説明

放電検出システムおよび放電検出方法、ウェブ材処理装置

【課題】グラビア輪転機等で発生する種々の静電気放電を監視するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】グラビア輪転機1の印刷部3で帯電し、静電気放電を起こし得る印刷用紙5、圧胴11、インキ17等の近辺にある導体で形成される構成要素、例えば、巻込み防止バー29、インキパン15、版胴13のそれぞれに設けられる1箇所の接地経路に電流計51を接続し、電流計51と通信可能に接続する放電検出装置57により、電流計51の出力値が所定の値以上の場合に静電気放電が発生したと判定し、警報装置59に警報を発するための信号を出力し、かつ、輪転機制御装置55にグラビア輪転機1を停止させるための信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア輪転機等、ウェブ材を搬送し処理を行うウェブ材処理装置に用いられる放電検出システムとその検出方法、およびウェブ材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア輪転機による印刷には、可燃性の有機溶剤を含むインキ等が使用される。この際、空気中の酸素と揮発した有機溶剤が一定の割合で存在する箇所があり、その箇所で帯電物と、帯電物との間で電位差のある導体間で静電気放電が生じると、有機溶剤に着火し、火災が発生する危険性がある。
【0003】
そのため、グラビア輪転機が設置される場所では、静電気放電による火災の発生を防止するため、対策を施す必要がある。対策には、1)帯電物を、静電気放電の発生しない電位まで除電する、2)放電の発生を検出し、警告する等の方法がある。
【0004】
このうち2)の放電の発生を検出し、警告する方法としては、静電グラビア印刷機の稼働中に、放電発生を検出し、警告するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−129030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、グラビア輪転機の稼働中には、摩擦(剥離)帯電、流動帯電、誘導帯電により帯電し、放電する可能性のあるものが多数存在する。
【0007】
図5は、グラビア輪転機1の概略を示す図である。図5は、グラビア印刷を行う部分のみが図示されているが、グラビア輪転機1は、このほか、印刷用紙を給排紙する給紙部および排紙部等からなる。
【0008】
グラビア輪転機1は、給紙部(不図示)、排紙部(不図示)、および、複数の印刷部3等からなる。各印刷部3で、各色(例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、特色等)の印刷が行われる。
給紙部(例えば、図5の左側にある)から給紙された印刷用紙5は、複数の搬送ローラ23によって、各印刷部3および印刷部3間を搬送され、この間各色の印刷が行なわれる。印刷が行なわれた印刷用紙5は、排紙部(例えば、図5の右側にある)に排紙される。
【0009】
印刷部3は、圧胴11、版胴13、インキパン15、ドクターブレード21、ファニッシャーロール19、エアシリンダー25、巻込み防止バー29等からなる。インキパン15には、各印刷部3の色のインキ17が入っている。インキ17には、有機溶剤が含まれている。版胴13には印刷用の版が巻き付けられており、版胴13に付着したインキパン15内のインキ17により、版胴13と圧胴11の間を走行する印刷用紙5に印刷が施される。印刷用紙5のインキは、複数の搬送ローラ23に沿って搬送される間に乾燥装置27によって乾燥し、印刷用紙5は、次の印刷部3に搬送される。
【0010】
ドクターブレード21は、版胴13に余分についたインキ17をかき落し、ファニッシャーロール19は、インキパン15内で回転して、インキ17を撹拌して一様にする。エアシリンダー25は、圧胴11へかける圧力を調節し、走行する印刷用紙5に一様な圧力がかかるようにする。巻込み防止バー29は、印刷用紙5の版胴13への巻込みを防止するもので、圧胴11と版胴13の間に設けられる。
印刷用紙5は、紙、セロハン、OPP(biaxial oriented polypropylene:二軸延伸ポリプロピレン)、PET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン等のウェブ状部材である。
【0011】
グラビア輪転機1の稼働中には、静電式であるか否かに関わらず、印刷用紙5や圧胴11等では摩擦(剥離)帯電、インキ17では流動帯電による帯電が起こり、また、それらの帯電物付近にある浮遊導体では誘導帯電による帯電が起こり、放電の可能性がある。すなわち、帯電して放電する可能性のある部品が多く存在する。
【0012】
一方、特許文献1に示された方法は、静電グラビア印刷機を対象とする。静電グラビア印刷機は、帯電装置によって圧胴11を帯電させることにより、版胴13のセルについたインキ17を盛り上がらせて、印刷用紙5へのインキの着肉を向上させるものであり、特許文献1に示された方法は、高電圧が印加される電流路における静電気放電を電流量から検出するものである。
【0013】
特許文献1の方法では、静電グラビア印刷の稼働時にのみ静電気放電を検出でき、静電グラビア印刷ではない通常のグラビア印刷の稼働時に、摩擦帯電した圧胴から放電が発生した場合などでは、放電を検出できないという問題がある。また、静電グラビア印刷の稼働時であっても、上記電流路以外の箇所で発生する放電については検出できないという問題もある。
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、グラビア輪転機等で発生する種々の静電気放電を監視するシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するための第1の発明は、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置に用いられる放電検出システムであって、前記ウェブ材処理装置の導体で形成される構成要素に1箇所設けられ前記ウェブ材処理装置の静電気放電の際に電流が流れる第1の接地経路に配置される、前記第1の接地経路に流れる電流を計測するための電流計測装置と、前記電流計測装置と通信可能に接続し、前記電流計測装置から送信された、前記電流計測装置で計測した電流に対応する出力データの値に基づき静電気放電の有無を判定する放電検出装置と、を具備することを特徴とする放電検出システムである。
【0016】
好ましくは、前記構成要素に、前記電流計測装置の内部抵抗値よりも高い抵抗値を持つ抵抗器が配置された、第2の接地経路が更に設けられる。
また、前記放電検出装置は、前記ウェブ材処理装置の運転を制御する制御装置と通信可能に接続し、静電気放電が有りと判定した場合に、前記制御装置に前記ウェブ材処理装置の運転を停止するための信号を送信することも望ましい。
さらに、第1の発明の放電検出システムは、前記放電検出装置と通信可能に接続し、前記放電検出装置により静電気放電が有りと判定された場合に所定の警報を発する警報装置を更に具備することも望ましい。
また、前記ウェブ材処理装置により処理されるウェブ材の表面電位を計測するための表面電位計測装置を更に具備し、前記放電検出装置は、前記表面電位計測装置と通信可能に接続し、前記表面電位計測装置から送信された、前記表面電位計側装置で計測した前記ウェブ材の表面電位に対応する出力データの値に基づき、前記ウェブ材の帯電の有無を判定することも望ましい。
【0017】
第2の発明は、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置に用いられる放電検出方法であって、前記ウェブ材処理装置の導体で形成される構成要素に1箇所設けられ前記ウェブ材処理装置の静電気放電の際に電流が流れる第1の接地経路に配置される電流計測装置で、前記第1の接地経路に流れる電流を計測する工程と、前記電流計測装置と通信可能に接続する放電判定装置で、前記電流計測装置から送信された、前記電流計測装置で計測した電流に対応する出力データの値に基づき静電気放電の有無を判定する工程と、を具備することを特徴とする放電検出方法である。
【0018】
第3の発明は、第1の発明の放電検出システムが設けられた、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置である。
【0019】
上記の構成により、電流計測装置により静電気放電で発生した電流を計測し、当該電流に基づき放電の検出を行なう。種々の構成要素に接地経路と電流計を設けることで各箇所での放電検出が可能であり、グラビア輪転機等のウェブ材処理装置で発生する種々の静電気放電を監視することが可能になる。加えて、警報装置を設けたり、放電時に装置の運転を停止させることにより、放電時に適切な安全対策を施すことができる。また、表面電位によるウェブ材の帯電検出と組み合わせることで、より適切かつ迅速な安全対策が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放電検出システム2の構成を示す概略構成図。
【図2】放電検出システム2における静電気放電検出の流れを示すフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る放電検出システム2aの構成を示す概略構成図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る放電検出システム2bの構成を示す概略構成図。
【図5】グラビア輪転機1の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放電検出システム2を示す概略構成図である。放電検出システム2は、図5に例示したグラビア輪転機1に設けられる。
【0022】
前述したが、図1(a)あるいは図5に示すように、グラビア輪転機1の印刷部3は、圧胴11、版胴13、インキ17を貯留するインキパン15、ドクターブレード21、ファニッシャーロール19、圧胴用エアシリンダー25、巻込み防止バー29等からなる。また、輪転機制御装置55はシーケンサ等であり、グラビア輪転機1の運転の制御を行なうものである。
【0023】
給紙部または前段の印刷部(不図示)から供給された印刷用紙5は、搬送ローラ23aを介して図のAに示す搬送方向に搬送され、圧胴11と版胴13の間を進み、この際版胴13についたインキパン15のインキ17が印刷用紙5に圧着され、印刷される。印刷された印刷用紙5は、搬送ローラ23bを介して、次段の印刷部または排紙部(不図示)に排出される。
【0024】
放電検出システム2は、電流計51(51a、51b、51c、電流計測装置)、放電検出装置57、警報装置59等より構成される。
【0025】
電流計51は、グラビア輪転機1の稼働中に帯電し放電を起こす可能性のある用紙や、圧胴、インキ等の近辺にあり静電気放電時の放電先となりうる、グラビア輪転機1の導体で形成される構成要素について、静電気放電時に電流が流れる1箇所の接地経路を設けたうえ、その接地経路に配置する。電流計51は、放電検出装置57に通信可能に接続される。
【0026】
導体で形成される構成要素は、巻込み防止バー29や、インキパン15、版胴13等であり、例えばインキパン15の場合であれば、必要に応じてその周囲に絶縁体等を設け絶縁したうえで、1箇所のみ導線等を接続しこれを接地経路とすることができる。このようにして、巻込み防止バー29について接地53aに至る接地経路に電流計51aが、インキパン15について接地53bに至る接地経路に電流計51bが、版胴13について接地53cに至る接地経路に電流計51cが接続される。
ここで、巻込み防止バー29、インキパン15、版胴13は、電流計51a、51b、51cが接続されている接地経路以外で接地されていないようにする必要がある。他の経路で接地されていた場合には、静電気放電による電流は、電流計51の内部抵抗のある接地経路ではなく、抵抗が低い他の経路に流れてしまう可能性があり、電流計51に流れる電流が微小になり、静電気放電を検出できない場合が起こり得るからである。
【0027】
電流計51(51a、51b、51c)は、数十μA〜数百μAの電流値を計測可能で、かつ、計測した電流に応じた電圧値または電流値を出力データとして出力する機能を備える既知のものを使用することができる。
【0028】
放電検出装置57は、電流計51から出力データを受信して、これに基づき放電の有無の判定を行なうとともに、警報装置59、および輪転機制御装置55と通信可能に接続し、放電を検出した場合に所定の制御信号を警報装置59や輪転機制御装置55に送信する。
【0029】
図1(b)に示すように、放電検出装置57は、例えば、電流計51の出力データである電圧データもしくは電流データを受信し取得するデータ取得装置61と、出力データの値に基づき、静電気放電の有無を判定する放電判定装置63等により構成される。
【0030】
データ取得装置61は、例えばデータロガー等であり、電流計51、放電判定装置63と通信可能に接続される。
放電判定装置63は、例えばコンピュータ等であり、CPU、ROM、RAM等の制御部や、HDD等の記憶部、警報装置59および輪転機制御装置55と通信可能に接続する通信部、さらには表示部や入出力部等を備える。記憶部には、電流計51の出力データの(電圧または電流)値に基づき、静電気放電の有無を判定するためのプログラムやデータ、判定結果に基づき警報装置59および輪転機制御装置55に所定の制御信号を送信するためのプログラム等が格納されている。
【0031】
なお、放電検出装置57の構成はこれに限るものではない。例えばデータ取得装置61と放電判定装置63は例えば一体のコンピュータなどによりその機能が実現されていてもよい。
【0032】
警報装置59は、放電検出装置57(放電判定装置63)から送信される上記所定の制御信号に基づき、視覚的または/および聴覚的にグラビア輪転機1のオペレータ等に警報を発するもので、例えば、スピーカー装置や回転灯装置等であるが、オペレータが放電の発生を認識できるものであればよく、これらに限られることはない。
【0033】
次に、図2等を参照しながら、本実施形態の放電検出システム2による静電気放電検出の流れについて説明する。図2は、放電検出システム2による静電気放電検出の流れを示すフローチャートである。
【0034】
図2に示すように、まず、グラビア輪転機1の運転を開始する(ステップS101)。グラビア輪転機1による印刷の開始に伴い、放電検出システム2を稼働し、電流計51により接地経路の電流を計測し、放電の監視を開始する(ステップS102)。
【0035】
放電検出装置57は、計測した電流に応じて電流計51から送信、出力される電流計51の出力(電圧または電流)データに基づき、静電気放電の有無を判定する(ステップS103)。
すなわち、放電検出装置57のデータ取得装置61により取得された出力データである電圧データまたは電流データに基づき、放電判定装置63の制御部が放電の有無を判定する。
【0036】
ここで、放電判定装置63の制御部は、出力データが所定の出力値以上の場合に、静電気放電が発生したと判定する。上記所定の出力値(電圧値または電流値)は、予め放電判定装置63の記憶部等に格納しておく。
【0037】
静電気放電の有無の判定(ステップS103)において、静電気放電が発生した(ステップS103の「有り」)の場合、放電検出装置57(放電判定装置63の制御部)は、輪転機制御装置55にグラビア輪転機1を停止させるための制御信号を送信し、また、警報装置59に、警報を出力するための制御信号を送信する(ステップS110)。
【0038】
警報装置59は、視覚的または/および聴覚的にグラビア輪転機1のオペレータ等に警報を発する。すなわち、スピーカーや回転灯等を作動させる。また、輪転機制御装置55は、グラビア輪転機1の運転を停止する。
この警告に伴い、オペレータは静電気放電の発生源に対策を施し(ステップS111)、その後、再度、グラビア輪転機1の運転を再開する(ステップS101)。
【0039】
一方、静電気放電の有無の判定(ステップS103)において、静電気放電が無いと判定された場合(ステップS103の「無し」)、グラビア輪転機1の運転を継続し(ステップS104)、グラビア輪転機1による印刷物の生産が終了するまで(ステップS105のNO)、放電検出システム2により静電気放電の有無を監視しつつグラビア輪転機1を運転し印刷を継続する。
生産が終了した場合には(ステップS105のYES)、グラビア輪転機1を停止し、処理を終了する。
【0040】
以上に説明した処理の流れにより、巻込み防止バー29、インキパン15、版胴13等に1箇所設けた接地経路に接続された電流計51a、51b、51cで計測される電流により、静電気放電を検出することが可能になる。
【0041】
放電検出システム2では、グラビア輪転機1の複数の構成要素の接地経路にそれぞれ電流計51を設けていることにより、精度の高い静電気放電の検出を可能とするとともに、放電検出装置57により静電気放電の発生箇所を判定し推定することも可能である。
【0042】
例えば、電流計51a、51b、51cの出力データのいずれかのみが放電の発生を示す場合など、放電判定装置63の制御部はこれらの状況に応じて巻込み防止バー29、インキパン15、版胴13のいずれかの構成要素の近傍に静電気放電の発生箇所があると判定し、その情報を表示部に表示する、あるいはこれに応じて警報装置59により異なる警報を行なうなどして、これをオペレータに示すことにより、静電気放電の発生箇所の特定を容易に行うことが可能になり、復旧を早めることが可能になる。
【0043】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る放電検出システム2aの構成を示す概略構成図である。グラビア輪転機1の構成は、第1の実施形態に係るグラビア輪転機1と同様である。
【0044】
第1の実施形態では、グラビア輪転機1の各構成要素の唯一の接地経路に設けた電流計51により、静電気放電を検出することが可能であるが、この電流計51がはずれてしまった場合、あるいは電流計51が破損した場合には、当該電流計51が接続された導体は浮遊導体となり、放電を起こす危険性がある。
第2の実施形態に係る放電検出システム2aは、この危険性を回避するため、巻込み防止バー29、インキパン15、版胴13など、グラビア輪転機1の導体で形成される構成要素において、電流計51を接続した接地経路の他、十分に高い抵抗値の抵抗を接続した接地経路を別に設けるものである。
【0045】
すなわち、図3に示すように、巻込み防止バー29には、電流計51aが接続された接地経路の他に、電流計51aの内部抵抗よりも高い抵抗値の抵抗器52aが接続された、接地54aに至る接地経路を設ける。また、インキパン15には、電流計51bが接続された接地経路の他に、電流計51bの内部抵抗よりも高い抵抗値の抵抗器52bが接続された、接地54bに至る接地経路を設け、版胴13には、電流計51cが接続された接地経路の他に、電流計51cの内部抵抗よりも高い抵抗値の抵抗器52cが接続された、接地54cに至る接地経路を設ける。追加して設ける各接地経路は、第1の実施形態で説明した接地経路と同様の方法で設けることができる。
【0046】
抵抗器52(52a、52b、52c)としては、これらが接続された接地経路全体の漏洩抵抗が1MΩ以下になるようなものを用いることができる。例えば、当該接地経路に導電性ゴムを接続したり、または、導体部の接地箇所に導電性テフロン(登録商標)コートを施せばよい。以上の構成を採ることにより、電流計51が外れたり、破損した場合にも、巻込み防止バー29、インキパン15、版胴13などの導体による構成要素は接地されており、浮遊導体からの放電の危険性を回避することが可能になる。
【0047】
放電検出システム2aの他の構成は、第1の実施形態の放電検出システム2と同様であるので、図等には同じ番号を付し、説明を省略する。また、放電検出システム2aによる放電検出方法は、図2を用いて説明した放電検出システム2によるものと同様であるので、説明を省略する。本実施形態の放電検出システム2aでも、放電検出システム2と同様の効果が得られるとともに、当該システムがさらに安全なものとなる。
【0048】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る放電検出システム2bの構成を示す概略構成図である。グラビア輪転機1の構成は、第1、第2の実施形態に係るグラビア輪転機1と同様である。
【0049】
第3の実施形態に係る放電検出システム2bは、第2の実施形態に係る放電検出システム2aに更に表面電位計41(表面電位計測装置)を設けたものである。
【0050】
表面電位計41は、印刷用紙5の帯電に係る表面電位を検出するものであり既知のものを使用可能である。表面電位計41は、圧胴11近辺の、印刷用紙5の近傍で、かつ、印刷用紙5に接触しない位置に設けられる。表面電位計41は、放電検出装置57bと通信可能に接続される。
【0051】
放電検出装置57bには、電流計51の出力データを取得するためのデータ取得装置61、放電判定装置63のほか、表面電位計41と通信可能に接続され、表面電位計41からの出力データである、表面電位に応じた電流データもしくは電圧データを受信し取得するためのデータ取得装置65が設けられている。データ取得装置65は、放電判定装置63と通信可能に接続される。データ取得装置65は、例えばデータロガー等である。
放電検出システム2bの他の構成は、第2の実施形態の放電検出システム2aと同様であるので、図等には同じ番号を付し、説明を省略する。
【0052】
放電検出システム2bにおける放電検出方法においては、図2のステップS102で表面電位計41による印刷用紙5の表面電位の計測も開始する。
そして、ステップS103においては、放電判定装置63の制御部は、さらに、表面電位計41からの出力データである電流(電圧)データが、所定の値を上回った場合に、印刷用紙5の帯電が有りと判定し、この場合ステップS110において輪転機制御装置55にグラビア輪転機1を停止させるための制御信号を送るとともに、警報装置59に、警報を出力するための制御信号を送る。上記所定の値は、予め放電判定装置63の記憶部等に格納しておく。警報装置59は、この場合前述の放電検出の場合とは異なる警報を行なうものであってもよい。警報に伴いオペレータは用紙の除電を行なった後、グラビア輪転機1の運転を再開する。
【0053】
第3の実施形態の放電検出システム2bでは、第2の実施形態の放電検出システム2aに加え、表面電位計41を設けていることにより、複数の電流計51の出力データに基づく放電発生箇所の判定を前述したように行うことができるのに加え、更に、表面電位計41からの出力データに基づいて放電が検出された場合には、印刷用紙5の帯電が発生していると判定し、この情報を放電判定装置63の表示部に表示する、あるいはこれに応じて警報装置59により異なる警報を行なうなどして、これをオペレータに示すことにより、用紙の帯電が発生していることが認識でき、これに応じた対策を迅速に行なうことが可能になる。
【0054】
以上のように、1つまたは複数の電流計51を設置し、電流計51で接地経路の電流を計測し、当該電流に基づき放電の検出を行なう。これにより、種々の箇所での放電検出が可能となり、グラビア輪転機等のウェブ材処理装置で発生する種々の静電気放電を監視することが可能になる。加えて、警報装置を設けたり、放電時に装置の運転を停止させることにより、放電時に適切な安全対策を施すことができる。さらに、ウェブ材の表面電位による帯電検出と組み合わせることで、より適切かつ迅速な安全対策を行なうことも可能である。
また、本発明の放電検出システムはウェブ材に印刷処理を行うグラビア輪転機に適用する例を用いて説明したが、勿論適用対象はこれに限られることはなく、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うものであれば適用することが可能かつ有効であり、例えばウェブ材に対しラミネート処理を行うラミネーターやウェブ材への塗布処理を行うグラビアコーターなどにも同様に適用することが可能である。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる放電検出システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0056】
1………グラビア輪転機
2、2a、2b………放電検出システム
3………印刷部
5………印刷用紙
11………圧胴
13………版胴
15………インキパン
17………インキ
19………ファニッシャーロール
21………ドクターブレード
23………搬送ローラ
25………圧胴用エアシリンダー
29………巻込み防止バー
41………表面電位計
51………電流計
52………抵抗器
53、54………接地
55………輪転機制御装置
57、57b………放電検出装置
59………警報装置
61、65………データ取得装置
63………放電判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置に用いられる放電検出システムであって、
前記ウェブ材処理装置の導体で形成される構成要素に1箇所設けられ前記ウェブ材処理装置の静電気放電の際に電流が流れる第1の接地経路に配置される、前記第1の接地経路に流れる電流を計測するための電流計測装置と、
前記電流計測装置と通信可能に接続し、前記電流計測装置から送信された、前記電流計測装置で計測した電流に対応する出力データの値に基づき静電気放電の有無を判定する放電検出装置と、
を具備することを特徴とする放電検出システム。
【請求項2】
前記構成要素に、前記電流計測装置の内部抵抗値よりも高い抵抗値を持つ抵抗器が配置された、第2の接地経路が更に設けられることを特徴とする請求項1に記載の放電検出システム。
【請求項3】
前記放電検出装置は、前記ウェブ材処理装置の運転を制御する制御装置と通信可能に接続し、静電気放電が有りと判定した場合に、前記制御装置に前記ウェブ材処理装置の運転を停止するための信号を送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電検出システム。
【請求項4】
前記放電検出装置と通信可能に接続し、前記放電検出装置により静電気放電が有りと判定された場合に所定の警報を発する警報装置を更に具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の放電検出システム。
【請求項5】
前記ウェブ材処理装置により処理されるウェブ材の表面電位を計測するための表面電位計測装置を更に具備し、
前記放電検出装置は、前記表面電位計測装置と通信可能に接続し、前記表面電位計測装置から送信された、前記表面電位計側装置で計測した前記ウェブ材の表面電位に対応する出力データの値に基づき、前記ウェブ材の帯電の有無を判定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の放電検出システム。
【請求項6】
ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置に用いられる放電検出方法であって、
前記ウェブ材処理装置の導体で形成される構成要素に1箇所設けられ前記ウェブ材処理装置の静電気放電の際に電流が流れる第1の接地経路に配置される電流計測装置で、前記第1の接地経路に流れる電流を計測する工程と、
前記電流計測装置と通信可能に接続する放電判定装置で、前記電流計測装置から送信された、前記電流計測装置で計測した電流に対応する出力データの値に基づき静電気放電の有無を判定する工程と、
を具備することを特徴とする放電検出方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の放電検出システムが設けられた、ウェブ材を搬送し所定の処理を行うウェブ材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66433(P2012−66433A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211920(P2010−211920)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】