説明

放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜

【課題】 優れた硬化性を有するとともに、各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、低カール性、密着性及び透明性、特に硬度及び低カール性に優れた被膜を形成し得る放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜を提供する。
【解決手段】 (A)ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基及び下記式(1)に示す基を含む有機化合物とを結合させてなる粒子、


[式(1)中、Uは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Vは、O又はSを示す。](B)2以上の重合性不飽和基を含む化合物、(C)フッ素原子を有する界面活性剤、及び(D)メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールからなる群から選択される有機溶剤を含有することを特徴とする放射線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜に関する。さらに詳しくは、本発明は、硬化性に優れるとともに、各種基材[例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等]の表面に、硬度、耐擦傷性、低カール性、密着性及び透明性、特に硬度及び低カール性、に優れた被膜を形成し得る放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種基材表面の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材;各種基材の接着剤、シーリング材;印刷インクのバインダー材として、各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、低カール性、密着性及び透明性に優れた被膜を形成し得る、優れた硬化性を有する放射線硬化性樹脂組成物が求められている。これらの要求のうち耐擦傷性の改善を目指して、コロイダルシリカを配合した材料が種々提案されている。これらの中には、熱硬化型の材料(特許文献1、2)及び放射線硬化型の材料(特許文献3、4)が含まれる。これらコーティング材料の特徴は、シリカ粒子の表面を特定の有機シラン、又は特定の条件で処理することによりコーティング材料の性能を改善する点にある。
しかしながら、このようなコーティング材料は、ディップコート法により塗布する場合に均一な膜厚を得ることが困難であったほか、組成物としての硬化性、並びに硬化被膜とした場合の、硬度、耐擦傷性、低カール性、密着性及び透明性の全てを満足するものではなかった。また、熱硬化型のコーティング材料は高温で長時間の加熱処理が必要であり、耐熱性の低いプラスチック基材に対しては適用することが困難であった。
【特許文献1】米国特許第3,451,838号明細書
【特許文献2】米国特許第2,404,357号明細書
【特許文献3】特公昭62−21815号公報
【特許文献4】特開2000−256535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、優れた硬化性を有するとともに、各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、低カール性、密着性及び透明性、特に硬度及び低カール性に優れた被膜を形成し得る放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、特定の元素の酸化物粒子と、分子内に特定の基を含む有機化合物とを結合させてなる粒子を含む特定の成分からなる放射線硬化性樹脂組成物によって、上記諸特性、その中でも特に硬化膜としたときの硬度及び低カール性を満足する組成物が得られることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜等を提供するものである。
1.(A)ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基及び下記式(1)に示す基を含む有機化合物とを結合させてなる粒子、
【化2】

[式(1)中、Uは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Vは、O又はSを示す。]
(B)2以上の重合性不飽和基を含む化合物、
(C)フッ素原子を有する界面活性剤、及び
(D)メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールからなる群から選択される一以上を、全溶剤中に50質量%以上含有する有機溶剤
を含有することを特徴とする放射線硬化性樹脂組成物。
2.前記有機化合物が、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものである1記載の放射線硬化性樹脂組成物。
3.前記有機化合物が、シラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物である1又は2記載の放射線硬化性樹脂組成物。
4.前記(C)フッ素原子を有する界面活性剤が、含フッ素アクリル残基とポリジメチルシロキサン残基を含む1〜3のいずれか記載の放射線硬化性樹脂組成物。
5.前記(D)成分が、メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールの混合物である1〜4のいずれか記載の放射線硬化性樹脂組成物。
6.1〜5のいずれか記載の放射線硬化性樹脂組成物に放射線を照射せしめて得られる硬化膜。
7.透明基材及び6記載の硬化膜からなる層を有する積層体。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって、ディップコート法によるコーティングに適した放射線硬化性組成物を得ることができる。具体的には、塗布ムラ、ハジキがなく、硬化膜の中心部と端部での膜厚が均一な塗膜を得ることができる。
本発明の放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜は、このような特性を有することから、例えば、反射防止板用ハードコート、タッチパネル等の光学シート用ハードコート、携帯電話等のモバイル機器の表示部に使用される保護板用ハードコート等の材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の放射線硬化性樹脂組成物、硬化膜及び積層体の実施の形態を具体的に説明する。
【0007】
I.放射線硬化性樹脂組成物
本発明の放射線硬化性樹脂組成物は、(A)特定の酸化物粒子、(B)分子内に2以上の重合性不飽和基を含む化合物、(C)フッ素原子を有する界面活性剤、及び(D)特定の溶剤を必須成分とし、この他に非必須成分として(E)重合開始剤等を含有することを特徴とするものである。以下、各組成成分について具体的に説明する。
【0008】
1.特定の金属酸化物粒子(A)
本発明に用いられる成分(A)は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子と、特定有機化合物とを結合させてなる粒子(以下、「反応性粒子」という。)である。
【0009】
(1)酸化物粒子(Aa)
本発明に用いられる酸化物粒子(Aa)は、得られる放射線硬化性樹脂組成物の硬化被膜の無色性の観点から、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子である。
【0010】
これらの酸化物としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン及び酸化セリウムを挙げることができる。中でも、高硬度性の観点から、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア及び酸化アンチモンが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。さらには、このような元素の酸化物粒子は、粉体状又は溶剤分散ゾルであることが好ましい。溶剤分散ゾルである場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0011】
酸化物粒子の数平均粒子径は、0.001μm〜2μmが好ましく、0.001μm〜0.2μmがさらに好ましく、0.001μm〜0.1μmが特に好ましい。数平均粒子径が2μmを越えると、硬化膜としたときの透明性が低下したり、被膜としたときの表面状態が悪化する傾向がある。ここで、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。
【0012】
ケイ素酸化物粒子、例えばシリカ粒子として市販されている商品としては、例えばコロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製 商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製 商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製 商品名:E220A、E220、富士シリシア(株)製 商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製 商品名:SGフレーク等を挙げることができる。
【0013】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:アルミナゾル−100、−200、−520;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:セルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム;酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製 商品名:ナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製 商品名:SN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製 商品名:ニードラール等を挙げることができる。酸化物粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり、好ましくは球状である。酸化物粒子の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは10〜1000m2/gであり、さらに好ましくは100〜500
2/gである。これら酸化物粒子の使用形態は乾燥状態の粉末、又は水もしく
は有機溶剤で分散した状態で用いることができる。例えば、上記の酸化物の溶剤分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の酸化物粒子の分散液を直接用いることができる。特に、硬化膜に優れた透明性を要求する用途においては酸化物の溶剤分散ゾルの利用が好ましい。
【0014】
(2)特定有機化合物(Ab)
本発明に用いられる特定有機化合物(Ab)は、重合性不飽和基を有する化合物であり、さらに、下記式(1)に示す基を含む有機化合物であることが好ましい。また、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものであることが好ましい。また、この特定有機化合物(Ab)は、分子内にシラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。
【0015】
【化3】

[式(1)中、Uは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Vは、O又はSを示す。]
【0016】
(i)重合性不飽和基
特定有機化合物(Ab)に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
【0017】
(ii)前記式(1)に示す基
有機化合物に含まれる前記式(1)に示す基[−U−C(=V)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1つとを併用することが好ましい。
前記式(1)に示す基[−U−C(=V)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化膜にした場合、優れた機械的強度、基材や高屈折率層等の隣接層との密着性及び耐熱性等の特性を付与せしめるものと考えられる。
【0018】
(iii)シラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物
特定有機化合物(Ab)は、分子内にシラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。このようなシラノール基を生成する化合物としては、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が結合した化合物を挙げることができるが、ケイ素原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が結合した化合物、即ち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
シラノール基又はシラノール基を生成する化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子(Aa)と結合する構成単位である。
【0019】
(iv)好ましい態様
特定有機化合物(Ab)の好ましい具体例としては、例えば、下記式(2)に示す化合物を挙げることができる。
【0020】
【化4】

【0021】
式(2)中、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここで、jは、1〜3の整数である。
【0022】
[(RO)3−jSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
は、炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。具体例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。
は、2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。具体例として、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合を含むこともできる。
10は、(k+1)価の有機基であり、好ましくは、鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
Zは、活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。また、kは、好ましくは、1〜20の整数であり、さらに好ましくは、1〜10の整数、特に好ましくは、1〜5の整数である。
【0023】
式(2)で示される化合物の具体例として、下記式(3−1)及び(3−2)で示される化合物が挙げられる。
【0024】
【化5】

[式(3−1)及び(3−2)中、「Acryl」は、アクリロイル基を示す。「Me」は、メチル基を示す。]
【0025】
本発明で用いられる特定有機化合物(Ab)の合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。好ましくは、メルカプトプロピルトリメトキシシランとイソホロンジイソシアネートをジブチルスズジラウレート存在下で混合し、60〜70℃で数時間程度反応させた後に、ペンタエリスリトールトリアクリレートを添加して、さらに60〜70℃で数時間程度反応させることにより製造される。
【0026】
(3)反応性粒子(A)の製造方法
シラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する特定有機化合物(Ab)を金属酸化物粒子(Aa)と混合し、加水分解させ、両者を結合させる。得られる反応性粒子(A)中の有機重合体成分即ち加水分解性シランの加水分解物及び縮合物の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱質量分析により求めることができる。
【0027】
酸化物粒子(Aa)への特定有機化合物(Ab)の結合量は、反応性粒子(A)(金属酸化物粒子(Aa)及び特定有機化合物(Ab)の合計)を100質量%として、好ましくは、0.01質量%以上であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上、特に好ましくは、1質量%以上である。金属酸化物粒子(Aa)に結合した特定有機化合物(Ab)の結合量が0.01質量%未満であると、組成物中における反応性粒子(A)の分散性が十分でなく、得られる硬化膜の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。また、反応性粒子(A)製造時の原料中の金属酸化物粒子(Aa)の配合割合は、好ましくは、5〜99質量%であり、さらに好ましくは、10〜98質量%である。反応性粒子(A)を構成する酸化物粒子(Aa)の含有量は、反応性粒子(A)の65〜95質量%であることが好ましい。
【0028】
反応性粒子(A)の硬化性組成物中における配合(含有)量は、全溶剤を除く組成物全量を100質量%として、5〜70質量%が好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。5質量%未満であると、硬化膜の硬度が不十分であり、70質量%を超えると、成膜性が不十分となることがある。尚、反応性粒子(A)の量は、固形分を意味し、反応性粒子(A)が分散液の形態で用いられるときは、その配合量には分散媒の量を含まない。
【0029】
2.2以上の重合性不飽和基を含む化合物(B)
本発明に用いられる化合物(B)は、2以上の重合性不飽和基を含む化合物である。この化合物(B)は組成物の成膜性を高めるために好適に用いられる。化合物(B)としては重合性不飽和基を2以上含むものであれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリルエステル類、ビニル化合物類を挙げることができる。この中では、(メタ)アクリルエステル類が好ましい。
以下、本発明に用いられる化合物(B)の具体例を列挙する。
(メタ)アクリルエステル類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
この中では、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0030】
このような化合物(B)の市販品としては、例えば、東亞合成(株)製 商品名:アロニックス M−400、M−408、M−450、M−305、 M−309、 M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、 M−210、 M−215、 M−220、 M−225、 M−233、 M−240、 M−245、 M−260、 M−270、M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1231、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330、日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD D−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA、共栄社化学(株)製 商品名:ライトアクリレート PE−4A、DPE−6A、DTMP−4A等を挙げることができる。
【0031】
本発明に用いられる、化合物(B)の配合量は、全溶剤を除く組成物全量を100質量%として、20〜80質量%配合することが好ましく、40〜75質量%配合することがさらに好ましい。20質量%未満であると、硬化膜としたときに硬度が不十分となることがあり、80質量%を超えると、硬化膜としたときに硬化歪みを生じることがある。
なお、本発明の組成物中には、化合物(B)の外に、必要に応じて、分子内に重合性不飽和基を1つ有する化合物を含有させてもよい。分子内に重合性不飽和基を1つ有する化合物の種類は特に限定されない。
【0032】
3.フッ素原子を有する界面活性剤(C)
本発明に用いられるフッ素系界面活性剤(C)は、組成物の基材への塗工性を高めるために用いられるが、このフッ素系界面活性剤(C)を用いることにより、意外なことに硬化膜としたときの硬度も向上する。このようなフッ素系界面活性剤としては、ノニオン性フッ素系界面活性剤及びアニオン性フッ素系界面活性剤の両方又はそのいずれかであれば特に制限はないが、溶剤への溶解性の点からノニオン系が好ましい。
具体的には、大日本インキ化学工業(株)社製 商品名:メガファックF−142D、F−144D、F−171、F−172、F−173、F−177、F−178A、F−178K、F−179、F−179A、F−183、F−184、F−191、F−812、F−815、F−1405、F410、F−443、F−445、F−450、F−471、F−472SF、F475、F−479、F―482、R−30、MCF−350、TF1025、(株)ジェムコ製 商品名:EFTOP EF−101、EF−121、EF−122B、EF−122C、EF−122A3、EF−121、EF−123A、EF−123B、EF−126、EF−127、EF−301、EF−302、EF−351、EF−352、EF−601、EF−801、EF−802、(株)ネオス製 商品名:フタージェント250、251、222F、FTX−218、212M、245M、290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTS−230S、FTX−209F、FTX−213F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D、FTX−720C、FTX−740C、セイミケミカル(株)製 商品名:サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145、S−381、S−383、S−393、S−101、KH−40、SA−100等を挙げることができる。これらの中で、ディップコート法による塗布性の観点からメガファックF−179、F−470等が好ましい。
【0033】
本発明に用いられるフッ素系界面活性剤(C)の配合量は、全溶剤を除く組成物全量を100質量%として、0.0001〜5重量%配合することが好ましく、0.001〜3重量%がさらに好ましい。配合量が0.0001重量%未満、又は5重量%を超えると、硬化膜としたときの硬度が不十分になることがある。
【0034】
4.溶剤(D)
本発明の組成物は、特定の溶剤を含有する、即ち、(D)溶剤は、メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールからなる群から選択される一種以上を、溶剤全体の50質量%以上含有していることが必要であり、好ましくは80質量%以上である。これらの(D)溶剤が、溶剤全体の50質量%未満であると、ディップコート法により本組成物を透明基材に塗布する場合に、透明基材の種類によっては溶剤に溶解しやすいため、得られる硬化膜や積層体の透明度が低下し、光学用途に適さないものとなる。例えば、溶剤としてメチルエチルケトンのみを用いた場合、ディップコート法により本組成物にポリカーボネートやポリメチルメタクリレートの透明基材を浸漬した場合、透明基材を構成する樹脂が一部溶解するため、得られる硬化膜や積層体が白濁する。(D)溶剤が、メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールからなる混合物であると特に好ましい。
【0035】
5.(E)重合開始剤
本発明においては、必要に応じて、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分以外の配合成分として、(E)重合開始剤を配合することができる。まず、その(E)重合開始剤を用いることを含め、本発明の組成物の硬化方法について説明する。
【0036】
本発明の組成物は熱及び/又は放射線によって硬化される。
熱による場合、その熱源としては、例えば電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。
放射線による場合、その放射線の線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、赤外線の線源としては、例えば、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源としては、例えば、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源としては、例えば、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源としては、例えば、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源としては、例えば、60Co等の核分裂物質が挙げられ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に照射してもよく、また1種以上の放射線を一定期間をおいて照射してもよい。本発明の組成物には、硬化時間を短縮させるために重合開始剤(E)を添加してもよく、そのような重合開始剤(E)としては、例えば熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物等及び放射線照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等の、汎用されているものを挙げることができる。
【0037】
本発明においては、上記(E)重合開始剤として放射線重合開始剤を用いることが好ましく、その中でも、(e)1−ヒドロキシシクロヘキシル基を有するアリールケトン類及びN−モルフォリノ基を有するアリールケトン類の両方又はそのいずれかを含む放射線重合開始剤(以下、「放射線重合開始剤(e)」ということがある)を用いることがさらに好ましい。1−ヒドロキシシクロヘキシル基を有するアリールケトン類のみを添加した場合、着色の少ない硬化膜を短時間で形成することができる。一方、N−モルフォリノ基を有するアリールケトン類のみを添加した場合、表面硬度の高い硬化膜を短時間で形成することができる。両者を併用した場合、表面硬度が高く着色の少ない硬化膜を短時間で形成することができる。
【0038】
1−ヒドロキシシクロヘキシル基を有するアリールケトン類としては特に制限はないが、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルイソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルドデシルフェニルケトン等を挙げることができる。また、本発明に用いられるN−モルフォリノ基を有するアリールケトン類としては特に制限はないが、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−メチル−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−メチル−1−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−メチル−1−[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール等を挙げることができる。これらの放射線重合開始剤(e)は1種単独で又は2種以上を組合わせて用いても良いが、硬化膜としたときに、その表面部分及び内部の両方の硬化速度及び硬度を向上させるためには、1−ヒドロキシシクロヘキシル基を有するアリールケトン類とN−モルフォリノ基を有するアリールケトン類とを組合わせて用いることが好ましい。
このような放射線重合開始剤(e)の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア 184、907等を挙げることができる。
【0039】
本発明において必要に応じて用いられる重合開始剤(E)の配合量は、全溶剤を除く組成物全量を100質量%として、0.01〜20質量%配合することが好ましく、0.1〜10質量%が、さらに好ましい。0.01質量%未満であると、硬化膜としたときの硬度が不十分となることがあり、20質量%を超えると、硬化膜としたときに内部(下層)まで硬化しないことがある。
【0040】
また、1−ヒドロキシシクロヘキシル基を有するアリールケトン類とN−モルフォリノ基を有するアリールケトン類を併用する場合の両者の配合比は、重量比で、10:90〜90:10が好ましく、40:60〜80:20がさらに好ましい。
【0041】
6.上記以外の配合成分(F)
本発明においては、必要に応じて、増感剤、反応性粒子(A)以外の酸化物粒子、酸化防止剤等の上記以外の種々の配合成分を配合することができる。以下、その例を列挙する。
(1)増感剤
増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等を挙げることができる。この増感剤の市販品としては、日本化薬(株)製 商品名:KAYACURE DMBI、EPA等を挙げることができる。
【0042】
(2)反応性粒子(A)以外の酸化物粒子
反応性粒子(A)以外の酸化物粒子としては、例えば、有機化合物と結合していない酸化物粒子等を挙げることができる。
【0043】
(3)各種添加剤
添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を挙げることができる。
【0044】
酸化防止剤の市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:イルガノックス1010、1035、1076、1222等を挙げることができ、紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:チヌビンP、234、320、326、327、328、213、400、住友化学工業(株)製 商品名:スミソーブ110、130、140、220、250、300、320、340、350、400等を挙げることができ、光安定剤の市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:チヌビン292、144、622LD、三共化成工業(株)製 商品名:サノールLS−770、765、292、2626、1114、744等を挙げることができ、シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランを挙げることができ、これらの市販品としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 商品名:SH6062、SZ6030、信越シリコーン(株)製 商品名:KBE903、KBM803等を挙げることができ、老化防止剤の市販品としては、住友化学工業(株)製 商品名:アンチゲンW、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW等を挙げることができる。
【0045】
本発明の組成物は被覆材として好適であり、被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは1〜200μmである。
【0046】
II.硬化膜
本発明の硬化膜は、前記放射線硬化性樹脂組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱又は/及び放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。本発明で「放射線」とは、赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等を意味する。放射線により硬化させる場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加圧電圧は10〜300KV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0047】
本発明の硬化膜は、硬度、耐擦傷性、低カール性、密着性及び透明性、特に硬度及び低カール性に優れた特徴を有しているので、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材(特に、透明性を要求されるプラスチックシート、プラスチックフィルム等のハードコート材として好適に用いられる。);各種基材の接着剤、シーリング材;印刷インクのバインダー材等として好適に用いられる。さらには、陰極線管、レーザーディスプレイ、フォトクロミックディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、エレクトロルミネセントパネル等の各種ディスプレイの前面板又はこれらの入力用装置部品、その他、カバーケース等の前面カバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドシールド、ライトカバー、ヘルメットシールド等の用途に広く利用することができる。
【0048】
III.積層体
上記本発明の硬化膜は、通常、ハードコート層として基材上に積層されて用いられるものであり、さらにその上に高屈折率層、低屈折率層を積層することにより、反射防止膜として好適な積層体を形成することができる。反射防止膜は、これら以外の層をさらに有していてもよく、例えば、高屈折率膜と低屈折率膜の組み合わせを複数個設けて広い波長範囲の光に対して比較的均一な反射率特性を有するいわゆるワイドバンドの反射防止膜としてもよく、帯電防止層を設けてもよい。
基材としては特に制限はないが、反射防止膜として用いる場合には、例えば前述の、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)等を挙げることができる。
本発明の積層体に用いられる高屈折率の膜としては、例えば、屈折率が1.65〜2.20のジルコニア粒子等の金属酸化物粒子を含有するコート材硬化膜等を挙げることができる。
本発明の積層体に用いられる低屈折率の膜としては、例えば、屈折率が1.38〜1.45のフッ化マグネシウム、二酸化ケイ素等の金属酸化物膜、フッ素系コート材硬化膜等を挙げることができる
【0049】
前記本発明の硬化性組成物を硬化させてなる高屈折率の硬化膜上に低屈折率の膜を形成する方法としては、例えば、金属酸化物膜の場合には、真空蒸着やスパッタリング等を挙げることができ、またフッ素系コート材硬化膜の場合には、前述した組成物の塗布(コーティング)方法と同一の方法を挙げることができる。
このように前記高屈折率の硬化膜と低屈折率の膜とを基材上に積層することによって、基材表面における光の反射を有効に防止することができる。
本発明の積層体は、硬度が高く、カール性が小さく、屈曲性に優れ、低反射率を有するとともに耐薬品性に優れるため、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。
なお、以下において、部、%は特に記載しない限り、それぞれ重量部、重量%を示す。
また、本発明において「固形分」とは、組成物から溶剤等の揮発成分を除いた部分を意味し、具体的には、組成物を120℃のホットプレート上で1時間乾燥して得られる残渣物(不揮発成分)を意味する。
【0051】
製造例1:特定有機化合物の合成
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン221部、ジブチル錫ジラウレート1部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート222部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)549部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)を得た。生成物中の残存イソシアネート量をFT−IRで分析したところ0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。生成物の赤外吸収スペ
クトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550カイザーの吸収ピーク及び原料イソシアネート化合物に特徴的な2260カイザーの吸収ピークが消失し、新たにウレタン結合及びS(C=O)NH−基に特徴的な1660カイザーのピーク及びアクリロキシ基に特徴的な1720カイザーのピークが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロキシ基と−S(C=O)NH−、ウレタン結合を共に有するアクリロキシ基修飾アルコキシシランが生成していることを示した。以上により、前記式(3−1)及び(3−2)で示される化合物(Ab)が合計で773部得られたほか、反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート220部が混在している。
【0052】
製造例2 反応性シリカ粒子分散液(A−1)の調製
製造例1で製造した重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)2.32部、シリカ粒子分散液(日産化学製、商品名;メタノールシリカゾル)(Aa)(シリカ濃度32%)89.90部、イオン交換水0.12部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.36部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで反応性粒子(分散液(A−1))を得た。この分散液(A−1)をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、30.7%であった。また、分散液(A−1)を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、90%であった。
【0053】
実施例1
表1に従って、反応性シリカ粒子(A−1)及びジペンタエリスリトールテトラアクリレート(B−1)を混合し40℃で2時間撹拌することで均一な溶液を得た。この溶液をロータリーエバポレーターを用いて固形分濃度が約80%となるよう減圧濃縮した後、表1に記載のその他の成分を加え、均一な溶液の組成物を得た。この組成物の固形分含量を求めたところ、39.4%であった。
【0054】
表1に従い成分を変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す実施例2〜7、比較例1〜4の各組成物を得た。
【0055】
硬化膜の評価
本発明の組成物の効果を明らかにするため、上記組成物を用いて塗布、乾燥、光照射して得られた硬化膜の評価を行った。以下にその評価方法を示す。また、評価結果を表1に示す。
1.評価用硬化膜の作製
(1)基材
50×100×2mm厚のポリカーボネート板を使用した。
(2)塗布、乾燥、硬化条件
基材上にディップコータを用い、引き上げ速度300mm/分、浸漬時間60秒の条件で乾燥膜厚6μmとなるように塗工した後、80℃の熱風式乾燥機中で3分間乾燥後、コンベア式水銀ランプを用いて1J/cmの光量で照射後、25℃で、24時間保管後評価した。
2.評価法
(1)ハジキ:
硬化膜の膜厚の局所的な異常による斑紋(ハジキ)の多少を目視により判定した。塗膜全体を観察して、ハジキがない場合を○、1以上3以下のハジキがある場合を△、4以上のハジキがある場合を×とした。ハジキは、組成物の塗膜と基材の濡れ性が不十分である場合に、ディップコートの際に発生するものである。(2)膜厚均一性:
基材中心部の塗膜の膜厚と、下端部の塗膜の膜厚とを測厚計で測定しそれらの差(μm)を求めて評価値とした。2μm以下であれば液切れがよくハードコート付基材として好適に用いられる。
(2)膜厚均一性:
基材中心部の塗膜の膜厚と、下端部の塗膜の膜厚とを測厚計で測定しそれらの差(μm)を求めて評価値とした。2μm以下であれば液切れがよくハードコート付基材として好適に用いられる。
(3)透明性
得られた硬化膜の透明性を目視判定した。濁りが見られない場合を「○」、明らかに濁りの見られる場合を「×」とした。
【0056】
【表1】

【0057】
F179:メガファックF−179;大日本インキ化学工業(株)社製
F470:メガファックF−470;大日本インキ化学工業(株)社製
EF351:EFTOP EF−351;(株)ジェムコ製TR−701:エチレンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物、アデカフプルロニックTR−701;旭電化製
B−1:ジペンタエリスリトールテトラアクリレート
E−1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184)
E−2:2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノ-プロパノン-1(Irgacure907)
F−1:Irganox 1010;ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
F−2:サノールLS-765;ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート
MIBK:メチルイソブチルケトン
MEK:メチルエチルケトン
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の放射線硬化性樹脂組成物及びその硬化膜は、例えば、反射防止板用ハードコート、タッチパネル等の光学シート用ハードコート、携帯電話等のモバイル機器の表示部に使用される保護板用ハードコート等の材料プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材;各種基材の接着剤、シーリング材;印刷インクのバインダー材等として好適に用いることができる。本発明の放射線硬化性樹脂組成物は、特に、ディップコート法により塗布される場合の均一な塗布性に優れるため、プロジェクションテレビ等の大型の表示装置や、携帯電話等の小型の装置のいずれにも好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基及び下記式(1)に示す基を含む有機化合物とを結合させてなる粒子、
【化1】

[式(1)中、Uは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Vは、O又はSを示す。]
(B)2以上の重合性不飽和基を含む化合物、
(C)フッ素原子を有する界面活性剤、及び
(D)メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールからなる群から選択される一以上を、全溶剤中に50質量%以上含有する有機溶剤
を含有することを特徴とする放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機化合物が、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものである請求項1に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機化合物が、シラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物である請求項1又は2に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)フッ素原子を有する界面活性剤が、含フッ素アクリル残基とポリジメチルシロキサン残基を含む請求項1〜3のいずれか一に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)成分が、メタノール、メチルイソブチルケトン及びn−ブタノールの混合物である請求項1〜4のいずれか一に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一に記載の放射線硬化性樹脂組成物に放射線を照射せしめて得られる硬化膜。
【請求項7】
透明基材及び請求項6に記載の硬化膜からなる層を有する積層体。

【公開番号】特開2006−233170(P2006−233170A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195697(P2005−195697)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】