説明

放送通信連携受信装置

【課題】装置内部で放送ストリームを通信ストリームよりも遅延させる同期制御に関連した機能を付加することで当該装置の利用者の利便性を向上させる。
【解決手段】放送通信連携受信装置6は、デジタル放送番組を放送ストリームとして受信し、当該装置上で動作するアプリケーションを通信ネットワークNから通信ストリームとして受信するものであり、放送ストリームと通信ストリームとを当該装置内で同期させる同期制御を行って映像および音声を提示するための出力手段630に出力する合成表示手段614と、放送ストリームの通常提示中にアプリケーションの取得を契機に放送ストリームの遅延提示を開始する遅延提示制御手段740と、遅延提示中の放送ストリームの提示時刻と通常提示中の提示時刻との差分を遅延時間量として取得する遅延時間量取得手段750と、取得した遅延時間量を放送局が管理するサーバに送信する通信送受信手段606と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送と通信とを連携して、内部で通信ストリームと放送ストリームとを同期させる放送通信連携受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放送と通信とを連携したサービスを実現するための放送通信連携型システムが提案されている(非特許文献1参照)。この放送通信連携型システムにおいて、放送通信連携受信装置は、デジタル放送を受信する受信機であって、通信ネットワークからダウンロードしたアプリケーションを当該装置上で動作させることを想定している。
【0003】
また、放送通信連携受信装置は、放送波で取得する番組等の放送コンテンツ(放送ストリーム)と、通信ネットワークから取得する映像、音声、字幕あるいはメタデータといったコンテンツ(通信コンテンツ)の通信ストリームと、の同期をとる必要がある。一般に、放送波は安定した正確な時間で伝送されるのに対し、例えばIP(Internet Protocol)網などの通信による伝送では、パケットの遅延などにより受信装置に到着する時間に変動がある。そのため、放送通信連携受信装置において、通信ストリームは放送ストリームよりも遅延することが多い。よって、この場合、装置内部で放送ストリームを遅らせる同期制御を行うことで、送信側の意図するタイミングでサービスを提供することとなる。
【0004】
このように放送通信連携受信装置の内部で放送ストリームを遅らせる同期制御のことを遅延制御という。遅延制御については、例えば非特許文献1に記載されている。非特許文献1に記載されている方法では、例えば通信コンテンツを配信するネットワークサーバにおいて、放送ストリームの基準クロック(例えばMPEG2−TSのPCR(Program Clock Reference))を参照する提示時刻情報PTS(Presentation Time Stamp)を通信コンテンツに付加しておく。これにより、放送通信連携受信装置は、通信コンテンツの遅延変動分を吸収するのに充分な時間だけ放送コンテンツを一定時間遅らせ、精度よくコンテンツの同期を取って提示することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】松村欣司、ほか2名、「インターネット配信情報との連動による放送番組パーソナライズシステムの検討」、映像情報メディア学会年次大会講演予稿集、2009年、No.3-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放送通信連携型システムでは、放送通信連携受信装置が同期制御を行うことを前提として、この同期制御に、関連する制御を付加することで受信装置の機能を高め、充実した内容のサービスをより多くの視聴者に提供できるようにすることが要望される。例えば、デジタル放送番組(放送ストリーム)が、視聴者参加型のクイズ番組のように、番組進行に合わせた時刻管理を必要とする番組であり、かつ、通信コンテンツ(通信ストリーム)がクイズの回答を入力するための回答パッドのようにクイズの回答制限時間内だけ番組に連動して画面表示されるようなサービスを実現する場合を一例として想定する。
【0007】
一般に、全国の各家庭に設置されているデジタル放送受信機において、通信ネットワークから取得する通信コンテンツ(通信ストリーム)の到着時間が異なることは、原理的に避けられない。したがって、放送通信連携受信装置の設置場所によっては、同期制御の遅延制御を実行した結果、例えば回答パッドが、サービス提供側で想定した時間よりも著しく短い時間しか表示されない事態が生じ得ると考えられる。この例では、クイズの回答制限時間に対して、例えば通信ストリームの遅延時間が充分に小さい場合にはその差は無視できるが、そうではない場合、視聴者が違和感や不公平感を抱くこととなる。そのため、このような番組進行に合わせた時刻管理を必要とする放送番組であっても同期制御を伴ったサービスを多くの視聴者に歓迎して利用してもらえるような仕組みが要望される。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、通信ストリームと放送ストリームとを同期させるために装置の内部で放送ストリームを通信ストリームよりも遅延させる制御を行う場合に同期制御に関連した機能を付加することで装置の利用者の利便性を向上させることのできる放送通信連携受信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の放送通信連携受信装置は、デジタル放送を受信して映像および音声を提示するための出力手段に出力すると共に当該装置上で動作するアプリケーションを通信ネットワークから取得する放送通信連携受信装置であって、放送受信手段と、アプリケーション起動情報記憶手段と、通信受信手段と、合成表示手段と、遅延提示制御手段と、遅延時間量取得手段と、通信送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、放送通信連携受信装置は、放送受信手段によって、デジタル放送の放送波により送信される放送番組を放送ストリームとして受信する。そして、放送通信連携受信装置は、前記放送番組に連動した前記アプリケーションを起動させるためのアプリケーション起動情報をアプリケーション起動情報記憶手段に記憶する。そして、放送通信連携受信装置は、通信受信手段によって、前記アプリケーション起動情報に基づいて前記アプリケーションを通信ネットワークから通信ストリームとして受信し、合成表示手段によって、前記通信ストリームと前記放送ストリームとを当該装置内で同期させる同期制御を行って前記出力手段に出力する。そして、放送通信連携受信装置は、遅延提示制御手段によって、前記受信した放送ストリームを通常提示しているときに外部からの操作または外部からの制御信号を契機とした所定のタイミングで、前記同期制御として前記放送ストリームを当該装置において通常提示しているときの提示時刻よりも遅延させる制御の開始を前記合成表示手段に指示することで、前記放送ストリームを遅延提示させる。そして、放送通信連携受信装置は、遅延時間量取得手段によって、前記遅延提示中の前記放送ストリームの提示時刻と、当該遅延提示を行わずに前記通常提示しているときの放送ストリームの提示時刻との差分を遅延時間量として取得し、通信送信手段によって、前記取得した遅延時間量を通信ネットワークを介して、放送局が管理するサーバに送信する。
これによれば、予め、複数の放送通信連携受信装置において、視聴者参加型のクイズ番組のように番組進行に合わせた時刻管理を必要とする放送ストリームと、このような番組に連動して提示される通信ストリームとを同期させたときの遅延時間量を予め放送局に知らせておくことで、放送局側にて、これら複数の受信装置間で異なる遅延時間量を考慮して各視聴者が不利益を被らない対策を講じることを示すメッセージ等を放送コンテンツの制御信号に多重化して各受信装置に送信することが可能となる。
【0011】
また、請求項2に記載の放送通信連携受信装置は、請求項1に記載の放送通信連携受信装置において、アプリケーション起動情報抽出手段をさらに備えることとした。
【0012】
かかる構成によれば、放送通信連携受信装置は、アプリケーション起動情報抽出手段によって、前記放送ストリームに多重化された制御信号から当該放送番組に連動したアプリケーションのための前記アプリケーション起動情報を抽出して前記アプリケーション起動情報記憶手段に格納する。そして、放送通信連携受信装置は、前記遅延提示制御手段が、前記通信受信手段により前記アプリケーションを取得した後に前記放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示する。これによれば、取得したアプリケーションをアプリケーション起動情報にて自動起動させることが可能なので、このように構成することで、視聴者が特別な操作をすることなく遅延提示を開始することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の放送通信連携受信装置は、請求項2に記載の放送通信連携受信装置において、前記通信受信手段が、前記アプリケーションに連動しているコンテンツを通信ネットワークから通信ストリームとしてさらに取得し、前記遅延提示制御手段が、前記通信受信手段により前記コンテンツを取得したタイミングで前記放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示することとした。
【0014】
かかる構成によれば、放送通信連携受信装置は、アプリケーションを取得後に、そのアプリケーションに連動しているコンテンツを取得したときに放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示するので、アプリケーションを取得した後で、通信ネットワークからコンテンツを取得できるまでになんらかの理由で時間を要したとしても、その間、放送ストリームを通常提示することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、放送通信連携受信装置は、遅延提示中の放送ストリームの提示時刻と、放送ストリームの通常提示中の提示時刻との差分を遅延時間量として取得し、放送局に通知する機能を備えているので、遅延時間量を放送局に知らせることで、放送局側にて利用者の利便性を向上させる対策を講じることが可能となる。したがって、予め放送局に遅延時間量を知らせておき、その後に、放送通信連携受信装置が、対策を講じられた放送ストリームを受信することで、当該装置の利用者の利便性を向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、放送通信連携受信装置は、取得したアプリケーションをアプリケーション起動情報にて自動起動させることで、視聴者が特別な操作をすることなく遅延提示を開始することができるので、当該装置の利用者の利便性を向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、放送通信連携受信装置は、アプリケーションを取得した後で、通信ネットワークからコンテンツを取得できるまでに時間を要したとしても、その間、放送ストリームを通常提示することができるので、当該装置の利用者の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置を含む放送通信連携型システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置に表示される放送通信連携用アプリケーションの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置にレコメンドサービスが提供されるときの流れの一例を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】遅延時間量を放送局で用いない比較例のタイミングチャートであって、(a)は放送コンテンツの送出タイミング、(b)は同期制御をしない場合の受信タイミング、(c)は同期制御をする場合の受信タイミング、(d)は時刻をそれぞれ示している。
【図6】本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置が取得した遅延時間量を放送局で用いる場合のタイミングチャートであって、(a)は放送コンテンツの送出タイミング、(b)は時刻をそれぞれ示している。
【図7】本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置による遅延提示処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の放送通信連携受信装置を実施するための形態について、1.放送通信連携型システム、2.放送通信連携受信装置の画面表示例、3.各サーバと放送通信連携受信装置との動作シーケンス例、4.放送通信連携受信装置の構成、5.遅延時間量を用いた放送局の処理の概要、6.遅延提示処理の流れの具体例の各章に分けて、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[1.放送通信連携型システム]
放送通信連携型システム1の構成の概念図を図1に示す。図1に示すように、放送通信連携型システム1は、電波を利用した現行の放送を行う放送局2に加えて、機能的に、放送局サーバ群4と、サービス事業者サーバ群5と、放送通信連携受信装置6と、を備えている。図1では、放送局2、放送局サーバ群4、サービス事業者サーバ群5、および放送通信連携受信装置6を1つずつ図示したが、それぞれが複数であっても構わない。
【0021】
<利用者の概要>
この放送通信連携型システム1の主な利用者は、例えば、放送局(放送事業者)と、サービス事業者と、視聴者である。
放送局は、編成を伴う番組を送出している。放送局は、電波あるいはネットにより番組を視聴者に配信する。放送局は、後記する放送通信連携サービスを充実するために、その番組に関連するメタデータをサービス事業者に提供してもよい。
サービス事業者は、放送通信連携サービスを提供する者であり、団体または個人で構成される。サービス事業者は、サービスを提供するためのコンテンツやアプリケーション(放送通信連携用アプリケーション、以下、単にアプリケーションとも言う)を制作する者、あるいは配信する者である。
視聴者は、放送通信連携受信装置6によって放送番組を視聴し、放送通信連携サービスを享受する者である。以下、ユーザという場合、この視聴者を指す。
【0022】
<サービス>
従来、サービスとは、放送事業者が編成する、スケジュールの一環として放送可能な番組の連続のことを指していた。
放送通信連携サービスは、従来の意味でのサービスの考え方を拡張したものである。
放送通信連携サービスは、見かけ上、ストリーム従属型サービスと、独立型サービスとに分けて考えることができる。
ストリーム従属型サービスは、放送や通信で伝送するAV(Audio Video)ストリームに加え、それに連動して動作する少なくとも1つのアプリケーション(放送通信連携用アプリケーション)により構成される。このストリーム従属型サービスにおいては、通信で伝送するAVストリームの選択・再生、あるいは、放送で伝送するAVストリームの選局をユーザ側で行うことによって、連動してアプリケーションを起動させることができる。この場合、ユーザによる起動や終了に加え、放送事業者などのAVコンテンツの提供者がアプリケーションの自動起動や、終了などのライフサイクルを制御することも可能である。
【0023】
独立型サービスは、リアルな映像・音声のストリームも含み、少なくとも1つのアプリケーション(放送通信連携用アプリケーション)により構成される。この独立型サービスにおいては、ユーザが選択する操作を行うことで、アプリケーションが起動される。ここで、独立型サービスにおけるアプリケーション(以下、独立アプリケーションという)は、例えば、放送局や視聴者ではない個人等の第三者が放送番組とは無関係に作成したアプリケーションであり、ディスプレイ表示される時計等を含む。なお、独立アプリケーションがシステム管理者によって承認された場合、システム管理者によって承認されたことを示すオーソライズド(Authorized)アプリケーション(以下、単にAアプリケーションという)としてもよい。その場合、Aアプリケーションをアプリケーションの集積場所を示すリポジトリに登録し、リポジトリの位置を放送通信連携受信装置6にとって既知のものとする。
【0024】
なお、独立型サービスにおいても、放送通信連携受信装置6の電源がオンしているときに、放送通信連携受信装置6が常にバーチャルな映像・音声のストリームを仮想的に受信する仮想チャンネルを備えているものと概念的に捉える場合、放送通信連携サービスは、ストリーム従属型サービスと、独立型サービスとを統合したサービス(この意味において仮想サービスとも言える)であると考えることができる。
【0025】
<放送局>
放送局2は、例えば放送波により放送コンテンツを送出する。放送局2は、放送波に放送通信連携サービスを起動させるための信号を多重化することができる。
本実施形態では、一例として、放送コンテンツの送信側において、データカルーセル方式により伝送される特定モジュールで、アプリケーション起動情報ファイル(以下、APL起動情報ファイルと表記する)を伝送することとした。APL起動情報は、アプリケーションを起動するために必要な情報である。このAPL起動情報は、例えば、ARIB−J(ARIB STD−B23)で規定されるAIT(Application Information Table)をベースにして作成することができる。例えば、「AUTO START」と記載されたAPL起動情報を受信した放送通信連携受信装置6では、視聴者がアプリケーション起動のための特別な操作をすることなく、アプリケーションを起動させることが可能である。本実施形態のようにAPL起動情報をファイル化する場合、XML形式によるテキスト表現とすることができる。なお、SI(Service Information:番組配列情報)のテーブルで伝送する形態とする場合には、APL起動情報はバイナリ表現にすることが可能である。
【0026】
<放送局サーバ群>
放送局(放送事業者)は、放送局サーバ群4とサービス事業者サーバ群5とのうちの放送局サーバ群4、または、両方を構成し、管理運営する。つまり、放送局(放送事業者)は、サービス事業者を兼ねてもよい。
放送局サーバ群4は、図1に示すように、コンテンツ管理サーバ41と、ユーザ管理サーバ42と、コンテンツ配信サーバ43と、放送局サービスサーバ44と、DB45と、API46と、を備えている。
【0027】
コンテンツ管理サーバ41は、番組とメタデータを管理するものである。このコンテンツ管理サーバ41の番組管理機能は、既に放送された番組、または、今後放送される番組を管理する機能である。この番組管理だけを専用に行う番組管理サーバを設けるようにしてもよい。
コンテンツ管理サーバ41のメタデータ管理機能は、番組に関連するメタデータを管理する機能である。このメタデータ管理だけを専用に行うメタデータ管理サーバを設けるようにしてもよい。ここで、メタデータとは、例えば、番組タイトル、番組ID、番組概要、出演者、放送日時、台本、字幕、解説等を示す。
【0028】
ユーザ管理サーバ42は、視聴者のデータを管理するサーバである。このユーザ管理サーバ42は、ネットクラブ等の会員となった特定の視聴者のための会員情報サーバ等の特定のサーバで構成してもよいし、コンテンツ管理サーバ41の管理機能の一部に含めて構成してもよい。
【0029】
コンテンツ配信サーバ43は、コンテンツ(例えば番組やメタデータ)を配信するためのサーバである。
放送局サービスサーバ44は、放送局(放送事業者)がサービス事業者に対してサービスを提供する場合に用いるサーバである。放送局(放送事業者)がサービス事業者に対して提供するサービスは、例えば、放送局が運営するソーシャルネットサービスや、放送番組毎のブログサービス等が挙げられる。
【0030】
DB45は、データ蓄積部であって、放送局が所有しているコンテンツやメタデータを格納する部分と、一般的なデータベースと、から構成される。なお、DB45に蓄積されたデータは、管理している事業者(放送事業者)のみがアクセスでき、他者はアクセスできないようになっている。
【0031】
API(Application Programming Interface)46は、サービス事業者サーバ群5からの要求に応じてデータを提供するためのAPIである。このAPIのフオーマットは、放送局とサービス事業者間の合意により予め決定されている。放送局サーバ群4とサービス事業者サーバ群5間の通信は、例えばREST(Representational State Transfer)形式とすることができる。なお、API46は、放送局サーバ群4に含まれる各サーバが共通に備えるものであるが、各サーバが備えるAPIが完全に同一である必要はない。
【0032】
<サービス事業者サーバ群>
サービス事業者は、サービス事業者サーバ群5を構成し、管理運営する。このサービス事業者サーバ群5は、図1に示すように、アプリケーションサーバ51と、サービスサーバ52と、コンテンツ配信サーバ53と、DB54と、API55と、を備えている。
【0033】
アプリケーションサーバ51は、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーション(以下、受信機アプリケーションともいう)を管理配信するサーバである。
【0034】
サービスサーバ52は、前記受信機アプリケーションからの要求によりサービスを提供するためのサーバである。このサービスサーバ52は、例えば、多言語字幕サーバ、話速変換音声サーバ、ソーシャルTVサーバ、レコメンドサーバ、番組レビューサーバ、ブックマークサーバ等を表す。
【0035】
多言語字幕サーバは、放送通信連携受信装置6に映像音声コンテンツ(以下、AVコンテンツという)が提示されるときに、多言語の中から所望の字幕を選択できるようにメニュー表示するサービスを提供するためのサーバである。
話速変換音声サーバは、放送通信連携受信装置6にAVコンテンツが提示されるときに、話し言葉の本来の速度を低速に変換して音声出力するサービスを提供するためのサーバである。
ソーシャルTVサーバは、例えばつぶやきのような視聴者投稿を放送通信連携受信装置6の画面にオーバーレイして表示可能なサービスを提供するためのサーバである。
レコメンドサーバは、インターネットで提供される番組ライブラリの中から視聴者にお薦めのVOD(Video On Demand)番組の情報を、お薦め番組として知らせるサービスを提供するためのサーバである。
番組レビューサーバは番組を実際に視聴した視聴者が書き込んだ講評や感想、レビュー評価点を放送通信連携受信装置6に表示可能なサービスを提供するためのサーバである。
ブックマークサーバは、例えば視聴者にお薦め番組を知らせたときに視聴者がすぐに視聴するのではなく後で視聴できるようにお薦め番組の情報を登録しておくサービスを提供するためのサーバである。
【0036】
コンテンツ配信サーバ53は、前記受信機アプリケーションからの要求によりコンテンツを提供するためのサーバである。このコンテンツ配信サーバ53は、例えば、VOD配信サーバ、字幕配信サーバ、マルチビュー配信サーバ等を表す。
VOD配信サーバは、例えば視聴者にお薦めのVOD番組のAVコンテンツを配信するためのサーバである。
字幕配信サーバは、放送通信連携受信装置6にAVコンテンツが提示されるときに、AVコンテンツにオーバーラップする字幕を配信するためのサーバである。
マルチビュー配信サーバは、放送通信連携受信装置6に提示されるAVコンテンツにオーバーラップして表示させるマルチビューのカメラ映像を配信するためのサーバである。なお、マルチビューのカメラ映像については後記する。
【0037】
DB54は、コンテンツ、メタデータ、サービス事業者が作成したデータ、ユーザデータ、アプリケーション等を保存するデータ蓄積部である。なお、DB54に蓄積されたデータは、管理しているサービス事業者のみがアクセスでき、他者はアクセスできないようになっている。
【0038】
API55は、前記受信機アプリケーションからの要求により、アプリケーション、コンテンツ、サービスを提供するためのAPIである。なお、API55は、前記したAPI46とは異なるものであり、サービス事業者サーバ群5に含まれる各サーバがサービス事業者ごとに共通に備えるものである。ただし、サービス事業者毎に、また、サーバによって、APIが異なっていてもよいことはもちろんである。
【0039】
<放送通信連携受信装置>
放送通信連携受信装置6は、デジタル放送を受信すると共に当該装置上で動作するアプリケーションを通信ネットワークから取得するものであり、例えば、TV、セットトップボックス、PC(Personal computer)、携帯端末等から構成される。放送通信連携受信装置6は、基本機能61と、放送通信連携用機能62と、API63と、を備える。
【0040】
基本機能61は、地上デジタル放送、BSデジタル放送、データ放送等の現行方式の放送を受信し、表示する機能と、インターネットに接続できる機能とを含む。
放送通信連携用機能62は、API63に基づき動作する。つまり、放送通信連携受信装置6の中にアプリケーション実行環境としてインストールされているOS(Operating System)が、予め定められたAPI63を実行することで、放送通信連携用機能62を実現する。この放送通信連携用機能62は、放送通信連携用基本機能と、オプション機能とを含む。
放送通信連携用基本機能は、放送通信連携サービスを実現するために必要な機能である。放送通信連携用基本機能は、例えば、アプリケーション制御機能、描画機能、同期制御機能、セキュリティ機能等を含む。
【0041】
アプリケーション制御機能は、アプリケーションの起動や終了といったライフサイクルを制御するアプリケーションマネージャーとしての機能を示す。
描画機能は、AVコンテンツを提示している放送通信連携受信装置6の画面の所定位置にアプリケーションを描画する機能を示す。
同期制御機能は、放送によりリアルタイムに受信したAVコンテンツの提示時刻と、通信ネットワークNを経由して取得したアプリケーションやコンテンツとの提示時刻とを同期させる制御を行う機能を示す。つまり、同期制御機能は、放送ストリームとして入力するデータのタイムスタンプと、通信ストリームとして入力するデータのタイムスタンプとを比較し、放送ストリームの所定のポイントと、通信ストリームの対応するポイントとを合わせる制御を行う。
【0042】
セキュリティ機能は、予め定められたポリシーレベルに従ってアプリケーションの画面提示の仕方を変更する制御を行う機能を示す。例えば、システム管理者によって承認されたアプリケーションをAアプリケーションとし、承認されていないものをAアプリケーション以外の一般アプリケーションとしたときに、Aアプリケーションならば、放送通信連携受信装置6に提示されたAVコンテンツにオーバーラップすることを許可し、一般アプリケーションならば、オーバーラップを許可しないといった制御を行う。
【0043】
オプション機能は、必要に応じて実装するものであり、例えば携帯端末連携サービスを実現するための機能等を挙げることができる。
携帯端末連携サービスには、例えば、番組お薦めサービス等のために、携帯端末と据え置き型のテレビを連携させることで視聴者個人がASP(Application Service Provider)等にログインする手続きを簡素化するサービスを含む。
【0044】
アプリケーション64は、例えばアプリケーションサーバ51から放送通信連携受信装置6にダウンロードされ、API63を通して放送通信連携用機能62を利用する。すべてのアプリケーション64はAPI63を介さずに放送通信連携受信装置6固有の機能にアクセスすることはできない。
【0045】
API63は、放送通信連携受信装置6に依存することなくアプリケーション64の動作が同じになるように予め規定されたものであり、各放送通信連携受信装置6に共通のAPIである。以下に、放送通信連携受信装置6がAPI63として、例えばARIB−Jに規定されたAPI以外に用いるAPIの一例を挙げる。
【0046】
(1)getRunningApplications():実行中のアプリケーションの情報を取得する
戻り値:
apps[]: 実行中アプリケーションのリスト
(以下アプリケーションごと)
application_id: アプリケーションID(一般アプリケーションの場合はnull)
running_level: 実行レベル(認証結果およびユーザ設定の状態)
(2)queryApplicationInfo():指定したアプリケーションの情報を取得する
(3)saveApplicationToCache():サーバ上のアプリケーションをキャッシュに保存する
(4)queryApplicationInCache():キャッシュ中のアプリケーションを検索する
引数:
application_id: 認証機関から発行されたアプリケーションID
(5)getCurrentSTC():現在のSTC値を取得する
(6)getCurrentPositionInProgram():番組開始からの経過時間を取得する
(7)delayStreamPresentation():提示中の放送ストリームの遅延提示を開始する
(8)getCurrentDelay():提示中の放送ストリームの(本来の提示時刻からの)遅延時間量を取得する
【0047】
[2.放送通信連携受信装置の画面表示例]
ここでは、図2に示す画面表示例を通して、放送通信連携サービスと、アプリケーションと、コンテンツとの関係の一例や、放送通信連携受信装置6における放送通信連携用機能62の一例について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置に表示されるアプリケーションの一例を示す図である。図2(a)に示すように、視聴者が放送通信連携受信装置6にてAVコンテンツ(デジタル放送番組)100を視聴しているときに、例えばリモコン操作を行うことによって、放送通信連携サービスにおけるメインメニュー101が画面に表示される。
【0048】
この例では、画面の下方に横長のツールバー形状に表示されたメインメニュー101に、字幕102と、コメント103と、レコメンド104と、ブックマーク105と、が表示されている。
字幕102は、多言語の中から所望の字幕を選択できるようにメニュー表示するサービスを選択するためのボタンである。
コメント103は、例えばつぶやきやコメントを投稿するサービスを選択するためのボタンである。
レコメンド104は、お薦めのVOD番組の情報を表示するサービスを選択するためのボタンである。
ブックマーク105は、お薦め番組をすぐに視聴するのではなく後で視聴できるようにお薦め番組の情報を登録しておくサービスを選択するためのボタンである。
【0049】
図2(a)に表示されたメインメニュー101を横スクロールすることで、上記各サービス以外のその他のサービスを選択することが可能である。その他のサービスとして、例えばマルチビューサービスを挙げることができる。マルチビューサービスでは、放送通信連携受信装置6にAVコンテンツが提示されるときに、当該AVコンテンツ中の被写体を別々の位置にそれぞれ配置された複数のカメラで撮影した複数のカメラ映像の中から視聴者が選択したカメラ映像を、マルチビューのカメラ映像として配信し、AVコンテンツにオーバーラップして表示させる。
【0050】
図2(a)に表示されたメインメニュー101を横スクロールすることで、マルチビューサービスが選択されたときの画面表示例を図2(b)に示す。ここでは、1つのマルチビューサービスは、メインメニュー101上の図示しないマルチビューボタン(アプリケーション)と、マルチビューワの選択肢データである静止画像106,107,108と、マルチビューワの動画109(図2(c)参照)とを備えている。このうち、静止画像と、動画コンテンツとは、コンテンツ配信サーバ53としてのマルチビュー配信サーバから配信される。
【0051】
図2(b)に示す例では、AVコンテンツ100がサッカーの試合において攻撃側から見たサッカーゴール周辺の様子を表している。また、静止画像106は観客席の攻撃側サポータの様子、静止画像107は攻撃側チームの監督の様子、静止画像108はゴールキーパの正面の様子をそれぞれ示している。ここで、視聴者が例えば静止画像108を選択した場合、図2(c)に示すように、該当するゴールキーパの正面の映像が、AVコンテンツ100の全表示画面のうちの一部にオーバーラップして表示されながら、AVコンテンツ100と同期した動画109となって再生される。
【0052】
なお、ゴールキーパの正面の映像と、攻撃側から見たサッカーゴール周辺の映像(AVコンテンツ100)との同期は、放送通信連携受信装置6の放送通信連携用機能62によるものである。詳細には放送通信連携用機能62の放送通信連携用基本機能としての同期制御機能によるものである。放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、APIとして例えばgetCurrentSTC()やdelayStreamPresentation()を呼び出すことで、放送通信連携用機能62(図1参照)を利用することができる。
【0053】
[3.各サーバと放送通信連携受信装置との動作シーケンス例]
ここでは、図3に示す動作シーケンス例を通して、放送通信連携サービスと、アプリケーションと、コンテンツとの関係の一例や、放送通信連携受信装置6における放送通信連携用機能62の一例について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置にレコメンドサービスが提供されるときの流れの一例を示すシーケンス図である。
【0054】
図2(a)に表示されたメインメニュー101から視聴者によってレコメンド104が選択された場合、図示は省略するが、レコメンドの種類として、例えば、「今視聴している番組に関連したお薦め番組」、「貴方へのお薦め番組」、「ネットで話題の番組」、「ネットで好評な番組」、といった項目が表示され、項目毎にスクロールすることにより該当する番組の情報が選択可能に表示される。この状態で、視聴者が、例えば、「今視聴している番組に関連したお薦め番組」を選択した場合、放送通信連携受信装置6は、サービス事業者サーバ群5に対して、お薦め番組の要求を行う(S1)。
【0055】
そして、サービス事業者サーバ群5は、放送局サーバ群4のインターフェース部(API46:図1参照)に対して、視聴者が「今視聴している番組に関連したお薦め番組」の要求を行う(S2)。そして、放送局サーバ群4は、該当の推薦番組(お薦め番組)等をサービス事業者サーバ群5に送信する(S3)。そして、サービス事業者サーバ群5は、要求されたデータ(お薦め番組)等を放送通信連携受信装置6に送信する(S5)。なお、サービス事業者サーバ群5は、要求されたデータ(お薦め番組)に連動するアプリケーション(連動アプリケーション)がある場合には必要に応じて放送通信連携受信装置6に送信することもできる(S4)。
【0056】
以上の流れは一例であって、前記した順序で動作することに限定されるものではない。また、放送通信連携受信装置6とサービス事業者サーバ群5との間でだけやりとりをする場合もある。例えば、サービス事業者サーバ群5において、必要なコンテンツを予め放送局サーバ群4から取得しておいてもよい。
【0057】
また、例えば、放送通信連携受信装置6がアプリケーションの実行時にその都度アプリケーションを通信から取得する場合(オンザフライで取得する場合)、受信する放送波に多重化された情報をもとにして、アプリケーションサーバ51等のサービス事業者サーバ群5にアプリケーションの要求を行う(S1)。そして、サービス事業者サーバ群5において、アプリケーションサーバ51は、放送通信連携受信装置6からの要求により、アプリケーションの保存場所を放送通信連携受信装置6に知らせるとともに、アプリケーションを送信する(S4)。そして、放送通信連携受信装置6は、アプリケーションがダウンロードされたら、アプリケーションを起動・実行して、コンテンツ配信サーバ53等のサービス事業者サーバ群5にコンテンツを要求し(S1)、コンテンツを取得する(S5)。
【0058】
[4.放送通信連携受信装置の構成]
放送通信連携受信装置6は、チューナのほか、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、メモリやハードディスク等の記憶装置と、外部との間で各種情報の送受信を行うインターフェース装置とを備え、図4に示すように、放送受信手段601と、放送信号解析手段602と、映像音声復号手段603と、データ放送復号手段604と、APL起動情報記憶手段605と、通信送受信手段606と、APL起動情報取得手段607と、リスト制御手段608と、アプリケーション制御手段609と、アプリケーション蓄積手段610と、アプリケーション取得手段611と、アプリケーションキャッシュ612と、アプリケーション実行手段613と、合成表示手段614と、を備えている。
【0059】
ここで、各手段601〜614を、図1に示す放送通信連携受信装置6の基本機能61と、放送通信連携用機能62とのいずれか一方にだけ分類するとしたら、例えば、基本機能61が、放送受信手段601と、放送信号解析手段602と、映像音声復号手段603と、データ放送復号手段604と、通信送受信手段606と、を備え、放送通信連携用機能62が、APL起動情報記憶手段605と、APL起動情報取得手段607と、リスト制御手段608と、アプリケーション制御手段609と、アプリケーション蓄積手段610と、アプリケーション取得手段611と、アプリケーションキャッシュ612と、アプリケーション実行手段613と、合成表示手段614と、を備える。ただし、これは一例であって、単純に分離できるものではない。
【0060】
放送受信手段601は、放送波により送信されるデジタル放送の放送コンテンツ(番組データ)を放送ストリームとしてアンテナATNを介して受信するものであって、一般的なデジタル放送用チューナである。この放送受信手段601は、受信・復調した放送コンテンツを放送信号解析手段602に出力する。
【0061】
放送信号解析手段602は、放送受信手段601で受信した放送コンテンツに多重化されている、映像音声ストリームと、SI(番組配列情報)と、データ放送コンテンツとを分離し、このうち映像音声ストリームを映像音声復号手段603に出力すると共に、データ放送コンテンツをデータ放送復号手段604に出力する。ここで、SIは図示しない番組表生成手段により番組表に加工され、例えばユーザがリモコン等からなる操作入力手段620を操作したときに、合成表示手段614を介して、出力手段630に提示される。なお、放送信号解析手段602は、操作入力手段620からのチャンネル切替指示により提示するチャンネルを切り替えることができる。ここで、出力手段630は、映像および音声を提示するものであって、例えば液晶ディスプレイ等の表示モニタやスピーカ等からなる。
【0062】
映像音声復号手段603は、放送信号解析手段602で分離された映像音声ストリームを復号するものである。この映像音声復号手段603は、映像・音声が例えば、MPEG2の符号化方式によって符号化されている場合は、MPEG2の復号を行い表示可能な出力形式の映像・音声データとして、合成表示手段614へ出力する。
【0063】
データ放送復号手段604は、放送信号解析手段602で分離されたデータ放送コンテンツを復号するものであって、データ放送のデータカルーセル方式により伝送されるモジュールからファイルを抽出する機能と、データ放送コンテンツを閲覧するためのBMLブラウザ機能とを備えている。データ放送復号手段604は、復号したデータ放送コンテンツを合成表示手段614へ出力する。
【0064】
また、本実施形態では、データ放送復号手段604は、データカルーセル方式により伝送される特定モジュールからAPL起動情報ファイルを抽出し、APL起動情報記憶手段605に格納することとした。この意味で、本実施形態では、データ放送復号手段604は、アプリケーション起動情報抽出手段として機能する。すなわち、データ放送復号手段604は、放送ストリームに多重化された制御信号から当該放送番組に連動したアプリケーションのためのAPL起動情報を抽出してAPL起動情報記憶手段605に格納する。もちろん、アプリケーション起動情報抽出手段を別に設けてもよいし、他の手段が兼ねるようにしてもよい。また、データ放送復号手段604は、APL起動情報ファイルが更新された場合、その旨をアプリケーション制御手段609に通知する。
【0065】
APL起動情報記憶手段605は、APL起動情報を記憶するものであって、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の一般的なメモリやハードディスク等の記憶装置から構成される。ここで、APL起動情報は、アプリケーションを当該放送通信連携受信装置6上で起動させるための情報であって、例えば、アプリケーションの識別子(ID)、アプリケーションの配置場所(URL等の所在アドレス)等のアプリケーションを特定するための情報、ならびに、当該アプリケーションを制御するための付加的な情報である。このAPL起動情報は、データ放送復号手段604により抽出されたものか、または、APL起動情報取得手段607により取得されたものである。
【0066】
また、本実施形態では、APL起動情報記憶手段605は、放送通信連携受信装置6上で起動中のアプリケーションの識別情報の一覧(起動アプリケーション識別情報)も記憶することとした。この起動アプリケーション識別情報は、アプリケーション制御手段609が作成する。
【0067】
通信送受信手段606は、通信ネットワークNを介して、例えばサービス事業者サーバ群5との間で通信データを送受信するものであって、例えば、通信制御ボードである。
通信送受信手段606は、アプリケーション取得手段611の制御の下、アプリケーション起動情報に基づいてアプリケーションを通信ネットワークNから通信ストリームとして受信する。
また、本実施形態では、通信送受信手段606は、通信ネットワークNから取得したアプリケーションに連動しているコンテンツがある場合、そのコンテンツを通信ネットワークNから通信ストリームとしてさらに取得することとした。
また、本実施形態では、通信送受信手段606は、後記する遅延時間量取得手段750にて取得する遅延時間量を通信ネットワークNを介して、放送局サーバ群4のいずれかのサーバに送信することとした。なお、詳細は後記する。
【0068】
APL起動情報取得手段607は、APL起動情報を、通信送受信手段606および通信ネットワークNを介して、既知のURLから取得し、APL起動情報記憶手段605に格納するものである。本実施形態では、APL起動情報取得手段607は、ユーザがアプリケーションを選択する操作を行った場合に、当該アプリケーションについてのAPL起動情報を、通信送受信手段606および通信ネットワークNを介して、既知のURLから取得し、APL起動情報記憶手段605に格納することした。
【0069】
また、APL起動情報取得手段607は、アプリケーション取得手段611からAPL起動情報書き換え指示を受けた場合、後記するように、APL起動情報記憶手段605に記憶されている該当するAPL起動情報(外部からの操作に応じたアプリケーションに関するAPL起動情報)に記載された所在アドレス(URL)を放送通信連携受信装置6内部のアプリケーション蓄積手段610におけるメモリアドレスに書き換える。この意味で、本実施形態では、APL起動情報取得手段607は、所在アドレス書換手段として機能する。もちろん、所在アドレス書換手段を別に設けてもよいし、他の手段が兼ねるようにしてもよい。なお、アプリケーション蓄積手段610は、ハードディスク等のディスク装置を示す。
【0070】
リスト制御手段608は、APL起動情報記憶手段605に格納されているAPL起動情報に基づいて、放送通信連携受信装置6にて利用可能なアプリケーションの一覧をアプリケーション一覧リスト(以下、単にリストという)として作成し、合成表示手段614へ出力する。このリスト制御手段608は、例えばレジデントアプリケーションのローンチャーにより実現することができる。なお、リスト制御手段608は、操作入力手段620からのリスト表示・選択指示により提示するリストを表示し、その選択操作を受け付けることができる。ここで、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、APIとして例えばgetRunningApplicationsを呼び出すことで、リスト制御手段608の機能(放送通信連携用機能62:図1参照)を利用することができる。
【0071】
なお、ローンチャーは、通信で取得する放送通信連携用アプリケーションではない。このローンチャーは、例えば出荷時等において、アプリケーション蓄積手段610等に予めインストールしておいてもよい。また、本実施形態では、リスト制御手段608は、放送通信連携受信装置6にて利用可能なアプリケーションのうち、バックグランド処理を行っているアプリケーションについてはリストから除外することとした。
【0072】
アプリケーション制御手段609は、アプリケーションの起動や終了などのライフサイクルを制御するアプリケーションマネージャーであって、起動制御手段710と、終了制御手段720と、蓄積管理手段730と、遅延提示制御手段740と、遅延時間量取得手段750と、を備えている。
【0073】
起動制御手段710は、アプリケーションの起動を制御するものである。
起動制御手段710は、起動させようとするアプリケーションが、デジタル放送の番組に連動した連動アプリケーションであって、そのAPL起動情報に「AUTO START」と記載されている場合、メモリにロードされているアプリケーションを起動し、スタートさせる。
起動制御手段710は、起動させようとするアプリケーションのAPL起動情報に「AUTO START」が記載されていない場合、ユーザの操作にしたがって、アプリケーションを起動させる。
起動制御手段710は、APL起動情報に「PRESENT」と記載されている場合、アプリケーションが起動前であればメモリにロードされている状態(スタンバイ)を維持し、アプリケーションが動作中であれば一時停止させ、メモリにロードされている状態(スタンバイ)とする。
【0074】
終了制御手段720は、アプリケーションの終了を制御するものである。
終了制御手段720は、APL起動情報に「DESTROY」と記載されている場合、当該APL起動情報でライフサイクルをコントロールされているアプリケーションを終了させるために必要な後処理を行った上で当該アプリケーションを終了する。
終了制御手段720は、APL起動情報に「KILL」と記載されている場合、当該APL起動情報でライフサイクルをコントロールされているアプリケーションを強制的に終了する。
終了制御手段720は、APL起動情報に「KILL ALL」と記載されている場合、当該APL起動情報でライフサイクルをコントロールされているアプリケーションに限らず、また、連動/非連動に関わらず放送通信連携受信装置6上で動作中の全アプリケーションを強制的に終了する。
終了制御手段720は、ユーザの操作にしたがって、アプリケーションを終了することもできる。
【0075】
蓄積管理手段730は、アプリケーションの蓄積に係る処理として、書込み、読込み、消去を制御するものである。蓄積管理手段730は、アプリケーション取得手段611で取得した連動アプリケーションをアプリケーションキャッシュ612に書き込む。ここで、アプリケーションキャッシュ612は、キャッシュメモリを示す。
ここで、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、APIとして例えばsaveApplicationToCache()を呼び出すことで、蓄積管理手段730の機能(放送通信連携用機能62:図1参照)を利用することができる。
【0076】
また、蓄積管理手段730は、アプリケーションがアプリケーションキャッシュ612に格納されているか検索する。なお、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、APIとして例えばqueryApplicationInCache()を呼び出すことで、蓄積管理手段730の機能(放送通信連携用機能62:図1参照)を利用することができる。
【0077】
また、蓄積管理手段730は、アプリケーションキャッシュ612にアプリケーションが格納されていないと判断した場合、アプリケーション取得手段611を制御して当該アプリケーションを取得することした。なお、蓄積管理手段730は、キャッシュヒットしなかった場合、アプリケーションが格納されていないと判断し、キャッシュヒットした場合、アプリケーションが格納されていると判断する。
【0078】
遅延提示制御手段740は、放送受信手段601で受信した放送ストリームを出力手段630に通常提示しているときに外部からの操作または外部からの制御信号を契機とした所定のタイミングで、同期制御の開始を合成表示手段614に指示するものである。ここで、同期制御とは、いわゆる遅延制御のことであり、放送ストリームを当該放送通信連携受信装置6において通常提示しているときの提示時刻よりも遅延させる制御を指す。つまり、遅延提示制御手段740は、遅延制御の開始を合成表示手段614に指示することで、放送ストリームを遅延提示させる。
【0079】
本実施形態では、遅延提示制御手段740は、同期制御の開始をする所定のタイミングの一例として、放送ストリームに多重化されている制御信号を契機とすることとした。この場合、放送通信連携受信装置6は、放送ストリームに多重化されている制御信号に含まれるAPL起動情報ファイル(APL起動情報)を取得し、当該取得したAPL起動情報に基づいて、アプリケーションを取得する。したがって、遅延提示制御手段740は、通信送受信手段606によりアプリケーションを取得した後に放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示することとした。ここで、アプリケーションを取得した後とは、当該取得されたアプリケーションが自動起動した後のタイミングも含まれる。なお、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、例えばdelayStreamPresentation()のAPIを呼び出すことで、遅延提示制御手段740の機能(放送通信連携用機能62:図1参照)を利用することができる。
【0080】
また、アプリケーションを取得した後とは、当該取得されたアプリケーションが自動起動した後に、この起動中のアプリケーションに連動したコンテンツがある場合、通信送受信手段606により当該コンテンツを取得したタイミングも含まれる。この場合、遅延提示制御手段740は、通信送受信手段606により当該コンテンツを取得したタイミングにおいて、放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示することもできる。これによれば、放送通信連携受信装置6は、アプリケーションを取得した後で、通信ネットワークからコンテンツを取得できるまでに時間を要したとしても、その間、放送ストリームを通常提示することができるので、当該装置の利用者の利便性を向上させることができる。なお、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、コンテンツ配信サーバ53にコンテンツを要求することができる。
【0081】
遅延時間量取得手段750は、遅延提示中の放送ストリームの提示時刻と、当該遅延提示を行わずに前記通常提示しているときの放送ストリームの提示時刻との差分を遅延時間量(図5(c)に示すDs)として取得するものである。本実施形態では、遅延時間量取得手段750は、合成表示手段614から遅延時間量を取得することした。また、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、例えばgetCurrentDelay()のAPIを呼び出すことで、遅延時間量取得手段750の機能(放送通信連携用機能62:図1参照)を利用することができる。なお、図5(c)に示すDsについては後記する。
【0082】
遅延時間量取得手段750で取得された遅延時間量は通信送受信手段606によって、通信ネットワークNを介して、放送局サーバ群4のいずれかのサーバに送信されて利用される。したがって、放送通信連携受信装置6が遅延時間量を予め放送局に知らせておくことで、放送局側にて利用者の利便性を向上させる対策を講じることが可能となる。なお、遅延時間量を用いた放送局の処理の概要や、遅延提示処理の流れの具体例については後記する。
【0083】
アプリケーション蓄積手段610は、アプリケーション取得手段611が外部からの操作に応じて当該放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションを取得した場合、当該操作に応じたアプリケーションを蓄積するものであって、例えば一般的なハードディスク等から構成される。このアプリケーション蓄積手段610は、デジタル放送の番組に連動していない非連動アプリケーションまたは独立アプリケーションを記憶する。アプリケーション蓄積手段610に蓄積される非連動アプリケーションは、アプリケーション取得手段611が取得した当初から非連動アプリケーションであったものと、アプリケーション取得手段611が取得した当初は連動アプリケーションであったがその動作終了後にユーザによる蓄積操作が行われて格納されたことで非連動アプリケーションになったものと、を含む。なお、非連動アプリケーションがアプリケーション蓄積手段610に蓄積された場合、APL起動情報記憶手段605に記憶されている該当するAPL起動情報は、後記するようにAPL起動情報取得手段607によって書き換えられる。
【0084】
アプリケーション取得手段611は、アプリケーション制御手段609の制御の下、通信送受信手段606および通信ネットワークNを介して、アプリケーションのAPL起動情報に記載された所在アドレス(URL)から当該アプリケーションを取得するものである。本実施形態では、アプリケーション取得手段611は、デジタル放送の番組に連動した連動アプリケーションを取得した場合、アプリケーション制御手段609の制御の下、アプリケーションキャッシュ612に当該連動アプリケーションを格納する。
【0085】
また、アプリケーション取得手段611は、外部からの操作に応じて非連動アプリケーションを取得した場合、アプリケーション制御手段609の制御の下、アプリケーション蓄積手段610に格納する。この場合、なんら特別な処理をしなければ、アプリケーション蓄積手段610に格納された非連動アプリケーションを起動しようとしてAPL起動情報記憶手段605に記憶されている該当するAPL起動情報をアプリケーション制御手段609が参照したとき、該当するAPL起動情報に記載されたアプリケーションの格納場所は、通信ネットワークNの先のURLを示していることになる。そこで、このような事態を未然に防ぐため、アプリケーション取得手段611は、APL起動情報取得手段607に対して、APL起動情報書き換え指示を出力する。これにより、アプリケーション蓄積手段610に格納された非連動アプリケーションを起動させることができる。
【0086】
アプリケーションキャッシュ612は、アプリケーション取得手段611で取得されたアプリケーションを記憶するキャッシュである。ここで、キャッシュは、記憶階層の実現手段であって、例えば半導体メモリのようなキャッシュメモリで構成される。例えば、連動アプリケーションの場合、APL起動情報記憶手段605にAPL起動情報が格納された後、当該APL起動情報で起動する連動アプリケーションがアプリケーションキャッシュ612に格納される。このとき、この連動アプリケーションのAPL起動情報は書き換える必要が無い。つまり、アプリケーションキャッシュ612は、アプリケーション蓄積手段610とは異なって、アプリケーションを記憶したときに、APL起動情報記憶手段605に格納されている当該アプリケーションのAPL起動情報において、記載されている所在アドレス(URL)の書き換えが不要な記憶手段である。
【0087】
アプリケーション実行手段613は、アプリケーションを実行するものであって、アプリケーション制御手段609の制御の下、アプリケーションキャッシュ612に格納された連動アプリケーション、または、アプリケーション蓄積手段610に格納された非連動アプリケーションを放送通信連携受信装置6上で動作させる。このアプリケーション実行手段613によって動作するアプリケーションのデータは、合成表示手段614へ出力される。
【0088】
ここで、アプリケーション実行手段613は、同時に複数のアプリケーションを実行することが可能である。この場合、同一サービスに属する複数のアプリケーションを実行したり、異なるサービスに属する複数のアプリケーションを実行したりすることができる。また、複数のアプリケーションが実行されているときに、少なくとも1つがバックグランド処理を行うアプリケーションであってもよい。
【0089】
また、アプリケーションの実行に伴って、当該アプリケーションの属するサービスにデータやコンテンツ(動画、音声、静止画)が含まれる場合、これらもサービス内で実行される。これらをアプリケーションのデータ等とよぶ。アプリケーションのデータ等は合成表示手段614へ出力される。例えば、アプリケーション実行手段613が、アプリケーションを実行した結果、装置上で動作するアプリケーションが通信ネットワークNを介してコンテンツ配信サーバ53等に映像・音声コンテンツを要求した場合、映像・音声コンテンツの通信ストリームを取得し、再生して合成表示手段614へ出力する。同様に、装置上で動作するアプリケーションが静止画等の画像データや音声データを要求して取得した場合も、合成表示手段614へ出力する。なお、アプリケーションのデータ等もアプリケーションキャッシュ612に格納される。
【0090】
合成表示手段614は、不図示の放送コンテンツ用のバッファと、通信コンテンツ用のバッファとを備え、デジタル放送番組に連動しているコンテンツを配信するコンテンツ配信サーバ53から通信送受信手段606によって通信ストリームとして受信したコンテンツ(通信ストリーム)とデジタル放送番組(放送ストリーム)とを当該放送通信連携受信装置6内で同期させる同期制御を行って出力手段630に出力するものである。
本実施形態では、合成表示手段614は、遅延時間量取得手段750からの問い合わせに応じて、遅延提示中の放送ストリームの提示時刻と、当該遅延提示を行わずに通常提示しているときの放送ストリームの提示時刻との差分を遅延時間量として通知する。
ここで、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションは、APIとして例えばgetCurrentSTC()やdelayStreamPresentation()等を呼び出すことで、放送通信連携用機能62(図1参照)としての同期制御機能を利用することができる。なお、STCはシステムタイムクロックを示す。
【0091】
また、合成表示手段614は、映像音声復号手段603から通知される映像音声データ、データ放送復号手段604から通知されるデータ放送画面(データ放送コンテンツ)、リスト制御手段608から通知されるリストデータ、アプリケーション実行手段613から通知されるアプリケーションのデータ等を合成し、画像データおよび音声データとして、出力手段630へ出力する。なお、画像データの合成は、例えば、一般的なGDC(Graphic Display Controller)で実現することができる。
【0092】
また、音声データの合成とは、例えば、一般的な野球中継番組の実況と、副音声サービスとの切り替えまたは合成処理と同様にして、映像音声復号手段603から通知される映像音声データのうちの音声データと、アプリケーションのデータ等に含まれる音声データとの一方を、ユーザの操作で切り替え可能または合成可能として出力手段630へ出力することを意味する。
【0093】
[5.遅延時間量を用いた放送局の処理の概要]
ここでは、遅延時間量を用いた放送局の処理の概要について図5および図6を参照(適宜図1および図4参照)して説明する。まず、放送局にて遅延時間量を用いてはいない例について図5を参照して説明する。図5(a)は放送局2から放送コンテンツが実際に送出された時刻の時間軸、図5(b)は放送通信連携受信装置にて同期制御をせずに放送コンテンツを提示する時刻の時間軸、図5(c)は放送通信連携受信装置にて同期制御をして放送コンテンツを提示する時刻の時間軸をそれぞれ示している。図5(d)は放送局および放送通信連携受信装置における共通の時刻(物理的な時刻)を破線で示している。なお、説明のために一例として各目盛間の時間は均等とするが、これに限られるものではない。
【0094】
ここでは、図5(a)に示すように、放送局2は、ある時刻tに、放送コンテンツのあるフレーム(以下、フレーム1という)を送出し、別の時刻tに、放送コンテンツの別のフレーム(以下、フレーム2という)を送出するものとする。
【0095】
一般に、デジタルテレビは提示時間に若干の時間遅れがあるので、図5(b)に示すように、放送通信連携受信装置6において、放送コンテンツは実際には若干遅れて提示される。このデジタルテレビの一般的な提示遅れ時間をdとし、遅れ時間dが継続するものとする。時刻t,tに遅れ時間dをそれぞれ足し合わせた時刻を時刻t,tとすると、放送通信連携受信装置6は、時刻tにフレーム1を提示し、時刻tにフレーム2を提示する。
【0096】
放送通信連携受信装置6では、通信コンテンツの方が放送コンテンツよりも遅れてやってくることが多いので、同期制御をする場合、放送コンテンツを遅らせる必要がある。例えば、図5(c)に示すように、放送通信連携受信装置6において、時刻tに「同期制御を開始せよ」という指令が出たものとする。例えば、放送通信連携受信装置6上で動作するアプリケーションがdelayStreamPresentation()のAPIを呼び出すことで、遅延提示制御手段740は、処理を実行する。そして、同期制御を行った結果の遅延時間量をDとする。例えば、アプリケーションがgetCurrentDelay()のAPIを呼び出すことで遅延時間量取得手段750は、遅延時間量Dを取得できる。図5(c)において、この遅延時間量Dが継続しているものとする。時刻t,tに遅延時間量Dをそれぞれ足し合わせた時刻を時刻t,tとすると、放送通信連携受信装置6は、時刻tにフレーム1を提示し、時刻tにフレーム2を提示する。
【0097】
また、図5(a)に示すように、放送局2にて、時刻t50に視聴者参加型クイズ番組のクイズ回答受付開始時間のフレーム(以下、フレームSという)を送出し、時刻t54にクイズ回答受付終了時間のフレーム(以下、フレームGという)を送出するものとする。例えば番組の司会がフレームSのときに「今から回答受付開始です。」とアナウンスし、フレームGのときに「ここまでで回答受付を終了します。」とアナウンスする。なお、放送局2では、フレームGのときに、回答受付を終了する旨を示すトリガ信号を制御信号に挿入した上で放送ストリームに多重化することができる。
【0098】
この場合、図5(b)に示すように、放送通信連携受信装置6が仮に同期制御を行わないとすると、時刻t51にフレームSを提示し、時刻t55にフレームGを提示するので、フレームGが提示されたときには、回答受付終了時間(時刻t54)を若干(遅れ時間d)過ぎてしまうことになる。なお、これは、デジタルテレビの一般的な提示時間の若干の時間遅れなので、実際にはごく僅かな時間幅である。
【0099】
一方、図5(c)に示すように、放送通信連携受信装置6が同期制御を行う場合、同期制御を行った結果の遅延時間量Dの分だけ放送ストリームを遅延提示する。これにより、時刻t53にフレームSを提示し、時刻t57にフレームGを提示することになる。よって、フレームGが提示されたときには、回答受付終了時間(時刻t54)から所定時間(遅れ時間d+遅延時間量D)過ぎてしまうことになる。
【0100】
そこで、本実施形態では、放送通信連携受信装置6は、遅延時間量Dの情報を予め番組提供側に通知しておくこととした。これにより、放送局は、回答受付幅を広げることができる。このときの回答受付幅を広げる例、つまり遅延時間量を放送局で用いる例について図6を参照して説明する。図6(a)は、遅延時間量を用いる放送局2から放送コンテンツが実際に送出された時刻の時間軸を示し、図6(b)は時刻を示している。
【0101】
図6(a)に示すように、放送局2は、時刻t54にフレームGを提示した後、延長時間Exまでの間に放送通信連携受信装置6から受け付けた回答を有効なものと判定することができる。放送局は、遅延時間量Dの情報を重視しつつ、遅れ時間dや他の要因等も考慮して延長時間Exを決定する。なお、ここでは、簡便のため、1台の放送通信連携受信装置6についてだけ考慮して決定するものとした。
【0102】
[6.遅延提示処理の流れの具体例]
ここでは、遅延提示処理の流れの具体例について図7を参照(適宜図4参照)して説明する。図7は、本発明の実施形態に係る放送通信連携受信装置による遅延提示処理の流れを示すシーケンス図である。ここでは、放送コンテンツが、生放送の視聴者参加型クイズ番組であるものとする。
【0103】
まず、放送局(デジタル放送送信装置)2は、放送波により、放送コンテンツを送出している(ステップS11)。放送局2は、放送ストリームの制御信号に対して、例えば番組の進行に合わせた所定のタイミングに合わせてトリガ信号を挿入して、放送コンテンツに多重化する。視聴者参加型クイズ番組の場合、例えば、回答開始のタイミングを示すトリガや、回答終了のタイミングを示すトリガがこれにあたる。
【0104】
そして、放送通信連携受信装置6は、放送受信手段601によって、アンテナATNを介して放送コンテンツを受信する(ステップS12)。なお、このとき、クイズ回答受付開始時間よりも前の状態であるものとする。そして、所定のタイミングで放送通信連携受信装置6は、遅延提示制御手段740によって、遅延提示を開始する(ステップS13)。例えば、番組開始時に、番組に連動してクイズの参加登録を促す参加登録用アプリケーションや、参加登録機能と回答送信機能とを有した回答パッドのアプリケーションが自動起動し、画面に提示されると共に、遅延提示開始のAPIを呼び出すものとする。
【0105】
また、所定のタイミングで、放送通信連携受信装置6は、遅延時間量取得手段750によって、遅延時間量を取得する(ステップS14)。例えば、回答パッドのアプリケーションが自動起動したときに、遅延提示開始のAPIと共に、遅延時間量取得のAPIを呼び出すものとする。
【0106】
そして、例えば番組の司会が「これから行うクイズに参加を希望する人は、今すぐ回答パッドの“エントリ”を選択するリモコン操作をして下さい。なお、番組進行の関係上締め切りまでの時間は30秒程度としますが、制限時間内であっても先着受け付けで定員に達し次第、締め切らせてもらいますので予めご了承下さい。」といった趣旨をアナウンスする。ここで、締め切りを繰り上げる場合があることを周知するのは、アプリケーションが遅延提示を開始しており、視聴者毎の視聴環境の相違によって遅延時間量が異なるからである。このような呼びかけに応じた視聴者が、リモコンで“エントリ”を選択する操作を行う。すると、リモコン操作をトリガとして、放送通信連携受信装置6は、遅延時間量の情報を、通信ネットワークNを介して放送局サーバ群4に送信する(ステップS15)。なお、サービス事業者サーバ群5を介在させて間接的に放送局サーバ群4に送信してもよい。また、放送局サーバ群4に直接送信する場合、会員情報サーバ等のユーザ管理サーバ42に送るようにしてもよい。
【0107】
放送局サーバ群4は、各放送通信連携受信装置6から遅延時間量の情報をそれぞれ受信し(ステップS16)、延長時間を決定し(ステップS17)、決定した延長時間情報を、通信ネットワークNまたは専用線を介して放送局(デジタル放送送信装置)2に送信する(ステップS18)。ここで、放送局サーバ群4に含まれるサーバのいずれかは、放送局と各視聴者とを橋渡しして、複数の放送通信連携受信装置6から、例えば30秒間といった所定期間内に個別に取得した遅延時間量の最大値または平均値を、当該複数の放送通信連携受信装置6に共通する延長時間として決定する。
【0108】
この延長時間は、例えば視聴者参加型のクイズ番組の回答制限時間に対する延長時間として用いることができる。この場合、遅延時間量を通知してきた多数の参加者の間の不公平感を低減することができる。ここで、遅延時間量の最大値を延長時間として決定する場合、回答制限時間に対して満足しない参加者を最大限に減らすことができる。また、遅延時間量の平均値を延長時間として決定する場合、各参加者からの情報が集まってき次第、それまでに収集した遅延時間量の平均値を暫定的に容易に決定できるので、クイズ参加者が多数の場合でも延長時間を素早く決定でき、生放送等の番組を迅速に進行することができる。
【0109】
放送局(デジタル放送送信装置)2は、通信ネットワークNまたは専用線を介して延長時間情報を受信し(ステップS19)、取得した延長時間情報を制御信号に付加し(ステップS20)、制御信号を多重化し(ステップS21)、放送波により放送コンテンツを送出する(ステップS22)。具体的には、放送局2は、放送ストリームの制御信号に対して、例えば回答開始のタイミングを示すトリガを挿入するときに当該制御信号に延長時間情報も合わせて挿入する。これにより、回答終了のタイミングを延長して回答ウィンドウを広げる対策をしていることを放送通信連携受信装置6に通知することができる。
【0110】
ここで、放送通信連携受信装置6において、回答パッドのアプリケーションが例えば回答終了が近づくにつれて、「残りは5秒、4秒、3秒、…」のように合成音声やポップアップ表示等によりカウントダウンすることができる場合を想定する。延長時間情報を取得していない受信機の場合、通信ストリームの遅延が大きいと、回答終了のタイミングを示すトリガが挿入された制御信号が多重化された放送コンテンツを受信したきに、カウントの途中であっても強制的に終了させてしまう。しかし、延長時間情報を取得している放送通信連携受信装置6であれば、回答終了のタイミングを示すトリガが挿入された制御信号が多重化された放送コンテンツを受信したとしても、事前に受信した延長時間情報に合わせて、回答パッドのアプリケーションがカウント間隔を微調整しつつ、最後までカウントアップを続けるようにすることも可能である。
【0111】
また、放送局2は、放送局サーバ群4から取得した延長時間情報を視聴者に対するメッセージの形式として送るようにしてもよい。例えば、図6(a)に示す例において、放送局2は、時刻t50にフレームS(クイズ回答受付開始時間のフレーム)を提示するときに、併せて「放送通信連携受信装置6個別のネットワーク事情を考慮して放送中の回答締め切り時間から延長時間Exだけ回答ウィンドウを広げています」のような字幕を付加するようにしてもよい。
【0112】
前記ステップS22に続いて、放送通信連携受信装置6は、放送受信手段601によって、アンテナATNを介して放送コンテンツを受信する(ステップS23)。例えば、画面において、放送コンテンツ(AVコンテンツ)上で司会者からクイズが出題される場面の映像が表示されると共に、画面提示された回答パッド(アプリケーション)に回答候補が3択で表示される。視聴者(クイズ参加者)が、クイズの回答時間内にリモコンで回答を選択する。これにより、放送通信連携受信装置6は、選択肢から選択された回答の情報を通信ネットワークNを介して放送局サーバ群4に送信する(ステップS24)。
【0113】
放送局サーバ群4は、放送通信連携受信装置6から通信ネットワークNを介して回答を受信する(ステップS25)。なお、サービス事業者サーバ群5を介在させて間接的に放送局サーバ群4に送信してもよい。そして、放送局サーバ群4は、放送通信連携受信装置6から、クイズの回答を受け付けたときに、実時間での受付時間が延長時間Ex(図6(a)参照)内であるか否かを判別する(ステップS26)。延長時間内である場合(ステップS26:Yes)、放送局サーバ群4は、放送通信連携受信装置6から受け付けた回答を有効と判定し(ステップS27)、有効時処理を実行する(ステップS28)。延長時間を過ぎている場合(ステップS26:No)、放送局サーバ群4は、受け付けた回答を無効と判定し(ステップS29)、無効時処理を実行する(ステップS30)。
【0114】
ここで、有効時処理では、少なくとも回答が正解か否かを判定する処理を行う。その他に、各参加者による回答結果を統計的に分析する処理や、景品の獲得権利に関する処理等を行ってもよい。
また、無効時処理は、何もしないことを含む。その他に、景品の獲得権利に関する必要な処理等を行ってもよい。
そして、放送通信連携受信装置6に対する各種の通知処理が必要な場合には、放送局サーバ群4は、放送通信連携受信装置6に対して通信ネットワークNを介して、有効時処理または無効時処理の応答を通知する(ステップS31)。
なお、この例では、放送局サーバ群4が遅延時間量やクイズの回答を受信するものとしたが、サービス事業者サーバ群5にて受信するようにしてもよい。
【0115】
以上により、本実施形態の放送通信連携受信装置6によれば、遅延時間量取得手段750によって、遅延提示中の放送ストリームの提示時刻について本来の提示時刻(通常提示中の放送ストリームの提示時刻)からの遅延時間量を取得することができるので、当該装置6の内部で放送ストリームを通信ストリームよりも遅延させて同期させたときに想定される不具合を未然に防止し、当該装置6の利用者の利便性を向上させることができる。
【0116】
また、放送通信連携受信装置6は、遅延時間量を事前に放送局に通知することができるので、放送局が例えば視聴者参加型のクイズ番組のように番組進行に合わせた時刻管理を必要とする番組を提供するときに、複数の放送通信連携受信装置6の間で異なる遅延時間量を考慮して各視聴者が不利益を被らない対策を講じることが可能となる。その結果、放送通信連携受信装置6の利用者の利便性を向上させることができる。
【0117】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放送通信連携受信装置6は、チューナを備えた一般的なコンピュータを、前記した各手段として機能させるプログラムにより動作させることで実現することができる。このプログラム(放送通信連携受信装置のアプリケーション実行制御用プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、DVDやCD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0118】
また、本実施形態の放送通信連携受信装置6では、視聴者がデジタル放送番組を視聴中に、「AUTO START」と記載されたAPL起動情報を受信したときにアプリケーションを自動起動させるものとして説明したが、さらに、次の(1)や(2)の機能を追加してもよい。
(1)デジタル放送の提示中に、リモコンに予め設けられたHボタン(放送通信連携サービス画面移行ボタン)をユーザが押下操作することで放送通信連携サービス画面に遷移する。
(2)BMLから放送通信連携サービス画面に遷移するための放送通信連携サービス画面遷移専用APIを新たに設けて用意しておく。デジタル放送の提示中に、リモコンに設けられたDボタン(データ放送移行ボタン)をユーザが押下操作することでデータ放送画面に遷移し、その後、データ放送画面上に、放送通信連携サービス画面遷移専用APIに対応して設けられた専用ボタンを選択する操作をユーザが行うことで、放送通信連携サービス画面に遷移する。
【0119】
また、本実施形態では、放送コンテンツの送信側において、データカルーセル方式により伝送される特定モジュールで、APL起動情報ファイルを伝送することとして説明したが、放送でAPL起動情報を送る場合、イベント情報テーブル(EIT:Event Information Table)に、APL起動情報のための記述子を追加して伝送するようにしてもよいし、APL起動情報のための専用のエレメンタリストリーム(ES:Elementary Stream)を放送TS(Transport Stream)に多重化してもよいし、あるいは、APL起動情報の所在アドレスを示す情報だけを伝送するようにしてもよい。さらには、放送ではなく、通信ネットワークからAPL起動情報ファイルを伝送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 放送通信連携型システム
2 放送局(デジタル放送送信装置)
4 放送局サーバ群
41 コンテンツ管理サーバ
42 ユーザ管理サーバ
43 コンテンツ配信サーバ
44 放送局サービスサーバ
45 DB
46 API
5 サービス事業者サーバ群
51 アプリケーションサーバ
52 サービスサーバ
53 コンテンツ配信サーバ
54 DB
55 API
6 放送通信連携受信装置
61 基本機能
62 放送通信連携用機能
63 API
64 アプリケーション(放送通信連携用アプリケーション)
601 放送受信手段
602 放送信号解析手段
603 映像音声復号手段
604 データ放送復号手段(アプリケーション起動情報抽出手段)
605 APL起動情報記憶手段
606 通信送受信手段(通信送信手段、通信受信手段)
607 APL起動情報取得手段
608 リスト制御手段
609 アプリケーション制御手段
610 アプリケーション蓄積手段
611 アプリケーション取得手段
612 アプリケーションキャッシュ
613 アプリケーション実行手段
614 合成表示手段(遅延時間出力手段)
620 操作入力手段
630 出力手段
710 起動制御手段
720 終了制御手段
730 蓄積管理手段
740 遅延提示制御手段
750 遅延時間量取得手段
ATN アンテナ
N 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送を受信して映像および音声を提示するための出力手段に出力すると共に当該装置上で動作するアプリケーションを通信ネットワークから取得する放送通信連携受信装置であって、
デジタル放送の放送波により送信される放送番組を放送ストリームとして受信する放送受信手段と、
前記放送番組に連動した前記アプリケーションを起動させるためのアプリケーション起動情報を記憶するアプリケーション起動情報記憶手段と、
前記アプリケーション起動情報に基づいて前記アプリケーションを通信ネットワークから通信ストリームとして受信する通信受信手段と、
前記通信ストリームと前記放送ストリームとを当該装置内で同期させる同期制御を行って前記出力手段に出力する合成表示手段と、
前記受信した放送ストリームを通常提示しているときに外部からの操作または外部からの制御信号を契機とした所定のタイミングで、前記同期制御として前記放送ストリームを当該装置において通常提示しているときの提示時刻よりも遅延させる制御の開始を前記合成表示手段に指示することで、前記放送ストリームを遅延提示させる遅延提示制御手段と、
前記遅延提示中の前記放送ストリームの提示時刻と、当該遅延提示を行わずに前記通常提示しているときの放送ストリームの提示時刻との差分を遅延時間量として取得する遅延時間量取得手段と、
前記取得した遅延時間量を通信ネットワークを介して、放送局が管理するサーバに送信する通信送信手段と、
を備えることを特徴とする放送通信連携受信装置。
【請求項2】
前記放送ストリームに多重化された制御信号から当該放送番組に連動したアプリケーションのための前記アプリケーション起動情報を抽出して前記アプリケーション起動情報記憶手段に格納するアプリケーション起動情報抽出手段をさらに備え、
前記遅延提示制御手段は、前記通信受信手段により前記アプリケーションを取得した後に前記放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示することを特徴とする請求項1に記載の放送通信連携受信装置。
【請求項3】
前記通信受信手段は、前記アプリケーションに連動しているコンテンツを通信ネットワークから通信ストリームとしてさらに取得し、
前記遅延提示制御手段は、前記通信受信手段により前記コンテンツを取得したタイミングで前記放送ストリームを遅延させる制御の開始を指示することを特徴とする請求項2に記載の放送通信連携受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9359(P2013−9359A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114223(P2012−114223)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】