説明

放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具

【課題】4灯以上の放電灯を点灯させる場合でも低コスト化を図りつつ放電灯の寿命を正確に検出することのできる放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】2つの放電灯を直列に接続して成る負荷回路7,8を並列接続して構成される負荷に高周波電力を供給するインバータ回路3と、各負荷回路7,8における各放電灯LA1〜LA4の接続点の電位を検出する接続点電位検出回路と、各負荷回路7,8における各放電灯LA1〜LA4の接続点に直流電圧を重畳する直流重畳回路と、各放電灯LA1〜LA4の寿命を検出する寿命検出回路4Cとを備え、寿命検出回路4Cは、何れかの負荷回路7,8における各放電灯LA1〜LA4の接続点の電位が予め設定された閾値電圧を超える、又は各負荷回路7,8における各放電灯LA1〜LA4の接続点の電位の差分が予め設定された差分閾値電圧を超えると、放電灯が寿命に達したことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯の寿命末期を検出して回路の保護動作を行う機能を有する放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電灯の寿命末期を検出して回路の保護動作を行う放電灯点灯装置が提供されており、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の放電灯点灯装置は、交流電源の電源電圧を整流器で整流し、降圧チョッパ回路により構成される谷埋電源部により整流器の脈流出力を平滑し、この部分平滑された直流入力をハーフブリッジ型のインバータ回路により高周波出力に変換する。そして、このインバータ回路の高周波出力を、リーケージトランスを介して負荷である2灯の放電灯に供給して点灯させている。
【0003】
ここで、フィラメントに塗布されている熱電子放射物質(エミッタ)が枯渇するなどして放電灯が寿命末期に至った場合、放電灯のランプ電圧が正常時よりも上昇する。上記従来例では、このランプ電圧の上昇に伴ってリーケージトランスの補助巻線に誘起される電圧も上昇することから、検出回路にて補助巻線に誘起される電圧が閾値以上になったことを検出すると、制御回路に対して異常検出信号を出力する。制御回路では、異常検出信号を受けるとインバータ回路を間欠発振させて、回路にかかるストレスを低減する保護動作を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3932773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、フィラメントのエミッタの消耗により放電灯のランプ電圧が上昇するのを検出することで放電灯の寿命を検出する方法が従来から知られている。しかしながら、放電灯の寿命末期におけるランプ電圧の上昇値は平均して50V程度であるため、ランプ電圧の高い放電灯を用いる場合では、当該方法により寿命を検出する際の検出回路の設計が難しい。
【0006】
そこで、放電灯の寿命末期を検出する方法として、インバータ回路の出力する高周波電圧の正負のサイクル各々におけるランプ電圧の差分を検出することで放電灯の寿命を検出する方法がよく用いられており、当該方法は特許文献1にも開示されている。この検出方法では、正のサイクルにおけるランプ電圧と、負のサイクルにおけるランプ電圧との差分を検出することでランプ電圧の直流成分を求める。そして、フィラメントのエミッタが消耗すると、正負のサイクル各々におけるランプ電圧が不均衡となり、当該直流成分が上昇するので、これを検出することで放電灯の寿命を検出する。
【0007】
このランプ電圧の差分を検出する方法では、正常時におけるランプ電圧の直流成分と、放電灯の寿命時におけるランプ電圧の直流成分との差が大きいため、検出回路の設計が容易である。しかしながら、当該方法では、放電灯の高圧側及び低圧側のフィラメントが同時に寿命に達した場合、正負のサイクル各々におけるランプ電圧が不均衡とならないため、ランプ電圧の直流成分から放電灯の寿命を検出するのが困難である。したがって、放電灯の寿命末期を検出する方法としては、上記の2つの検出方法を併せて採用することが一般的である。
【0008】
ところで、負荷として用いられる放電灯(例えば直管型の蛍光灯)の管長は、一般的に600mmから2400mmまである。この放電灯の管径と、内部の封入ガスの組成とが同じであれば、ランプ電圧は管長に比例し、例えば600mm長の放電灯のランプ電圧は1200mm長の放電灯のランプ電圧の約半分となる。中でも、1200mm長の放電灯が良く用いられており、インバータ回路の多くは1200mm長の放電灯に合わせて設計されることが多い。
【0009】
このため、600mm長の放電灯を2灯点灯する場合には、2灯を直列に接続して1200mm長の放電灯に近い負荷特性とすることが良く行われている。このように1200mm長の放電灯用のインバータ回路とほぼ同じ構成の回路で600mm長の放電灯を2灯点灯させることができるので、低コスト化を図ることができる。更に、1200mm長の放電灯2灯用のインバータ回路を用いて、ほぼ同じ光出力となる600mm長の放電灯4灯を点灯させる場合には、2灯の直列回路を並列に接続すれば、上記インバータ回路と同様の回路構成で点灯させることができる。
【0010】
しかしながら、上述のように放電灯の2灯の直列回路を並列に接続して4灯を点灯させる場合には、ランプ電圧を検出するための回路と、ランプ電圧の差分を検出する回路とを各々2つずつ設ける必要がある。このため、放電灯の寿命を検出するための検出回路の素子数が増加し、これに伴ってコストが増大するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、4灯以上の放電灯を点灯させる場合でも低コスト化を図りつつ放電灯の寿命を正確に検出することのできる放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の放電灯点灯装置は、2つの放電灯を直列に接続して成る負荷回路を少なくとも2つ並列接続して構成される負荷に高周波電力を供給するインバータ回路と、前記負荷回路における各放電灯の接続点の電位を検出する接続点電位検出回路と、前記負荷回路における各放電灯の接続点に直流電圧を重畳する直流重畳回路と、前記各放電灯の寿命を検出する寿命検出回路とを備え、前記寿命検出回路は、何れかの前記負荷回路における各放電灯の接続点の電位が予め設定された閾値電圧を超える、又は前記各負荷回路における各放電灯の接続点の電位の差分が予め設定された差分閾値電圧を超えると、前記放電灯が寿命に達したことを検出することを特徴とする。
【0013】
この放電灯点灯装置において、前記直流重畳回路を流れる電流の経路には、少なくとも1つの前記放電灯のフィラメントが接続され、前記インバータ回路の動作の停止時に前記フィラメントを流れる電流の有無により無負荷を検出する無負荷検出回路を備えることが好ましい。
【0014】
この放電灯点灯装置において、前記負荷回路における各放電灯の接続点の電位が一定値以上とならないように前記インバータ回路の出力を補正する出力補正回路を備えることが好ましい。
【0015】
本発明の照明器具は、上記何れかの放電灯点灯装置と、前記各放電灯を保持する器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、4灯以上の放電灯を点灯させる場合でも低コスト化を図りつつ放電灯の寿命を正確に検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1を示す回路概略図である。
【図2】(a),(b)は同上の放電灯点灯装置において高圧側の放電灯の何れかのフィラメントが寿命に達した場合を示す図である。
【図3】(a),(b)は同上の放電灯点灯装置において低圧側の放電灯の何れかのフィラメントが寿命に達した場合を示す図である。
【図4】(a),(b)は同上の放電灯点灯装置において両方の放電灯それぞれの何れかのフィラメントが寿命に達した場合を示す図である。
【図5】同上の放電灯点灯装置において何れか一方の放電灯の両方のフィラメントが寿命に達した場合を示す図である。
【図6】同上の放電灯点灯装置における放電灯のフィラメントの寿命と検出電圧との相関図である。
【図7】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2を示す回路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、交流電源AC1からの交流電圧を整流するダイオードブリッジから成る整流回路1と、整流回路1の出力電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路(力率改善回路)2とを備える。
【0019】
昇圧チョッパ回路2は、コンデンサC0、インダクタL0、ダイオードD0、MOSFETから成るスイッチング素子Q0、及び出力平滑用のコンデンサC1とから構成される。スイッチング素子Q0のゲート端子には駆動回路2Aからの駆動信号が入力される。したがって、昇圧チョッパ回路2は、駆動信号によってスイッチング素子Q0のオン/オフを制御することにより、整流回路1から出力される脈流電圧を昇圧し、平滑した直流電圧を出力する。
【0020】
昇圧チョッパ回路2の出力端には、MOSFETから成る1対のスイッチング素子Q1,Q2、及びスイッチング素子Q2を流れる電流を検出するための検出抵抗R0を直列接続したハーフブリッジ型のインバータ回路3が接続されている。各スイッチング素子Q1,Q2の接続点には、インダクタL1及びコンデンサC2から成る共振回路5が接続されている。各スイッチング素子Q1,Q2のゲート端子には、後述する制御部4の発振回路4Aからの駆動信号が入力される。
【0021】
したがって、インバータ回路3は、駆動信号によって各スイッチング素子Q1,Q2のオン/オフを交互に高周波で制御することにより、昇圧チョッパ回路2から出力される直流電圧を矩形波状の高周波電圧に変換して共振回路5に出力する。そして、共振回路5では、インダクタL1及びコンデンサC2の共振により入力された矩形波状の高周波電圧を正弦波状の高周波電圧に変換し、後述する各放電灯LA1〜LA4に供給する。本実施形態では、ピーク値が200Vの高周波電圧が共振回路5から出力される。この共振回路5から出力される高周波電圧は、発振回路4Aにおいて各スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数を共振回路5の共振周波数に対して変化させることで、所望の出力電圧に可変制御することができる。
【0022】
なお、検出抵抗R0の両端には、スイッチング素子Q2を流れる電流により電圧が生じ、当該電圧を発振回路4Aに入力している。そして、発振回路4Aでは、当該電圧を監視することで、共振回路5を流れる共振電流が過大な電流とならないように各スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数を制御する。
【0023】
共振回路5の出力端には、抵抗R1,R2を直列に接続して成る出力電圧検出回路6が接続されている。出力電圧検出回路6は、抵抗R1,R2により共振回路5の出力電圧を分圧し、分圧により得られる抵抗R2の両端電圧を後述する制御部4の過電圧検出回路4Bに入力する。
【0024】
また、共振回路5の出力端には、放電灯(蛍光灯)LA1,LA2の2灯を直列接続して成る第1の負荷回路7と、放電灯LA3,LA4の2灯を直列接続して成る第2の負荷回路8とがトランスT1を介して並列に接続されている。なお、各放電灯LA1〜LA4は同種の蛍光灯から成り、その管径及び管長は等しい。第1の負荷回路7はトランスT1の1次側に接続され、第2の負荷回路8はトランスT1の2次側に接続されている。トランスT1は、第1の負荷回路7に流れるランプ電流と、第2の負荷回路8に流れるランプ電流とが等しくなるように動作する。なお、各放電灯LA1〜LA4には、始動時においてフィラメント(図示せず)を加熱制御する予熱回路9と、直流カット用のコンデンサC3〜C6とがそれぞれ接続されている。
【0025】
ここで、昇圧チョッパ回路2の出力電圧は、抵抗R3、放電灯LA1の低圧側のフィラメント、放電灯LA2の高圧側のフィラメント、抵抗R4,R5から成る閉ループに印加される。このため、抵抗R5の両端には、当該閉ループを流れる直流電流によって第1の検出電圧VK1が生じる。この第1の検出電圧VK1は、後述する制御部4の寿命検出回路4C及び無負荷検出回路4Eに入力される。この抵抗R3〜R5で構成される回路が、各放電灯LA1,LA2の接続点の電位を検出する接続点電位検出回路と、各放電灯LA1,LA2の接続点に直流電圧を重畳する直流重畳回路として機能する。
【0026】
また、昇圧チョッパ回路2の出力電圧は、抵抗R6、放電灯LA3の低圧側のフィラメント、放電灯LA4の高圧側のフィラメント、抵抗R7,R8から成る閉ループにも印加される。このため、抵抗R8の両端には、当該閉ループを流れる直流電流によって第2の検出電圧VK2が生じる。この第2の検出電圧VK2は、第1の検出電圧VK1と同様に、後述する制御部4の寿命検出回路4C及び無負荷検出回路4Eに入力される。この抵抗R6〜R8で構成される回路が、各放電灯LA3,LA4の接続点の電位を検出する接続点電位検出回路と、各放電灯LA3,LA4の接続点に直流電圧を重畳する直流重畳回路として機能する。
【0027】
第1の検出電圧VK1は、インバータ回路3の動作中においては、抵抗R2,R3の直列回路に放電灯LA2が並列に接続されているため、放電灯LA2の点灯状態に応じてインバータ回路3の動作の停止時よりも低い電圧値となる。なお、放電灯LA2の消灯時には、第1の検出電圧VK1は、インバータ回路3の動作の停止時と同等の電圧値となる。同様に、第2の検出電圧VK2は、インバータ回路3の動作中においては、抵抗R7,R8の直列回路に放電灯LA4が並列に接続されているため、放電灯LA4の点灯状態に応じてインバータ回路3の動作の停止時よりも低い電圧値となる。なお、放電灯LA4の消灯時には、第2の検出電圧VK2は、インバータ回路3の動作の停止時と同等の電圧値となる。
【0028】
制御部4は、例えばマイコンから構成され、発振回路4Aと、過電圧検出回路4Bと、寿命検出回路4Cと、異常検出回路4Dと、無負荷検出回路4Eとを備える。発振回路4Aは、上述のようにインバータ回路3の各スイッチング素子Q1,Q2に与える駆動信号を発振する。また、発振回路4Aは、検出抵抗R0の両端電圧、異常検出回路4Dからの異常検知信号、又は無負荷検出回路4Eからの無負荷検知信号に基づいて、駆動信号の駆動周波数を可変制御する。
【0029】
過電圧検出回路4Bは、出力電圧検出回路6の抵抗R2の両端電圧(出力検出電圧)と、予め設定された閾値電圧とを比較し、出力検出電圧が閾値電圧を上回ると共振回路5から過大な電圧が出力されていると判定する。そして、過電圧検出回路4Bは、出力電圧に異常が発生した旨を知らせる出力異常信号を異常検出回路4Dに出力する。
【0030】
寿命検出回路4Cは、入力される第1の検出電圧VK1及び第2の検出電圧VK2に基づいて各放電灯LA1〜LA4の寿命を検出する。具体的には、寿命検出回路4Cは、インバータ回路3の動作中において、各検出電圧VK1,VK2と予め設定された正の閾値電圧VTH1及び負の閾値電圧VTH2(|VTH1|=|VTH2|)とを比較する。そして、寿命検出回路4Cは、各検出電圧VK1,VK2が各閾値電圧VTH1,VTH2で規定される正常時の電圧範囲から外れた場合に、何れかの放電灯LA1〜LA4が寿命に達した旨を知らせる寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力する。
【0031】
また、寿命検出回路4Cは、インバータ回路3の動作中において、各検出電圧VK1,VK2の差分電圧△VKと、予め設定された正の差分閾値電圧及び負の差分閾値電圧とを比較する。そして、寿命検出回路4Cは、差分電圧△VKが各差分閾値電圧で規定される正常時の差分電圧の範囲から外れた場合に、上記と同様に寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力する。
【0032】
異常検出回路4Dは、過電圧検出回路4Bからの出力異常信号と、寿命検出回路4Cからの寿命検知信号との何れかが入力されると、異常が発生した旨を知らせる異常検知信号を発振回路4Aに出力する。発振回路4Aでは、異常検知信号が入力されると、各スイッチング素子Q1,Q2への駆動信号の供給を停止することで、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0033】
無負荷検出回路4Eは、入力される第1の検出電圧VK1及び第2の検出電圧VK2に基づいて各放電灯LA1〜LA4のフィラメントの断線、又は各放電灯LA1〜LA4の未装着を検出する。無負荷検出回路4Eは、インバータ回路3の動作の停止中において、各検出電圧VK1,VK2のうち何れかが0Vであれば(フィラメントに電流が流れていなければ)無負荷と判定し、無負荷である旨を知らせる無負荷検知信号を発振回路4Aに出力する。発振回路4Aでは、無負荷検知信号が入力されている間は、インバータ回路3の動作の停止状態を継続させる。
【0034】
以下、本実施形態における各放電灯LA1〜LA4の寿命を検出する方法について図面を用いて説明する。先ず、図2(a)に示すように、高圧側の放電灯LA1の高圧側のフィラメントがエミッタの枯渇状態(エミレス状態)となり寿命に達した場合について説明する。この場合、放電灯LA1では、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。このため、放電灯LA2においても、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。すなわち、正のサイクルにおいて放電灯LA2のインピーダンスが大きくなる。したがって、放電灯LA2のインピーダンスが放電灯LA4のインピーダンスよりも大きくなるため、第1の検出電圧VK1の絶対値が第2の検出電圧VK2の絶対値よりも大きくなる。
【0035】
ここで、正常時においては第1の検出電圧VK1と第2の検出電圧VK2とはほぼ同等の大きさであるが、上記の場合には第1の検出電圧VK1と第2の検出電圧VK2とには差が生じる。したがって、寿命検出回路4Cは、これらの差分電圧△VKが正の差分閾値電圧を上回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力する。そして、異常検出回路4Dは、寿命検知信号を受けて異常検知信号を発振回路4Aに出力し、発振回路4Aは、異常検知信号を受けてインバータ回路3の動作を停止させる。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、高圧側の放電灯LA1の低圧側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合について説明する。この場合、放電灯LA1では、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。このため、放電灯LA2においても、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。すなわち、負のサイクルにおいて放電灯LA2のインピーダンスが大きくなる。したがって、上記と同様に放電灯LA2のインピーダンスが放電灯LA4のインピーダンスよりも大きくなるため、第1の検出電圧VK1の絶対値が第2の検出電圧VK2の絶対値よりも大きくなる。そして、寿命検出回路4Cは、差分電圧△VKが負の差分閾値電圧を下回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0037】
次に、図3(a)に示すように、低圧側の放電灯LA2の高圧側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合について説明する。この場合、放電灯LA2では、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。これにより、各放電灯LA1,LA2の接続点には、正負非対称で且つ負のサイクルにおけるランプ電圧が正常時よりも大きい不均衡な電圧が発生する。したがって、寿命検出回路4Cは、第1の検出電圧VK1が負の閾値電圧VTH2を下回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、低圧側の放電灯LA2の低圧側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合について説明する。この場合、放電灯LA2では、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。これにより、各放電灯LA1,LA2の接続点には、正負非対称で且つ正のサイクルにおけるランプ電圧が正常時よりも大きい不均衡な電圧が発生する。したがって、寿命検出回路4Cは、第1の検出電圧VK1が正の閾値電圧VTH1を上回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0039】
次に、図4(a)に示すように、高圧側の放電灯LA1の高圧側のフィラメント、及び低圧側の放電灯LA2の高圧側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合について説明する。この場合、図3(a)に示す場合と同様に、放電灯LA2では、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。これにより、各放電灯LA1,LA2の接続点には、正負非対称で且つ負のサイクルにおけるランプ電圧が正常時よりも大きい不均衡な電圧が発生する。したがって、寿命検出回路4Cは、第1の検出電圧VK1が負の閾値電圧VTH2を下回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、高圧側の放電灯LA1の高圧側のフィラメント、及び低圧側の放電灯LA2の低圧側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合について説明する。この場合、図3(b)に示す場合と同様に、放電灯LA2では、正のサイクルにおいてランプ電流が流れ易くなり、負のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。これにより、各放電灯LA1,LA2の接続点には、正負非対称で且つ正のサイクルにおけるランプ電圧が正常時よりも大きい不均衡な電圧が発生する。したがって、寿命検出回路4Cは、第1の検出電圧VK1が正の閾値電圧VTH1を上回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0041】
次に、図5に示すように、高圧側の放電灯LA1の両側のフィラメントが何れもエミレス状態となり寿命に達した場合について説明する。この場合、放電灯LA1では、正負の両方のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。このため、放電灯LA2においても、正負の両方のサイクルにおいてランプ電流が流れ難くなる。したがって、放電灯LA2のインピーダンスが放電灯LA4のインピーダンスよりも大きくなるため、第1の検出電圧VK1の絶対値が第2の検出電圧VK2の絶対値よりも大きくなる。そして、寿命検出回路4Cは、差分電圧△VKが負の差分閾値電圧を下回る、又は正の差分閾値電圧を上回ることで放電灯が寿命に達したと判定し、寿命検知信号を異常検出回路4Dに出力し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0042】
なお、低圧側の放電灯LA2の両側のフィラメントが何れもエミレス状態となり寿命に達した場合も、上記と同様の状態となるため、寿命検出回路4Cは放電灯が寿命に達したと判定し、インバータ回路3の動作を停止させる。
【0043】
ここで、放電灯LA1,LA2が寿命に達する場合における閾値電圧VTH1,VTH2、及び差分閾値電圧の設定値の例について図6を用いて説明する。先ず、低圧側の放電灯LA2の何れかの側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合には、第1の検出電圧VK1は5Vを上回る、又は−5Vを下回る電圧値となる。したがって、閾値電圧VTH1,VTH2を各々2.5V,−2.5Vに設定することで、低圧側の放電灯LA2の寿命を検出することができる。
【0044】
次に、高圧側の放電灯LA1の何れかの側のフィラメントがエミレス状態となり寿命に達した場合には、低圧側の放電灯LA2のインピーダンスがその影響を受けるため、第1の検出電圧VK1は±1.0〜±1.5Vの電圧値となる。一方、第2の検出電圧VK2は、放電灯LA3,LA4が正常であることから、定格点灯時には0V付近、調光点灯する場合には各放電灯LA3,LA4のインピーダンスが大きくなることから若干高くなり、±0.5V程度となる。したがって、差分閾値電圧を±0.5Vに設定することで、高圧側の放電灯LA1の寿命を検出することができる。
【0045】
なお、放電灯LA3,LA4についても、上記の図2〜5に示した場合と同様に、放電灯が寿命に達したことを検出することができる。この場合は、第2の検出電圧VK2の代わりに第1の検出電圧VK1が変動せず、第1の検出電圧VK1の代わりに第2の検出電圧VK2が変動する。
【0046】
また、放電灯LA1〜LA4が同時に寿命に達した場合には、第1の検出電圧VK1及び第2の検出電圧VK2の比較による寿命の検出は難しいが、この場合には共振回路5の出力電圧が大きく上昇する。したがって、この場合には、過電圧検出回路4Bにおいて共振回路5の過大な出力電圧を検出することで、インバータ回路3の動作を停止させることができる。
【0047】
上述のように、本実施形態では、第1の負荷回路7の接続点における電位と、第2の負荷回路8の接続点における電位との差分を差分閾値電圧△VKと比較することで、高圧側の放電灯LA1,LA3の寿命を検出することができる。また、低圧側の放電灯LA2,LA4については、接続点における電位の正負のサイクルにおける不均衡な電圧を閾値電圧VK1,VK2と比較することで、寿命を検出することができる。
【0048】
ここで、従来例では、放電灯の2灯直列回路の全体で寿命を検出しているため、複数のフィラメントが同時に寿命に達した場合に、正負のサイクルにおける不均衡な電圧が発生しない場合がある。すなわち、放電灯の整流作用による直流電圧と、直流重畳回路における直流電圧とが干渉し、不均衡な電圧を検出することができない場合がある。
【0049】
これに対して、本実施形態では、上記のように高圧側の放電灯LA1,LA3の寿命と、低圧側の放電灯LA2,LA4の寿命とを分けて検出することができる。したがって、各放電灯LA1〜LA4の複数の箇所で同時にエミレス状態となり寿命に達した場合にも、各放電灯LA1〜LA4の寿命を検出することができる。
【0050】
また、従来では、既に述べたように、ランプ電圧を検出する回路と、ランプ電圧の差分を検出する回路とを2灯直列回路毎に設ける必要があるのに対し、本実施形態では、2つの負荷回路7,8の接続点の電位を検出する回路を設ければ済む。このため、放電灯の寿命を検出する回路を構成する素子数を低減して低コスト化を図ることができる。更に、本実施形態では、2つの負荷回路7,8の接続点の電位を利用することで、コストを掛けずに無負荷検出も行うことができる。
【0051】
したがって、本実施形態では、4灯以上の放電灯を点灯させる場合でも低コスト化を図りつつ放電灯の寿命を正確に検出することができる。なお、本実施形態は、負荷回路7,8を並列接続した4灯の放電灯に対して用いているが、更に負荷回路の数、すなわち放電灯の数を増やしてもよい。
【0052】
(実施形態2)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図7に示すように、制御部4において出力補正回路4Fを新たに設けたことに特徴がある。
【0053】
各放電灯LA1〜LA4を調光点灯する際に、低温であれば各放電灯LA1〜LA4のランプ電圧が上昇し、その結果、放電灯のチラツキや、立ち消えなどの問題が起こりうる。例えば、T5型の蛍光灯を用いる場合に、負荷電流が5mA以下の状態では、低温になるとランプ電圧が上昇して立ち消えが起こり易い。そこで、本実施形態では、各放電灯LA1〜LA4のランプ電圧の上昇を検出してインバータ回路3の出力を補正することで、各放電灯LA1〜LA4の立ち消えを防止する。
【0054】
以下、本実施形態の動作について説明する。例えば、放電灯LA2が立ち消えしそうになった場合、放電灯LA2のインピーダンスが上昇することにより、第1の検出電圧VK1が上昇する。出力補正回路4Fでは、第1の検出電圧VK1の上昇を受けて、第1の検出電圧VK1が一定値以下となるように指令する出力補正信号を発振回路4Aに出力する。発振回路4Aは、出力補正信号を受けて駆動周波数を負荷電流が増大する方向へと可変制御することで、第1の検出電圧VK1が一定値以下となるように制御する。これにより、放電灯LA2の立ち消えを防止することができる。
【0055】
また、放電灯LA4が立ち消えしそうになった場合は、放電灯LA4のインピーダンスが上昇することにより、第2の検出電圧VK2が上昇する。したがって、出力補正回路4Fでは、第2の検出電圧VK2の上昇を受けて、上記と同様に、第2の検出電圧VK2が一定値以下となるように指令する出力補正信号を発振回路4Aに出力する。発振回路4Aは、出力補正信号を受けて駆動周波数を負荷電流が増大する方向へと可変制御することで、第2の検出電圧VK2が一定値以下となるように制御する。これにより、放電灯LA4の立ち消えを防止することができる。
【0056】
上述のように、各検出電圧VK1,VK2の何れか高い方に合わせて出力補正回路4Fはインバータ回路3の出力の補正を行えばよい。また、インバータ回路3の出力の補正による負荷電流の補正は、各放電灯LA1〜LA4の立ち消えが起こらない程度まで行えばよい。例えば、T5型の蛍光灯を用いる場合には、負荷電流が20mAとなるまで補正する。
【0057】
なお、本実施形態では、低圧側の放電灯LA2,LA4が立ち消えしないように各検出電圧VK1,VK2を検出して出力補正回路4Fにより制御している。というのも、高圧側の放電灯LA1,LA3は、漏れ電流の影響により低圧側の放電灯LA2,LA4よりも負荷電流が大きくなるため、低圧側の放電灯LA2,LA4の立ち消えさえ防止できればよいからである。また、出力補正時の各検出電圧VK1,VK2の制御目標値は、実施形態1における各放電灯LA1〜LA4の寿命検出に影響を与えないように設定するのが望ましい。
【0058】
上述のように、本実施形態では、出力補正回路4Fを設けることで、実施形態1における各放電灯LA1〜LA4の寿命検出、無負荷検出に加えて、各放電灯LA1〜LA4の立ち消えを防止する機能を実現することができる。特に、この立ち消えを防止するためのインバータ回路3の出力補正機能は、他の検出機能と比較してゆっくりとした応答でも十分であるため、制御部4を構成するマイコンにプログラムを追加するだけで容易に実現することができる。すなわち、各検出電圧VK1,VK2に比例した電圧をA/D変換して取り込み、取り込んだディジタル値に基づいて寿命検出機能、無負荷検出機能、出力補正機能をプログラムで実行すればよい。
【0059】
また、単電源で上記のA/D変換を行う場合には、各検出電圧VK1,VK2の負電圧を識別できるようにオフセット電圧を加える。このように、検出回路を構成する素子数を増加させることなく、上記の機能を容易に実現することができる。
【0060】
なお、上記何れかの実施形態の放電灯点灯装置と、各放電灯LA1〜LA4を保持する器具本体とで照明器具を構成してもよい。照明器具としては、上記何れかの実施形態の放電灯点灯装置と、少なくとも放電灯の2灯の直列回路を2つ並列接続したものとを備えていればよく、器具本体の構造などは特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
3 インバータ回路
4C 寿命検出回路
7 第1の負荷回路
8 第2の負荷回路
LA1〜LA4 放電灯



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの放電灯を直列に接続して成る負荷回路を少なくとも2つ並列接続して構成される負荷に高周波電力を供給するインバータ回路と、前記負荷回路における各放電灯の接続点の電位を検出する接続点電位検出回路と、前記負荷回路における各放電灯の接続点に直流電圧を重畳する直流重畳回路と、前記各放電灯の寿命を検出する寿命検出回路とを備え、前記寿命検出回路は、何れかの前記負荷回路における各放電灯の接続点の電位が予め設定された閾値電圧を超える、又は前記各負荷回路における各放電灯の接続点の電位の差分が予め設定された差分閾値電圧を超えると、前記放電灯が寿命に達したことを検出することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記直流重畳回路を流れる電流の経路には、少なくとも1つの前記放電灯のフィラメントが接続され、前記インバータ回路の動作の停止時に前記フィラメントを流れる電流の有無により無負荷を検出する無負荷検出回路を備えることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記負荷回路における各放電灯の接続点の電位が一定値以上とならないように前記インバータ回路の出力を補正する出力補正回路を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の放電灯点灯装置と、前記各放電灯を保持する器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−45517(P2013−45517A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180718(P2011−180718)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】