説明

放電ランプの始動エネルギーの評価装置

【課題】任意の放電ランプの始動エネルギーの評価のために低コストの測定システムを提供する。
【解決手段】放電電圧に比例する測定信号と放電ランプを通して流れる電流に比例する測定信号とを用いて、放電ランプにおける重畳式始動装置の始動エネルギーを測定するための評価装置において、高電圧パルスの期間中に放電ランプに注入されるエネルギーが、アナログ回路(4)とディジタル回路(5)からなる組み合わせにより適切に評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動過程中に放電ランプに印加される電圧に比例する信号と放電ランプを通して流れる電流に比例する信号とから放電ランプの始動エネルギーを評価するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプ、特に高圧放電ランプには点灯のために始動装置が接続され、始動装置が放電ランプを始動するために1つの高電圧パルスまたは高電圧パルス列を発生する。効果的な始動のためには、高電圧パルスが或る最小始動電圧UZを持たなければならない。
【0003】
高電圧パルスの測定のためには、一般に高電圧プローブおよびオシロスコープが使用される。図1に、第1の始動装置を備えた400Wの高圧ナトリウムランプにおいて発生させられる電圧UL(t)が示されている。始動電圧UZは電圧最大値(UZ=3.55kV)である。図2aは、放電ランプの電流および電圧経過と、広い時間範囲において累積されてもたらされるエネルギーとを示す。図2bには、第2の始動装置について、時間に依存した電圧UL(t)および評価される始動電圧UZ(UZ=3.96kV)が示されている。始動電圧はピーク電圧検出器によっても簡単なかつ低コストの方法で測定可能である。図3には、電圧の正の最大値の評価のための電圧検出器が示されている。測定検出のためにアナログディジタル変換器が使用される。繰り返しパルスの各パルスのピーク値を測定しようとする場合には、コンデンサを個々のパルスの間において再び放電させることが必要であり、これは、例えば高抵抗値の抵抗器によって行なわれる。更に測定検出システムは十分に大きな検出速度を持たなければならない。ピーク値検出器の信号は、始動装置のフィードバック制御のために使用することができる。
【0004】
始動を記述するための第2の測定量として、電圧崩壊中に放電に注入されるエネルギーを使用することができる。このためにオシロスコープにより電圧と一緒に電流に比例する信号が測定される。図1および図2a,bには、ランプを通して流れる(変位電流が補償された)電流IL(t)が同様に一緒に描かれている。電力が、ランプ電圧UL(t)と電流IL(t)との積として、すなわち
L(t)=UL(t)IL(t) (1)
によって算定される。時間に依存したエネルギーが、電力PL(t)の時間tについての積分によって、すなわち
【数1】

によって算定される。
【0005】
図1および図2a,bには、電力PL(t)および算定された時間に依存したエネルギーE(t)が一緒に描かれている。電圧崩壊後に電流が零に復帰したときに、エネルギーE(t)は一定の値にとどまっている。高電圧パルスは一般に或る一定の時間内に減衰するので、この時間中に注入されるエネルギーが始動エネルギーEZである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
任意の放電ランプの始動エネルギーの評価のために低コストの測定システムが提供されるべきである。この評価装置は、電子安定器または始動装置への組み込みに適しているべきである。本発明の課題は、これらの要求を満たす装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この装置は、電圧測定回路(1)と電流測定回路(2)と評価回路(4)とからなる。評価回路においては、始動エネルギーのための尺度を得るために、電流信号および電圧信号が互いに掛算され、その結果生じる電力信号が積分される。始動エネルギーを表わすこの電圧が高速のアナログディジタル変換器によって測定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は放電ランプの始動のための高電圧パルスの電圧、電流、評価された電力およびエネルギーを高い時間分解能で示すタイムチャートである。
【図2a】図2aは放電ランプの始動のための高電圧パルスの電圧、電流、評価された電力およびエネルギーを低い時間分解能で示すタイムチャートである。
【図2b】図2bは放電ランプの始動のための高電圧パルスの電圧、電流、評価された電力およびエネルギーをより高い時間分解能である特定の範囲において示すタイムチャートである。
【図3】図3は放電ランプの始動時における正のピーク電圧を評価するための構成を示す回路図である。
【図4】図4は放電ランプの始動エネルギーを測定するための構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図4は評価装置の本発明による構成を示す。系統電圧がチョークコイル(D)および始動装置(ZG)を介して放電ランプに接続されている。適切な分圧器(1)により信号電圧UUが発生される。好ましくは帰線中に挿入された適切な電流−電圧変換器(2)により、ランプを通して流れる電流に比例する信号UIが発生させられる。
【0010】
電圧信号UUおよび電流信号UIが電源電圧USと共にエネルギー評価装置(4)に接続される。電圧信号は増幅器に接続され、増幅器が閾値検出器および十分な帯域幅を有する掛算器を駆動する。閾値検出器すなわちコンパレータが、印加電圧が或る定められた閾値を上回ったときに信号を供給する。可変抵抗によって閾値が調整可能であるとよい。閾値検出器は論理モジュールに状態を与える。
【0011】
掛算器の入力には増幅された電圧信号UUのほかに電流信号UIが接続される。出力は、負荷抵抗に接続され、そして高速スイッチおよび抵抗を介して積分コンデンサに接続されている。電圧が閾値を上回った後に、論理モジュールが高速スイッチを投入し、定められた時間後に再び遮断する。この時間において、印加されている電力信号が積分され、それにより積分コンデンサには始動エネルギーに比例する信号UEZが生じる。この信号は電圧測定器によって測定可能である。始動装置は一般にパルス間隔を持ったパルス列を発生することから、個別パルスのエネルギーを測定するためには、十分に大きな検出速度を持つ測定システムを使用することが必要である。更に積分コンデンサもリセットされなければならず、これは短絡スイッチによって実現することができる。このスイッチは論理モジュールまたは測定検出システムから制御信号を得る。このために論理モジュールは、電圧が閾値を上回った後に定められた時間の間、短い持続時間を有する信号をこの短絡スイッチに与える。
【0012】
この装置は、自動的に動作し、独立に動作するシステムとして構成することができる。同様にこの評価装置を始動装置または電子安定器に組み込むことができる。この用途のためには、論理モジュールの時間を必要条件に適合させることが必要である。
【符号の説明】
【0013】
1 電圧測定回路(分圧器)
2 電流測定回路(電流−電圧変換器)
4 評価装置
D チョークコイル
ZG 始動装置
EZ 始動エネルギーに比例する信号
I 電流に比例する信号
S 電源電圧
U 電圧に比例する信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電圧に比例する測定信号と放電ランプを通して流れる電流に比例する測定信号とを用いて、重畳式始動装置により始動される放電ランプの始動エネルギーを測定するための評価装置において、高電圧パルスの期間中に放電ランプに注入されるエネルギーが、アナログ回路(4)とディジタル回路(5)からなる組み合わせにより適切に評価されることを特徴とする評価装置。
【請求項2】
評価装置が、電圧信号および電流信号から電力を評価するための回路装置を含むことを特徴とする請求項1記載の評価装置。
【請求項3】
評価装置が、電力信号の積分のための回路装置を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の評価装置。
【請求項4】
評価装置が、電力を評価するための回路装置と積分のための回路装置との間に第1のスイッチを含むことを特徴とする請求項1、2又は3記載の評価装置。
【請求項5】
評価装置が、電力信号の積分のための回路装置の出力に当該出力のリセットのために第2のスイッチを含むことを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の評価装置。
【請求項6】
評価装置が、高電圧パルスの印加を検出する装置を含むことを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の評価装置。
【請求項7】
評価装置が、電圧信号に接続され調整可能な閾電圧を超えたときに信号を出力するコンパレータを含むことを特徴とする請求項2乃至6の1つに記載の評価装置。
【請求項8】
評価装置が、高電圧パルスの検出のための装置と第1のスイッチと第2のスイッチとに接続されている論理モジュールを含むことを特徴とする請求項6又は7記載の評価装置。
【請求項9】
論理モジュールが、第1のスイッチを、高電圧パルスの検出後に直ちに投入し、定められた時間後に再び遮断することを特徴とする請求項8記載の評価装置。
【請求項10】
論理モジュールが、第2スイッチを、第1のスイッチの開路後の定められた時間後に定められた時間の間、閉成することを特徴とする請求項8又は9記載の評価装置。
【請求項11】
印加電圧値を時間的に順次測定することができる測定検出システムが接続されることを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の評価装置。
【請求項12】
評価装置が、特に高圧放電ランプの始動のために使用されることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載の評価装置。
【請求項13】
評価装置に並行してピーク電圧検出器が使用され、ピーク電圧検出器の信号が測定検出システムによって測定されることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の評価装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520583(P2010−520583A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551162(P2009−551162)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051773
【国際公開番号】WO2008/104461
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508096703)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (92)
【Fターム(参考)】