放熱器
【課題】 従来に比べて放熱効率(熱伝導性)を高め、かつ、軽量化を図ることの可能な放熱器を提供する。
【解決手段】 炭素繊維紙で形成された炭素繊維体1が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体1は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙4とを備えた空気流通路5をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体1のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体1は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体1は、コルゲート構造の空気流通路5がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されている。
【解決手段】 炭素繊維紙で形成された炭素繊維体1が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体1は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙4とを備えた空気流通路5をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体1のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体1は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体1は、コルゲート構造の空気流通路5がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の消費電力が加速度的に上昇し、それに伴って発熱量が増えており、より高性能な冷却システムの需要が高まっている。高密度に集積された回路で消費される電力は増加し、発熱量と同時に、発熱密度も急激に上昇した。従来のペルチェ素子による強制吸熱と、ヒートシンクとファンによる強制空冷構造では冷却能力に限界が見え始め、より高い冷却能力を持つ液冷システムを採用した例も登場するようになった。
【0003】
光半導体であるLEDにおいても、明るさの向上に伴って従来の表示用途から照明用途へと、大電力化の道を辿っている。LED素子における最大の問題点は、発光効率が向上しても未だなお、投入した電力の大部分が熱となり、自身の発する熱によって明るさ・寿命が低下してしまうことである。
【0004】
特に大電力LEDにおいては、チップあたり数Wもの発熱を受け止められるだけのパッケージ・放熱構造が求められており、熱伝導性に優れたメタルコア基板やセラミック基板が実用化されている。特にセラミック基板については、材料技術の進歩によって熱伝導率が向上したこと、絶縁性の基板であるためにメタルコア基板と違って絶縁層が不要なこと、という2つの大きな理由から、注目されている。
【0005】
また、放熱性能の向上と同時に要求されている事項として、放熱部材の軽量化がある。現在のハイパワーLED製品は、その重量の大部分がヒートシンクによって占められている。製品の筐体を積極的に放熱経路として利用することで、ヒートシンク容積を低減する等の対策はされているものの、やはりヒートシンクの需要が消えることは無い。ヒートシンクの軽量化によって製品の重量が軽くなることで、ハンドリングのしやすさが向上し、特に自動車などの移動体においては燃費の向上にもつながると期待されている。
【0006】
重量増加を抑えて放熱能力を稼ぐためには、表面積の大きな構造とすることが望ましい。例えば、特許文献1、特許文献2には、コルゲート構造(ハニカム構造や段ボール構造とも称する)を備えた熱交換装置、放熱体が示されている。
【0007】
すなわち、特許文献1には、図1に示すように、少なくとも一本の伝熱管101と、この伝熱管101の外周に設けるコアー本体104とから熱交換装置107のコアーを形成し、前記伝熱管101とコアー本体104を樹脂材にて形成するとともに、このコアー本体104に伝熱管101の管軸と直交方向に、流体の流通路106を複数段設けてコルゲート構造のコアーとする技術が示されている。
【0008】
また、特許文献2には、図2に示すように、両主平面に電極が形成され単数或いは複数個隣接して配置された正特性サーミスタ201と、等間隔に板厚を変えたアルミニウム板202a、202bを波形に折曲げて板厚の厚い部分202aが片方の頂部になるようにすると共にそれぞれの頂部にアルミニウムの薄板202cをブレージングして形成された放熱体202からなり、上記正特性サーミスタ201の両主平面に上記放熱体202の板厚が厚い頂部202a側をそれぞれ固着してなる正特性サーミスタ発熱体が示されている。
【0009】
このように、コルゲート構造は、エアーフィルタやラジエータ等の放熱構造、エアーヒータ等の熱交換器の構造として広く実用化されており、強度も確保される一般的な構造である。
【0010】
また、軽量で熱伝導の良い材料として、炭素材料が注目されており、例えば特許文献3に膨張黒鉛シートを使った放熱器が開示されている。すなわち、特許文献3には、図3に示すように、膨張黒鉛シート301間に炭化接着層302と共にカーボン繊維303が介在されている放熱用シート部304を有する放熱器が示されている。なお、図3において、符号305は放熱柱状部、符号306は熱伝導層、Mは発熱体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−042971号公報
【特許文献2】特許3063395号公報
【特許文献3】特開2000−091453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の熱交換装置では、コルゲート構造も含めて全体が樹脂材で形成されているために熱伝導率が悪く、小型の熱源に適用した場合には熱源近傍のみが高温となり、放熱器の端部まで十分に伝熱させることは難しい。なお、特許文献1には、熱伝導率の向上策として樹脂中に炭素繊維を混合することが記されているが、樹脂中に混合させて一体成型するためには、個々の炭素繊維は短くせざるを得ず、炭素繊維の長所である高熱伝導性が樹脂との境界で途切れてしまうという問題があった。
【0013】
また、特許文献2の放熱体202は、コルゲート構造であるものの、その材料がアルミニウムであるため、放熱効率を高めるには、その厚さを厚くする必要があり、重さが重くなり、軽量化に適しないという問題があった。
【0014】
また、特許文献3の放熱器では、膨張黒鉛シートを多数積層させて、一枚板として扱う構成であるため、コルゲート構造と比較して表面積が少なく、熱交換性能と強度(柔軟性)が劣るという問題があった。
【0015】
本発明は、従来に比べて放熱効率(熱伝導性)を高め、かつ、軽量化を図ることの可能な放熱器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の放熱器において、前記各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の放熱器において、該放熱器は、前記各炭素繊維体のコルゲート構造の空気流通路が空気の対流方向と平行となるように設置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されているので、従来に比べて放熱効率(熱伝導性)を著しく高め、かつ、十分な軽量化を図ることができる。
【0020】
特に、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の放熱器において、前記各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されているので、実用十分な材料強度を有する放熱器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1の熱交換装置を示す図である。
【図2】特許文献2の放熱体を示す図である。
【図3】特許文献3の放熱器を示す図である。
【図4】本発明のコルゲート構造の炭素繊維体の分解斜視図である。
【図5】本発明のコルゲート構造の炭素繊維体を示す図である。
【図6】炭素繊維の最適な配向を示す図である。
【図7】本発明の放熱器の構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明の放熱器の構成例を示す上面図である。
【図9】本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)を示す図である。
【図10】比較例のヒートシンク(放熱器)を示す図である。
【図11】本発明の変形例を示す図である。
【図12】本発明の変形例を示す図である。
【図13】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
本願の発明者は、従来技術の前述した問題点を解決するため、放熱器の構成材料として、強度と柔軟性を併せ持ち、かつ、高熱伝導性を有する炭素繊維に着目し、本発明を完成させた。
【0024】
すなわち、本発明は、この炭素繊維を細切れにすることなく、長尺のまま、縦横に編んで構成された炭素繊維紙を、炭素繊維の配向を揃えて、コルゲート構造となるように接着するによって、1枚の炭素繊維体を形成することを第1の要旨とする。
【0025】
次に、本発明は、このようなコルゲート構造の炭素繊維体を複数枚用いて、T字型またはE字型となるようなヒートシンクを形成することを第2の要旨とする。すなわち、複数枚の炭素繊維体のうちの1枚を熱源搭載用および熱拡散用として用い(すなわち、ベース部として用い)、他の少なくとも1枚の炭素繊維体を、ベース部として用いられる炭素繊維体の熱源搭載面に垂直となるようにベース部として用いられる炭素繊維体に接着によって接合して、T字型またはE字型となるようなヒートシンクのフィン部として用いることを第2の要旨とする。このとき、前記コルゲート構造の炭素繊維体の各々は、コルゲート構造の空気流通路がヒートシンク全体を抜ける風(自然対流あるいは強制対流)に対して平行となる向きとなるように配置されるのが好ましい。
【0026】
換言すれば、本発明は、炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用い
られ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されていることを特徴としている。
【0027】
さらに、本発明において、各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されているのが、強度の観点から好ましい。
【0028】
また、本発明において、放熱器は、前記各炭素繊維体のコルゲート構造の空気流通路が空気の対流方向(自然対流の方向あるいは強制対流の方向)と平行となるように設置されるのが好ましい。
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
図4は本発明のコルゲート構造の炭素繊維体の分解斜視図、図5は本発明のコルゲート構造の炭素繊維体を示す図である。図4、図5を参照すると、本発明のコルゲート構造の炭素繊維体1は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙4との、3枚の炭素繊維紙により構成されている。図5において、符号5は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3と波形の面を持つ炭素繊維紙4との間に形成された空気流通路(コルゲート構造の空気流通路)である。また、図4のような3枚の炭素繊維紙2、3、4を、図5のようにコルゲート構造の炭素繊維体1として組み立てる(仕上げる)のには、波形の面を持つ炭素繊維紙4を一対の炭素繊維紙2、3で上下から挟み込むように熱伝導接着剤(図示せず)で貼り合わせるのが好ましい。
【0031】
ここで、各炭素繊維紙2、3、4には、カーボライト(商品名)やトレカ(商品名)、パイロフィル(商品名)等、市販されているものを適宜用いることができるが、高熱伝導の観点から、繊維方向の熱伝導率が500W/mK以上のものを用いることが望ましい。後述の実施例では、繊維方向の熱伝導率が800W/mK、厚さが200μmの炭素繊維紙を用いた。
【0032】
また、コルゲート構造の炭素繊維体1を構成する3枚の炭素繊維紙2、3、4は、少なくとも3枚の炭素繊維紙2、3、4の炭素繊維の配向がそれぞれ統一されているのが良い。材料強度の観点からは、各炭素繊維紙2、3、4は、図6に示すように、繊維の配向Dが炭素繊維紙の裁断縁部(炭素繊維紙の外側の一辺)EGに対して30°〜45°程度の角度範囲θのものとなるように裁断されているのが好ましい。図4には、各炭素繊維紙2、3、4の最適な繊維の配向方向Dが示されている
【0033】
また、熱伝導接着剤には、シリコーンRTVゴム(商品名)等、種々のものを用いることができる。熱伝導接着剤としては、熱伝導率が2W/mK以上のものが好適である。
【0034】
また、図5を参照すると、炭素繊維体1の厚さTは例えば3mm程度であり、炭素繊維体1のコルゲート構造のピッチ(波形のピッチ)Pは例えば5,2mm程度である。
【0035】
また、図7、図8は本発明の放熱器の構成例を示す斜視図、上面図である。図7、図8を参照すると、本発明の放熱器は、上記のような炭素繊維紙で形成された炭素繊維体1が複数枚用いられ、複数枚の炭素繊維体1のうちの1枚はベース部1aとして用いられ、他の炭素繊維体は、ベース部として用いられる炭素繊維体1aと垂直に接合されてフィン部1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hとして用いられ、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hは、コルゲート構造の空気流通路5がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されている。なお、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの接合にも、前述した熱伝導接着剤を用いることができる。
【0036】
また、ベース部として用いられる炭素繊維体1aとフィン部として用いられる炭素繊維体1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hとの接合は、図7、図8に符号MTで示す箇所のように(すなわち、炭素繊維体1aと炭素繊維体1cとの接合箇所のように)、炭素繊維体1aの波形の面を持つ炭素繊維紙4がフィン部側の炭素繊維紙3と接する位置に、フィン部として用いられる各炭素繊維体1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの波形の面を持つ炭素繊維紙4が接合されるのが好ましい。すなわち、図7、図8の例では、この接合条件を満たしている炭素繊維体は1cであり、他の炭素繊維体1b,1d,1e,1f,1g,1hは、上記接合条件からずれた位置において炭素繊維体1aと接合している場合が示されているが、他の炭素繊維体1b,1d,1e,1f,1g,1hについても、炭素繊維体1aの波形の面を持つ炭素繊維紙4がフィン部側の炭素繊維紙3と接する位置に、他の炭素繊維体1b,1d,1e,1f,1g,1hの波形の面を持つ炭素繊維紙4が接合されるのが好ましい。
【0037】
また、本発明の放熱器は、図7に示すように、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの縦方向Y(コルゲート構造の空気流通路5の空気流通方向)が、地面や床面に対して鉛直方向(重力の方向)Zとなるように、設置されて使用されるのが好ましい。すなわち、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの縦方向Y(コルゲート構造の空気流通路5の空気流通方向)が、地面や床面に対して鉛直方向(重力の方向)Zとなるように設置されるときには、コルゲート構造の空気流通路5の向きY(=Z)が空気の対流方向(ファンなどを使用しないときには、自然対流の方向)と平行となり、ベース部、フィン部の両方について、コルゲート構造の空気流通路5における空気の対流によって放熱効率を著しく高めることができる。
【0038】
(実施例)
本願の発明者は、発熱源として、例えば照明用途の高出力LED(1mm角のチップサイズ、5mm角のLEDパッケージ)に適用するヒートシンクを想定し、図9に示すように、ベース部として用いられる炭素繊維体1aを縦方向Yの長さが50mm、横方向Xの長さが60mmのサイズで、また、フィン部として用いられる各炭素繊維体1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hを高さHが30mmとなるようなヒートシンク(放熱器)を、本発明の実施例として作製した。
【0039】
本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)の作製は、具体的には、次のようにしてなされた。
【0040】
すなわち、まず、炭素繊維紙を次のように切り出した。
A片:50mm×60mm 2枚
B片:50mm×80mm 1枚
C片:50mm×30mm 14枚
D片:50mm×40mm 7枚
【0041】
次いで、図4に示すように、B片を長さ80mmの辺が波形断面(波形の高さLが2.6mm)になるように曲げた後に、1枚のB片を2枚のA片で上下から挟み込むように熱伝導接着剤で貼り合わせ、図5に示すような、仕上がり寸法:縦50mm×横60mm×厚さ3mmのコルゲート構造の炭素繊維体1(1a)を作製した。
【0042】
同様に、C片2枚に対しD片1枚(長さ40mmの辺を波形にした)となるような組み合わせで、合計7組の仕上がり寸法:縦50mm×横30mm×厚さ3mmのコルゲート構造の炭素繊維体1(1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h)を作製した。このとき、AB・CD両者のコルゲート構造内部はそれぞれ縦方向Yに空間が貫通している(すなわち、それぞれ縦方向Yにコルゲート構造の空気流通路5が貫通している)。
【0043】
そして、ABから成るコルゲート構造の炭素繊維体1(1a)をベース部とし、CDから成るコルゲート構造の炭素繊維体1(1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h)がフィン部となるようなヒートシンク構造、すなわち図7、図8に示すようなベース部が縦50mm×横60mmで、フィン部の高さHが30mmとなるようなヒートシンク構造を熱伝導性接着剤によって形成した。各コルゲート構造の炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの空間(コルゲート構造の空気流通路5)が貫通している方向は、縦方向Yで同一である。
【0044】
(比較例)
本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と比較するため、比較例となるヒートシンク(放熱器)を準備した。
【0045】
図10は比較例となるヒートシンク(放熱器)を示す図である。比較例となるヒートシンク(放熱器)は、本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と同じ外形寸法を持つ、一般的な従来技術である黒アルマイト加工ヒートシンクである。すなわち、比較例となるヒートシンク(放熱器)では、アルミニウム材にA6063(熱伝導率200W/mK)を用い、ベース部51aの寸法は縦50mm×横60mm×厚さ3mm、フィン部51b,51c,51d,51e,51f,51g,51hの高さHは30mmと、本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と同じ外形寸法となっている。また、フィン部51b,51c,51d,51e,51f,51g,51hの厚さは1mmとし、表面は黒アルマイト加工(放射率0.9)が施してある。
【0046】
(検証実験)
上記のように準備した本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と比較例となるヒートシンク(放熱器)のそれぞれについて、ベース部1a、51aの中央に発熱源となる5mm角のLEDパッケージ10(配線は図示せず)を搭載し(図9、図10を参照)、ヒートシンクの縦方向Yが地面や床面に対して鉛直方向(重力の方向)Zとなるように、熱伝導が無視できる糸(図示せず)で、空中に吊り下げた。
【0047】
この状態でLEDパッケージ10に5Wの電力を印加し、自然空冷状態での放熱能力を比較した。
【0048】
その結果は、LEDパッケージ10の温度が
実施例:58.2℃
比較例:59.1℃
となり、実施例の方が良好であった。
また、ヒートシンク単体としての重量は
実施例:14.4g (比重1.8)
比較例:52.6g (比重2.7)
となり、実施例の方が十分な軽量化を図ることができた。
【0049】
これは、本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)では、空気流通路5を有するコルゲート構造を用いたことで、フィン内部にも風が通り抜け、実効的な熱交換面積が拡大したためと考えられる。また、アルミニウムに比べて炭素繊維紙は軽いため、比較例に比べて3分の1程度と十分な軽量化を図ることができた。
【0050】
このように、本発明によれば、高熱伝導性を持つ炭素繊維の特長を生かして、LEDのような小型の熱源に適応した、軽量な放熱器(ヒートシンク)を提供することができる。
【0051】
すなわち、LEDのような小型の熱源から効率良く放熱するためには、熱を拡散させる部分と、熱を空気に逃がす部分の、計2つの機能部分が必要である。さらに、全体を同一の高熱伝導材料で構成し、単一の容易な工法で、かつ実用十分な強度で(柔軟性を併せ持つ)作製できることが、量産性を考慮すると大変好適である。本発明は、このような条件を兼ね備えている。
【0052】
なお、本発明の放熱器は、図11に示すように、例えば図7の構成において、さらにファン7を設け、ファン7による風によって空気の強制対流を生じさせることもできる。この場合、ファン7による風の向きをコルゲート構造の空気流通路5の向き(縦方向Y)とすることで、空気の強制対流によって放熱効率をより一層高めることができる。
【0053】
また、本発明の放熱器(ヒートシンク)について、その大きさを任意所望のサイズにし、また、その全体形状を任意所望のものにすることが可能である。例えば、上述の例では、フィン部1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hは矩形形状のものとなっているが、フィン部1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hを使用用途、使用場所などに合わせて、例えば図12に示すような台形形状や図13に示すような三角形形状などにすることもできる。また、ベース部1aについても、上述の例では矩形形状のものとなっているが、使用用途、使用場所などに合わせて、例えば楕円形状などにすることもできる。
【0054】
また、上述の例では、発熱源がLEDであるとしたが、発熱源がLED以外の場合にも、本発明の放熱器(ヒートシンク)を用いて、放熱を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、自動車用照明、プロジェクタ、一般照明などの照明装置や、電子機器などの放熱を必要とする装置、機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 コルゲート構造の炭素繊維体
2、3、4 炭素繊維紙
5 空気流通路
7 ファン
10 LEDパッケージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の消費電力が加速度的に上昇し、それに伴って発熱量が増えており、より高性能な冷却システムの需要が高まっている。高密度に集積された回路で消費される電力は増加し、発熱量と同時に、発熱密度も急激に上昇した。従来のペルチェ素子による強制吸熱と、ヒートシンクとファンによる強制空冷構造では冷却能力に限界が見え始め、より高い冷却能力を持つ液冷システムを採用した例も登場するようになった。
【0003】
光半導体であるLEDにおいても、明るさの向上に伴って従来の表示用途から照明用途へと、大電力化の道を辿っている。LED素子における最大の問題点は、発光効率が向上しても未だなお、投入した電力の大部分が熱となり、自身の発する熱によって明るさ・寿命が低下してしまうことである。
【0004】
特に大電力LEDにおいては、チップあたり数Wもの発熱を受け止められるだけのパッケージ・放熱構造が求められており、熱伝導性に優れたメタルコア基板やセラミック基板が実用化されている。特にセラミック基板については、材料技術の進歩によって熱伝導率が向上したこと、絶縁性の基板であるためにメタルコア基板と違って絶縁層が不要なこと、という2つの大きな理由から、注目されている。
【0005】
また、放熱性能の向上と同時に要求されている事項として、放熱部材の軽量化がある。現在のハイパワーLED製品は、その重量の大部分がヒートシンクによって占められている。製品の筐体を積極的に放熱経路として利用することで、ヒートシンク容積を低減する等の対策はされているものの、やはりヒートシンクの需要が消えることは無い。ヒートシンクの軽量化によって製品の重量が軽くなることで、ハンドリングのしやすさが向上し、特に自動車などの移動体においては燃費の向上にもつながると期待されている。
【0006】
重量増加を抑えて放熱能力を稼ぐためには、表面積の大きな構造とすることが望ましい。例えば、特許文献1、特許文献2には、コルゲート構造(ハニカム構造や段ボール構造とも称する)を備えた熱交換装置、放熱体が示されている。
【0007】
すなわち、特許文献1には、図1に示すように、少なくとも一本の伝熱管101と、この伝熱管101の外周に設けるコアー本体104とから熱交換装置107のコアーを形成し、前記伝熱管101とコアー本体104を樹脂材にて形成するとともに、このコアー本体104に伝熱管101の管軸と直交方向に、流体の流通路106を複数段設けてコルゲート構造のコアーとする技術が示されている。
【0008】
また、特許文献2には、図2に示すように、両主平面に電極が形成され単数或いは複数個隣接して配置された正特性サーミスタ201と、等間隔に板厚を変えたアルミニウム板202a、202bを波形に折曲げて板厚の厚い部分202aが片方の頂部になるようにすると共にそれぞれの頂部にアルミニウムの薄板202cをブレージングして形成された放熱体202からなり、上記正特性サーミスタ201の両主平面に上記放熱体202の板厚が厚い頂部202a側をそれぞれ固着してなる正特性サーミスタ発熱体が示されている。
【0009】
このように、コルゲート構造は、エアーフィルタやラジエータ等の放熱構造、エアーヒータ等の熱交換器の構造として広く実用化されており、強度も確保される一般的な構造である。
【0010】
また、軽量で熱伝導の良い材料として、炭素材料が注目されており、例えば特許文献3に膨張黒鉛シートを使った放熱器が開示されている。すなわち、特許文献3には、図3に示すように、膨張黒鉛シート301間に炭化接着層302と共にカーボン繊維303が介在されている放熱用シート部304を有する放熱器が示されている。なお、図3において、符号305は放熱柱状部、符号306は熱伝導層、Mは発熱体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−042971号公報
【特許文献2】特許3063395号公報
【特許文献3】特開2000−091453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の熱交換装置では、コルゲート構造も含めて全体が樹脂材で形成されているために熱伝導率が悪く、小型の熱源に適用した場合には熱源近傍のみが高温となり、放熱器の端部まで十分に伝熱させることは難しい。なお、特許文献1には、熱伝導率の向上策として樹脂中に炭素繊維を混合することが記されているが、樹脂中に混合させて一体成型するためには、個々の炭素繊維は短くせざるを得ず、炭素繊維の長所である高熱伝導性が樹脂との境界で途切れてしまうという問題があった。
【0013】
また、特許文献2の放熱体202は、コルゲート構造であるものの、その材料がアルミニウムであるため、放熱効率を高めるには、その厚さを厚くする必要があり、重さが重くなり、軽量化に適しないという問題があった。
【0014】
また、特許文献3の放熱器では、膨張黒鉛シートを多数積層させて、一枚板として扱う構成であるため、コルゲート構造と比較して表面積が少なく、熱交換性能と強度(柔軟性)が劣るという問題があった。
【0015】
本発明は、従来に比べて放熱効率(熱伝導性)を高め、かつ、軽量化を図ることの可能な放熱器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の放熱器において、前記各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の放熱器において、該放熱器は、前記各炭素繊維体のコルゲート構造の空気流通路が空気の対流方向と平行となるように設置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されているので、従来に比べて放熱効率(熱伝導性)を著しく高め、かつ、十分な軽量化を図ることができる。
【0020】
特に、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の放熱器において、前記各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されているので、実用十分な材料強度を有する放熱器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1の熱交換装置を示す図である。
【図2】特許文献2の放熱体を示す図である。
【図3】特許文献3の放熱器を示す図である。
【図4】本発明のコルゲート構造の炭素繊維体の分解斜視図である。
【図5】本発明のコルゲート構造の炭素繊維体を示す図である。
【図6】炭素繊維の最適な配向を示す図である。
【図7】本発明の放熱器の構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明の放熱器の構成例を示す上面図である。
【図9】本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)を示す図である。
【図10】比較例のヒートシンク(放熱器)を示す図である。
【図11】本発明の変形例を示す図である。
【図12】本発明の変形例を示す図である。
【図13】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
本願の発明者は、従来技術の前述した問題点を解決するため、放熱器の構成材料として、強度と柔軟性を併せ持ち、かつ、高熱伝導性を有する炭素繊維に着目し、本発明を完成させた。
【0024】
すなわち、本発明は、この炭素繊維を細切れにすることなく、長尺のまま、縦横に編んで構成された炭素繊維紙を、炭素繊維の配向を揃えて、コルゲート構造となるように接着するによって、1枚の炭素繊維体を形成することを第1の要旨とする。
【0025】
次に、本発明は、このようなコルゲート構造の炭素繊維体を複数枚用いて、T字型またはE字型となるようなヒートシンクを形成することを第2の要旨とする。すなわち、複数枚の炭素繊維体のうちの1枚を熱源搭載用および熱拡散用として用い(すなわち、ベース部として用い)、他の少なくとも1枚の炭素繊維体を、ベース部として用いられる炭素繊維体の熱源搭載面に垂直となるようにベース部として用いられる炭素繊維体に接着によって接合して、T字型またはE字型となるようなヒートシンクのフィン部として用いることを第2の要旨とする。このとき、前記コルゲート構造の炭素繊維体の各々は、コルゲート構造の空気流通路がヒートシンク全体を抜ける風(自然対流あるいは強制対流)に対して平行となる向きとなるように配置されるのが好ましい。
【0026】
換言すれば、本発明は、炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用い
られ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されていることを特徴としている。
【0027】
さらに、本発明において、各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されているのが、強度の観点から好ましい。
【0028】
また、本発明において、放熱器は、前記各炭素繊維体のコルゲート構造の空気流通路が空気の対流方向(自然対流の方向あるいは強制対流の方向)と平行となるように設置されるのが好ましい。
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
図4は本発明のコルゲート構造の炭素繊維体の分解斜視図、図5は本発明のコルゲート構造の炭素繊維体を示す図である。図4、図5を参照すると、本発明のコルゲート構造の炭素繊維体1は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙4との、3枚の炭素繊維紙により構成されている。図5において、符号5は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙2、3と波形の面を持つ炭素繊維紙4との間に形成された空気流通路(コルゲート構造の空気流通路)である。また、図4のような3枚の炭素繊維紙2、3、4を、図5のようにコルゲート構造の炭素繊維体1として組み立てる(仕上げる)のには、波形の面を持つ炭素繊維紙4を一対の炭素繊維紙2、3で上下から挟み込むように熱伝導接着剤(図示せず)で貼り合わせるのが好ましい。
【0031】
ここで、各炭素繊維紙2、3、4には、カーボライト(商品名)やトレカ(商品名)、パイロフィル(商品名)等、市販されているものを適宜用いることができるが、高熱伝導の観点から、繊維方向の熱伝導率が500W/mK以上のものを用いることが望ましい。後述の実施例では、繊維方向の熱伝導率が800W/mK、厚さが200μmの炭素繊維紙を用いた。
【0032】
また、コルゲート構造の炭素繊維体1を構成する3枚の炭素繊維紙2、3、4は、少なくとも3枚の炭素繊維紙2、3、4の炭素繊維の配向がそれぞれ統一されているのが良い。材料強度の観点からは、各炭素繊維紙2、3、4は、図6に示すように、繊維の配向Dが炭素繊維紙の裁断縁部(炭素繊維紙の外側の一辺)EGに対して30°〜45°程度の角度範囲θのものとなるように裁断されているのが好ましい。図4には、各炭素繊維紙2、3、4の最適な繊維の配向方向Dが示されている
【0033】
また、熱伝導接着剤には、シリコーンRTVゴム(商品名)等、種々のものを用いることができる。熱伝導接着剤としては、熱伝導率が2W/mK以上のものが好適である。
【0034】
また、図5を参照すると、炭素繊維体1の厚さTは例えば3mm程度であり、炭素繊維体1のコルゲート構造のピッチ(波形のピッチ)Pは例えば5,2mm程度である。
【0035】
また、図7、図8は本発明の放熱器の構成例を示す斜視図、上面図である。図7、図8を参照すると、本発明の放熱器は、上記のような炭素繊維紙で形成された炭素繊維体1が複数枚用いられ、複数枚の炭素繊維体1のうちの1枚はベース部1aとして用いられ、他の炭素繊維体は、ベース部として用いられる炭素繊維体1aと垂直に接合されてフィン部1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hとして用いられ、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hは、コルゲート構造の空気流通路5がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されている。なお、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの接合にも、前述した熱伝導接着剤を用いることができる。
【0036】
また、ベース部として用いられる炭素繊維体1aとフィン部として用いられる炭素繊維体1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hとの接合は、図7、図8に符号MTで示す箇所のように(すなわち、炭素繊維体1aと炭素繊維体1cとの接合箇所のように)、炭素繊維体1aの波形の面を持つ炭素繊維紙4がフィン部側の炭素繊維紙3と接する位置に、フィン部として用いられる各炭素繊維体1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの波形の面を持つ炭素繊維紙4が接合されるのが好ましい。すなわち、図7、図8の例では、この接合条件を満たしている炭素繊維体は1cであり、他の炭素繊維体1b,1d,1e,1f,1g,1hは、上記接合条件からずれた位置において炭素繊維体1aと接合している場合が示されているが、他の炭素繊維体1b,1d,1e,1f,1g,1hについても、炭素繊維体1aの波形の面を持つ炭素繊維紙4がフィン部側の炭素繊維紙3と接する位置に、他の炭素繊維体1b,1d,1e,1f,1g,1hの波形の面を持つ炭素繊維紙4が接合されるのが好ましい。
【0037】
また、本発明の放熱器は、図7に示すように、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの縦方向Y(コルゲート構造の空気流通路5の空気流通方向)が、地面や床面に対して鉛直方向(重力の方向)Zとなるように、設置されて使用されるのが好ましい。すなわち、各炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの縦方向Y(コルゲート構造の空気流通路5の空気流通方向)が、地面や床面に対して鉛直方向(重力の方向)Zとなるように設置されるときには、コルゲート構造の空気流通路5の向きY(=Z)が空気の対流方向(ファンなどを使用しないときには、自然対流の方向)と平行となり、ベース部、フィン部の両方について、コルゲート構造の空気流通路5における空気の対流によって放熱効率を著しく高めることができる。
【0038】
(実施例)
本願の発明者は、発熱源として、例えば照明用途の高出力LED(1mm角のチップサイズ、5mm角のLEDパッケージ)に適用するヒートシンクを想定し、図9に示すように、ベース部として用いられる炭素繊維体1aを縦方向Yの長さが50mm、横方向Xの長さが60mmのサイズで、また、フィン部として用いられる各炭素繊維体1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hを高さHが30mmとなるようなヒートシンク(放熱器)を、本発明の実施例として作製した。
【0039】
本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)の作製は、具体的には、次のようにしてなされた。
【0040】
すなわち、まず、炭素繊維紙を次のように切り出した。
A片:50mm×60mm 2枚
B片:50mm×80mm 1枚
C片:50mm×30mm 14枚
D片:50mm×40mm 7枚
【0041】
次いで、図4に示すように、B片を長さ80mmの辺が波形断面(波形の高さLが2.6mm)になるように曲げた後に、1枚のB片を2枚のA片で上下から挟み込むように熱伝導接着剤で貼り合わせ、図5に示すような、仕上がり寸法:縦50mm×横60mm×厚さ3mmのコルゲート構造の炭素繊維体1(1a)を作製した。
【0042】
同様に、C片2枚に対しD片1枚(長さ40mmの辺を波形にした)となるような組み合わせで、合計7組の仕上がり寸法:縦50mm×横30mm×厚さ3mmのコルゲート構造の炭素繊維体1(1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h)を作製した。このとき、AB・CD両者のコルゲート構造内部はそれぞれ縦方向Yに空間が貫通している(すなわち、それぞれ縦方向Yにコルゲート構造の空気流通路5が貫通している)。
【0043】
そして、ABから成るコルゲート構造の炭素繊維体1(1a)をベース部とし、CDから成るコルゲート構造の炭素繊維体1(1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h)がフィン部となるようなヒートシンク構造、すなわち図7、図8に示すようなベース部が縦50mm×横60mmで、フィン部の高さHが30mmとなるようなヒートシンク構造を熱伝導性接着剤によって形成した。各コルゲート構造の炭素繊維体1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの空間(コルゲート構造の空気流通路5)が貫通している方向は、縦方向Yで同一である。
【0044】
(比較例)
本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と比較するため、比較例となるヒートシンク(放熱器)を準備した。
【0045】
図10は比較例となるヒートシンク(放熱器)を示す図である。比較例となるヒートシンク(放熱器)は、本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と同じ外形寸法を持つ、一般的な従来技術である黒アルマイト加工ヒートシンクである。すなわち、比較例となるヒートシンク(放熱器)では、アルミニウム材にA6063(熱伝導率200W/mK)を用い、ベース部51aの寸法は縦50mm×横60mm×厚さ3mm、フィン部51b,51c,51d,51e,51f,51g,51hの高さHは30mmと、本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と同じ外形寸法となっている。また、フィン部51b,51c,51d,51e,51f,51g,51hの厚さは1mmとし、表面は黒アルマイト加工(放射率0.9)が施してある。
【0046】
(検証実験)
上記のように準備した本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)と比較例となるヒートシンク(放熱器)のそれぞれについて、ベース部1a、51aの中央に発熱源となる5mm角のLEDパッケージ10(配線は図示せず)を搭載し(図9、図10を参照)、ヒートシンクの縦方向Yが地面や床面に対して鉛直方向(重力の方向)Zとなるように、熱伝導が無視できる糸(図示せず)で、空中に吊り下げた。
【0047】
この状態でLEDパッケージ10に5Wの電力を印加し、自然空冷状態での放熱能力を比較した。
【0048】
その結果は、LEDパッケージ10の温度が
実施例:58.2℃
比較例:59.1℃
となり、実施例の方が良好であった。
また、ヒートシンク単体としての重量は
実施例:14.4g (比重1.8)
比較例:52.6g (比重2.7)
となり、実施例の方が十分な軽量化を図ることができた。
【0049】
これは、本発明の実施例のヒートシンク(放熱器)では、空気流通路5を有するコルゲート構造を用いたことで、フィン内部にも風が通り抜け、実効的な熱交換面積が拡大したためと考えられる。また、アルミニウムに比べて炭素繊維紙は軽いため、比較例に比べて3分の1程度と十分な軽量化を図ることができた。
【0050】
このように、本発明によれば、高熱伝導性を持つ炭素繊維の特長を生かして、LEDのような小型の熱源に適応した、軽量な放熱器(ヒートシンク)を提供することができる。
【0051】
すなわち、LEDのような小型の熱源から効率良く放熱するためには、熱を拡散させる部分と、熱を空気に逃がす部分の、計2つの機能部分が必要である。さらに、全体を同一の高熱伝導材料で構成し、単一の容易な工法で、かつ実用十分な強度で(柔軟性を併せ持つ)作製できることが、量産性を考慮すると大変好適である。本発明は、このような条件を兼ね備えている。
【0052】
なお、本発明の放熱器は、図11に示すように、例えば図7の構成において、さらにファン7を設け、ファン7による風によって空気の強制対流を生じさせることもできる。この場合、ファン7による風の向きをコルゲート構造の空気流通路5の向き(縦方向Y)とすることで、空気の強制対流によって放熱効率をより一層高めることができる。
【0053】
また、本発明の放熱器(ヒートシンク)について、その大きさを任意所望のサイズにし、また、その全体形状を任意所望のものにすることが可能である。例えば、上述の例では、フィン部1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hは矩形形状のものとなっているが、フィン部1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hを使用用途、使用場所などに合わせて、例えば図12に示すような台形形状や図13に示すような三角形形状などにすることもできる。また、ベース部1aについても、上述の例では矩形形状のものとなっているが、使用用途、使用場所などに合わせて、例えば楕円形状などにすることもできる。
【0054】
また、上述の例では、発熱源がLEDであるとしたが、発熱源がLED以外の場合にも、本発明の放熱器(ヒートシンク)を用いて、放熱を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、自動車用照明、プロジェクタ、一般照明などの照明装置や、電子機器などの放熱を必要とする装置、機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 コルゲート構造の炭素繊維体
2、3、4 炭素繊維紙
5 空気流通路
7 ファン
10 LEDパッケージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されていることを特徴とする放熱器。
【請求項2】
請求項1記載の放熱器において、前記各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されていることを特徴とする放熱器。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の放熱器において、該放熱器は、前記各炭素繊維体のコルゲート構造の空気流通路が空気の対流方向と平行となるように設置されることを特徴とする放熱器。
【請求項1】
炭素繊維紙で形成された炭素繊維体が複数枚用いられ、前記各炭素繊維体は、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙と、平坦な面を持つ一対の炭素繊維紙に挟まれた波形の面を持つ炭素繊維紙とを備えた空気流通路をもつコルゲート構造となっており、前記複数枚の炭素繊維体のうちの1枚はベース部として用いられ、他の炭素繊維体は、前記ベース部として用いられる炭素繊維体と垂直に接合されてフィン部として用いられ、前記各炭素繊維体は、コルゲート構造の空気流通路がそれぞれ同じ向きとなるように配置され接合されていることを特徴とする放熱器。
【請求項2】
請求項1記載の放熱器において、前記各炭素繊維体を形成する炭素繊維紙は、繊維の配向が炭素繊維紙の裁断縁部に対して30°〜45°の角度範囲のものとなるように裁断されていることを特徴とする放熱器。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の放熱器において、該放熱器は、前記各炭素繊維体のコルゲート構造の空気流通路が空気の対流方向と平行となるように設置されることを特徴とする放熱器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−169529(P2012−169529A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30827(P2011−30827)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]