説明

放電電極および液体プラズマ処理装置

【課題】安価で大面積化が可能な放電電極および液体をオゾンに曝気して効率よく処理する液体プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】液体プラズマ処理装置浮体1は、フロート10により非処理液体2上に浮揚されている。太陽電池4から配線によって昇圧回路12に給電され、放電電極7にプラズマ11が形成される。プラズマ11により空気中の酸素がオゾン化され、浮揚装置基体5内の非処理液体表面がオゾンに曝気される。尚、放電電極7はクロムを含有する合金もしくは最表面がクロム層からなる金属をガラスで挟み込み、1000℃以下の酸素を含む雰囲気下で熱処理することで金属とガラスが固着されて形成された無声放電用もしくは沿面放電用電極である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマを用いて液体を処理する装置であって、プラズマを発生するための電源、プラズマと非処理液体との配置、およびプラズマ放電電極の構造に関する。液体とプラズマの反応を利用するすべての分野に適用されるが、特に太陽光の利用可能な外部における水処理や廃液処理に適用される。
【背景技術】
【0002】
プラズマによる液体処理として古くから知られ実用化されてきたものとしてオゾン水処理装置がある。それはオゾン発生器、オゾン溶解用気送ポンプ、オゾン溶解槽および排オゾン処理装置から構成され商用電源を用いて20mg/Wh程度の効率でオゾンを発生させ、処理槽内で気液交換して浄水化する装置である。オゾン発生のための放電は金属膜電極が内径にコートされたガラス管を金属管内へ放電ギャップを隔てて挿入されてなる無声放電電極を用いたものである。反応式(1)からの熱力学的エネルギーコストは1.25g/Whであるから実行効率は2%程度である。
3/2*02 ⇒ 03, ΔH≒1.5eV/mol・・・・・・・(1)
近年脱炭素エネルギーへの要請や、エネルギーコスト削減の要求からオゾン発生分野においても太陽光エネルギー利用の提案や発明がなされてきている(特許文献1)。装置の構成は、エネルギー源としての太陽電池、昇圧回路、放電電極、排出オゾン除去装置である。エネルギー効率は1%以下である。
水質浄化装置においても太陽光発電の利用が発案されており(特許文献2、3)、浄化槽の水面スペースを利用して太陽光発電を行い浮体化した装置で水質浄化を行おうとするものである。しかし浄化のプロセスは従来のオゾン発生、気液交換を踏襲しているか、具体的な機構は明示されていない。
オゾン発生のための放電方式は無声放電の他、沿面放電が小型装置を中心によく用いられている。沿面放電は誘電体を挟んだ金属電極間の放電である点において無声放電と同じであるが、放電ギャップを設けず、片方の電極のエッジ部およびその拡張面上に放電を誘起することに特徴がある。実用例では電極金属にタングステン、誘電体にアルミナセラミクスが用いられている。
【特許文献1】特開平4−146761
【特許文献2】特開平8−268383
【特許文献3】特開平11−138194
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オゾン発生過程においてエネルギー損失を生じる要因はプラズマ形成に係る損失とプラズマへの給電回路におけるジュール熱損失である。特に一定の放電電流が生じる高圧回路系においては配線抵抗による損失を低減することは重要な課題である。一方効率よくオゾンを生成し、所望の反応を進めるためにはプラズマ電極の昇温を防止することが必要とされており、通常電極裏面に冷却用水を流している。しかしそのために装置は大規模でコスト高なものとなっている。
無声放電および沿面放電のための電極作製のためには金属と誘電体とを付着結合させることが必須である。しかしバルク状の両者を高温で融着させるためには一般に金属と誘電体の熱膨張係数の差が大いため、使用できる金属は膨張係数の小さなタングステンに限られているのが現状である。そのためコスト高となり、大面積化に困難を伴う。一方、応力緩和のために金属、誘電体の一方を薄膜化することは有効であるが、金属においては電気抵抗の高抵抗化、誘電体においては絶縁耐圧の劣化をきたすことになり、性能および信頼性低下をもたらす。
本発明は安価で大面積化が可能な無声放電および沿面放電用電極を提供し、太陽光発電を用いて該電極上に大気圧プラズマを形成してオゾンを生成し、特別な冷却手段を導入することなく液体をオゾンに曝気して効率よく処理する液体プラズマ処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
放電電極の電気抵抗を下げるためにバルク状の金属板を用いる。誘電体として用いるガラスとの融着を可能にし、かつ応力緩和を図るために界面にクロム酸化相を形成する。これにより比較的低温で大面積に安価で電気抵抗の低い放電電極を得ることができる。液体プラズマ処理装置を非処理液体上の浮体とし、太陽電池を搭載してエネルギー源とし、また非処理液体を熱交換冷媒としてプラズマ電極の放熱に利用する。
【発明の効果】
【0005】
放電金属電極の電気抵抗を下げることにより放電維持電圧を下げることができ投入電力を低減できるとともにエネルギー損失を低減することができる。太陽電池を用いることにより省炭素エネルギーの効果がある。冷却媒体として非処理液体を用いることにより装置が簡略化され設置費用、運転費用ともに低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
誘電体を被覆する金属材料としてクロムメッキを施した銅板を用いる。銅板の厚みは0.05mm以上、0.5mm以下とするが望ましくは0.05mm以上0.15mm以下がよい。このときクロムメッキ厚は0.03mmがよい。安価であることを優先すれば金属材料としてステンレス鋼を用いるのがよい。このときのぞましくはフェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼がよい。厚みは前記と同様である。誘電体としてはホウ酸系ガラス、またはソーダガラス、または無アルカリガラスがよいがのぞましくはホウ酸系ガラスがよい。この時ガラス厚は0.1mm以上、0.5mm以下、望ましくは0.1mm以上、0.2mm以下がよい。誘電体付電極と対向する電極の材料はステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、および銅合金がよいが望ましくはアルミニウム合金がよい。太陽電池は解放電圧が12V以上あればよい。昇圧回路は自励式インバータを用いてコンパクト化するのがよい。放電型式は無声放電か沿面放電となるが、沿面放電が大面積に対して作製が容易であり望ましい。放電電極および昇圧回路モジュールの冷却は非処理液体に浮揚する金属体に接触して保持することで効率よく行うことができる。誘電体付電極と対向する沿面放電電極を非処理液体とし、喫水線に沿って放電を励起する方法は、オゾンの生成とともに非処理液体へのイオン照射効果も期待することができ、目的により有効となる。このとき該電極は浮体基体に固定されてあるため浸漬深さは一定に保たれる。
【実施例】
【0007】
図1に浮揚液体プラズマ処理装置の例を示す。▲1▼は液体プラズマ処理装置浮体でありフロート▲10▼により非処理液体▲2▼上に浮揚されている。太陽電池▲4▼から配線▲8▼によって昇圧回路▲12▼に給電され、放電電極▲7▼上にプラズマ▲11▼が形成される。このプラズマにより空気中の酸素がオゾン化され、浮揚装置基体▲5▼内の非処理液体表面がオゾンに曝気される。通気は触媒担持通気窓▲3▼を通して行われ、オゾンの排出は触媒による分解で阻止される。プラズマ放電電極▲7▼と昇圧回路モジュール▲12▼は放電電極保持ヒートシンク▲6▼に設置されており、この金属体を通して非処理液体▲2▼と熱交換される。この放電電極保持ヒートシンク▲6▼は連結棒▲9▼で浮揚装置基体▲5▼と連結されている。
【0009】
図2に非処理液体を対向電極として喫水線上のプラズマを形成させた例を示す。この場合、電極の一部が非処理液体に浸漬しており、ヒートシンク支持体は必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 浮揚液体プラズマ処理装置
【図2】 液体電極型浮揚プラズマ処理装置
【符号の説明】
▲1▼・・・液体プラズマ処理装置浮体
▲2▼・・・非処理液体
▲3▼・・・触媒担持通気窓
▲4▼・・・太陽電池パネル
▲5▼・・・浮揚装置基体
▲6▼・・・放電電極保持ヒートシンク
▲7▼・・・放電電極
▲8▼・・・給電用配線
▲9▼・・・連結棒
▲10▼・・・フロート
▲11▼・・・プラズマ
▲12▼・・・昇圧回路モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムを含有する合金もしくは最表面がクロム層からなる金属をガラスで挟み込み、1000℃以下の酸素を含む雰囲気下で熱処理することで金属とガラスが固着されて形成された無声放電用もしくは沿面放電用電極。
【請求項2】
クロムを含有する合金板もしくは最表面がクロム層の金属板の厚みが0.05mm以上、0.5mm以下であり、該金属板を挟み込む各ガラス板の厚みがそれぞれ0.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の無声放電用もしくは沿面放電用電極。
【請求項3】
ホウケイ酸ガラスもしくはソーダガラスもしくはアルカリフリーガラスを用いて構成された請求項1に記載の無声放電用もしくは沿面放電用電極。
【請求項4】
請求項1に記載のガラス付金属電極と1mm以下のギャップを介して対峙する、ステンレス鋼、もしくはアルミニウム、もしくはアルミニウム合金、もしくは銅、もしくは銅合金で構成された金属電極で構成される無声放電用電極。
【請求項5】
請求項1に記載のガラス付金属電極表面に金属部位の有無でパターン形成され、該パターンをなす金属がステンレス鋼、もしくはアルミニウム、もしくはアルミニウム合金、もしくは銅、もしくは銅合金であることを特徴とする沿面放電用電極。
【請求項6】
給電が太陽電池によって行われることを特徴とする請求項4、および請求項5に記載の放電電極を具備したプラズマ発生装置。
【請求項7】
液面上に閉空間を形成して浮揚され、オゾン分解用触媒で構成された外気空間との通気用窓と、外気側表面に設置された太陽電池と、本体と連結して該閉空間内に浮揚された、請求項5もしくは請求項6に記載の放電電極および昇圧回路を搭載したヒートシンク機能を担う金属体とを具備する液体処理用プラズマ発生装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電極を非処理液体中に一部浸漬し、その浸漬面積を一定にするように電極設置構造体に浮力を与え、接地された液体を負電極として該液体との喫水線に沿って放電を起こすことを特徴とし、太陽電池、昇圧回路、およびオゾン分解用触媒で構成された通気窓を具備する浮体液体プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−64553(P2012−64553A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227952(P2010−227952)
【出願日】平成22年9月18日(2010.9.18)
【出願人】(507316745)PMディメンションズ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】