説明

放電灯点灯装置および照明器具

【課題】予熱モードにおいて点灯時間に応じて変化するフィラメントの状態に合わせて予熱の条件を変化させ、ランプ寿命を向上できる放電灯点灯装置および照明器具を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置10および照明器具1は、放電灯LAに交流電力を供給するスイッチング部11と、スイッチング部11の動作周波数を制御することによりスイッチング部11から放電灯LAに出力される交流電力を制御する制御部18とを備え、制御部18は、放電灯LAに有するフィラメントを予熱する先行予熱動作と、放電灯LAの点灯を維持させる定常動作の状態を切替可能であって、放電灯LAの点灯時間を計時する点灯時間計時部24を備え、点灯時間計時部24の信号に応じて制御部18が先行予熱動作の動作条件を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプ等の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交流電源を整流する整流回路と、整流回路の出力を高周波出力に変換して放電灯に供給するインバータ回路とを備える放電灯点灯装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−4688号公報(図1、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、入力電流歪が少なく、負荷への供給電流の変動を少なくできる。
ところで、特許文献1と同様に、蛍光ランプ等の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置が提案されている。
図17に示すように、このような従来の放電灯点灯装置100は、照明器具150に装備されており、蛍光灯などの熱陰極放電灯(以下、放電灯と呼ぶ)101を点灯させる。
そのため、放電灯点灯装置100は、放電灯101の両端に始動電圧を印加する前にフィラメントに塗布された電子放出物質(以下、エミッタという)から熱電子が放出しやすくするため十分に電流を流して加熱を行う。
これにより、放電灯点灯装置100は、点滅時のフィラメントへのストレスや加熱不足で起こるコールドスタートによるエミッタの飛散や蒸発を抑えて短寿命となることを回避している。
【0005】
放電灯点灯装置100は、交流電源Vinを整流する全波整流回路102と、昇圧チョッパ回路103とからなる直流電源104を備える。
放電灯点灯装置100は、直流電源104の直流出力を高周波交流出力に変換するインバータ回路105を備える。
放電灯点灯装置100は、複数のインダクタL2やコンデンサC3にて構成されインバータ回路105の高周波交流出力との共振作用によって放電灯を高周波点灯するLC共振回路106を備える。
【0006】
放電灯点灯装置100は、負荷である放電灯101に接続される負荷回路107の消費電力に応じて昇圧チョッパ回路103の動作を制御するチョッパ制御回路108を備える。
放電灯点灯装置100は、インバータ回路105の発振周波数を制御するインバータ制御回路109を備える。
放電灯点灯装置100は、トランスT1とコンデンサC7とコンデンサC8とコンデンサC9とコンデンサC10とで構成される予熱回路110を備える。
【0007】
放電灯点灯装置100は、予熱回路110においてトランスT1とコンデンサC7とで構成される予熱共振回路111を備える。
放電灯点灯装置100は、トランスT1の1次側巻線に流れる共振電流により発生する2次側巻線の電流をコンデンサC7,コンデンサC8,コンデンサC9,コンデンサC10を介して放電灯101のフィラメントに流す。
そのため、放電灯点灯装置100は、予熱共振回路111により放電灯101のフィラメントの予熱動作が行われる。
【0008】
また、放電灯点灯装置100は、インバータ制御回路109において、インバータ回路105の動作周波数を変化させる。
そして、放電灯点灯装置100は、LC共振回路106の共振作用を利用して放電灯101の両端にかかる電圧(以下、ランプ電圧という)が変化するように周波数制御が行われる。
【0009】
次に、放電灯点灯装置100の動作についてLC共振回路106の共振カーブと予熱共振回路111の共振カーブとの動作周波数の関係を説明する。
図18に示すように、放電灯点灯装置100は、予熱モードと始動モードにおいては、負荷である放電灯101の放電が開始されていないために、放電灯101のインピーダンスは無限大である。
そのため、放電灯点灯装置100は、LC共振回路106で決定する共振点fを持つ「予熱・始動時」の共振カーブとなる。
放電灯点灯装置100は、予熱モードでは、放電灯101にかかるランプ電圧を低くすることによりコールドスタートを防ぐために、共振点fよりも十分に高い周波数で動作させる必要がある。
【0010】
また、放電灯点灯装置100は、予熱電流については予熱共振回路111で決定する共振点fを持つ「予熱共振回路」の共振カーブとなる。
そのため、放電灯点灯装置100は、トランスT1の両端電圧と1次側に流れる共振電流により発生する2次巻線側の電圧と電流(以下、予熱電流という)とが、コンデンサC8,コンデンサC9,コンデンサC10を介してフィラメントに流れる。
そして、放電灯点灯装置100は、予熱を行うが、フィラメントを十分加熱するために、共振点fに、より近い周波数で動作させる必要がある。
放電灯点灯装置100は、この予熱時のランプ電圧と予熱電流との関係より、ある所定の予熱周波数で動作させ、予熱時は、ランプ電圧は低く、予熱電流は多く流すことにより十分な予熱が行われる。
【0011】
放電灯点灯装置100は、始動モードにおいて、ランプ電圧が放電を開始するために必要な十分な高電圧とする必要がある。
そのため、放電灯点灯装置100は、LC共振回路106で決定する共振点fを持つ「予熱・始動時」の共振カーブにおいて、予熱モードの周波数fから共振点fに近づくように周波数fを変化させる。
そして、放電灯点灯装置100は、周波数fで決まるランプ電圧を放電灯101に印加して放電を開始させる。
【0012】
放電灯点灯装置100は、始動モードで放電灯101が放電を開始して点灯モードになると、放電灯101の特性により放電灯101のインピーダンスが低下して放電灯101に流れる電流(以下、ランプ電流という)が増加する。
放電灯点灯装置100は、ある点灯状態では、その時点での放電灯101のインピーダンスとLC共振回路106で決まる共振点fの「点灯時」の共振カーブとなる。
そのため、放電灯点灯装置100は、所望のランプ電圧とランプ電流となるように周波数fで動作させる。
【0013】
放電灯点灯装置100は、調光時にインピーダンスが変化するため、その時点での放電灯101のインピーダンスで決まる共振点fの「調光時」の共振カーブとなる。
これにより、放電灯点灯装置100は、所望の調光状態のランプ電圧とランプ電流となるように周波数fで動作させる。
そして、放電灯点灯装置100は、インバータ制御回路109にてインバータ回路105の動作周波数を制御する。
そのため、放電灯点灯装置100は、始動時に放電灯101のフィラメント電極を予熱する予熱モードと、放電灯101を始動点灯させるための始動電圧を放電灯に印加する始動モードとを自在に切り替えできる。
そして、放電灯点灯装置100は、予熱モードと、始動モードとに加えて、放電灯101を定常点灯および調光点灯させる点灯モードへも自在に切り替えできる。
【0014】
しかし、このような従来の放電灯点灯装置100は、予熱モードと、始動モードと、点灯モードでのインバータ動作周波数が、それぞれ所定の周波数で固定されている。
放電灯点灯装置100は、点灯モードについては、放電灯101の蛍光体の劣化や照明器具150の汚れによる照度低下を考慮する。
そのため、放電灯点灯装置100は、点灯初期にランプ電流を抑えた調光状態から点灯時間に応じてインバータ回路105の動作周波数を、ランプ電流を増加させていく方向へ変化させる初期照度補正機能により省エネを目的とした機能を有する。
【0015】
しかし、放電灯点灯装置100は、予熱モードおよび始動モードの周波数は、点灯時間にかかわらず常に一定としており、特に、予熱モードにおいては、点灯時間とともにエミッタが飛散や蒸発によりフィラメントが劣化していく。
そのため、放電灯点灯装置100は、熱電子の放出量がしだいに減少していくために、点灯初期に比べてより先行予熱を入念にする必要がある。
しかし、放電灯点灯装置100は、この点が考慮されておらず、点灯時間が経過するにしたがってフィラメントへのダメージが大きくなっていき、結果として、寿命が短くなる虞がある。
【0016】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、予熱モードにおいて点灯時間に応じて変化するフィラメントの状態に合わせて予熱の条件を変化させ、ランプ寿命を向上できる放電灯点灯装置および照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る放電灯点灯装置は、商用電源を受けて放電灯を点灯させる放電灯点灯装置であって、少なくとも1個のスイッチング素子を含み、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動させることにより前記放電灯に交流電力を供給するスイッチング部と、前記スイッチング部の動作周波数を制御することにより前記スイッチング部から放電灯に出力される交流電力を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記放電灯に有するフィラメントを予熱する先行予熱動作と、前記放電灯の点灯を維持させる定常動作の状態を切替可能であって、前記放電灯の点灯時間を計時する点灯時間計時部を備え、前記点灯時間計時部の信号に応じて前記制御部が先行予熱動作の動作条件を変化させる。
【0018】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記制御部は、予熱動作の動作条件の変化が、先行予熱時の予熱電流を変化させることである。
【0019】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記制御部は、予熱動作の動作条件の変化が、先行予熱時の予熱時間を変化させることである。
【0020】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記制御部は、予熱動作の動作条件の変化が、先行予熱時の予熱電流と予熱時間とを変化させることである。
【0021】
本発明に係る放電灯点灯装置は、点灯時間に応じて前記放電灯に流れる電流を変化させることにより照度補正を行う照度補正部を備え、前記点灯時間計時部を共用する。
【0022】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記放電灯の寿命を検出する検出部を備え、前記放電灯の寿命末期検出までは先行予熱条件が寿命延長方向、寿命末期検出後は先行予熱条件が寿命加速方向へと変化する。
【0023】
本発明に係る照明器具は、前記放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置を保持した器具本体とを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る放電灯点灯装置および照明器具によれば、予熱モードにおいて点灯時間に応じて変化するフィラメントの状態に合わせて予熱の条件を変化させ、ランプ寿命を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る第1実施形態の放電灯点灯装置および照明器具の回路構成図
【図2】本発明に係る第1実施形態の放電灯点灯装置の累積点灯時間と予熱時インバータ動作周波数との関係図
【図3】本発明に係る第1実施形態の放電灯点灯装置のインバータ動作周波数と共振カーブとの関係図
【図4】本発明に係る第1実施形態の放電灯点灯装置の予熱時インバータ動作周波数と予熱電流との関係図
【図5】本発明に係る第2実施形態の放電灯点灯装置および照明器具の回路構成図
【図6】本発明に係る第2実施形態の放電灯点灯装置の累積点灯時間と予熱時間との関係図
【図7】本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置および照明器具の回路構成図
【図8】本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置の予熱共振回路の共振カーブの状態図
【図9】本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置の累積点灯時間と予熱時インバータ動作周波数との関係図
【図10】本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置の予熱時インバータ動作周波数と予熱電流との関係図
【図11】本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置の累積点灯時間と予熱条件との関係図
【図12】本発明に係る第4実施形態の放電灯点灯装置および照明器具の回路構成図
【図13】本発明に係る第4実施形態の放電灯点灯装置の初期照度補正の状態図
【図14】本発明に係る第5実施形態の放電灯点灯装置および照明器具の回路構成図
【図15】本発明に係る第5実施形態の放電灯点灯装置の累積点灯時間とランプ電圧との関係図
【図16】本発明に係る第5実施形態の放電灯点灯装置の累積点灯時間と予熱時間との関係図
【図17】従来の放電灯点灯装置および照明器具の回路構成図
【図18】従来の放電灯点灯装置の共振回路の特性図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る複数の実施形態の放電灯点灯装置および照明器具について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の放電灯点灯装置10は、照明器具1に有する器具本体2に保持される。
放電灯点灯装置10は、交流電源Vinを整流するダイオードブリッジである全波整流回路11と、昇圧チョッパ回路12とからなる直流電源13を備える。
昇圧チョッパ回路12は、インダクタL1と、スイッチング素子Q1と、ダイオードD2と、電解コンデンサC2とから構成される。
放電灯点灯装置10は、直流電源13の直流出力を高周波交流出力に変換するスイッチング部であるインバータ回路14を備える。
インバータ回路14は、スイッチング素子Q2と、スイッチング素子Q3と、検出抵抗R1とから構成される。
放電灯点灯装置10は、複数のインダクタL2やコンデンサC3にて構成されインバータ回路14の高周波交流出力との共振作用によって放電灯を高周波点灯するLC共振回路15を備える。
【0027】
放電灯点灯装置10は、負荷である放電灯LAに接続される負荷回路16の消費電力に応じて昇圧チョッパ回路12の動作を制御するチョッパ制御回路17を備える。
放電灯点灯装置10は、インバータ回路14の発振周波数を制御する制御部であるインバータ制御回路18を備える。
放電灯点灯装置10は、トランスT1とコンデンサC7とコンデンサC8とコンデンサC9とコンデンサC10とで構成される予熱回路19を備える。
【0028】
放電灯点灯装置10は、予熱回路19においてトランスT1とコンデンサC7とで構成される予熱共振回路20を備える。
放電灯点灯装置10は、トランスT1の1次側巻線に流れる共振電流により発生する2次側巻線の電流をコンデンサC7,コンデンサC8,コンデンサC9,コンデンサC10を介して放電灯LAのフィラメントに流す。
そのため、放電灯点灯装置10は、予熱共振回路20により放電灯LAのフィラメントの予熱動作が行われる。
【0029】
また、放電灯点灯装置10は、インバータ制御回路18において、インバータ回路14の動作周波数を変化させる。
そして、放電灯点灯装置10は、LC共振回路15の共振作用を利用して放電灯LAの両端にかかるランプ電圧が変化するように周波数制御が行われる。
【0030】
放電灯点灯装置10は、電源のオン・オフを検出する電源ON/OFF検出回路(電源ON/OFF)21を備える。
放電灯点灯装置10は、インバータ回路14に流れる電流を検出するために、スイッチング素子Q3とグランド間に設けられた検出抵抗R1との接続点に接続する点灯検出回路22とを備える。
【0031】
放電灯点灯装置10は、電源ON/OFF検出回路21と点灯検出回路22の出力とが入力に接続されるAND回路23と、AND回路23の出力が入力される点灯時間計時部である点灯時間カウンタ24とを備える。
放電灯点灯装置10は、点灯時間カウンタ24の累積点灯時間を記憶するメモリ25を有し、点灯時間カウンタ24の出力が入力される予熱周波数決定部26を備える。
予熱周波数決定部26は、その出力がインバータ制御回路18に入力される。
電源ON/OFF検出回路21は、電源のオン・オフを検出し、オン検出時に、H(High)出力を、オフ検出時に、L(Low)出力を発生する。
点灯検出回路22は、インバータ回路14が動作時に流れる電流を検出抵抗R1にて検出し、インバータ回路14の動作中にH出力を発生し、インバータ回路14の停止中にL出力を発生する。
【0032】
AND回路23は、電源ON/OFF検出回路21の出力と点灯検出回路22の出力とが入力され、両者の出力がH出力の時にのみH出力を発生する。
AND回路23は、電源ON/OFF検出回路21または点灯検出回路22のどちらかまたは両者がL出力のときにL出力を発生する。
点灯時間カウンタ24は、AND回路23の出力が入力され、AND回路23がH出力、つまり電源がオン、かつ、点灯検出時に点灯時間の計時を行う。
また、点灯時間カウンタ24は、外部にメモリ25を有し、AND回路23の出力がL出力、つまり電源がオフまたは消灯検出時に、点灯時間の計時を停止し、その時点での累積点灯時間がメモリ25に記憶される。
【0033】
放電灯点灯装置10は、電源のオン時に、メモリ25から点灯時間カウンタ24に計時時間が通知され、点灯時間カウンタ24は、計時時間を予熱周波数決定部26へ通知する。
予熱周波数決定部26は、内部に累積点灯時間と予熱時インバータ動作周波数のテーブルまたは計算式を有し、点灯時間カウンタ24から通知された累積点灯時間に応じた予熱時インバータ動作周波数を決定する。
予熱周波数決定部26は、累積点灯時間と予熱時インバータ動作周波数のテーブルまたは計算式について、以下の動作に基づく。
【0034】
次に、放電灯点灯装置10の予熱周波数と予熱電流との関係について説明する。
図2に示すように、累積点灯時間t(点灯初期)においては、予熱時インバータ周波数はf(t)で動作し、点灯時間が経過して累積点灯時間tとなった際に,予熱時インバータ動作周波数をf(t)に変化させる。
【0035】
図3に示すように、このとき、変化の方向は、予熱共振回路20の共振カーブにおいて、共振点fに対して遅相(右側)で使用する際は、周波数を下げる方向で変化させる。
これにより、トランスT1の両端電圧が予熱時インバータ動作周波数:f(t)時にV(t)だったのに対し、累積点灯時間:tで予熱時インバータ動作周波数:f(t)に変化することによりトランスT1の両端電圧がV(t)に増加する。
トランスT1の1次巻線側に発生する電圧V(t)が電圧V(t)に変化し、1次巻線側の共振電流が増加することにより、2次巻線に発生する電流である予熱電流が増加する。
そのため、図4に示すように、予熱時インバータ動作周波数がf(t)からf(t)に変化することにより、予熱電流はI(t)からI(t)に増加することになる。
【0036】
このように放電灯点灯装置10は、累積点灯時間に応じて、予熱時インバータ動作周波数を変化させて予熱電流を増加させていく。
従って、放電灯点灯装置10は、放電灯LAの点灯時間とともにエミッタが飛散や蒸発によりフィラメントが劣化することに対して、予熱動作を十分に行うことによりダメージを軽減して寿命を延長できる。
【0037】
以上、説明した本発明に係る第1実施形態の放電灯点灯装置10によれば、点灯時間カウンタ24の信号に応じてインバータ回路18が先行予熱動作の動作条件を変化させる。
従って、放電灯点灯装置10によれば、放電灯LAの点灯時間に応じて先行予熱条件を変化させることにより、フィラメントへのダメージを抑えて放電灯LAを長寿命化できる。
【0038】
また、放電灯点灯装置10によれば、インバータ回路18、先行予熱時の予熱電流を変化させて予熱動作の動作条件を変化させる。
従って、放電灯点灯装置10によれば、放電灯LAの点灯時間に応じて先行予熱時の予熱電流を変化させることにより、フィラメントへのダメージを抑えて放電灯LAを長寿命化できる。
【0039】
そして、照明器具1によれば、放電灯点灯装置10により制御される放電灯LAの点灯時間に応じて先行予熱条件を変化させることにより、フィラメントへのダメージを抑えて放電灯LAを長寿命化できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の放電灯点灯装置および照明器具について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0041】
図5に示すように、本発明に係る第2実施形態の放電灯点灯装置30は、照明器具3に装備される。
放電灯点灯装置30は、予熱時間決定部31を備える。
予熱時間決定部31は、内部に累積点灯時間と予熱時間のテーブルまたは計算式を有し、点灯時間カウンタ24から通知された累積点灯時間に応じた予熱時間を決定する。
予熱時間決定部31が有する累積点灯時間と予熱時間のテーブルまたは計算式については、以下の動作に基づく。
【0042】
次に、放電灯点灯装置30の累積点灯時間と予熱時間との関係について説明する。
図6に示すように、累積点灯時間t(点灯初期)において、予熱時間はT(t)であり、点灯時間が経過して累積点灯時間tとなった際に、予熱時間をT(t)に変化させる。
このとき、変化の方向は、点灯時間が経過するにしたがって予熱時間が長くなる方向で変化させる。
【0043】
このように、放電灯点灯装置30は、累積点灯時間に応じて、予熱時間を変化させて予熱時間を増加させていく。
そのため、放電灯点灯装置30は、放電灯LAの点灯時間とともにエミッタが飛散や蒸発によりフィラメントが劣化することに対して、予熱動作を十分に行うことによりダメージを軽減して寿命を延長できる。
【0044】
放電灯点灯装置30によれば、インバータ回路18が、先行予熱時の予熱時間を変化させて予熱動作の動作条件を変化させる。
従って、放電灯点灯装置30によれば、放電灯LAの点灯時間に応じて先行予熱時の予熱時間を変化させることにより、フィラメントへのダメージを抑えて放電灯LAを長寿命化できる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置および照明器具について説明する。
図7に示すように、本発明に係る第3実施形態の放電灯点灯装置40は、照明器具4に装備される。
放電灯点灯装置40は、予熱条件決定部41を備える。
予熱条件決定部41は、内部に累積点灯時間と予熱時インバータ動作周波数および累積点灯時間と予熱時間の2つのテーブルまたは計算式を有し、点灯時間カウンタ24から通知された累積点灯時間に応じた予熱時インバータ動作周波数と予熱時間とを決定する。
予熱条件決定部41は、累積点灯時間と予熱時インバータ動作周波数および累積点灯時間と予熱時間のテーブルまたは計算式については、累積点灯時間に応じて予熱時インバータ動作周波数を変化させる。
そして、予熱条件決定部41は、予熱共振回路20の共振カーブを利用して予熱電流を増加させると同時に予熱時間を長く変化させる。
【0046】
図8に示すように、予熱時インバータ動作周波数のみで予熱条件を変更する場合、予熱共振回路20の回路部品のばらつきの影響で、共振カーブが、部品ばらつき無しの共振カーブAと、部品ばらつき有りの共振カーブBのような共振鋭度の異なるカーブとなる。
これにより、累積点灯時間0時間での予熱時インバータ動作周波数f(t)で決まるトランスT1の両端電圧は、共振カーブAでは、V(t)であり、共振カーブBでは、V”(t)となる。
このとき、両者の電圧差異はあまり大きくないが、累積点灯時間とともに予熱時インバータ動作周波数を変化させていった際に、共振鋭度が異なる。
そのため、累積点灯時間t後の予熱時インバータ動作周波数f(t)において、共振カーブAでは、V(t)であり、共振カーブBでは、V”(t)となる。
これにより、共振鋭度が鋭くなると、周波数変化に対してのトランスT1の両端電圧のばらつきが大きくなり、予熱電流が過剰になる虞があり、周波数変化幅に制限を生ずる。
【0047】
このとき、累積点灯時間に応じて予熱時間のみを長く変化させていく場合は、電源のオンから放電灯LAの点灯までの時間が累積点灯時間とともに長くなっていく。
そのため、ユーザが違和感を覚えることがあり、電源オンで、すぐに明るくできるという本来の目的から外れていく。
従って、予熱時間の変化幅に制限が生じる。
しかし、放電灯点灯装置40は、累積点灯時間に応じて予熱時インバータ周波数と予熱時間を同時に変化させることにより十分な予熱効果が得られ、それぞれの変化量を小さくできる。
【0048】
図9に示すように、予熱電流においては、予熱時インバータ動作周波数の変化量を小さくする。
図10に示すように、共振カーブは、共振点から遠ざかる方向で使用することにより、予熱共振回路20のばらつきの影響を少なくできる。
図11に示すように、予熱時間においては、予熱時間を短くすることにより、累積点灯時間とともに電源のオンから放電灯LAの点灯までの時間が長くなる時間を短く抑えることができる。
【0049】
放電灯点灯装置40によれば、インバータ回路18が、累積点灯時間に応じて予熱時インバータ周波数と予熱時間を同時に変化させて予熱動作の動作条件を変化させる。
従って、放電灯点灯装置40によれば、放電灯LAのフィラメントへのダメージを抑制でき、予熱共振回路20の回路部品のばらつきの影響を抑制できる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の放電灯点灯装置および照明器具について説明する。
図12に示すように、本発明に係る第4実施形態の放電灯点灯装置50は、照明器具5に装備される。
放電灯点灯装置50は、点灯時間カウンタ24が、インバータ制御回路18と予熱条件決定部(予熱条件)41との両方に接続される。
【0051】
図13に示すように、放電灯点灯装置50は、放電灯LAの点灯初期の余分な照度を抑えて省エネを実現するために、累積点灯時間に応じて照度を変化させる初期照度補正機能を有する。
これは、放電灯点灯装置50が、点灯モードにおいて点灯時間カウンタ24がインバータ制御回路18に累積点灯時間に応じてインバータ動作周波数を変化させることにより行う。
そこで、放電灯点灯装置50は、その点灯時間カウンタを予熱条件決定部41に共用して使用して、累積点灯時間に応じて予熱条件を変化させる。
このように、放電灯点灯装置50は、初期照度補正機能のための点灯時間カウンタ24を共用して予熱条件を変化させることにより、回路の大規模化を防止できる。
なお、放電灯点灯装置50は、点灯時間カウンタ24の計時において点灯検出回路22と電源ON/OFF検出回路21で行っているが、検出手段としては、特に問わない。
【0052】
放電灯点灯装置50によれば、初期照度補正機能のための点灯時間カウンタ24を予熱条件決定部41と共用して先行予熱条件を変化させる。
従って、放電灯点灯装置50によれば、回路の大規模化を防止でき、放電灯LAのフィラメントへのダメージを抑制でき、放電灯LAを長寿命化できる。
【0053】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態の放電灯点灯装置および照明器具について説明する。
図14に示すように、本発明に係る第5実施形態の放電灯点灯装置60は、照明器具6に装備される。
放電灯点灯装置60は、予熱条件決定部41にランプ寿命末期検出回路であるエミレス検出回路61が接続される。
【0054】
図15に示すように、放電灯点灯装置60は、放電灯LAが寿命末期に近づくと、ランプ電圧が上昇する。
図16に示すように、放電灯点灯装置60は、ランプ電圧が、ある検出閾値を越えると、それを検出して予熱条件を検出前後で変化させる。
具体的には、放電灯点灯装置60は、放電灯LAの寿命末期までは、累積点灯時間に応じて予熱条件を放電灯LAの寿命を伸ばすように予熱時間を長く変化させる。
これとは異なり、放電灯点灯装置60は、放電灯LAの寿命末期検出後は、逆に放電灯LAの寿命を早めるように予熱時間を短くする。
これにより、放電灯点灯装置60は、寿命末期以降に放電灯のフィラメント断線を促進することで放電灯が寿命末期状態で長期間使用されることを防止できる。
なお、ここでは、予熱条件が予熱時間の変化について説明したが、予熱時インバータ周波数でもかまわない。
また、ランプ寿命末期検出回路として、ランプ電圧の上昇を検出する方法について記載したが、検出方法については問わない。
【0055】
放電灯点灯装置60によれば、エミレス検出回路61により、ランプ寿命末期を検出して、ランプ寿命検出までは、先行予熱条件を変化させることでフィラメントへのダメージを抑えて放電灯LAを長寿命化できる。
また、放電灯点灯装置60によれば、ランプ寿命検出後は先行予熱条件を長寿命化とは反対方向に変化させることにより、フィラメント断線を促進して放電灯LAが寿命末期状態で長期間使用されることを防止できる。
【0056】
なお、本発明の放電灯点灯装置および照明器具において全波整流回路,昇圧チョッパ回路,インバータ回路等は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,3,4,5,6 照明器具
2 器具本体
10,30,40,50,60 放電灯点灯装置
14 インバータ回路(スイッチング部)
18 インバータ制御回路(制御部)
24 点灯時間カウンタ(点灯時間計時部)
61 エミレス検出回路(検出部)
LA 放電灯
Q2,Q3 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を受けて放電灯を点灯させる放電灯点灯装置であって、
少なくとも1個のスイッチング素子を含み、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動させることにより前記放電灯に交流電力を供給するスイッチング部と、
前記スイッチング部の動作周波数を制御することにより前記スイッチング部から放電灯に出力される交流電力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記放電灯に有するフィラメントを予熱する先行予熱動作と、前記放電灯の点灯を維持させる定常動作の状態を切替可能であって、
前記放電灯の点灯時間を計時する点灯時間計時部を備え、
前記点灯時間計時部の信号に応じて前記制御部が先行予熱動作の動作条件を変化させる放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、予熱動作の動作条件の変化が、先行予熱時の予熱電流を変化させることである放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、予熱動作の動作条件の変化が、先行予熱時の予熱時間を変化させることである放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、予熱動作の動作条件の変化が、先行予熱時の予熱電流と予熱時間とを変化させることである放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の放電灯点灯装置において、
点灯時間に応じて前記放電灯に流れる電流を変化させることにより照度補正を行う照度補正部を備え、
前記点灯時間計時部を共用する放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放電灯点灯装置において、
前記放電灯の寿命を検出する検出部を備え、前記放電灯の寿命末期検出までは先行予熱条件が寿命延長方向、寿命末期検出後は先行予熱条件が寿命加速方向へと変化する放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか1項に記載の前記放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置を保持した器具本体とを備える照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−8502(P2013−8502A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139315(P2011−139315)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】