜蒸発機が特に好適である。未反応のジイソシアネート(b)は蒸留しないほうがよい。
【0080】
本発明に使用する放射線硬化性ポリウレタン(A)の分子量Mwは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)値として、例えば500〜50000g/mol以下の範囲、好ましくは1000〜30000g/molの範囲、さらに好ましくは2000〜25000g/molの範囲、最も好ましくは少なくとも2000g/molである。
【0081】
本発明の好ましい実施様態においては、放射線硬化性ポリウレタン(A)は遊離のNCO基を保有しない。
【0082】
ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、及び化合物(c)、及び必要なら(d)、及び必要ならストッパー(e)の反応の後に、放射線硬化性ポリウレタン(A)と水の重量比で1:1〜1:10の範囲で、水を加えてもよい。
【0083】
ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、及び化合物(c)、及び必要なら(d)、及びストッパー(e)の反応の後に、かなり高酸性の水素原子を持つ基を、塩基で処理して相当する塩に変換してもよい。有用な塩基としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や重炭酸塩や、アルカリ金属の炭酸塩が挙げられる。他の有用な塩基として、揮発性アミン、すなわち大気圧で沸点が180℃以下のアミンが挙げられ、その例としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミンやN−メチル−ジエタノールアミンが挙げられる。同様に、塩基性基を、例えばα−ヒドロキシカルボン酸、α−アミノ酸又はα−ヒドロキシスルホン酸などの酸で処理して、相当する塩に変換してもよい。
【0084】
ジ−又はポリ−イソシアネート(a)、他のジイソシアネート(b)、及び化合物(c)必要なら(d)、及びストッパー(e)の反応の終了後、いずれの有機溶剤も、例えば蒸留で除去される。
【0085】
放射線硬化性ポリウレタン(A)の合成後、一種以上の顔料(B)や、必要なら水が添加される。固形分顔料を、3〜40%の範囲、好ましくは最高35%、さらに好ましくは5〜30%の範囲に設定することが好ましい。
【0086】
放射線硬化性ポリウレタン(A)と顔料(B)との重量比は変動可能で、その許容変動幅も大きい。本発明の一実施様態においては、放射線硬化性ポリウレタン(A)と顔料(B)の重量比は、5:1〜1:3の範囲、好ましくは3:1〜1:2、さらに好ましくは2:1〜2:3の範囲である。
【0087】
次いで、放射線硬化性ポリウレタン(A)と顔料(B)は分散される。分散は、分散に適した装置内で実施される。その例としては、スカンデックス社の振とう機が挙げられる。好ましくは、放射線硬化性ポリウレタン(A)と顔料(B)は、例えば、超音波装置、高圧ホモジナイザー、2−、3−、4−又は5−ロールミル、ミニミル、ヘンシェルミキサー、振とう摩砕機、オングミル、ギアミル、ビーズミル、湿式ミル、サンドミル、アトライター、コロイドミル、あるいは超音波ホモジナイザー内で、ウルトラタラックススターラーを使用して分散することが好ましく、特に、例えば2−、3−、4−又は5−ロールミル、ミニミル、振とう摩砕機、オングミル、ギアミル、ビーズミル、湿式ミル、サンドミル、コロイドミル、ボールミル内で、さらに好ましくは攪拌ボール入り粉砕機内で分散することが好ましい。
【0088】
分散時間は、例えば10分〜48時間の範囲が適当であるが、さらに長時間であってもよい。好ましくは分散時間は15分〜24時間の範囲である。
【0089】
分散中の圧力や温度条件は通常重要ではなく、例えば大気圧でもかまわない。温度に関しては、10〜100℃の範囲がこれまで適当であったが、好ましくは最高80℃である。
【0090】
この分散により、本発明の水性分散液が得られる。本発明の一実施様態においては、本発明の水性分散液の固形分含量は、3〜40%の範囲、好ましくは最高35%、さらに好ましくは5〜30%の範囲である。
【0091】
分散の際に通常、分散助剤を添加してもよい。
【0092】
少なくとも部分的に放射線硬化性ポリウレタン(A)で被覆された顔料の、このような分散後の平均粒径(B)は通常、20nm〜1.5μmの範囲、好ましくは60〜500nmの範囲、さらに好ましくは60〜350nmの範囲である。なお、本発明においては、この値は体積平均値である。有用な平均粒径測定装置とは、例えばコールターLS230などのコールターカウンターが挙げられる。
【0093】
本発明のカーボンブラックを顔料(B)として使用することが好ましい場合は、その粒径は一次粒子の平均粒径によるものである。
【0094】
本発明の水性分散液は、熱開始剤、即ち60℃で少なくとも1時間の半減期を持ち処理中に分解してフリーラジカルとなる化合物を含んでいない。このような熱開始剤の例としては、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や水溶性AIBN誘導体などのアゾ化合物、多置換エタン誘導体、特に六置換エタン誘導体、及びレドックス触媒が挙げられる。
【0095】
本発明の一実施様態によれば、本発明の水性分散液は、少なくとも一種のポリウレタン(C)を含有する。ポリウレタン(C)は、例えば、ジイソシアネート(b)と化合物(c)、好ましくはアロファネート基をもつ化合物(c)との反応で得られる。特に好ましくは、顔料(B)は少なくとも部分的に、放射線硬化性ポリウレタン(A)だけでなくポリウレタン(C)によっても被覆されている。
【0096】
本発明の一実施様態においては、本発明の水性分散液は、放射線硬化性ポリウレタン(A)とポリウレタン(C)とを、重量比で10:1〜1:2の範囲、好ましくは8:1〜1:1の範囲で含有している。
【0097】
本発明の一実施様態においては、本発明の水性分散液は少なくとも一種の光開始剤(D)を含む。光開始剤(D)の添加は、分散前でも分散後であってもよい。
【0098】
好適な光開始剤(D)の例としては、当業界の熟練者には公知の光開始剤があげられ、その具体例としては、“Advances in Polymer Science”, Volume 14, Springer Berlin 1974, 又はK. K. Dietliker, Chemistry and Technology of UV-, and EB-Formulation for Coatings, Inks and Paints, Volume 3; Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerization, P. K. T. Oldring (Eds), SITA Technology Ltd, Londonに記載されているものが挙げられる。
【0099】
有用な光開始剤の例としては、EP−A0007508、EP−A0057474、DE−A19618720、EP−A0495751、及びEP−A0615980に記載のモノ−又はビスアシルホスフィンオキサイドが挙げられ、その具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、フェニルグリオキシル酸及びその誘導体、上記光開始剤の混合物が挙げられる。具体的な例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、β−メチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル類、ベンズアルデヒド、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテノン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,4−トリアセチルベンゼン、チオキサンテ−9−ノン、キサンテ−9−ノン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジ−iso−プロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、クロロキサンテノン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、7−H−ベンゾインメチルエーテル、ベンズ[de]アントラセ−7−ノン、1−ナフトアルデヒド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ミヒラー・ケトン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、1−ベンゾイルシクロヘキサ−1−ノール、2−ヒドロキシ−2,2−ジ−メチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジメチルケタール、o−メトキシベンゾフェノン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパ−1−ノン;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類、及び2,3−ブタンジオンが挙げられる。
DE−A19826712、DE−A19913353、又はWO98/33761に記載のグリオキサル酸フェニル系の非黄変性又は微黄変性光開始剤も好適である。
【0100】
好ましい光開始剤(D)は、例えば活性化されて分解する光開始剤、いわゆるスプリッターであり、例えばベンジルジメチルケタールのようなベンジルジアルキルケタール系の光開始剤が挙げられる。他の有用なスプリッターの例としては、ベンゾイン誘導体、イソブチルベンゾインエーテル;ホスフィンオキサイド、特にモノ−、及びビスアシルホスフィンオキサイド、(例えば、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド);α−ヒドロキシアルキルアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン(D.1)、
【0101】
【化3】

【0102】
2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(D.2)、
【0103】
【化4】

【0104】
ホスフィンスルフィド、及びエチル4−ジメチルアミノベンゾエート、及び(D.3)
【0105】
【化5】

が挙げられる。
【0106】
好ましい他の光開始剤(D)としては、水素引き抜き性光開始剤、例えば置換又は非置換アセトフェノン、アントラキノン、チオキサントン、安息香酸エステル類や置換又は非置換ベンゾフェノンの安息香酸エステルなどの種類である。特に好ましい例としては、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルベンジルケトン、4−メチルベンゾフェノン、ハロメチル化ベンゾフェノン類、アントロン、ミヒラー・ケトン(4,4’−ビス−N,N−ジメチル−アミノベンゾフェノン)、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、アントラキノンが挙げられる。
【0107】
本発明の一実施様態においては、放射線硬化性ポリウレタン(A)と光開始剤(D)との重量比が、3:1〜10000:1の範囲、好ましくは5:1〜5000:1、最も好ましくは10:1〜1000:1範囲となるように、十分な量の光開始剤(D)が本発明の水性分散液に添加される。
【0108】
所望なら、少なくとも一種の共力剤、例えば少なくとも一種のアミン系、特に少なくとも一種の第三級アミン系の共力剤を添加することで、本発明の水性分散液(A)中の光開始剤(D)の効率を増加させてもよい。有用なアミンの例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミン修飾ポリエーテルアクリレートのようなアミノアクリレート類が挙げられる。アミンを、例えば第三級アミンを放射線硬化性ポリウレタン(a)の合成触媒として用いて合成後除去しない場合、その第三級アミンを触媒として用い共力剤として作用させることも可能である。同様に、COOH基やSO3H基などの酸性基の中和に用いた第三級アミンを共力剤として使用してもよい。光開始剤(A)当たり最大2倍モル量の共力剤を用いてもよい。
【0109】
本発明の水性分散液に、少なくとも一種の重合防止剤(E)、例えばUV吸収器又はフリーラジカルスカベンジャーを添加してもよい。UV吸収剤はUV光を熱エネルギーに変換する。有用なUV吸収剤の例としては、オキサニリド、トリアジン、及びベンゾトリアゾール(後者は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズよりチヌビン(R)として入手可)、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのヒドロキノンモノアルキルエーテル類が挙げられる。フリーラジカルスカベンジャーはフリーラジカル中間体と結合する。有用なフリーラジカルスカベンジャーの例としては、立体的に込み合ったアミン、いわゆるHALS(ヒンダードアミン光安定化剤)が挙げられる。その例としては、2,2,6,6−テトラ−メチルピペリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピペリジン又はこれらの誘導体が挙げられ、その具体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートが挙げられる。
【0110】
例えば、(A)と(B)の総量当たり最高5重量%、さらに好ましくは最高0.5重量%の量の重合防止剤(E)が添加可能である。
【0111】
本発明の分散の際に、一種以上の他のC−C二重結合含有化合物(F)(以下不飽和化合物(F)と称す)を添加してもよい。特に好適な不飽和化合物(F)としては、例えば一般式Iの化合物が挙げられる。さらに好適な不飽和化合物(F)は、一般式F.1で表される。
【0112】
【化6】

【0113】
ここで、
1とR2は、同じでも異なっていてもよく、独立して水素及びC1〜C10アルキル基から選択される。
mは、0〜2の整数であり、好ましくは1である。
2は、mが0の時、CH2、CH2−CH2−、R8−CH、又はpara−C64であり、mが1の時、CH、C−OH、C−O−C(O)−CH=CH2、C−O−CO−C(CH3)=CH2、R8−C、又は1,3,5−C63であり、mが2のとき炭素である。
8は、n−C4Hg、n−C37、iso−C37などのC1〜C4アルキル基より選ばれ、好ましくはC25、CH3、又はフェニルである。
3、A4とA5は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、−CH2−、−CH(CH3)−、−CH(C25)−、−CH(C65)−、−(CH22−、−(CH23、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、−(CH27−、−(CH28−、−(CH29−、−(CH210−、及び−CH(CH3)−(CH22−CH(CH3)−などのC1〜C20アルキレン基;cis−1,3−シクロペンチリデン、trans−1,3−シクロペンチリデン、cis−1,4−シクロヘキシリデン、trans−1,4−シクロヘキシリデンなどのcis−又はtrans−C4〜C10シクロアルキレン基;その中の互いに非隣接の1〜7個の炭素原子が酸素で置換されたC1〜C20アルキレン基、(例えば、−CH2−O−CH2−、−(CH22−O−CH2−、−(CH22−O−(CH22−、−[(CH22−O]2−(CH2)2−、−[(CH22−O]3−(CH22−);最高4この水酸基で置換され、及び1〜7個の互いに非隣接の炭素原子が酸素で置換されたC1〜C20アルキレン基(例えば、−CH2−O−CH2−CH(OH)−CH2−、−CH2−O−[CH2−CH(OH)−CH22−、−CH2−O−[CH2−CH(OH)−CH23−);及び例えばpara−C64のようなC6〜C14アリーレン基から選択される。
【0114】
特に好ましい一般式F.Iの化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、三重にエトキシ化されたトリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0115】
また、非常に有用な不飽和化合物(F)の代表例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0116】
さらに非常に有用な不飽和化合物(F)の例としては、部分的又は完全に(メタ)アクリレート化された二量体トリメチロールプロパン、部分的又は完全に(メタ)アクリレート化された二量体トリメチロールエタン、部分的又は完全に(メタ)アクリレート化された二量体ペンタエリスリトールなどの部分的又は完全に(メタ)アクリレート化されたポリオール類が挙げられる。
【0117】
不飽和化合物(F)は、例えば、(A)と(B)の総量当たり、合計最大100重量%、好ましくは最大50重量%、さらに好ましくは最大25重量%の量で添加可能である。
【0118】
本発明の水性分散液は、物質の染色や印刷用の製剤として、あるいはこのような製剤を製造するのに有用であり、具体的には顔料染色用の染色液や顔料印刷用の印刷ペーストの製造に有用である。したがって、本発明は、物質の染色又は印刷用の製剤としてのあるいはその製造への本発明の水性分散液の利用を提供する。このため、本発明は、少なくとも一種の本発明の水性分散液を用いる染色方法あるいは被印刷物の印刷方法を提供する。
【0119】
有用な被印刷材料としては、次のものが挙げられる。
【0120】
紙、厚紙、カード、木材、及び木台などのセルロース系材料など。これらは、ラッカー等で塗装されていてもよい;
アルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛又はこれらの合金からなる箔、シート又は工作物等の金属性材料。ラッカー等で塗装されていてもよい;
ガラス、磁器や陶器などのケイ酸系材料。塗装されていてもよい;
あらゆる種類の高分子材料、例えばポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、及びこれらのブロックコポリマーも含むコポリマー、生分解性ポリマー、及びゼラチンなどの天然高分子、スムースレザー、ナッパレザー又はスエードレザー状の天然及び人口レザー;
食料品や化粧品;及び特に、
ポリエステル、改質ポリエステル、ポリエステル混紡織物、綿等のセルロース系材料、綿混紡織物、黄麻、亜麻、麻、及びラミー、ビスコース、羊毛、絹、ポリアミド、ポリアミド混紡織物、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどからなる繊維、糸、スレッド、編み物、織物、不織布、及び衣類、ポリエステル−ポリウレタン混紡織物(例えば、ライクラ(R))等の混紡織物、ポリエチレン−ポリプロピレン混紡織物、ポリエステルマイクロファイバー、及びガラス繊維織物などの繊維製品。
【0121】
本発明の水性分散液は、インクジェット方式のインクとしてあるいはインク製造用に特に有用で、特にインクジェット方式用の水性インクに有用である。本発明の水性分散液は、顔料を含有する水性インクジェットインクの製造に極めて有用である。したがって、本発明はまた、本発明の水性分散液のインクジェット方式インクへの利用を提供する。本発明はまた、少なくとも本発明の水性分散液を一種含むインクジェット方式インクの製造方法を提供する。
【0122】
本発明におけるインクジェット方式のインクを、以降インクジェットインク又は単にインクと称する。
【0123】
本発明の一実施様態によれば、本発明のインクジェットインクは、本発明の当該インクの総重量当たり1〜40重量%、好ましくは2〜35重量%の本発明の水性分散液を含有する。
【0124】
本発明の水性分散液を、直接インクジェットインクとして用いてもよい。
【0125】
他の実施様態では、本発明のインクジェットインクは、少なくとも一種の追加成分(G)を含有していてもよい。
本発明の一実施様態によれば、本発明のインクジェットインクは、本発明の水性分散液を水で希釈し、必要なら一種以上の追加成分(G)を添加して製造する。
【0126】
本発明の一実施様態によれば、本発明のインクジェットインクの固形分含量は、5〜40%の範囲、好ましくは最大35%、さらに好ましくは10〜30%の範囲に設定される。
【0127】
本発明のインクジェット方式インクは、一種以上の有機溶剤を追加成分(G)として含有していてもよい。低分子量ポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)が追加成分(G)として好ましく、単独で使用しても、好ましくは一種以上の高沸点で水溶性又は水混和性の有機溶剤と混合して使用してもよい。
【0128】
好ましい低分子量ポリテトラヒドロフランの平均分子量Mwは、通常150〜500g/molの範囲、好ましくは200〜300g/molの範囲、さらに好ましくは約250g/mol(一定の分子量分布を保持するのに)である。
【0129】
ポリテトラヒドロフランは、既知の方法によりテトラヒドロフランをカチオン重合して得られる。生成物は線状ポリテトラメチレングリコールである。
【0130】
ポリテトラヒドロフランを追加成分(G)として用い、さらに有機溶剤を混合して使用する場合、この追加の有機溶剤は、一般に、高沸点(即ち、通常大気圧で、沸点>100℃)であり、水に可溶か混和可能な含水有機溶剤である。
【0131】
有用な溶媒の例としては、多価アルコール類、好ましくは非分岐及び分岐の、炭素数が2〜8、特に好ましくは炭素数が3〜6の多価アルコール類が挙げられ、その具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、及びアラビトール、アドニトール、及びキシリトールなどのペンチトール類、ソルビトール、マンニトール、及びズルシトールなどのヘキシトール類が挙げられる。
【0132】
他の有用な溶媒としては、低級ポリマー(ダイマー、トリマー、及びテトラマー)も含むポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、及びそれらのモノアルキルエーテル(特に、C1〜C6アルキルエーテル、さらに好ましくはC1〜C4アルキルエーテル)が挙げられる。平均分子量Mnが100〜6000g/molの範囲、特に最大1500g/mol、特に150〜500g/molの範囲のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールが好ましい。これらの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジ−、トリ−、及びテトラ−1,2−、及び−1,3−プロピレングリコール、及びジ−、トリ−、及びテトラ−1,2−、及び−1,3−プロピレングリコールモノメチル、モノエチル、モノ−n−プロピル、モノイソプロピル、及びモノ−n−ブチルエーテルが挙げられる。
【0133】
他の有用な溶媒としては、ピロリドンとN−アルキルピロリドンが挙げられ、このアルキル鎖は、好ましくは炭素数が1〜4、特に好ましくは1又は2である。有用なアルキルピロリドンの例としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンが挙げられる。
【0134】
特に好ましい溶媒の例としては、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(Mw:300〜500g/mol)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ピロリドン、N−メチルピロリドン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンが挙げられる。
【0135】
ポリテトラヒドロフランを、上記の溶媒の一種以上の(例えば、2、3、又は4個)と混合して使用してもよい。
【0136】
本発明の一実施様態によれば、本発明のインクジェット方式インクは、0.1〜80重量%、好ましくは2〜60重量%、さらに好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは10〜40重量%の非水溶媒を含んでいてもよい。
【0137】
追加成分(G)として用いる非水溶媒には、特に好ましい溶媒の組み合わせとして示されるものには、好ましくは溶媒混合物の保水性を高めるために、尿素(通常、色素製剤の重量当たり0.5〜3重量%の範囲)を添加する。
【0138】
本発明のインクジェット方式インクは、さらに従来、水性のインクジェットインクや印刷や塗装業界で使用されている他の追加成分(G)を含んでいてもよい。そのようなものの例としては、1,2−ベンズイソチアゾリ−3−ノン(アベシア社よりプロキセル名で販売中)及びそのアルカリ金属塩、グルタルアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレンジウレア、プロテクトールズ(R)などの防腐剤;抗酸化剤;アセチレンジオールやモル当たり20〜40molのエチレンオキサイドをもち分散効果を有するエトキシ化アセチレンジオールなどの脱泡剤;粘度調整剤;流動剤;界面活性剤[例えば、エトキシ化又はプロポキシ化脂肪酸又はオキソアルコール類、プロピレンオキサイド−エチレンオキサイドブロックコポリマー、オレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシ化物、アルキルフェノールエーテル硫酸、アルキルポリグルコシド、アルキルホスホネート、アルキルフェニルホスホネート、アルキルリン酸、およびアルキルフェニルリン酸又は好ましくはポリエーテルシロキサンコポリマー、特に好ましくはアルコキシ化2−(3−ヒドロキシプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン(通常7〜20のブロックと7〜12個のエチレンオキサイド単位と2〜20のブロックと好ましくは2〜10個のプロピレンオキサイド単位を有し、色素製剤中に重量で0.05〜1%の量で含まれる)系の界面活性剤;沈降防止剤;光沢改良剤;潤滑剤;密着改良剤;皮張り防止剤;つや消し剤;乳化剤;安定化剤;疎水化剤;光制御添加剤;手ざわり改良剤;静電防止剤;及びトリエタノールアミンなどの塩基や乳酸又はクエン酸等のカルボン酸などの酸を含むpH調整剤が挙げられる。これらの添加物を本発明のインクジェット方式インクに添加する場合、その総量は、本発明の着色剤製剤の重量当たり、特に本発明のインクジェット方式用のインク当たり、一般に2重量%、好ましくは1重量%である。
【0139】
他の有用な追加成分(G)としては、例えば一般式IIで表されるアルコキシ化又は非アルコキシ化アセチレンジオールが挙げられる。
【0140】
【化7】

【0141】
ただし、
AOは、同一又は異なるアルキレンオキサイド単位、例えばプロピレンオキサイド単位やブチレンオキサイド単位を示し、特にエチレンオキサイド単位を示す。
4、R5、R6及びR7は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、分岐又は非分岐のC1〜C10アルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、又はn−デシルを示し、さらに好ましくはC1〜C4アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル;及び水素を示す。
【0142】
bは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、0〜50の範囲、好ましくは0又は1〜30、及びさらに好ましくは3〜20の整数から選択される。
【0143】
本発明の好ましい実施様態においては、R5又はR7がメチル基である。
【0144】
本発明の好ましい実施様態においては、R5とR7がメチル基で、R4とR6がイソブチル基である。
【0145】
他の好ましい追加成分としては、式III
【0146】
【化8】

で表されるアルコキシ化又は非アルコキシ化されたケイ素化合物が挙げられる。ただし、bは上述と同じである。
【0147】
本発明のインクジェット方式インクは、本発明の水性分散液の調整の際に利用可能な光開始剤(D)とは異なる光開始剤を含有することができるが、上記の光開始剤の中から選択される。
【0148】
本発明のある実施様態における本発明のインクジェット方式インクの、ドイツ工業標準規格DIN53018に準じて求めた23℃での動的粘度は、2〜80mPa・sの範囲、好ましくは3〜40mPa・sの範囲、さらに好ましくは最大25mPa・sである。
【0149】
本発明のある実施様態における本発明のインクジェット方式インクの、ドイツ工業標準規格DIN53993に準じて求めた25℃での表面張力は、24〜70mN/mの範囲であり、特に好ましくは25〜60mN/mの範囲である。
【0150】
本発明のある実施様態における本発明のインクジェット方式インクのpHは、5〜10の範囲であり、好ましくは7〜9の範囲である。
【0151】
本発明のインクジェット方式インクは、優れた性能特性、特に良好な初期印刷性能と良好な使用耐久性(インクノズルのインク沈積への耐性)をもち、また特に、特に好ましい溶媒の組み合わせが用いられた場合には、良好な乾燥性能を示し、高品質の画像、即ち光沢、色の深み、乾燥摩擦耐久性、光耐久性、水耐久性や湿潤摩擦耐久性に優れた画像を与える。これらは特に、塗工紙や普通紙の印刷や布製の被印刷物の印刷に適している。
【0152】
本発明の一つの側面は、本発明のインクジェット方式インクの製造方法である。本発明のインクジェット方式用のインクの製造方法においては、例えば一つ以上の工程において、本発明の水性分散液の少なくとも一種を、水及び必要なら少なくとも一種の追加成分(G)と相互に混合する。
【0153】
有用な混合方法としては、例えば攪拌、強い振とうや分散が挙げられ、例えば混合は、ボール粉砕機又は攪拌ボール粉砕機を用いて実施される。
【0154】
本発明の水性分散液に水、必要なら(C)、必要なら(D)、必要なら(E)、必要なら(F)、及び必要なら(G)を混合する際の添加順序は、それほど重要ではない。
したがって、本発明のある様態のおいては、まず少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を合成し、次いで、顔料(B)と共に分散させ、及びその後一種以上の所望の添加剤(C)、(D)、(E)、(F)及び/又は(G)と混合する。ただし、混合前又は混合後に、水で希釈する。
【0155】
本発明の他の様態においては、(a)少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)、及び少なくとも一種のポリウレタン(C)を合成し、次いで(B)とともに分散し、水で希釈し、一種以上の所望の添加剤(D)、(E)、(F)及び/又は(G)と混合する。
【0156】
本発明のさらに他の様態においては、少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を合成し、次いで顔料(B)と共に分散し、少なくとも一種の所望の添加剤(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)と混合する。
【0157】
本発明のさらに他の様態においては、少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)と少なくとも一種のポリウレタン(C)を合成し、次いで顔料(B)と共に分散し、少なくとも一種の所望の添加剤(D)、(E)、(F)、及び(G)と混合する。
【0158】
本発明のさらに他の様態は、少なくとも一種の本発明のインクジェット方式インクを用いる、インクジェット方式でのシート状の又は3次元の被印刷物の印刷方法であり、以降、本発明の印刷方法と称する。本発明の印刷方法を実施する際、少なくとも一種の本発明のインクジェットインクが被印刷物に印刷される。本発明の印刷方法の好ましい様態では、少なくとも一種の本発明のインクジェットインクを被印刷物上に印刷し、次いで化学線照射で処理する。
【0159】
このインクジェット方式では、通常水性インクを被印刷物上に直接小さな液滴として噴射する。印刷パターンに応じて電界によりインクが一様な圧力で加圧されノズルを通して被印刷物上に直接噴射される連続方法と、着色ドットが表れた時のみにインクが吐出され、非連続式又はドロップ・オン・デマンド方法とがある。なお、後者の方法は、圧電性の結晶又は加熱された中空の針(バブルジェット(登録商標)又は熱ジェット方式)を用いてインク系に圧力をかけてインク液滴を吐出する方法である。これらの方法は、Text. Chem. Color, volume 19(8), pages 23 to 29, 1987、及び volume 21(6), pages 27 to 32, 1989に記載されている。
【0160】
本発明のインクは、バブルジェット(登録商標)法や圧電性の結晶を使用する方法に特に有用である。
【0161】
本発明のインクジェットインクは、化学線照射で硬化する。例えば200nm〜450nmの範囲の波長の化学線照射が有用である。70mJ/cm2〜2000mJ/cm2の範囲のエネルギーの化学線照射が有用である。化学線照射は、連続的に行ってもあるいは、例えばフラッシュ状に行ってもよい。
【0162】
本発明の一実施様態によれば、印刷後で化学線照射処理前に、被印刷物材料を熱的又はIR照射下で乾燥させてもよい。好ましい条件の例としては、温度が30〜120℃の範囲であり、乾燥時間が10秒〜24時間、好ましくは最大30分、さらに好ましくは最大5分である。有用な赤外線は、例えば800nmを超える波長領域の赤外線である。有用な中間乾燥装置としては、熱中間乾燥用真空乾燥キャビネットのような乾燥キャビネットや赤外線ランプが挙げられる。
【0163】
同様に、化学線照射の際の熱も中間乾燥効果をもつ。
【0164】
本発明はまた、上記の本発明の印刷方法の一つを用いて印刷した、特にパリッとした感じの印刷画像や印刷図、また優れた手触りを持つ被印刷物、特に布製の被印刷物を提供する。また、本発明の被印刷物は、軟スポットを有さない。
【0165】
本発明の他の実施様態においては、それぞれ異なる色を持つ異なる顔料を含む、二つ以上の、好ましくは三つ以上の異なる本発明のインクジェット方式インクを、セットとして用いることができる。
【0166】
本発明は、また、少なくとも一種の顔料(B)と少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を分散することにより得られた少なくとも部分的に被覆された顔料を提供する。ただし、上記放射線硬化性ポリウレタン(A)は、
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物とを反応させて得られる。
【0167】
本発明は、具体的には、少なくとも部分的に被覆された上記の顔料式であり、上記ジ−又はポリ−イソシアネート(a)が少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネート(a1)と少なくとも一種の一般式Iの化合物の反応により得られたものであるものを提供する。
【0168】
【化9】

【0169】
式中、
1とR2は、同じでも異なっていてもよく、独立して水素及びC1〜C10アルキル基から選択される。
1は酸素及びN−R3から選択される。
1は、非置換のC1〜C20アルキレン基、あるいは一つ以上のC1〜C4アルキル基、フェニル、又はO−C1〜C4−アルキル基で置換されたC1〜C20アルキレン基から選択され、一個以上の非隣接CH2基が酸素で置換されていてもよい。
2はヒドロキシル基及びNH−R3基から選択される。
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C10アルキル基、及びフェニル基より選択される。
本発明は、具体的には、少なくとも部分的に被覆された顔料であり、その放射線硬化性ポリウレタン(A)が
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物、及び(d)少なくとも一種の一般式Iの化合物との反応により得られたものを提供する。
【0170】
【化10】

【0171】
ただし、
1とR2は、同じでも異なっていてもよく、独立して水素及びC1〜C10アルキル基から選択される。
1は、酸素及びN−R3から選択される。
1は、非置換のC1〜C20アルキレン基、あるいは一個以上のC1〜C4アルキル基、フェニル、又はO−C1〜C4−アルキル基で置換されたC1〜C20アルキレン基から選択され、一個以上の非隣接CH2基が酸素で置換されていてもよい。
2は、ヒドロキシル基及びNH−R3基から選択される。
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C10アルキル基、及びフェニル基より選択される。
【0172】
本発明の少なくとも部分的に被覆された顔料の製造方法は、上述のとおりであり、個の製造方法も、また本発明の範囲の一部に相当する。
【0173】
少なくとも部分的に被覆された本発明の顔料は、例えば、乾燥、凍結乾燥、濾過又はこれらの組み合わせにより、本発明の水性分散液から水を除去することにより得られる。
【0174】
少なくとも部分的に被覆された本発明の顔料は、インクジェット方式のインクの製造に特に有用である。
【0175】
本発明はまた、
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物、及び(d)少なくとも一種の一般式Iの化合物との反応により得られた放射線硬化性ポリウレタンを提供する。
【0176】
本発明の一実施様態によれば、本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A)の、例えば水素化ヨウ素数の測定や1H−NMRによる測定で求められる二重結合密度は、0.1〜5mol/kg・(A)の範囲、好ましくは0.2〜3mol/kg・(A)の範囲、最も好ましくは0.3〜2mol/kg・(A)の範囲である。
【0177】
本発明の放射線硬化性ポリウレタンの製造方法は上記のとおりであり、これもまた本発明の範囲の一部に相当する。
【0178】
本発明の放射線硬化性ポリウレタンは、本発明のインクジェットインクの製造に、また本発明の水性分散液の製造に特に有用である。
【0179】
以下に、実施例を記載する。
【0180】
一般的注意事項:
いずれの場合も、NCO含量はドイツ工業標準規格DIN53185に従って滴定法により測定した。
【0181】
本発明の顔料の被覆の程度は、透過型電子顕微鏡法で凍結割断法を用いて測定した。テトラヒドロフラン(THF)は使用前にナトリウム/ベンゾフェノン上から蒸留により乾燥した。本発明における固形分%濃度は、すべて重量%である。本発明における固形分はすべて150℃、30分間乾燥後に測定した。
【0182】
I.本発明の少なくとも部分的に被覆された顔料の調製
I.1.放射線硬化性ポリウレタン(A.1)の調整
I.1.1アロファネート基及びC−C二重結合を有するジイソシアネート(a.1)の製造
EP1144476B1の実施例1.1を繰り返した。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(a.1.1)と2−ヒドロキシエチルアクリレートとをフラスコに加え、窒素置換後、80℃で加熱攪拌した。200重量ppmのN,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アンモニウム2−エチルヘキサノエート
【0183】
【化11】

を加えた後、30分間をかけて120℃まで昇温した。
【0184】
その後、滴定によるNCO含量が総反応混合物に対して25重量%となるまで、反応混合物を120℃で攪拌し続けた。(a.1.1)に対して250重量ppmのリン酸ジ(2−エチルヘキシル)を加え、反応を停止した。未反応のHDIを、135℃、2.5mbarの薄膜蒸発機中で得られた混合物から除いた。得られたジイソシアネート(a.1)のNCO含量は15重量%、粘度は23℃で1200mPa・sであった。未反応のHDIは0.5重量%未満であった。C−C二重結合の量は1分子当たり2であった。
【0185】
I.1.2(a.1)から本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A.1)への変換
モル比1:1:2のイソフタル酸、アジピン酸及び1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン(異性体混合物)の重縮合により得られた、分子量(Mw)が800g/molのポリエステルジオール239.7gを、120℃まで加熱した。得られた溶融物を、スターラー、還流冷却器、ガス導入管及び滴下漏斗を備えた2l反応容器に移し、窒素雰囲気下で130℃まで加熱した。一旦ポリエステルジオールが透明な溶融物となった時点で、撹拌下で80℃まで冷却した。その後、ネオペンチルグリコール31.2gと1,1−ジメチロールプロピオン酸101.9gを加え、60℃まで冷却した。
その後、630gのテトラヒドロフラン(THF)、85.2gのジイソシアネート(a.1)及び234gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(a.2.1)を加えた。続いて(HDIに対して)1000ppmのジ−n−ブチルスズジラウレートを加え、滴定によるNCO含量が総反応混合物に対して1.2重量%になるまで、60℃で攪拌した。その後、氷浴中で反応混合物を室温まで冷却し、39.9gのTHFに溶解した39.9gのジエタノールアミンを加えて反応を停止させた。この酸を、76.9gのTHFに溶解した76.9gのトリエチルアミンで中和し、本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A.1)を得た。
【0186】
1.2本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A.2)の調整
15.6gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を46.7gのTHFに溶解し、混合物を50℃まで加熱した。その後、IPDIに対して130重量ppmのジ−n−ブチルスズジラウレートを加えた。次に、24.4gのTHFに溶解した8.1gの2−ヒドロキシエチルアクリレート(d.1)を加えた。NCO含量が総反応溶液に対して3.1重量%に下がるまで、反応溶液を50℃で攪拌した。そして、596.1gの放射線硬化性ポリウレタン(A.1)を加え、さらに総反応溶液に対して0.1重量%のジ−n−ブチルスズジラウレートを加えた。滴定によってNCOが検出されなくなるまで、混合物を60℃でさらに加熱攪拌した。965gの水を加えた後THFを留去し、本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A.2)の水性分散液(固形分:25重量%)を得た。その動的光散乱法による平均粒径は15nmであった。
【0187】
1.3本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A.3)の調整
44.5gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を138.4gのTHFに溶解し、混合物を50℃まで加熱後、IPDIに対して130重量ppmのジ−n−ブチルスズジラウレートを加えた。次に、69.7gTHFに溶解した23.2gの2−ヒドロキシエチルアクリレート(d.1)を加えた。NCO含量が総反応溶液に対して3.1重量%に下がるまで、反応溶液を50℃で攪拌した。そして425.8gの放射線硬化性ポリウレタン(A.1)を加え、さらに総反応溶液に対して0.2重量%のジ−n−ブチルスズジラウレートを加えた。滴定によってNCOが検出されなくなるまで、混合物を60℃でさらに加熱攪拌した。841gの水を加えた後THFを留去し、本発明の放射線硬化性ポリウレタン(A.3)の水性分散液(固形分;25重量%)を得た。その動的光散乱法による平均粒径は30nmであった。
【0188】
II.使用例
II.1.本発明の水性分散液の調整、一般的処方
本発明の水性分散液は、60gの直径が0.25〜0.5mmのガラス球を用いてスカンデックス振とう機で製造した。組成は表1にまとめてある。適量の成分とガラス球をスカンデックスに測り入れ、混合物を表1に示した時間振とうした。その後試料を取り出し、顔料ペーストの平均粒径を測定し(コールターカウンターLS230)、被覆の程度を計算した。pHを測定し、もし必要ならトリエタノールアミンで7.5に調製した。本発明の水性分散液WD.2.1〜WD.2.3が得られた。
【0189】
表1:本発明の水性分散液WD.2.1〜WD.2.3の成分及び組成
【0190】
【表1】

【0191】
成分量は特に記載のない限り、gで示してある。(A.2)は固形分で計算してある。
殺生剤1は、20重量%1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液である。
【0192】
他の本発明の水性分散液は、それぞれ(A.2)を(A.1)あるいは(A.3)で置き換えて上述の方法により得た。下記の本発明の水性分散液が得られた。
【0193】
WD.1.1(マゼンタ、(A.1)を使用)、
WD.1.2(ブラック、(A.1)を使用)、
WD.1.3(イエロー、(1.2)を使用)、

WD.3.1(マゼンタ、(A.3)を使用)、
WD.3.2(ブラック、(A.3)を使用)、
WD.3.3(イエロー、(A.3)を使用)、
【0194】
II.2インクジェット用の本発明のインクの調整
II.2.1インクジェット用の本発明のマゼンタインクT2.1.1の調整
以下のものを、ガラスビーカー中で互いに混合した:
30gのWD.2.1、
1gの尿素、
0.16gの光開始剤(D.1)
6gの平均分子量Mnが250g/molのポリ−THFと7gのポリエチレングリコール(Mn:400g/mol)、
9.2gのグリセロール、
0.8gの20重量%のベンズイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液、
0.5gの式[(CH33Si−O]2Si(CH3)−O(CH2CH2O)8−Hで表されるエトキシ化トリシロキサン、
51.34gの蒸留水。
ガラス繊維フィルター(カットオフサイズ:1μm)でろ過して、本発明のインクT2.1.1を得た。本発明のインクT2.1.1は、pHが7.5で、粘度が4.2mPa・sであった。
【0195】
【化12】

【0196】
II.2.2インクジェット用の本発明のインクT2.1.2の調整
次のものをビーカー内で互いに攪拌混合した:
30gのWD.2.1、
1gの尿素、
0.16gの光開始剤(D.1)
6gの平均分子量Mnが250g/molのポリ−THF、
7gのポリエチレングリコール(Mn:400g/mol)、
9.2gのグリセロール、
0.35gのジプロピレングリコールジアクリレート、
0.8gの20重量%のベンズイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液、
0.5gの式[(CH33Si−O]2Si(CH3)−O(CH2CH2O)8−Hで表されるエトキシ化トリシロキサン、
51.04gの蒸留水。
【0197】
ガラス繊維フィルター(カットオフサイズ:1μm)でろ過して、本発明のインクT2.1.2を得た。本発明のインクT2.1.2のpHは7.5で、粘度は4.2mPa・sであった。
【0198】
III.本発明のインクジェット方式インクでの印刷試験
本発明のインクT2.1.1とT2.1.2をそれぞれカートリッジにつめ、ミカミTX2(720dpi)を用いて用紙に印刷した。ノズル詰まりなしに、A4用紙4ページの印刷が可能であった。耐摩擦試験の結果、良好な値が得られた。
【0199】
また、本発明のインクT2.1.1とT2.1.2をそれぞれ、ミカミTX2(720dpi)プリンターを用いて、綿布上に印刷した。
【0200】
綿布には、次の三種の処理を行った:処理1:熱乾燥後光照射。処理2:化学線照射後熱乾燥、処理3:化学線照射のみで熱乾燥なし。
【0201】
なお、熱乾燥とは、100℃の乾燥キャビネット内で5分間乾燥することである。
【0202】
化学線照射は、はじめより二本の異なるUVランプ、エタプラスM−400−U2HとエタプラスM−400−U2HCを有するUV照射器を用いて行った。照射時間は10秒間で、入力エネルギーは1000mJ/cm2であった。
【0203】
表2及び表3に示す本発明の印刷物S2.1.1〜S2.3.1(インク:T2.1.1)、及びS2.1.2〜S2.3.2(インク:T2.1.2)が得られた。耐摩擦性はISO−105−D02:1993に準じて、また洗濯堅牢度はISO105−C06:1994に準じて決定した。
【0204】
表2:本発明により印刷した綿布の堅牢度
【0205】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)で少なくとも部分的に被覆された顔料(B)からなり、その少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)が
(a)1分子当たり平均1〜10個のアロファネート基と平均1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物との反応により得られたことを特徴とする水性分散液。
【請求項2】
前記ジ−又はポリ−イソシアネート(a)が少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネート(a1)と、一般式I:
【化1】

(ただし、
1とR2は、同一でも異なっていてもよく、独立して水素及びC1〜C10アルキル基から選択され、
1は、酸素及びN−R3から選択され、
1は、非置換のC1〜C20アルキレン基、あるいは一個又は複数のC1〜C4アルキル基、フェニル、又はO−C1〜C4−アルキル基で置換されるC1〜C20アルキレン基から選択され、一個以上の非隣接CH2基が酸素で置換されていてもよく、
2は、ヒドロキシル基及びNH−R3基から選択され、
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C10アルキル基、及びフェニル基より選択される。)
で表される少なくとも一種の化合物より得られた請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物(c)が、1,1,1−トリメチロール−C1〜C4アルキルカルボン酸、クエン酸、1,1−ジメチロール−C1〜C4アルキルカルボン酸、1,1−ジメチロール−C1〜C4アルキルスルホン酸、1分子当たり平均して3〜300個のC2〜C3アルキレンオキサイド単位を有するポリ−C2〜C3アルキレングリコール、COOM基又はSO3M基を有する親水性ポリアミン(ただし、Mはアルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンから選択される)、少なくとも一種の脂肪族又は環状脂肪族ジオールと少なくとも一種の脂肪族、芳香族又は環状脂肪族ジカルボン酸の重縮合により得られるポリエステルジオールから選択される請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
さらに、ジイソシアネート(b)と少なくとも二個のイソシアネート−反応性基を有する化合物(c)との反応で得られる少なくとも一種のポリウレタン(C)からなる請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項5】
前記顔料(B)が、ポリウレタン(C)で部分的に被覆されている請求項4に記載の水性分散液。
【請求項6】
さらに少なくとも一種の光開始剤(D)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項7】
前記少なくとも一種の光開始剤(D)が、α−スプリッターあるいは水素引き抜き性光開始剤である請求項6に記載の水性分散液。
【請求項8】
前記放射線硬化性ポリウレタン(a)が、
(a)1分子当たり平均1〜10個のアロファネート基と平均1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物、及び(d)少なくとも一種の一般式Iの化合物との反応により得られる請求項1〜7のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項9】
少なくとも一種の顔料(B)を少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)に分散し、必要により分散の前又は後に、少なくとも一種のポリウレタン(C)及び/又は少なくとも一種の光開始剤(D)を添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水性分散液の製造方法。
【請求項10】
前記分散が、ボールミルで行われる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれ1項に記載の水性分散液を基材染色用又は基材印刷用の製剤としてのあるいはその製造のための利用。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれ1項に記載の少なくとも一種の水性分散液を使用することを特徴とする染色方法又は印刷方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により染色されたあるいは印刷された基材。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれ1項に記載の少なくとも一種の水性分散液を使用することを特徴とするインクジェット方式のインクの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれ1項に記載の少なくとも一種の水性分散液を含むことを特徴とするインクジェット方式用のインク。
【請求項16】
請求項15に記載のインクジェット方式用のインクを使用する工程を含む印刷方法。
【請求項17】
請求項16に記載の工程により得られたことを特徴とする印刷物。
【請求項18】
少なくとも一種の顔料(B)と少なくとも一種の放射線硬化性ポリウレタン(A)を分散することにより得られた少なくとも部分的に被覆された顔料であって、前記放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物との反応により得られたことを特徴とする顔料。
【請求項19】
前記ジ−又はポリ−イソシアネート(a)が、少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネート(a1)と一般式I:
【化2】

(ただし、
1とR2は、同一でも異なっていてもよく、独立して水素及びC1〜C10アルキル基から選択され、
1は、酸素及びN−R3から選択され、
1は、非置換のC1〜C20アルキレン基、あるいは一個又は複数のC1〜C4アルキル基、フェニル、又はO−C1〜C4−アルキル基で置換されるC1〜C20アルキレン基から選択され、一個以上の非隣接CH2基が酸素で置換されていてもよく、
2は、ヒドロキシル基及びNH−R3基から選択され、
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C10アルキル基、及びフェニル基より選択される。)
表される少なくとも一種の化合物により得られる請求項18に記載の少なくとも部分的に被覆された顔料。
【請求項20】
前記放射線硬化性ポリウレタン(A)が、
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物、及び(d)一般式I:
【化3】

(ただし、
1とR2は、同一でも異なっていてもよく、独立して水素及びC1〜C10アルキル基から選択され、
1は、酸素及びN−R3から選択され、
1は、非置換のC1〜C20アルキレン基、あるいは一個又は複数のC1〜C4アルキル基、フェニル、又はO−C1〜C4−アルキル基で置換されるC1〜C20アルキレン基から選択され、一個以上の非隣接CH2基が酸素で置換されていてもよく、
2は、ヒドロキシル基及びNH−R3基から選択され、
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、C1〜C10アルキル基、及びフェニル基より選択される。)
で表される化合物との反応により得られる請求項18又は19に記載の少なくとも部分的に被覆された顔料。
【請求項21】
(a)1分子当たり平均して1〜10個のアロファネート基と平均して1〜10個のC−C二重結合を有する少なくとも一種のジ−又はポリ−イソシアネートと、
(b)少なくとも一種の他のジイソシアネートと、
(c)少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも一種の化合物、及び
(d)少なくとも一種の一般式Iの化合物との反応により得られる放射線硬化性ポリウレタン。

【公表番号】特表2008−531778(P2008−531778A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556609(P2007−556609)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060229
【国際公開番号】WO2006/089933
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】