説明

放熱構造

【課題】チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子の位置を変化させることを防止することのできる放熱構造を提供する。
【解決手段】撮影光学系(40)により形成される被写体像を取得する撮像素子11の撮像面11aを筐体(39)内で設定した撮影光学系に対する基準面Bpに一致させるべく、筐体に対する傾斜を変更可能にチルト調整機構50により保持される撮像素子11の放熱構造60である。熱伝導性を有する材料から為り、撮像素子11に固定される一端部62と、筐体に固定される他端部66と、長尺な板状を呈し他端部66と一端部62とを繋ぐ長尺板部64と、を有する熱伝導部材61を備え、熱伝導部材61では、一端部62と長尺板部64との境目を形成する第1境目部63と、他端部66と長尺板部64との境目を形成する第2境目部65と、が互いに直交する方向に沿って設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の熱を逃がすための放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の撮影装置では、撮影画像の高画質化が求められている。ここで、高画質化への要求を満たすためには、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の熱を効率良く逃がすことが望ましい。このため、撮像素子と筐体とを熱伝導部材で連結することが考えられている。
【0003】
また、高画質化への要求を満たすためには、撮影光学系により形成される被写体像を適切に取得可能な位置に撮像素子を設けることが望ましい。このため、撮影光学系に対する基準面を筐体内で設定し、当該基準面に撮像素子の撮像面を一致させるべく、撮影光学系の撮影光軸方向での撮像素子の位置を調整するとともにその撮影光軸方向に対する撮像素子の傾斜を調整するいわゆる撮像素子のチルト調整を高精度に行うことが考えられている。
【0004】
ここで、上述した熱伝導部材は、撮像素子と筐体とを連結するものであることから、上記したチルト調整が為されて筐体と撮像素子との相対的な位置関係が変化すると、撮像素子に力を加えてしまう虞がある。このため、撮像素子を冷却すべくそこに密着させる冷却素子の放熱面に熱伝導部材を密着させたのち、その熱伝導部材に柔軟性のある加工を施した放熱板を密着させ、その放熱板を撮像素子の固定金具または筐体に密着ネジ止めする構成とすることが考えられている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の構成では、撮像素子の固定金具または筐体に放熱板を密着ネジ止めして、その放熱板を熱伝導部材および冷却素子を介して撮像素子に押し当てることから、チルト調整が為されることにより筐体と撮像素子との相対的な位置関係が変化すると、熱伝導部材で撮像素子を押してしまう(熱伝導部材が撮像素子に力を加えてしまう)ので、撮像素子の位置が変化してしまう虞があり、撮影画像の高画質化の要求を満たす観点から改善する余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子の位置を変化させることを防止することのできる放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の放熱構造は、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を筐体内で設定した前記撮影光学系に対する基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能にチルト調整機構により保持される前記撮像素子の放熱構造であって、熱伝導性を有する材料から為り、前記撮像素子に固定される一端部と、前記筐体に固定される他端部と、長尺な板状を呈し該他端部と前記一端部とを繋ぐ長尺板部と、を有する熱伝導部材を備え、該熱伝導部材では、前記一端部と前記長尺板部との境目を形成する第1境目部と、前記他端部と前記長尺板部との境目を形成する第2境目部と、が互いに直交する方向に沿って設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る放熱構造では、チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子の位置を変化させることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る一例としてのチルト調整機構50を搭載するデジタルカメラ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】チルト調整機構50および放熱構造60の構成を説明するために、筐体部39Aを裏面側(撮像素子11の裏面11b側)から見た説明図である。
【図3】保持板51が撮像素子11および基板52を一体的に保持する様子を示す模式的な斜視図である。
【図4】保持板51が撮像素子11および基板52を一体的に保持する様子を示す撮像素子11側からの模式的な斜視図である。
【図5】放熱構造60の構成を説明するために、筐体部39Aを裏面側(撮像素子11の裏面11b側)から見た説明図である。
【図6】図3に示すI−I線に沿って得られた断面図である。
【図7】保持板51を示す模式的な斜視図である。
【図8】取付枠53を示す模式的な斜視図である。
【図9】第2被支持部51b2に対する支持構造を模式的に示す斜視図である。
【図10】支持部材54の構成を説明するための模式的な斜視図であり、(a)は任意の方向から見た様子を示し、(b)は(a)とは異なる方向から見た様子を示す。
【図11】図5のII−II線に沿って得られた断面を模式的に示す説明図である。
【図12】放熱構造60の熱伝導部材61を模式的な斜視図で示す説明図である。
【図13】放熱構造60の作用を説明するために放熱構造60を模式的に示す説明図であり、(a)は保持板51と取付枠53とが互いに平行とされて初期位置を示し、(b)は保持板51と取付枠53とが平行な状態を維持しつつ調整方向AD(撮影光軸OA方向)で相対的な位置が変化した様子を示し、(c)は保持板51と取付枠53とが相対的な傾斜が変化した様子を示す。
【図14】他の実施例の放熱構造70の構成を説明するために、筐体部39Aを裏面側(撮像素子11の裏面11b側)から見た図2と同様の説明図である。
【図15】放熱構造70において、熱伝導部材71の保持板51への取り付け状態を示す説明図である。
【図16】熱伝導部材71の保持板側取付部材72を模式的な斜視図で示す説明図である。
【図17】熱伝導部材71の筐体板側取付部材81を模式的な斜視図で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る撮像素子の放熱構造について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0011】
本発明に係る撮像素子の放熱構造の一実施例である放熱構造60の構成を、図1から図10を用いて説明する。なお、図5では、理解容易のために撮像素子11および基板52を省略して示している。
【0012】
先ず、放熱構造60を搭載するデジタルカメラ10について、図1を用いて説明する。図1は、デジタルカメラ10の概略構成を示す説明図である。このデジタルカメラ10は、図1に示すように、カメラボディ(本体部)39(後述する筐体部39A(図2等参照))に対し着脱可能とされた交換レンズ部40(撮像光学系)により形成される撮影対象となる物体すなわち被写体の像を、撮像素子11により読み取って適宜処理するように構成されている。デジタルカメラ10は、撮像素子11に加えて、CDS回路12、A/D変換部13、デジタル信号処理回路14、圧縮伸張回路15、DRAM16、メモリカード17、SG部18、CPU19、マイク20、アンプ・フィルタ部21、A/D変換部22、音声データ圧縮伸張回路23、D/A変換部24、アンプ・フィルタ部25、OSD26、RAM27、CPUバス28、DC/DCコンバータ29、電源30、フォーカルプレーンシャッタ31、を具備している。
【0013】
撮像素子11は、CCD(電荷結合素子)等を用いて構成されており、交換レンズ部40およびフォーカルプレーンシャッタ31を介して入力された被写体像を電気信号(アナログ画像データ)に変換して、CDS回路12へと出力する。そのCDS回路12は、相関二重サンプリング回路であり、入力された電気信号のノイズを低減させて、A/D変換部13へと出力する。そのA/D変換部13は、CDS回路12によって低ノイズ化された電気信号を最適なサンプリング周波数(例えば、NTSC(National Television System Committee)信号のサブキャリア周波数の整数倍)でデジタル信号(デジタル画像データ)に変換する。このA/D変換部13により変換されたデジタル画像データは、明確な図示は略すがデジタル信号処理回路14へと出力される。
【0014】
デジタル信号処理回路14は、A/D変換部13からのデジタル画像データを、輝度データと色差データとに分けて、γ(ガンマ)補正及び画像圧縮・伸張のためのデータ処理等を行う。このデータ処理されたデジタル画像データは、LCD(Liquid Crystal Display)32、およびEVF(Electronic View Finder)33に表示される。このLCD32およびEVF33では、OSD26で生成されたOSD表示画面(オンスクリーンディスプレイ)が適宜表示される。
【0015】
圧縮伸張回路15は、JPEG形式に準拠するものとされており、デジタル画像データを直交変換・ハフマン符号化して圧縮する、あるいはハフマン復号化・逆直交変換して伸張する。
【0016】
DRAM16は、圧縮処理されたデジタル画像データを一時的に格納する。また、このように圧縮処理されたデジタル画像データは、画像データファイルとして、カードスロット34に挿入されたメモリカード17に格納(記録)される。また、メモリカード17は、後述する圧縮処理されたデジタル音声データを音声データファイルとして格納(記録)する。
【0017】
SG部18は、制御信号生成部であり、CPU19と連携して、撮像素子11、CDS回路12およびA/D変換部13のそれぞれにタイミング信号を与え、これらを適正に同期させる。
【0018】
そのCPU19は、RAM27を有し、CPUバス28を介してデジタル信号処理回路14、DRAM16、メモリカード17等と接続されている。また、CPU19は、デジタルカメラ10に操作可能に設けられた操作部35、レリーズ釦36およびズーム釦37に為された操作による指示や、図示を略すリモコン等の外部からの動作指示に応じて、デジタルカメラ10の各部の動作の制御を、図示を略すROMに格納されたプログラムにより統括的に行う。この各部の動作の制御とは、例えば、メモリカード17へのデジタル画像データおよびデジタル音声データの記録動作の制御、メモリカード17に記録されているデジタル画像データおよびデジタル音声データの再生動作の制御、OSD26およびストロボ38の駆動制御等である。
【0019】
マイク20、アンプ・フィルタ部21、A/D変換部22、音声データ圧縮伸張回路23、D/A変換部24およびアンプ・フィルタ部25は、音声に関する信号処理部分を構成する。マイク20には、図示は略すが、音(音声)を電気信号に変換する変換素子が内蔵されている。このマイク20は、入力された音を電気信号(アナログ音声データ)に変換して、アンプ・フィルタ部21へと出力する。そのアンプ・フィルタ部21は、入力された電気信号を増幅して必要帯域にカットオフして、A/D変換部22へと出力する。そのA/D変換部22は、所定帯域の2倍以上のサンプリング周波数でデジタル音声データに変換し、音声データ圧縮伸張回路23へと出力する。その音声データ圧縮伸張回路23は、圧縮・符号化処理を行い、適宜メモリカード17等に記録(格納)する。また、メモリカード17等に記録(格納)されたデジタル音声データは、D/A変換部24により電気信号(アナログ音声データ)に変換され、アンプ・フィルタ部25で増幅されて、図示を略す音声出力部(スピーカ)を通じて音(音声)として出力される。
【0020】
これらデジタルカメラ10の各部には、DC/DCコンバータ29を介して、電源30から適宜電力が供給される。そのDC/DCコンバータ29は、電源30からの入力電圧を変圧する。
【0021】
その撮像素子11(その撮像面11a)上に被写体像を形成する撮像光学系は、上述したように、デジタルカメラ10のカメラボディ39の一部を構成する筐体部39A(図2等参照)に対して着脱可能とされた交換レンズ部40として構成されている。その交換レンズ部40は、複数の光学素子から為る光学素子群41がレンズ群保持構造体42に収容されて構成されている。その光学素子群41は、本実施例では、最も被写体(物体)側に位置する対物レンズから、撮影光軸OAに沿って複数の光学素子(レンズや絞り等)で形成されている。この明細書では、撮像光学系における光学的な軸線、すなわち光学素子群41(レンズ群保持構造体42)の中心軸位置となる各光学素子の回転対称軸を、撮像光学系すなわちデジタルカメラ10の撮影光軸OAとする。
【0022】
レンズ群保持構造体42は、光学素子群41を撮影光軸OAに沿って移動可能に保持している。そのレンズ群保持構造体42には、フォーカスリング43と絞りリング44とが設けられている。フォーカスリング43は、ピント合わせ(合焦)のための回転操作が可能とされており、回転姿勢の変化に伴って光学素子群41における各光学素子の撮影光軸OA上での位置を適宜変化させる構成とされている。絞りリング44は、光量の調整のための回転操作が可能とされており、回転姿勢の変化に伴って光学素子群41の絞り(図示せず)を適宜変化させる構成とされている。
【0023】
次に、デジタルカメラ10におけるチルト調整機構50の構成について、図2から図11を用いて詳細に説明する。このチルト調整機構50は、撮像素子11のチルト調整、すなわち設定された基準面(基準位置)Bp(図1参照)に撮像素子11の撮像面11a(図6参照)を一致させるべく、その基準面Bpに直交する方向での撮像素子11の位置および当該方向に対する撮像素子11の傾斜を調整することが可能とされている。このため、基準面Bpに直交する方向が調整方向(図3等の符号AD参照)となる。その基準面Bp(図1参照)とは、デジタルカメラ10のカメラボディ39(図1参照)において、撮影光学系(交換レンズ部40)の光学特性に応じて設定されるものであり、その撮影光軸OA方向に直交している。このため、調整方向は、撮影光軸OA方向に平行である。その調整方向は、以下では、撮影光軸OAと同様に被写体側へ向けた矢印に符号ADを付して示す。本実施例では、デジタルカメラ10が、上述したように、カメラボディ39に対して着脱可能な交換レンズ部40により撮影光学系が構成されていることから、基準面Bpは、そのカメラボディ39のうち交換レンズ部40を取り付ける面(マウント面(図示せず))を構成する筐体部39Aにおいて、そのマウント面に対して所定の間隔を置くように当該マウント面と平行とされて設定されている。このため、撮像素子11のチルト調整は、フランジバック調整ともいう。この筐体部39Aは、図11に示すように、筐体部39Bと協働してカメラボディ39を形成することが可能とされている。
【0024】
このチルト調整機構50では、図2から図6に示すように、撮像素子11を撮像素子保持板としての保持板51で保持しており、その保持板51を筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能な3つの支持点(後述する調整カム面54e(図9等参照)における被支持箇所51hが接する箇所)を介して支持している。その撮像素子11は、図3および図6に示すように、撮像面11a側に光学フィルタ11c(図4参照)が設けられて、基板52に電気的に接続(実装)されている。その基板52は、コンデンサや抵抗等の複数の電子部品が実装されており、コネクタ部52aを介して電気的に接続されるメイン基板(図示せず)とともに上述した各構成(電子回路(図1参照))を構成する。基板52には、実装された撮像素子11の裏面11b(撮像面11aとは反対側の面(撮像素子11を構成するパッケージ部の裏面))と対向する位置に、3つの取付開口52bが設けられている。その各取付開口52bは、基板52の裏面側(撮像素子11が実装される面とは反対側)から、保持板51の後述する各接着部51aを撮像素子11の裏面11bに宛がうことを可能としている。
【0025】
保持板51は、図7に示すように、熱伝導性を有する材料から形成されて全体に平坦な板状を呈し、本実施例では少なくとも基板52よりも高い強度を有するものとされている。この保持板51は、3つの接着部51aと、3つの被支持部51bと、2つの基準穴51cと、2つの位置決めボス部51dと、3つのネジ通穴51eと、1つのネジ留穴51fと、を有する。
【0026】
3つの接着部51aは、保持板51における中央部分が前方側(図7を正面視して奥側)へとずらすように屈曲変形されて形成されており、保持板51が基板52の裏面側に配置された状態において、対応する取付開口52bから撮像素子11の裏面11bに宛がうことが可能とされている(図2、図3および図6参照)。この各接着部51aには、裏面11bに宛がわれる箇所となる接着凸部分51gが形成されている。接着凸部分51gは、接着部51aが部分的に前方側へとずらすように屈曲変形されて形成されている。各接着部51aは、各取付開口52bを通じて撮像素子11の裏面11bに宛がわれ、その各接着凸部分51gが当該裏面11bに接着されることにより、撮像素子11に取り付けられる。これにより、保持板51は、撮像素子11が実装された基板52と一体的に、撮像素子11を保持することができる。
【0027】
その保持板51の3つの被支持部51bは、筐体部39A(後述する取付枠53)により支持される箇所である。この各被支持部51bは、本実施例では、調整方向ADに直交する方向(基準面Bpに沿う方向(基準面Bpと平行な面))で見て、保持板51が保持する撮像素子11を取り囲むように3箇所に設けられており、縁部で後述する調整カム面54eに接する被支持箇所51hを形成する。そのうちの1つの被支持部51b(以下では、個別に述べるときには第1被支持部51b1ともいう)は、保持板51における中央部分から平坦な状態を維持しつつ一方向に伸びて形成されている。残りの2つの被支持部51b(以下では、個別に述べるときには一方を第2被支持部51b2ともいい、他方を第3被支持部51b3ともいう)は、保持板51における中央部分から、平坦な状態を維持しつつ第1被支持部51b1とは反対側となる他方向へと伸ばされた箇所から、平坦な状態を維持しつつその伸ばされた方向と直交する方向の両側へ伸びて形成されている。このため、本実施例では、3つの被支持部51bは、同一面上に存在している。
【0028】
その保持板51の2つの基準穴51cは、筐体部39A(取付枠53)に対する保持板51の位置決めのために、保持板51を貫通して設けられている。本実施例では、一方の基準穴51cが第1被支持部51b1に設けられており、他方の基準穴51cが第3被支持部51b3に設けられている。2つの基準穴51cは、後述するように筐体部39Aに固定される取付枠53の位置決め突起53c(図8参照)を通すことが可能とされている。この2つの基準穴51cは、それぞれが対応する位置決め突起53cが通されることにより、取付枠53(筐体部39A)に対する調整方向ADに直交する方向(基準面Bpに沿う方向)で見た保持板51の位置を規定する(図2および図5等参照)。なお、本実施例では、第3被支持部51b3の近傍に位置する基準穴51cが、長穴すなわち位置決め突起53cの外径寸法よりも一方向のみが大きくされた内径寸法とされており、位置決め突起53cが通される位置の自由度、すなわち保持板51の調整代が確保されている。
【0029】
その保持板51の2つの位置決めボス部51dは、保持板51と後述する熱伝導部材61(その一端部62)との相対的な位置ずれを防止するものである。この2つの位置決めボス部51dは、本実施例では、保持板51の中央部分においてネジ留穴51fを挟むように並んで設けられており、その中央部分から後側(基板52が設けられる側とは逆側)に突出された柱状を呈する。
【0030】
その保持板51の3つのネジ通穴51eは、各被支持部51bの近傍位置において保持板51を貫通して設けられている。この各ネジ通穴51eは、後述するように取付枠53に設けられる段付ネジ56の基端円柱部56bを通すことが可能であるとともに、そこに設けられるコイルバネ55を通すことを防止する内径寸法とされている(図11等参照)。
【0031】
その保持板51の1つのネジ留穴51fは、上述したように2つの位置決めボス部51dに挟まれる位置で、保持板51を貫通して設けられている。このネジ留穴51fでは、内周面にネジ溝が設けられており、後述する熱伝導用固定ネジ59との噛み合いが可能とされている(図11参照)。この保持板51を、調整方向ADに対する傾斜を調整可能にカメラボディ39(筐体部39A)に設けるために、取付枠53が設けられている。
【0032】
この取付枠53は、図8に示すように、全体に平坦な板状の部材の中央が矩形状に貫通されて形成された枠状を呈する。取付枠53は、3つの支持用穴53aと、4つの保持板取付穴53bと、2つの位置決め突起53cと、3つのネジ穴53dと、2つの保持板位置決め穴53eと、を有する。
【0033】
その3つの支持用穴53aは、後述する支持部材54(図10参照)を回転可能に支持するものであり、取付枠53を調整方向AD方向に貫通して設けられている。各支持用穴53aは、取付枠53に沿って保持板51が設けられた状態において、その保持板51の3つの被支持部51bの近傍に存在すべく位置が設定されている(図2および図5参照)。
【0034】
その取付枠53の4つの保持板取付穴53bは、取付枠53を筐体部39Aに固定するための取付枠固定ネジ57(その軸部)を通すことを可能とするものであり、取付枠53を調整方向AD方向に貫通して設けられている。
【0035】
その取付枠53の2つの位置決め突起53cは、取付枠53が筐体部39Aに固定された状態において、取付枠53から後側(交換レンズ部40が取り付けられる側とは逆側)へ向けて調整方向ADに伸長された棒状を呈する。各位置決め突起53cは、本実施例では、金属製の棒状部材から為り、取付枠53に設けられた穴(図示せず)に通された後にかしめられて当該取付枠53に設けられている。
【0036】
その取付枠53の3つのネジ穴53dは、後述する段付ネジ56(図11等参照)を固定するために設けられている。各ネジ穴53dは、取付枠53を調整方向AD方向に貫通し、その内周面にネジ溝が設けられて形成されている。この各ネジ穴53d(そのネジ溝)は、後述する段付ネジ56の先端ネジ部56aとの噛み合いが可能とされている(図11参照)。
【0037】
その取付枠53の2つの保持板位置決め穴53eは、取付枠53と筐体部39Aとの相対的な位置ずれを防止するものである。この2つの保持板位置決め穴53eは、筐体部39Aの位置決め突起39Aa(図5参照)を通すことが可能とされている。この各位置決め突起39Aaは、筐体部39Aから後側(交換レンズ部40が取り付けられる側とは逆側)へ向けて調整方向ADに伸長された棒状を呈する。なお、本実施例では、一方の保持板位置決め穴53e(図8を正面視して左側)が、長穴すなわち位置決め突起39Aaの外径寸法よりも一方向のみが大きくされた内径寸法とされており、位置決め突起39Aaが通される位置の自由度、すなわち取付枠53の調整代が確保されている。
【0038】
この取付枠53は、図2および図5に示すように、2つの保持板位置決め穴53eに筐体部39Aの位置決め突起39Aaが通され、4つの保持板取付穴53bに取付枠固定ネジ57が通され、その取付枠固定ネジ57が筐体部39Aのボス部39Abのネジ穴39Ac(図11参照)に噛み合わされることにより、調整方向ADに直交する方向で見て所定の位置関係とされて、筐体部39Aに固定される。このとき、取付枠53は、調整方向ADに直交する面に沿うものとなるように設定されている。
【0039】
このチルト調整機構50では、保持板51の3つの被支持部51b(その被支持箇所51h)を、調整方向ADに各々変位可能に取付枠53(筐体部39A)に支持させることにより、保持板51に保持された撮像素子11のチルト調整を可能とする。その変位可能な支持のための構造は、3つの被支持部51b(その被支持箇所51h)に対して基本的に同様な構成とされていることから、以下では、第2被支持部51b2における支持構造について図9、図10および図11を用いて説明し、他の支持構造については省略する。図9は、第2被支持部51b2に対する支持構造を模式的に示す斜視図であり、図10は、支持部材54の構成を説明するための模式的な斜視図であり、(a)は任意の方向から見た様子を示し、(b)は(a)とは異なる方向から見た様子を示す。図11は、図5のII−II線に沿って得られた断面を模式的に示す説明図である。
【0040】
チルト調整機構50における第2被支持部51b2での支持構造は、図9および図11に示すように、筐体部39A(カメラボディ39)に固定された取付枠53に、支持部材54、コイルバネ55および段付ネジ56が設けられて構成されている。
【0041】
上述したように筐体部39Aに固定された取付枠53は、調整方向ADに直交する面に沿って設けられているとともに、全体に平坦な板状を呈していることから、各支持用穴53aの周辺には調整方向ADに直交する平坦な面が存在しており、そこを設置面53fとする。取付枠53では、支持用穴53a(その周辺の設置面53f)に支持部材54が設置される。
【0042】
その支持部材54は、図10に示すように、全体に円柱形状を呈するとともに、その軸線に等しい軸線(以下では、中心軸線MAとする)を有する六角孔54aと、中心軸線MAを取り囲むフランジ部54bと、が設けられて構成されている。この六角孔54aは、図示を略す冶具としての六角レンチの嵌め合わせが可能とされている。フランジ部54bは、支持部材54において中心軸線MAを取り囲む外周面における下部から、支持部材54の径方向(中心軸線MAを基準として当該中心軸線MAに直交する方向)に全周に渡って突出されて設けられている。このフランジ部54bでは、外周面が中心軸線MA方向に沿う複数の溝により複数の歯が形成されて凹凸面54cが構成されている。
【0043】
また、支持部材54では、下面が中心軸線MAに直交する平面である設置平坦面54d(図11等参照)とされており、上面が調整カム面54eとされている。その調整カム面54eは、中心軸線MAを中心とする回転方向で見て、中心軸線MA方向で見た高さ寸法、すなわち設置平坦面54dを基準とする中心軸線MA方向で見た支持部材54の厚さ寸法を連続的に変化させるように、螺旋状とされた平面により規定されている。換言すると、調整カム面54eは、中心軸線MA方向に対して傾斜する単一の平面であり、中心軸線MAに直交する平面である設置平坦面54dとの間隔、すなわち中心軸線MA方向で見た位置を漸次的に変化させる。このため、調整カム面54eにおける中心軸線MA方向で見たて最も大きな高さ寸法となる一端と最も小さな高さ寸法となる他端との間には、中心軸線MAに沿う縦壁面が形成されている。加えて、本実施例では、上面には、調整カム面54eに加えて、調整カム面54eにおける中心軸線MA方向で見て最も大きな高さ寸法となる一端に停止壁部54fが設けられている。この停止壁部54fは、後述するように調整カム面54eに支持される保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)が、中心軸線MA方向で見て最も大きな高さ寸法となる一端から最も小さな高さ寸法となる他端へと、調整カム面54eの傾斜を経ることなく移動(落下)することを防止する。
【0044】
さらに、支持部材54では、設置平坦面54dの中央部に円筒軸部54g(図11参照)が設けられている。円筒軸部54gは、中心軸線MAを中心とし、支持部材54(そのフランジ部54b)よりも小さな外径寸法の円筒形状を呈し、設置平坦面54dから中心軸線MAに沿って突出して設けられている。この円筒軸部54gは、取付枠53の支持用穴53aに挿入することができるとともに、その挿入した状態において回転自在とすることができる。このため、支持部材54は、円筒軸部54gを支持用穴53aに挿入することにより、取付枠53の設置面53f上に回転自在に設けることができる。
【0045】
この支持部材54の調整カム面54eに保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)を押し当てるとともに、その支持部材54を取付枠53の設置面53fへと押し当てるために、図9および図11に示すように、コイルバネ55と段付ネジ56とが設けられている。そのコイルバネ55は、保持板51のネジ通穴51eに通すことのできない外径寸法に設定されている。また、コイルバネ55は、段付ネジ56の後述する基端円柱部56bを取り巻くことが可能であって、同じく後述する頭部56cを通すことのできない内径寸法に設定されている。このコイルバネ55は、後述するように、六角孔54aに嵌め合わせられた治具(六角レンチ(図示せず))により支持部材54が回転操作された際、取付枠53の設置面53f上において支持部材54を安定して回転させるべく、保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)を介して支持部材54を設置面53fに押し当てることが可能な長さ寸法およびバネ力に設定されている。ここで、安定した回転とは、設置面53fと設置平坦面54dとが面で接した状態を維持しつつ支持部材54が回転することをいう。このコイルバネ55は、段付ネジ56により保持板51および取付枠53に対して固定される。
【0046】
その段付ネジ56は、図11に示すように、先端ネジ部56aと基端円柱部56bと頭部56cとを有する。先端ネジ部56aは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、取付枠53のネジ穴53dとの噛み合わせが可能とされている。基端円柱部56bは、先端ネジ部56aよりも大きな外径寸法の円柱状を呈し、コイルバネ55の内方に通すことができかつ保持板51のネジ通穴51eに通すことができるとともに、取付枠53のネジ穴53dに通すことのできない外径寸法とされている。頭部56cは、基端円柱部56bよりも大きな外径寸法の円板状を呈し、コイルバネ55の内方へと通すことのできない外径寸法とされている。
【0047】
このチルト調整機構50では、取付枠53の支持用穴53aに支持部材54の円筒軸部54gが挿入されて、取付枠53の設置面53f上に支持部材54が回転自在に設けられる。このとき、支持部材54において設置平坦面54dが中心軸線MAに対して直交する平面とされているとともに、取付枠53の設置面53fが調整方向ADに対して直交する面に沿うものとされていることから、中心軸線MAが調整方向ADに沿うものとされる。その支持部材54の調整カム面54eに保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)を当てつつ取付枠53の各ネジ穴53dを保持板51の対応するネジ通穴51eに対向させて、取付枠53上に保持板51が配置されている。その保持板51の上側(撮像素子11が設けられる側とは反対側)から、基端円柱部56b周りにコイルバネ55を配置させた段付ネジ56が、基端円柱部56bを保持板51のネジ通穴51eに通され、かつ先端ネジ部56aを取付枠53のネジ穴53dに噛み合わせられて設けられている。
【0048】
これにより、段付ネジ56は、取付枠53におけるネジ穴53dの周辺に突き当てられて当該取付枠53に固定される。また、コイルバネ55は、保持板51におけるネジ通穴51eの周辺に突き当てられ、基端円柱部56bを取り巻きつつ当該取付枠53と段付ネジ56の頭部56cとの間で中心軸線MAに沿って適宜圧縮される。このため、コイルバネ55は、中心軸線MAに沿う方向で取付枠53へ向けて保持板51を押すこととなり、その第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)を支持部材54の調整カム面54eに押し当てる状態を維持する。また、コイルバネ55は、保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)を介して、支持部材54を取付枠53の設置面53fに押し付けている。
【0049】
このため、支持部材54は、コイルバネ55により設置平坦面54dが取付枠53の設置面53fに押し当てられているとともに、取付枠53の支持用穴53aに挿入された円筒軸部54gの干渉により調整方向AD(中心軸線MA)に直交する方向への移動が防止されている。この支持部材54は、取付枠53の設置面53f上において、中心軸線MAを回転中心としつつ安定して回転することが可能であり、その調整カム面54eが基準面Bp(図1参照)に対して直交される調整方向ADで保持板51(第2被支持部51b2)を支持している。
【0050】
この保持板51は、上述したように、その2つの基準穴51cに、取付枠53の各位置決め突起53cが通されることにより、取付枠53(筐体部39A)に対する調整方向ADに直交する方向で見た保持板51の位置が規定されている(図2および図5参照)。このため、取付枠53(筐体部39A)では、調整方向ADに直交する方向で見ると、支持部材54に対する第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)の位置関係が変化することはない。これに対し、支持部材54は、上述したように、取付枠53の設置面53f上で中心軸線MAを回転中心として安定して回転することが可能とされていることから、六角孔54aに嵌め合わせられた六角レンチ(治具(図示せず))等を介して回転操作されることにより、保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)に対する調整カム面54eにおける接触位置を漸次的に変化させることができる。この調整カム面54eは、中心軸線MA方向で見た支持部材54の厚さ寸法を変化させる螺旋状の傾斜面とされているとともに、その中心軸線MAが調整方向ADに平行とされていることから、支持部材54を回転操作することにより、保持板51の第2被支持部51b2(その被支持箇所51h)に対する調整方向ADでの支持点を、調整カム面54e(その傾斜)に応じて調整方向ADに漸次的に変化させることができる。
【0051】
ここで、チルト調整機構50では、上述したように、保持板51が、第2被支持部51b2に加えて、第1被支持部51b1および第3被支持部51b3の3点で支持されており、それぞれが支持部材54(その調整カム面54e)により、取付枠53(筐体部39A)における調整方向ADでの支持位置が調整カム面54eに応じて漸次的に変化可能とされている。このため、チルト調整機構50では、カメラボディ39内において、保持板51の調整方向ADに対する傾斜および調整方向ADでの位置を微小にかつ連続的に調整することができるので、その保持板51に一体的に保持された撮像素子11の基準面Bp(図1参照)に対する傾斜の調整および光軸方向位置の調整、すなわちチルト調整を高精度に行うことができる。このチルト調整機構50では、撮像素子11のチルト調整が完了すると、それぞれの支持部材54のフランジ部54b(その凹凸面54c)と取付枠53(その設置面53f)との間に接着材を塗布して接着塊58を形成する(図9参照)。これにより、チルト調整機構50では、各支持部材54の回転姿勢を維持されて、撮像素子11におけるチルト調整された状態を維持することができる。このとき、接着塊58は、フランジ部54bの凹凸面54cの凹所に入り込んで硬化されることから、より強固に各支持部材54が回転することを防止することができる(図9参照)。また、チルト調整機構50では、螺旋状の調整カム面54eを有する支持部材54を用いていることから、より小さく簡易な構成としつつより高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。加えて、チルト調整機構50では、コイルバネ55により、保持板51の各被支持部51b(その被支持箇所51h)が、支持部材54の調整カム面54eに押し当てられていることから、保持板51に対する調整方向ADでの各支持点の位置をより適切に調整することができ、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0052】
このチルト調整機構50には、撮像素子11から発生した熱をデジタルカメラ10の筐体としてのカメラボディ39に逃がす放熱構造60が設けられている。この放熱構造60は、熱伝導部材61を有する。その熱伝導部材61は、熱伝導性を有する材料から形成された板状を呈し、適宜折り曲げ加工が施されて構成されている(図12参照)。熱伝導部材61は、図12に示すように、一端部62と第1境目部63と長尺板部64と第2境目部65と他端部66とを有する。
【0053】
その一端部62は、保持板51への取り付け箇所として設けられており(図2等参照)、平板状を呈する。一端部62は、保持板51における中央部分であって、保持した撮像素子11の裏側に相当する箇所(3つの接着部51aに取り囲まれた箇所(以下では、固定箇所ともいう))と面で接することが可能とされている。一端部62には、2つの一端部位置決め穴62aと、1つの一端部取付穴62bとが設けられている。
【0054】
その両一端部位置決め穴62aは、保持板51と一端部62との相対的な位置ずれを防止するものである。この2つの一端部位置決め穴62aは、保持板51の2つの位置決めボス部51d(図7等参照)に対応して設けられており、それぞれが対応する位置決めボス部51dを通すことが可能とされている(図2等参照)。なお、本実施例では、一方の一端部位置決め穴62a(図12を正面視して左側)が、一端部62における周縁部を開放する長穴すなわち位置決めボス部51dの外径寸法よりも一方向のみが大きくされた内径寸法とされており、位置決めボス部51dが通される位置の自由度が確保されている。一端部取付穴62bは、2つの一端部位置決め穴62aの間において、一端部62を厚さ方向に貫通して設けられている。この一端部取付穴62bは、保持板51のネジ留穴51f(図7等参照)に対応して設けられており、後述する熱伝導用固定ネジ59(図2等参照)を通すことが可能とされている。
【0055】
この一端部62は、第1境目部63により長尺板部64と繋がれている。その第1境目部63は、後述するように互いに平行とされる一端部62と長尺板部64との境目を、それらに平行な単一の直線方向(以下では第1方向ともいう)に沿って形成する。第1境目部63は、本実施例では、一端部62および長尺板部64が形成する面に直交する方向(以下では直交方向ともいう)で見た位置を互いに異ならせて、一端部62と長尺板部64とを繋ぐものとされている。すなわち、第1境目部63は、一端部62と長尺板部64と間で、上記した第1方向および直交方向を含む面に沿って設けられており、保持板51に取り付けられる一端部62に対して、保持板51が取り付けられる側とは反対側へと長尺板部64を変位させている。
【0056】
その長尺板部64は、長尺な平板状を呈し、一端部62と平行とされている。長尺板部64は、本実施例では、第1方向および直交方向に直交する方向へ向けて長尺な板状とされている。ここで長尺とは、長尺方向に直交する方向(幅方向(第1方向))での長さ寸法に対する、長尺方向での長さ寸法が、少なくとも2倍程度とされていることを言う。この長尺板部64は、撮像素子11の裏側に存在される一端部62と、後述するように筐体部39A(カメラボディ39)に押し当てられる他端部66(後述する接触片部分66b)とを繋ぐべく長尺方向に伸びるものであることから、長尺方向での長さ寸法が、チルト調整機構50における調整量すなわち各支持部材54における調整カム面54eによる高さ寸法の差異に比較して、十分に大きなものとされている。
【0057】
長尺板部64は、長尺方向で見た一端部62とは反対側の端部において、第2境目部65により他端部66と繋がれている。その第2境目部65は、後述するように互いに平行とされる長尺板部64と他端部66との境目を、それらに平行でかつ第1方向に対して直交する単一の直線方向(以下では第2方向ともいう)に沿って構成するものである。第2境目部65は、本実施例では、上述した直交方向で見た位置を第1境目部63よりも大きく互いに異ならせて、長尺板部64と他端部66とを繋ぐものとされている。すなわち、第2境目部65は、長尺板部64と他端部66と間で、上記した第2方向および直交方向を含む面に沿って設けられており、第1境目部63が存在する面に対して直交するものとされている。
【0058】
その他端部66は、取付枠53への取り付け箇所であるとともに、筐体部39Aへの接触箇所として設けられている(図2等参照)。他端部66は、平板状を呈する取付板部分66aと、そこから弾性変形可能に突出される接触片部分66bと、を有する。その取付板部分66aは、取付枠53が筐体部39Aに取り付けられた状態において、その取付枠53における筐体部39Aに近接される箇所と面で接することが可能とされている。この取付枠53における取付箇所は、本実施例では、図8を正面視して左端上側の保持板取付穴53bの周辺箇所とされている。この取付板部分66aには、1つの他端部取付穴66cが設けられている。他端部取付穴66cは、取付板部分66aを厚さ方向に貫通して設けられている。この他端部取付穴66cは、取付枠53の保持板取付穴53b(図8等参照)に対応して設けられており、上述した取付枠固定ネジ57(図11等参照)を通すことが可能とされている。
【0059】
接触片部分66bは、第2境目部65と直に接触することなく取付板部分66aから直交方向へと立ち上げられて設けられている。この接触片部分66bは、本実施例では、取付板部分66aにおいて、第2境目部65が設けられた縁部から離間されかつ第1方向に沿う縁部から直交方向に向けて伸びて設けられている。また、接触片部分66bでは、その伸びた先端箇所が外方(取付板部分66aが存在する側とは反対側)へと湾曲されて接触箇所66dが形成されている。
【0060】
放熱構造60では、このように構成された熱伝導部材61が、図2、図3、図5および図11等に示すように、一端部62の2つの一端部位置決め穴62aにそれぞれが対応する保持板51の位置決めボス部51dを通しつつ当該一端部62を保持板51における固定箇所(中央部分)に面で接触させて、その一端部62の一端部取付穴62bに通した熱伝導用固定ネジ59を保持板51のネジ留穴51fに噛み合わせることにより、一端部62が保持板51に取り付けられる。このため、一端部62は、熱源となる撮像素子11側に取り付けられる箇所となる。この一端部62は、本実施例では、図示は略すが熱伝導性を有する接着材により保持板51に取り付けられており、熱の伝導をさらに効率のよいものとしている。
【0061】
また、放熱構造60では、他端部66の取付板部分66aを取付枠53における取付箇所に面で接触させて、その取付板部分66aの他端部取付穴66cに通した取付枠固定ネジ57を、取付枠53の保持板取付穴53bに通して筐体部39Aのボス部39Abのネジ穴39Ac(図11参照)に噛み合わせることにより、他端部66が取付枠53すなわちそれが固定された筐体部39A(カメラボディ39)に取り付けられる。このため、他端部66は、放熱箇所となる筐体(カメラボディ39)側に取り付けられる箇所となる。このことから、本実施例では、取付枠53における取付箇所が、筐体(カメラボディ39)において撮像素子保持板(保持板51)に沿って設けられ、他端部66の取付板部分66aが面を宛がわせて取り付けられる筐体取付面として機能する。ここで、チルト調整機構50による撮像素子11(保持板51)の調整が為されていない場合、保持板51および取付枠53が調整方向ADに直交する面に沿って設けられていることから、一端部62および他端部66が調整方向ADに直交する面に沿って設けられ、それらを繋ぐ長尺板部64も調整方向ADに直交する面に沿って設けられている(図11および図13(a)参照)。このとき、他端部66では、図11に示すように、筐体部39Aに筐体部39Bが取り付けられてカメラボディ39が構成されると、取付板部分66aと接触片部分66bとの間での弾性変形により、その接触片部分66bの接触箇所66dが筐体部39B(カメラボディ39)に押し当てられる。このため、本実施例では、筐体部39Bにおいて接触箇所66dが接触される箇所が、取付板部分66aを規準とする弾性変形により、筐体(カメラボディ39)における筐体接触面として機能する。これにより、放熱構造60では、保持板51を介して、そこに保持された撮像素子11とカメラボディ39とを熱伝導部材61で熱伝達可能に接続することができ、当該撮像素子11から発生した熱を逃がすことができる。
【0062】
この放熱構造60では、撮像素子11とカメラボディ39とを熱伝導部材61で熱伝達可能に接続した状態を維持しつつ、チルト調整機構50によるカメラボディ39内での保持板51の調整方向ADに対する傾斜の変化および調整方向ADでの位置の変化に起因して、熱伝導部材61が保持板51を押す力が増大することを防止することができる。これについて、図13を用いて以下で説明する。なお、図13では、理解容易のために、カメラボディ39内において、保持板51の調整方向ADでの位置が変化した様子(図13(b)参照)と、保持板51の調整方向ADに対する傾斜が変化した様子(図13(c)参照)と、を強調して示しているが、実際の保持板51の位置および姿勢の変化と必ずしも一致するものではない。
【0063】
チルト調整機構50では、上述したように、カメラボディ39内において、保持板51の調整方向ADに対する傾斜を変化させることができる(図13(c)参照)とともに、保持板51の調整方向ADでの位置を変化させることができる(図13(b)参照)。すると、カメラボディ39内における保持板51の位置および姿勢が変化することから、保持板51とカメラボディ39とを熱伝達可能に連結する熱伝達部材を設けた場合、カメラボディ39を基準として熱伝達部材が保持板51を押す力が生じてしまう虞がある。
【0064】
これに対し放熱構造60では、保持板51に一端部62が取り付けられるとともに、カメラボディ39(筐体部39A)に固定された取付枠53に他端部66が取り付けられた熱伝導部材61が、その一端部62と他端部66とを、長尺方向で見た両端に位置する第1境目部63と第2境目部65とを介して長尺板部64で繋ぐ構成とされている。このため、カメラボディ39内において保持板51の位置および姿勢が変化することによって、保持板51と取付枠53とが調整方向AD(撮影光軸OA方向)で相対的な位置が変化(図13(b)参照)したり、保持板51と取付枠53とが相対的な傾斜が変化(図13(c)参照)したりしても、長尺板部64を変形させることで効率よく吸収することができ、一端部62と他端部66との間で相対的に押す力が発生することを防止することができる。これは、以下のことが考えられる。熱伝導部材61では、長尺板部64が長尺な平板状を呈するとともに、その長尺方向で見た一方の端部に第1境目部63を介して一端部62が設けられ、かつ長尺方向で見た他方の端部に第2境目部65を介して他端部66が設けられていることから、一端部62と他端部66との相対的な位置関係の変化を長尺板部64の全長に渡る撓み変形で吸収することができる。加えて、熱伝導部材61では、一端部62と長尺板部64とを繋ぐ第1境目部63が第1方向に伸びているとともに、長尺板部64と他端部66とを繋ぐ第2境目部65が第2方向に伸びていることから、一端部62と他端部66との相対的な位置関係の変化を長尺板部64の捻り方向での撓み変形で吸収することができる。
【0065】
このように、本発明に係る放熱構造60では、互いに直交する第1境目部63と第2境目部65とを介して一端部62と他端部66とを長尺板部64で繋ぐ熱伝導部材61を用いて、その一端部62を保持板51に取り付けるとともに他端部66を取付枠53に取り付けて構成していることから、チルト調整機構50により保持板51と取付枠53との相対的な位置関係が変化されても、その変化を長尺板部64での全長に渡る捻り方向での撓み変形により吸収することができるので、他端部66(その接触片部分66b)が押し当てられる筐体部39B(カメラボディ39)を基準とする熱伝導部材61が保持板51を押す力が生じることを効率よく抑制することができる。このため、チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子11の位置を変化させることを防止することができる。
【0066】
また、放熱構造60では、長尺板部64を調整方向ADに直交する面に沿わせて熱伝導部材61が設けられていることから、チルト調整機構50における取付枠53に設けられた各支持部材54(その調整カム面54e)での各支持点の調整方向ADへの調整による保持板51と取付枠53との相対的な位置関係の変化を長尺板部64の全長に渡る捻り方向での撓み変形により、より効率よく吸収することができる。
【0067】
さらに、放熱構造60では、熱伝導部材61の長尺板部64の長尺方向での長さ寸法が、チルト調整機構50における調整量すなわち各支持部材54における調整カム面54eによる高さ寸法の差異に比較して十分に大きなものとされていることから、保持板51と取付枠53との相対的な位置関係の変化を長尺板部64の全長に渡る捻り方向での撓み変形により、より効率よく吸収することができる。
【0068】
放熱構造60では、チルト調整に拘らず撮像素子11とカメラボディ39とを熱伝導部材61で熱伝達可能に接続した状態を維持することができることから、高画質な撮影画像を取得することができる。このことは、特に、近年デジタルカメラ10において、動画撮影機能を有するものが増加しており、この動画撮影の場面では撮像素子11の駆動時間が増大することから、効果的である。
【0069】
放熱構造60では、熱伝導部材61の他端部66が、取付板部分66aが取付箇所(筐体取付面)に面で接する状態で取付枠53に取り付けられるとともに、そこから弾性変形可能に突出される接触片部分66b(その接触箇所66d)が筐体部39B(筐体接触面)に押し当てられる構成であることから、チルト調整機構50によるチルト調整(保持板51と取付枠53との位置関係の変化)に拘らず一定の位置関係とされた取付枠53と筐体部39Bとの間で熱伝導部材61とカメラボディ39とを接触させることができる。このため、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に接続した状態を所定の状態で確実に維持することができる。
【0070】
放熱構造60では、熱伝導部材61の他端部66が、取付板部分66aが取付箇所(筐体取付面)に面で接する状態で取付枠53に取り付けられるとともに、そこから弾性変形可能に突出される接触片部分66b(その接触箇所66d)が筐体部39B(筐体接触面)に押し当てられる構成であることから、取付枠53が設けられた筐体部39Aに筐体部39Bが取り付けられてカメラボディ39が構成される際、接触片部分66b(その接触箇所66d)の筐体部39Bからの反力を取付板部分66aに対する接触片部分66bの弾性変形で吸収することができるので、撮像素子11に及ぶことを防止することができる。
【0071】
放熱構造60では、熱伝導部材61において、一端部62と長尺板部64とが調整方向ADで異なる位置とされて第1境目部63により繋がれているとともに、長尺板部64と他端部66とが調整方向ADで異なる位置とされて第2境目部65により繋がれていることから、保持板51と取付枠53との相対的な位置関係の変化の影響が一端部62および他端部66に及ぶことを防止しつつ当該影響を長尺板部64に及ばせることができるので、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に連結した状態を確実に維持しつつ保持板51と取付枠53との相対的な位置関係の変化を吸収することができる。
【0072】
放熱構造60では、熱伝導部材61において、保持板51に取り付けられる一端部62に対して、その保持板51に沿う位置関係とされる長尺板部64が、調整方向ADの保持板51が取り付けられる側とは反対側へと変位されて第1境目部63により繋がれていることから、保持板51と長尺板部64との間に隙間を設けることができるので、長尺板部64での捻り方向での撓み変形を阻害することを防止することができる。
【0073】
放熱構造60では、熱伝導部材61において、2つの一端部位置決め穴62aにそれぞれが対応する保持板51の位置決めボス部51dを通しつつ一端部62を保持板51における固定箇所(中央部分)に面で接触させた状態で熱伝導用固定ネジ59により一端部62が保持板51に取り付けられていることから、一端部62と保持板51との位置関係が変化することを確実に防止することができるので、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に接続した状態を確実に維持することができる。
【0074】
放熱構造60では、熱伝導部材61において、取付板部分66aの他端部取付穴66cに取付枠固定ネジ57を通しつつ他端部66を取付枠53における取付箇所(筐体取付面)に面で接触させた状態で取付枠固定ネジ57により他端部66が取付枠53に取り付けられていることから、他端部66と取付枠53との取付枠固定ネジ57回りの相対的な回転の余地を持たせることができるので、長尺板部64の変形による保持板51と取付枠53との相対的な位置関係の変化の吸収を補助させることができる。
【0075】
したがって、本発明に係る放熱構造60では、チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子11の位置を変化させることを防止することができる。
【他の実施例】
【0076】
次に、他の実施例の放熱構造70について、図14から図17を用いて説明する。この他の実施例は、放熱構造70の構成が上記した実施例のデジタルカメラ10とは異なる例である。この他の実施例のデジタルカメラ10B(チルト調整機構50)は、基本的な構成は上記した実施例1のデジタルカメラ10(チルト調整機構50)と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、他の実施例の放熱構造70は、基本的な構成は上記した実施例1の放熱構造60と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図14は、放熱構造70の構成を説明するために、筐体部39Aを裏面側(撮像素子11の裏面11b側)から見た図2と同様の説明図である。図15は、放熱構造70において、熱伝導部材71の保持板51への取り付け状態を示す説明図である。図16は、熱伝導部材71の保持板側取付部材72を模式的な斜視図で示す説明図である。図17は、熱伝導部材71の筐体板側取付部材81を模式的な斜視図で示す説明図である。
【0077】
他の実施例の放熱構造70は、図14から図17に示すように、熱伝導部材71として保持板側取付部材72と筐体板側取付部材81とを有する。この保持板側取付部材72と筐体板側取付部材81とは、熱伝導性を有する材料から形成された板状を呈し、適宜折り曲げ加工が施されて構成されている。
【0078】
先ず、保持板側取付部材72は、図16に示すように、取付片部73と境目部74と伸長板部75と接触片部76とを有する。取付片部73は、保持板51への取り付け箇所として設けられており(図14等参照)、平板状を呈する。この取付片部73は、保持板51における中央部分であって、保持した撮像素子11の裏側に相当する箇所(3つの接着部51a(その接着凸部分51g)に取り囲まれた箇所(以下、固定箇所ともいう))と面で接することが可能とされている。このため、取付片部73は、熱源となる撮像素子11側に取り付けられる箇所となる。取付片部73は、本実施例では、保持板51に取り付けられた状態における撮影光軸OA(調整方向AD)に直交する面上で見て、保持板側取付部材72における縁部となる一端から境目部74側の他端へ向かう伸長方向が中間箇所で屈曲されて形成されており、当該他端(境目部74)が撮影光軸OA(調整方向AD)で見て保持板51と重なることのない位置関係とされている(図14および図15参照)。この取付片部73には、2つの取付片部位置決め穴73aと、2つの取付片部取付穴73bとが設けられている。
【0079】
その両取付片部位置決め穴73aは、保持板51と取付片部73との相対的な位置ずれを防止するものである。この2つの取付片部位置決め穴73aは、保持板51の2つの位置決めボス部51dに対応して設けられており、それぞれが対応する位置決めボス部51dを通すことが可能とされている(図14および図15参照)。なお、本実施例では、一方の取付片部位置決め穴73a(図16を正面視して右側)が、取付片部73における一端側の周縁部を開放する長穴すなわち位置決めボス部51dの外径寸法よりも一方向のみが大きくされた内径寸法とされており、位置決めボス部51dが通される位置の自由度が確保されている。2つの取付片部取付穴73bは、2つの取付片部位置決め穴73aのうちの丸穴(図16を正面視して左側)を挟む位置において、取付片部73を厚さ方向に貫通して設けられている。この両取付片部取付穴73bは、保持板51のネジ留穴(図示せず)に対応して設けられており、後述する熱伝導用固定ネジ59Bを通すことが可能とされている。
【0080】
この取付片部73は、境目部74により伸長板部75と繋がれている。その境目部74は、後述するように互いに平行とされる取付片部73と伸長板部75との境目を、それらに平行な単一の直線方向(以下では境目方向ともいう)に沿って構成するものである。境目部74は、本実施例では、取付片部73および伸長板部75が形成する面に直交する方向(以下では直交方向ともいう)で見た位置を互いに異ならせて、取付片部73と伸長板部75とを繋ぐものとされている。すなわち、境目部74は、取付片部73と伸長板部75と間で、上記した境目方向および直交方向を含む面に沿って設けられており、保持板51に取り付けられる取付片部73に対して、保持板51が取り付けられる側へと伸長板部75を変位させている。
【0081】
その伸長板部75は、長尺な平板状を呈し、取付片部73と平行とされている。伸長板部75は、本実施例では、取付片部73が保持板51に取り付けられた状態における撮影光軸OA(調整方向AD)に直交する面上で見て、境目部74側の一端から接触片部76側の他端へ向かう伸長方向が湾曲されて形成されている。この伸長板部75は、境目部74との協働により、取付片部73に対して弾性変形可能に突出された突出片部を形成する。
【0082】
この伸長板部75では、湾曲する長尺方向で見て取付片部73とは反対側の端部に、接触片部76が設けられている。接触片部76は、保持板51に取り付けられた状態における撮影光軸OA(調整方向AD)の撮像素子11側へと突出された後に、その突出方向とは反対側へと湾曲されて形成されている。この接触片部76は、後述するように筐体板側取付部材81に接触される箇所となる。
【0083】
この保持板側取付部材72では、この長尺板部64は、撮像素子11の裏側に存在される取付片部73と、後述するように筐体部39A(カメラボディ39)に取り付けられる筐体板側取付部材81(その後述する接触面82a)とを繋ぐべく長尺方向に伸びるものであることから、長尺方向での長さ寸法が、チルト調整機構50における調整量すなわち各支持部材54における調整カム面54eによる高さ寸法の差異に比較して、十分に大きなものとされている。
【0084】
筐体板側取付部材81は、カメラボディ39への取り付け部材として設けられている(図14参照)。筐体板側取付部材81は、図17に示すように、接触面部82と境目部83と取付片部84とを有する。接触面部82は、取付枠53への取り付け箇所であるとともに、接触片部76が接触される接触面82aを構成する箇所として設けられている(図14等参照)。この接触面82aは、平坦な面とされており、接触片部76における接触箇所(湾曲により突出された箇所)と接触した状態において相対的に滑ることが可能とされている。この接触面部82には、2つの接触面部位置決め穴82bと、1つの接触面部取付穴82cとが設けられている。
【0085】
その2つの接触面部位置決め穴82bは、取付枠53と接触面部82との相対的な位置ずれを防止するものである。この2つの接触面部位置決め穴82bは、取付枠53の2つの位置決め突起53g(図14参照)に対応して設けられており、それぞれが対応する位置決め突起53gを通すことが可能とされている。なお、本実施例では、一方の接触面部位置決め穴82b(図17を正面視して右側)が、長穴すなわち位置決め突起53gの外径寸法よりも一方向のみが大きくされた内径寸法とされており、位置決め突起53gが通される位置の自由度が確保されている。接触面部取付穴82cは、接触面部82を厚さ方向に貫通して設けられている。この両接触面部取付穴82cは、取付枠53のネジ留穴(図示せず)に対応して設けられており、後述する取付枠固定ネジ57B(図14および図15参照)を通すことが可能とされている。
【0086】
この接触面部82は、境目部83により取付片部84と繋がれている。その境目部83は、後述するように互いに平行とされる接触面部82と取付片部84との境目を、それらに平行な単一の直線方向(以下では境目方向ともいう)に沿って構成するものである。境目部83は、本実施例では、接触面部82および取付片部84が形成する面に直交する方向(以下では直交方向ともいう)で見た位置を互いに異ならせて、接触面部82と取付片部84とを繋ぐものとされている。すなわち、境目部83は、接触面部82と取付片部84と間で、上記した境目方向および直交方向を含む面に沿って設けられており、取付枠53に取り付けられる接触面部82に対して、被写体側(筐体部39A側)へと取付片部84を変位させている。
【0087】
その取付片部84は、平板状を呈し、接触面部82と平行とされている。取付片部84は、筐体部39Aへの取り付け箇所として設けられている(図14参照)。この取付片部84には、取付片部取付穴84aが設けられている。その取付片部取付穴84aは、取付片部84を厚さ方向に貫通して設けられている。この取付片部取付穴84aは、筐体部39Aのネジ留穴(図示せず)に対応して設けられており、後述する熱伝導用固定ネジ59Cを通すことが可能とされている。
【0088】
放熱構造70では、このように構成された筐体板側取付部材81が、図14に示すように、接触面部82の2つの接触面部位置決め穴82bにそれぞれが対応する取付枠53の位置決め突起53gを通しつつ当該接触面部82を取付枠53における取付部分(明確には図示せず)に面で接触させて、その接触面部82の接触面部取付穴82cに通した取付枠固定ネジ57Bを取付枠53のネジ留穴(図示せず)に噛み合わせることにより、接触面部82が取付枠53に取り付けられる。また、筐体板側取付部材81は、取付片部84を筐体部39Aにおける取付部分(明確には図示せず)に面で接触させて、その取付片部84の取付片部取付穴84aに通した熱伝導用固定ネジ59Cを筐体部39Aのネジ留穴(図示せず)に噛み合わせることにより、取付片部84が筐体部39Aに取り付けられる。このように、筐体板側取付部材81は、カメラボディ39に固定される。このため、取付片部84は、放熱箇所となる筐体(カメラボディ39)側に取り付けられる箇所となる。
【0089】
また、保持板側取付部材72は、取付片部73の2つの取付片部位置決め穴73aにそれぞれが対応する保持板51の位置決めボス部51dを通しつつ当該取付片部73を保持板51における固定箇所(中央部分)に面で接触させて、その取付片部73の各取付片部取付穴73bに通した熱伝導用固定ネジ59Bを保持板51のネジ留穴(図示せず)に噛み合わせることにより、取付片部73が保持板51に取り付けられる。すると、保持板側取付部材72では、境目部74および伸長板部75を介して取付片部73に繋がれた接触片部76(その接触箇所)が、筐体板側取付部材81の接触面部82により規定される接触面82aに押し当てられる(図14および図15参照)。この取付片部73は、この他の実施例では、図示は略すが熱伝導性を有する接着材により保持板51に取り付けられており、熱の伝導をさらに効率のよいものとしている。
【0090】
このため、放熱構造70では、保持板51を介して、そこに保持された撮像素子11とカメラボディ39とを、熱伝導部材71としての保持板側取付部材72および筐体板側取付部材81で熱伝達可能に接続することができ、当該撮像素子11から発生した熱を逃がすことができる。ここで、チルト調整機構50による撮像素子11(保持板51)の調整が為されていない場合、保持板51および取付枠53が調整方向ADに直交する面に沿って設けられていることから、保持板側取付部材72の取付片部73および伸長板部75と、筐体板側取付部材81の接触面部82(その接触面82a)と、が調整方向ADに直交する面に沿って設けられている。このため、保持板側取付部材72の接触片部76(その接触箇所)は、筐体板側取付部材81の接触面部82の接触面82aに対して、調整方向ADで押し当てられている。
【0091】
この放熱構造70では、チルト調整機構50によるカメラボディ39内での保持板51の調整方向ADに対する傾斜の変化および調整方向ADでの位置の変化に起因して、熱伝導部材71が保持板51を押す力が増大することを防止することができる。これについて以下で説明する。
【0092】
放熱構造70では、取付片部73が保持板51に取り付けられた保持板側取付部材72の接触片部76(その接触箇所)が、カメラボディ39(取付枠53および筐体部39A)に固定された筐体板側取付部材81の接触面部82の接触面82aに接して構成されている。このとき、保持板側取付部材72では、境目部74と伸長板部75との協働により、接触片部76が境目部74および伸長板部75を介することで弾性変形可能に取付片部73に繋がれていることから、接触片部76(その接触箇所)が接触面部82の接触面82aに押し当てられている。その接触面82aは、接触片部76における接触箇所(湾曲により突出された箇所)と接触した状態において相対的に滑ることが可能とされている。このため、カメラボディ39内において保持板51の位置および姿勢が変化すると、接触片部76(その接触箇所)の接触面部82の接触面82aへの接する位置(押し当てられる位置)を変化させつつその接触状態を維持することができるので、カメラボディ39内での保持板51の位置および姿勢の変化を効率よく吸収することができ、保持板側取付部材72と筐体板側取付部材81との間で相対的な力が発生することを防止することができる。
【0093】
このように、他の実施例の放熱構造70では、保持板51に固定される保持板側取付部材72に弾性変形可能に突出された突出片部(境目部74および伸長板部75)を設け、その先端箇所(接触片部76)をカメラボディ39(取付枠53および筐体部39A)に固定される筐体板側取付部材81の接触面82aに押し当てる構成としていることから、チルト調整機構50により保持板51とカメラボディ39との相対的な位置関係が変化されても、その突出片部の先端箇所(接触片部76)と接触面82aとの接する位置を変化させることで吸収することができるので、筐体板側取付部材81が押し当てられるカメラボディ39を基準として熱伝導部材71が保持板51を押す力が生じることを効率よく抑制することができる。このため、チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子11の位置を変化させることを防止することができる。
【0094】
また、放熱構造70では、保持板側取付部材72の接触片部76(その接触箇所)が、筐体板側取付部材81の接触面部82の接触面82aに調整方向ADで押し当てられていることから、チルト調整機構50における取付枠53に設けられた各支持部材54(その調整カム面54e)での各支持点の調整方向ADへの調整により保持板51と取付枠53(カメラボディ39)との相対的な位置関係が変化しても、接触片部76(その接触箇所)が接触面部82の接触面82aに接する状態を維持することができる。このため、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に接続した状態を確実に維持することができる。
【0095】
さらに、放熱構造70では、保持板側取付部材72において、取付片部73と伸長板部75とが調整方向ADで異なる位置とされて境目部74により繋がれていることから、保持板51と取付枠53(カメラボディ39)との相対的な位置関係の変化の影響が取付片部73に及ぶことを防止しつつ当該影響を接触片部76(その接触箇所)と接触面部82の接触面82aとが接する位置に及ばせることができるので、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に接続した状態を確実に維持しつつ保持板51とカメラボディ39との相対的な位置関係の変化を吸収することができる。
【0096】
放熱構造70では、保持板側取付部材72において、保持板51に沿う位置関係とされ筐体板側取付部材81(その接触面82a)に接する箇所を規定する伸長板部75が、その保持板51に取り付けられる取付片部73に対して、調整方向ADの被写体側(筐体部39A側)へと変位されて境目部74により繋がれていることから、突出片部(伸長板部75)での弾性変形による突出片部の先端箇所(接触片部76)の調整方向ADへの変位を阻害することを防止することができる。このため、保持板51とカメラボディ39との相対的な位置関係の変化を吸収すべく、突出片部の先端箇所(接触片部76)と接触面82aとが接する位置を変化させることができる。
【0097】
放熱構造70では、筐体板側取付部材81が、チルト調整機構50によるチルト調整(保持板51と取付枠53との位置関係の変化)やカメラボディ39としての筐体部39Aと筐体部39Bと取り付けに拘らず一定の位置関係とされた取付枠53と筐体部39Aとに取り付けられてカメラボディ39に固定されていることから、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に接続した状態を所定の状態で確実に維持することができる。
【0098】
放熱構造70では、チルト調整に拘らず撮像素子11とカメラボディ39とを熱伝導部材71(保持板側取付部材72および筐体板側取付部材81)で熱伝達可能に接続した状態を維持することができることから、高画質な撮影画像を取得することができる。このことは、特に、近年デジタルカメラ10において、動画撮影機能を有するものが増加しており、この動画撮影の場面では撮像素子11の駆動時間が増大することから、効果的である。
【0099】
放熱構造70では、保持板側取付部材72において、2つの取付片部位置決め穴73aにそれぞれが対応する保持板51の位置決めボス部51dを通しつつ取付片部73を保持板51における固定箇所(中央部分)に面で接触させた状態で2つの熱伝導用固定ネジ59Bにより取付片部73が保持板51に取り付けられていることから、取付片部73と保持板51との位置関係が変化することを確実に防止することができるので、保持板51を介する撮像素子11とカメラボディ39との熱伝達可能に接続した状態を確実に維持することができる。
【0100】
したがって、本発明に係るチルト調整機構50では、チルト調整に拘らず位置決めした撮像素子11の位置を変化させることを防止することができる。
【0101】
なお、上記した実施例では、本発明に係る放熱構造の一例としての放熱構造60について説明したが、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を筐体内で設定した前記撮影光学系に対する基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能にチルト調整機構により保持される前記撮像素子の放熱構造であって、熱伝導性を有する材料から為り、前記撮像素子に固定される一端部と、前記筐体に固定される他端部と、長尺な板状を呈し該他端部と前記一端部とを繋ぐ長尺板部と、を有する熱伝導部材を備え、該熱伝導部材では、前記一端部と前記長尺板部との境目を形成する第1境目部と、前記他端部と前記長尺板部との境目を形成する第2境目部と、が互いに直交する方向に沿って設定されている放熱構造であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0102】
また、上記した実施例では、第1境目部63(第1方向)と第2境目部65(第2方向)とが互いに直交するものとされていたが、一端部62と他端部66との相対的な位置関係の変化を長尺板部64の捻り方向での撓み変形で吸収することを可能とするものであれば、厳密な意味で直交するものではなくてもよい。
【0103】
さらに、上記した実施例では、第1境目部63が、直交方向で見た位置を互いに異ならせて一端部62と長尺板部64とを繋ぐものとされ、かつ第2境目部65が直交方向で見た位置を互いに異ならせて長尺板部64と他端部66とを繋ぐものとされていたが、一端部62が取り付けられる保持板51と他端部66が取り付けられる取付枠53とが相対的に位置関係が変化した際、その変化を長尺板部64における捻り方向での撓み変形で吸収することを可能とするものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0104】
上記した実施例では、撮像素子11を保持する保持板51が、筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能な3つの支持点により支持されていたが、当該支持点は、筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能であって少なくとも3つ以上設けられていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0105】
上記した実施例では、デジタルカメラ10に放熱構造60が搭載されていたが、撮影光学系の撮影光軸OAに対して筐体内で設定された基準面(基準面Bp)に対する撮像素子(撮像素子11)のチルト調整が要求されるものであれば、筐体と一体的に撮影光学系が設けられた撮像装置(デジタルカメラ)に搭載されていてもよく、撮影光学系と撮像素子とが筐体に収容され当該筐体が撮像装置本体に着脱自在とされた撮像ユニットに搭載されていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0106】
上記した実施例では、デジタルカメラ10に放熱構造60が搭載されていたが、カメラ機能を組み込んだPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯型情報端末装置に搭載されていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。これは、このような携帯型情報端末装置も外観は若干異にするもののデジタルカメラ10と実質的に全く同様の機能・構成を含んでいるものが多いことによる。同様に、本発明に係る放熱構造60を画像入力装置に採用してもよい。
【0107】
以上、本発明の放熱構造を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0108】
10 デジタルカメラ
11 撮像素子
11a 撮像面
39 (筐体の一例としての)カメラボディ
39A (筐体の一例としての)筐体部
39B (筐体の一例としての)筐体部
40 (撮影光学系を構成する)交換レンズ部
50 チルト調整機構
51 (撮像素子保持板の一例としての)保持板
52b1 (被支持点となる)第1被支持部
52b2 (被支持点となる)第2被支持部
52b3 (被支持点となる)第3被支持部
53 (一例としての筐体に固定される)取付枠
54 支持部材
54e (支持点を形成するカム面としての)調整カム面
60 放熱構造
61 熱伝導部材
62 一端部
63 第1境目部
64 長尺板部
65 第2境目部
66 他端部
66a 取付板部分
66b 接触片部分
AD 調整方向
Bp 基準面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開平09−037161号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を筐体内で設定した前記撮影光学系に対する基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能にチルト調整機構により保持される前記撮像素子の放熱構造であって、
熱伝導性を有する材料から為り、前記撮像素子に固定される一端部と、前記筐体に固定される他端部と、長尺な板状を呈し該他端部と前記一端部とを繋ぐ長尺板部と、を有する熱伝導部材を備え、
該熱伝導部材では、前記一端部と前記長尺板部との境目を形成する第1境目部と、前記他端部と前記長尺板部との境目を形成する第2境目部と、が互いに直交する方向に沿って設定されていることを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記チルト調整機構は、前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を有し、
前記一端部は、前記撮像素子保持板に面を宛がわせて取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記他端部は、前記筐体において前記撮像素子保持板に沿って設けられた筐体取付面に面を宛がわせて取り付けられる取付板部分と、該取付板部分から弾性変形可能に突出される接触片部分と、を有し、
該接触片部分は、前記取付板部分を規準とする弾性変形により、前記筐体における前記筐体取付面とは異なる筐体接触面に押し当てられていることを特徴とする請求項2に記載の放熱構造。
【請求項4】
前記熱伝導部材では、前記第1境目部が前記基準面に直交する方向での位置を異ならせて前記一端部と前記長尺板部とを繋いでいることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放熱構造。
【請求項5】
前記熱伝導部材では、前記長尺板部が前記撮像素子保持板と間隔を置きつつ該撮像素子保持板に沿って設けられていることを特徴とする請求項4に記載の放熱構造。
【請求項6】
前記熱伝導部材では、前記第2境目部が前記基準面に直交する方向での位置を異ならせて前記他端部と前記長尺板部とを繋いでいることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の放熱構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放熱構造を搭載したことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−38596(P2013−38596A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173124(P2011−173124)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】