説明

放熱性シリコーンゲル用組成物およびそれを硬化させてなる放熱性シリコーンシート

【課題】電気・電子部品に用いて、優れた放熱性を有し、物理的ストレスを抑えることができ、液状のシリコーンの滲み出しが少なく、各部品や基板に対して優れた密着性や粘着性を発現するゲルとなる、放熱性シリコーンゲル用組成物および当該組成物を硬化させた放熱性シリコーンシートの提供を目的とする。
【解決手段】アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン、連鎖延長剤としてのジオルガノ水素シロキシ末端ポリオルガノシロキサン、架橋剤としてのポリオルガノ水素シロキサン、ヒドロシリル化触媒および熱伝導性フィラーから成り、かつ、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数と連鎖延長剤中のケイ素原子に結合した水素原子の数、ならびに架橋剤中のケイ素原子に結合した水素原子の数との比が特定である硬化可能な放熱性シリコーンゲル用組成物およびそれを硬化させてなる放熱性シリコーンシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発熱性の電子・電気部品およびそれらを実装した回路基板に使用して熱的および機械的なストレスから保護するための放熱性シリコーンゲル用の組成物及び当該放熱性シリコーンゲル用組成物を硬化させてなる放熱性シリコーンシートに関する。更に詳しくは、組成物硬化物がゲル状であるために、電子部品などの物理的なストレスを軽減することが可能であり、組成物の粘度が低いために作業性・生産性が高く、更に硬化物からの液状シリコーンポリマーの滲み出しが少ないために電気・電子部品や回路基板の周辺を汚損することがなく、さらに各部品や基板の小さな凹凸のある面との密着性や粘着性に優れる放熱性シリコーンゲル用組成物及びそれを硬化させてなる放熱性シリコーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
発熱性の電気・電子部品およびこれらを実装した回路基板を熱衝撃や高温高湿の使用環境から保護するため、これまで様々な放熱性材料が提案されてきた。例えば、特許文献1では、ポリオルガノシロキサンに酸化ベリリウムや酸化アルミニウムなどから選択された熱伝導性フィラーを充填する方法が提案されている。しかし、この組成物は硬化してエラストマー状となるポリオルガノシロキサンを使用しているために、機械的なストレスからの保護には十分ではなく、流動性に劣るためにシート加工などには適当でなかった。また、特許文献2では、放熱性充填材として酸化アルミニウムの粒径と形状を規定した液状の硬化型シリコーン組成物が提案されている。特に、この組成物では比重の高い酸化アルミニウムの経時的な沈降を防ぐため、粒径の異なる2種類の酸化アルミニウムを配合することが提案されていた。しかし、この方法ではチキソ性が高く、ポッティング用途として用いるには充分とは言えなかった。また、この組成物は、硬化して実質的に高硬度のゴム状物となるものに限定しており、応力緩和の効果は不十分であった。
【0003】
硬化してエラストマー状となる組成物に代えて、硬化してゲル状となり、熱伝導性のフィラーを含有しながら液状である組成物も提案されている。例えば、特許文献3には、アルケニル基含有ポリシロキサンに、特定の粉砕シリカ及び/または酸化アルミニウムを使用し、硬化後の針入度が所定の範囲となる放熱性シリコーンゲル用組成物が提案されている。しかしながら、硬化後の表面べたつきの低減化が達成できるとの記載はあるものの、液状ポリマーの滲み出しについては何ら示唆されていない。組成物の粘度を下げて、かつ針入度を高めるために、より低粘度のアルケニル基含有シロキサンを使用し、架橋剤としてのケイ素原子結合水素原子含有シロキサンの使用量を減らして架橋密度を低下させようとすると液状のシリコーンが滲み出るという問題があった。一方、特許文献4では、シリコーンゲル用組成物において熱伝導性フィラーとの混練性を高めるために、親水基を有するシリコーンオイルを混練剤として使用することが提案されている。しかしながら、この場合にも親水基含有シリコーンオイルの滲み出しが起こり、電気・電子部品や回路基板の周辺を汚損するという問題があった。
【特許文献1】特開昭55−22891号公報
【特許文献2】特開昭63−251466号公報
【特許文献3】特開平11−49959号公報
【特許文献4】特開2005−194479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、粘度が低いためにポッティングが容易にでき、硬化した組成物は、放熱特性および応力緩和特性を兼ね備え、更に液状のシリコーンの滲み出しが少なく、粘着性を維持した放熱性シリコーンゲルとなる組成物を提供することを課題とする。即ち、本発明の目的は、電気・電子部品およびこれらを搭載した回路基板上に放熱性を有するシリコーン層を容易に形成でき、また、硬化して得られたゲル硬化物は、電気・電子部品に対して優れた放熱性を有すると同時に、物理的ストレスを最小限に抑えることができ、なおかつ液状のシリコーンの滲み出しが少ないために、電気・電子部品や回路基板の周辺を汚損することがなく、各部品や基板に対して優れた密着性や粘着性を発現する、放熱性シリコーンゲル用組成物および当該組成物を硬化させてなる放熱性シリコーンシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン、連鎖延長剤としての特定のジオルガノ水素シロキシ末端ポリオルガノシロキサン、架橋剤としての特定のポリオルガノ水素シロキサン、ヒドロシリル化触媒および熱伝導性フィラーから成り、かつ前記連鎖延長剤中に存在するケイ素原子に結合した水素原子の数と前記架橋剤中及び前記連鎖延長剤中に存在するケイ素原子に結合した水素原子の数の合計数との比、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン中に存在するケイ素原子に結合したアルケニル基の数と前記連鎖延長剤中に存在するケイ素原子に結合した水素原子の数との比、ならびにアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン中に存在するケイ素原子に結合したアルケニル基の数と前記架橋剤中に存在するケイ素原子に結合した水素原子の数との比が特定である硬化可能な放熱性シリコーンゲル用組成物およびそれを硬化させてなる放熱性シリコーンシートが上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基が1分子中に平均約2個存在し、ケイ素原子に結合した他の有機基が脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10〜30,000mPa・sであるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン 100重量部、
(B)末端単位が式(1)、
【化1】

末端ではないポリオルガノシロキサン単位が式(2)
【化2】

であり(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基である)、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10〜30,000mPa・sであるジオルガノ水素シロキシ末端ポリオルガノシロキサン、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数(NA)と(B)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NB)との比が0.1≦(NB/NA)≦0.8となる量、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子が1分子中に平均で少なくとも3個以上存在し、ケイ素原子に結合した他の有機基が脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10〜10,000mPa・s以下であるポリオルガノ水素シロキサン、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数(NA)と(C)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NC)との比が0.08≦(NC/NA)≦0.3となる量であり、かつ(B)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NB)と、(B)成分と(C)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数との合計数(NB+NC)の比が0.5≦[(NB)/(NB+NC)]≦0.9となる量、
(D)当該組成物の硬化を促進するヒドロシリル化触媒 触媒量、及び
(E)熱伝導性フィラー 20〜1000重量部
を含有するシリコーンゲル用組成物であって、上記組成物を硬化させることによる硬化物が、JIS K2220の試験方法にて測定される針入度(1/4コーン、1/10mm)として1〜100を示すことを特徴とする放熱性シリコーンゲル用組成物である。また、当該放熱性シリコーンゲル用組成物を硬化させてなる放熱性シリコーンシートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゲル用組成物を硬化して得られる放熱性シリコーン硬化物はゲル状であるために、電子部品などへの物理的なストレスを軽減することが可能であり、組成物の粘度が低いために作業性・生産性が高く、更にゲル硬化物からの液状シリコーンポリマーの滲み出しが少ないために電気・電子部品や回路基板の周辺を汚損することがなく、さらに各部品や基板の小さな凹凸のある面との密着性や粘着性に優れる。このため、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物を硬化させたゲル及びシリコーンシートは、熱が蓄積されやすい小型部品や発熱に伴う熱膨張・収縮によって基板にストレスの掛かりやすい大型部品に特に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、具体的に説明する。本発明の(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基が1分子中に平均約2個、好ましくは1.6個以上2.2個以下存在し、ケイ素原子に結合した他の有機基が脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10mPa・s以上30,000mPa・s以下のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンである。
【0009】
(A)成分のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基などの炭素原子数2〜8のアルケニル基を例示することができ、好ましくはビニル基、アリル基であり、特に好ましくはビニル基である。これらのアルケニル基は、後記(C)成分と反応して網目構造を形成し、分子中に平均約2個、好ましくは1.6個以上2.2個以下存在していることが必要である。かかるアルケニル基は、分子鎖の末端のケイ素原子に結合していてもよいし、分子鎖の途中のケイ素原子に結合していてもよい。硬化反応速度の面からは、アルケニル基が分子鎖末端のケイ素原子のみに結合したアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0010】
(A)成分のケイ素原子に結合した他の有機基は、好ましくは炭素数1〜12の脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基、β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基、β−シアノプロピル基などの置換炭化水素基などが挙げられる。特に好ましい有機基はメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0011】
(A)成分のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、直鎖状でも分岐状でもよく、また、これらの混合物であってもよい。このアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物をコーティング材料、ポッティング材料などに使用したり、シート材料に成形するためには、本組成物は適当な流動性を備えていることが必要であり、かつ硬化したシリコーンゲルにおいても適当な物理的特性を有していることが必要である。この様な見地から、(A)成分の粘度は、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10mPa・s以上30,000mPa・s以下の範囲にあることが望ましく、より好ましくは100mPa・s以上10,000mPa・s以下、特に好ましいのは200mPa・s以上5,000mPa・s以下の範囲である。
【0012】
さらに、本発明の解決すべき課題の1つである液状のシリコーンポリマーの滲み出しが少ないシリコーンゲルを得るためには、(A)成分の200℃で1時間加熱後の重量減少が0.2重量%以下であることがより好ましく、特に好ましい重量減少は0.1重量%以下である。200℃で1時間加熱後の重量減少を小さくする方法としては、特に限定されないが(A)成分を合成後に薄膜蒸留装置などを用い高真空下で加熱除去する方法を挙げることができる。
【0013】
この(A)成分のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造されるものであり、硫酸、塩酸、硝酸、活性白土、亜リン酸トリス(2−クロロエチル)などの酸触媒、または水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルホスホニウム、ナトリウムシラノレート、カリウムシラノレートなどの塩基触媒を用いた鎖状及び/または環状低分子量シロキサンの縮合および/または開環重合によって製造できる。また、(A)成分のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンが酸触媒によって製造された場合、熱伝導性フィラーの配合後に起こる増粘を抑制するためには、残留する触媒種を除去することが効果的であり、100〜200℃で0.1〜3時間程度の空気雰囲気下での加熱処理、または当該シロキサンの1〜10重量%の活性炭を用いた1〜24時間程度の室温での活性炭処理が特に効果的である。
【0014】
連鎖延長剤である本発明の(B)成分は、末端単位が式(1)、
【化5】

末端ではないポリオルガノシロキサン単位が式(2)
【化6】

であり(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基である)、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10mPa・s以上30,000mPa・s以下であるジオルガノ水素シロキシ末端ポリオルガノシロキサンである。
【0015】
(B)成分のRは、例えば、炭素数1〜12の脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基、β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基、β−シアノプロピル基などの置換炭化水素基などが挙げられる。好ましいRはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、特に好ましいRはメチル基である。
【0016】
本発明の特定の(B)成分が、連鎖延長剤として本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物中に存在することが本発明の課題を解決するために必須である。硬化中に(B)成分の分子鎖末端のケイ素に結合した水素原子と(A)成分のケイ素に結合したアルケニル基とが反応して、2以上の(A)成分と(B)成分とが結合することによって、成形作業時には適当な流動性を備えていていながら、硬化後には液状のシリコーンポリマーの滲み出しが少ないシリコーンゲルが得られる。これは、2以上の(A)成分と(B)成分とが連鎖した前記ポリオルガノシロキサンが架橋剤である(C)成分と反応していない状態であっても、分子鎖が十分に長くなっているために網目構造(固体状部分)と絡み合い、滲み出し難くなるからである。なお、滲み出し低減に関しては、高粘度のポリオルガノシロキサンを用いても同じ効果を得ることができるものの、高粘度のポリオルガノシロキサンを使用すると流動性が大幅に悪化して成形作業性が悪化するという欠点があり、実用的ではない。
【0017】
(B)成分の連鎖延長剤は、直鎖状でも分岐状でもよく、また、これらの混合物であってもよく、直鎖状がより好ましい。このジオルガノ水素シロキシ末端ポリオルガノシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。また、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物をコーティング材料、ポッティング材料などに使用する場合や、シート材料を成形するためには、本組成物は適当な流動性を備えていることが必要であり、かつ(A)成分との連鎖延長による効果を発揮するために適当な粘度が選択される。この様な見地から、(B)成分の粘度は、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10mPa・s以上30,000mPa・s以下の範囲にあることが望ましく、より好ましくは100mPa・s以上10,000mPa・s以下、特に好ましいのは200mPa・s以上5,000mPa・s以下の範囲である。
【0018】
また、本発明の解決すべき課題の1つである液状のシリコーンポリマーの滲み出しが少ないシリコーンゲルを得るためには、(B)成分の200℃で1時間加熱後の重量減少が0.2重量%以下であることがより好ましく、特に好ましい重量減少は0.15重量%以下である。200℃で1時間加熱後の重量減少を小さくする方法としては、特に限定されないが(B)成分を合成後に薄膜蒸留装置などを用い高真空下で加熱除去する方法を挙げることができる。
【0019】
本発明の(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数(NA)と(B)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NB)との比が0.1≦(NB/NA)≦0.8となる量である。NB/NAが0.1≦(NB/NA)≦0.8の範囲にあるのは、NB/NAが0.1未満では(B)成分の連鎖延長効果が十分ではなく、0.8を超えると適度で均一な架橋が得られないためである。NB/NAのより好ましい範囲は0.1≦(NB/NA)<0.3である。
【0020】
本発明の架橋剤である(C)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子が1分子中に平均で少なくとも3個以上存在し、ケイ素原子に結合した他の有機基が脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10mPa・s以上10,000mPa・s以下の範囲にあることが望ましく、より好ましくは50mPa・s以上2,000mPa・s以下、特に好ましいのは100mPa・s以上1,000mPa・s以下の範囲であるポリオルガノ水素シロキサンである。
【0021】
(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子は分子鎖の末端、分子鎖途中のいずれに位置するものであっても、また、両方に位置するものであってもよい。さらに、ポリオルガノ水素シロキサンの構造は線状、分岐状、環状または網状であってもよく、また、これらの混合物であってもよい。このポリオルガノ水素シロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。
【0022】
(C)成分のケイ素原子に結合した他の有機基は、好ましくは炭素数1〜12の脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基、β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基、β−シアノプロピル基などの置換炭化水素基などが挙げられる。特に好ましい有機基はメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0023】
本発明の(C)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数(NA)と(C)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NC)との比が0.08≦(NC/NA)≦0.3となる量であり、かつ(B)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NB)と、(B)成分と(C)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数との合計数(NB+NC)の比が0.5≦[(NB)/(NB+NC)]≦0.9となる量である。(NB)/(NB+NC)が0.5≦[(NB)/(NB+NC)]≦0.9の範囲にあるのは、(NB)/(NB+NC)が0.5未満では(A)成分と(B)成分による連鎖延長が十分でなく、基材との粘着性も低下し、(NB)/(NB+NC)が0.9を超えると十分に硬化できないためである
【0024】
本発明の(D)成分である本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物を硬化させるためのヒドロシリル化触媒は、通常使用されるものであり、金属及びその化合物としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、及びイリジウム、有利には白金を使用することができる。金属は場合により微粒子状の担体材料(例えば、活性炭、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)に固定する。ヒドロシリル化触媒としては、白金及び白金化合物を使用することが好ましい。白金化合物としては、白金ハロゲン化物(例えば、PtCl、HPtCl・6HO、NaPtCl・4HO、HPtCl・6HOとシクロヘキサンからなる反応生成物)、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ビス−(γ−ピコリン)−白金ジクロライド、トリメチレンジピリジン−白金ジクロライド、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライド)、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体、ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)白金錯体などが挙げられる。また、ヒドロシリル化触媒はマイクロカプセル化した形で使用することもできる。この場合触媒を含有し、かつポリオルガノシロキサン中に不溶の微粒子固体は、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂またはシリコーン樹脂)である。また、ヒドロシリル化触媒は包接化合物の形で、例えば、シクロデキストリン内で使用することも可能である。ヒドロシリル化触媒の添加量は触媒量であり、白金触媒を使用する場合、ポリオルガノシロキサン組成物中の白金金属として0.1〜500ppm、特に1〜200ppmの範囲が好ましい。
【0025】
本発明の(E)成分である熱伝導性フィラーとしては、アルミナ(Al)、酸化マグネシウム(MgO)等の金属酸化物、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)等の金属窒化物、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(SiN)等の金属炭化物、鉄、鉄合金、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属、カーボン、グラファイト等が用いられる。電気絶縁性が要求される場合には、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等を用いることが好ましい。熱伝導性フィラーの平均粒径は1〜50μmの範囲が好ましく、充填密度を高めて放熱成形品の放熱性能を向上させるために、複数の平均粒径を有する熱伝導性フィラーを組み合わせて使用することがより好ましい。また、本発明の(A)〜(C)成分と(E)成分の熱伝導性フィラーとの配合性を高めるために、熱伝導性フィラーの表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等で処理しても良い。この(E)成分の配合量は(A)成分のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、20〜1000重量部であり、20重量部未満では本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物の硬化物が十分な熱伝導性を示さず、一方、1000重量部を超えると流動性が低下し、作業性や生産性が悪化するので好ましくない。
【0026】
本発明では、これら(A)〜(E)の構成成分からなる組成物を硬化させた際、JISK2220で規定される針入度(1/4コーン、1/10mm)が、1〜100であることが必要とされる。これは、(C)成分のポリオルガノ水素シロキサンや(E)成分の熱伝導性フィラーの配合量を変化させることによって容易にコントロールできるが、これは組成物の硬化物が電気電子部品や回路基板の応力緩和や各部品や基板の小さな凹凸のある面との密着性や粘着性を発現するためにはゲル状であることが必要なためである。組成物の耐熱安定性及び硬化性を考えると、好ましくは、針入度は5〜50の範囲である。針入度(1/4コーン、1/10mm)が1未満の場合では硬く応力緩和に乏しく、一方、100を超える場合には耐熱安定性および内部硬化性が著しく低下し、硬化したシリコーンシートの表面のべたつき感も高くなり、放熱シートの使い勝手も悪くなるためである。
【0027】
本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物においては、上記の(A)〜(E)成分以外にも、それ自体公知の各種配合剤を添加することもできる。例えばヒュームドシリカ、シリカアエロジル、沈降性シリカ、粉砕シリカ、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、カーボンブラックなどの無機充填剤を添加して、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物から得られるゲル硬化物の硬さ、機械的強度などを調整できる。また、顔料、染料、難燃剤、耐熱向上剤、紫外線安定剤、中空無機質充填剤、中空有機質充填剤、シリコーン樹脂またゴム質の球状充填剤なども添加できる。さらに、ポリメチルビニルシロキサン環式化合物、アセチレン化合物、有機リン化合物などの反応制御剤を添加して硬化反応の制御を行うことも可能である。これらの配合剤の使用量は、得られるシリコーンゲルの特性を損なわない限りにおいて任意である。
【0028】
さらに、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物には、得られる硬化物の電気・電子部品およびこれらを搭載した回路基板に対する接着性を向上させるため、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルセルソルブオルソシリケート、一分子中にエポキシ基含有有機基とケイ素原子結合アルコキシ基を有するシロキサンオリゴマー、一分子中にエポキシ基含有有機基とケイ素原子結合アルコキシ基とアルケニル基を有するシロキサンオリゴマー、一分子中にエポキシ基含有有機基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合水素原子を有するシロキサンオリゴマー等の接着向上剤を配合することができ、また、上記シランカップリング剤の縮合反応を促進させる、つまり、基材への接着性を促進させるアルミニウムキレート化合物やチタン化合物を必要に応じて添加しても全く問題ない。
【0029】
本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物は、室温で全成分を混合することにより調製することができる。この目的のため、従来技術で開示の任意の混合技術と装置が使用可能である。使用する特定の装置は、成分と最終的な硬化性組成物の粘度によって決めることができる。適切なミキサーにはパドルミキサー、ニーダーミキサー、プラネタリーミキサーなどがある。成分を冷却しながら混合することが、組成物の早期の硬化を避けるために望ましいことがある。
【0030】
本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物は、ディスペンサー塗布、デップコーティング等により電気・電子部品およびこれらを搭載した回路基板上に塗布することができる。また、この組成物は、流動性に富むため、プレス成形にて容易に放熱シリコーンシートを成形することが可能である。本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物を加熱により硬化させる温度は、特に限定されず、通常60〜160℃の温度で、10〜180分間程度の加熱処理によって行なうことができる。
【0031】
以上説明したように、本発明の付加反応硬化型の放熱性シリコーンゲル用組成物は、硬化後に得られるシリコーンゲル硬化物からの液状のシリコーンポリマーの滲み出しが小さく、基材との密着性・粘着性、応力緩和特性および放熱特性に優れる。このため、電気・電子部品およびこれらを搭載した回路基板に対する放熱特性を有したシール材、ポッティング材、コーティング材、シート状材料などとして使用することが可能であり、例えば、電源用パワートランジスタやパワーモジュールの放熱材、CPUなどの半導体デバイスや電気部品の放熱材、温度ヒューズや温度感知部の放熱・熱伝導体、光ピックアップダイオードの放熱材、放熱用回路のシール材、各種熱交換器のシール材、各種接続部の放熱特性改善材などとして好適に使用できる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に
限定されるものではない。なお、実施例中の各評価項目は以下に基づいて測定した。
【0033】
硬化前の組成物
・粘度:レオメーター(HAKKE社製 レオストレスRS150、コーン&プレート:35mm/2°)を用いて、25℃下、せん断速度100s−1および0.5s−1の条件で測定した。
【0034】
組成物の硬化後
・針入度:JIS K2220に準じて、1/4インチミクロ稠度計を用いて、5秒後の針入度を測定した。
・ブリード量:ろ紙に円柱状のシリコーンゲル硬化物(直径が約40mm、厚さが約6mm)を載せて250gの荷重をかけ、荷重をかけたままの状態で110℃に加熱したオーブン内に放置した。500時間後、オーブンからシリコーンゲル硬化物を取り出して荷重を開放し、荷重によって変形したシリコーンゲルの直径d(mm)とろ紙に染み込んだ液状のシリコーンポリマーの直径d(mm)とをろ紙裏面方向から測定し、下記式に従ってブリード量(mm)を求めた。なお、ブリード量の測定は試験片の3箇所で行い、平均値を該試験片のブリード量とした。
ブリード量=d−d
・粘着性:表面が清浄な鉄球(直径12.5mm)をシリコーンゲル硬化物中へ深さ10mmまで沈めた後、約2m/分の速度で鉄球を上方に引き上げ、鉄球からシリコーンゲルが剥がれるまでの伸びを測定し粘着性とした。
・熱伝導率:プレス成形により成形した縦50mm×横100mm×厚さ20mmのシリコーンゲル硬化物のシートについて、迅速熱伝導率計(京都電子工業(株)製QTM−500)を用いて測定した。
【0035】
[調製例1]塩基触媒を用いたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A1)の調製
撹拌機、温度計およびジムロートコンデンサーを装着した5Lの四つ口フラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン3708g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン86.6gを入れ、窒素雰囲気下、90℃へ昇温しテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(有効成分27%)を添加し、90〜95℃で6時間、加熱撹拌を行なった。次いで、140〜150℃で2時間加熱撹拌を行なってテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの熱分解を行なった後、0.5mbarの減圧下、140から150℃で低留分のストリッピングを行い、両末端がそれぞれジメチルビニルシリル基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A1)3250gを得た。こうして得られた塩基触媒を用いたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A1)の粘度は200mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)であり、また、200℃で1時間加熱後の重量減少は0.06重量%であった。
【0036】
[調製例2]酸触媒を用いたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A2)の調製
撹拌機、温度計およびジムロートコンデンサーを装着した5Lの四つ口フラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン3708g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン86.6gを入れ、窒素雰囲気下、80℃へ昇温し活性白土(関東化学社製)37gを添加し、80〜85℃で6時間、加熱撹拌を行なった。次いで、冷却後、ろ過を行なって活性白土を除去したのち、0.5mbarの減圧下、140〜150℃で低留分のストリッピングを行い、両末端がそれぞれジメチルビニルシリル基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A2)3055gを得た。こうして得られた酸触媒を用いたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A2)の粘度は208mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)であり、また、200℃で1時間加熱後の重量減少は0.06重量%であった。
【0037】
[調製例3]熱処理した酸触媒ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A3)の調製
撹拌機、温度計、ガス注入管およびジムロートコンデンサーを装着した2Lの四つ口フラスコにビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A2)1000gを入れ、空気のバブリング下、200℃で1時間加熱撹拌を行なって、両末端がそれぞれジメチルビニルシリル基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A3)を調製した。こうして得られた熱処理した酸触媒ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A3)の粘度は210mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)であり、また、200℃で1時間加熱後の重量減少は0.04重量%であった。
【0038】
[調製例4]活性炭処理した酸触媒ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A4)調製
撹拌機および温度計を装着した2Lの四つ口フラスコにビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A2) 1000gと活性炭(関東化学社製)20gを入れ、室温で12時間撹拌を行ない、次いでろ過により活性炭を除去してビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A4)を調製した。こうして得られた活性炭処理した酸触媒ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A4)の粘度は208mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)であり、また、200℃で1時間加熱後の重量減少は0.06重量%であった。
【0039】
[実施例1]
調製例1の塩基触媒を用いて調製した両末端がそれぞれジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度200mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)、かつ200℃で1時間加熱後の重量減少が0.06重量%であるビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A1)((A)成分)100重量部、連鎖延長剤である分子鎖両末端がジメチル水素シロキシ基で封鎖された粘度1,000mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)、かつ200℃で1時間加熱後の重量減少が0.13重量%であるジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサン(B1)((B)成分)42.9重量部、架橋剤であるケイ素原子に結合した水素原子が0.18重量%存在する粘度200mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)のポリメチル水素シロキサン((C)成分)2.7重量部、白金原子含有量0.5wt%の白金−ビニルシロキサン錯体溶液((D)成分)1.0重量部、粉砕アルミナ((E)成分)、昭和電工社製、商品名「AL−43−KT」、平均粒径4.6μm、pH8.1)437部((A)、(B)、(C)成分の合計量の3倍量)、エチニルシクロヘキサノール0.035重量部をミキサーで混合し、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物を得た。なお、この組成物のNB/NAは0.19、NC/NAは0.18、また(NB)/(NB+NC)は0.52であった。そしてさらに、この組成物を150℃で60分加熱処理して硬化シリコーンゲルを得た。こうして得られた、硬化前および硬化後の放熱性シリコーンゲル用組成物の評価結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2〜4]
実施例1のビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A1)の代わりに、調製例2の酸触媒を用いたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A2)(実施例2)、調製例3の熱処理した酸触媒ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A3)(実施例3)または調製例4の活性炭処理した酸触媒ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A4)(実施例4)を用いた以外は実施例1と同様にして放熱性シリコーンゲル用組成物を調製し、硬化前および硬化後の評価を行なった。それらの結果を表1に合わせて示す。
【0041】
[実施例5〜7、比較例1〜3]
実施例1において、ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A1)の配合量以外を表2のとおり変更した以外は実施例1と同様にして放熱性シリコーンゲル用組成物を調製し、硬化前および硬化後の評価を行なった。それらの結果を表2に示す。
【0042】
[比較例4]
実施例1において、調製例1と同様にして、粘度200mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)であるが、200℃で1時間加熱後の重量減少は0.54重量%である、両末端がそれぞれジメチルビニルシリル基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン(A5)((A)成分)、および分子鎖両末端がジメチル水素シロキシ基で封鎖された粘度1,000mPa・s(25℃、せん断速度0.9s−1)、かつ200℃で1時間加熱後の重量減少が0.43重量%であるジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサン(B2)((B)成分)を使用した以外は実施例1と同様にして放熱性シリコーンゲル用組成物を調製し、硬化前および硬化後の評価を行なった。その結果を表2に合わせて示す。
【0043】
表1および表2から明らかなように、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物は比較例に対して粘度が低く、またそれらを硬化して得られる放熱性シリコーンゲル硬化物は比較例よりも液状シリコーンポリマーの滲み出しが小さく、かつ基材との粘着性が高いことが判明した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物を硬化して得られる放熱性シリコーン硬化物はゲル状であるために、電子部品などへの物理的なストレスを軽減することが可能であり、組成物の粘度が低いために作業性・生産性が高く、更にゲル状硬化物からの液状シリコーンポリマーの滲み出しが少ないために電気・電子部品や回路基板の周辺を汚損することがなく、さらに各部品や基板の小さな凹凸のある面との密着性や粘着性に優れる。このため、本発明の放熱性シリコーンゲル用組成物及びそれを硬化させてなる放熱性シリコーンシートは、熱が蓄積されやすい小型部品や発熱に伴う熱膨張・収縮によって基板にストレスの掛かりやすい大型部品に特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に平均約2個有し、ケイ素原子に結合した他の有機基が脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10〜30,000mPa・sであるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン 100重量部、
(B)末端単位が式(1)、
【化1】

末端ではないポリオルガノシロキサン単位が式(2)
【化2】

であり(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基である)、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10〜30,000mPa・sであるジオルガノ水素シロキシ末端ポリオルガノシロキサン、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数(NA)と(B)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NB)との比が0.1≦(NB/NA)≦0.8となる量、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均で少なくとも3個以上有し、ケイ素原子に結合した他の有機基が脂肪族不飽和結合を含まない置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であり、25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が10〜10,000mPa・s以下であるポリオルガノ水素シロキサン、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数(NA)と(C)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NC)との比が0.08≦(NC/NA)≦0.3となる量であり、かつ(B)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数(NB)と、(B)成分と(C)成分中に有するケイ素原子に結合した水素原子の数との合計数(NB+NC)の比が0.5≦[(NB)/(NB+NC)]≦0.9となる量、
(D)組成物の硬化を促進するヒドロシリル化触媒 触媒量、及び
(E)熱伝導性フィラー 20〜1000重量部
を含有するシリコーンゲル用組成物であって、上記組成物を硬化させることによる硬化物が、JIS K2220の試験方法にて測定される針入度(1/4コーン、1/10mm)として1〜100を示すことを特徴とする放熱性シリコーンゲル用組成物。
【請求項2】
(A)成分の25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が100mPa・s以上10,000mPa・s以下、かつ(B)成分の25℃、せん断速度0.9s−1における粘度が100mPa・s以上10,000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の放熱性シリコーンゲル用組成物。
【請求項3】
前記NB/NAが0.1≦(NB/NA)<0.3であることを特徴とする請求項1または2記載の放熱性シリコーンゲル用組成物。
【請求項4】
(A)成分が、分子鎖末端のケイ素原子のみにアルケニル基が結合したアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放熱性シリコーンゲル用組成物。
【請求項5】
(A)成分が、酸触媒を用いた鎖状および/または環状低分子量シロキサンの重合、次いで空気雰囲気下での熱処理および/または活性炭処理によって得られたアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放熱性シリコーンゲル用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の放熱性シリコーンゲル用組成物を硬化させてなる放熱性シリコーンシート。

【公開番号】特開2008−143980(P2008−143980A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330797(P2006−330797)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500004955)旭化成ワッカーシリコーン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】