説明

放電ランプ

【課題】
蛍光体層を有し、輝度が高く、光透過率が高い放電ランプを提供する。
【解決手段】
放電ランプは、放電管と、放電管内に設けられた紫外線源と、放電管内壁に塗布された蛍光体層であって、青色蛍光体として、一次粒子の集まりである二次粒子の径の一次粒子径に対する比が1.7〜2.0の範囲内であるBaMgAl1017:Eu+2を含む蛍光体層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関し、特に蛍光体層に紫外線を照射して蛍光体を励起、発光させる放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置のバックライト,小型照明装置などに冷陰極放電ランプが用いられている。ガラス管内壁上に蛍光体層を形成し、希ガスや水銀等の放電に由来する紫外光により、蛍光体を励起し、発光させる。蛍光体層は、放電ランプに用いた状態で、輝度が高く、光透過率が高いことが望ましい。
【0003】
カラー表示装置には、例えば赤、緑、青の3色発光の蛍光体が使用される。明るさだけでなく、その照明の下での色の見え方の良さすなわち効率と演色性の高さの両方が要求される。両者を共に満足させるために3波長形蛍光ランプが広く用いられている。3波長型蛍光ランプの蛍光体として、例えば、発光波長ピークが450nm付近にあり、青色に発光する2価ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム(BAM)蛍光体BaMgAl1017:Eu+2、発光波長ピークが545nm付近にあり、緑色に発光するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体LaPO:Ce,Tb,発光波長ピークが611nm付近にあり、赤色に発光するユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体Y:Euが用いられる。
【0004】
特許文献1は、粒径が小さく、真球に近い蛍光体、および緻密で均質な蛍光面をするために、平均粒径が0.5〜15μmであり、長径と短径との比が1.0〜1.5であるLn:R(LnはLa,Gd,Lu、Yの少なくとも1種、Rはランタニド族の少なくとも1種)の組成式で表される透明球状粒子と、0.001〜0.5重量%の割合で透明球状粒子の表面に付着し,同一構成元素を含む粒径0.2μm以下の超微粒子とを含む蛍光体を提案する。この蛍光体を、原料蛍光体をキャリアガスと共に熱プラズマ中に供給し、短時間の処理の後、熱プラズマ外に出す方法で製造するためには、得られる蛍光体と異なる付活剤濃度、2〜20μmの一次粒子径を有する造粒していない原料蛍光体を用いることが望ましいと教示する。
【0005】
原料蛍光体の二次粒子径が大きすぎる場合にも、得られる蛍光体の粒径が大きくなり、実用に適さない旨も教示する。ここで、二次粒子とは、単一粒子である一次粒子が凝集した粒子を指す。
【0006】
【特許文献1】特許第3329598号公報(特開平8−134443号公報)
【特許文献2】特開2004-206929号公報
【特許文献3】特開2003-197147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、蛍光体層を有し、輝度が高く、光透過率が高い放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1観点によれば、
放電管と、
前記放電管内に設けられた紫外線源と、
前記放電管内壁に塗布された蛍光体層であって、青色蛍光体として、一次粒子の集まりである二次粒子の径の一次粒子径に対する比が1.7〜2.0の範囲内であるBaMgAl1017:Eu+2を含む蛍光体層と、
を有する放電ランプ
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
二次粒子径の一次粒子径に対する比を1.7〜2.0の範囲内に選択することにより、高い輝度、高い透過率が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1Aは、冷陰極放電ランプの構成例を概略的に示す断面図である。ガラス管11の内面に蛍光体被膜12を形成し、ガラス管11の両端に円筒状、有底の金属電極13を配置している。ガラス管11の両端に気密に封入した導入線14の端部が金属電極13に接続される。必要に応じて、不純物ガスを吸着する金属16が金属電極13の内部に設けられる。ガラス管11の内部には、水銀及びNe−Ar混合ガスのような放電媒体が封入されている。
【0011】
図1Bは、蛍光体被膜12の構成を概略的に示す。赤(R),緑(G),青(B)の蛍光体粒子21が分布している。各蛍光体は、蛍光体メーカにおける製造時に、ガラス状の塊である焼結体を粉状の蛍光体にするため粉砕機やホモジナイザ、ボールミキサ等による粉砕(分散)処理を受ける。この分散処理により、適度に分散された状態の蛍光体粒子を得るが、この際BAM粒子の表面構造が壊れやすく、物理的ダメージを受けて発光効率が低下するとされている。このため、蛍光体メーカは完全に分散させず、ある程度凝集の強い状態でBAMを納品している。ユーザは各蛍光体にバインダを混合し、スラリーとし、ガラス管に塗布する。発明者は、混合処理においてはボールを用いず、回転台で容器を回転させて混合処理を行った。この混合処理においては、蛍光体粒子は物理的ダメージを受けないと考えられる。スラリー塗布後、必要に応じてベーキングなどの処理を行い、蛍光体粒子が分布した蛍光体膜を形成する。バインダは消失し、完成後のランプにはバインダは存在しない。
【0012】
稼動時には、放電により生じた紫外(UV)光23が、蛍光体粒子21に入射する。入射UV光23によって励起された蛍光体21が蛍光24を発する。蛍光24が、ガラス管11を透過して、外部に導出される。蛍光体粒子21は凝集し易い性質を有する。凝集すると、励起光、発光を透過しにくくなるので、透明バインダ物質22中に分散配置されていることが好ましいと考えられる。蛍光体粒子21の分散配置には、蛍光体粒子21の粒度分布が影響すると考えられる。本発明者は、蛍光体粒子の一次粒子径に対する二次粒子径が外部効率に影響すると考えた。
【0013】
単一粒子の径である一次粒子径D1は、空気透過法(例えば圧力も変化させたブレーン法、特にフィッシャー社製測定機によるフィッシャー法で求めるフィッシャー径)により測定できる。一次粒子が凝集した凝集体の径である二次粒子径D2は、レーザ法によるD50値として測定できる。二次粒子径D2の一次粒子径D1に対する比R=D2/D1が小さいほど、高分散の状態と呼ぶ。比Rが大きいほど、凝集が強いことを示す。一般的に蛍光体は、分散処理により物理的ダメージを受け、蛍光強度が低下すること、一次粒子径が大きいほど、蛍光強度が大きくなることが知られている。
【0014】
青色蛍光体BAMの標準品rは、一次粒子径2.8μm、二次粒子径6.0μmであり、二次粒子径の一次粒子径に対する比はR=6.0/2.8=2.1(2.14)であった。なお、一次粒子径はメーカでの空気透過法による測定値、二次粒子径は出願人によるレーザ法の測定値である。測定精度から、有効数字は2桁とする。標準品とは二次粒子径/一次粒子径(=R)の異なるサンプルを準備した。一次粒子径D1が標準品と同じ2.8μmであり、二次粒子径D2が5.7μm、比R=D2/D1=2.0(2.03)であるBAMのサンプルs1を準備した。二次粒子径は出願人によるレーザ法の測定値である。緑色蛍光体LaPO:Ce,Tb,赤色蛍光体Y:Euは同一とし、青色蛍光体として標準品BAMrを用いたランプと,青色蛍光体としてサンプルs1を用いたランプとを作成した。
【0015】
図2Aは、サンプルs1を用いたランプと、標準品rを用いたランプとに関し、蛍光体膜厚を変化させたときの出力輝度を示す。サンプルs1を用いたランプは、膜厚約20μmから約37μmの領域で、標準品rを用いたランプより高い輝度を示し、最大約4.5%の輝度向上を示した。一次粒子径が同じ場合、2次粒子径を2.1から2.0に下げることにより、約4.5%の輝度向上が可能になった。
【0016】
さらに、一次粒子径D1が3.7μm、二次粒子径D2が7.0μm、比R=D2/D1=1.9(1.89)のBAMサンプルs2を準備できた。一次粒子径はメーカでの空気透過法による測定値、二次粒子径は出願人によるレーザ法の測定値である。一次粒子径が異なるが、サンプルs2を用いたランプも作成し、輝度を測定した。
【0017】
図2Bは、サンプルs2を用いたランプの輝度を標準品rを用いたランプの輝度と比較して示すグラフである。サンプルs2を用いたランプは、膜厚約19μmから約36μm以上の領域において,標準品rを用いたランプより高い輝度を示した。輝度の向上は明らかであるが、一次粒子径が異なるので単純に比較することはできない。
【0018】
別のメーカにより更に種々のBAMサンプルを準備した。
【表1】

【0019】
なお、一次粒子径はメーカでの空気透過法による測定値、二次粒子径は出願人によるレーザ法の測定値である。
【0020】
図3は、これらのBAMサンプルで単色の蛍光体塗布層を形成し、単色蛍光体塗布膜の輝度を測定した結果を示す。標準品r11の輝度が膜厚16.8μmで最大値137cd/mであった。標準品r11と同等の一次粒子径3μm前後のサンプルs11、s12、s13を見ると、最大輝度はサンプルs11(R=1.4)では膜厚10.7μmで134cd/m、サンプルs12(R=1.5)では膜厚14.1μmで136cd/m、サンプルs13(R=3.3)では膜厚24.9μmで132cd/mであった。輝度の観点から見ると、比Rが1.4、1.5および3.3はあまり良くないと考えられる。
【0021】
一次粒子径が4μm前後のサンプルs21、s22、s23は、全体的に一次粒子径が3μm前後のサンプルs11、s12、s13より高い最大輝度を示すようである。一次粒子径は大きいほど輝度が高くなるとの一般的知見に合致する。
【0022】
更に詳しく見ると、サンプルs21(比R=1.3)は、膜厚10.8μmで輝度141cd/m、サンプルs22(比R=1.7)は膜厚15.8μmで輝度144cd/m、と標準品r11を越える輝度を示した。サンプルs23(R=3.8)では、膜厚36.8μmで輝度136cd/mであった。輝度の観点から、比R=1.3,1.7は良好な結果をもたらすと考えられる。比R=3.8はあまり良くないと考えられる。
【0023】
図4は、これら蛍光体塗布膜の透過率を測定した結果を示す。透過率が低ければ、蛍光体で発光した光が充分外部に取り出せないことになる。横軸が膜厚を単位μmで示し、縦軸が可視領域ほぼ中央の波長550nmでの光透過率を単位%で示す。各曲線に付した符号は、図3と同じサンプルの符号である。膜厚が厚くなると、透過率が指数関数的に低下するのは、吸収のある膜の透過率の一般的な特性である。標準品r11の特性より高い透過率を示すのは、高透過率から並べて、s23(比R=3.8)、s13(比R=3.3)、s22(比R=1.7)である。標準品より透過率が低くなるのが、s12(比R=1.5)、s21(比R=1.3)、s11(比R=1.4)である。サンプルs11〜s23に関しては、若干の乱れはあるが、全体的に二次粒子径の一次粒子径に対する比R=D2/D1が減少すると共に透過率が減少している。標準品r11(比R=2.1)の透過率はサンプルs12(比R=1.5)と同等程度である。透過率の観点からは、二次粒子径の一次粒子径に対する比R=D2/D1を1.7以上にすることが望ましいであろう。
【0024】
これらの結果を総合すると、蛍光体の発光から得られる輝度、外部取り出し効率の観点から、BAM蛍光体の二次粒子径の一次粒子径に対する比R=D2/D1は1.7〜2.0の範囲に設定することが好ましい。
【0025】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。種々の変更、改良、組み合わせなどが可能なことは、当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1A,1Bは、冷陰極放電ランプの構成を概略的に示す断面図、その一部拡大図である。
【図2】図2A,2Bは、青色蛍光体BAMのみ、二次粒子径の一次粒子径に対する比Rを標準品rより小さくし、緑色蛍光体、赤色蛍光体は同一の蛍光体を用いたサンプルs1、s2の膜厚に対する輝度を、標準品rの輝度と対比して示すグラフである。
【図3】図3は、青色蛍光体についてのみ、標準品r11、サンプルs11〜s13、s21〜s23の膜厚に対する輝度の変化を示すグラフである。
【図4】図4は、青色蛍光体についてのみ、標準品r11、サンプルs11〜s13、s21〜s23の膜厚に対する透過率の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0027】
11 ガラス管
12 蛍光体被膜
13 金属電極
14 導入線
16 金属物質
r 標準品
s サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と、
前記放電管内に設けられた紫外線源と、
前記放電管内壁に塗布された蛍光体層であって、青色蛍光体として、一次粒子の集まりである二次粒子の径の一次粒子径に対する比が1.7〜2.0の範囲内である2価ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウムBaMgAl1017:Eu+2を含む蛍光体層と、
を有する放電ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体層が、さらに、緑色蛍光体として、セリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体LaPO:Ce,Tb,赤色蛍光体として、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体Y:Euを含む請求項1記載の放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−115467(P2007−115467A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304212(P2005−304212)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】