説明

放湿壁面構造及びタイル

【課題】壁本体から湿気を放出させる、放湿や遮熱の機能を有する放湿壁面構造及びその放湿壁面構造に用いられるタイルを提供する。
【解決手段】複数のタイルが施工面12に敷設されてなり、前記タイルは表面90と、前記施工面に面接する裏面と、一対の互いに対向する主側面6と、該主側面と隣り合う一対の互いに対向する副側面7とを有する板状体の一部分が欠損空間88で欠損した形状をなし、前記欠損空間が各前記主側面がわで外部空間と導通し、前記副側面がわ及び前記表面がわで外部空間と導通せず、前記施工面に前記欠損空間に露出する露出面92が存在し、隣り合うタイルの前記主側面間に目地空間となる隙間が形成された放湿壁面構造であり、前記放湿壁面構造に用いられる前記タイルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放湿や遮熱の機能を有する放湿壁面構造及びその放湿壁面構造に用いられるタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁本体には美観の発現、遮熱、断熱あるいは防水のため化粧パネルやタイルが敷設される。あるいは塗料が施される。しかし、これらのパネルやタイルや塗料は壁本体から放出されるべき湿気を遮断するので、湿気を室内にこもらせてしまうという問題がある。
このため、発泡樹脂パネルに、その室内面に掘り込み形成して多数配置した集湿スペースと、該集湿スペースと室外面に連通するように透設した各集湿スペース毎に単一乃至複数にして通気抵抗を可及的に大とした放湿孔とを備えさせた放湿性外断熱パネルなどが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、透湿性の塗料(例えば、特許文献2参照)も開示されている。
【0003】
このようなパネルは放湿性のうえでは有効的といえるものの、樹脂を用いることによる耐久性や、外部からの衝突物による耐破損性などの点が懸念される。また、このようなパネルや塗料はタイルの持つような外観の重厚さを表現することが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
[特許文献1]特開2006−104745号公報
[特許文献2]特開平11−124547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、壁本体から湿気を放出させる、放湿や遮熱の機能を有する放湿壁面構造及びその放湿壁面構造に用いられるタイルを提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、複数の板状のタイルが施工面に敷設されてなり、
前記タイルは表面と、施工面に面接する裏面と、一対の互いに対向する主側面と、該主側面と隣り合う一対の互いに対向する副側面とを有し、一部分が欠損して欠損空間が形成され、
前記欠損空間が各前記主側面がわで外部空間と導通し、前記副側面がわ及び前記表面がわで外部空間と導通せず、
前記施工面に前記欠損空間に露出する露出面が存在し、
隣り合うタイルの前記主側面間に目地空間となる隙間が形成された放湿壁面構造であることにある。
【0007】
前記欠損空間は、前記裏面に形成されて一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘る溝により形成され得る。
【0008】
前記施工面は、前記タイルを係合する係合部を備え得、前記タイルが前記施工面に前記係合部を介して着脱可能に敷設されてなり得る。
【0009】
また、本発明の要旨とするところは、前記欠損空間が前記タイルを一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘って貫通する貫通中空部と、前記裏面から前記貫通中空部に至る1または複数の貫通孔からなる前記放湿壁面構造であることにある。
【0010】
前記放湿壁面構造においては、前記裏面の前記施工面に接する部分の面積をS、前記露出面の面積をKとしたとき、Kの(S+K)に対する比率が2〜90%であり得る。
【0011】
さらに、本発明の要旨とするところは、前記放湿壁面構造に用いられる前記タイルであり、前記溝の内側面に凹凸が形成されたタイルであることにある。
【0012】
さらに、本発明の要旨とするところは、前記放湿壁面構造に用いられる前記タイルであり、一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘る貫通中空部を有し、前記裏面から前記貫通中空部に至る1または複数の貫通孔が形成されたタイルであることにある。
【0013】
前記タイルは、敷設状態でタイルの裏面の壁本体に接する部分の面積をS、前記貫通孔の前記裏面の開口部の面積の総和をKとしたとき、Kの(S+K)に対する比率が2〜90%であるタイルであり得る。
【0014】
前記タイルは、前記欠損空間が、前記タイルを一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘って貫通する貫通中空部と、前記裏面を二分して一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘って形成され前記貫通中空部に達する切れ目により形成され、前記溝が貫通中空部と前記切れ目からなり、敷設状態でタイルの裏面の壁本体に接する部分の面積をS、前記切れ目の前記裏面に開口する部分の面積の総和をCとしたとき、Cの(S+C)に対する比率が2〜90%であるタイルであり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、壁本体から湿気を放出させる、放湿や遮熱の機能を有する放湿壁面構造及びその放湿壁面構造に用いられるタイルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1(a)】本発明の放湿壁面構造の態様の一例を示す正面図である。
【図1(b)】本発明の放湿壁面構造の態様の他の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの態様の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの態様の他の一例を示す断面図である。
【図4】図1に示す放湿壁面構造の断面図である。
【図5】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの態様のさらに他の例を示す断面図である。
【図6】本発明の放湿壁面構造の他の態様の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の放湿壁面構造のさらに他の態様の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の放湿壁面構造における湿気の流れを説明する図である。
【図9】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの態様のまたさらに他の一例を示す断面図である。
【図10(a)】本発明の放湿壁面構造の他の態様の一例を示す正面図である。
【図10(b)】本発明の放湿壁面構造の他の態様の他の一例を示す正面図である。
【図11】図10に示す本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの態様の一例を示す斜視図である。
【図12】図10に示す放湿壁面構造の断面図である。
【図13】図1に示す放湿壁面構造の断面図である。
【図14】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの態様のまたさらに他の例を示す断面図である。
【図15】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの裏面からみた平面図である。
【図16】本発明の放湿壁面構造に用いられるさらにまた他の態様のタイルの裏面からみた平面図である。
【図17】本発明の放湿壁面構造に用いられるまたさらに他の態様のタイルの貫通孔の形状の例を示す図である。
【図18】本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルの他の態様の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の放湿壁面構造は、複数のタイルが壁本体の施工面に敷設されてなる。このタイルは表面と、前記施工面に面接する裏面と、一対の互いに対向する主側面と、この主側面と隣り合う一対の互いに対向する副側面とを有する板状体の一部分が欠損空間で欠損した形状をなす。この板状体は通常略四角板形状をなすものである。四角は例えば、正方形、長方形、平行四辺形であることができる。
【0018】
この欠損空間は各主側面がわで外部空間と導通し、副側面がわ及びタイル表面がわでは外部空間と導通していない。また、施工面にはこの欠損空間に露出している露出面が存在する。
【0019】
さらに、本発明の放湿壁面構造においては、隣り合うタイルの主側面間に目地空間となる隙間が形成されている。
【0020】
本発明の放湿壁面構造のかかる構成により、壁本体から露出面を経て欠損空間へ湿気が放出され、さらにこの湿気が目地空間を経由して大気中に放出される。この放出により室内の湿度上昇が抑制される。また、本発明の放湿壁面構造は、タイル表面と施工面との間に欠損空間が存在することにより、外部の日射等による熱を室内に対して遮蔽する効果を有する。
【0021】
本発明の放湿壁面構造の具体的態様を図を用いて説明する。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。図1(a)に示すように、本発明の放湿壁面構造2は複数のタイル4が施工面に敷設されてなる。タイル4は一対の互いに対向する主側面6,6を有し、一方の主側面6から他方の主側面6に亘る溝8を裏面に有する。放湿壁面構造2においては、隣り合うタイル4,タイル4´のそれぞれの対向の主側面6,6´間に目地空間となる隙間15が形成されている。溝8の延びる方向Mは水平方向である。タイル4,タイル4´の連なる方向と直交方向に隣り合うタイル4,タイル4´´のそれぞれの対向の副側面7,7´間にも目地空間となる隙間15´が形成されていることが好ましい。
【0022】
図1(b)に示すように、本発明の放湿壁面構造は、溝8の延びる方向Mが上下方向である放湿壁面構造2´であってもよい。
図2にタイル4の形状を示す。タイル4は溝8のふところである内側空間が主側面6,6を突き抜けている形状となっている。すなわち、タイル4の主側面6に平行な断面形状は略U字形あるいは略コの字となっている。溝8により欠損空間88が形成される。
【0023】
本発明の他の態様においては、タイル(4−1、4−2)の主側面6に平行な断面形状は図3に示すように略E字形(図3(a))あるいは略櫛形状(図3(b))であってもよい。すなわち、タイルに複数の互いに平行な溝8が形成されていてもよい。溝8により欠損空間88が形成される。
【0024】
図4に壁本体10の施工面12に敷設されたタイル4を示す。タイル4は施工面12に接着部14で接着剤16により接着されている。接着部14はタイル4の裏面の溝8が形成されていない部分である。図4は溝8の延びる方向Mと直交方向の断面図である。
【0025】
図5に本発明において用いられる他の態様のタイル(4−3、4−4、4−5、4−6、4−7)の断面形状を示す。
【0026】
図6に壁本体10の施工面12に敷設された他の態様のタイル4−7を示す。タイル4−7は施工面12に接着部14で接着剤16により接着されているとともに施工面に備えられた係合部18を介して係合されている。係合部18はフック状であり、タイル4−7の溝8−1の面に係合している。
【0027】
図7に壁本体10の施工面12に敷設された他の態様のタイル4−8を示す。タイル4−8は施工面12に施工面に備えられた係合部18−1,18−2を介して係合されている。係合部18−1,18−2はフック状であり、タイル4−8の溝8−2の面と、タイル4−8の下側面に設けられた係合溝9にそれぞれ係合している。この態様は、タイル4−8が施工面12から着脱可能であり、破損したタイルの交換や、施工されたタイルのデザインの変更などの場合に交換が迅速に行われて好ましい。
【0028】
本発明の放湿壁面構造2、あるいは放湿壁面構造2´にあっては、タイル4を例に説明するならば、図8に示すように、壁本体10から矢印Aの方向に放出された湿気が溝8のふところである内側空間20に達したのち、施工面12と溝8の内側面22に囲まれてなる孔21(内側空間20)の開口24から目地空間となる隙間15(図1)を経由して大気中に放出される。内側空間20は欠損空間88から構成される。 欠損空間88は主側面6、6がわで外部空間と導通し、副側面7、7がわ及びタイル表面90がわでは外部空間と導通していない。また、施工面12には欠損空間88に露出している露出面92が存在する。なお、主側面6と副側面7とは隣り合い、主側面6、6の対向方向と副側面7、7の対向方向とは交差している。
【0029】
このように本発明の放湿壁面構造にあっては、壁本体10から露出面92を経由して放出された湿気が大気中に放出される通路が確保されるので、室内に湿気がこもることが防止される。また、本発明の放湿壁面構造は、内側空間20の存在により、外部の日射等による熱を室内に対して遮蔽する効果を有する。
【0030】
このように、本発明の放湿壁面構造2、あるいは放湿壁面構造2´にあっては室内の湿気が大気中に放出される通路が確保されるので、とくに冬場においては、室内の降温により飽和した蒸気が壁本体10を通って大気中に放出される通路が確保されて、室内の結露を防止できる。
【0031】
また、とくに図1(b)に示す態様にあっては、溝8が上下に連なって施工面12と溝8の内側面22に囲まれてなる孔21(内側空間20)がトンネル孔を形成する状態となり、タイル4が日射等で昇温したときにトンネル効果により空気がトンネル孔を下から上に吹き抜けるので、壁本体10から放出された湿気が効率よく大気中に放出される。
【0032】
本発明に用いられるタイルは成形された素地を焼成して製造することができる。素地の成形はプレス成形、押し出し成形等により行うことができる。
【0033】
本発明の放湿壁面構造に用いられるタイルは、図9に示すように溝8の内側面11に凹凸13が形成されているタイル44であることが好ましい。凹凸13の存在により、溝8の内側面11の表面積を多くすることができ、これにより、内側面11からの放熱量が多くなって外部の日射等による熱によりタイル44が昇温したときに内側面11からの放熱によりタイル44を冷却する効果が大である。この放熱効果は隙間15(図1)の一方から溝8のふところである内側空間20に進入し他方の隙間15(図1)を経由して大気中(外部)に流れ出る空気流によりさらに促進される。
【0034】
凹凸13はドット状のものであってもよい。あるいは一方向に直線的にあるいはジグザグにあるいは蛇行して延びる凸条の集合であってもよい。網目状の凹凸であってもよい。凹凸の周期はタイル44の肉厚にもよるが1〜20mmであることが好ましい。凹凸の最低部から頭頂までの高さhは1〜10mmであることが好ましい。
【0035】
本発明の放湿壁面構造のさらに他の態様にあっては、図10(a)に示すように、複数のタイル4aが施工面に敷設されて放湿壁面構造2aが構成される。タイル4aは一対の互いに対向する主側面6a,6aを有し、一方の主側面6aから他方の主側面6aに亘る貫通中空部102を有し、タイルの裏面から貫通中空部102に至る貫通孔104が形成され、隣り合うタイルの側面6a、6a´間に目地空間となる隙間15aが形成されている。貫通中空部102の貫通方向Mは水平方向である。タイル4a,タイル4a´の連なる方向と直交方向に隣り合うタイル4a,タイル4a´´のそれぞれの対向の側面7a,7a´間にも目地空間となる隙間15´´が形成されていることが好ましい。
【0036】
図10(b)に示すように、本発明の放湿壁面構造は、貫通中空部102の貫通方向Mが上下方向である放湿壁面構造2a´であってもよい。
【0037】
図11にタイル4aの形状を示す。タイル4aは貫通中空部102のふところである内側空間20aが主側面6a,6aを突き抜けている形状となっている。また、タイルの裏面106から貫通中空部102に至る貫通孔104が形成されている。貫通中空部102と貫通孔104とで欠損空間88aが構成される。
【0038】
貫通中空部102と貫通孔104とで欠損空間88aが構成される。 欠損空間88aは主側面6a、6aがわで外部空間と導通し、副側面7a、7aがわ及びタイル表面90aがわでは外部空間と導通していない。なお、主側面6aと副側面7aとは隣り合い、主側面6a、6aの対向方向と副側面7a、7aの対向方向とは交差している。
【0039】
図12に壁本体10の施工面12に敷設されたタイル4aを示す。タイル4aは施工面12に接着部14で接着剤16により接着されている。接着部14はタイル4aの裏面の貫通孔104が形成されていない部分である。図12は貫通中空部102の延びる方向Mと直交方向の断面図である。施工面12には欠損空間88aに露出している露出面92aが存在する。
【0040】
本発明の放湿壁面構造2a、あるいは放湿壁面構造2a´にあっては、図13に示すように、壁本体10から矢印Aの方向に放出された湿気が露出面92aから貫通孔104を経由して貫通中空部102のふところである内側空間20aに達したのち、貫通中空部102(内側空間20a)の開口24aから目地空間となる隙間15(図10a)を経由して大気中に放出される。このように本発明の放湿壁面構造2a、あるいは放湿壁面構造2a´にあっても、壁本体10から放出された湿気が大気中に放出される通路が確保されるので、室内に湿気がこもることが防止される。また、本発明の放湿壁面構造は、内側空間20aの存在により、外部の日射等による熱を室内に対して遮蔽する効果を有する。
【0041】
このように、本発明の放湿壁面構造2a、あるいは放湿壁面構造2a´にあっては室内の湿気が大気中に放出される通路が確保され、とくに冬場においては、室内の降温により飽和した蒸気が壁本体10を通って貫通孔104、貫通中空部102を経由して大気中に放出される通路が確保されて、室内の結露を防止できる。
【0042】
また、とくに図10a(b)に示す態様にあっては、貫通中空部102が上下に連なって施工面12と貫通中空部102(内側空間20)がトンネル孔を形成する状態となり、タイル4aが日射等で昇温したときにトンネル効果により空気がトンネル孔を下から上に吹き抜けるので、壁本体10から放出された湿気がさらに効率よく大気中に放出される。
【0043】
本発明の2a、あるいは放湿壁面構造2a´に用いられるタイルは、図14に示すように貫通中空部102の内側面11aに凹凸13aが形成されているタイル44aであることが好ましい。凹凸13aの存在により、貫通中空部102の内側面11aの表面積を多くすることができ、これにより、内側面11aからの放熱量が多くなって外部の日射等による熱によりタイル44aが昇温したときに内側面11aからの放熱によりタイル44aを冷却する効果が大である。この放熱効果は隙間15(図10)の一方から貫通中空部102のふところである内側空間20に進入し他方の隙間15(図10)を経由して大気中に流れる空気流によりさらに促進される。
【0044】
凹凸13aはドット状のものであってもよい。あるいは一方向に直線的にあるいはジグザグにあるいは蛇行して延びる凸条の集合であってもよい。網目状の凹凸であってもよい。凹凸の周期はタイル44aの肉厚にもよるが1〜20mmであることが好ましい。凹凸の最低部から頭頂までの高さhは1〜10mmであることが好ましい。凹凸は貫通中空部102の貫通方向に直線的に延びる筋状であることがタイルの素地の成形性のうえで好ましい。
【0045】
タイル4aなどの貫通中空部102とタイルの裏面から貫通中空部に至る貫通孔104が形成されている本発明のタイルにおいては、図15のタイルの裏面からみた平面図に示すように、敷設状態でタイルの裏面の壁本体10(図13)に接する部分120の面積をS、貫通孔104のタイルの裏面の開口部122の面積をKとしたとき、Kの(S+K)に対する比率((K/(S+K))×100)が2〜90%であることが、壁面10からの湿気を効率よく大気中に放出するうえで好ましい。この比率が2%未満であると、湿気を大気中に放出する効率が悪くなる。この比率が90%を越えるとSが過小となり、タイルの裏面と壁本体10との接合強度が不十分となりやすい。
【0046】
貫通孔104は図16に示すように1個のタイルにつき複数個形成されていてもよい。貫通孔104が複数個の場合は上式におけるSは各貫通孔の開口部の面積の総和である。
【0047】
貫通孔104の開口部の形状はとくに限定されず、図17に示すように丸のほかに、三角、四角、星形、ひし形、半円などが例示される。
【0048】
タイル4−7などの貫通中空部102と裏面106を二分して一方の前記主側面6aから他方の前記主側面6aに亘って形成され貫通中空部106に達する切れ目105が形成されている本発明のタイル(図18)においては、欠損空間88bが、貫通中空部106と切れ目105より形成される。すなわち、溝8bが貫通中空部106と切れ目105からなる。このとき、敷設状態でタイルの裏面の壁本体に接する部分の面積をS、切れ目105の裏面106に開口する部分の面積(貫通中空部と切れ目が複数のときは総和)をCとしたとき、Cの(S+C)に対する比率が2〜90%であることが、壁面からの湿気を効率よく大気中に放出するうえで好ましい。この比率が2%未満であると、湿気を大気中に放出する効率が悪くなる。この比率が90%を越えるとSが過小となり、タイルの裏面と壁本体との接合強度が不十分となりやすい。
【0049】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のタイル及び放湿壁面構造は、省エネ効果を増大させるものとして建造物に広く適用される。
【符号の説明】
【0051】
2,2´,2a,2a´:放湿壁面構造
4,4´,4a,4a´,4−3,4−4,4−5,4−6,4−7,4−8,44,44a:タイル
6,6´,6a:主側面
7,7´,7a:副側面
8,8−1:溝
11,11a,22:内側面
13,13a:凹凸
15:隙間
10:壁本体
12:施工面
14:接着部
16:接着剤
18,18−1,18−2:係合部
20,20a:内側空間
21:孔
24,24a:開口
88,88a:欠損空間
90,90a:表面
92,92a:露出面
102:貫通中空部
104:貫通孔
105:切れ目
106:タイルの裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状のタイルが施工面に敷設されてなり、
前記タイルは表面と、施工面に面接する裏面と、一対の互いに対向する主側面と、該主側面と隣り合う一対の互いに対向する副側面とを有し、一部分が欠損して欠損空間が形成され、
前記欠損空間が各前記主側面がわで外部空間と導通し、前記副側面がわ及び前記表面がわで外部空間と導通せず、
前記施工面に前記欠損空間に露出する露出面が存在し、
隣り合うタイルの前記主側面間に目地空間となる隙間が形成された放湿壁面構造。
【請求項2】
前記欠損空間が、前記裏面に形成されて一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘る溝により形成された請求項1に記載の放湿壁面構造。
【請求項3】
前記施工面が前記タイルを係合する係合部を備え、前記タイルが前記施工面に前記係合部を介して着脱可能に敷設されてなる請求項2に記載の放湿壁面構造。
【請求項4】
前記欠損空間が前記タイルを一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘って貫通する貫通中空部と、前記裏面から前記貫通中空部に至る1または複数の貫通孔からなる請求項1に記載の放湿壁面構造。
【請求項5】
前記裏面の前記施工面に接する部分の面積をS、前記露出面の面積をKとしたとき、Kの(S+K)に対する比率が2〜90%である請求項1から3のいずれかに記載の放湿壁面構造。
【請求項6】
請求項2または3に記載の放湿壁面構造に用いられる前記タイルであり、前記溝の内側面に凹凸が形成されたタイル。
【請求項7】
請求項4に記載の放湿壁面構造に用いられる前記タイルであり、一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘る貫通中空部を有し、前記裏面から前記貫通中空部に至る1または複数の貫通孔が形成されたタイル。
【請求項8】
敷設状態でタイルの裏面の壁本体に接する部分の面積をS、前記貫通孔の前記裏面の開口部の面積の総和をKとしたとき、Kの(S+K)に対する比率が2〜90%である請求項7に記載のタイル。
【請求項9】
前記欠損空間が、前記タイルを一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘って貫通する貫通中空部と、前記裏面を二分して一方の前記主側面から他方の前記主側面に亘って形成され前記貫通中空部に達する切れ目により形成され、前記溝が貫通中空部と前記切れ目からなり、敷設状態でタイルの裏面の壁本体に接する部分の面積をS、前記切れ目の前記裏面に開口する部分の面積の総和をCとしたとき、Cの(S+C)に対する比率が2〜90%である請求項2に記載のタイル。




【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−77795(P2010−77795A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139136(P2009−139136)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(504000502)近江窯業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】