説明

放電ランプ点灯装置および照明器具

【課題】少なくともランプ電流の検出を簡易な抵抗素子で行い、抵抗素子での検出値を直接的に制御回路に入力することのできる放電ランプ点灯装置およびこの放電ランプ点灯装置を配設する照明器具を提供する。
【解決手段】放電ランプ点灯装置1は、高圧放電ランプ4のランプ電流を抵抗素子R7で相関電圧Vdに変換して検出するランプ電流検出手段5と、一定の直流電圧Vcを出力する直流電圧発生手段7と、相関電圧Vdに直流電圧Vcを重畳し、重畳後の合計電圧Vsumを出力する重畳手段8と、ランプ電圧および合計電圧Vsumによりランプ電力を演算する演算手段10と、当該ランプ電力が目標値となるようにインバータ回路3のスイッチング素子FET2,FET3のオンオフ動作を制御する制御手段11とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプを高周波点灯する放電ランプ点灯装置およびこの放電ランプ点灯装置を配設する照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の放電ランプ点灯装置において、高圧放電ランプを一定のランプ電力に維持して点灯することが行われている。ランプ電力は、例えば高圧放電ランプのランプ電流およびランプ電圧をそれぞれランプ電流検出手段およびランプ電圧検出手段で検出し、ランプ電流およびランプ電圧のそれぞれの検出値を制御回路の乗算器などで演算して求めている。ここで、高圧放電ランプのランプ電流およびランプ電圧は、インバータ回路のスイッチング素子のオンオフ動作に応じて交互に極性が変化するので、前記検出値も同じく交互に極性が変化している。また、制御回路は、駆動電源が供給されて動作し、その供給電圧が正の直流電圧であると、前記検出値の負電圧を直接的に入力して演算処理することができない。したがって、整流手段を用いて前記検出値の負電圧部分をクランプし、あるいは正電圧に変換して制御回路に入力している。
【0003】
そして、抵抗を用いて簡易にランプ電流およびランプ電圧を検出するものが提案されている。例えば、ランプ電圧に対しては、高圧放電ランプと並列的に接続された抵抗の両端間電圧を検出し、ランプ電流に対しては、高圧放電ランプとインバータ回路間に介装された抵抗の両端間電圧を検出する放電ランプ点灯装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−45795号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の放電ランプ点灯装置は、チョッパ回路および高圧放電ランプと並列接続された始動回路を備え、ランプ電流を抵抗で直流信号として検出可能であり、負電圧が制御回路(制御手段)に入力されないものである。しかし、高圧放電ランプが直流点灯用に限定されるか、あるいは、高圧放電ランプを交流点灯させるものであると、始動回路の構成が複雑になるという欠点を有する。
【0005】
交流点灯される高圧放電ランプのランプ電流を直流信号として検出しないと、抵抗でランプ電流に相関する交流電圧が検出される。そして、当該交流電圧は、整流手段を介して制御回路に入力され、交流電圧の負電圧を直接的に制御回路に入力させないことが行われている。ここで、整流手段は、例えダイオード1個であっても約0.7Vの電圧降下を生じさせるので、制御回路に入力される検出値を大きくする必要がある。すなわち、ランプ電流を検出する抵抗の抵抗値を大きくするので、当該抵抗での電力損失が大きくなるという欠点を有する。
【0006】
本発明は、少なくともランプ電流の検出を簡易な抵抗素子で行い、抵抗素子での検出値を直接的に制御回路に入力することのできる放電ランプ点灯装置およびこの放電ランプ点灯装置を配設する照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の放電ランプ点灯装置の発明は、直流電源と;スイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオンオフ動作することにより直流電源から出力された直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路と;インバータ回路から出力された高周波電圧により付勢される高圧放電ランプと;高圧放電ランプに流れるランプ電流を抵抗素子で相関電圧に変換して検出するランプ電流検出手段と;前記相関電圧の負電圧の最大値の絶対値以上であり、かつ一定の直流電圧を出力する直流電圧発生手段と;前記相関電圧に直流電圧発生手段から出力された直流電圧を重畳し、重畳後の合計電圧を出力する重畳手段と;前記合計電圧が目標値となるように少なくとも前記直流電源の出力電圧または前記スイッチング素子のオンオフ動作のいずれか一方を制御する制御手段と;を具備していることを特徴とする。
【0008】
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成は以下による。
【0009】
直流電源は、バッテリ、交流電圧を整流または平滑したもの、あるいは、これらにチョッパ回路を接続したものなどのいずれでもよい。
【0010】
直流電圧発生手段から出力される直流電圧は、重畳手段から出力される合計電圧が正電圧となるように設定される。すなわち、当該直流電圧は、高圧放電ランプに流れるランプ電流の相関電圧の最大負電圧の絶対値以上に設定される。
【0011】
「合計電圧が目標値となるように」とは、「合計電圧と目標値との差分が零になるように」であって、「高圧放電ランプに定電流が流れるように」ということを意味する。目標値は、所望のランプ電流、例えば定格ランプ電流の相関電圧とすることができる。ここで、合計電圧から重畳された直流電圧を減じた絶対値と当該相関電圧との差分が零になるようにしてもよく、合計電圧と当該相関電圧との差分が零になるようにしてもよい。後者の場合、相関電圧に直流電圧分を加味するものである。
【0012】
本発明によれば、相関電圧に一定の直流電圧が重畳されることにより、交流電圧の相関電圧が制御手段に入力されるので、整流手段を用いずに、相関電圧が入力可能となる。したがって、抵抗素子の抵抗値を小さくしても相関電圧を検知できるので、抵抗素子での電力損失を小さくできる。そして、高圧放電ランプは、定電流が流れるように点灯制御される。
【0013】
請求項2に記載の放電ランプ点灯装置の発明は、直流電源と;スイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオンオフ動作することにより直流電源から出力された直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路と;インバータ回路から出力された高周波電圧により付勢される高圧放電ランプと;高圧放電ランプに流れるランプ電流を抵抗素子で相関電圧に変換して検出するランプ電流検出手段と;高圧放電ランプのランプ電圧を検出するランプ電圧検出手段と;前記相関電圧の負電圧の最大値の絶対値以上であり、かつ一定の直流電圧を出力する直流電圧発生手段と;前記相関電圧に直流電圧発生手段から出力された直流電圧を重畳し、重畳後の合計電圧を出力する重畳手段と;ランプ電圧検出手段により検出されたランプ電圧および重畳手段から出力された合計電圧により、高圧放電ランプのランプ電力を演算する演算手段と;演算手段により演算されたランプ電力が目標値となるように少なくとも前記直流電源の出力電圧または前記スイッチング素子のオンオフ動作のいずれか一方を制御する制御手段と;を具備していることを特徴とする。
【0014】
演算手段により演算される高圧放電ランプのランプ電力は、ランプ電圧検出手段により検出されたランプ電圧および重畳手段から出力された合計電圧を演算した電力値であってもよく、この電力値から前記ランプ電圧および重畳された直流電圧を演算した電力値を減じた電力値としてもよい。
【0015】
「演算手段により演算されたランプ電力が目標値となるように」とは、「ランプ電力と目標値との差分が零になるように」であって、「高圧放電ランプが定電力で点灯するように」ということを意味する。目標値は、所望のランプ電力、例えば定格ランプ電力の相関電圧とすることができる。
【0016】
本発明によれば、相関電圧に一定の直流電圧が重畳されることにより、交流電圧の相関電圧が制御手段に入力されるので、整流手段を用いずに、相関電圧が入力可能となる。したがって、相関電圧の電圧値を小さくすることができ、抵抗素子の抵抗値を小さくできる。そして、高圧放電ランプは、定電力となるように点灯制御される。
【0017】
請求項3に記載の放電ランプ点灯装置は、請求項1または2記載の放電ランプ点灯装置において、さらに重畳手段から出力された合計電圧を増幅する増幅手段と;を具備することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、重畳手段から出力された合計電圧が増幅されて大きくなるので、ランプ電圧検出手段により検出されたランプ電圧との演算処理が行いやすくなる。
【0019】
請求項4に記載の照明器具の発明は、請求項1ないし3いずれか一記載の放電ランプ点灯装置と;高圧放電ランプを配設している照明器具本体と;を具備していることを特徴とする。
【0020】
放電ランプ用点灯装置は、照明器具本体に配設されてもよく、照明器具本体と別置であってもよい。ここで、放電ランプ用点灯装置は、放電ランプ点灯装置から高圧放電ランプが取り除かれたものをいう。
【0021】
本発明によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の放電ランプ点灯装置を有する照明器具が提供される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1および請求項2の発明によれば、高圧放電ランプのランプ電流を検出する抵抗素子の抵抗値を小さくできるので、抵抗素子での消費電力を低減することができ、省電力化を図ることができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、高圧放電ランプのランプ電流の相関電圧および重畳された直流電圧の合計電圧を増幅して大きくすることにより、ランプ電圧検出手段により検出されたランプ電圧との演算処理を行いやすくすることができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の放電ランプ点灯装置を有する照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0026】
図1ないし図3は、本発明の第1の実施形態を示し、図1は放電ランプ点灯装置の概略回路図、図2は高圧放電ランプの正面図、図3は電圧波形を示し、(a)ランプ電流の相関電圧の波形図、(b)は重畳される直流電圧値、(c)は合計電圧の波形図である。
【0027】
図1において、放電ランプ点灯装置1は、直流電源2、インバータ回路3、高圧放電ランプ4、ランプ電流検出手段5、ランプ電圧検出手段6、直流電圧発生手段7、重畳手段8、増幅手段9、演算手段としての演算部10および制御手段としての主制御部11を有して構成されている。
【0028】
直流電源2は、直流電圧発生回路12およびチョッパ回路13からなっている。直流電圧発生回路12は、整流装置14およびフィルター用のコンデンサC1を有してなり、商用交流電源Vsの交流電圧を直流電圧に変換して、この直流電圧をコンデンサC1の両端間に出力する。整流装置14の入力側は、コモンモードチョーク15、このコモンモードチョーク15の電源側および非電源側にそれぞれ並列的に接続されたコンデンサC2,C3を有してなるノイズフィルター回路16、ヒューズF1および電源端子17a,17bを介して商用交流電源Vsに接続されている。整流装置14の出力側の負極側は、グランドGNDに接続されている。
【0029】
チョッパ回路13は、コンデンサC1の両端間に接続されたインダクタL1、電界効果トランジスタFET1および抵抗R1の直列回路と、電界効果トランジスタFET1および抵抗R1の直列回路の両端間に接続されたダイオードD1および平滑用コンデンサC4の直列回路を有して構成されている。電界効果トランジスタFET1のゲートは、制御回路18の主制御部11に接続されている。そして、電界効果トランジスタFET1のソースおよび抵抗R1の中点Aは、主制御部11に接続されている。
【0030】
また、一端がコンデンサC1の正極側に接続され、他端が制御回路18に接続されている抵抗R2を有している。この抵抗R2は、商用交流電源Vsが投入されたときに、起動電流を制御回路18に供給する。これにより、起動時に、制御回路18が動作する。
【0031】
また、インダクタL1の二次巻線L1aの一端がコンデンサC1の負極側に接続され、他端が主制御部11に接続されている。そして、二次巻線L1aの他端および一端(コンデンサC1の負極側)間には、ダイオードD2を介して電解コンデンサC5が接続され、電解コンデンサC5の正極側が制御回路18に接続されている。電解コンデンサC5は、起動後、二次巻線L1aに流れる電流によって充電される。そして、電解コンデンサC5の充電電圧が駆動電源として制御回路18に供給される。
【0032】
制御回路18は、起動時にコンデンサC1から抵抗R2を介して正電圧の直流電圧が供給され、起動後に電解コンデンサC5から正電圧の直流電圧が供給されて動作する。
【0033】
さらに、チョッパ回路13の入力電圧は、抵抗R3および抵抗R4の直列回路によって検出され、出力電圧は、抵抗R5および抵抗R6の直列回路によって検出され、それぞれ主制御部11に入力されている。
【0034】
主制御部11は、インダクタL1の二次巻線L1aに発生する電圧に基づいて電界効果トランジスタFET1をターンオンさせ、抵抗R1に流れる電流に基づいて電界効果トランジスタFET1をターンオフさせ、さらにチョッパ回路13の入力電圧および出力電圧に基づいて電界効果トランジスタFET1をオンオフ動作させる。これにより、コンデンサC1の両端間に発生した直流電圧が昇圧され、平滑用コンデンサC4の両端間に所定の直流電圧(例えば410V)が発生する。平滑用コンデンサC4の両端間電圧は、インバータ回路3の入力電圧として出力される。
【0035】
そして、インバータ回路3は、平滑用コンデンサC4の両端間にハーフブリッジに接続されたスイッチング素子としての電界効果トランジスタFET2および電界効果トランジスタFET3の直列回路を有して構成されている。電界効果トランジスタFET2および電界効果トランジスタFET3のそれぞれのゲートは、制御回路18の主制御部11に接続されている。電界効果トランジスタFET2および電界効果トランジスタFET3のそれぞれのドレイン、ソース間には、それぞれ寄生ダイオードD3,D4が接続されている。
【0036】
電界効果トランジスタFET2および電界効果トランジスタFET3のそれぞれのゲート、ソース間には、主制御部11から駆動電圧(パルス電圧)が交互に供給される。これにより、電界効果トランジスタFET2および電界効果トランジスタFET3が交互にオンオフ動作する。このオンオフ動作により、直流電源2から出力された直流電圧は、高周波電圧に変換され、電界効果トランジスタFET3のドレイン、ソース間に出力される。電界効果トランジスタFET3のドレイン、ソース間は、インバータ回路3の出力間となっている。
【0037】
インバータ回路3の出力間には、直列的に接続された直流カット用コンデンサC6、インダクタL2および共振用コンデンサC7を有する共振回路19が接続されている。そして、高圧放電ランプ4が共振用コンデンサC7に並列的に接続されている。
【0038】
共振回路19は、電界効果トランジスタFET3のドレイン、ソース間に出力する高周波電圧により共振する。そして、高圧放電ランプ4は、共振回路19の共振作用によって点灯する。すなわち、高圧放電ランプ4の始動電圧印加時に、一対の電極4a,4b間に高電圧の共振電圧(始動電圧)が印加され、点灯時に、所定の共振電圧(点灯電圧)が印加される。こうして、高圧放電ランプ4は、インバータ回路3から出力された高周波電圧により付勢される。
【0039】
高圧放電ランプ4は、例えばランプ電圧88V、ランプ電流0.5A、ランプ電力35Wのメタルハライドランプである。このメタルハライドランプは、図3に示すように、ベース部20に一対の電極4a,4bに接続されている接続ピン21a,21bが突設されている。この接続ピン21a,21bは、図示しないランプソケットおよび出力端子を介して共振用コンデンサC7の両端間に接続されている。
【0040】
そして、ランプ電流検出手段5は、共振用コンデンサC7の一端(電界効果トランジスタFET3のソース)および高圧放電ランプ4の一方の電極4b間に介挿された抵抗素子R7により形成されている。そして、抵抗素子R7の両端間電圧が重畳手段8に入力されている。
【0041】
抵抗素子R7には、高圧放電ランプ4の一対の電極4a,4b間に放電するランプ電流が流れ、抵抗素子R7の両端間にランプ電流に応じた相関電圧が発生する。すなわち、抵抗素子R7は、高圧放電ランプ4のランプ電流を相関電圧に変換して検出する。そして、インバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3が交互にオンオフ動作することにより、抵抗素子R7に流れるランプ電流の通流方向が反転を繰り返す。この結果、抵抗素子R7で検出されるランプ電流の相関電圧Vdは、図3(a)に示すように、交流電圧となって現れる。抵抗素子R7の抵抗値は小さく、相関電圧Vdの最大値(ピーク値)も低くなっている。
【0042】
そして、ランプ電圧検出手段6は、高圧放電ランプ4の一対の電極4a,4b間に抵抗素子R7を介して接続された抵抗R8および抵抗R9の直列回路と、抵抗R9の両端間に接続されたコンデンサC8、逆流防止用のダイオードD5およびコンデンサC9の直列回路と、コンデンサC8を介して抵抗R9の両端間に接続された逆流防止用のダイオードD6を有して構成され、コンデンサC9の両端間電圧が演算部10に入力されている。抵抗R8および抵抗R9は、それぞれ高抵抗値を有している。
【0043】
抵抗R8および抵抗R9の中点Bが抵抗R9のクランドGND側より電位が低いとき、コンデンサC8は、抵抗R9の両端間に発生する電圧によりダイオードD6を介して充電される。そして、高圧放電ランプ4の電極4a,4b間の極性が反転し、中点B側が抵抗R9のグランドGND側より電位が高くなると、コンデンサC8の充電電圧と抵抗R9の両端間に発生する電圧がダイオードD5を介してコンデンサC9を充電する。以後、上述を繰り返す。こうして、コンデンサC9の両端間に高圧放電ランプ4のランプ電圧の正電圧および負電圧のそれぞれの最大値(ピーク値)の絶対値の合計電圧に相関する相関電圧からダイオードD5およびダイオードD6により電圧降下した一定の電圧が発生する。すなわち、ランプ電圧検出手段6は、高圧放電ランプ4の正負(交流)のランプ電圧を検出して、演算部10に出力する。
【0044】
直流電圧発生手段7は、バッテリ20、抵抗R10および抵抗R11の直列回路からなり、抵抗R10および抵抗R11の中点Cがインピーダンス変換回路21を介して重畳手段8に接続されている。バッテリ20は、例えば5.0Vを出力し、図3(b)に示すように、直流電圧発生手段7から一定の直流電圧Vc例えば2.5Vが出力される。直流電圧Vcの電圧値は、相関電圧Vdの負電圧の最大値(ピーク値)の絶対値以上となっている。
【0045】
重畳手段8は、ランプ電流検出手段5から出力された高圧放電ランプ4のランプ電流の相関電圧を入力する抵抗R12および重畳手段7から出力された直流電圧を入力する抵抗R13を有して構成されている。抵抗R12に相関電圧に応じた電流が流れ、抵抗R13に直流電圧に応じた電流が流れ、これらの合計電流が増幅手段9のオペアンプOP1の非反転入力端子に入力されている。
【0046】
増幅手段9は、オペアンプOP1、オペアンプOP1の反転入力端子およびグランドGND間に接続された抵抗14、さらにオペアンプOP1の反転入力端子および出力端子間に接続された抵抗R15を有して構成されている。増幅手段9は、オペアンプOP1の非反転入力端子に入力された前記合成電流に応じた電圧を例えば増幅率300%で増幅して演算部10に出力する。
【0047】
上述したように、重畳手段8は、前記合成電流をオペアンプOP1の非反転入力端子に入力することにより、ランプ電流検出手段5により検出された前記相関電圧Vdに直流電圧発生手段7から出力された直流電圧Vcを重畳(加算)し、図3(c)に示すように、重畳後の合計電圧Vsumを出力しており、増幅手段8は、当該合計電圧Vsumを増幅している。
【0048】
そして、演算部10は、ランプ電圧検出手段6から出力された高圧放電ランプ4のランプ電圧に相関する相関電圧および増幅手段9から出力された前記合計電圧Vsumの増幅電圧により、高圧放電ランプ4のランプ電力を演算するように構成されている。
【0049】
主制御部11は、各種演算処理を行うCPU、プログラムが格納されたROMおよび各種データが記憶されているRAMなどを具備している。そして、プログラムに基づいて各種演算を行うとともに、演算部10により演算された前記ランプ電力が目標値となるように、インバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3のオンオフ動作を制御するように構成されている。目標値は、演算部10により演算された前記ランプ電力が目標値と一致するときに、高圧放電ランプ4が定格ランプ電力(35W)で点灯されるように予め設定され、図示しない記憶部に記憶されている。
【0050】
なお、主制御部11は、平滑用コンデンサC4の両端間に所定の直流電圧が出力されるようにチョッパ回路13の電界効果トランジスタFET1のオンオフ動作を制御しているが、これに限らず、前記ランプ電力が目標値となるように少なくともチョッパ回路13の出力電圧またはインバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3のオンオフ動作のいずれか一方を制御するように形成されていてもよい。
【0051】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について述べる。
【0052】
商用交流電源Vsが投入されると、制御回路18は、チョッパ回路13の抵抗R2から供給される起動電流により動作開始し、その後、電解コンデンサC5の両端間電圧を駆動電源として動作する。すなわち、制御回路18は、正電圧の直流電圧が入力されて動作する。
【0053】
制御回路18は、動作開始すると、所定の初期化を行った後、インバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3を始動電圧印加時制御および点灯時制御の順序でオンオフ動作させる。これにより、インバータ回路3から出力された高周波電圧により共振回路19が共振する。高圧放電ランプ4は、一対の電極4a,4b間に始動電圧が印加されて始動し、その後、定常点灯する。
【0054】
高圧放電ランプ4の電極4a,4b間に流れるランプ電流および電極4a,4b間のランプ電圧は、電界効果トランジスタFET2,FET3のオンオフ動作に応じて、それらの極性が交互に反転する。そして、ランプ電流は、ランプ電流検出手段5の抵抗素子R7により相関電圧Vdに変換されて検出され、図3(c)に示すように、重畳手段8において一定の直流電圧Vcが重畳される。相関電圧Vdは、図3(a)に示す交流電圧であり、直流電圧Vcは、相関電圧Vdの負電圧のピーク値(最大値)の絶対値以上となっている。したがって、相関電圧Vdと直流電圧Vcの合計電圧Vsumは、正電圧となっている。また、ランプ電圧は、ランプ電圧検出手段6により、交流電圧が一定の直流電圧に変換されて検出される。
【0055】
そして、合計電圧Vsumは、増幅手段9により増幅されて、演算部10に入力される。合計電圧Vsumの値が大きくなるので、演算部10での演算が行いやすくなる。
【0056】
演算部10は、ランプ電圧検出手段6により検出されたランプ電圧に相関する電圧および増幅手段9から出力された合計電圧Vsumの増幅値により、ランプ電力を演算する。そして、主制御部11は、ランプ電力が目標値となるように、インバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数で電界効果トランジスタFET2,FET3のオンオフ動作を制御する。これにより、高圧放電ランプ4は、定格のランプ電力(35W)で点灯する。
【0057】
上述したように、重畳手段8から出力された合計電圧Vsumが正電圧となることにより、直接的に演算部10への入力が可能となっている。すなわち、正負(交流)のランプ電流が整流手段を要しないで演算部10に入力できるので、ランプ電流の相関電圧Vdは小さくてもよい。これにより、ランプ電流を検出するランプ電流検出手段5の抵抗素子R7の抵抗値を小さくすることができる。抵抗素子R7の抵抗値を小さくすることにより、抵抗素子R7での電力損失が小さくなり、省電力化が図られる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0059】
図4および図5は、本発明の第2の実施形態を示し、図4は放電ランプ点灯装置の概略回路図、図5はランプ電圧の変化を示し、(a)は音響共鳴現象の発生している状態図、(b)は読み込み値の変化図である。なお、図1および図3と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0060】
図4に示す放電ランプ点灯装置21は、図1に示す放電ランプ点灯装置1において、直流電圧発生手段7および重畳手段8に代えて、バッテリ20により直流電圧発生手段22が形成され、抵抗R16により重畳手段23が形成されている。そして、バッテリ20の正極および負極間に抵抗R16およびランプ電流検出手段5の抵抗素子R7が直列的に接続されているとともに、抵抗R16の中点Dが主制御部11に接続されている。
【0061】
制御回路18が動作すると、バッテリ20のバッテリ電圧により抵抗R16の中点Dから、図3(b)に示すように、一定の直流電圧Vcが出力される。そして、高圧放電ランプ4の電極4a,4b間に放電するランプ電流が抵抗素子R7に流れると、図3(a)に示すように、抵抗素子R7の両端間にランプ電流に相関する交流の相関電圧Vdが発生する。すると、抵抗R16の中点Dの電位が相関電圧Vd分変化する。すなわち、抵抗R16の中点Dにおいて、図3(c)に示すように、相関電圧Vdに一定の直流電圧Vcが重畳した合計電圧Vsumが発生する。この合計電圧Vsumは、主制御部11に入力される。
【0062】
主制御部11は、合計電圧Vsumが目標値となるように、インバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3の駆動周波数を演算し、当該駆動周波数で電界効果トランジスタFET2,FET3のオンオフ動作を制御する。これにより、高圧放電ランプ4は、定格のランプ電流(0.5A)が流れて点灯する。
【0063】
ここで、主制御部11は、平滑用コンデンサC4の両端間に所定の直流電圧が出力されるようにチョッパ回路13の電界効果トランジスタFET1のオンオフ動作を制御しているが、これに限らず、前記合計電圧Vsumが目標値となるように少なくともチョッパ回路13の出力電圧またはインバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3のオンオフ動作のいずれか一方を制御するように形成されていてもよい。
【0064】
抵抗素子R7で検出されたランプ電流に相関する交流の相関電圧Vdは、一定の直流電圧Vcが重畳されることにより、直接的に主制御部11に入力することができる。これにより、相関電圧Vdが小さくて済むので、抵抗素子R7の抵抗値を小さくできる。この結果、抵抗素子R7での電力損失が低減される。
【0065】
上述したように、高圧放電ランプ4の正負(交流)のランプ電流を簡易の抵抗素子R7で検出することができると共に、抵抗素子R7の抵抗値を小さくして電力損失を低減することができる。これにより、放電ランプ点灯装置21の省電力化が図られる。
【0066】
そして、ランプ電圧検出手段6Aは、高圧放電ランプ4の電極4a,4b間に抵抗素子R7を介して並列的に接続された抵抗R8および抵抗R9の直列回路、カソード側が抵抗R8および抵抗R9の中点B側となるように抵抗R9に並列的に接続されたダイオードD7を有して構成されている。そして、前記中点Bが主制御部11に接続され、抵抗R9の両端間電圧を主制御部11に入力している。主制御部11には、交流のランプ電圧の正電圧が入力される。
【0067】
主制御部11は、図5(b)に示すように、インバータ回路3の電界効果トランジスタFET2,FET3の駆動周期(オンオフ周期)の整数倍、例えば2〜3周期毎に抵抗R9の両端間電圧の例えば最大値(ピーク値)を読み込む。そして、前記2〜3周期の期間に対する抵抗R9の両端間電圧の最大値の割合を演算する。そして、当該割合が所定値以上であると、高圧放電ランプ4に音響的共鳴現象が発生していると判断して、電界効果トランジスタFET2,FET3の駆動周波数を変化させる。これにより、図5(a)に示すように、音響的共鳴現象が発生し、ランプ電圧が上昇している途中で、音響的共鳴現象の発生が解消されるようになり、通常のランプ電圧に移行していく。
【0068】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0069】
図6は、本発明の第3の実施形態を示す照明器具であり、(a)は一部切り欠き概略正面図、(b)は一部切り欠き概略側面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0070】
図6に示す照明器具24は、天井などの造営物25に設置されるダウンライトであり、略アーム状に形成された照明器具本体26が造営物25に取り付けられている。照明器具本体26は、略方物面に形成された反射鏡27を取付けていると共に、一端側26aにランプソケット28を配設している。このランプソケット28に高圧放電ランプ29が装着され、高圧放電ランプ29の発光部が反射鏡27内に位置している。高圧放電ランプ29は、例えば定格ランプ電圧90V、定格ランプ電流0.95A、定格ランプ電力70Wの高演色形メタルハライドランプである。
【0071】
そして、放電ランプ用点灯装置30が造営物25の上面に配設されている。放電ランプ用点灯装置30は、電気コード31によりランプソケット28に接続されている。放電ランプ用点灯装置30は、図1に示す放電ランプ点灯装置1において、高圧放電ランプ4が除去されたものである。
【0072】
高圧放電ランプ29から放射された光は、直接光または反射鏡27の内面で反射された反射光となって、反射鏡27の開口32から出射される。
【0073】
照明器具24は、放電ランプ用点灯装置30を具備しているので、省電力化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す放電ランプ点灯装置の概略回路図。
【図2】同じく、高圧放電ランプの正面図。
【図3】同じく、電圧波形を示し、(a)ランプ電流の相関電圧の波形図、(b)は重畳される直流電圧値、(c)は合計電圧の波形図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す放電ランプ点灯装置の概略回路図。
【図5】同じく、ランプ電圧を示し、(a)は音響共鳴現象の発生している状態の変化図、(b)は読み込み値の変化図。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す照明器具であり、(a)は一部切り欠き概略正面図、(b)は一部切り欠き概略側面図。
【符号の説明】
【0075】
1,21…放電ランプ点灯装置
2…直流電源
3…インバータ回路
4,29…高圧放電ランプ
5…ランプ電流検出手段
6,6A…ランプ電圧検出手段
7,22…直流電圧発生手段
8,23…重畳手段
9…増幅手段
10…演算手段としての演算部
11…制御手段としての主制御部
24…照明器具
26…照明器具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と;
スイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオンオフ動作することにより直流電源から出力された直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路と;
インバータ回路から出力された高周波電圧により付勢される高圧放電ランプと;
高圧放電ランプに流れるランプ電流を抵抗素子で相関電圧に変換して検出するランプ電流検出手段と;
前記相関電圧の負電圧の最大値の絶対値以上であり、かつ一定の直流電圧を出力する直流電圧発生手段と;
前記相関電圧に直流電圧発生手段から出力された直流電圧を重畳し、重畳後の合計電圧を出力する重畳手段と;
前記合計電圧が目標値となるように少なくとも前記直流電源の出力電圧または前記スイッチング素子のオンオフ動作のいずれか一方を制御する制御手段と;
を具備していることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
直流電源と;
スイッチング素子を備え、このスイッチング素子がオンオフ動作することにより直流電源から出力された直流電圧を高周波電圧に変換して出力するインバータ回路と;
インバータ回路から出力された高周波電圧により付勢される高圧放電ランプと;
高圧放電ランプに流れるランプ電流を抵抗素子で相関電圧に変換して検出するランプ電流検出手段と;
高圧放電ランプのランプ電圧を検出するランプ電圧検出手段と;
前記相関電圧の負電圧の最大値の絶対値以上であり、かつ一定の直流電圧を出力する直流電圧発生手段と;
前記相関電圧に直流電圧発生手段から出力された直流電圧を重畳し、重畳後の合計電圧を出力する重畳手段と;
ランプ電圧検出手段により検出されたランプ電圧および重畳手段から出力された合計電圧により、高圧放電ランプのランプ電力を演算する演算手段と;
演算手段により演算されたランプ電力が目標値となるように少なくとも前記直流電源の出力電圧または前記スイッチング素子のオンオフ動作のいずれか一方を制御する制御手段と;
を具備していることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
さらに重畳手段から出力された合計電圧を増幅する増幅手段と;
を具備することを特徴とする請求項1または2記載の放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の放電ランプ点灯装置と;
高圧放電ランプを配設している照明器具本体と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−12298(P2007−12298A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188102(P2005−188102)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】