放熱基板とその製造方法
【課題】従来の放熱基板では、リードフレーム等の肉厚の厚い材料を用いた場合、リードフレーム部分が剥がれる可能性があった。
【解決手段】リードフレーム21やリードフレームの伝熱層17からの突き出し部である接続配線13の一部以上を樹脂構造体11で保護すると共に、この樹脂構造体を放熱基板23や放熱基板23の金属板18、あるいはシャーシ等28に直接、ネジ16等で固定することで、リードフレーム21や接続配線13と、伝熱層17との剥離強度を高める。
【解決手段】リードフレーム21やリードフレームの伝熱層17からの突き出し部である接続配線13の一部以上を樹脂構造体11で保護すると共に、この樹脂構造体を放熱基板23や放熱基板23の金属板18、あるいはシャーシ等28に直接、ネジ16等で固定することで、リードフレーム21や接続配線13と、伝熱層17との剥離強度を高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイルドハイブリッドカーを始めとするハイブリッドカーや産業用の機器に使われる放熱基板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキ時の回生電力等を電気二重層キャパシタ等に蓄積することで、低消費電力化を実現するハイブリッドカーや各種産業用の機器が注目されている。
【0003】
こうした機器においては、100Aを超える大電流を高精度に制御するDCDCコンバータ(ここでDCDCとは、DC入力をDC出力にするコンバータの意味である)等の大電流を取り扱う回路モジュール(電源モジュールもその一つである)が使われている。
【0004】
こうした回路モジュールは、大電流を取り扱う複数個のパワー半導体を用いるため、放熱性の優れた放熱基板を用いる必要がある。また各種機器の薄層化、小型化に伴い、放熱基板や、これを用いた回路モジュールにも小型化、軽量化が求められている。
【0005】
こうした放熱基板としては、例えば特許文献1のような、金属板に金属酸化物及び/又は金属窒化物を含有する絶縁接着剤層を介して回路基板を接合した構造を有する金属ベース回路基板が知られている。次に図11を用いて、従来の金属ベース基板について説明する。
【0006】
図11は、従来の放熱基板の一例を示す断面図である。図11において、金属板1の上には、絶縁層2を介して導電回路3が固定している。そして金属板1の一部には、段付異径孔4が形成されている。また導電回路3の表面には電子部品5が実装されている。そして電子部品5は、モールド樹脂7等と共に、ケースカバー6によって固定されている。またケースカバー6は、固定ネジ8によって固定されている。このように、金属ベース基板の下部(特に金属板1の底面)から、ケースカバー6や固定ネジ8が突出しないようにすることで、金属板1の底面がほぼ平面で熱拡散性機能が維持される金属ベース基板が提案されている。
【0007】
そして図11で示す従来の放熱基板の場合、その放熱性を高めるためには、絶縁層2と導電回路3とを接着する接着剤(あるいは絶縁層2)には、熱伝導性を高めるため無機フィラーの含有率を増加させる必要があった。その結果、無機フィラーの含有率を高めた分、樹脂等の接着成分の含有率が低下してしまい、導電回路3と絶縁層2との接着力が低下する。
【0008】
更に導電回路3として銅箔(厚み50ミクロン以下)のような薄く曲がりやすい材料を用いた場合、絶縁層2から剥離しても、その剥離部分で銅箔が千切れてしまうため剥離がそれ以上広がらないが、リードフレーム(厚み100ミクロン以上、望ましくは200ミクロン以上)を用いた場合、リードフレーム自体が曲がりにくい分、剥離部が広がる可能性がある。
【特許文献1】特公平6−48747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし図11で示すように、放熱基板全体をケースカバー6で覆った場合、導電回路3と、外部回路(例えば、プリント配線板等)との接続が難しくなる。更に、その熱伝導性を高めた場合、導電回路3と樹脂層2の接着力や強度が低下してしまう。
【0010】
また放熱基板の絶縁回路3部分だけを、選択的に高強度化することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、金属板と、この金属板上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、からなり、前記樹脂構造体の一部以上は、前記金属板に固定している放熱基板とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、金属板上に、シート状の伝熱層を介して固定したリードフレームの突き出し部分(例えば接続配線部)を、金属板に直接固定した樹脂構造体によって、補強することができる。
【0013】
更に接続配線部のみならずリードフレーム自体も、樹脂構造体によって、伝熱層に押付けられるように固定されるため、振動等によって引っ張り力が発生した場合でも、リードフレームの突き出し部のみならずリードフレーム本体がが、シート状の伝熱層から剥がれにくくさせ、放熱基板の配線部部等を選択的に高強度化、耐震化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
なお本発明の実施の形態に示された一部の製造工程は、成形金型等を用いて行われる。但し説明するために必要な場合以外は、成形金型は図示していない。また図面は模式図であり、各位置関係を寸法的に正しく示したものではない。
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1の放熱基板の構造について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、放熱基板の構成を説明する斜視図である。図1において、11は樹脂構造体、12は取付孔、13は接続配線、14は開口部、15は発熱部品、16はネジ、17は伝熱層、18は金属板、19は矢印である。
【0017】
図1に示す樹脂構造体11は、その中央部に開口部14があり、その中には接続配線13の一部であるリードフレーム(図示していない)に実装された発熱部品15が見える。
【0018】
また図1において、樹脂構造体11の周辺部等に形成した複数個の取付孔12に、矢印19に示すように各々ネジ16等を挿入することで、樹脂構造体11は金属板18や金属板18を固定するシャーシや筐体(共に図示していない)に直接、固定している。
【0019】
図1において、金属板18の上には、シート状の伝熱層17を介して、リードフレーム(図示していない)を固定しており、リードフレーム(図示していない)の一部は、伝熱層17から外に突き出し、接続配線13を構成する。
【0020】
実施の形態1では、金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線13と、この接続配線13の一部以上を固定する樹脂構造体11と、からなり、樹脂構造体11の一部以上は、金属板18に固定している放熱基板とすることで、接続配線13の取付け強度を高める。
【0021】
次に図2を用いて、更に詳しく説明する。図2は、放熱基板と樹脂構造体11の関係を示す斜視図である。図2において、20は点線、21はリードフレーム、22は脚、23は放熱基板である。
【0022】
図2に示すように、放熱基板23は、金属板18の上に、シート状の伝熱層17を用いてリードフレーム21を固定したものであり、リードフレーム21の一部は、伝熱層17から突き出し、接続配線13を構成する。なお放熱基板23は、この接続配線13を用いて他の基板(図示していない)や各種ケーブル(図示していない)に電気的に接続する。
【0023】
また発熱部品15は、パワー半導体やコイル、トランス等の発熱が課題となる(あるいは発熱しやすい)電子部品であり、リードフレーム21の上に実装することで、放熱と大電流供給を実現する。なおリードフレーム21の一部は、点線20によって省略している(図示していない)。
【0024】
また樹脂構造体11の一部には、脚22を設けており、脚22に形成した取付孔12にネジ16を挿入することで、金属板18に直接固定する。なお金属板18にも、樹脂構造体11を固定するための取付孔12を設ける。そして矢印19に示すようにこれら部材をネジ16で固定することで、図1に示した構造体とする。なおネジ16による取付けは伝熱層17の上に直接、樹脂構造体11が接するようにしても良いが、金属板18の上に直接、樹脂構造体11が接するようにすることで取付け強度を高められ、伝熱層17に取付孔12を形成する必要が無くなる。なお必要に応じて、図2等に示すように、伝熱層17の一部に、金属板18の露出部を作成し、この露出部に樹脂構造体11の一部(例えば脚22)をネジ16で固定する。なお固定方法はネジ16に限定する必要はなく、ピン等の固定治具を用いても良い。また樹脂構造体11の形状を工夫することで、ネジ16等の固定治具の省略も可能である。
【0025】
次に図3を用いて、樹脂構造体11の形状について説明する。図3は、樹脂構造体11の形状を工夫した場合について説明する斜視図である。図3において、24は切り込み部であり、この切り込み部24によって、リードフレーム21や、リードフレーム21の伝熱層17からの突き出し部からなる接続配線13を覆い、保護する。
【0026】
特に、図3に示すように、リードフレーム21は接続配線13を、伝熱層17の上に形成した場合、樹脂構造体11に、リードフレーム21等に対応する切り込み部24を形成する。図3に示すように、リードフレーム21の一部を切り込み部24で覆うようにすることで、リードフレーム21と伝熱層17との間の剥離強度を高める。これはネジ16によって、直接、金属板18等に固定した樹脂構造体11によって、リードフレーム21が伝熱層17に強く押し付けられている(あるいは機械的に固定されている)ためである。
【0027】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態1の放熱基板23の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図4(A)(B)は、共に実施の形態1で説明した放熱基板23の製造方法の一例を説明する断面図である。
【0029】
図4(A)において、25は伝熱材料である。図4(A)に示すように、金属板18の上に、伝熱材料25をセットし、その上に、所定形状に加工したリードフレーム21をセットする。その後、矢印19に示すようにプレスや金型(共に図示していない)を用いて、これら部材を一体化する。なおプレスの際に、加熱、加圧することで、リードフレーム21の隙間まで、伝熱材料25を充填させられる。また伝熱材料25に熱硬化性樹脂を用いることで、伝熱材料25を硬化させ、図4(B)に示すような伝熱層17とする。
【0030】
図4(B)は、図4(A)に示した部材が一体化した様子を説明する断面図である。こうして、図4(B)に示すような、金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレーム21と、このリードフレーム21の一部を前記伝熱層17から突き出してなる接続配線13とし、その後ソルダーレジストやハンダメッキ等の工程を経て(共に図示していない)放熱基板23とする。
【0031】
図4(B)における矢印29は、放熱基板23(ソルダーレジストや、この上に実装した発熱部品15等は図示していない)の接続端子13にかかる力(外力)を示す。接続端子13は、他の回路基板や圧着端子、電力ケーブル等(これらは図示していない)に取り付けられ、更に車載時には大きな力や振動がかかる。こうした力は、リードフレーム21の伝熱層17からの突き出し部である接続端子13に、図4(B)の矢印29のように影響を与える。
【0032】
図5(A)(B)は、共に樹脂構造体11によって、リードフレーム21や接続端子部13の強度を高める様子を示す断面図である。図5(A)に示すように、放熱基板23の上に、一部に脚22を有する樹脂構造体11をセットする。その後、ネジ16等を用いて、樹脂構造体11を、矢印19に示すように放熱基板23(望ましくは、金属板18)に固定する。なお図5(A)(B)において、取付孔12等は図示していない。
【0033】
図5(B)は、樹脂構造体11を放熱基板23にネジ16等を用いて固定した様子を説明する断面図である。図5(B)において、ネジ16は、金属板18に形成した取付孔12(図示していない)にしっかり固定している。なお金属板18に形成した取付孔12に、ネジ溝を切っておいてもよい。また金属板18に形成した取付孔12をバカ孔とし、金属板18の下にセットしたシャーシや筐体(共に図示していない)に固定しても良い。ここでバカ孔とは、clearance holeとも呼ばれる機械用語の一つであり、通しボルトや埋め込みボルトなどを挿入する孔も含む。
【0034】
図5(B)に示す矢印29は、接続端子13に発生する力を示す。図5(B)に示すように、接続端子13に外力がかかっても、接続端子13の一部以上やリードフレーム21の一部は、樹脂構造体11によって、矢印19に示すように金属板18や伝熱層17にしっかり固定している(あるいはネジ16によって押し付けている)ため、リードフレーム21と伝熱層17との界面が剥離することは無い。
【0035】
次に図6(A)(B)を用いて、樹脂構造体11を用いない場合での課題について説明する。図6(A)(B)は、共に樹脂構造体11を取り付けない場合に発生する可能性のある課題について説明する断面図である。図6(A)(B)において、26は付け根部、27は剥離部である。
【0036】
図6(A)に示すように、接続端子13に矢印29に示すような外力を加える。すると、図6(B)に示すように、接続端子13の一部が折れ曲がり、付け根部26において伝熱層17から剥離する可能性がある。図6(B)において、剥離部27とは、リードフレーム21と伝熱層17との界面が剥離した部分を示す。特にリードフレーム21のように、肉厚の厚い配線材料は、銅箔等の肉厚の薄い配線材料に比べ、曲がりにくいため、一部が剥離した場合、連鎖的に剥離部27が広がる場合がある。
【0037】
しかし図6(A)(B)に示すように、リードフレーム21の付け根部26等を、樹脂構造体11で固定することで、外力によってリードフレーム21は剥がれない。また接続端子13の折れ曲がり等も防止できる。
【0038】
次に、実施の形態1の放熱基板の作成に用いる部材について説明する。リードフレーム21としては、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い部材を用いる。またリードフレーム21の厚みは0.1mm以上(望ましくは0.2mm以上、更には0.3mm以上)を用いる。リードフレーム21の厚みが0.1mm未満の場合、接続配線13の強度が低下し、加工性が低い。
【0039】
またリードフレーム21の厚みは、10.0mm以下(望ましくは5.0mm以下)が望ましい。リードフレーム21の厚みが10.0mmを超えた場合、接続配線13のファインパターン化に影響を与える。
【0040】
次に伝熱材料25について説明する。伝熱材料25は、例えば、樹脂とフィラーとからなるものとすることで、その熱伝導性を高めることができる。そして樹脂として熱硬化性の樹脂を用いることで、その信頼性を高める。
【0041】
ここで無機フィラーとしては、例えば略球形状で、その直径は0.1μm以上100μm以下が適当である(0.1μm未満の場合、樹脂への分散が難しくなる。また100μmを超えると伝熱層17の厚みが厚くなり熱拡散性に影響を与える)。そのためこれら伝熱層17における無機フィラーの充填量は、熱伝導率を上げるために70から95重量%と高濃度に充填する。特に、本実施の形態では、無機フィラーは、平均粒径3μmと平均粒径12μmの2種類のアルミナを混合したものを用いている。この大小2種類の粒径のアルミナを用いることによって、大きな粒径のアルミナの隙間に小さな粒径のアルミナを充填できるので、アルミナを90重量%近くまで高濃度に充填する。この結果、これら伝熱層17の熱伝導率は5W/(m・K)程度となる。
【0042】
なお無機フィラーとしてはアルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化錫、ジルコン珪酸塩からなる群から選択される少なくとも一種以上を含んでいるものとすることが、熱伝導性やコスト面から望ましい。
【0043】
なお熱硬化性樹脂を使う場合は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、PEEK樹脂の群から選ばれた少なくとも1種類の熱硬化性樹脂を含む。これはこれらの樹脂が耐熱性や電気絶縁性に優れている。
【0044】
特に、伝熱層17の放熱性を高めようとすると、無機フィラーの含有率を増加させることが必要となるが、この結果、伝熱層17における熱硬化性樹脂の含有率を減らす可能性がある。そして伝熱層17における熱硬化性樹脂の含有率を減らした場合、伝熱層17と、リードフレーム21との間の接着力が低下する可能性がある。その結果、図6(A)(B)で説明したように、放熱基板23における伝熱層17とリードフレーム21の界面での剥離が発生する可能性も考えられる。
【0045】
しかし図1〜図5に示すように、樹脂構造体11をネジ16や固定用の治具(図示していない)を用いて金属板18等に固定することで、リードフレーム21や接続配線13と伝熱層17との間の剥離強度を高める。
【0046】
(実施の形態3)
実施の形態3として、樹脂構造体11の形状の最適化例について説明する。樹脂構造体11は、放熱基板23の形状や用途に応じて最適化設計する。
【0047】
図7は、樹脂構造体11を複数個とした場合について説明する斜視図である。図7の矢印19aに示すように接続配線13を、樹脂構造体11bに形成した取付孔12bに挿入する。その後この樹脂構造体11bを、樹脂構造体11aに形成した取付孔12bに嵌め込む。こうすることで、接続配線13の周囲全面を樹脂構造体11bで保護することができる。なお図7に示した樹脂構造体11bにおいて、取付孔12を複数個形成しておくことで、複数本の接続配線13間の位置矯正(位置ズレ防止も含む)や曲がり防止、ショート防止が可能となる。
【0048】
なお図7において、樹脂構造体11aは、放熱基板23(図示していない)の周辺を保護するように図示しているが、必ずしも周辺すべてを保護する必要はない。放熱基板23の必要部分(あるいは必要な辺)だけを選択的に保護することもできる。こうした場合樹脂構造体11aは、図7の形状(一種の額縁状)に限定することは無く、棒状(あるいはバー状、Lの字型や型コの字型も含む)とすれば良い。また板状とすることで、放熱基板23の上に形成したリードフレーム21を全面的に覆う(あるいは保護する)ことができる。
【0049】
なお図7において、樹脂構造体11を複数個に分ける場合(あるいは複数個の組合せからなる樹脂構造体11とする場合)、用途に応じて、その形状(あるいは一部の形状)を最適化できる。
【0050】
次に図8〜図10を用いて、樹脂構造体11の形状の一部の最適化例について説明する。
【0051】
図8(A)(B)は、共に接続配線13を、樹脂構造体11に形成した取付孔12に挿入し、保護する様子を説明する斜視図である。図8(A)に示すように、放熱基板23の接続配線13の近くに樹脂構造体11をセットする。その後、矢印19に示すように接続配線13を取付孔12に挿入する。図8(B)は、接続配線13を樹脂構造体11で保護した様子を示す斜視図である。
【0052】
図9(A)(B)は、共に接続配線13を、樹脂構造体11に形成した取付孔12に挿入し、保護する様子を説明する斜視図である。図9(A)に示すように、放熱基板23の接続配線13の近くに樹脂構造体11をセットする。その後、矢印19に示すように接続配線13を取付孔12に挿入する。図9(B)は、接続配線13を樹脂構造体11で保護した様子を示す斜視図である。図9(A)(B)に示すように、樹脂構造体11の一部に形成した脚22や、金属板18の一部等に切り込み部24を形成しておくことで、これら部材の挿入性を高める。またネジ16(図示していない)を省略することができる。また図9(A)(B)において、樹脂構造体11のネジ16等による固定を、金属板18ではなくて金属板18を固定するシャーシや筐体(共に図示していないが、後述する図10ではシャーシ等28として図示している)に直接固定しても良い。
【0053】
図10(A)(B)は、共に樹脂構造体11をネジ16によってシャーシや筐体に固定する様子を説明する斜視図である。図10(A)(B)において、28はシャーシ等である。図10(A)に示すように、接続配線13を樹脂構造体11にセットし、その後、図10(B)に示すように、ネジ16によってシャーシ等28に直接固定する。こうすることで放熱基板23とシャーシ28等の固定も同時に行うことができ、コストダウンが可能となる。
【0054】
なお樹脂構造体11としては、射出成型に対応する樹脂材を用いる。こうした樹脂は成形性に富み、安価である。また必要に応じて液晶ポリマー、PPE、PEEK等の強度の高いエンジニアリング樹脂を用いても良い。
【0055】
以上のようにして、金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレーム21と、このリードフレーム21の一部を伝熱層17から突き出してなる接続配線13と、この接続配線13の一部以上を固定する樹脂構造体11と、からなり、前記樹脂構造体11の一部以上は、金属板18に固定している放熱基板23を提供することで、振動や機械的強度に優れた放熱基板23を提供する。なおこの放熱基板23は、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21においても、樹脂構造体11によって高強度化できることは言うまでもない。
【0056】
金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレーム21と、このリードフレーム21の一部を伝熱層17から突き出してなる接続配線13と、金属板18に固定した樹脂構造体11と、からなり、接続配線13の一部以上は、樹脂構造体11に固定している放熱基板23を提供することで、振動や機械的強度に優れた放熱基板23を提供する。なおこの放熱基板23は、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21においても、樹脂構造体11によって高強度化できることは言うまでもない。
【0057】
樹脂構造体11の一部以上は、リードフレーム21の一部以上を、固定している放熱基板23とすることで、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21においても、樹脂構造体11によって高強度化できることは言うまでもない。
【0058】
また金属板18上に、シート状の伝熱層17を用いてリードフレーム21を固定する工程と、リードフレーム21の一部を伝熱層17から突き出してなる接続配線13とする工程と、接続配線13の一部以上を樹脂構造体11に固定する工程と、を有する放熱基板23の製造方法によって、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21も高強度化した放熱基板23を提供する。
【0059】
なおリードフレーム21は、伝熱層17に必ずしも埋め込む必要は無い。また伝熱層17として、樹脂フィルム等のキャスティングで形成したシート材を用いても良い。こうすることで、金属板18に樹脂フィルムを介してリードフレーム21を固定してなる放熱基板も、本願発明の放熱基板23とする。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる放熱基板とその製造方法を用いることで、実装性の低いあるいは重量の大きい異形部品に対しても、樹脂構造体にしっかり固定でき、耐振性や機械的強度に優れるため、各種機器の高信頼性化や高強度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】回路モジュールの構成を説明する斜視図
【図2】放熱基板と樹脂構造体の関係を示す斜視図
【図3】樹脂構造体の形状を工夫した場合について説明する斜視図
【図4】(A)(B)は、共に実施の形態1で説明した放熱基板の製造方法の一例を説明する断面図
【図5】(A)(B)は、共に樹脂構造体によって、リードフレームや接続端子部の強度を高める様子を示す断面図
【図6】(A)(B)は、共に樹脂構造体を取り付けない場合に発生する可能性のある課題について説明する断面図
【図7】樹脂構造体を複数個とした場合について説明する斜視図
【図8】(A)(B)は、共に接続配線を、樹脂構造体に形成した取付孔に挿入し、保護する様子を説明する斜視図
【図9】(A)(B)は、共に接続配線を、樹脂構造体に形成した取付孔に挿入し、保護する様子を説明する斜視図
【図10】(A)(B)は、共に樹脂構造体をネジによってシャーシや筐体に固定する様子を説明する斜視図
【図11】(A)(B)は、共に従来の放熱基板の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0062】
11、11a、11b 樹脂構造体
12、12a、12b、12c 取付孔
13 接続配線
14 開口部
15 発熱部品
16 ネジ
17 伝熱層
18 金属板
19 矢印
20 点線
21 リードフレーム
22 脚
23 放熱基板
24 切り込み部
25 伝熱材料
26 付け根部
27 剥離部
28 シャーシ等
29 矢印(外力)
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイルドハイブリッドカーを始めとするハイブリッドカーや産業用の機器に使われる放熱基板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキ時の回生電力等を電気二重層キャパシタ等に蓄積することで、低消費電力化を実現するハイブリッドカーや各種産業用の機器が注目されている。
【0003】
こうした機器においては、100Aを超える大電流を高精度に制御するDCDCコンバータ(ここでDCDCとは、DC入力をDC出力にするコンバータの意味である)等の大電流を取り扱う回路モジュール(電源モジュールもその一つである)が使われている。
【0004】
こうした回路モジュールは、大電流を取り扱う複数個のパワー半導体を用いるため、放熱性の優れた放熱基板を用いる必要がある。また各種機器の薄層化、小型化に伴い、放熱基板や、これを用いた回路モジュールにも小型化、軽量化が求められている。
【0005】
こうした放熱基板としては、例えば特許文献1のような、金属板に金属酸化物及び/又は金属窒化物を含有する絶縁接着剤層を介して回路基板を接合した構造を有する金属ベース回路基板が知られている。次に図11を用いて、従来の金属ベース基板について説明する。
【0006】
図11は、従来の放熱基板の一例を示す断面図である。図11において、金属板1の上には、絶縁層2を介して導電回路3が固定している。そして金属板1の一部には、段付異径孔4が形成されている。また導電回路3の表面には電子部品5が実装されている。そして電子部品5は、モールド樹脂7等と共に、ケースカバー6によって固定されている。またケースカバー6は、固定ネジ8によって固定されている。このように、金属ベース基板の下部(特に金属板1の底面)から、ケースカバー6や固定ネジ8が突出しないようにすることで、金属板1の底面がほぼ平面で熱拡散性機能が維持される金属ベース基板が提案されている。
【0007】
そして図11で示す従来の放熱基板の場合、その放熱性を高めるためには、絶縁層2と導電回路3とを接着する接着剤(あるいは絶縁層2)には、熱伝導性を高めるため無機フィラーの含有率を増加させる必要があった。その結果、無機フィラーの含有率を高めた分、樹脂等の接着成分の含有率が低下してしまい、導電回路3と絶縁層2との接着力が低下する。
【0008】
更に導電回路3として銅箔(厚み50ミクロン以下)のような薄く曲がりやすい材料を用いた場合、絶縁層2から剥離しても、その剥離部分で銅箔が千切れてしまうため剥離がそれ以上広がらないが、リードフレーム(厚み100ミクロン以上、望ましくは200ミクロン以上)を用いた場合、リードフレーム自体が曲がりにくい分、剥離部が広がる可能性がある。
【特許文献1】特公平6−48747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし図11で示すように、放熱基板全体をケースカバー6で覆った場合、導電回路3と、外部回路(例えば、プリント配線板等)との接続が難しくなる。更に、その熱伝導性を高めた場合、導電回路3と樹脂層2の接着力や強度が低下してしまう。
【0010】
また放熱基板の絶縁回路3部分だけを、選択的に高強度化することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、金属板と、この金属板上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、からなり、前記樹脂構造体の一部以上は、前記金属板に固定している放熱基板とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、金属板上に、シート状の伝熱層を介して固定したリードフレームの突き出し部分(例えば接続配線部)を、金属板に直接固定した樹脂構造体によって、補強することができる。
【0013】
更に接続配線部のみならずリードフレーム自体も、樹脂構造体によって、伝熱層に押付けられるように固定されるため、振動等によって引っ張り力が発生した場合でも、リードフレームの突き出し部のみならずリードフレーム本体がが、シート状の伝熱層から剥がれにくくさせ、放熱基板の配線部部等を選択的に高強度化、耐震化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
なお本発明の実施の形態に示された一部の製造工程は、成形金型等を用いて行われる。但し説明するために必要な場合以外は、成形金型は図示していない。また図面は模式図であり、各位置関係を寸法的に正しく示したものではない。
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1の放熱基板の構造について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、放熱基板の構成を説明する斜視図である。図1において、11は樹脂構造体、12は取付孔、13は接続配線、14は開口部、15は発熱部品、16はネジ、17は伝熱層、18は金属板、19は矢印である。
【0017】
図1に示す樹脂構造体11は、その中央部に開口部14があり、その中には接続配線13の一部であるリードフレーム(図示していない)に実装された発熱部品15が見える。
【0018】
また図1において、樹脂構造体11の周辺部等に形成した複数個の取付孔12に、矢印19に示すように各々ネジ16等を挿入することで、樹脂構造体11は金属板18や金属板18を固定するシャーシや筐体(共に図示していない)に直接、固定している。
【0019】
図1において、金属板18の上には、シート状の伝熱層17を介して、リードフレーム(図示していない)を固定しており、リードフレーム(図示していない)の一部は、伝熱層17から外に突き出し、接続配線13を構成する。
【0020】
実施の形態1では、金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線13と、この接続配線13の一部以上を固定する樹脂構造体11と、からなり、樹脂構造体11の一部以上は、金属板18に固定している放熱基板とすることで、接続配線13の取付け強度を高める。
【0021】
次に図2を用いて、更に詳しく説明する。図2は、放熱基板と樹脂構造体11の関係を示す斜視図である。図2において、20は点線、21はリードフレーム、22は脚、23は放熱基板である。
【0022】
図2に示すように、放熱基板23は、金属板18の上に、シート状の伝熱層17を用いてリードフレーム21を固定したものであり、リードフレーム21の一部は、伝熱層17から突き出し、接続配線13を構成する。なお放熱基板23は、この接続配線13を用いて他の基板(図示していない)や各種ケーブル(図示していない)に電気的に接続する。
【0023】
また発熱部品15は、パワー半導体やコイル、トランス等の発熱が課題となる(あるいは発熱しやすい)電子部品であり、リードフレーム21の上に実装することで、放熱と大電流供給を実現する。なおリードフレーム21の一部は、点線20によって省略している(図示していない)。
【0024】
また樹脂構造体11の一部には、脚22を設けており、脚22に形成した取付孔12にネジ16を挿入することで、金属板18に直接固定する。なお金属板18にも、樹脂構造体11を固定するための取付孔12を設ける。そして矢印19に示すようにこれら部材をネジ16で固定することで、図1に示した構造体とする。なおネジ16による取付けは伝熱層17の上に直接、樹脂構造体11が接するようにしても良いが、金属板18の上に直接、樹脂構造体11が接するようにすることで取付け強度を高められ、伝熱層17に取付孔12を形成する必要が無くなる。なお必要に応じて、図2等に示すように、伝熱層17の一部に、金属板18の露出部を作成し、この露出部に樹脂構造体11の一部(例えば脚22)をネジ16で固定する。なお固定方法はネジ16に限定する必要はなく、ピン等の固定治具を用いても良い。また樹脂構造体11の形状を工夫することで、ネジ16等の固定治具の省略も可能である。
【0025】
次に図3を用いて、樹脂構造体11の形状について説明する。図3は、樹脂構造体11の形状を工夫した場合について説明する斜視図である。図3において、24は切り込み部であり、この切り込み部24によって、リードフレーム21や、リードフレーム21の伝熱層17からの突き出し部からなる接続配線13を覆い、保護する。
【0026】
特に、図3に示すように、リードフレーム21は接続配線13を、伝熱層17の上に形成した場合、樹脂構造体11に、リードフレーム21等に対応する切り込み部24を形成する。図3に示すように、リードフレーム21の一部を切り込み部24で覆うようにすることで、リードフレーム21と伝熱層17との間の剥離強度を高める。これはネジ16によって、直接、金属板18等に固定した樹脂構造体11によって、リードフレーム21が伝熱層17に強く押し付けられている(あるいは機械的に固定されている)ためである。
【0027】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態1の放熱基板23の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図4(A)(B)は、共に実施の形態1で説明した放熱基板23の製造方法の一例を説明する断面図である。
【0029】
図4(A)において、25は伝熱材料である。図4(A)に示すように、金属板18の上に、伝熱材料25をセットし、その上に、所定形状に加工したリードフレーム21をセットする。その後、矢印19に示すようにプレスや金型(共に図示していない)を用いて、これら部材を一体化する。なおプレスの際に、加熱、加圧することで、リードフレーム21の隙間まで、伝熱材料25を充填させられる。また伝熱材料25に熱硬化性樹脂を用いることで、伝熱材料25を硬化させ、図4(B)に示すような伝熱層17とする。
【0030】
図4(B)は、図4(A)に示した部材が一体化した様子を説明する断面図である。こうして、図4(B)に示すような、金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレーム21と、このリードフレーム21の一部を前記伝熱層17から突き出してなる接続配線13とし、その後ソルダーレジストやハンダメッキ等の工程を経て(共に図示していない)放熱基板23とする。
【0031】
図4(B)における矢印29は、放熱基板23(ソルダーレジストや、この上に実装した発熱部品15等は図示していない)の接続端子13にかかる力(外力)を示す。接続端子13は、他の回路基板や圧着端子、電力ケーブル等(これらは図示していない)に取り付けられ、更に車載時には大きな力や振動がかかる。こうした力は、リードフレーム21の伝熱層17からの突き出し部である接続端子13に、図4(B)の矢印29のように影響を与える。
【0032】
図5(A)(B)は、共に樹脂構造体11によって、リードフレーム21や接続端子部13の強度を高める様子を示す断面図である。図5(A)に示すように、放熱基板23の上に、一部に脚22を有する樹脂構造体11をセットする。その後、ネジ16等を用いて、樹脂構造体11を、矢印19に示すように放熱基板23(望ましくは、金属板18)に固定する。なお図5(A)(B)において、取付孔12等は図示していない。
【0033】
図5(B)は、樹脂構造体11を放熱基板23にネジ16等を用いて固定した様子を説明する断面図である。図5(B)において、ネジ16は、金属板18に形成した取付孔12(図示していない)にしっかり固定している。なお金属板18に形成した取付孔12に、ネジ溝を切っておいてもよい。また金属板18に形成した取付孔12をバカ孔とし、金属板18の下にセットしたシャーシや筐体(共に図示していない)に固定しても良い。ここでバカ孔とは、clearance holeとも呼ばれる機械用語の一つであり、通しボルトや埋め込みボルトなどを挿入する孔も含む。
【0034】
図5(B)に示す矢印29は、接続端子13に発生する力を示す。図5(B)に示すように、接続端子13に外力がかかっても、接続端子13の一部以上やリードフレーム21の一部は、樹脂構造体11によって、矢印19に示すように金属板18や伝熱層17にしっかり固定している(あるいはネジ16によって押し付けている)ため、リードフレーム21と伝熱層17との界面が剥離することは無い。
【0035】
次に図6(A)(B)を用いて、樹脂構造体11を用いない場合での課題について説明する。図6(A)(B)は、共に樹脂構造体11を取り付けない場合に発生する可能性のある課題について説明する断面図である。図6(A)(B)において、26は付け根部、27は剥離部である。
【0036】
図6(A)に示すように、接続端子13に矢印29に示すような外力を加える。すると、図6(B)に示すように、接続端子13の一部が折れ曲がり、付け根部26において伝熱層17から剥離する可能性がある。図6(B)において、剥離部27とは、リードフレーム21と伝熱層17との界面が剥離した部分を示す。特にリードフレーム21のように、肉厚の厚い配線材料は、銅箔等の肉厚の薄い配線材料に比べ、曲がりにくいため、一部が剥離した場合、連鎖的に剥離部27が広がる場合がある。
【0037】
しかし図6(A)(B)に示すように、リードフレーム21の付け根部26等を、樹脂構造体11で固定することで、外力によってリードフレーム21は剥がれない。また接続端子13の折れ曲がり等も防止できる。
【0038】
次に、実施の形態1の放熱基板の作成に用いる部材について説明する。リードフレーム21としては、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い部材を用いる。またリードフレーム21の厚みは0.1mm以上(望ましくは0.2mm以上、更には0.3mm以上)を用いる。リードフレーム21の厚みが0.1mm未満の場合、接続配線13の強度が低下し、加工性が低い。
【0039】
またリードフレーム21の厚みは、10.0mm以下(望ましくは5.0mm以下)が望ましい。リードフレーム21の厚みが10.0mmを超えた場合、接続配線13のファインパターン化に影響を与える。
【0040】
次に伝熱材料25について説明する。伝熱材料25は、例えば、樹脂とフィラーとからなるものとすることで、その熱伝導性を高めることができる。そして樹脂として熱硬化性の樹脂を用いることで、その信頼性を高める。
【0041】
ここで無機フィラーとしては、例えば略球形状で、その直径は0.1μm以上100μm以下が適当である(0.1μm未満の場合、樹脂への分散が難しくなる。また100μmを超えると伝熱層17の厚みが厚くなり熱拡散性に影響を与える)。そのためこれら伝熱層17における無機フィラーの充填量は、熱伝導率を上げるために70から95重量%と高濃度に充填する。特に、本実施の形態では、無機フィラーは、平均粒径3μmと平均粒径12μmの2種類のアルミナを混合したものを用いている。この大小2種類の粒径のアルミナを用いることによって、大きな粒径のアルミナの隙間に小さな粒径のアルミナを充填できるので、アルミナを90重量%近くまで高濃度に充填する。この結果、これら伝熱層17の熱伝導率は5W/(m・K)程度となる。
【0042】
なお無機フィラーとしてはアルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化錫、ジルコン珪酸塩からなる群から選択される少なくとも一種以上を含んでいるものとすることが、熱伝導性やコスト面から望ましい。
【0043】
なお熱硬化性樹脂を使う場合は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、PEEK樹脂の群から選ばれた少なくとも1種類の熱硬化性樹脂を含む。これはこれらの樹脂が耐熱性や電気絶縁性に優れている。
【0044】
特に、伝熱層17の放熱性を高めようとすると、無機フィラーの含有率を増加させることが必要となるが、この結果、伝熱層17における熱硬化性樹脂の含有率を減らす可能性がある。そして伝熱層17における熱硬化性樹脂の含有率を減らした場合、伝熱層17と、リードフレーム21との間の接着力が低下する可能性がある。その結果、図6(A)(B)で説明したように、放熱基板23における伝熱層17とリードフレーム21の界面での剥離が発生する可能性も考えられる。
【0045】
しかし図1〜図5に示すように、樹脂構造体11をネジ16や固定用の治具(図示していない)を用いて金属板18等に固定することで、リードフレーム21や接続配線13と伝熱層17との間の剥離強度を高める。
【0046】
(実施の形態3)
実施の形態3として、樹脂構造体11の形状の最適化例について説明する。樹脂構造体11は、放熱基板23の形状や用途に応じて最適化設計する。
【0047】
図7は、樹脂構造体11を複数個とした場合について説明する斜視図である。図7の矢印19aに示すように接続配線13を、樹脂構造体11bに形成した取付孔12bに挿入する。その後この樹脂構造体11bを、樹脂構造体11aに形成した取付孔12bに嵌め込む。こうすることで、接続配線13の周囲全面を樹脂構造体11bで保護することができる。なお図7に示した樹脂構造体11bにおいて、取付孔12を複数個形成しておくことで、複数本の接続配線13間の位置矯正(位置ズレ防止も含む)や曲がり防止、ショート防止が可能となる。
【0048】
なお図7において、樹脂構造体11aは、放熱基板23(図示していない)の周辺を保護するように図示しているが、必ずしも周辺すべてを保護する必要はない。放熱基板23の必要部分(あるいは必要な辺)だけを選択的に保護することもできる。こうした場合樹脂構造体11aは、図7の形状(一種の額縁状)に限定することは無く、棒状(あるいはバー状、Lの字型や型コの字型も含む)とすれば良い。また板状とすることで、放熱基板23の上に形成したリードフレーム21を全面的に覆う(あるいは保護する)ことができる。
【0049】
なお図7において、樹脂構造体11を複数個に分ける場合(あるいは複数個の組合せからなる樹脂構造体11とする場合)、用途に応じて、その形状(あるいは一部の形状)を最適化できる。
【0050】
次に図8〜図10を用いて、樹脂構造体11の形状の一部の最適化例について説明する。
【0051】
図8(A)(B)は、共に接続配線13を、樹脂構造体11に形成した取付孔12に挿入し、保護する様子を説明する斜視図である。図8(A)に示すように、放熱基板23の接続配線13の近くに樹脂構造体11をセットする。その後、矢印19に示すように接続配線13を取付孔12に挿入する。図8(B)は、接続配線13を樹脂構造体11で保護した様子を示す斜視図である。
【0052】
図9(A)(B)は、共に接続配線13を、樹脂構造体11に形成した取付孔12に挿入し、保護する様子を説明する斜視図である。図9(A)に示すように、放熱基板23の接続配線13の近くに樹脂構造体11をセットする。その後、矢印19に示すように接続配線13を取付孔12に挿入する。図9(B)は、接続配線13を樹脂構造体11で保護した様子を示す斜視図である。図9(A)(B)に示すように、樹脂構造体11の一部に形成した脚22や、金属板18の一部等に切り込み部24を形成しておくことで、これら部材の挿入性を高める。またネジ16(図示していない)を省略することができる。また図9(A)(B)において、樹脂構造体11のネジ16等による固定を、金属板18ではなくて金属板18を固定するシャーシや筐体(共に図示していないが、後述する図10ではシャーシ等28として図示している)に直接固定しても良い。
【0053】
図10(A)(B)は、共に樹脂構造体11をネジ16によってシャーシや筐体に固定する様子を説明する斜視図である。図10(A)(B)において、28はシャーシ等である。図10(A)に示すように、接続配線13を樹脂構造体11にセットし、その後、図10(B)に示すように、ネジ16によってシャーシ等28に直接固定する。こうすることで放熱基板23とシャーシ28等の固定も同時に行うことができ、コストダウンが可能となる。
【0054】
なお樹脂構造体11としては、射出成型に対応する樹脂材を用いる。こうした樹脂は成形性に富み、安価である。また必要に応じて液晶ポリマー、PPE、PEEK等の強度の高いエンジニアリング樹脂を用いても良い。
【0055】
以上のようにして、金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレーム21と、このリードフレーム21の一部を伝熱層17から突き出してなる接続配線13と、この接続配線13の一部以上を固定する樹脂構造体11と、からなり、前記樹脂構造体11の一部以上は、金属板18に固定している放熱基板23を提供することで、振動や機械的強度に優れた放熱基板23を提供する。なおこの放熱基板23は、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21においても、樹脂構造体11によって高強度化できることは言うまでもない。
【0056】
金属板18と、この金属板18上に形成したシート状の伝熱層17と、この伝熱層17に固定したリードフレーム21と、このリードフレーム21の一部を伝熱層17から突き出してなる接続配線13と、金属板18に固定した樹脂構造体11と、からなり、接続配線13の一部以上は、樹脂構造体11に固定している放熱基板23を提供することで、振動や機械的強度に優れた放熱基板23を提供する。なおこの放熱基板23は、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21においても、樹脂構造体11によって高強度化できることは言うまでもない。
【0057】
樹脂構造体11の一部以上は、リードフレーム21の一部以上を、固定している放熱基板23とすることで、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21においても、樹脂構造体11によって高強度化できることは言うまでもない。
【0058】
また金属板18上に、シート状の伝熱層17を用いてリードフレーム21を固定する工程と、リードフレーム21の一部を伝熱層17から突き出してなる接続配線13とする工程と、接続配線13の一部以上を樹脂構造体11に固定する工程と、を有する放熱基板23の製造方法によって、接続配線13部分のみならず、リードフレーム21も高強度化した放熱基板23を提供する。
【0059】
なおリードフレーム21は、伝熱層17に必ずしも埋め込む必要は無い。また伝熱層17として、樹脂フィルム等のキャスティングで形成したシート材を用いても良い。こうすることで、金属板18に樹脂フィルムを介してリードフレーム21を固定してなる放熱基板も、本願発明の放熱基板23とする。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる放熱基板とその製造方法を用いることで、実装性の低いあるいは重量の大きい異形部品に対しても、樹脂構造体にしっかり固定でき、耐振性や機械的強度に優れるため、各種機器の高信頼性化や高強度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】回路モジュールの構成を説明する斜視図
【図2】放熱基板と樹脂構造体の関係を示す斜視図
【図3】樹脂構造体の形状を工夫した場合について説明する斜視図
【図4】(A)(B)は、共に実施の形態1で説明した放熱基板の製造方法の一例を説明する断面図
【図5】(A)(B)は、共に樹脂構造体によって、リードフレームや接続端子部の強度を高める様子を示す断面図
【図6】(A)(B)は、共に樹脂構造体を取り付けない場合に発生する可能性のある課題について説明する断面図
【図7】樹脂構造体を複数個とした場合について説明する斜視図
【図8】(A)(B)は、共に接続配線を、樹脂構造体に形成した取付孔に挿入し、保護する様子を説明する斜視図
【図9】(A)(B)は、共に接続配線を、樹脂構造体に形成した取付孔に挿入し、保護する様子を説明する斜視図
【図10】(A)(B)は、共に樹脂構造体をネジによってシャーシや筐体に固定する様子を説明する斜視図
【図11】(A)(B)は、共に従来の放熱基板の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0062】
11、11a、11b 樹脂構造体
12、12a、12b、12c 取付孔
13 接続配線
14 開口部
15 発熱部品
16 ネジ
17 伝熱層
18 金属板
19 矢印
20 点線
21 リードフレーム
22 脚
23 放熱基板
24 切り込み部
25 伝熱材料
26 付け根部
27 剥離部
28 シャーシ等
29 矢印(外力)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、この金属板上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、からなり、
前記樹脂構造体の一部以上は、前記金属板に固定している放熱基板。
【請求項2】
金属板と、この金属板上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、前記金属板に固定した樹脂構造体と、からなり、
前記接続配線の一部以上は、前記樹脂構造体に固定している放熱基板。
【請求項3】
樹脂構造体の一部以上は、前記リードフレームの一部以上を、固定している請求項1もしくは2のいずれか一つに記載の放熱基板。
【請求項4】
金属板上に、シート状の伝熱層を用いてリードフレームを固定する工程と、
前記リードフレームの一部を伝熱層から突き出してなる接続配線とする工程と、
前記接続配線の一部以上を樹脂構造体に固定する工程と、
を有する放熱基板の製造方法。
【請求項1】
金属板と、この金属板上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、からなり、
前記樹脂構造体の一部以上は、前記金属板に固定している放熱基板。
【請求項2】
金属板と、この金属板上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、前記金属板に固定した樹脂構造体と、からなり、
前記接続配線の一部以上は、前記樹脂構造体に固定している放熱基板。
【請求項3】
樹脂構造体の一部以上は、前記リードフレームの一部以上を、固定している請求項1もしくは2のいずれか一つに記載の放熱基板。
【請求項4】
金属板上に、シート状の伝熱層を用いてリードフレームを固定する工程と、
前記リードフレームの一部を伝熱層から突き出してなる接続配線とする工程と、
前記接続配線の一部以上を樹脂構造体に固定する工程と、
を有する放熱基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−188310(P2009−188310A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28797(P2008−28797)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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