説明

放電材料

【課題】静電気除去機能を有する組紐、布帛で、炭素繊維又は金属メッキした合成繊維の短繊維による静電気中和機能を具備する。
低コストで取り扱いも簡単で、人間の生活、生産活動のなかで静電気障害を防止するため広く使う部材を提供する。
【解決手段】炭素繊維の短繊維を5〜40%含んだ湿式抄紙法による紙のスリットテープを合成繊維の組紐の中心部に組入れた放電組紐。静電気の帯電物が接近すると非接触でも、接触でも静電気を中和して除去する機能を具備している放電組紐。
その他 同じメカニズムで、合成繊維の布帛にコーテング、熱処理したものと、そのコーテング側に薄い布帛をラミネートした微細なホコリの出ない放電布帛。静電気を帯電した巻物や製品を包装すると、保管、放置中に静電気を中和して除去する機能を具備した放電布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体・人体に静電気が帯電し各種の障害が出たときに、物体・人体の静電気と反対イオンを大気中から集めて中和させる事により障害を軽減させるための物体・人体帯電中和用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電気は合成繊維、プラスチック、ガラスなどの不良導体ほど発生しやすく、また帯電もしやすい。したがって合成繊維編織物、不織布の生産。プラスチックフィルムの生産、スリット加工等において、ニップローラ、ガイドローラ通過時の剥離、摩擦帯電がある。また、これらの製品の巻上げによる巻締帯電も発生する。その他、人体に着用している衣類、靴などの摩擦、歩行、走行による剥離で人体帯電が発生するが、ある限界帯電に達すると静電気エネルギーにより次の現象がおこる。
製品や金属への接触による電撃ショック
電子機器の誤動作
印刷時インキ飛散(ヒゲの発生)
【0003】
上記したような静電気障害を防止するためには、発生した静電気の帯電量をすみやかに小さくし静電気が蓄積しないようにする必要がある。そして具体的に静電気を防止するする方法として次の方法が採用されてきた。
アースする方法(アース法)
静電防止剤を加工品に付着させる方法(総加工法)
吸湿性のある物質で被膜する方法(加湿方法)
除電ブロアーで反対イオンを吹きつける方法(ブロアー法)
しかし これらの方法は要求がすべて満たされないものであり、実用上不充分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は物体の生産活動時や人体の日常動作において、物体や人体の静電気帯電を中和して、帯電量を減少させ、生産の効率アップ、作業環境の改善を人体の疲労、筋肉痛、こむらかえりなどの症状を軽減させるため、放電組紐、放電布帛などの静電気帯電中和材料を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の本発明の目的は、物体・人体の静電気帯電を中和させるために物体・人体に接触する組紐・布帛の中に炭素繊維の短繊維からなる静電気中和芯材を構成してなる各種用具を提供する事にある。また、これらの用具は電源が不要で、物体・人体の必要部分に接触、非接触で取り付ける事により目的が達成されるのである。
【0006】
本発明の静電気中和芯材の特異な点は、前記したように炭素繊維または合成繊維に金属メッキした繊維の短繊維を全体の重量比5〜40%を含んだ紙テープにしたものか、水溶性アクリル系樹脂などからなるバインダーと混合してから不職布などの表面にコーテングした布帛である。これにより、静電気中和芯材が構成される。
【0007】
炭素素繊維又は合成繊維に金属メッキした繊維の短繊維は短繊維繊度が0.5〜3デニール、長さが1〜12mmのものが適用できる。
この炭素繊維又は合成繊維に金属メッキした繊維の短繊維はパルプを混合して混抄紙を作り。テープにするかまたは、バインダーに混合して、布帛表面にコーテングすることにより静電気中和芯材とすることが出来る。
この混抄紙やコーテングした静電気中和芯材は、炭素繊維又は合成繊維に金属メッキした繊維の短繊維が布帛表面から、突出しており、この突出により物体や人体の静電気と反対イオンを大気中から集めて中和させるようにしたものである。
【0008】
本発明においては、上記静電気中和芯材を組紐の中心部、又は織物や不織布の層間に配置させる事から、芯材の炭素繊維や合成繊維に金属メッキした繊維の微細なホコリが出ない。したがって,IT関係、精密機械、高級印刷などの工程の静電気中和、防止の材料や、包装材料を作ることが出来る。
【0009】
この芯材は組紐や二重布帛の中心部に存在し、表面からは見えないが、通気性があり
表層の素材を通して、静電気中和の効果がある。
【0010】
また、本発明における芯材の組紐用は混式抄紙法によって作った紙をスリットしたテープであり、炭素繊維や金属メッキを施した短繊維は安定して集束している。
布帛用は水溶性アクリル系樹脂などからなるバインダーでコーテング、熱処理したもので、水に浸けても安定している。
【0011】
図1は本発明に係る静電気除去機能を有する組紐を示す。図2は静電気除去機能を有する布帛をしめす。
【0012】
図1、図2において、1はポリプロピレン組紐の外層フイラメントヤーン、2は炭素繊維または金属繊維の表面に金属メッキを施した短繊維5〜40重量%を紙に抄込んで目付30〜100g/mの混抄紙テープであり、炭素繊維の先端が芯材の表面に突出している。
3は炭素繊維又は金属繊維の表面に金属メッキを施した繊維の短繊維がバインダーに混合されてコーテング短繊維等の混合樹脂層であり、その先端が突出している。
4はそのコーテング側にラミネートされた合成繊維フイラメント織物である。これは微細なホコリの出る紡績糸織物は不適当である。
【0013】
本発明においては、芯材2.3、の表面から炭素繊維又は合成繊維に金属メッキした繊維の短繊維の一端または両端が突出しているため、仮に帯電した物体、人体がこの紐または布帛に接近し10mm以内の非接触でも、接触でも帯電体の静電気は中和して帯電が無くなる。芯材にある静電気中和材の炭素繊維又は合成繊維に金属メッキした繊維の1本毎の突出した一端又は両端が、アンテナの役目を果しており、物体、人体の帯電イオン(+と仮定する)と反対のイオン(−イオン)が大気イオンの中から集って中和して帯電を除去する物理作用として働く。大気イオンは大気中に浮遊している帯電微粒子を総称しているものであるが、ここで物体、人体が+に帯電していると仮定すると大気中の−イオンが、放電材料の、紐、布帛の静電気中和材に含まれる炭素繊維又は金属メッキした繊維の先端に集って、イオン平衡になる。すなわち中和するのである。
【0014】
上記の繊維炭素繊維又は合成繊維に金属メッキしたの太さは出来るだけ細い方が良く、また繊維長は出来るだけ長い方が良い。イオンを集めやすいためである。具体的には繊度が0.5〜3デニール、長さが1〜15mmのものが好ましい。
炭素繊維又は合成繊維に金属メッキした金属繊維の静電気中和の除電効果については三者略同程度である。
試験条件はポリエステルフイルムを2、4、8、10KVに帯電させて35m/min
で走行させ、測定電極とフイルムの間隔を2mm、室温20℃湿度35%の時の残留電荷は次の通りである。
【0015】
【表1】

【0016】
炭素繊維は金属繊維又は金属メッキ繊維と比較し、静電気中和能力、性能は同程度であるが、錆びない、軽量、(比重は金属繊維の1/4)、安価(コスト1/2以下)、金属繊維より加工性は良好である。
金属繊維の短繊維を合成繊維と混紡して紐にした商品も市場に出ているが、紡績糸は微細なホコリの発生があり、フイルム工程、精密機械,IT機器などへの使用には適合しない。
本発明は表面が合成繊維のフイラメントヤーンで覆はれており、微細なホコリがでないのも特徴である。
【0017】
【表2】

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば長尺製品の最終製品である巻上ロールの巻締帯電を大幅に下げることが出来る。従って出荷して、次の加工(印刷、裁断など)でのトラブルを防止する事が出来る。
また、本発明によれば、織物、フイルム、紙等の長尺製品を加工する機械の中の各種ローラと製品の接触後の場所で、製品に摩擦、剥離帯電が発生しているが、放電組紐に接触又は非接触で帯電が取除かれて従業員の電撃ショックや電子機器の誤動作を防止する事が出来る。
【実施例1】
【0019】
以下、実施例により本発明を詳述する。アクリルニトリル系重合体繊維から、標準的条件により製造した短繊維繊度0,9デニール、繊維長6mmの短繊維15重量%(バインダーおよびコーテング布帛を含めた芯材全体の重量%)を水溶性アクリル系バインダーと混合し、炭素繊維をよく分散させてからボックスドクター法(箱型コーテングナイフ)により、ポリエステル不織布の片面にコーテングし、乾燥してから50℃×3分の熱処理をしてバインダーを熱架橋させた。
一方用意したポリエステル織物(タフタ)をコーテング側にラミネートした。
【0020】
こうして出来た放電布帛で、スリット加工したフイルム巻製品(直径20cm×巾30cm)を包装して24時間放置したところ、巻締耐電圧12000Vの静電気が1000Vになった。図−3参照
【実施例2】
【0021】
実施例―1と同じ炭素繊維の短繊維を使い、40重量%をパルプとバインダーと混合し、湿式抄紙法により目付50g/mの混抄紙を作り,巾10mmにスリットしてテープにした。一方組紐機により3mm太さの紐の中心部に上記混抄紙テープを挿入して芯鞘型組紐を製造した。
【0022】
こうして出来た組紐をフイルム印刷機のニップローラアウトの部分100mmフイルムから上下に5mmの所に機械巾方向に張った。図―4参照
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る放電組紐を示す外観図である。
【図2】本発明に係る放電布帛を示す外観図である。
【図3】本発明に係る放電布帛の使用時の外観図である。
【図4】本発明に係る放電組紐の使用時の外観図である。
【符号の説明】
【0024】
1:組紐の外層フイラメントヤーン
2:炭素繊維や金属メッキ繊維を混抄した紙テープ
3:不織布にコーテングした炭素繊維や金属メッキ繊維
4:炭素繊維や金属メッキ繊維
5:放電布帛
6:スリットして巻上げたフイルム(織物、紙)
7:放電布帛
8:加工中のフイルム
9:ニップローラ
10:放電組紐(上)
11:放電組紐(下)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体、人体に帯電している静電気を中和して帯電を下げるための材料であって短繊維繊度0.5〜3デニール長さが1〜12mmの炭素繊維又は合成繊維の表面に金属メッキを施した繊維5〜40重量%を紙に抄込んで、目付け30〜100g/mの混抄紙を作る。これを巾5〜20mmのテープにして紐に挿入した放電組紐。
【請求項2】
前記炭素繊維を水溶アクリル系バインダーと混合し、均一に分散してからポリエステル不織布にコーテングして熱処理し、別の織物をコーテング面にラミネートして炭素繊維を包み込んだ放電布帛。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−262622(P2007−262622A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90809(P2006−90809)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(597151390)株式会社大石コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】